2011.03.31

裁判員裁判制度の意味について高裁はどう考えているのか?

読売新聞より「裁判員裁判判決破棄した高裁判決、被告側が上告

東京都葛飾区で2009年9月、アパートに侵入して現金を盗み放火したとして、窃盗や現住建造物等放火罪などに問われた被告(40)の弁護側は30日、放火について無罪とした東京地裁の裁判員裁判の判決を破棄し、審理の差し戻しを命じた29日の東京高裁判決を不服として最高裁に上告した。

同高裁は「前科に関する立証を認めなかった1審の判断は違法」としていた。

(2011年3月30日21時51分 読売新聞)

なんとも地味な記事ですが、元の報道はこちらです。
読売新聞より「裁判員裁判の無罪破棄、初の差し戻し…東京高裁

東京都葛飾区で2009年9月、アパートに侵入して現金を盗み放火したとして窃盗と現住建造物等放火などの罪に問われ、1審・東京地裁の裁判員裁判で放火について無罪となった被告(40)の控訴審判決が29日、東京高裁であった。

飯田喜信裁判長は

「放火の前科に関する立証を認めなかった1審の判断は違法」
と述べ、懲役1年6月(求刑・懲役7年)とした1審判決を破棄し、審理を同地裁に差し戻した。高裁が裁判員裁判の判決を破棄し、差し戻しを命じたのは初めて。被告側は上告を検討する。

検察側は1審で、放火について無罪を主張した被告の11件の放火の前科について、犯罪を証明するための

「特殊な手口の前科」
にあたるとして判決謄本などを証拠請求したが、同地裁は
「特殊な手口とはいえず、裁判員の予断を生む」
として却下した。そのうえで地裁判決は「被告が放火の犯人の可能性は高いが、第三者の犯行の可能性も否定できない」として、無罪を言い渡した。

しかし、この日の判決は

「窃盗で得た現金が少ないことに腹を立て、室内に灯油をまいて放火する前科の手口は、今回と類似性が認められる」
と指摘し、事実認定に必要な前科の立証は裁判員裁判でも認められると判断した。

(2011年3月29日16時47分 読売新聞)

一言で言えば、「地裁の裁判進行そのものが違法だからやり直せ」ということなのですが、なぜ高裁は自判しなかったのだろう?
裁判員裁判を否定するために、差し戻ししたのではないのか?とも思えます。

さらに、被告側が最高裁に上告したものだから、一つの事件について地裁と最高裁で別々に争うことになる。
しかも内容が、判決では無くて裁判の進行の是非になってしまった。

最初の判決は次の通り、読売新聞より「裁判員裁判 窃盗被告、放火は「無罪」 東京地裁「第三者犯行否定できず」

盗み目的で侵入したアパートに放火したとして、現住建造物等放火罪などに問われた被告(40)の裁判員裁判の判決が8日、東京地裁であった。

河合健司裁判長は「第三者が放火に及んだ可能性を否定できない」として放火の事実を認めず、窃盗罪と住居侵入罪について懲役1年6月(求刑・懲役7年)を言い渡した。
事実上の一部無罪判決で、検察側は控訴も視野に対応を検討する方針。

被告は昨年9月8日、東京都葛飾区のアパートの一室に窓ガラスを割って侵入、現金1000円を盗み、室内にあったストーブの灯油を床にまいて放火したなどとして起訴された。

被告は住居侵入と窃盗は認めたが、放火は捜査段階から一貫して否認。
部屋に住む女性が外出したのは同日午前6時30分頃で、出火したのは、それから5時間20分が経過した同日午前11時50分頃。
被告は「午前7時30分から40分頃に侵入し、約10分で立ち去った」と主張していた。

判決はまず、被告が出火前に室内に侵入したことや、ライターを所持していたことなどを踏まえ、

「被告が放火の犯人である可能性はかなり高い」
とした。

しかし、検察側が

「わずかな時間に第三者が放火したとは考えられない」
と主張したのに対し、判決は
「約5時間20分は『わずか』とは言えない。社会常識に照らせば第三者が侵入して放火した可能性を完全には否定できない」
と判断した。

検察側は5日の初公判で、被告に放火の前科があることを指摘しようとしたが、河合裁判長は

「裁判員の予断と偏見を生む」
とした弁護側の異議を認め、有罪・無罪を判断する証拠から除外。

検察側は、情状に関する事情でのみ言及していた。

判決後に記者会見した裁判員経験者の男性は

「本当に正しかったのかという思いはある」
としながらも、
「前科に関する証拠が消え、検察側の立証から核がなくなった印象を受けた。採用されていれば反対の結論になっただろう」
と話した。
判決で
「被告が放火した可能性が高い」
としたことについては
「白か黒ではなく、グレーだと伝えることに何ら問題はないと思う」
と述べた。

大鶴基成・東京地検次席検事の話

「訴訟手続きと判決内容を検討し、上級庁とも協議して対応を決めたい」

◆前科での立証認められず

「厳しすぎる認定だ」。判決を受け、検察幹部らは一様に驚きを隠さなかった。

放火事件では目撃者がいるケースはまれで、火災で証拠が失われる場合も多いため、被告が否認した場合の有罪立証は困難となる。
しかし、今回は被告が放火現場に盗みに入ったことを認めており、「証拠は厚い」との見方が強かっただけに、ある検察幹部は

「犯人と100%断定できない事件では、自白がないと有罪が得られないのか」
と険しい表情を浮かべた。

被告には過去に同様の手口での放火の前科があった。前科による犯罪の立証は、

「特殊な手口による前科」の場合には例外的に許される
とされており、検察側は公判前整理手続きで、被告人質問の中で前科に言及する方針を示していた。

しかし、公判で裁判長は

「特殊な手口ではなく、前科の言及は許されない」
としたことから、検察側は
「公判前整理手続きの段階では被告人質問での立証は制限されておらず、違法な訴訟手続きだ」
と強く反発している。

読売新聞より「放火「無罪」 検察控訴へ 裁判員裁判2例目 「事実認定に誤り」

盗み目的で侵入したアパートに放火したとして、現住建造物等放火罪などに問われた被告(40)について、同罪の成立を認めず、窃盗と住居侵入罪で懲役1年6月(求刑・懲役7年)とした東京地裁の裁判員裁判の判決について、東京地検は16日、

「事実認定に誤りがある上、訴訟手続きに法令違反があった」
として、東京高裁に控訴する方針を固めた。
週明けに上級庁と協議し、最終的に判断する。裁判員裁判で、検察側による控訴は2例目となる。

被告は昨年9月、東京都葛飾区のアパートに侵入して現金1000円を盗み、灯油を床にまいて放火したなどとして起訴された。8日の判決は、被告が「放火の犯人である可能性はかなり高い」としながらも、「第三者が侵入して放火した可能性を否定できない」とした。

検察側は公判で、同様の手口による放火の前科があることを示そうとしたが、同地裁は「裁判員の予断を生む」として認めなかった。

東京地検は
  1. 〈1〉第三者が侵入した形跡はなく、侵入の可能性があるとした認定は誤り
  2. 〈2〉放火の間接証拠である前科を証拠から排除したのは法令違反
とした。

このような経過で、今回高裁が差し戻しの判決を出し、被告が上告しました。
落合洋司弁護士は「[刑事事件]’11裁判員:「無罪」を破棄、差し戻し 東京高裁「訴訟手続きに誤り」 10:51」で次のように意見を述べています。

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110330ddm041040034000c.html

飯田裁判長は「起訴内容と被告の前科10件は、放火の手段方法に特徴的な類似性がある」と指摘。検察側が証拠請求した前科事件の判決書や供述調書の一部を起訴内容と関連する証拠と認め、「地裁が公判前整理手続きで証拠採用しなかったのは違法」とした。

被告は09年、東京都内のアパートで現金を盗み、室内に放火したとして起訴された。放火の直接証拠はなく、1審は「第三者による放火の可能性を否定できない」とし、放火罪成立を認めず懲役1年6月を言い渡した。

この件については、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20100707#1278433207

とコメントしたことがありますが、問題は、例外として前科による立証が許容されるほどの、犯行手口に特殊性があるかどうかでしょうね。

記事で、高裁は「起訴内容と被告の前科10件は、放火の手段方法に特徴的な類似性がある」と指摘、とありますが、前科に特徴的な類似性があっても、それ自体に特殊性がなければ、そういった手段方法で犯行に及ぶ人は他にも存在する蓋然性が高く、そういった証拠を事実認定の資料にすることは、裁判所の判断を誤らせることにつながりかねません。特に、判断するのが裁判員であればなおさらでしょう。

裁判員制度下で、差戻審が行われるることになれば、初めてのケースということですが、既に取調べられている証拠を、どのようにして新たな裁判員に理解してもらうのか、審理の進め方をどうするのかなど、手続面でも今後について興味を感じます。

前科を証拠とすることに、制限があるのは当然だと思いますが、裁判員裁判だから最初から証拠採用しないというのはどうかなと思います。
裁判員は証拠採用には関わらないからということなのでしょうか?

もし、前科を証拠採用する特殊性がないとして、証拠採用しなかった場合、高裁はどのような判決を出したのでしょうか?
やはり、差し戻しではなくて自判するべきだったではないか?

非常に興味深い裁判になってきました。

3月 31, 2011 at 09:39 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.05.16

京都地裁で、傍聴人に指示が出た

落合洋司弁護士のブログ経由、毎日新聞より「裁判員裁判:「首振り」裁判員に予断 裁判長また怒り--京都地裁

京都地裁で公判が続いている娘3人への点滴水混入事件の裁判員裁判で、前日は傍聴人の居眠りに怒った裁判長が12日、審理中にうなずいたり首を振ったりする傍聴人の態度に苦言を呈し、禁止を命じた。

極めて難解な審理の中で、裁判員に予断を与えないよう配慮した措置とみられる。

裁判関係者によると、検察官や弁護人の言葉に身ぶりで反応を示す傍聴人がおり、午後の公判の冒頭、書記官が「殊更に反応を示さないで」と異例の注意。

続いて、増田耕兒裁判長が

「首を振ったりうなずいたりしないでください。(裁判員が)気になりますんで」
と語気を強めた。

この日は、T被告(37)の四女の死因を調べた鑑定医の証人尋問。

鑑定医自身が「何のことか分からないと思いますが」と前置きするほど難解で、質問した裁判官ですら鑑定医から「真意が分からない」と言われる一幕もあった。

傍聴席の捜査関係者からは「医学を勉強しないとついていけない」との声が漏れた。

【熊谷豪】

この報道について、落合弁護士のブログでは

傍聴人には、居眠りしたりうなずいたりする人が時々いますが、目に余るような場合はともかく、いちいち気にしていたらきりがないことで、この京都地裁の裁判長は気にしすぎ、という印象は受けますね。

だらだらした証人尋問では、裁判官も寝ている時があり、他人のことをとやかく言えないような気もします。

上記のような注意をすると、それを契機に、かえって裁判員が傍聴人のことを気にし始める可能性もあるでしょう。

何かにつけ、ぎくしゃくとしたことが起きるのが裁判員制度、ということなのでしょうか。

この裁判長の意図がどの程度のものなのか、分からないのですが、裁判は公開すること決まっています。
公開とは、どういう意味か?となってきますが、昔は傍聴人がノートを取ることも禁止していたのですから、方向性としては「裁判所が傍聴人に知らしめる」といったものだったのでしょう。

ところが現実の裁判では、裁判長も人間ですから、傍聴人がおおぜい来る裁判と、傍聴人が一人も来ない裁判では、力の入れ加減が変わってしまうらしいのです。

民事訴訟では、傍聴者を増やして裁判所にアピールするというては、よく使います。

つまり、裁判所も傍聴人から影響を受けているわけです。

裁判長の意図が「裁判員・裁判官は、傍聴席の影響を受けてはいけない」と感変えているのであれば、「じゃあ報道はどうなのよ?」となってきます。

法廷が外部の影響を全く受けないということ自体が有り得ないわけですが、仮に影響を受けないことを優先すると、法廷を公開せず、報道もしない、ということになっていくでしょう。

いくら何でも、裁判長はこんな極端なことを考えているのではないと思いますが、「身振りを禁止」では重要なところを一斉にメモをとる、なんてのは論外だ、となってしまいますね。

実際問題として、裁判長が「傍聴席書きになるから困る」というは、「多少困っても仕方ない」と考えるべきことでしょう。
そんな点からは、落合弁護士の意見のように「気にしすぎ」だし「この見解を押し通すと、裁判の公開の否定」になってしまいますよ。とは言いたいですね。

5月 16, 2010 at 04:07 午後 裁判員裁判 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2010.04.14

ホームオブハート裁判・終結したので整理すると

PJnews より「TOSHI脱会から2カ月余、ホームオブハートが被害者に全面降伏

【PJニュース 2010年4月14日】 自己啓発セミナー「ホームオブハート(HOH)」からX JAPANのTOSHIが脱会したことを受けて、TOSHIを含めたHOH側とHOH被害者との間で争われていた10件の訴訟のうち8件が、和解や取り下げによって終結した。

HOH被害者側の代理人を務める紀藤正樹弁護士が13日、自身のブログとウェブサイトで「全面勝訴的和解」として明らかにした。

4月13日の弁護士紀藤正樹のLINC TOP NEWS-BLOG版と弁護士紀藤正樹のLINC/ホームオブハートとToshi問題を考えるによると、和解はHOH側からの申し出によるもの。

HOH側は被害者に対して、被害実損害額に慰謝料や弁護士費用を加算した額をさらに大幅に上回る金額を提示し、すでに全額が支払われた。
また、HOH側が被害者側弁護士に対して行っていた懲戒請求も取り下げられた。

HOH をめぐっては、TOSHIがX JAPANを脱退した翌年の1998年、HOHと実質的指導者のMASAYA(倉渕透氏)に心酔していたことが発覚し「TOSHI洗脳騒動」に発展。

2004年には、HOH関連施設で子ども5人が児童相談所によって保護される「児童虐待問題」が発覚した。その後、HOHから多額の金銭を取られていたとする被害者らがHOHやMASAYA、TOSHIなどを相手取って、損害賠償を請求する訴訟を提起。一方、HOH・TOSHI側は、被害者やその代理人弁護士を相手に、「名誉棄損」を理由に提訴。

これに対して被害者や代理人弁護士も「名誉棄損」を理由に提訴しており、訴訟件数はのべ10件にのぼっていたほか、HOH側が被害者側弁護士に対して懲戒請求を行うなどの業務妨害行為をしていた。

しかし今年1月、HOHの広告塔を務めてきたX JAPANのヴォーカリストTOSHIが、HOHからの脱会を表明。

記者会見でTOSHIは、12年間にわたって収入の全てをHOHに収奪されていたことを告白し、自己破産したことを報告した。

この影響でTOSHIの訴訟代理人が辞任するなどし、HOH関連の訴訟は全て進行が一時ストップ。
その動向が注目されていたが、HOHの重要な資金源であり内部の事情を知るTOSHIが脱会したことで、HOHが“白旗”を上げた形だ。

しかし、HOH問題そのものが解決したわけではない。

いまだHOHには複数の“信者”が残り、活動を続けている。紀藤弁護士はブログで「ホームオブハートへの追及の手は緩める気はありません」としている。
「ホームオブハートとToshi問題を考える会(HTP)」の山本ゆかり代表は、藤倉の取材に対し、今後の課題についてこう語る。

「今後も課題は山積です。今もHOH内で生活する人たちの中には、外部に子供がいる人がいます。一般社会で暮らす親御さんたちも高齢になってきています。一日も早い再会を願っています。今後、HOHは名前を変え、表向きの手段を変えながら活動を継続していきますので、今後の動向が気になります。HOH脱会前の TOSHIの“エコ”“平和”等の言葉を入り口に信じ込まされた個人や企業、特に私たち被害者の言葉に耳を貸さなかったロート製薬等が、今の事態を受けて今後どのような後始末をつけるのかにも注目したいと思います。また、HOH側に立って陳述書、意見書、準備書面等を裁判所に提出し、私たち被害者やその代理人弁護士を人格攻撃した弁護士その他の人たちの責任も、非常に重いと思っています」(山本代表)

ロート製薬は昨年、TOSHIやHOH をめぐる一連の訴訟を認識していながら、当時まだHOHの広告塔を務め被害者を口汚く誹謗中傷していたTOSHIを「目薬発売100周年」キャンペーン CMに起用。TOSHIのファンがHOHに引き込まれ被害にあうケースがすでに起こっていたことから、新たなHOH被害者を生み出す可能性が危惧されていた。

ロート製薬は非公式に被害者から問題を指摘されていながら、何ら対応してこなかった。

被害者の勝訴的和解は、HOHが自らの反社会性を認めたことを意味する。
それはつまり、ロート製薬の姿勢もまた反社会的だったということだ(当時、骨髄移植推進財団、劇団絵生、コスモス文化支援機構、雄一君を救う会なども、同じようにTOSHIの名を利用した)。

HOH 時代のTOSHIは、こうして利用したりされたりしながら、様々な被害や迷惑を周囲にふりまいた。

しかし今回の訴訟終結への大きな転機を作ったのもまた、 TOSHIである。前出の山本代表は、「TOSHIが脱会したことによりHOHが受けた衝撃も相当に大きかったのではないかと思います。これがHOH側から和解を申し出るにいたった動機の一部になったのではと想像しています」と語る。

HOHの被害者あり加害者でもあったTOSHIには、HOH問題に関連して、まだまだなすべきことがあると思う。記者(藤倉)は、X Japan・TOSHIがファンにカネをたかって詐欺事件に?と報じ、TOSHIから訴訟予告(予告だけ)を受けたこともあった。しかしいまは、訴訟終結に大きく寄与したTOSHIを讃えたい気分だ。【了】

この記事は、けっこう細かい状況も明らかにしています。注目するべき点は

HOH側は被害者に対して、被害実損害額に慰謝料や弁護士費用を加算した額をさらに大幅に上回る金額を提示し、すでに全額が支払われた。

一つの裁判について、多額の賠償とか、和解というのは分かりますが、多数の裁判が提起されたいきさつは、以下のような経過で増えていきました。
そのために、総額ではかなりの金額になっているはずです。

  1. 2004年には、HOH関連施設で子ども5人が児童相談所によって保護される「児童虐待問題」が発覚した。
  2. その後、HOHから多額の金銭を取られていたとする被害者らがHOHやMASAYA、TOSHIなどを相手取って、損害賠償を請求する訴訟を提起。
  3. 一方、HOH・TOSHI側は、被害者やその代理人弁護士を相手に、「名誉棄損」を理由に提訴。
  4. これに対して被害者や代理人弁護士も「名誉棄損」を理由に提訴しており、訴訟件数はのべ10件にのぼっていた
  5. ほか、HOH側が被害者側弁護士に対して懲戒請求を行うなどの業務妨害行為をしていた。

これでは、外部からは、どういう裁判が起きているか分からなくて当たり前と言えるでしょう。
このために裁判の数もすごくなって、

TOSHIを含めたHOH側とHOH被害者との間で争われていた10件の訴訟のうち8件が、和解や取り下げによって終結した。
という説明になります。
また、関連裁判としては、ホームオブハート側が日本テレビを訴えた事件もありますから、もう一件の訴訟が追加になります。

私は裁判の傍聴も含めて、7年にわたる裁判の進行を見てきましたが、Toshiがホームオブハートを脱会する以前から、「なぜToshiはホームオブハートにいるのか?」という疑問を感じていました。
この事件を知ってから、いろいろな情報を見ていると、確か(記録しなかったのが残念)ToshiはX-Japan時代を良くないこととして、ホームオブハートの傘下で、詩旅(うたたび)という一人公演を優れているもの、として書いていたと記憶しています。
それこそが、Toshiの苦境に直結するわけですが、その後、X-Japanの復活となった時に「やっぱり無理だっんだろう」と思ったわけです。

MASAYAの主張は「紀藤弁護士らがToshiをX-Japanに引き戻して、X-Japan復活の陰謀に対抗するために、Toshiを守っている」といったような内容でした。
これが、現実にX-Japanが復活すると、「紀藤弁護士の陰謀に対抗するために、MASAYAが先手を打ってX-Japanを復活させた」なのですから、誠に首尾一貫しているとは言いがたい、証言でした。

つまり、わたしの目からは、単にToshiが突如としてホームオブハートを脱会したから今回の事態に至ったのではなくて、X-Japan復活のあたりから、少しずつ崩れていって、大きな穴が空いてしまった。
という図式に見えます。

ただ、だからと言って、ホームオブハートの根本的に、あらゆる方面に対して反社会的な行動をとる、傾向が一気になくなるとも思えません。
山本ゆかりさんの見解のように「形を変えて同じような事を続けていく」のでしょう。

逆に、そういう仕組みを保持するために、お金を払って裁判を無かったことにした、と理解した方が自然かもしれません。

4月 14, 2010 at 05:03 午後 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2010.03.04

高松高裁被告人質問を制限

朝日新聞より「弁護側の質問制限「一審が裁判員裁判だから」高裁裁判長

徳島地裁で昨年11月に開かれた裁判員裁判で、統合失調症の長男(当時33)を殺害したなどとして殺人、死体損壊・遺棄の罪に問われ懲役12年の判決を受けた元トラック運転手(63)=大阪府八尾市=の控訴審第1回公判が2日、高松高裁であった。

弁護側は、長男に対する現在の思いや一審判決への感想などを尋ねようと被告人質問を求めたが、長谷川憲一裁判長は「一審が裁判員裁判ということをかんがみ、控訴審で改めて被告人に話を聞くことはしません」と述べて請求を却下し、結審した。

弁護人の吉田哲郎弁護士は閉廷後、「被告人質問で聞きたかったことは一審判決を受けてのことだった。聞く必要がないという裁判所の判断には納得できない。一審が裁判員裁判ということは関係ないはずだ」と取材に述べた。

被告は「一審判決が重すぎる」として控訴した。判決は3月18日に言い渡される予定。

最高裁の司法研修所は、裁判員裁判の控訴審について、市民が参加した一審の結論をできる限り尊重するべきだとの見方を示している。

福岡高裁は昨年12月、弁護側が求めた被告人質問に対し「すべて(一審)当時の証拠で判断するのが裁判員裁判での高裁のあり方だと思う」として請求を却下している。

毎日新聞より「徳島・鳴門の殺人死体遺棄:裁判員裁判尊重、質問請求を却下--高松高裁初公判

昨年5月、長男を殺害し、遺体を切断して海に捨てたとして、殺人罪などに問われ、徳島地裁の裁判員裁判で懲役12年の実刑判決を言い渡された、大阪府八尾市無職(63)の控訴審初公判が2日、高松高裁(長谷川憲一裁判長)であった。

弁護側は被告人質問を請求したが、長谷川裁判長は示談など新たな動きがないことを確認したうえで「1審が裁判員裁判であることを考えると、改めて取り調べる必要はない」として請求を却下した。判決は18日に言い渡される。【松倉佑輔】

この情報は、ボ2ネタ [ボ2] で知りました。
ボ2ネタ [ボ2]2010-03-04の記事より

■[司法]弁護側の質問制限「一審が裁判員裁判だから」高裁裁判長 弁護側の質問制限「一審が裁判員裁判だから」高裁裁判長

http://www.asahi.com/national/update/0303/OSK201003030010.html
http://mainichi.jp/kansai/archive/news/2010/03/02/20100302ddf041040008000c.html

「裁判長は示談など新たな動きがないことを確認したうえで」

確かこの事件は家庭内の事件で,しかも遺族兼被告人の家族が一審で既に出廷して猶予を求める旨の供述していたんじゃ…。
一審後の示談って想定できたのかな…?

福岡でも同様の訴訟指揮がありましたが,こういう流れが定着するのなら,被告人の一審後の反省という事情は原審判決後の事情としては考慮しない,ということになっていくのでしょうか。
一審としては,ともあれ一審の判決を受けてからもう一度控訴審できちんと考えて欲しいと思って判決することはあると思うのですが…。

ボ2ネタ [ボ2] の書き手は、専門家だと思うので裁判の記事については評価を重視して見ていますが、今回のボ2ネタ [ボ2] の「思うのですが・・・」というところが気になって、元の新聞記事を何度も読み返してみました。

事件は、長男を殺害して海に捨てた、というものでした。
サンケイ新聞より「「家庭内暴力に悩み襲う」 鳴門の死体遺棄 父親逮捕
この記事は、2009年5月13日付けで記事中の日にちはすべて2009年5月です。

徳島県鳴門市の海岸で頭部と両手足が切断された男性の胴体部分の遺体が見つかる死体遺棄事件があり、県警鳴門署捜査本部は13日、遺体の身元を大阪府八尾市の無職、(33)と断定するとともに、死体損壊・遺棄容疑で同居の父親でトラック運転手(62)を逮捕した。

捜査本部によると、容疑者は取り調べに対し、「息子の家庭内暴力に悩み、将来を悲観してやった。寝込みを襲って工具で頭を殴った」と供述しており、殺人容疑でも追及する。

逮捕容疑は2日ごろ、大阪府八尾市の自宅内で、長男の死体の首と四肢を切断し、10日午前3時20分ごろ、鳴門市鳴門町土佐泊浦の神戸淡路鳴門自動車道・大鳴門橋の上から切断遺体を遺棄した疑い。

求刑が懲役15年で、裁判員裁判であって地裁判決は懲役12年でした。
徳島新聞より「鳴門殺人・遺棄、懲役12年 裁判員裁判、検察側求刑に近く

徳島地裁で17日に始まった県内2例目の裁判員裁判で、畑山靖裁判長は20日、裁判員との評議を経て、殺人と死体損壊・遺棄の罪に問われた大阪府八尾市、元トラック運転手(62)に懲役12年を言い渡した。

弁護側は懲役5年が相当と主張していたが、裁判員らは検察側が求刑した懲役15年に近い刑を選択した。判決後、裁判員4人と補充裁判員1人が記者会見に応じ、感想を語った。

判決公判には、裁判官3人と裁判員6人、補充裁判員3人が臨んだ。

判決では、統合失調症だった長男=当時(33)=の暴力に悩み、精神的に追い詰められて犯行に及んだ経緯に「同情すべき点はある」としながらも、「いかに苦しい状況に置かれていたにせよ、人の生命を奪うことは許されない」と非難した。

弁護側が主張していた精神障害者の家族への支援制度の不備については「同じように苦しみながら、現実に向き合っている人が少なくないことは忘れてはならない」とした。

自首を考えず、犯行後も平静を装って生活しており、「後悔の念がうかがえない」と指摘。
被告の次男が供述調書の中で、遺体の切断と遺棄に憤りを感じていたことに触れたほか、「被害者への言葉は少なく、社会や制度のためにやむを得なかったような供述もしている」とも指弾した。

量刑については、殺害から遺体の切断、遺棄までを「全体として重く処罰すべき犯罪類型」ととらえ、死体損壊・遺棄罪は重視すべきではないとした弁護側の主張を否定。

殺人罪の法定刑の下限である懲役5年では「被告の犯罪行為に見合っていない」と退け、「当初から死体遺棄を考えたことなどは、厳しい非難を免れない」として懲役12年を導き出したことを説明した。

判決言い渡し後、畑山裁判長は被告に対して、最終陳述で被害者に向けた言葉がなかったことを「残念に思う」と述べ、「人の命の大切さを知っておいてもらいたかった」と語り掛けた。

判決について、豊永寛二弁護人は「被告は刑に服す趣旨の発言をしていた」と控訴しない方針を示した。
一方、徳島地検の織田武士次席検事は「適正な範囲内の結果であり、控訴は考えていない」とした。

こんな経過を経て、当初は控訴しない意向だったようですが、刑が重すぎると控訴した、ということのようです。

高裁で、

  1. 弁護側は、長男に対する現在の思いや一審判決への感想などを尋ねようと被告人質問を求めた
  2. 長谷川憲一裁判長は「一審が裁判員裁判ということをかんがみ、控訴審で改めて被告人に話を聞くことはしません」と述べて請求を却下
  3. 弁護人の吉田哲郎弁護士は閉廷後、「被告人質問で聞きたかったことは一審判決を受けてのことだった。
    聞く必要がないという裁判所の判断には納得できない。一審が裁判員裁判ということは関係ないはずだ」
  4. ボ2ネタ [ボ2] さんは、福岡でも同様の訴訟指揮がありましたが,こういう流れが定着するのなら,
    被告人の一審後の反省という事情は原審判決後の事情としては考慮しない,ということになっていくのでしょうか。
というところが問題だとボ2ネタ [ボ2] さんは述べているわけです。

裁判長が「一審が裁判員裁判ということをかんがみ」と述べたところには「???」と感じるところですが、今回はどうなっているのか分かりませんが、弁護側が漠然と「一審判決を受けてどう思いますか?」のような観点から被告人質問をすると言うのでは、裁判所に拒否されても仕方ないかな?という印象があります。
基本的には、裁判は起こった事件の解明が目的ですから、判決を受けたことについての感想は事件の解明そのものではないですよね。

一方、ボ2ネタ [ボ2] さんが問題にしている「被告人の一審後の反省という事情」という部分は、事件の解明に役に立つ、つまり新証拠の可能性があるのか?ということで決まってくるように感じます。

今回の事件報道を読むと、被告の情動が普通よりもかなり感度が低いのではないのか?と感じます。

  1. 自首を考えず、犯行後も平静を装って生活しており、「後悔の念がうかがえない」
  2. 最終陳述で被害者に向けた言葉がなかったこと
  3. 地裁判決後に、被告は刑に服す趣旨の発言をしていた
  4. 長谷川裁判長は示談など新たな動きがないことを確認した

ボ2ネタ [ボ2] さんが問題にしている点は、わたしの考えでは一審で被告側の状況が十分に解明されていないから、ではないかと思います。
自首を考えず、犯行後も平静を装って生活しており、「後悔の念がうかがえない」というのを「隠ぺいを意図する確信的な行動」と見るのか、これほど重大な事態に対してもあまり感情がないという病的な人だったのか?という全く別評価があり得るでしょう。
そして、どうもそこらが解明されていないのではないのか?

結局、どうも一審の弁護が不十分なものになってしまったから、控訴審でやり直しを企図したと、高裁は判断したのではないでしょうか?
ボ2ネタ [ボ2] さんが「上訴審で、一審後の反省という事情を・・・・」と心配されているところまで、問題として煮詰まっていないのではないのか?という気がします。
あえて言えば、裁判員裁判の「短期間審理」が影響したのかもしれない、という点ではないでしょうか?

3月 4, 2010 at 11:19 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.12.13

裁判員裁判・初の無罪主張その4

「裁判員裁判・初の無罪主張その3」などで紹介してきたさいたま地裁での裁判員裁判の判決が出ました。

埼玉新聞より「無罪主張の男に懲役8年 「公判長く疲れた」和光の強盗致傷

少年らと共謀し、現金などを奪ったとして強盗致傷などの罪に問われ、共謀はしていないと無罪を主張していた探偵業(33)の裁判員裁判の判決公判が11日、さいたま地裁であり、中谷雄二郎裁判長は、懲役8年(求刑懲役10年)を言い渡した。

選任から判決まで、過去最長の12日間。裁判員経験者らは「内容からして適切な期間」と理解を示したが、「大変疲れた」と話した。

裁判員裁判で共謀の有無が争点となったのは初めて。

検察側は、

被告が実行犯の少年らに「とことんぶっ飛ばして、金や金目のものを取って来い」などと犯行を指示したと主張し、
弁護側は
「強盗の指示はしていない」と反論した。

中谷裁判長は、「実行犯の少年らの証言は具体的、迫真的で矛盾は認められず、十分信用できる」と共謀を認定。

その上で「犯行は計画的で、自分は犯行に関与していないと装うなどずる賢い。被告は首謀者で、果たした役割は極めて大きい」と述べた。

判決後の記者会見には裁判員2人と、補充裁判員1人(いずれも男性)が参加。有罪か無罪かを争った長丁場に、60歳代の自営業男性は「2週間にわたったので、長かった。内容も非常に複雑で難しかった」と感想を述べた。

被告は控訴する意向を弁護士に伝えた。

判決によると、被告は少年ら(4人は少年院送致など、成人1人は公判中)と共謀し、昨年9月21日、和光市の男性宅に押し入り腕時計などを強奪、同居の女性に軽傷を負わせ、コンビニのATMで、46万円を引き出させた。

判決文は争点に対する判断が詳しく記載され、裁判員裁判としては異例の長さの12㌻に上った。

■「12日間」周囲の理解力カギ

閉廷後、4番の会社員男性(60)、6番小売業男性、20代の男性補充裁判員の3人が記者会見に応じた。

有罪か、無罪か。異なる主張に耳を傾け、下した判決について、補充男性は

「一つのチームとして出した結論。妥当だと思う」。日程が長期間に及んだ点には3人とも「これくらい必要だった」
と話した。

選任手続きから判決言い渡しまで、最長の12日間。

事件の背景が複雑な上、7人の証人尋問と被告人質問が行われるなど、中身が濃い公判だったことに、6番は

「大変疲れた。内容が複雑で難しかったからかな」
と息をついた。補充男性も
「少々疲れがある」
と話した。

公判日程については

「3日目くらいまでは出ていただけで、後から難しさが分かってきた」
と6番。4番も
「不都合はなかった」
と理解を示した。それでも
「公判が終わってから会社に行き、遅い時は夜9時まで働いた日もあった」、6番も「戻ってから仕事をした」
という。

判決内容を決める評議を前に、補充裁判員3人が解任されたことには「かかわった以上は最後までいたかったと思う」と気遣った。

公判では検察側、弁護側双方の主張が真っ向から対立。

4番は

「公平公正な立場で、と決めていた」
。補充男性も
「ありのままを受け止めようと思っていた」
と先入観をなくして挑んだ。

有罪、無罪を決めるプレッシャーは

「精神的にきつい部分はあったが、平常心で臨めた」
と4番。判決については
「妥当だと思う」
と答えた。

今後も否認事件や、審理が長期間にわたる裁判員裁判が開かれることが予想されるが、4番は「(家庭や会社などの)周囲の理解をいかに得られるか。制度ではなく、個々の問題だと思う」と話した。

■「旧来踏襲の判決文」 弁護人が会見

判決後、無罪を主張してきた被告の弁護人の村木一郎弁護士は

「証拠は証人の証言が軸で、どの切り口を見るかで、結論が変わる裁判だった」
と話した。その上で、
「少年たちの証言が正しいという前提で話が進んだ。有罪の結論を出すために、いろいろな疑問点を消していった。旧来の裁判のやり方の特徴だ」
と述べた。

判決文については、

「旧来のものを踏襲し、裁判員裁判としてはがっかり。全員一致で有罪だったのか、疑問を感じた人はいたのか、市民の視点から、有罪か無罪で悩んだ様子が書いてあってもおかしくなかった」
と不満そうだった。

事件から裁判に至るまでの経過は、「裁判員裁判・初の無罪主張その3」などに書きましたが、被告の主張などについては、サンケイ新聞の記事「【法廷から】被告と検察の全面対決に裁判員どう判断」には次のようにあります。

共謀は成立しているのか-。

さいたま地裁で11日に判決が言い渡される強盗致傷事件の裁判員裁判は、無罪主張の被告側と懲役10年を求刑した検察側が対立。
初公判から判決まで12日間という長期間を要した裁判での裁判員の判断に注目が集まる。

強盗致傷罪に問われているのは、東京都墨田区の探偵業(33)。

起訴状によると、被告は平成20年9月21日未明、数人と共謀して和光市の男性会社員宅に押し入り同居の女性を鉄パイプで脅して転倒させ軽傷を負わせた上、現金約7万5000円を奪うなどしたとされる。

被告が強盗の現場にいなかったことに検察側、弁護側双方に争いはない。

争点は被告が東京都新宿区のカラオケ店で実行犯に強盗を指示していたかどうかに集約されている。

出廷した証人は7人。特に注目されたのは、実行犯の少年3人だ。

1日の証人尋問で、少年が被告とカラオケ店で初めて会ったときの印象を

「暴力団かと思った。肩に入れ墨を入れ、色眼鏡にセカンドバッグを持ち、派手な服だった」
と証言した。

この日の被告は黒色のスーツに青色の取り付け式ネクタイに、縁なし眼鏡で出廷。
法廷での印象との違いに裁判員は驚きの表情を見せていた。

また少年は

「被告から『手足を4本折ってでもカネや金目のものを持ってこい』と指示された」
と証言した。

共謀を決定づけるように思えるこの証言。しかし、被告は4日の被告人質問で、こう反論した。

弁護人「暴力を振るってカネを持ってこいと言ったのか」
被告「それはあり得ない。少年の証言は意味合いが全然違う」
弁護人「『死ぬ気で行けと指示した』と供述調書にはあるが」
被告「少年は貧弱なので、金銭トラブルの解決で被害者宅に行っても恫喝(どうかつ)されて戻ってくるのが分かっていたから、軽口をたたいている意味で言った」
弁護人「被害者が抵抗してきたら、手足を折るくらいやってもいいという意味か」
被告「その通りです」

被告は、「手足を折っても-」の発言の趣旨は強盗の指示ではなかったと供述したのだった。

終始、事件への関与を否定し続けた被告。
裁判員は時折首をかしげたりしながら思案顔でこうした証言や供述を聞いていた。

「疑わしきは被告の利益に」は刑事裁判の原則。一方、犯罪の“やり得”を許すことは社会正義に反する。法廷でうそをついているのは誰なのか。(西尾美穂子)

まあ、この記事で見る限りは被告側の主張が無理すぎるという感じではあって、少年院にいった証人の証言には勝てないように感じます。
ところが別の事情もあったようです。

毎日新聞より「裁判員裁判:全国最長12日間…裁判員「妥当な日程」

評議を含めて7日間の期日を要し、初公判から判決まで12日間かけた全国最長の裁判員裁判の判決公判が11日、さいたま地裁(中谷雄二郎裁判長)であった。

強盗傷害罪などに問われ、無罪を主張した東京都墨田区江東橋、探偵業、赤谷拓治被告(33)に懲役8年(求刑・懲役10年)を言い渡し、判決後の記者会見で裁判員は「妥当な日程だった」と感想を述べた。

裁判員2人と補充裁判員1人が会見に出席した。

期間の長さについて60代の小売業の男性は「3日間では訳が分からなかったと思う。他の裁判が3日間で終わることが信じられない」。会社員の男性(60)は「裁判後に午後7時や9時ごろまで働き、仕事に支障はなかった」と話した。

被告人質問で裁判員が直接質問したのは1回だけだった。

「被告も被害者も暴力団とかかわりがあったからか」
との質問に、小売業の男性は
「非常にはばかられた。事件の内容が複雑だったことも理由」
と話した。

赤谷被告は、少年ら5人に強盗を指示したとされたが、公判で「指示していない」と無罪を主張。

証人7人が出廷するなど、関係者の証言の信用性が争点となり、中谷裁判長は「被告は責任を転嫁しようとしている」として実刑判決を言い渡した。【飼手勇介、浅野翔太郎】

これでは、裁判そのものも大変だったでしょうし、まして裁判員一人ひとりのプレッシャーも大変だったろうな、と思います。

今回の裁判員裁判は、被告が無罪を主張しているとはいえ、実行犯への指示に相当する発言が、指示に当たるかどうか?というものであって、言葉の解釈の問題です。
従って、解釈そのものは社会の基準で判断するべき事ですから、社会の基準では発言には被告の意志が犯行に及ぶ、と判断して問題は無いでしょう。

私が応援しているホームオブハート裁判でも、ホームオブハート側の証言にはしばしば言葉の解釈が違うという主張が出てきます。
確かに相手に応じて言い方を変えるのは社会で普通に行いますが、例えば、大人に向かって「幼児に声をかけるのと同じように」といった普通はあまり考えられない主張があった場合には、そういう証言の背景にある事情に普通ではない意図がある、と解釈するのが当然です。

これが、足利事件とか、東金市の幼女殺人事件といったことになると、事実関係そのものが信用できるのか?となりますから、裁判員裁判であった場合、検察側に求められる立証の精密さは、格段に重要になるでしょう。

12月 13, 2009 at 09:31 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.12.03

裁判員裁判・初の無罪主張その3

サンケイ新聞より「無罪主張の裁判員裁判 実行犯「指示された」と証言

住宅に押し入って女性にけがを負わせ現金を奪ったとして、強盗致傷などの罪に問われた東京都墨田区の探偵業(33)の裁判員裁判の第2回公判が1日、さいたま地裁(中谷雄二郎裁判長)で開かれた。

被告は強盗に加わっておらず、実行犯との共謀が争点。
被告は共謀を否定し、無罪を主張している。

この日は強盗の実行犯の少年が証人として出廷し、検察側主張に添った証言をした。

検察側は少年への証人尋問で、共謀が成立したとされる東京都内のカラオケ店内での赤谷被告とのやりとりについて尋問。

少年は「手足を4本折るぐらいぶっ飛ばして金目のものを持ってくるよう指示された」などと述べた。

また、これに先だって行われた被害者の男性への証人尋問で、裁判員番号2番の女性が質問。

男性の声が聞き取りづらかったのか、「マイクの方に近づいていただけると、話が聞こえるんですが。お願いします」と丁寧に依頼する場面があった。

サンケイ新聞より「実行犯とのつなぎ役、共謀について「記憶ない」 裁判員裁判

埼玉県和光市の住宅に押し入って女性にけがを負わせ現金を奪ったとして、強盗致傷などの罪に問われた東京都墨田区の探偵業(33)の裁判員裁判の第3回公判が2日、さいたま地裁(中谷雄二郎裁判長)で開かれた。

赤谷被告に実行犯の少年を紹介したとされる男が証人として出廷。

男は赤谷被告が少年に犯行を指示したことについて「記憶にない」と証言した。

検察側冒頭陳述によると、男は赤谷被告に強盗の話を聞き、実行犯として少年を紹介。
赤谷被告は東京都内のカラオケ店内で少年に犯行を指示した。
男も同席していた。

男は弁護人からカラオケ店内での様子について質問され、

「少年に『おれたちだけにやらせるつもりなのか』と詰め寄られて恐怖感を感じていたので、ハッキリした記憶はない」
と証言した。

赤谷被告は強盗に加わっておらず、裁判では少年との共謀が争点になっている。
赤谷被告は共謀を否認し、無罪を主張している。

朝日新聞より「裁判員法廷@さいたま「ぶっ飛ばして金を」

◇「無罪」主張の強盗致傷事件/実行役少年が証言

強盗致傷事件をめぐり、さいたま地裁で無罪かどうかが争われている裁判員裁判は2日目の1日、実行役とされる少年の証人尋問が始まった。

被告が事前に犯行を指示したかどうかが争点で、少年は

「被告に『とことんぶっ飛ばして、金か金目のものを取ってきて』と言われた」
などと証言した。

審理されているのは、強盗致傷罪などで起訴された被告(33)。

少年は証人尋問で、「被告と知人の男から(強盗の)指示を受けた」と証言。

事件の2日前にカラオケ店で会った時、被告から「手足を折ってもいい」などと言われたと話した。

被告の様子を「過激で威圧的な話し方だった」と表現。
被告が、インターネットを使って被害者の口座から被告の口座に金を移す提案をしたとも指摘した。

弁護側は

「被告は店で知人と少年の話をすべて聞いていたわけではなく、強盗を指示していない」
と無罪を主張している。

少年は、弁護人から

「店を出た後、被告と連絡を取っていないのか」
と聞かれると、
「被告とは取らず、知人の男と取った」
と答えた。また、裁判員から
「あなたが実行役の中心か」
と尋ねられると、
「自分が他の少年を誘った」
と答えた。

けっこうややこしい話ですね。

実行犯の少年と、被告と、知人の3人が登場人物で、実行犯の少年は被告に指示されたとし、知人も聞いていたはずだ、というのが主張なのでしょう。

被告は指示していない、が主張なのですが、知人は「記憶にない」と証言しています。
しかし記憶にない理由が「少年に『おれたちだけにやらせるつもりなのか』と詰め寄られて恐怖感を感じていたので、ハッキリした記憶はない」では、ちょっと信用しがたい印象ですが、共謀犯というからには、それなりにはっきりと「襲って金を取って来い」という話は伝わっていないと共犯とは言いがたいでしょうね。
証言が信用できない場合に、他の証拠が優先するわけですが、この場合は会話しか無いようですから、非常に重要な証言だったと思います。

単に「痛めつけてこい」が指示だったとすると、強盗にはならない。
しかし、強盗傷害の共犯ですから、立証としては「襲って金品を奪ってくるという指示」が何らかの形で伝わっている必要があると思います。
なんらかのというのは隠語や符丁、動作でも良いようです。

しかし、この場合はその「指示の場」に知人が居たわけで、知人が「聞いていない、見ていない」ではいきなり証拠が極めて弱くなるし、「聞いたが指示とは思えない」となると、それだけでも相当に大変でしょう。

元もと、この事件では検察側は「聞いている」であって、弁護側は「全部は聞いていない」なのですから、知人の証言が「記憶にない」では、検察側はこの段階ではかなり厳しい状況に追い込まれたような印象を受けます。

12月 3, 2009 at 12:50 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.12.02

裁判員裁判・初の無罪主張その2

「裁判員裁判・初の無罪主張」の内容が分かりました。
朝日新聞より「裁判員法廷@さいたま/初の「無罪」主張

◇真実見極め 長期戦/候補者「外れてほっと」

県内で初めて無罪かどうかが争われる裁判員裁判が30日、さいたま地裁(中谷雄二郎裁判長)で始まった。

和光市で昨年起きた強盗致傷事件をめぐり、「少年らを集めて強盗を指示した」とする検察側に対し、被告は共謀に関する事実関係を否定して無罪を訴えた。裁判員は、約2週間の長期日程での判断が求められている。

強盗致傷罪などに問われているのは東京都墨田区、探偵業(33)。

起訴状によると、知人の男や少年らと共謀して昨年9月21日、和光市の経営コンサルタントの男性宅に侵入して男性と妻に包丁を突きつけ、約53万円などを奪ったとされる。

実行行為には加わっておらず、事前に犯行を指示したかどうかが争点。

初公判の罪状認否で「共謀はしていない。無実だ」と強調した。

冒頭陳述でも、共謀の有無をめぐって検察側と弁護側の主張が対立した。

地裁は当初、120人の裁判員候補者を選んだが、繁忙期や長期日程、インフルエンザの影響などを考慮して10人を追加した。
30日の選任手続きには、辞退が認められた人らを除く51人が出席を求められ、41人が参加。
選任されずに安心した表情の人もいた。

さいたま市のペット雑貨販売店長の女性(25)は、クリスマス商戦の最中で上司から「タイミングが悪かったね」と言われた。
いったん勤務を外れた日程を再調整し、職場に戻るという。
上尾市の主婦(58)は「有罪か無罪かを自分で考えるのかと思うと、胃が痛い。選ばれなくてほっとした」と話していた。

◆無罪主張の強盗致傷事件冒頭陳述(要旨)

◇検察側

被告は昨年8月下旬か9月上旬、知人に強盗の実行役を集めるように依頼した。

知人と少年らと被告は昨年9月19日、東京都新宿区のカラオケ店で打ち合わせをした。

そこで被告は被害者の男性を襲うよう指示。
被告と知人は男性宅の地図を渡し、被告が「ぶっ飛ばしてでも、現金と金になるものを全部持って来い。
手足4本、折っちゃってもいい」などと告げた。

男性に大けがをさせたかった理由は、暴力団組長と男性の間の金銭トラブルだった。

組長にかわいがられていた被告は、組長の裁判を男性が傍聴していることを不快に思っていて、同22日に予定されていたその裁判を見せたくなかった。

指示を受け、少年ら4人のグループは同21日未明に男性宅に侵入。男性やその内縁の妻に包丁を突きつけ、現金計53万5千円と腕時計など約144万2千円相当を奪った。
その際、妻に約1週間のけがを負わせた。

◇弁護側

被害者の男性に関する金銭トラブルの解決を被告が知人に依頼したところ、被告の知らないところで強盗事件が起きてしまった、というのが真相だ。

被告は知人や少年らに、強盗を依頼したり指示したりしたことはない。

検察側が「指示した」というカラオケ店では、知人と少年たちの会話をすべて聞いていたわけではない。

自分の携帯電話にかかってきた相手と話すため、部屋の外に出ている。
部屋にいる間に、強盗の話は一切なかった。

被告は、この後、少年らがどんな行動を取ったのか知らない。

金も一切もらっていない。

事件後、男性との共通の知人から「被害者はとても怒っているが、500万円出せば何もしないと言っている」と告げられた。

結果として少年らが被害者に危害を加えたのなら責任の一端があると考え、500万円をこの知人に渡した。

「強盗をしよう」と話し合った証明はなく、無罪だ。

弁護側の主張は

「強盗をしよう」と話し合った証明はなく、無罪だ。
に集約されるのでしょう。

「強盗」というのは実効行為としては極めてはっきりしていますから、それを指示し実行させたというのも明確な指示があることが事件の前提でしょう。
検察側が「強盗しろ指示したと解釈できる」という論理である場合には、そこに解釈論を持ち込めるのか?とはなるでしょう。いわば「強盗しろという意外に解釈のしようがない指示があった」ということにしないと、「強盗」という言葉が無いようなケースでの「指示」の解釈は出来ない。

「ボコボコにしろ」ぐらいの話があったとして、それが「強盗を実行しろ」にはならないわけですが、被害者と加害者は元もと知人であるようですから、「襲って金を取ってこい」といった形で「金」という言葉がキーワードのように思います。

取り組んでいる裁判員の方は大変でしょうが、非常に興味深いし、警察・弁護の対立が厳しいですから、どのよう判決であっても控訴があると予想します。
それによって裁判員裁判の評価も出て来るわけで、注目するべき裁判でしょう。

12月 2, 2009 at 09:19 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.12.01

裁判員裁判・初の無罪主張

朝日新聞より「判決まで12日間、最長の裁判員裁判始まる さいたま

さいたま地裁で30日、11日午後の判決まで12日間にわたって続く強盗致傷事件の裁判員裁判が始まった。

初公判から判決まで2~4日の例が多い裁判員裁判で、12日間はこれまでで最長。裁判員の負担は大きくなる。

午前中の選任手続きでは6人の裁判員のほか、審理途中で裁判員が出られなくなった場合に備える補充裁判員が4人選ばれた。
補充裁判員は通常は2人ほどだが、期間が長いために人数が多くなった。

審理されるのは、東京都墨田区の探偵業(33)。
昨年9月、数人と共謀して埼玉県和光市の住宅に侵入し、包丁や鉄パイプで住人を脅してけがをさせ、現金53万円余や腕時計などを奪ったとして起訴された。

しかし、被告は公判前から無罪を主張。

午後に始まった初公判でも「共謀は一切していない。私自身は無実」と訴えた。

被告は実行行為に加わっていないことから、事前に実行者に指示していたかどうかが有罪・無罪を左右する争点に。

事件に関係する人数が多いうえ、無罪主張に伴って共謀したとされる少年や被害者ら7人の証人尋問を実施する必要が生じたため、審理期間が長くなった。

裁判員の負担に配慮し、検察側と弁護側は質問を絞り、毎日午後4時までには審理を終えたい考えだ。

初日の審理は冒頭陳述や証拠調べなど1時間余り。
合間に3回、約40分間の休憩が取られた。裁判長は「争点や証拠の理解を深めるため」などと休憩の理由を法廷で説明した。(沼田千賀子)

■2日目以降の審理予定

09年11月30日(月)裁判員選任(計10名)・冒頭陳述
09年12月01日(火)証人尋問
09年12月02日(水)証人尋問
09年12月03日(木)
09年12月04日(金)被告人質問など
09年12月05日(土)
09年12月06日(日)
09年12月07日(月)論告求刑など
09年12月08日(火)
09年12月09日(水)評議
09年12月10日(木)予備日
09年12月11日(金)評議、判決

今までの裁判員裁判が量刑判断だけであったので、否認事件では裁判員裁判が出来ないのではないのか?という懸念を多くの専門家が述べていて、裁判員裁判にとって正念場といったところです。

補充裁判員を4名にして総数10名を選任したのですから、裁判員になった方々も「なんで当たったんだ」という感もあるでしょうが、頑張って欲しいものです。

この事件では、被害者は脅されて怪我もしているわけですから、被告が犯行に加わったとの証言は出来ないでしょう。
そこで共謀罪になっているわけですが、これは実行犯の証言によるわけで、さらに被告が実行犯に話した内容が、犯行を支持するものであったかが、問題になるわけです。

実行犯が被告の指示に従って被害者を襲った場合は、実行しない被告が正犯であり、実行犯が従犯になる可能性もありますね。
これはオウム事件などでも問題になった例でしょう。

こんな事を考えると、弁護側の力の問題が大きいかとも思いますが、それ以上にこの短期間に審理を進めて終わらせることが出来るものなのか?がやはり心配です。

12月 1, 2009 at 09:29 午前 裁判員裁判 | | コメント (1) | トラックバック (0)

2009.10.03

裁判や事故調査に神の視点は避けるべきなのだ

サンケイ新聞より「『現代の赤紙』廃止を 制度反対の全国集会

裁判員制度に反対する弁護士らのグループ「裁判員制度はいらない!大運動」が2日、東京都新宿区で全国集会を開き、参加者は「被告に死刑や無期懲役を言い渡す国家活動に国民を駆り出す『現代の赤紙』の制度を廃止しよう」と宣言した。

集会には市民ら約450人が参加。基調講演したジャーナリストの斎藤貴男さんは「司法権力が下す判決に市民がお墨付きを与える構造」「裁判で真実が解明されるとは限らないが、市民が総出で真実と決めてしまう」と制度を批判した。

グループの事務局次長を務める藤田正人弁護士は、これまでの裁判員裁判を分析し「裁判員が被告に取調官のような質問を連発し、密室での取り調べが法廷で再現された」「被害者の意見が裁判員に影響を与え、重罰化をもたらした」と説明した。

この運動については、 最初の裁判員裁判 でも取り上げましたが、わたしには反対の原理が分かりません。

特に今回の報道に出てきたキーワードには非常に重大な問題がある、と強く感じます。

  • 「司法権力が下す判決に市民がお墨付きを与える構造」
  • 「裁判で真実が解明されるとは限らないが、市民が総出で真実と決めてしまう」
  • 「裁判員が被告に取調官のような質問を連発し、密室での取り調べが法廷で再現された」
  • 「被害者の意見が裁判員に影響を与え、重罰化をもたらした」

「司法権力が下す判決に市民がお墨付きを与える構造」

司法に権力があることは確かですが、それを市民が支持することは、罪なのでしょうか?
だとすると、市民による多数決原理を否定することになりませんか?

「裁判で真実が解明されるとは限らないが、市民が総出で真実と決めてしまう」

真実が解明できるとは限らない、と断定出来ないでしょう。
意見の対立があって、一方が真実を解明したとし、もう片方が真実を解明してはいない、と反論することはよくあります。
裁判において、真実が解明するとは限らない、というのは周知のことでしょう。
それを「事実だと認定する」のが裁判であるのですから、裁判制度を否定する他にこのような意見が成立する余地がありません。

「裁判員が被告に取調官のような質問を連発し、密室での取り調べが法廷で再現された」

従前から、裁判官は法廷で被告人質問として取り調べをしているわけで、個々の裁判員の質問がまずいというのなら、それについて具体的に指摘するしかないでしょう。
裁判官だから良くて、裁判員だからまずい、ということならそういう指摘をするべきでしょう。裁判員裁判を否定する根拠には全くならない意見だと思います。

おそらくは、「大衆によるリンチである」と言いたいのではないでしょうか?
であるのなら、「裁判員裁判は、選ばれた裁判官によらないのだから、大衆によるリンチだ」と明確に主張するべきだと思います。

「被害者の意見が裁判員に影響を与え、重罰化をもたらした」

これは、裁判員制度とどういう関係があるのですか?
被害者参加制度の問題ですよ。 まして、被害者参加制度はより重罰化することを間接的な目的にした制度ですから、結果が重罰化をもたらすのは当然であって、裁判員裁判とは関係ないでしょう。

というわけで、「何を主張しているのかさっぱり分からない」ことは代わりはないですが、何回も「分からない」と書いても進歩がありませんから、裁判員裁判反対運動の原理であろうことを推測してみます。

結論は「神を求めている」のだと考えます。

「司法権力が下す判決に市民がお墨付きを与える構造」

司法権力を認めつつ、市民はそれに触れてはならない。
触れてはならない権力とは、神の権力、神権と置き換えてもなんら違和感がないでしょう。
わたしは、司法権力をコントロールするのは市民の権利である、と考える者です。
だからこそ、司法への市民参加があるべきだとするのが、先進諸国の大勢であって裁判員制度がよいのか、陪審員制度にするべきなのか、という意見を戦わせるのは当然ですが、いずれにしろ裁判に市民が参加するのは、最終的には司法権力に市民がお墨付きを与えることそのものです。

司法権力は存在しないのですから、存在しないものに市民はお墨付きを与えてはならない、という意見であれば、まだ分かります。
しかしそれは、アナーキズムではないのでしょうか?

「裁判で真実が解明されるとは限らないが、市民が総出で真実と決めてしまう」

裁判とは、もともとそういうものですよ。
神の視点による真実に近づこうとすることは当然であっても、それはかなわないことである、という前提で成り立っているのが、近代の裁判制度です。
そして裁判では「事実認定」をするわけです。
これを「真実ではありませんから」とやっていたら、明らかに神学論争も同然の議論に陥ってしまいます。
どういう裁判像を考えるとこういう意見が出てくるのか?と考えた場合に「裁判とは神が決めるものであれば良い」ということなのかな?と思うのです。

結局、わたしには「裁判員制度はいらない!大運動」の主張は「神聖裁判」の要求以外には見えません。

ところが、日本ではしばしば「神のごときことを要求する」ことがあるように感じます。
その一つに「事故調査」があります。

事故調査において、刑事責任追及が優先されていますから、しばしば事故原因が隠されてしまうのですが、事故原因について詳細な情報を提供すると自分の刑事責任が重くなるというのでは、情報提供をするはずもないですよ。
これに対して「隠したから刑事責任」とやっていくわけですが、ここまで来ると事故原因の解明よりも刑事責任追及が主体になっています。

刑事責任追及が事故原因の解明には役立たない、というのはアメリカの航空機事故調査やボルボの自動車事故調査などの過程で明らかになっていることの一つです。日本がいまだに事故調査のシステムを確立できないのはなぜなのか?と考えてみますと、「事実認定は良くなくて、真実を見つけなければならない」に固執しているからではないでしょうか?

事故と対策を考えますと、「取りあえずの対策」でも許されるわけです。
そのための判断には「事実認定」が必要です。「事実認定で決めたから、対策はこうなる」という決定でよいのです。
これを「真実の追究」をやっていますと、そもそも時間が掛かりすぎて対策が遅れることもありますが、真実を追究する先は「こっちはまだ分からない部分だから」とドンドンと分からない方面に主眼が移ってしまいます。

「取りあえずの対策」とか言い出すと「それは真実に向き合っていない」などといった批判が出てきてしまいます。
分からないところに踏み込んでいきますから、分からないものの代表的なものである「個人の責任」に帰する意見は常に残ってしまって、けっかとして対策が「注意喚起」であったりします。

日本の中にある「神を畏る」という文化は美しいものだとは思いますが、社会で神を出し過ぎることの不具合は、第二次大戦での敗戦で学んだはずではないのでしょうか?
市民として、神に代わって責任を取る、という姿勢こそが必要なのではないのですか?

10月 3, 2009 at 10:06 午前 事故と社会, 裁判員裁判 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2009.09.14

裁判員裁判・傍聴人が反対騒動

サンケイ新聞より「【裁判員 千葉地裁】「こんなのただの見せ物だ」傍聴人騒ぐ

14日に千葉地裁で初めて行われた裁判員裁判で、裁判の終了間際、傍聴していた男が、「こんなのただの見せ物だ」などと大声を出して騒ぎ、地裁の職員によって法廷の外に連れ出される一幕があった。

騒動があったのは、強盗致傷の罪に問われた千葉市中央区の会社員(49)の裁判。

男は裁判の終了間際、突如大声を張り上げ「こんなの裁判でもなんでもない。ただの見せ物だ。廃止しろ」などと発言。

小坂敏幸裁判長の制止を無視して怒鳴り続けたため、退廷を命じられた。職員に連れ出される際にも「やめろよ」などと大声で抵抗した。

「廃止しろ」と叫んだというのは、裁判員裁判に反対の意思表明のようですね。

「こんなのただの見せ物だ」と言ったそうですが「その通りです」と反論されたらどうするつもりだったのでしょうか?

「最初の裁判員裁判」に裁判員裁判に反対する行動・事件についての報道をまとめましたが、わたしは反対している人たち(弁護士もいるのですが)が何を反対しているのか、さっぱり理解できません。

裁判員裁判と従来の裁判官だけの裁判を比較したときに、分かりやすいのは「大衆によるリンチではないのか?」という疑念でしょう。
しかし、裁判が元々は私的な復讐などから公的な処罰に移ったことが、スマートなリンチとも言えるわけで「罪と罰」のように個々に色々な事情があっても、社会は犯罪者を処罰することを変えません。

犯罪者という個人と社会という多数が衝突するのが裁判であるのですから、言葉を変えればリンチであって、それをどう正当化するのかが?法律によるルール化でしょう。

まして、裁判には公開の原則があり、特別な事情を除いて公開するべきだと社会は公開裁判を指示しているのですから、これも味方によれば「見せ物」です。

このように、裁判員裁判に反対している人たちの、意見の一部には明確に反論できるのですが、反論していくと最後にはなんで裁判員裁判に反対しているのか、分からなくなってしまいます。

今回もその例に漏れないのですが、杉並ゴミ戦争とか斎場建設反対運動などと同じ「迷惑感覚による反対」なのでしょうかねぇ?

9月 14, 2009 at 06:41 午後 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

裁判員裁判・罪名を争う

サンケイ新聞より「【裁判員 千葉地裁】罪名争う初のケース始まる 強盗致傷か窃盗+傷害か

罪名が争われる初のケースとなる裁判員裁判が14日午後、千葉地裁(小坂敏幸裁判長)で始まった。

女性の下着を奪い、捕まえようとした男性にけがを負わせたとして強盗致傷罪に問われた千葉市中央区の会社員(49)は事実関係は認めたものの、弁護側は「被告のやったことは強盗致傷罪ではない」と検察側が示した罪名に反論。窃盗と傷害罪にあたると主張した。

強盗致傷罪には最高で無期懲役があり、有期懲役のみの窃盗と傷害罪が適用された場合より重い量刑となる可能性が高い。

裁判員は強盗致傷罪に当たるか、専門的な判断を迫られることになる。どのような判断を下すかに注目が集まる。

被告は今年5月、千葉市内に住む女性宅のベランダに忍び込んで、下着など3点を奪い、乗用車で逃走しようとした。
その際、犯行を目撃し、被告を捕まえようとした男性=当時(33)=の左腕に数回かみつき、車を発進させて、男性に軽傷を負わせたとして起訴された。

検察側は冒頭陳述で、被告が下着を盗んだ後に、逮捕されないように暴行を加えたとして、強盗致傷罪にあたると主張。

これに対し、被告は事実関係については「間違いございません」と深く頭を下げたものの、「法律的なものは弁護士に任せる」と述べた。

弁護側は、男性が消防士で体力的に被告より秀でていた点、被告にかみつかれても、服をつかみ続けるなど状況が変わらなかった点などを上げ、「(強盗致傷罪を成立させるほどの)強い暴行には当たらない」と主張した。

いずれこういう事件が裁判員裁判に登場するだろうと思ってました。

ずっと前に書いた記事です。「裁判員制度・自白を考える」
要するに、日本の刑法では犯意が判決=刑罰=適用法令に影響するから、慣れている検察・裁判官・弁護士と裁判員で判断が同じにはならないのが問題だ、ということです。

今回の裁判では、犯意に近いところを裁判員は判断することになりますが、強盗致傷と窃盗+傷害では、判決がだいぶ変わる可能性がありますから、被告側も全力で争ってくるでしょう。

非常に興味深いです。

9月 14, 2009 at 04:57 午後 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.08.24

裁判員裁判とパワーポイント

奥村弁護士のブログより「法廷プレゼン研究チーム」

元記事は読売新聞の記事「法廷でPC 弁護士研究会検察「対抗」裁判員制度視野に

京都弁護士会所属の若手弁護士11人で作る「法廷プレゼン研究チーム」が、裁判員裁判の弁護に役立てようと、パワーポイントを使った弁護活動の研究を始めた。

地裁でのこれまでの模擬裁判では、検察側がパソコンを駆使し、裁判員役の市民から好評を得たことから、これに〈対抗〉することにした。

同チームは「わかりやすい立証で、被告の権利擁護という使命を全うしたい」と意気込んでいる。

中京区の京都弁護士会館で開かれた7月の研究会には弁護士約20人が参加し、同チームを支援するNPO法人「国際プレゼンテーション協会」(東京)の八幡紕芦史理事長が、タイトルの配置や色遣いなど、スクリーンに映すスライド資料の作成ポイントを解説。

続いて、弁護士3人が検事、弁護人役を務め、架空の傷害致死事件を題材にパワーポイントを使った冒頭陳述や最終弁論に挑戦した。

この後、参加者全員が意見を討論。この中では、弁護人がスクリーンを見ながら話したことについて、参加者から「自信がないような印象を裁判員に与えてしまう」との意見も出され、八幡理事長も「自分で作った資料を頭に入れ、逆に裁判員の反応を観察することが必要」と指摘した。

このほか参加者は、事件の経過表をどのタイミングでスクリーンに映すかや、機器が作動しなくなった際などの対策、スライド資料に合わせた手ぶり、身ぶりの使い方なども学んだ。

同チームはこうした研究会を定期的に開く予定で、10月には比叡山延暦寺(大津市)で東京の弁護士と合宿も実施。
リーダーの辻孝司弁護士は「検察庁は早期にパワーポイントを使いこなすようになった。弁護士も進化していかなければ」と話していた。

(2009年8月24日 読売新聞)

を取り上げているのですが、ちょっとどこに向いての意見なのかよく分かりません。
もうちょっと丁寧に説明しないと、誤解されてしまうように思います>奥村さん。

 罪を犯したからじゃなくて、弁護人のプレゼンが下手だと有罪になったり、重くなったりする感じですか?

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/kyoto/news/20090823-OYT8T00900.htm

「法廷でPC」弁護士研究会検察「対抗」裁判員制度視野に

 京都弁護士会所属の若手弁護士11人で作る「法廷プレゼン研究チーム」が、裁判員裁判の弁護に役立てようと、パワーポイントを使った弁護活動の研究を始めた。地裁でのこれまでの模擬裁判では、検察側がパソコンを駆使し、裁判員役の市民から好評を得たことから、これに〈対抗〉することにした。同チームは「わかりやすい立証で、被告の権利擁護という使命を全うしたい」と意気込んでいる。

変わったなぁ

この「変わったなぁ」がどこに掛かっているのか?分かりにくい。

最初は、

  1. 罪を犯したからじゃなくて、弁護人のプレゼンが下手だと有罪になったり、重くなったりする感じですか?
  2. 変わったなぁ

と受け取ったのですが、それだと罪を犯したことについて、神の視点で明確であるのが普通だ、ということになってしまいます。
罪は明確なのに、プレゼンで判決が変わる、と受け取れるからです。

こんな意見を奥村さんが持っている、とはちょっと思えないので、新聞記事との関係を考えてみると、

この中では、弁護人がスクリーンを見ながら話したことについて、参加者から「自信がないような印象を裁判員に与えてしまう」との意見も出され、八幡理事長も「自分で作った資料を頭に入れ、逆に裁判員の反応を観察することが必要」と指摘した。

このほか参加者は、事件の経過表をどのタイミングでスクリーンに映すかや、機器が作動しなくなった際などの対策、スライド資料に合わせた手ぶり、身ぶりの使い方なども学んだ。

同チームはこうした研究会を定期的に開く予定で、10月には比叡山延暦寺(大津市)で東京の弁護士と合宿も実施。

リーダーの辻孝司弁護士は「検察庁は早期にパワーポイントを使いこなすようになった。弁護士も進化していかなければ」と話していた。

このあたりのことを奥村さんは問題にしたのではないだろうか?

確かに、ここまでパワーポイントごときに振り回されるようでは、問題でしょう。

というよりも、弁護活動においてパワーポイントなど使わないでも、証拠を出す順序や尋問する順序などで、法廷で印象を与える、つまりプレゼンテーション能力は必要であり、判決もそれによって変わる事があり、弁護士の上手下手として評価されています。

そこにパワーポイントが乗っただけの話であって、パワーポイントだけで判決の結果が左右するわけがないし、まして機器が故障したから負けました、正常に作動していれば勝ってました、なんてのは言い訳として成立するわけがない。

ところが、新聞記事では「パワーポイントで判決が決まる」のように読めるし、この弁護士の研究会がそのように考えているかもしれない、と取れるのだから、奥村さんならずとも「パワーポイントごときで、それほどの変化はないだろう」と突っ込みを入れたくなりますね。

8月 24, 2009 at 10:06 午前 裁判員裁判 | | コメント (1) | トラックバック (0)

2009.08.07

朝日新聞は裁判員裁判に反対なのだろな

朝日新聞、読売新聞、サンケイ新聞と並べてみると、これが裁判員裁判報道で見事に各社の姿勢が見えました。

サンケイ新聞は以前から「法廷ライブ」と題して、新聞紙面には載せることが出来ない膨大な量のリポートをWebに公開しています。
当然、記事ですから個々の出来事の取り上げ方など新聞社としての姿勢もある程度見えてきます。

サンケイ新聞に比べると、他の2紙は腰が引けているように感じますが、朝日新聞は何を考えているのでしょうか?

3紙ともWeb上に「サイバ員裁判特集ページ」の作っていますが、朝日新聞の特集は特集というほどのものではない。
そもそも記事の量が他の2紙に比べて極めて少ない。

すごく不思議なのは、初めての裁判員裁判という大事件に対して普通の裁判記事と全く同等の扱いで書いていることです。

ここまで極端な方針は変だと思いますよ。

8月 7, 2009 at 09:09 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

初めての裁判員裁判を終わって

サンケイ新聞より「裁判所、検察、弁護側…判決に安堵や不満

初の裁判員裁判を終え、かかわった裁判所、検察、弁護側は「充実した」「従来の裁判官の思考過程と同じ」などと感想を述べた。

裁判員と一緒に判決を出した秋葉康弘裁判長は「裁判員・補充裁判員の方々には、熱心に審理や評議に参加いただき、大変感謝しています。裁判官と裁判員とが一つになって裁判を行うという裁判員制度の目的にかなった、充実した裁判であったと考えています」とコメントを発表した。

東京地検の谷川恒太次席検事は「検察の主張、立証に裁判員の理解が得られた。初めての裁判員裁判を円滑に進行できた」と安堵(あんど)の表情。特別公判部長の青沼隆之検事は「よく討議された判決で、大変しっかりした内容。納得でき、感銘を受けた」と評価した。

一方、藤井勝吉被告の弁護人、伊達俊二弁護士ら弁護側が会見し、「判決に被告の言い分が認定されず不満」とした。

藤井被告も「(裁判員は)若い人が多かった。自分と同年代であれば、近隣住民との問題について少しは想像してもらえたのではないか」と語ったという。

伊達弁護士は「判決は従来の裁判官の思考過程と同じだと思った」と振り返った。

この弁護側の見解にはというよりも報道全体を通じて、裁判員裁判と従前の裁判と何が違うのか?となぜ違うのかについての解説記事がほぼ無いことに注目しています。

伊達弁護士は「判決は従来の裁判官の思考過程と同じだと思った」と振り返った。

藤井被告も「(裁判員は)若い人が多かった。自分と同年代であれば、近隣住民との問題について少しは想像してもらえたのではないか」と語ったという。

一方、藤井勝吉被告の弁護人、伊達俊二弁護士ら弁護側が会見し、「判決に被告の言い分が認定されず不満」とした。

というのだが、わたしには簡単に言えば「弁護方針失敗」の結果だと思う。

「裁判員制度・毎日新聞社説は?」に書いた通り日本の刑法では「犯意」によって罪重さから、罰状まで変わってしまいます。

弁護側は近隣トラブルの結果であると主張し、検察側は確信的な殺意の元の犯行、という主張でした。

この二つの主張をどちらを犯意として取り上げるのか?という観点で、検察側は実際に凶器を突き出して「ナイフを突きつけられたら(被害者は)どういう行動をしますか?」と述べたとのことです。
普通に考えると「逃げる」とか「後ずさりする」となるでしょう。

これに対して、被告の主張は「刺せるものなら刺してみろ」と反論した、というものでした。
そして正面から心臓の付近を刺しています。

この二つのどちらを真実であると見るのか?は、これは検察側のシナリオになるでしょう。

また、そもそも近隣トラブルがあったというのが法廷で争いの中核になった理由は、警察での被害者の息子が述べた調書に「母親は気が強くて・・・」という内容があったのですが、これが裁判員の質問で「調書に署名したことも覚えていない」と否定されてしまいました。

これらの点を考えると、近隣トラブルの結果であるとの主張で通用にすると考えた弁護側が従前の手法にとらわれた古い手法であり、警察での調書を裁判員にひっくり返されるとというのは予想外であったからの失敗でありましょう。

その上、救急車を呼ばない理由を「他の人が呼ぶと思った」「包丁では深く傷つけると思った」などと引き出して、総合的に被告の主張の信用性は低いとされたわけです。

ここで問題なのは、裁判員の素朴な疑問で裁判の方向が偏るのはリンチに繋がるのではないのか?という意見ですが、この点について論評している報道や解説記事はほぼありません。

わたしは、「裁判ではだれも神の視点を持ち得ない」という点に注意して考えるべきだと強く思います。
一言でいえば「裁判でも誤った結論はあり得る」です。
(それゆえに、わたしは死刑には反対です。ただし法律に従うという点で、死刑が刑罰として存在することは是認しています)

裁判は神の視点はないのだけれども、人の視点として蓋然性の高いものを選択するものであるから、社会とって一番良い裁判は全国民の参加による多数決でありましょう。
しかしながら、これではリンチでもあります。
誤解を恐れずにいえば、刑事裁判は社会が個人を罰するのだから、どこまで行っても「ある種のリンチ」であることに代わりは無いと考えています。

そう考えると、今回の判決が重めに出たのは、被告に対する素朴な反発が裁判員の中にあったの、逆の見方をすると弁護側が被告が社会的に強く非難されるであろうことを計算して、裁判員を説得する弁護に失敗した、と見るべきだと思います。

裁判員裁判の本質は市民感覚を判決に反映させることですから、判決のブレが大きくなって当然です。
裁判員裁判に反対あるいは批判する意見の中核は判決のブレを認めたくない、というところは大きいと思います。
しかしながら、それは「裁判官は神であれ」と言っているのに等しいわけで、それ自体があり得ない。
このために「市民感覚から遊離した判決」とか「裁判官の世間知らず」といった批判が2~30年続いていました。
裁判員裁判でも、陪審員裁判でも、あるいは裁判官を査定するような手法を採ったとしても、上記の批判の結果は「よりブレの大きな判決」にしかなりません。

一方で「市民感覚の判決」を求め、他方で「神の判断」を求めること自体が矛盾しています。
市民としてより真剣に社会と向き合うことが必須の時代になったことをよく示している考えます。

8月 7, 2009 at 08:53 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.08.06

裁判員裁判についてのまとめ記事

サンケイ新聞より「「開かれた法廷」関心…選任、立証に課題も

東京地裁で開かれている全国初の裁判員裁判は5日、法廷での審理を終えた。裁判員を選ぶ手続き、検察、弁護側双方の立証・主張の手法など、初めての試みばかりの3日間。
新たな工夫で、法廷はこれまでより国民に開かれたものになった一方、問題点も浮かび上がった。(加納裕子)

法廷

「形見のナイフをなぜ持ち出したのか、という質問にはハッとした。法律家からは出ない」。

弁護側がこう評価するように、裁判員の活発な質問の背景には立証・主張の工夫があった。

検察側は主張の際、プレゼンテーションソフトで要点を大型モニターに表示。死因説明に3D(3次元)のCG(コンピューターグラフィックス)を活用したビジュアル立証は、法廷の変化を強く印象づけた。

「殺意」などの用語はかみ砕き、「腹部」を「おなか」と改めるなど、細部にもこだわった。
弁護側も紙を持たずに、裁判員に語りかけるような主張に努めた。専門家同士の応酬の場だった法廷は、格段に分かりやすくなった。

また、検察官は遺体の映像を示す際、「大型モニターを切ってください」と告げ、裁判官と裁判員だけに示し、「目を背けたくなると思いますが、重要な証拠です」と配慮した。

今年1月、東京都江東区の女性バラバラ殺人事件の公判で、検察側は遺体の一部などの映像を傍聴席にも映し出した。そのとき、遺族が号泣して退廷したことの“反省”が生かされた。

ただ、「どこの地検もCGなどを使って立証できるわけではない」(検察幹部)ように、「分かりやすさ」に“地域格差”が生まれる可能性もある。
「ビジュアル立証は目立つが、記憶に残らない」(検察関係者)という懸念も根強い。

今回の裁判では、証言や主張のメモを取る裁判員の姿も目立った。意識の高さとも言えるが、
最高裁関係者は「法廷でのやり取りは映像で記録されている。メモを取るより、やり取りや表情に注目してほしい」と呼びかける。

選任

裁判員を選ぶ手続きへの出席を求められた候補者は49人中47人が出席した。

高い参加意識を示す一方、選ばれた9人の裁判員と補充裁判員以外の38人は“無駄足”。裁判員に選ばれなかった候補者は「手続きに参加しただけでも裁判が身近に思えた」「選ばれるのかどうか、来ないとわからず困った」などと語った。

しかし、呼び出す人数を絞りすぎると、出席率が下がった場合、裁判員を確保できなくなる。呼び出し数の見極めは難しい。

呼び出し状を受け取った候補者のうち、今回はおおむね4人に1人の辞退が認められた。

最高裁は「国民の負担に配慮して、柔軟に認める」との姿勢だ。しかし、辞退の基準を下げると、仕事を持たない人など時間にゆとりのある人の参加しか見込めなくなってしまう。幅広い国民のさまざまな経験や意見を反映するという制度の趣旨からは遠ざかってしまう可能性もある。

当初選ばれた裁判員は女性5人、男性1人。関係者は驚きの声をあげた。

弁護人によると、藤井勝吉被告は被害者と同性の裁判員が多いことに不安を感じていたという。弁護人は「被害者は女性だが、男性でも『自分の妻が同じ目にあったら』と考えるかもしれない」と量刑に直結しないとの見方だが、対象が性犯罪の場合、性別が影響する可能性もある。

候補者の性別や年齢は公表されておらず、評議で男女の裁判員が述べた意見も守秘義務から公にはならない。男女比や職業、年齢などの偏りが与える影響は、公平な裁判との関係で論議を呼びそうだが、検証は困難な状況だ。

「形見のナイフをなぜ持ち出したのか、という質問にはハッとした。法律家からは出ない」。

弁護側がこのようにコメントしたそうですが、これはかなり重要なことでした。
一年以上前に書いた「高校生模擬裁判選手権2009」にこんな一節があります。

まるでミステリーのようなことなのですが、物語ではないので読者に相当する観客は「神の視点」が与えられていません。

わたしはたびたび傍聴もしているし、法学には以前から興味を持っているの者ですが、それでも実際の法廷での立証などでは傍聴人として無責任さも加わってか、法廷に示された内容が全てであるかのように思ってしまうところがあります。
つまり法廷は神の視点を持っていて見逃していることはない、と思ってしまうわけです。

しかし、もっと素朴なところで疑問を吹っ飛ばして裁判が進行しているところもあるのは当然で、弁護士はそれらを立証の順序など、戦術的に利用したりもします。
こういうことが行きすぎると「社会の平均的な判断とかけ離れた判決」といったことになっていくのでしょう。

裁判への士民の参加を、傍聴の延長であると考えてみると分かりやすいと思います。

現在、裁判所内では撮影と録音は禁止されていますが、以前はノートを取ることも禁止されていました。
最近ではノートPCで記録している人もいます。

わたしも加わった中西準子先生の「環境ホルモン訴訟事件」では、意図的に「ネット傍聴」というを試みました。
傍聴者がネット上に法廷を再現してしまうことです。この事によって、傍聴人の意識は高まり何年にも及ぶ裁判でも常にある程度の以上の傍聴人が来たし、裁判長も相当に緊張して審理を進めたと実感しました。

そして、ついに裁判員制度です。
個々の法廷(裁判官)だけではなくて、法曹界全体が緊張して裁判について考えることは、決して悪いことではないでしょう。

8月 6, 2009 at 09:15 午前 裁判員裁判 | | コメント (1) | トラックバック (0)

2009.08.04

裁判員裁判2日目

今日(2009/08/04)は初めての裁判員裁判2日目です。
サンケイ新聞はだいぶ以前から注目が集まる裁判を「法廷ライブ」と題して、ネット上にリアルタイム(1時間遅れ程度)で報告を挙げていました。
当然、一回の裁判が数時間以上に及ぶ場合には、報告が10本を越えるのですが、今回の裁判員裁判2日目では10時から17時までの公判廷の報告は全部で25本になりました。

その中でわたしが注目し、他の報道機関も取り上げていたのが「【裁判員聴く(15)】「4番さん、どうぞ」「えーと…」女性裁判員が初質問(14:00~14:15)」です。

10分間の休廷の後、再び法廷に姿を現した3人の裁判官と6人の裁判員。全員が席に座ると、秋葉康弘裁判長は左の方に顔を向け、正面向かって右から3番目の場所に座っている女性の裁判員に話しかけた

裁判長「4番さん、どうぞ」

秋葉裁判長に促された女性裁判員。意を決したように、証人席に座る被害者の文春子さんの長男に向けて口を開いた

女性裁判員「えーと、先ほど(母親の)人物像の説明で、調書と食い違うところがあってひっかかるのですが、どのように確認しましたか」
裁判長「警察で調書を作ったときの調書の内容の確認方法を聞かれているんですが」

全国初の裁判員裁判となった今公判で、初めて口を開いた裁判員。声は小さいながらも、はっきりとした口調で質問を終えると、首を軽く右に傾けながら、証人の長男が答えるのを待った。他の裁判員も長男の方を見つめ、答えを待っている

長男「正直、覚えていないんです。ぼーっとしていて、調書を読んだらサインしていました」
女性裁判員「書いたのを自分で読んでサインしているんですか」
長男「読んだのも覚えていないんです。正直、(事件当日の)午後から、まるっきり覚えていないんです」

長男に質問を終えた女性裁判員は、秋葉裁判長と顔を見合わせ、軽くうなずく。そして長男の方へ向き直った

女性裁判員「はい、ありがとうございました」

軽く頭を下げながら長男に礼を述べた女性裁判員。次に隣に座る男性裁判官が質問を始めたが、女性裁判員はそのまま下を向くと、手元を動かした。メモを取っているようだ

文さんに、スクーターの止め方を注意したかについて確認した男性裁判官に続き、今度は女性裁判官が質問する

裁判官「犯人が藤井被告と知ったのはいつですか」
長男「女子医大で警察官から写真を見せられ、『この人知っている』といわれ、後できいたら藤井でした」
裁判官「知った時は、どんな気持ちでした?」
長男「何も考えつかなかったです、正直」
裁判官「特に犯人への気持ちは?」
長男「そういうのより、『おふくろ、大丈夫かな』と。そんなの(犯人への気持ち)は二の次だと思いました」
裁判官「『被告のいっていることはデタラメだ』と言いますが、どこがデタラメなのですか?」
長男「おれから言わせれば、全部がデタラメ」
裁判官「その理由はなんですか」
長男「うちのおふくろは、『おれ』とか『やるならやってみろ』とか言わないし、言ったこともないです。そういうのを普通に話している藤井は、これだけのことをやったんだという自己嫌悪じゃないかと」

女性裁判官が質問を終えると、秋葉裁判長は、左右を見回した

裁判長「じゃあ、いいですか」

軽くうなずく6人の裁判員。裁判長は、長男に「終わりました」と述べ、証人尋問を終えた

続いて検察側を向く秋葉裁判長

裁判長「次に証拠番号16番について調べたいと思います。モニターを付けてください」

証拠番号16番は、被害者、文春子さんの母親の供述調書だ。女性検察官が立ち上がり、調書を読み上げる

検察官「私は小島千枝こと文春子の母親です。この子のことを『姉ちゃん』と呼んでいましたので、『姉ちゃん』と話します」

調書によると、文さんは5人兄弟の長女だった。親孝行の優しい子で、実家に帰ると農業の手伝いや弟、妹の世話をしていたという

検察官「親孝行だけでなく、親代わりの頼れる存在でした」

裁判員らは、女性検察官が読み上げる被害者の母親の調書に聞き入っている

検察官「姉ちゃんは女手1つで子供を育て、しっかりして気も強いところがありました。その一方で、情にもろいところもありました。私は着る物や履物をよく姉ちゃんにもらっていました。姉ちゃんはいつまでも私を支えてくれると思っていました。けれど藤井(被告)に殺されてしまった」

母親の犯行当日の心境について読み上げを始める女性検察官。裁判員はみんな伏し目がちで聞き入る

検察官「平成21年5月1日は、私は姉ちゃんに病院に連れて行ってもらう予定でしたが、その前に藤井に殺された。どうして姉ちゃんは先のない私より先に命を取られてしまったのですか。生きる支えを失って悔しくて仕方がないです」

女性検察官は母親の訴えの読み上げを続けるが、藤井被告は目を閉じ口を結んだままだ

検察官「私には霊感があります。姉ちゃんはまだ家の中にいるが、私が触ろうとすると消えてしまうのです」

裁判員のなかには顔を悲しげに曇らせる者も

女性検察官は最後に母親の処罰感情について述べ始める

検察官「藤井は前からとんでもないやつで有名でした。命を取ってもらいたい。あの野郎の命を取って私も死にたい。死刑にしないと浮かばれない」

感情を込め読み上げた女性検察官は「以上です」と締めくくった

裁判長は「それではここで休廷します」と述べ、休廷を宣言した

この記事の中で、女性裁判員が被害者の長男に対して法廷での証言と警察の調書との違いを質問して、長男が「警察の調書には署名はしたが、それ自体も覚えていない」との証言を引き出したことです。

この点は、今までの裁判でも何回も問題になっていた点ですが、多くの場合「調書主義」のために調書と本人の証言が矛盾する場合、調書の方を真実と判断する場合が多々ありました。
そのために「なぜ、調書と証言が食い違うのか」自体が問題になることは非常に少なかった。
痴漢えん罪などでは良く言われていた問題です。

非常に印象に残る記事だと思います。

8月 4, 2009 at 10:30 午後 裁判員裁判 | | コメント (3) | トラックバック (1)

2009.08.03

最初の裁判員裁判

いよいよ裁判員裁判が始まりました。
わたしは以前から何度も書いている通り裁判員裁判に賛成する立場です。
ただし、以前は「無条件で賛成」、「まことに結構」であったのですが、現在は「色々と問題があって難しい」という意見に変わっています。
しかし、裁判員裁判自体には賛成であり、もちろん反対はしません。

そこで、裁判員裁判に反対の意見を集めてみました。

時事ドットコムより「司法という名のリンチ ジャーナリストら反対の声

初の裁判員裁判を控え、市民団体「裁判員制度はいらない!大運動」は3日午前、東京都千代田区の弁護士会館で記者会見を行い、「強行しようとしていることに強く抗議する」などとする声明を朗読、改めて実施に反対の声を上げた。

呼び掛け人でジャーナリストの斎藤貴男さんは、

  • 裁判員裁判について「司法という名のリンチになるのではないか」と懸念。
  • これまでの裁判が真実の究明ではなく、国家の意思を示すために行われてきたと指摘し、
  • 「裁判の位置づけを変えず、市民を動員してもそれはリンチでしかない」と批判した。
(2009/08 /03-13:22)

朝日新聞より「裁判員制度、反対派はビラ配り 東京地裁前

初めての裁判員裁判が開かれる東京地裁の前には、裁判員制度に反対する団体も集まり、ビラを配った。呼び出された裁判員候補者が集まった時間とも重なり、取材する報道陣などでごった返した。

弁護士らで作る「裁判員制度はいらない!大運動」は「制度を廃止しよう」というビラを用意。午前9時ごろから、地下鉄霞ケ関駅から出てくる人たちに配った。

呼びかけ人の一人の高山俊吉弁護士は
「裁判員制度は、刑事裁判の原則から大きくかけ離れ違憲だ」と訴えた。

一方、冤罪事件の支援などをしている「日本国民救援会」も同じころから、裁判員候補者たちに「冤罪をふせぐことが大事だ」と訴え、「無罪推定の原則」や「疑わしきは被告人の利益に」などの説明を記したビラを配った。

サンケイ新聞より「【裁判員初公判(12)完】注目の初質問なし、不規則発言の中で初日の幕閉じる

《証人として出廷した近所の女性に対する弁護側の質問が終了した。検察側は再度立ち上がる。弁護側が引き出した調書に反する女性の証言について、もう一度問いただしたいようだ》

検察官「1点だけ。あなたは『ケンカのような声を聞いた』といいますが、そのときテレビはついてましたか」
近所の女性「ついてません」
検察官「出かける直前は?」
近所の女性「ついていませんでした」
検察官「いま『ぶっ殺す』という声を聞いた後、女の人が何か言っていたかについて『今の記憶では女性の声を聞いていなかった』と証言していましたが、聞いた記憶はありませんか」
近所の女性「ありません」
検察官「以上です」

《検察側の質問が終了すると、秋葉康弘裁判長が声を上げた》

裁判長「ちょっと打ち合わせをしますので、裁判員は退廷します」

《証人尋問では、検察側・弁護側双方の質問が終わった後、裁判官と裁判員も証人に質問をすることができる。その打ち合わせだろうか。裁判長を先頭に、6人の裁判員、3人の補充裁判員、2人の裁判官が退廷した。証言席に1人残され、手持ちぶさたな様子でイスに座っている証人の女性に、検察官はなにやら声をかけている》

《5分ほど経過した後、やはり裁判長を先頭に、裁判員、補充裁判員、裁判官の順で入廷し、公判が再開された。すると検察官が「1つ補充質問をさせてほしい」と言って立ち上がった》

検察官「先ほど、窓を閉めてから10分後ぐらいに警察官が来たと言っていましたが、なにか記録はありますか」
近所の女性「写メールで撮りました」

《検察官は「携帯の写真ですね」と確認した後、「今見せてほしい」と要求。証人は、イスの後ろに置いていたカバンの中から携帯を出し、なにやら操作した》

近所の女性「12時8分です」

《携帯で写真を写した時間を確認して検察官の質問は終了。いよいよ、裁判員が質問を始めるのか。6人の裁判員は、いずれも証人を見つめている》

《しかし、裁判長は意外な言葉を口にする》

裁判長「では、終わります。ありがとうございました」

《証人の女性は裁判長に促されて退廷した。どうやら、証人に対する裁判官、裁判員の質問はないようだ》

裁判長「本日の審理はこれで終わりにしたいと思います。明日は予定通り10時に開廷します」

《裁判員が退廷しようと立ち上がったとき、突然傍聴席の後方から、白いシャツを着た女性の大きな声が響いた》

女性「公判前整理手続きで裁判の筋書きが決まっているのになんで裁判員裁判をやる必要があるんですか!」
「労働者人民を裁く裁判員制度に反対します。
裁判員の人たちは人を裁くことを拒否してください!

《不規則発言にざわつく法廷内。裁判員らもあぜんとした表情で女性を見つめる》

裁判長「傍聴席から傍聴人を退廷させてください」

裁判所の職員「不規則発言で退廷ですか」

裁判長「いえ、全員を退廷させてください」

女性「裁判員制度に反対します!」

《騒然とした雰囲気のなか、裁判官らに促されて裁判員は退廷。午後4時40分、日本初となる裁判員裁判は、こうして初日の幕を閉じた》

=(完)

赤で示したところが、反対意見なのであるが、わたしには反対派の意見に根拠というか原理がさっぱり分からない。

今までの裁判に問題があるから、変更することに反対、というのは理解しがたい。

裁判員裁判ではこんな問題があるから反対、というのであればまだ理解できるのだが、そういう意見は積極的に反対運動をしている人たちの中からは強く聞こえては来ない。
これでは「裁判員らもあぜんとした表情で女性を見つめる」というのも当然だ。

8月 3, 2009 at 09:26 午後 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.07.30

アーチャリー vs サイゾー裁判の判決

一昨日(2009年7月28日)東京地裁で、原告オウム松本智津夫の三女(アーチャリー)被告株式会社インフォバーン(サイゾー)の名誉毀損裁判の判決がありました。

判決

  1. 原告の請求をいずれも棄却する。
  2. 訴訟費用は原告の負担とする。

でした。

サイゾー2006年12月号で「死刑確定は麻原神格化への序章!?”オウム事件”に今なお残された謎」と題して、編集部が宗教学者の島田裕巳氏のインタビュー記事を載せました。
島田裕巳氏はオウム事件当時に、マスコミに宗教学者としてオウム真理教についての説明などをしたために「御用学者」などと批判や中傷を受けていました。

オウム真理教の記録(ウィキペディアより)

これで分かる通り、2006年12月頃は上祐史浩らが2007年の独立向けて活動していた時期で、上祐派と主流派の争いがあるといった報道が続いた時期でした。

2006年3月27日に東京高等裁判所は、弁護側が控訴趣意書を提出しないことを理由に、控訴棄却の決定をして松本智津夫の死刑が確定しています。

このような背景で、サイゾーは島田氏にインタピューした形の記事を発表しました。

サイゾーこの死刑確定の持つ意味と、今後予想される教団の動向について聞かせてください。
島田今回の死刑確定は、麻原とその周辺(アーレフ内でも、上祐派ではなく、
麻原の三女・松本○○を中心とする主流派)が自ら希望したような印象があります。

こんな調子で記事は始まっています。
松本○○と書いたところには実名が入っています。

その意味では、典型的な報道記事による名誉毀損事件ですから、弁護側としては公共性、公益性、相当性について争うことになります。

原告側の請求は

  1. 損害賠償、500万円
  2. 訂正謝罪広告の掲載

でした。争点は以下の8点であるとなりました。

  1. 名誉毀損について
    1. 本件事件は原告の名誉を毀損するか否か
    2. 本件事件の公共性、公益目的および真実性の有無
    3. 被告が本件記事を真実と信じたことの相当性の有無
    4. 本件記事の公正な論評の法理による違法性阻却の有無
  2. プライバシー侵害について
    1. 本件記事における原告の実名の記載は原告のプライバシーを侵害するか否か。
    2. 本件記事のプライバシー侵害についての違法性阻却の有無
  3. 損害額
  4. 謝罪広告の必要性

原告側は、「1. 名誉毀損についての a. 本事件は原告の名誉を毀損するか否か」について

  1. 実名を記載する理由も必要性も存在しないのにもかかわらず、原告の実名を記載したことにより、社会による麻原および教団に対する絶対的な否定的評価に伴って、原告の社会的評価が低下する。
     
  2. 「松本○○(実名)を中心とする主流派」という表現によって、松本○○(実名)を中心とする主流派など存在しないにもかかわらず、原告が教団の主流派であり、派閥活動、教団活動を行っているとの原告個人についての虚偽の事実を適時したことにより、原告の社会的評価が低下する。

と主張しています。
これに対して裁判所は

  1. 本件記事の全体の構成、本件問題部分の前後の文脈および本件問題部分の表現からすれば、一般の読者は、本件記事について・・・中略・・・という解釈が成立しうるという島田の見解が紹介されているものと理解するものと認められる。
     
  2. 本件問題部分にある「松本○○(実名)を中心とする主流派」との表現は、原告が教団における主流派の中心人物であるとの事実を摘示しているものといえる。
    しかしながら、上記 1 (注 事実認定) で認定したとおり、オウム真理教事件の後には、麻原の三女である原告が教団運営の中心となっていることが公安調査庁によって公表され、また、原告が教団における麻原の後継者であることや教団において重要な地位にあることを前提として、原告と教団信者との関わりを含む原告の動向が頻繁に報道されていたことからすれば、一般の読者は、本件記事掲載当時、原告は、麻原の三女として、教団において重要な地位にあることを前提の知識として有していたというべきである。

(中略)

このように、「松本○○(実名)を中心とする主流派」との表現は、これまで公安調査庁やマスコミによって公表ないし報道されてきた事実を簡潔にまとめたものにすぎず、その内容は、本件記事が掲載された当時において、一般の読者がすでに有していた知識の域を出るものではない上、本件記事に占める割合は、量的にも質的にもさしたるものではないことに照らすと、本件記事が、原告の社会的評価をそれ以前に比較して低下させるものであると認めることはできない。

として、原告の主張を一蹴しています。
次にプライバシー侵害についての、原告の主張は

原告は、マスコミの報道において、「麻原三女」「麻原の三女」「麻原被告三女」「アーチャリー」などと呼ばれており、本件記事が掲載されるまで、マスコミの報道において、原告の実名が報道されたことはなかったところ、本件記事は、原告の実名を記載した上で、原告が、教団の派閥である主流派を率いて、教団を支配していると記載するものである。
原告の実名は、それ自体単純な個人識別情報であるものの、社会から全体的に否定的な評価を受けている教団の主流派の中心人物として実名記載されたことにかんがみれば、一般人の感受性を基準として判断すると、公開されることを欲しない私生活の事実に該当し、かつ、一般の人には知られていない事項というべきである。
したがって、本件記事における実名表記は、原告のプライバシーを侵害するものである。

と主張しています。
これに対して裁判所は

(前略)個人の氏名が社会的に否定的な評価を受ける事柄と結びついて公表されることは、当該個人にとって心の平穏を害されることになるから、一般人の感受性を基準にして判断した場合であっても、当該個人の立場に立てば、上記のような公開を欲しないのが一般的であると考えられる。その意味で、本家意気地において、原告が社会的に否定的な評価を受けている教団の主流派の中心人物として実名を公表されることについては、一般人の感受性を基準にして判断した場合に、原告の立場に立てば、上記のような公開を欲しないのが一般的であると考えられる。
しかしながら上記1(事実認定)のとおり、原告の実名については、平成9年における参議院予算委員会における公安調査庁長官の答弁や、平成12年度に公安調査庁が発表した「内外情勢の回顧と展望」および同庁が開設するホームページにおいて、すでに明らかにされているところである。このように原告の実名が公安調査庁によって社会的に公開されていることからすれば、本件記事掲載の時点において、原告の実名は、一般人に知られていないものとは認められないというべきである。
(中略)
以上の事情を総合考慮すれば、本件においては、原告の実名を公表されない法的利益がこれを公表する理由に優越するとまではいうことができないと解すべきであるから、原告のプライバシー侵害により不法行為は成立しないというべきである。

結論として、原告の請求を棄却して、被告のインフォバーン(サイゾー)の勝訴となりました。

個人的には、記事中に実名を出すことにどれほどの価値があるのか、よく分からないので情報発信側として、そこまでのリスクを冒す価値のあることなのかな?とは今も感じます。

一方、判決文を読んでみると、この判決は「個々の事情で判断する」といった色彩が極めて強くて、実名報道をめぐるどのような名誉毀損裁判でも踏襲される定型的な判決ではない、といえます。

したがって、控訴があれば別の判決が出てくる可能性はあるでしょう。

しかしながら、このようなデリケートな問題で、この判決を得たことは情報発信をする者にとっては一つのマイルストーンを与えられたと言えますから、その意味では偉大な判決の一つでしょう。

酔うぞ拝


オウム真理教の記録(ウィキペディアより)

1984年2月14日創設
1987年2月24日ダライ・ラマ14世とインドで会談
1988年7月6日ダライ・ラマ14世とインドで会談
 9月22日富士山総本部に来ていた在家信者が死亡(在家信者死亡事件)
1989年2月10日男性信者殺害事件発生。
 8月25日宗教法人化。
 11月4日坂本堤弁護士一家殺害
1990年2月18日政治団体「真理党」を結成、第39回衆議院議員総選挙に集団立候補、全員落選。
 5月熊本県波野村で国土利用計画法違反事件。
1991年9月『朝まで生テレビ!』に出演。
 12月『ビートたけしのTVタックル』に出演。
1993年6月6日男性信徒が逆さ吊り修行により死亡
 11月山梨県上九一色村の第7サティアンにおいて、サリンプラントを建設を開始
1994年1月30日薬剤師リンチ殺人事件が発生。
 5月9日滝本弁護士サリン襲撃事件。
 6月AK-74をモデルとした突撃銃を密造
 6月27日松本サリン事件。
 7月10日オウム真理教男性現役信者リンチ殺人事件発生。
 7月15日50℃の温熱療法修行による男性信者死亡事件。
 9月20日江川紹子ホスゲン襲撃事件。
 12月2日駐車場経営者VX襲撃事件。
 12月12日会社員VX殺害事件。
1995年1月4日「オウム真理教被害者の会」永岡弘行会長をVXガスで襲撃
 2月28日目黒公証人役場事務長拉致監禁致死事件で男性1人が死亡。
 3月20日地下鉄サリン事件。
 5月16日麻原彰晃こと松本智津夫を山梨県上九一色村の教団施設で逮捕。
 10月30日東京地裁が宗教法人法に基づく解散命令を決定(同年12月確定)。
 12月国会で宗教法人法改正法が成立。
1997年1月31日公安審査委員会、オウム真理教への破壊活動防止法の適用を棄却。
1999年4月東京都内の繁華街で”復活”をアピール[8]。
 12月3日団体規制法と破産特別法が成立。
2000年2月1日団体規制法に基づく公安調査庁長官の観察処分(3年間)が効力発生。
 2月4日「宗教団体・アレフ」として再編。
2002年1月上祐史浩が教団代表に就任。麻原彰晃との決別を表明。
2003年1月23日団体規制法に基づく観察処分の期間更新(2月1日から3年)決定。
 10月上祐史浩は古参信者の反発により、教団運営から退き、自室にこもる。
2006年3月27日東京高等裁判所は、弁護側の控訴を棄却。松本智津夫の死刑確定
 4月30日TBSの「報道特集」は、上祐史浩が新教団立ち上げ計画を明言していた事を報道。
 9月上祐史浩らは習志野市から、世田谷区南烏山移転。
2007年3月8日上祐史浩らはアーレフを脱退し、松本死刑囚の教義を完全排除した新団体を設立すると発表。
 2月宗教団体・アーレフ」と改称。
 5月7日上祐史浩らはアーレフ(旧・オウム真理教)から独立してひかりの輪を設立
2008年5月20日「Aleph」(アレフ)と改称。

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7月 30, 2009 at 10:26 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2009.07.26

高校生模擬裁判選手権2009

日本弁護士連合会のHPより「第3回「高校生模擬裁判選手権」を開催します!!

日本弁護士連合会は、2009年8月8日(土)に、第3回高校生模擬裁判選手権を東京、大阪、福岡の3箇所で同日開催します。

この大会は、1つの事件を素材に、法律実務家の支援を受けながら、参加各校が検察チーム・弁護チームを組織し、高校生自身の発想で争点を見つけ出し、整理し、模擬法廷で証人尋問・被告人質問を行います。

刑事法廷で要求される最低限のルールに則り、参加各校の生徒が検察側と弁護側に分かれ模擬裁判を行う経験を通じて、物事のとらえ方やそれを表現する方法を学び、刑事手続の意味や刑事裁判の原則を理解することをねらいとしています。

今回は地方裁判所の法廷を会場とし、より本格的な模擬裁判を行います。

ご観戦をご希望の方は、添付のチラシ裏面の「観戦のご案内」をよくお読みの上、当日各会場受付に直接お越し下さい。

ご参加を心よりお待ちしております。

昨年こんな記事を書いています。「高校生模擬裁判選手権」

多くの方は、実際に裁判を傍聴されていないでしょうし、何度も見ないと検察・弁護のテクニックの違いに触れることもないですから、わたしはかなりマニアックに見ていたことになります。

事件としては、起訴は殺人事件で、弁護側の主張は無罪、という正面衝突の事件で実際の裁判でも紛糾するだろうと思われるものでした。
なお、予選会(関東大会では8校が参加)から決勝戦まで同じ事件を扱います。
刑事裁判ですから、弁護士・検察官・被告・証人の4者が登場するのも、全試合同じです。

  1. 被告は、被害者の妻の兄つまり義理の兄弟
  2. 被告が被害者の結婚式に欠席したことで、以前は不仲であった
  3. 事件当日は、翌朝に釣りに一緒に行く約束をして、二人で酒場でかなり深酒をした
  4. 事件現場である、被告の仕事場で独身寮がある運送会社の構内に戻ってきたところで、被害者が被告を十数回殴打した。
  5. 被告は、数日前に同僚に頼まれて購入した全長40センチ以上の包丁を事務所から取り出して、トラックの駐車場に出た。
  6. 被害者は、被告に向かってきたので、包丁を上下に振って抵抗、被害者の腕に骨に達する傷を負わせた
  7. なおも、被害者は被告に迫り、よろけてトラックにもたれかかった、被告に覆い被さった。
  8. 被告は、包丁を持っていた手を出していたので、被害者の左胸に刺さり、被害者は死亡した。
  9. 被害者は、刺されて倒れた後に「兄貴、俺はもうダメだ」と被告に言って死亡した

この事件には、第三者が2名関わっていて、一人が証人になります。その状況は

  1. 同僚Aは喧嘩の仲裁をするが果たせず「勝手にしろ」と言い残して、独身寮の部屋に帰ってしまった。
  2. 目撃者として証言する、同僚BはAよりも先に喧嘩に気づくが、独身寮の階段から見ていて、仲裁には入らず最後まで事件を見ていた。

まるでミステリーのようなことなのですが、物語ではないので読者に相当する観客は「神の視点」が与えられていません。
上記の説明は、ほとんど小説の骨子のように書きましたが、わたしは関東大会と決勝戦で数回に渡って同じ事件を説明を、検察役と弁護役の高校生のプレゼンテーションを聞いたから組み立てる事が出来たのであって、実際の高校生の論告などは、これら全てを述べてはいません。

また、わたしにはまだ謎なのですが、目撃者がどの位置に居たから何が見えて、何が見えないかは分かりません。
実際の裁判では重要な事ではない、という判断になるのかもしれません。

このような、複雑な事件を題材にして、検察と弁護の攻防が行われるのですが、判決は下しません。

関東大会の優勝校は、湘南白百合学園高等部でした。
不思議なことに、わたしは関東大会で会場が複数あったために見ていませんでしたが、他の学校のレベルもかなり高いと思っていたら、昨年度の優勝校であるといった説明があって、関東大会優勝というのはどんな学校なのか?と非常に関心がありました。

関西大会の優勝校は、京都教育大学附属高校でした。
HPに関西大会の様子が紹介されています。

わたしは多くの裁判を応援していますし、情報ネットワーク法の関係ではそこそこ勉強もしていますが、それでも傍聴人として事件を見るとき自分が神の視点で法廷に出た情報が全てのであるかのように思いこむところがある、と気づかされたのです。

理屈としては、特に民事事件だと法的な正義の追求よりも互いの勝ち負けの問題だ、と承知しているのですが、それでも情報が全部出ていると思いこむわけです。
もちろん「神ならぬ者に知る由もない」のは間違えなく、それを傍聴者としては忘れている、ということですね。

それに気づいたのが、昨年の高校生模擬裁判選手権を見て理解した一番大きな収穫でありました。
今年もとても楽しみにしています。

7月 26, 2009 at 10:27 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2009.06.17

最初の裁判員裁判

読売新聞より「東京地裁が裁判員候補「呼び出し状」発送作業

東京地裁は17日午前、8月3日に裁判員裁判の初公判が開かれる東京都足立区の路上殺人事件について、呼び出し状や質問票などを封筒に入れる作業を行った。

午後、発送する。

呼び出し状が送付されるのは、候補者名簿から抽出された100人から、70歳以上で辞退を希望していた人などを除いた73人。
初公判の日の午前中に選任手続きが行われ、裁判員6人と補充裁判員3人が選ばれる。

辞退を希望する候補者は質問票に記入して返送するが、ある刑事裁判官は
「夏休みの予定がすでに入っている人の辞退希望を、認めるかどうか悩ましい。実際に何人の候補者が裁判所に来てくれるのか不安だ」
と話している。

この事件では、無職藤井勝吉被告(72)が5月1日、向かいに住む女性整体師をサバイバルナイフで数回刺して殺したとして殺人罪に問われており、公判は8月3~6日の4日間が予定されている。
(2009年6月17日12時05分 読売新聞)

え~と、元の名簿は選挙と共通だから要するに、住民票があって成人の人は全員対象ということですよね?
無作為抽出で「今年の裁判員候補」の方々を選び出して、70歳以上の人は辞退できる、法曹関係者はダメなどと返事を受け取っているわけで、「候補者名簿」から100人を抽出したら裁判官の面接以前で書類上で辞退できる人が27人も居たということですか?

予想以上の高率ですね。

平成17年(2005年)の国勢調査のデータから調べると、70歳以上の人口比は14.3%ですから、20%前後は辞退者になるのでしょうか?

73人から9人が裁判員・補助裁判員に選出されるのですから、8人に一人の割合ですね。

当日(この場合は、8月3日月曜日)ドタキャンになってしまう人が居るだろうことを考えると、かなりギリギリの人数に絞り込んでいるということでしょうか?

手続の解説ビデオによると、裁判員の選任手続は以下の順序です。

  1. 事件概要の説明
  2. 当日用質問票に回答
  3. 裁判長から質問(検察官・弁護人が立ち会う)
    辞退希望者の辞退を認める。
    検察官・弁護人は理由を示さずに裁判員候補を拒否できる。
  4. 残った候補者から、裁判員と補助裁判員を抽選する

この事件は「足立区の隣人の女性整体師刺殺事件」で被害者参加裁判でもありますから、20年ぐらい前には想像も出来ない法廷です。

しかし、この事件は何で72歳の男がサバイバルナイフで隣人の女性66歳を刺したのか?が「口論の結果」というのはどういうことだ?と思います。

近隣トラブルで女性を刺殺しますかねぇ?

裁判所からの質問票には「報道で・・・・」とあるようで、先入観が過度にある場合はダメだという常識的なものでしょうが、裁判員候補になったら、このような不思議な事件については誰でも注意深く報道を読むでしょうねぇ。

最初の裁判員裁判がどのように進行するのか、注目してしまいますね。

6月 17, 2009 at 01:14 午後 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.05.18

裁判員裁判が近づいてきた

サンケイ新聞より「【正論】筑波大学名誉教授、元最高検検事 土本武司

■裁判員で「官」の硬直化脱せよ

≪プロ判事に信頼おく歴史≫

裁判員制度の実施が21日に迫った。

2004年5月21日裁判員法が成立して以来5年近く経過したのに、国民世論の多くは同制度に冷淡であり、法律専門家からの批判論も絶えない。

そもそも我が国の精神土壌にはこういう制度になじみにくい要素がある。

例えば米国にあっては、西部開拓の過程で生まれた保安官(シェリフ)の発祥経緯に象徴されるように、同国の司法官は民衆の内側から自然発生的に誕生した。
そこにあっては、官憲の誠実さよりも民衆の情熱がものをいい、陪審制が定着しやすい。

これに対し、我が国の刑事司法は、“お奉行さま・与力・岡っ引き”の遥か以前から民衆の外側にあるものとして意識されてきた。
こういう国民は犯罪に対処するに当たって、自らの手で悪と対決しようという態度には出ず、司法官憲の真実にできるだけ近づこうとする熱意と誠実さに期待し、そこに自分たちの正義感情の満足を求めようとする。

問題の核心は「誰が裁判をするのに適しているか」、また「誰の裁判に信頼がおけるのか」である。

刑事裁判の目的は「真相の解明」にある(刑事訴訟法1条)。

米国では憲法上「同輩による裁判を受ける権利」を保障し、自分と同質で同じ感覚を持っている隣人が手続きを踏んで決めればよしとするが、そういう“スポーツ競技的訴訟”では日本国民は納得しない。

日本国民は唯一の真実を浮かび上がらせることを求めているのであり、それをなしうるプロとしての裁判官の仕事に信頼をおいてきたのである。
大正陪審法による陪審制が失敗した大きな理由が、国民が「仲間」から裁判されるよりも「プロ」から裁判される方を選んだことにあったことは否定できない。

≪死刑の判断と心理的負担≫

人の一生に影響をもたらす刑事裁判に “素人”が関与するのは負担が重過ぎるのではないかとの危惧(きぐ)感に対しては、「裁判員は裁判官でないから案ずることはない」という人がいる。

しかし裁判員は裁判官と並んで一人一票の評決権を持っており、事実認定・量刑ともにその一票の行使の仕方によって被告人の将来に重大な影響をもたらすのであるから、「官」でないことをもって負担が軽くなるものではない。

逆に、市民による裁判制度を貫くのであれば、控訴審にも裁判員制度を導入すべきであるし、一審無罪の判決に対しては検察官控訴を許さないとしなければ筋が通らない。

事実認定は裁判員の意見を尊重し、量刑は裁判官の意見を尊重すべきであるという見解があるが、私は逆だと思う。

「法令の解釈などむつかしいことは裁判官が行う」といっても、裁判員も行う義務のある事実認定は証拠法則を適用しつつ各証拠の証拠価値を判断しなければならず、かなり高度の専門的思惟(しい)を必要とする。

それに対し、量刑は当該事件の結論であるのみならず、その時代の国民の正義感の具体的発現であるから、一般市民の量刑感覚が尊重されるべきであり、それが裁判員制度の趣旨にも適う。

≪国民への情報開示徹底を≫

裁判員制度はこういう問題だらけの中でスタートしようとしているが、さまざまな問題の中で最も気になるのは、裁判員裁判の対象となる事件の中核となるのが「死刑・無期にあたる罪の事件」であるということである。

それは、このような重大事件が国民の関心も高く、社会的影響も大きいので裁判員裁判にふさわしいからだとされる。
しかし熟達した裁判官ですら逡巡(しゅんじゅん)する死刑判決を一般市民に冷静な判断によってすることを期待できるか。

裁判員Aが多数意見の一員として有罪・死刑意見に与(くみ)した場合もそうであるが、いわんやA自身は無罪説をとったのに過半数が有罪・死刑であった場合、その精神的負担は想像を絶するものがある。

対象事件は当初は一般市民になじみやすい中・小の事件を対象とし、徐々に重大事件を取り入れるという順序をとるべきであった。

また死刑判決だけは一審はもちろん、上訴審も全員一致制にすれば精神的負担もやわらげられよう。これらは法改正をまたなければならないので、3年目の見直しの際検討されるべきであろう。

ともあれ市民が死刑を直視しなければならない時代が到来した。

今まで秘密のベールに包まれていた死刑に関する情報-死刑確定囚の生活、刑場の仕組み、執行方法など-をプライバシーの侵害にわたらない限度において可能なかぎり国民に提供し、国民全体の死刑論議に資すべきだろう。

裁判員制度のメリットを十分に生かそう。

そのメリットとは一般社会との接触に乏しいこれまでの裁判官の硬直した考え方に裁判員の新鮮で一般市民としての感性を取り込み、国民にわかりやすい裁判にすることである。

これによって、専門家には見えなくなった事件の本質や全体像が素人なるがゆえに見抜けることが期待されるのである。
(つちもとたけし)

確かに問題が沢山あって、弁護士の反対意見は「こんな仕組みは崩壊する」といった感じのものが多いのですが、どうすれば裁判に市民が適切な形で参加できるのか、そのために裁判員制度はどうあるべきかの議論は最近では意外なほどありません。

そんな状況で、5月21日からは裁判員制度が始まり、すでに適応事件(5月21日以降に起訴になる事件)が数十件になっている、という報告もあります。
そのような状況で、この記事はなかなか広範囲に渡って意見が述べられていて、問題点を考える上で大いに参考になると思います。

5月 18, 2009 at 09:27 午前 裁判員裁判 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2009.04.01

裁判員制度に向けて新聞社が自主ルール

サイゾーより「裁判員制度で大わらわ 新聞各社が「自主規制」を開始

裁判員制度のスタートを5月に控え、大手新聞各紙は事件報道をガラリと変えることになった。

「逮捕段階から、容疑者をまるで有罪のように報道されると、裁判員はあらかじめ偏見を持ってしまう」という注文が司法当局から出たため、各紙とも記事のスタイルを根本的に見直すことになったようだ。

朝日新聞では、昨年中にすでにガイドラインをまとめている。その主な柱を5つ紹介しよう。

  • (1)情報の出所を明らかにする
    これまで逮捕容疑は、「調べによると、殺害した疑い」などと情報の出所を隠し、まるで真実であるかのように書いてきた。これは、「警察の捜査は間違いない」という警察ベッタリの幻想にすぎず、裁判員に偏見を与えかねない。そこで、逮捕容疑は警察の見立てにすぎないことをハッキリさせるため、「警視庁赤坂署によると、殺害した疑いがある」と情報源を明示することにした。
  • (2)発表であることを強調する
    「赤坂署は佐藤容疑者を逮捕した」といった警察の広報のようなスタイルを改め、「赤坂署は、佐藤容疑者を逮捕した、と発表した」と書き改め、警察と距離を置いていることを強調する。
  • (3)認否を書く
    容疑者が否認していても、これまで記事上に書かれることはなかった。これでは不公平なので、「捜査本部によると、容疑者は否認している(あるいは『認めている』)」などと書くことにした。
  • (4)「わかった」はできるだけ使わない
    新しい捜査状況を特ダネとして報じるとき、「容疑者が殺害を認めていることがわかった」などと断定調で書いてきた。この「わかった」スタイルは、警察の取り調べ内容を真実と決めつけているのでできるだけ使わず、「警視庁によると、容疑者は殺害を認めているという」などと書く。淡白な表現になるので、裁判員に強い偏見を持たせないで済む。
  • (5)容疑者の言い分を書く
    警察一辺倒だった取材を改め、弁護士も積極的に取材し、容疑者の言い分を書く。

読売新聞でも、ガイドラインを昨年からスタートさせている。
朝日と違うのは、情報源の出所をよりハッキリさせるため、「赤坂署副署長によると、容疑を認めている」などと情報源をより特定した報道を心掛けている点。

逮捕後、起訴されず釈放された場合は、「誤認逮捕」の疑いがあるから、名誉回復のためにも必ずその事実を報道することにした。

また、前科前歴を報じる点は、朝日が「原則報じない」という立場に対し、読売は「裁判員に与える影響が強いので注意が必要」と指摘するにとどめ、前科前歴報道そのものはやめないようだ。

一方、毎日新聞は今年1月から見直しを始めているが、先行する2紙ほど厳密なガイドラインではなさそうで、「毎日らしいアバウトさが特徴的」(社会部記者)という。

こうした大手3紙の動きを追って、地方紙に記事を配信する共同通信も3月から同様のガイドライン運用を始めており、これで新聞メディアはおおむね事件報道の見直しに着手したといっていい。

大手紙の社会部デスクはこうした報道の見直しの動きについて「『見てきたかのように書く』と言われてきた新聞のいい加減さを見直すいいチャンスなんです」と歓迎しており、「これほど事件報道が根本的に見直されるのは、えん罪事件を垂れ流した報道姿勢を改めようと、『呼び捨て』ではなく『容疑者』を付けるよう見直した20年前の改革以来の出来事」と語る。

しかし、こうした動きはなにも新聞メディアの自覚から生まれたわけではない。裁判員制度を導入する最高裁は「事件報道は裁判員にとって百害あって一利なし」という考えから、公判が始まるまでは供述内容などを報道できないよう法的規制をかけるという立場を捨てていない。
その対抗措置として「自主規制」のために生まれたのが、今回のガイドラインなのだ。

これらの事件報道の見直しは緒に就いたばかり。紙面の変化をしっかりとウオッチしておきたい。
(編集部/「サイゾー」4月号より)

新聞社がそれなりに対応を考えるのは良いことだと思います。

一方「裁判員の参加する刑事裁判に関する法律」に規定されている、裁判員への罰則もなかなか難しいもので、首をひねってしまいます。

第8章 罰則

  • 第106条(裁判員等に対する請託罪等)
  • 第107条(裁判員等に対する威迫罪)
  • 第108条(裁判員等による秘密漏示罪)
    • 裁判員又は補充裁判員が、評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らしたときは、六月以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
    • 2 裁判員又は補充裁判員の職にあった者が次の各号のいずれかに該当するときも、前項と同様とする。
    • 一 職務上知り得た秘密(評議の秘密を除く。)を漏らしたとき。
    • 二 評議の秘密のうち構成裁判官及び裁判員が行う評議又は構成裁判官のみが行う評議であって裁判員の傍聴が許されたもののそれぞれの裁判官若しくは裁判員の意見又はその多少の数を漏らしたとき。
    • 三 財産上の利益その他の利益を得る目的で、評議の秘密(前号に規定するものを除く。)を漏らしたとき。
    • 3 前項第三号の場合を除き、裁判員又は補充裁判員の職にあった者が、評議の秘密(同項第二号に規定するものを除く。)を漏らしたときは、五十万円以下の罰金に処する。
    • 4 前三項の規定の適用については、区分事件審判に係る職務を行う裁判員又は補充裁判員の職にあった者で第八十四条の規定によりその任務が終了したものは、併合事件裁判がされるまでの間は、なお裁判員又は補充裁判員であるものとみなす。
    • 5 裁判員又は補充裁判員が、構成裁判官又は現にその被告事件の審判に係る職務を行う他の裁判員若しくは補充裁判員以外の者に対し、当該被告事件において認定すべきであると考える事実若しくは量定すべきであると考える刑を述べたとき、又は当該被告事件において裁判所により認定されると考える事実若しくは量定されると考える刑を述べたときも、第一項と同様とする。
    • 6 裁判員又は補充裁判員の職にあった者が、その職務に係る被告事件の審判における判決(少年法第五十五条の決定を含む。以下この項において同じ。)に関与した構成裁判官であった者又は他の裁判員若しくは補充裁判員の職にあった者以外の者に対し、当該判決において示された事実の認定又は刑の量定の当否を述べたときも、第一項と同様とする。
    • 7 区分事件審判に係る職務を行う裁判員又は補充裁判員の職にあった者で第八十四条の規定によりその任務が終了したものが、併合事件裁判がされるまでの間に、当該区分事件審判における部分判決に関与した構成裁判官であった者又は他の裁判員若しくは補充裁判員の職にあった者以外の者に対し、併合事件審判において認定すべきであると考える事実(当該区分事件以外の被告事件に係るものを除く。)若しくは量定すべきであると考える刑を述べたとき、又は併合事件審判において裁判所により認定されると考える事実(当該区分事件以外の被告事件に係るものを除く。)若しくは量定されると考える刑を述べたときも、第一項と同様とする。
  • 第109条(裁判員の氏名等漏示罪)
  • 検察官若しくは弁護人若しくはこれらの職にあった者又は被告人若しくは被告人であった者が、正当な理由がなく、被告事件の裁判員候補者の氏名、裁判員候補者が第三十条(第三十八条第二項(第四十六条第二項において準用する場合を含む。)、第四十七条第二項及び第九十二条第二項において準用する場合を含む。次条において同じ。)に規定する質問票に記載した内容又は裁判員等選任手続における裁判員候補者の陳述の内容を漏らしたときは、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
  • 第110条(裁判員候補者による虚偽記載罪等)
  • 裁判員候補者が、第三十条に規定する質問票に虚偽の記載をして裁判所に提出し、又は裁判員等選任手続における質問に対して虚偽の陳述をしたときは、五十万円以下の罰金に処する。
  • 第111条(裁判員候補者の虚偽記載等に対する過料)
  • 裁判員候補者が、第三十条第三項又は第三十四条第三項(これらの規定を第三十八条第二項(第四十六条第二項において準用する場合を含む。)、第四十七条第二項及び第九十二条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、質問票に虚偽の記載をし、又は裁判員等選任手続における質問に対して正当な理由なく陳述を拒み、若しくは虚偽の陳述をしたときは、裁判所は、決定で、三十万円以下の過料に処する。
  • 第112条(裁判員候補者の不出頭等に対する過料)
  • 次の各号のいずれかに当たる場合には、裁判所は、決定で、十万円以下の過料に処する。
    • 一 呼出しを受けた裁判員候補者が、第二十九条第一項(第三十八条第二項(第四十六条第二項において準用する場合を含む。)、第四十七条第二項及び第九十二条第二項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、正当な理由がなく出頭しないとき。
    • 二 呼出しを受けた選任予定裁判員が、第九十七条第五項の規定により読み替えて適用する第二十九条第一項の規定に違反して、正当な理由がなく出頭しないとき。
    • 三 裁判員又は補充裁判員が、正当な理由がなく第三十九条第二項の宣誓を拒んだとき。
    • 四 裁判員又は補充裁判員が、第五十二条の規定に違反して、正当な理由がなく、公判期日又は公判準備において裁判所がする証人その他の者の尋問若しくは検証の日時及び場所に出頭しないとき。
    • 五 裁判員が、第六十三条第一項(第七十八条第五項において準用する場合を含む。)の規定に違反して、正当な理由がなく、公判期日に出頭しないとき。
  • 第113条(即時抗告)
  • 前二条の決定に対しては、即時抗告をすることができる。

4月 1, 2009 at 04:03 午後 裁判員裁判 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2009.03.19

裁判員制度・いよいよ本番

3月も後半になって、そろそろ春分ですがそれとともに近づいてきたのが5月21日からの裁判員制度の実施です。
久しぶりに裁判員制度のHPを見てきました。

「裁判員に選ばれるまで,選ばれてから」の動画配信を開始しました(2009.2)というのがあって、ちょっと前に広報にあったな(裁判員制度MLを購読しています)と思い出しましたが、また別のビデオかと思いつつ見て、ちょっと驚いたので、紹介します。

タイトルは 「裁判員に選ばれるまで,選ばれてから」です

このビデオの冒頭の文章は次のようになっています。

このビデオは、 本日お集まりいただいた裁判員候補者の皆さんに、
これからの手続のあらましをご理解いただくために
作られたものです。

上映時間は

約15分です

つまり、この冒頭の文章によれば、このビデオは裁判員候補者が裁判所で見せられるビデオそのものだ、となります。

そういう視点で見ると、このビデオは大変に良くできていて、最高裁判所が非常に力を入れてかつ慎重に作ったものだとよく分かります。

すでに複数の広報用ビデオが作られていて、映画「審理」も配信されていますが、このような「ドラマ」とは一線を画しているもので、是非とも両方ご覧になることをお勧めします。

ブログを書いている弁護士さんの多くが「裁判員制度は制度として無理がある」といった意見をお持ちのようです。
わたしは、もともと陪審員制度の導入(正確には復活)を願っていた者ですから、裁判員制度に諸手を挙げて賛成しました。
しかし、勉強するにつれて「これは大変だ」と思うようになってきています。

非常に根本的なところに問題があり、さらに裁判員自身にかかる負担も大きすぎるように感じて、うまく運用できるのか大いに不安ではありますが、裁判に市民が参加することは全体としては正しい方向であると思っていますから、うまく制度が定着することを強く期待しています。

そんな視点の持ち主から見て、非常に興味深いビデオを最高裁が作ったと感じさせるものがありました。

3月 19, 2009 at 12:03 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.01.04

裁判員制度についてのまとめ記事

裁判員制度について、サンケイ新聞が6ページ、朝日新聞が2ページの長大な記事を出しています。
両紙ともこれまでのいきさつや問題点を整理してある、なかなか優れた内容だと思います。

【日本の議論】ホントに始まるの?裁判員制度

今年は日本の司法制度が大きく変わる年だ。5月21日から始まる「裁判員制度」。
大半の国民は人を裁いたことなどなく、裁判員に選ばれた人ですら、今もって現実感のない人もいるのではないか。
守秘義務は重すぎないか、量刑にバラツキは生じないのか、そして国としては市民の参加意欲をどう高めていくのか…。
5カ月後に迫った裁判員制度の課題や問題点を整理した。

■重い「守秘義務」機能するか?

「通知きたー。目をうたがった」「うちに来ました。ちょっとうれしい」…。裁判員候補者に発送された通知が届き始めた昨年11月29日以降、ブログなどで、感想や送られてきた封筒などの写真を掲載するケースが相次いでいる。

裁判の中身を公表しているわけではないため、守秘義務違反には当たらないが、実際に裁判員裁判が始まってから、匿名で評議の内容をネット上に書き込む可能性もあり、どこまで守秘が守られるのかは不透明だ。

実際、その懸念は現実化しようとしている。

裁判員制度に反対する3人が昨年12月20日、「テレビや写真に顔を出して良い」と、確信犯的に実名で記者会見。「素人が審理しても意味がない」などと訴えた。
今後、制度に反対する人たちが確信的に同調する可能性もないわけではない。

そもそも、裁判員制度における守秘義務は、平成16年5月に成立した裁判員法の108条によって規定されている。

《裁判員が、評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役または50万円以下の罰金に処する》

つまり、法廷で見聞きした内容や評議の簡単な感想は、話しても大丈夫だが、

  1. 裁判官や裁判員の個別意見や、評決時の多数決の数など「評議の秘密」
  2. 被害者のプライバシーなど「職務上知った秘密」を漏らすと罰則の対象となる。

これは生涯にわたっての厳しい規定でもある。

というのは、評議の内容が明らかになれば、批判や報復を恐れて自由に発言ができなくなる可能性があるからだ。
仮に、有罪かどうかを決める評議で、5人が有罪、4人が無罪と判断し、その内容が漏れた場合、「アイツのせいで有罪になった」と被告から報復されかねない。

最高裁は、評議の「感想程度」は許しているが、基準はあいまいだ。
「感想」とはいえ、具体的な内容がなければ、説得力を持たない。
裁判員制度で得た教訓を社会が共有できなければ、「国民による司法参加」の意義が薄れかねないという側面もある。
と言って、あまりに「感想」が具体的になれば、「守秘義務」の意味はなくなってしまう。

米国の陪審制度では、原則的に審理が終われば守秘義務は解かれるとされる。
日本でも、裁判官には守秘義務はあるものの、罰則規定はないといい、裁判員のほうがより一層、厳格な守秘義務が課されているといえる。

抽選で選ばれ、希望者のみがなるわけでもない裁判員にとって、気が重くなりそうだ。
特に、死刑判決が下された事件の場合、裁判員にかかる心理的負担も強まると想定される。ストレスに対するアフターケアをする制度づくりも必要だ。

■参加意欲どう高める?

政府の司法制度改革審議会は平成13年6月、

  1. 法科大学院創設、司法試験合格者の大幅増員で司法関係の基盤を構築する
  2. 法的サポートのための施設を開設する
  3. 国民の司法参加で裁判に民意を反映させる

という「司法制度改革の3つの柱」を提案。裁判員制度は、その1つとして導入された。

「従来の裁判は、専門的な正確さを重視するあまり、審理や判決が分かりづらく、一部では審理が長期化する弊害もあった」というのが最高裁の公式見解だ。

裁判員制度の対象は刑事裁判。そのなかでも、殺人、強盗致傷、放火、危険運転致死などの重大事件に限定された。
それだけに、選ばれた裁判員の責任は重く、「私に他人を裁けるのか?」といった国民の懸念は強い。

最高裁が昨年4月に公表した約1万人の意識調査によると、60・3%が参加の意向を示しているが、「参加したい」「参加してもよい」との積極派はわずか15・5%にとどまり、「あまり参加したくないが義務なら参加せざるを得ない」という消極派が44・8%。「義務でも参加したくない」は37・6%もおり、国民の参加意欲はなお高くない。

参加の心配・支障(複数回答)では「責任を重く感じる」が75・5%とトップ。「素人に裁判が行えるか不安」(64・4%)、「裁判官と対等な立場で意見を発表できる自信がない」(55・9%)が続いた。

昨年11月28日には、全国各地の地方裁判所の裁判員候補者名簿に記載された約29万5000人に通知が発送された。
制度開始を間近に控え、準備作業は着々と進むが、問い合わせ対応のために設置した最高裁のコールセンターにかかった電話の6割近くは辞退に関する質問だった。精神的な不安が大きい国民は多いようだ。

物理的な不安についてはどうだろうか。

大手企業が加入する日本経団連が昨年9月に公表した調査では、裁判員制度のための特別休暇制度などの導入を「導入済み」「検討中」とする企業は90%にのぼった。

大企業では、企業側の対策は進んでいるといえるが、「何日間も仕事を空けて大丈夫なのか?」「連続して休んだら出世に響くのでは?」といった従業員の懸念が払拭(ふっしょく)できているのかどうかは定かではない。

中小企業が加盟する東京商工会議所が昨年10月に実施した調査では、裁判員制度に備えて「新しい休暇制度を検討・導入」しているのは24・6%。「特に何もしていない」は60・8%を占め、対策が進んでいるとは言いがたい状況だった。

さらに、この調査結果は、裁判員制度シンポジウムに参加した経営者や労務担当者の回答をまとめており、何の対策もしていない中小企業は実際はもっと多いとみられる。

その一方、単なる解説書にとどまらない漫画「サマヨイザクラ裁判員制度の光と闇」(郷田マモラ著、双葉社)など裁判員制度をテーマにした作品が登場。

裁判員制度を疑似体験できる携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」用のソフト「もしも!?裁判員に選ばれたら・・・」(タカラトミー)も販売された。従来は無関心だった層にも制度は浸透するかもしれない。

教育現場では、平成25年度から完全実施される高校の学習指導要領(公民)で、「裁判員制度」を含めた法教育が新たに盛り込まれるなど、「司法教育」が進む期待感もある。

■判決どう変わる?

最高裁は、裁判員裁判でかかる日数について「約7割が3日以内」「約9割が5日以内」と想定している。というのは、裁判員として参加する国民の負担を軽減するため、裁判官、検察官、弁護人の3者が初公判前に事前に協議し、証拠や争点を絞り込んで審理計画を立てる「公判前整理手続き」が行われるからだ。
従来なら判決まで10回程度の期日が必要な事件が、3日で終了する「スピード審理」も可能になる。

公判の迅速化は、判決にどんな影響を与えるのだろうか。

日本の公判は「精密司法」と呼ばれてきた。
検察側が詳細な立証作業を行った後に、弁護側が立証の十分でない点などを追及し、裁判所が判断する丁寧な審理を経ているからだ。
だが、裁判員にわかりやすくするため、公判前整理手続きで証拠の数が厳選され、審理が粗雑になる懸念も強い。

また、従来の裁判では公判途中に新たな証拠請求ができたが、裁判員裁判では原則不可能になる。
法曹関係者には、公判前整理手続きの実施により、「裁判員に負担をかけまいと事前に公判の設計図がつくられ、有罪か無罪かの前提ができあがってしまう」と危惧(きぐ)する見方もある。

有罪認定や量刑判断はどう変わるのだろうか。

現状の裁判の「有罪率(判決に占める有罪の割合)」は99・9%。無罪判決はほんのわずかだ。
また、量刑も検察側の求刑の「7~8割」というのが一般的な“相場”で、裁判はセレモニー化しているとの感も強い。
これが、裁判員制度の導入で変わる可能性がある。

平成19年に全国35地裁で行われた模擬裁判で最高裁は、男性被告がタクシー運転手の男性をナイフで刺して死亡させ、約8700円を奪った事件で、被告は事実関係を認めているという同一のシナリオを作成したが、判決は懲役16年から無期懲役まで大きく開いた。

裁判員裁判では、裁判官3人と裁判員6人が評議する。有罪認定や量刑判断のために評議を尽くしても、意見が全員一致とならなかった場合は、多数決で評決することになる。
裁判官、裁判員のそれぞれ1名以上の賛成を必要と定めており、判決が偏らないよう“歯止め規定”もかけてはいる。

ただ、“歯止め”は時には、少数意見を勝たせる不思議な現象も起こす。東京地裁で11月に開かれた模擬裁判の評議では、裁判員役の6人のうち、5人が「鬱(うつ)病」の被告に完全責任能力があると主張した。
一方、残りの裁判員役1人と裁判官3人は、責任能力を欠く「心神耗弱」と判断した。完全責任能力は、5人の“多数派”が認めたものの、結局、裁判官が支持しなかったために認められず、参加した市民からは不満も聞かれた。このルールをいかに周知徹底させるかも課題だ。

「加害者の権利より被害者の権利を」という流れのもと、昨年12月からは犯罪被害者参加制度もスタート。
被害者は、検察官の近くに座り、制限付きとはいえ被告人や情状証人に直接質問し、論告求刑もできるようになった。

裁判員は、あまたの事件を経験して“相場観”を形成している百戦錬磨の職業裁判官とは違う。
この制度が裁判員制度と組み合わさり、裁判員が被害者感情を重視しすぎて、極端に厳罰化の方向に流れる可能性もある。

逆に、被告側の不幸な生い立ちや人間関係などの情状面に極端に引きずられる恐れも否定できない。

殺人罪の場合、「死刑または無期もしくは5年以上の懲役」と、刑の幅は広い。評議では、類似事件の過去の量刑をまとめた資料が提供される見通しとなっているが、もともとの刑の幅が広いがゆえに、判断がブレる土壌が強いとも言えそうだ。

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裁判員制度元年、準備は着々 参加意欲に不安も

市民が裁判官とともに判決を決める「裁判員裁判」が今年から始まる。現在の刑事裁判の姿を大きく変える制度の導入。不安や抵抗も根強いなか、準備が進んでいる。

政府は昨年4月、「裁判員制度を09年5月21日から始める」と正式に決めた。
制度をつくるための裁判員法が参院本会議で成立したのは、開始日の5年前にあたる04年5月21日。
それ以来、裁判所、検察庁、弁護士会の法曹三者は、市民を迎えるために準備を重ねてきた。

まず、刑事裁判のスタイルを大きく変えた。

公判を集中的に開けるよう、法曹三者が事前に争点を整理する「公判前整理手続き」を導入した。
裁判員を審理で長期間拘束しないようにするための仕組みだ。

公判でのやりとりを裁判員に分かりやすくするため、パソコンを使って画像やチャート図などを見せる「プレゼンテーション」型の立証も実践されるようになった。
専門家が書面を中心に細かい論点まで詰めていく従来の審理のあり方は「精密司法」と呼ばれたが、論点を大づかみに絞って裁判員に示す「核心司法」への転換が進められている。

こうした工夫と並行して、訓練のための「模擬裁判」も繰り返してきた。殺意や責任能力の有無など、実際の公判で出てきそうな争点を様々に想定して法曹三者が実施した模擬裁判はあわせて計550回にのぼる。

ただ、法曹三者が気をもんでいるのは、無作為に裁判員候補者に選ばれた市民がどれだけ裁判所の呼び出しに応じてくれるのか、ということだ。

今年1年間の候補者への通知は昨年11月末に約29万5千人へ発送されたが、年末までに、4割以上の人が辞退希望などを尋ねる調査票を返送している。
最高裁が昨年初めに行った意識調査では「裁判員裁判に参加したい」「参加してもよい」と答えた人は約15%にとどまっていた。
「義務なら参加せざるを得ない」という人が約45%いるものの、参加を避けたい傾向は依然として弱くないとみられる。

裁判員法成立時、主要会派はすべて導入に賛成していた国会。しかし、市民の声を受けて足並みは乱れている。

「制度そのものには反対しないが、国民の理解は深まっておらず、不安も解消されていない」。社民党と国民新党は昨年末、問題点が解決されなければ実施を延期するよう求めていくことで合意した。民主党や、共産党にも同調を働きかけている。

当初は、昨年12月の臨時国会中に衆院法務委員会で裁判員制度に関する集中審議が開かれるはずだった。
ところが、自民党が「国民も制度の意義を理解し、進んで参加していただけるよう呼びかける」とする全会一致の決議を委員会で実現しようともくろんだことで、社民党が「翼賛的な推進決議には賛成できない」と反発。
この混乱で集中審議の開催は幻と消えた。

与党内も一枚岩ではない。公明党の浜四津敏子・代表代行は同月の講演で「裁判員制度そのものの見直しという話になってくるのではないか」と発言して波紋が広がった。

制度そのものに反対してきた人たちの動きも活発だ。弁護士や学者らが呼びかけてできた「裁判員制度はいらない!大運動」は「制度自体に違憲の疑いがある」と主張する。

最高裁や法務省は「国民の良識を反映させることで司法への信頼がより高まる」と制度の意義を広報している。
一方、日本弁護士連合会は「誤って無実の市民を罰することがないよう、市民が自らの自由や権利を守ろう」と導入の必要性を訴えている。

裁判員法には、施行から3年で政府が必要に応じて見直す、という規定がある。「100%完璧(かんぺき)なスタートは難しい。国民がそもそも何を求めるのかによって、見直しも当然にあり得るだろう」と最高裁の幹部は話す。
(岩田清隆、延与光貞、中井大助)

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1月 4, 2009 at 01:29 午後 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2008.12.21

裁判員制度反対の記者会見

朝日新聞より「裁判員候補3人、制度反対訴え実名会見 裁きたくない

弁護士や学者らが呼びかけてできた団体「裁判員制度はいらない!大運動」が20日、東京都内で、制度への疑問などから裁判員になりたくないと主張する裁判員候補者3人の記者会見を開いた。

いずれも60代の男性で、実名を公表して「人を裁きたくない」「制度そのものを廃止して欲しい」などと訴えた。

会見に参加したのは東京都内の会社員(65)と千葉県内の元教員(65)、ITコンサルタント(63)。11月末に最高裁が候補者に発送した通知を受け取ったという。

会社員は「人は裁かないという信条を持っており、裁判所から呼ばれても裁判員になることは拒否する」。元教員は「通知はそのまま最高裁に送り返した。残りの人生はつつましく暮らしたいと思っており、いまさら人を裁いて嫌な気持ちを抱いてあの世に行きたくない」と話した。

また、ITコンサルタントは「法律の目的も理解できず、国会で真剣に議論されたかも疑問だ」と語った。

裁判員法は裁判員やその候補者について、名前や個人を特定する情報を公開してはならないと定めているが、罰則規定はない。 「大運動」事務局長の佐藤和利弁護士は「私たちは制度自体が違憲だと思っており、あえて候補者が実名で会見することで制度廃止を求める声を表に出したいと考えた」と説明した。(中井大助)

「裁判員制度はいらない!大運動」のHPはここですね。

呼びかけ人は次の方々だそうです。

  • 足立昌勝(関東学院大教授)
  • 嵐山光三郎(作家)
  • 今井亮一(交通ジャーナリスト)
  • 蛭子能収(漫画家)
  • 織田信夫(弁護士)
  • 崔洋一(映画監督)
  • 斎藤貴男(ジャーナリスト)
  • 新藤宗幸(千葉大教授)
  • 高山俊吉(弁護士)
  • 西野留美子(ルポライター)
  • 山口孝(明治大教授)

「高校生模擬裁判選手権」を見に行った時(11月8日)に弁護士会館の外で10人ぐらいでビラを配っていました。
わたしも受け取ってきました。

正直な話が、主張がよく分かりません。

今回の「記者会見」も、個人的にイヤだあるいは分からないといったレベルで止まっているようで、日本の将来の何かに危険である、といったアピールがあるようにも思えません。

裁判員制度に反対する論調としては、インターネット上で反対論を繰り広げている方の方が、論旨が明確であると感じます。
この団体は、弁護士が主導していること行動力があることで、記者会見も出来るのでしょうが、中身がそれに相応しいようには見えません。

12月 21, 2008 at 10:58 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2008.12.01

裁判員の通知

読売新聞より「裁判員通知来た ブログで公開相次ぐ…氏名・顔写真も

裁判員制度の候補者名簿に登録された人が、通知が届いたことをインターネットのブログで公開するケースが相次ぎ、中には候補者の氏名を特定できるブログもあることが分かった。

裁判員法は候補者の個人情報を公にすることを禁じており、匿名のブログなら大きな問題はないが、個人が特定できるものは罰則はないものの、同法違反と見なされることになる。

通知書が各家庭に届き始めた29日以降、ネット上では通知書を受け取った感想や、封筒の写真を載せたブログが次々に現れた。ブログで氏名や顔写真を公開したうえで「通知が来た」と書いた男性もいた。

そりゃそうだろう。
だから「この規定は無理ではないか?裁判員法」を書いたのであります。

裁判員法101条の「何人も・・・公開してはならない」とは一体どの範囲なのか?となりますし、公開は禁止するが上司に伝えるのは良いというのは、実際的ではあるが法律の条文から上司に知らせるのは公開ではないというのは無理があるだろう。

いわば「やむ得ない場合は、範囲を限定して通知しても良い」としか考えられないし、その範囲が社会通念上の「公開」であっても仕方ないのでは無いだろうか?

処罰の対象にならないとか、違反とみなされないということではなくて、裁判員法101条の規定が社会の実情をうまく反映できていないところが問題なのです。

裁判員法反対論の中に「一生涯秘密にしろ、というのは負担が大きすぎる」というがあって、これも機械的に適用できるものではないでしょう。
重大な被害が生じた場合に「不用意に秘密を暴露したから」というぐらいしか制限のしようがないかと思います。
法廷でのやり取りについては、公開して良いわけですから・・・・。

わたしは以前から、刑事裁判に市民が参加するべきだと考えていましたが、現実の問題となると陪審員制度の方が良いように思います。
おそらくは、昔の陪審員裁判制度の失敗を理由にして裁判員制度にしたのでしょうが、ちょっとヘンなところにこだわっているように感じます。

12月 1, 2008 at 09:36 午前 裁判員裁判 | | コメント (1) | トラックバック (1)

2008.11.28

この規定は無理ではないか?裁判員法

東京新聞より「29万5千人へ通知書発送 裁判員候補の名簿記載者に

来年5月の裁判員制度開始に向け、最高裁は28日、各地裁の裁判員候補者名簿に載ったことを知らせる通知書を全国の約29万5000人に一括発送した。

通知書が届くのは、全国平均で352人に1人。早い地域では29日に到着する見込みで“本番”まで半年を切り、実際の裁判員選任に備えた準備作業が本格化。

通知書には、裁判員に来年選ばれる可能性があることや、現段階では裁判所に行く必要がないことを記載。辞退できる理由の有無などを尋ねる調査票のほか、制度を漫画で説明した小冊子なども送られる。

調査票では(1)警察官や自衛官など法律上、裁判員になれない職業に就いているか(2)70歳以上や学生で辞退を希望するか(3)裁判員になることが特に難しい特定の月があるか-などを質問。回答期限は12月15日となっている。

裁判員候補者名簿は、市区町村選挙管理委員会が選挙人名簿から無作為抽出したリストを基に各地裁が作成。来年5月以降、裁判員裁判の対象事件が起訴されると、各地裁が名簿から100人程度をくじで選び「裁判員候補者選任手続き期日のお知らせ(呼び出し状)」を送付。裁判長による質問やくじで最終的に裁判員6人(原則)と、欠員に備えた補充裁判員が選ばれる。

いよいよ始まりますが、ちょっと前から気になっていることがあります。

裁判員法101条

第101条(裁判員等を特定するに足りる情報の取扱い)

何人も、
裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員又は裁判員候補者若しくはその予定者の
氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報を公にしてはならない。

これらであった者の氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報についても、
本人がこれを公にすることに同意している場合を除き、同様とする。

2 前項の規定の適用については、 区分事件審判に係る職務を行う裁判員又は補充裁判員の職にあった者で
第八十四条の規定によりその任務が終了したものは、
すべての区分事件審判の後に行われる併合事件の全体についての裁判
(以下「併合事件裁判」という。)がされるまでの間は、
なお裁判員又は補充裁判員であるものとみなす。

「模範六法 2008」(C)2008(株)三省堂

この解釈について、最高裁が作っているQ & Aには次の解説があります。

○ 裁判員等に選ばれたことを公にしてはいけないと聞いたのですが,
上司や同僚,さらには家族や親しい人に話すことも許されないのですか。

 裁判員等でいる間,裁判員等に選ばれたことを公にしてはいけません(裁判員法101条1項)。

裁判員候補者名簿に登録されたことや,さらにくじで選ばれて裁判員候補者として裁判所に呼ばれたことを公にすることは禁止されていますが,

  • 法律で禁止されている「公にする」とは,
  • 出版,放送といった手段による場合や
  • インターネット上のホームページ等に掲載するような場合など,
  • 裁判員候補者になったことを不特定多数の人が知ることができるような状態
にすることをいいます。

 一方,日常生活の中で,

  • 家族や親しい人に話すことは禁止されていませんし,
  • 上司に裁判員等になったことを話して,
  • 休暇を申請したり,
  • 同僚の理解を求めることは問題ありません。
  • その際に,裁判所からの選任手続期日のお知らせ(呼出状)を上司や同僚に見せることについても差し支えありません。

 なお,裁判員等でなくなった後に,自分が裁判員であったことを公にすることは禁止されていません。

この説明は本質的に矛盾しているのではないか?

「裁判員に選ばれたことを公にしてはいけない」のであれば、日常生活での家族・職場に話して良いとは、例外規定なのだろう。
しかし、例えば役者の舞台公演を欠席するといった場合には公にしないで済むとは思えない。
このような場合については、さらに別の例外規定があって

第16条(辞退事由)

次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員となることについて辞退の申立てをすることができる。

  • 一 年齢七十年以上の者
  • 二 地方公共団体の議会の議員(会期中の者に限る。)
  • 三 学校教育法第一条、第百二十四条又は第百三十四条の学校の学生又は生徒(常時通学を要する課程に在学する者に限る。)
  • 四 過去五年以内に裁判員又は補充裁判員の職にあった者
  • 五 過去三年以内に選任予定裁判員であった者
  • 六 過去一年以内に裁判員候補者として第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭したことがある者(第三十四条第七項(第三十八条第二項(第四十六条第二項において準用する場合を含む。)、第四十七条第二項及び第九十二条第二項において準用する場合を含む。第二十六条第三項において同じ。)の規定による不選任の決定があった者を除く。)
  • 七 過去五年以内に検察審査会法(昭和二十三年法律第百四十七号)の規定による検察審査員又は補充員の職にあった者
  • 八 次に掲げる事由その他政令で定めるやむを得ない事由があり、裁判員の職務を行うこと又は裁判員候補者として第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭することが困難な者
  • イ 重い疾病又は傷害により裁判所に出頭することが困難であること。
  • ロ 介護又は養育が行われなければ日常生活を営むのに支障がある同居の親族の介護又は養育を行う必要があること。
  • ハ その従事する事業における重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が生じるおそれがあるものがあること。
  • ニ 父母の葬式への出席その他の社会生活上の重要な用務であって他の期日に行うことができないものがあること。
「模範六法 2008」(C)2008(株)三省堂

この「休めません」規定が適用できるかどうかで決まるから、裁判員を引きうけざるを得ない場合に「公に説明しないで済む」という考え方自体が、全ての状況に対応できないだろう。
この規定自体が状況に矛盾することは大いにあり得るだろう。

主役が舞台に穴を空ければ、公演自体が成り立たないから、裁判員を引きうけられないというのは分かるが、役者が交替できる場合には引きうけることになるだろう。

つまり、辞退できるか、出頭するかの理由付け自体が必ずしも明確ではない。
そうなると「裁判員に呼ばれたから休みます」と公開せざるを得ない場合も出てくるのではないのか?
それを「裁判員に呼ばれた」と公開してはいけない、となると「SIに呼ばれたから」とか隠語にでもするのか?
そもそも「家族・上司」には公開して良いとして、その上司は「今回の議題は、担当者が所用で欠席して・・」だけで済むとは言えまい。

何人も、 裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員又は裁判員候補者若しくはその予定者の 氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報を公にしてはならない。
が現実的でない、ということにならないか?

11月 28, 2008 at 11:08 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2008.11.09

高校生模擬裁判選手権

昨日(2008/11/08)は第23回司法シンポジウム「カウントダウン!みんなで築こう裁判員制度」に行ってきました。

実は「高校生模擬裁判選手権・東西対抗決戦」

Up

を見に行ったら、弁護士会館全体を使った司法シンポジウムだったのです。
プログラムは

  1. 裁判員ドラマ上映とドラマの出演者を交えたパネルディスカッション
  2. クイズ大会、川柳大会
  3. 模擬裁判「あなたも裁判員 ~体験してみよう裁判員裁判~」(申込み受付終了)
  4. 【シンポジウムⅠ】「裁判員裁判における弁護人の役割」
  5. 【シンポジウムⅡ】「理想的な評議のあり方を考える」
  6. 「高校生模擬裁判選手権・東西対抗決戦」
  7. 法教育模擬授業・授業参観と懇談会

と盛りだくさんで、高校生模擬裁判選手権と法教育シンポジウムに出席しました。

高校生模擬裁判選手権は、8月9日行われた関東選手権を見たので「決勝戦も見てやろう」と言うほどの意味しかなかったのですが、関東選手権も大変に面白く、大いに期待していました。

チラシの説明をそのまま書きますと、実際に起きた事件をそのままではないそうですが、ほぼそのまま題材にして、高校生に検察役と弁護役に別れて刑事裁判の、冒頭陳述から論告までを行い、出来を競うというものです。

弁護役と検察役を入れ替えるので、いわば先攻と後攻のようなことになり。
決勝戦は、関東大会優勝校と関西大会優勝校の決勝戦が二試合行われました。

多くの方は、実際に裁判を傍聴されていないでしょうし、何度も見ないと検察・弁護のテクニックの違いに触れることもないですから、わたしはかなりマニアックに見ていたことになります。

事件としては、起訴は殺人事件で、弁護側の主張は無罪、という正面衝突の事件で実際の裁判でも紛糾するだろうと思われるものでした。
なお、予選会(関東大会では8校が参加)から決勝戦まで同じ事件を扱います。
刑事裁判ですから、弁護士・検察官・被告・証人の4者が登場するのも、全試合同じです。

  1. 被告は、被害者の妻の兄つまり義理の兄弟
  2. 被告が被害者の結婚式に欠席したことで、以前は不仲であった
  3. 事件当日は、翌朝に釣りに一緒に行く約束をして、二人で酒場でかなり深酒をした
  4. 事件現場である、被告の仕事場で独身寮がある運送会社の構内に戻ってきたところで、被害者が被告を十数回殴打した。
  5. 被告は、数日前に同僚に頼まれて購入した全長40センチ以上の包丁を事務所から取り出して、トラックの駐車場に出た。
  6. 被害者は、被告に向かってきたので、包丁を上下に振って抵抗、被害者の腕に骨に達する傷を負わせた
  7. なおも、被害者は被告に迫り、よろけてトラックにもたれかかった、被告に覆い被さった。
  8. 被告は、包丁を持っていた手を出していたので、被害者の左胸に刺さり、被害者は死亡した。
  9. 被害者は、刺されて倒れた後に「兄貴、俺はもうダメだ」と被告に言って死亡した

この事件には、第三者が2名関わっていて、一人が証人になります。その状況は

  1. 同僚Aは喧嘩の仲裁をするが果たせず「勝手にしろ」と言い残して、独身寮の部屋に帰ってしまった。
  2. 目撃者として証言する、同僚BはAよりも先に喧嘩に気づくが、独身寮の階段から見ていて、仲裁には入らず最後まで事件を見ていた。

まるでミステリーのようなことなのですが、物語ではないので読者に相当する観客は「神の視点」が与えられていません。
上記の説明は、ほとんど小説の骨子のように書きましたが、わたしは関東大会と決勝戦で数回に渡って同じ事件を説明を、検察役と弁護役の高校生のプレゼンテーションを聞いたから組み立てる事が出来たのであって、実際の高校生の論告などは、これら全てを述べてはいません。

また、わたしにはまだ謎なのですが、目撃者がどの位置に居たから何が見えて、何が見えないかは分かりません。
実際の裁判では重要な事ではない、という判断になるのかもしれません。

このような、複雑な事件を題材にして、検察と弁護の攻防が行われるのですが、判決は下しません。

関東大会の優勝校は、湘南白百合学園高等部でした。
不思議なことに、わたしは関東大会で会場が複数あったために見ていませんでしたが、他の学校のレベルもかなり高いと思っていたら、昨年度の優勝校であるといった説明があって、関東大会優勝というのはどんな学校なのか?と非常に関心がありました。

関西大会の優勝校は、京都教育大学附属高校でした。
HPに関西大会の様子が紹介されています。

8月9日(土)大阪弁護士会館で行われた第2回高校生模擬裁判選手権(大阪大会)で昨年に引き続き優勝し,2連覇を果たしました。

今年は11月8日(土)東京弁護士会館にて関東の覇者・湘南白百合学園高校(神奈川県,同じく2連覇)と日本一をかけて戦います。

当日の画像はこちら

関東大会の時には「高校生の様子を見よう」という事で、ビデオを撮っていましたが、決勝戦では「裁判員になったつもりで、検察・弁護の評価をしよう」とメモを取ってきました。

試合は、午前と午後に行われ、午前は京都教育大付属が検察、湘南白百合が弁護で行われました。
実は、わたしはこの前半戦だけを見て、午後は法教育シンポジウムに参加したために、後半戦を見ませんでした。

優勝は、僅差で京都教育大学附属高等学校になりましたが、講評によるとチームワークの良さが評価されたとのことです。
湘南白百合は非常にクールというか、見事な法廷戦術で「本物の弁護士でももっと下手なのを見たぞ」というレベルでありました。

実際の法廷を傍聴して、その後に解説でも聞かないと分からないことですが、証言を引き出すための段取りといったものが利いてきます。
証人や被告にいきなり核心を突く質問をすると「分かりません」とか「覚えていません」といったあいまいな証言になる可能性があります。
そこで段取りを踏んで、問題の状況を正確に証言させる技術があるのだそうです。

この証言の攻防は、リハーサルを行って攻撃も防御も手順を確認するのだそうで、湘南白百合は「これは相当リハーサルを積んで、攻撃と防御を良く理解した生徒たちが参加したな」とわたしは見ました。
前半戦を見たところで「湘南白百合の優勝か」と思って、法教育シンポジウムに席を移したのですが、結果は京都教育大学附属高校の優勝でした。

何よりも、こんな難しいことに挑戦した、各校の生徒を誉めたいと思います。
それよりも、面白いのが一番でありました。

日経新聞より高校生、模擬裁判で熱戦 日弁連シンポ、審査員「迫力あった」

来年5月に始まる裁判員制度を控え、市民の参加意欲を高めようと、日本弁護士連合会は8日、司法シンポジウム「カウントダウン!みんなで築こう裁判員制度」を東京都内で開き、パネルディスカッションや日弁連制作の裁判員ドラマの上映会を実施した。高校生による「模擬裁判選手権」東西決戦も行われ、京都教育大付属高(京都市)が優勝した。

模擬裁判対決は同シンポの目玉で、高校生が実際の刑事裁判と同じように検察側と弁護側に分かれ、有罪か無罪かなど主張の説得力を競う模擬裁判の“甲子園”。

8月に行われた関東、関西大会の両優勝校、湘南白百合学園高(神奈川県藤沢市)と京都教育大付属高が繰り広げた熱戦に、審査員の1人の裁判官は「これほど迫力のある模擬裁判は初めて。司法の未来は明るい」と舌を巻いていた。(08日 23:01)

朝日新聞より立証技術競い合い「高校生模擬裁判」、京教大付が日本一

初開催となった「高校生模擬裁判選手権東西対抗決戦」(日本弁護士連合会主催)が8日、東京・霞が関の弁護士会館であり、西日本代表の京都教育大付属高校(京都市伏見区)が東日本代表の湘南白百合学園高校(神奈川県藤沢市)を破り、初の日本一となった。

両校が検察側と弁護側に分かれて立証の技術を競い合い、現職の裁判官や検事、弁護士ら5人が審査員を務めた。京都教育大付属は主張に情熱がこもり、チームワークが優れていた点などが評価された。裁判員役の東京地検の検事は「(両校とも)すぐにプロとして通用する」と舌をまいた。

サンケイ新聞より【迫る裁判員制度】プロも舌巻く法曹“卵” 高校生が模擬裁判選手権

日本弁護士連合会(日弁連)が11月8日に東京・霞が関の弁護士会館で開催する司法シンポジウム「みんなで築こう裁判員制度」で、「高校生模擬裁判選手権東西対抗決戦」が行われ、初の日本一が決まる。弁護士らも舌を巻く裁判術を披露する高校生たち。来年5月スタートの裁判員制度など、司法の市民参加時代を迎えた法曹界にとって心強い存在となりそうだ。

「模擬裁判の甲子園」ともいえる同選手権は、1つの事件を素材に争点を見つけ出し、弁護側(被告含む)・検察側(証人含む)に分かれて“試合”を行う。それぞれ(1)冒頭陳述(2)証人尋問(3)被告人質問(4)弁論(弁護側)・論告(検察側)を実施。(1)~(4)の時間配分や技術を現職の裁判官、検事、弁護士らが採点し、勝敗が決まる。

今回の題材は、男性が左胸を刺されて死亡し、男性の妻の兄が犯人として起訴されたが、殺意を否認している-という事件。

証拠類をもとに高校生らしい発想で論理を組み立て、主張・立証する。相手側の出方次第で臨機応変の対応を迫られることがあるうえ、裁判員制度適用を前提に、分かりやすさもポイントとなる。

関東・関西大会では計15校(県予選含む)が出場。関東で湘南白百合学園(神奈川)、関西は京都教育大附属(京都)が、それぞれ代表に勝ち上がった。両校は第1回の昨年も各代表になったが、決戦大会がなかったため、「今年初めて雌雄が決する」(日弁連)。

両校の“選手”は1、2年生有志。法曹志望者ばかりでなく、理系や、「おもしろそう」と知的好奇心を刺激された生徒も多く、試験や学校行事の合間をぬって“練習”を重ねている。

湘南白百合学園(8人編成)は弁護士の指導や裁判傍聴に加え、証拠書類の読み込み・分析、プレゼンテーション資料作り、他校との“練習試合”までこなして万全の構え。指導にあたっている熊本秀子教諭(49)は「汗と涙の日々ですが、究極の知のゲームにみんなハマってます」。

対する京都教育大附属(14人編成)は、弁護士、検察官、裁判官のほか、殺人事件対策に医師、表現力を磨くため元劇団四季俳優・講師からも話を聞くなど、幅広く技術を磨いている。札埜和男教諭(46)は「生徒も僕も優勝をねらいます」と気合十分だ。

実際に予選の戦いぶりを見た日弁連副会長の福島康夫弁護士は「司法試験を受けていなくてこれだけできる。われわれ弁護士は何なのだろうと思う」と、レベルの高さに感心していた。

予選の運営に携わった村松剛弁護士も「裁判員を意識して分かりやすく論を組み立て、証拠の見方もいい。相手に訴えかけたり説得したりという本来あるべき姿を、プロの法律家以上に表現している」と絶賛していた。

当日は開会式後、攻守(弁護側・検察側)を替えて2試合開催する。見学の問い合わせは日弁連(電話03・3580・9977)。

11月 9, 2008 at 09:53 午前 教育問題各種, 裁判傍聴, 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (2)

2008.10.29

裁判員・模擬裁判ですごいことになっている

日テレNES24より「模擬裁判で意見が対立、審理予定が遅れる

来年5月からの裁判員制度を前に、28日に東京地裁で行われた模擬裁判で、一般の市民から選ばれた裁判員と裁判官の意見が割れ、審理の予定が遅れるという異例の事態となった。

この模擬裁判では、一般市民から選ばれた裁判員から「被害者の供述内容が信用できるのか疑問がある」と意見が出て、「供述内容が信用できる」とする裁判官との間で意見が対立した。

このため、裁判長は「本来であれば被害者の証人尋問を行うべき状況」と説明した。

これに対し、検察側は「公判前整理手続きをして争点整理をしたのに、裁判所がまた新たな争点を出すのか」と激しく反論した。

しかし、裁判長は「裁判員は公判から審理に加わっているので、公判前整理手続きの内容には縛られない」との見解を示し、検察側に被害者の供述を裏付ける証拠を29日までに提出するよう求める異例の展開となった。

実際の裁判員裁判でも起こりうることとみられ、模擬裁判だけのハプニングとして片づけられないとの指摘も出ている。

これは模擬裁判とはいえ、ある程度の予想していたことでありますが、大変ですね。

裁判員裁判は3日間の連続開廷といったことになっています。
そのために、公判前整理手続で問題を評価だけに絞るようにするのでしょうが、それが信用できないとか調査不足である、といった事態になったときに「夜中に書類を作るのか?」と気にはしていました。

実際問題として、何か予定外のことをしなければならないとなれば、検察・弁護の争いを経て決まりますから、午後とか夕方に決定することになるでしょう。
そして、翌日には法廷に出さねばならないとなると、書類一つであっても夜中に作るようなことになります。
宿泊必要な証人だと、翌日一番の飛行機で来なければならない、といった事態を予想されます。

つまり、裁判員が法廷に参加できる日数を3日間として、さらに連続開廷にするのは仕方ないとは思いますが「夜間になんとかすることがある」というのはどうなんでしょうか?
企業はもちろん役所でも夜間と昼間では対応できる人も違うわけで「明日の朝までに何とかする」というのは、やる側の意欲とか手間といった問題以上に、社会一般としては受け入れがたい事なのではないでしょうか?

模擬裁判でこのような「外部とのやり取りが必要」という状況が起きたのは誠に良い経験であった、と評価するべきでしょう。
今日(2008/10/29)のこの法廷はどういう展開になるのでしょうか?

10月 29, 2008 at 12:55 午後 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2008.08.28

裁判員制度・横浜地裁

毎日新聞神奈川版より「横浜地裁が候補者割り当て、来年分1万8176人 /神奈川

来年5月に始まる裁判員制度に向け、横浜地裁は26日、来年分の県内の裁判員候補者を1万8176人と決め、各自治体の選挙管理委員会に割当人数の通知書を発送した。

横浜地裁管内では有権者約390人に1人、小田原支部管内では約452人に1人が候補者に選ばれる。

裁判員制度対象の殺人など重大刑事事件の発生件数は県内で過去5年平均211件で、1事件当たりの候補者を約100人と想定。制度スタートの年であることから、やや多めに候補者数を決めた。

自治体ごとの割り当ては、横浜、川崎の両政令指定都市は区単位で、その他は31市町村ごとに、有権者数に応じて決めた。
割当人数が最も多かったのは横浜地裁管内の相模原市で1443人。最少は小田原支部管内の清川村で7人だった。

各市区町村選管は有権者名簿から候補者を無作為抽出。裁判所は10月15日までに抽出結果をまとめて候補者名簿を作成。名簿に載った人には辞退希望などの調査票を12月初旬までに送る。

この名簿の中から、事件ごとに候補者を選んで裁判所に呼び出し、補充を含め最大8人の裁判員が選ばれる。
県内では、横浜地裁と地裁小田原支部で裁判員制度が実施される。来年5~12月に実際に裁判員に選ばれるのは、有権者7000人に1人ぐらいの確率になりそうだ。【池田知広】

結構複雑な手順になりますね。

8月26日地裁が割り当て人数を選挙管理委員会に通知
10月15日選挙管理委員会は、総数1万8176人を抽出し候補者名簿を作成
12月初旬選挙管理委員会は、候補者本人に調査票を発送
5月21日裁判員裁判制度開始

現実に個人のところに連絡が来るのは、11月末ぐらいになりますね。

わたしの地区の駅(たまプラーザ)の利用者の人口は約2万人ぐらいですから、50人ぐらいが候補者になります。
地図と照らし合わせてみると、いわゆる隣近所の範囲で1名が候補になるといった計算になりますね。

8月 28, 2008 at 08:46 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2008.08.26

裁判員候補者決定

読売新聞より「裁判員候補352人に1人、地域差最大3・6倍…読売試算

来年5月に始まる裁判員制度で、全国の地裁が作成する来年の裁判員候補者名簿に登録される人の数が計約29万5000人に決まったことが、読売新聞の取材でわかった。

昨年の有権者数を基に試算すると、名簿に載る確率は全国では352人に1人。候補者は今年末までに郵送で通知を受け、この名簿から事件ごとに6人の裁判員が選ばれる。全地裁が1事件当たり100人の候補者を登録する計算をしており、仕事や家事を理由とした辞退者が出る事態に備えた形だ。

裁判員候補者名簿は、裁判員裁判を実施する全国60か所の地裁(八王子、堺など10支部を含む)が作成する。各地裁は候補者の抽選を行う管内の区市町村に対し、必要な候補者数を確定し、来月1日までに伝える。

読売新聞が各地裁に取材して集計したところ、全国では有権者約1億385万人(昨年)に対して、候補者29万4960人が名簿に掲載されることが決定した。ただ、4地裁は「今後、数が若干変わる可能性もある」としている。

いずれの地裁も、管内で発生する裁判員制度の対象事件数を推計したうえで、1事件当たり100人が必要として1年分の候補者数を計算した。

事件数については、過去3~5年間の平均値で推計した地裁が多いが、「事件の多発に備えて平均の24件よりも多い27件と見積もった」(山形)という地裁もあった。

来年は5月21日からの制度実施になるため、通常の年に比べ6割程度の候補者で足りる可能性が高いが、ほとんどの地裁は通常の8割と見込んで最終的な候補者数を算出した。「どの程度の人が裁判所に来てくれるか予想しづらい」(東京)、「年の途中で人数が足りなくなって新たに名簿を作成する事態は避けたい」(奈良)といった懸念から、多めに設定された。

名簿登録の確率は、

  • 千葉(220人に1人)
  • 大阪(245人に1人)

などが高かったのに対し、

  • 秋田(790人に1人)
  • 福井(685人に1人)

などが低く、最大で3・6倍の開きが生じた。地域によって、事件発生数が異なることが主な原因だ。

今後、各区市町村の選挙管理委員会が、指定された人数の候補者を選挙人名簿から抽選し、これを基に各地裁が候補者名簿を作成。
11~12月に、候補者本人に郵送で通知される。制度がスタートする来年5月21日以降、事件ごとに名簿の中から50~100人程度が裁判所に呼び出される。

裁判員制度は現時点では批判が強くなってきていて「共産、社民両党が裁判員制度延期を求める」といった報道もありますが、2004年5月21日に法律が全会一致で成立しています。

突如として裁判員制度が確定したといった印象があって結構ビックリしたものです。
わたし自身は裁判への市民参加は以前から賛成していましたから、当初は大賛成であったのですが、時間が経つにつれて裁判員制度ではなくて、陪審員制度にするべきだったと感じています。

しかし、だからと言って裁判を専門家に任せる方が良いという意見には反対です。

元検事である弁護士のブログなどで教えられたのは、刑法(裁判員裁判が対象とする裁判は、人が死ぬような事件に限定ですから刑事裁判だけです)の根本的な構成が良く言えば日本人的感覚に合ってはいるものの、いささか以上に情状が問題になる、ところでしょう。

もちろん、証拠が無い場合には推定無罪の原則で臨むのは諸外国と変わらないのですが、罪の重さが「犯意」によって変わってしまうのです。
このために、被告(犯人)の供述の評価が重要になるわけで、専門家が判断している現在の裁判制度では供述をどう評価するのかについて、専門家同士だからバラツキがない、ということのようです。

このような理屈の法律では素人の裁判員が決める量刑がバラつくといった事になると指摘されています。
一方で、専門家が作った「相場」自体に社会が不満なのだからバラついて当然だ、という考え方もあります。

このような問題について、事前に合理的な対応策を講じるとすると、これは刑法の全面改定しかない、となります。
どのように変化していくのか、非常に注目するべき裁判員裁判制度がいよいよ動き出しました。

8月 26, 2008 at 10:12 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2008.06.12

陪審員がメモじゃなくてパズルを

落合洋司弁護士のブログ経由、AFP BB より「陪審員が裁判中に「数独」 オーストラリア

【6月12日 AFP】オーストラリアで3か月にわたって続いていた麻薬犯罪の裁判で、陪審員らが以前から退屈しのぎにパズルの「数独」をしていたことを認めたため、同裁判の裁判長は10日、裁判の中止を決めた。

シドニー地方裁判所のピーター・ザフラ裁判長は10日、女性の陪審員長を含む5人が、審問開始の2週目以降、裁判中に人気の数字パズルゲームをしていたことを認めたため、裁判の中止を決定した。

同裁判では、これまでに訴訟費用で100万豪ドル(約1億円)以上が費やされ、目撃者105人あまりが証言をしていたが、陪審員長は、「熱中していられるから」その間ずっとパズルをしていたという。

陪審員長は、「証言の中には退屈なものもあり、常に集中しているのは難しかった。(パズルは)訴訟の邪魔にはならなかった」と話した。

覚せい剤を販売用に大量に製造したとして終身刑に問われている被告人の1人が、裁判中に陪審員長がパズルを完成させているところを目撃した。

弁護士らは、陪審員たちがペンを動かしているのは、何かのメモをとっているのだろうと信じて疑わなかったという。

被告人の1人の弁護を担当するR弁護士は、オーストラリア放送協会(ABC)の取材に対し、「非常に熱心な陪審員たちだと思っていた」と話した。

「裁判長も、素晴らしい陪審員だと何度もほめていた。大量にメモをとっている様子などを評価していた。実際に何をしていたのか知った今となっては、非常に腹立たしい」(弁護士)

数独で遊んでいた陪審員らは処罰されないが、数週間以内に新たな陪審員と総入れ替えが行われる。(c)AFP

ありゃまあ~、というのが感想ですが、落合弁護士は次のようにコメントされています。

日本の裁判員制度でも、現在は、まだ制度がスタートする前で模擬裁判が行われている状態にあり、模擬裁判で裁判員役を務めている人々はそれなりに意識が高い人たちですから、「わかりにくい」「自信がない」等々の、まじめに取り組むことを前提にした問題点が噴出しています。
しかし、それ以上に怖いのは、この記事にあるような、やる気のない、ふまじめな裁判員の存在でしょう。
こういった人々も、評議の際には、有罪無罪、死刑に処すかどうか、といった重要な決定に関わることになり、それを考えると、やはり、かなり怖いものがあります。

実際に裁判を傍聴してみると、かなり興味がある法廷(知人が当事者)を傍聴しても、途中で寝てしまうことがありました。

少なくとも、今の裁判の進行では、素人が法曹人でかつ裁判慣れしている人たちと同等の緊張感や集中力を維持するのは不可能です。 (逆に、弁護士が法廷で集中していたために、次のスケジュールの時間をまったく間違えていて、傍聴人は全員知っていたという椿事もありました)

わたしは、基本的に裁判員制度賛成で、その理由は裁判に市民参加が良いだろうと思うからですが、それが裁判員裁判がよいのか?となると非常に根本的なところで、なぜ、陪審制ではなくて参審制にしたのか疑問を感じています。

ところで、このニュースの記事のように裁判員が公判中に不適格な行動をした場合の手続は決まっているのでしょうかね?
現時点では、裁判員が事故や病気だと交替だと思っているのですが、公判が丸々一日終わったところで「全然意味がない」とか分かったらどうするのだろう?

裁判を打ち切って、やり直しになるのでしょうか?

6月 12, 2008 at 09:35 午前 裁判員裁判 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2008.05.09

裁判員制度・あと1年・サンケイ新聞の記事

サンケイ新聞の連載企画【あと1年で裁判員】が完結したので資料としてまとめておきます。

以上の5本の記事で構成されていますが、一本ずつの文章が長く例えば1番目の記事は1600字もあります。
では、一気に並べてみます。

【あと1年で裁判員(1)】弁護士反発 模擬裁判の参加者は「で、何がよくなるの?」…浮かび上がる問題点

弁護士の反発あらわに…日弁連会長選挙戦“異変”

今年2月に実施された日本弁護士連合会(日弁連)の会長選。弁護士の“ボス”を決める2年に1度の選挙だが、今年は法曹関係者に激震が走った。

裁判員制度や弁護士増員など一連の司法制度改革への「反対」を訴えた高山俊吉氏が7049票を獲得、9406票で当選した宮崎誠氏に迫ったのだ。高山氏は平成18年の選挙では3698票にとどまっており、2倍近く票を伸ばしたことになる。

高山氏は元青年法律家協会(青法協)議長で、法曹界では「人権派」として知られる。これまで日弁連会長選に4回出馬しているが、過去3回の獲得票は3000~4000票にとどまっていた。今回は司法制度改革への批判票がどっと流れ込んだとみられる。

高山氏の選挙責任者を務めた武内更一弁護士は「予想された結果」と言う。「裁判員制度について全国の弁護士に無記名投票をさせたら、反対が圧倒的になるだろう。ただ、日弁連が裁判員制度を推進しているため、表立って反対できないだけですよ」

4月18日。東京・霞が関の弁護士会館で開かれた集会に、高山氏の姿があった。弁護士や市民を前に「裁判員制度は必ずつぶれる」とさけぶと、拍手がわき起こった。

日弁連の新会長になった宮崎氏は、制度に対する戸惑いが弁護士にあることを率直に認める。

ただ、「刑事裁判を改革しなければならないという弁護士も多い。これから1年で、全力を挙げて弁護士に理解を求める」と話す。

裁判員裁判で審理迅速化…だが「迅速な審理はどこかでしわ寄せが来る」

「裁判員制度の問題は審理が粗雑になること、そして、国民が多大な迷惑を受けるということだ」

元裁判官の西野喜一・新潟大学大学院教授は強調する。2月に裁判員制度実施延期の決議をした新潟県弁護士会も、この点を理由に挙げる。

「事件の7割は3日以内で終わる」

最高裁はそう説明しているが、西野教授は「迅速な審理はどこかにしわ寄せがくる」として、こう続ける。

「日本人は刑事裁判に『真実の解明』を求めている。陪審制度の米国のように、『裁判に勝つも負けるも弁護士の腕』というようなコンセンサスは日本にはない。被告、被害者双方に納得のいかない裁判になる」

また、市民からも疑問の声が出ている。3月に東京地裁の模擬裁判に裁判員役として参加した女性は「とても疲れた」と話し、素朴な疑問を口にした。

「制度を導入して、一体、何がよくなるの?」

不安は「責任の重さ」…どう払拭させるか?

最高裁が4月に発表した「裁判員制度に関する意識調査」では、4割弱が「義務でも参加したくない」と回答している。

参加に対する心配、支障で最も多かったのは、仕事や育児、介護への支障ではなく、「被告の運命が決まるので責任を重く感じる」だった。

この調査では制度への理解が深まるほど不安が解消されていく傾向が現れており、最高裁は広報活動に一層の努力をするとしている。

しかし、裁判員になれば、被告の有罪・無罪だけでなく、時には死刑にするかどうかまで判断しなければならない。

裁判員制度によって、国民はこれだけの負担に見合う“メリット”を受けられるのだろうか。

あるベテラン裁判官は「刑事裁判にかかわることで、社会の根幹を支える司法に対する市民の目が変わる。『裁判はこれでいいのか』という意識を一人ひとりが持つようになるだろう」と説明する。

一方で、裁判員制度によって裁判の真相解明機能がある程度低下する可能性も認めた上で、こう話すのだ。

「このやり方がベストなのかは分からない」

裁判員制度のスタート(来年5月21日施行)まで、あと約1年に迫った。20歳以上の国民のほとんどが、裁判員に選ばれる可能性がある。法曹三者による準備は進んでいるが、反対の声も依然根強い。この制度はどんな課題を抱え、どうすればそれを克服できるのか、検証する。

=(2)へ続く

【あと1年で裁判員(2)】「審理迅速化」の犠牲も…「精密司法」との決別

裁判員制度のスタートで消える従来の「精密司法」

「従来の法廷は記録をやり取りする場だった。その記録を眺め、判決では検察官が主張していない点まで言及する。判決を書くのに2、3カ月かかった」

あるベテラン裁判官は、これまでの刑事裁判をそう述懐する。

担当したある事件は判決までに約5年かかったという。警察、検察は犯行前の被告の行動、犯行後の被告の足取りまでしらみつぶしに調べた。その結果、事件の記録はロッカー数段分にも上った。

審理中はそのことを不思議には思わず、判決文を書く段になって初めて気が付いた。

「必要な部分は限られている。5年の審理のうち、どれだけ必要だったかと考えると、1年分ぐらいだったかな」

「精密司法」-。

起訴事実以外の被告の行動など事件の細部にまでこだわり、精緻(せいち)な立証を尽くす従来の刑事裁判の手法を、法曹関係者はこう呼ぶ。

しかし、それは時には重箱の隅をつつくような反証を招き、いたずらに審理に時間をかけるというマイナス面もあった。

その精密司法は、裁判員制度のスタートとともに過去のものとなる。裁判員となる一般国民の負担を減らすため、迅速な審理に重点が置かれるからだ。

初公判前には証拠を整理して争点を絞り込む公判前整理手続きが行われ、審理は従来より格段にスリム化される。

公判前整理手続きの重視…初公判前に「判断前提」が創られてしまう危険性も

今年3月、裁判員裁判をにらんで初公判から判決までを3日間の集中審理で行う試みが、実際の強盗致傷事件を対象に東京地裁で開かれた。

まず、公判前整理手続きで検察側の立証事実を5点に絞り込んだ。

従来なら判決までに10回程度の期日が必要だった事件は3日で終了、判決言い渡しはわずか10分程度で済んだ。想定通りのスピード審理だ。

だが、弁護人は集中審理による負担増を表明、検察側も公判前整理手続きでの争点の絞り込みに調整が必要との認識を示し、一定の課題も残した。

「約9割の事件が5日以内に終了すると見込まれる」

Up

最高裁がパンフレットなどでうたう裁判員裁判の迅速化。法曹関係者の中には、その迅速化の流れを懸念する見方がある。

「裁判員に負担をかけないということを重視するあまり、裁判官が公判前整理手続きで自分たちの視点で争点を絞り込み、公判の設計図を作る危険性が考えられる。そうなると、『有罪か、無罪か』の前提が、初公判前にできてしまうことになる」

そう指摘するのは、甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)だ。

日本弁護士連合会(日弁連)裁判員制度実施本部委員を務める岡慎一弁護士も「裁判所は短い時間で公判を終えると強調しているが、納得するまで話し合う必要のある評議もある。裁判員の負担軽減を重視しすぎて、裁判官が評議をリードして裁判所の判断に従わせる恐れもある」と指摘する。

ジレンマ…「スピードと精密性は両立しない」

公判がスピード化することで、丁寧な証拠調べができなくなるのではないか-との懸念もある。

元最高検検事で白鴎大法科大学院の土本武司院長(刑事法)は「迅速化しようとすると、ある程度精密性は犠牲になる。迅速性と精密性はどうしても衝突する傾向がある」と、双方の両立を課題として挙げる。

これに対し、ある検察幹部は「精密に捜査を行って慎重に起訴し、精密に審理して判決ということは裁判員裁判になっても変わらない」と強調する。

迅速化と精密性。双方の要請を両立できるのか。冒頭の裁判官はこう見る。

「公判前整理手続きで何が必要かをきちんと議論することで可能だ。検察官、弁護士の当事者の力量が問われることになるだろう」

=(3)へ続く

【あと1年で裁判員(3)】「守秘義務」押し付けるだけでは無理 足りない「ケア」

なぜ裁判員に「守秘義務」?…制度を機能させるための“担保”

妻「今日の評議、どうだった?」

夫「実は裁判長がね…。おっと、これはしゃべっちゃいけなかったんだ…」

1年後には、こんな会話が家庭で繰り広げられるかもしれない。

裁判員法は裁判員や、過去に裁判員を務めた人に守秘義務を課している。「評議の秘密」や、「裁判員として職務上知り得た秘密」は、生涯守らなければならないのだ=表を参照。

Up1

外部に漏らした場合には、懲役刑を含む罰則規定もある。

妻や夫、子供に話すのも「守秘義務の意義からすれば差し控えてもらいたい」というのが最高裁の見解だ。

なぜ、裁判員に守秘義務が課されているだろうのか。

最高裁は「評議でだれが何を言ったかが明らかにされれば、批判や報復を恐れて自由に発言ができなくなる」という点を挙げる。また、被害者などのプライバシーは当然守らなければならない。

このため守秘義務は、裁判員裁判を適切に進めるための重要な担保となる。

そうは言っても…人間は喋りたがる生き物

ただ、広く知られる「王様の耳はロバの耳」の話のように、秘密を握ると他人に話したくなるのは古今共通の人情というもの。

最高裁が4月に公表した「裁判員制度に関する意識調査」でも、裁判員として参加する場合の心配として「秘密を守り通す自信がない」を挙げた人は26・1%にも上った。

「秘密を生涯守るのは、そう簡単なことではない。守秘義務は裁判員経験者にとって大きなストレスになることは間違いない」

同志社大学文学部の余語(よご)真夫教授(社会心理学)は、そう指摘する。

余語教授らのグループは平成10年に、秘密の保持に関する興味深い実験を行っている。

118人の学生を対象に、恐怖心や嫌悪感を催すホラー映画のワンシーンを6分間見せた。このうち約半数の62人には「実験内容が漏れると結果に影響してしまうので、ここで見た内容や感想は今後1週間秘密にしておくこと」と指示、誓約書への署名も求めた。

1週間後、この誓約を破って実験の内容や感想を他の人に話してしまった学生は、33人(約53・2%)に上った。実に半数以上もの学生が、秘密を守れなかったのである。

“喋る”は本能…守秘義務を機能させるための制度的ケアが必要

余語教授は言う。

「人は、自分の経験や感情、考えなどを他者に開示する『自己開示』の欲求を内在的に持っている」

特に、感情経験に関する開示衝動は強く、喜怒哀楽を他者に語って共有しようという傾向があることが、近年の研究で分かってきている。

裁判員裁判で扱うのは殺人や傷害致死などの凶悪事件であるだけに、悲しみ、恐怖などの強い感情を喚起させる。悲惨な事件をめぐる評議での白熱した議論が、裁判員の自己開示衝動を刺激するのは明らかだ。

「評議で議論に負け、消化できない感情を抱えている場合なども人に話してしまうこともありうる」(余語教授)という。飲酒による影響も無視できない。

ただ、秘密は限定された他者との間で共有することによって保持することが容易になる。

「裁判員経験者が心の中を吐き出せるような相談窓口を開設するなど、生涯にわたってきめ細かいアフターケアをしていく仕組みが必要だ」

余語教授はそう提言する。

一方で、模擬裁判で裁判員役を経験した男性会社員(38)は複雑な心情を吐露する。「口が重い方ではないので、家族や友人には話してしまうかもしれない。しかし、被告のその後の人生を考えれば、そう軽く話せることではない…」

守秘義務を抱える裁判員経験者を、いかにケアしていくか-。その社会的議論はまだ、明らかに足りない。

【あと1年で裁判員(4)】仕事、通勤、育児…まだ整わぬ「負担回避支援策」

「裁判で仕事休めば、他の人の迷惑になる」

3月上旬に3日間、東京地裁で開かれた模擬裁判。

裁判員役として参加していた阿部美浦(みほ)さん(39)はこの間、夕方に模擬裁判が終わるといったん帰宅し、家事をこなした。その後、勤務先に向かい、連日、夜の10時から朝の6時まで夜勤をこなした。そして、午前9時過ぎには東京地裁に姿を見せる。

ほとんど睡眠の取れない3日間だった。

阿部さんは裁判所と職場を往復した3日間をこう振り返った。

「裁判に参加するために休めば、その間も自分の分まで仕事をする人がいる。会社には裁判員制度に向けた休暇制度がなく、有給の申請はできなかった」

中小企業の環境整備は進まず…

裁判員に選任されて裁判所に呼び出され、仕事を休まざるを得なくなった労働者に対しては、企業は解雇や降格などの不利益な扱いをしてはならない-と裁判員法は定めている。

トヨタ自動車やマンダムなどが裁判員休暇制度を設けるなど、大企業では裁判員制度に対応する動きが出てきている。

一方で、中小企業での環境整備は進んでいないのが現状だ。

東京商工会議所が中小企業を対象にした調査によると、裁判員休暇制度の導入を検討していない企業は9割に上った。

こうした企業は有給などで対応するとしているというが、同会議所の担当者は「会社や同僚への負担を思って、休日出勤をしたり残業をしたりすることで、仕事の埋め合わせをする人が多いのではないか。裁判のために休むとしても、有給を取らない場合が出てくる可能性もある」と打ち明ける。

「裁判員がスムーズに休暇を取れるよう、環境整備をしてほしい」

阿部さんは模擬裁判の最後、裁判所に対してこう要望した。

法務省は「裁判員制度は国民に行き過ぎた負担を強いるものではない」としているが、参加への環境づくりは、各企業の理解に頼っているのが現状だ。

裁判員に選任された際の負担は、何も自身の本業への影響に限ったものではない。

離島など、裁判所までの交通機関が限られた遠隔地の居住者が選任された場合、遠隔地居住というだけでは辞退事由に当たらない。日帰りができないため、泊まりがけで裁判に参加せざるを得なくなるケースも考えられる。

宿泊が必要な裁判員に対しては、地域によって8700円か7800円の宿泊費が裁判所から日当とは別に支給される。

まだまだ“不親切”なバックアップ策…法務省も「やってみなければ分からない」

とはいえ、裁判所が宿泊施設の予約や斡旋を行うわけではなく、参加者本人が宿を押さえなければならない。

「呼び出しから裁判当日までは時間もある。宿を探す時間は十分あるのでは」

法務省裁判員制度啓発推進室はそう言うにとどまっている。

また、子育て中の保護者が選任された場合、参加している間は子どもを保育施設に預けざるを得ない。厚生労働省は3月、各地の裁判所や自治体に一時保育制度を活用できるよう整備を求める通知を出した。

一時保育は、保護者の急病の際などに、保育園に通っていない子どもを預かる制度だ。

育児中の保護者が裁判員に選ばれた際、裁判所を通じて各自治体が保育施設を紹介することになるが、費用は自己負担となる。厚労省では「1日の一時保育の相場は2000~3000円。日当から十分にまかなえる」としている。

負担を強いられる国民に対し、現在のところバックアップ体勢が十分とは言い難い。

ある法務省幹部は本音を打ち明けた。

「実際にどこまで環境を整えればスムーズにいくのかは、スタートしなければ分からない。制度が始まってから、いろいろと調整すべき点が出てくるだろう」

=(5)へ続く

【あと1年で裁判員(5)完】誰だって「死刑」選ぶのは恐い 人を裁く資格と覚悟は

プロ裁判官でさえ「死刑」に逡巡する

「何かにすがらないと、プレッシャーに負けそうだった--」

大東文化大法科大学院の米沢敏雄教授(72)は昭和52年、宮崎地裁の裁判長として初めて死刑判決を言い渡したときの記憶をたどった。

被告の男は、貸金業の女性を殺害してゴミ捨て場に遺棄したとして、死刑を求刑された。事実認定は揺らがない。あとは量刑だけだった。

死刑か、無期懲役か。

米沢氏ら裁判官は死刑を選択した。

判決言い渡しの数日前、大分・臼杵(うすき)の石仏の前に米沢氏らの姿があった。米沢氏は切り立った崖(がけ)に彫り出された石仏を眺めながら、何度も自問した。

《死刑は正しい選択だっただろうか》

米沢教授は振り返る。

「人の命を奪った被告にもまた命がある。心に迷いがあったのか、自然と手を合わせていた。無心に拝むと、心がすーっと晴れていき、判決の日には迷いは吹っ切れていた」

模擬裁判参加者はいずれも「量刑判断」に悩み

来年5月から始まる裁判員制度で、私たちは初めて「人を裁く」という現実に直面する。

最高裁が今年4月に発表した意識調査では「被告の運命が決まるので責任を重く感じる」との回答が75・5%に上った。

「死刑判決にかかわるのは正直怖い。その人の人生を決めるという責任は重い。避けられるならば、避けたい」

今年4月、東京地裁で開かれた模擬裁判に参加した男性会社員(38)は話す。

昨年10月、別の模擬裁判に参加した会社員、鈴木山人さん(43)も量刑に苦しんだ1人だ。こう語る。

「裁判官と違い、量刑を決める物差しがない分、自分の価値観のみで短時間で決めてしまうのは抵抗があった。ややもすると『目には目を』の応報感情に流されてしまう」

「人を裁くこと」是認できる“理由”とは…

「1人の生命は全地球よりも重い」

昭和23年の最高裁判決の一文である。米沢氏の裁判官人生はこの言葉に導かれてきた。地裁、高裁を通じて死刑判決にも3度関与した。しかし、その思いにブレはない。事実認定や量刑に誤りはなかったと確信している。

ある日新聞で、かつて自分が死刑を言い渡した被告に刑が執行されたと知った。

言いようもないやるせなさを感じた。

「判断は間違っていない。だが気分のいいものではない」

死刑判決の宣告で、緊張の余りに声が出なくなってしまった裁判官がいた。その緊張感に耐えられないという理由で民事裁判の道を選んだ裁判官もいた。

退官後、米沢氏の元に1通の手紙が届いた。差出人は弁護士出身の最高裁判事。

法科大学院のテキストへの感想とともに俳句がつづられていた。死刑判決前の重い気持ちを詠んだ句だった。

極刑を言い渡したる日の氷雨かな

「職業裁判官としてどれだけ経験を積んでも、人を裁くことの重みは変わらない。悩み苦しむのは当たり前。ただ、だれもがそれだけの重みを感じるからこそ、被告の人生に真剣に向かい合える」

私たちに人を裁く資格があるだろうか。その重みを背負うだけの覚悟があるだろうか。

最高裁判事を務めた斎藤朔郎氏(故人)は、かつて法律雑誌に寄稿した論文にこう記した。

「人が人を裁くことを是認できるのは、裁く人が裁かれる人よりも上にあるからではない。それは、裁く人が法と証拠という客観的なものに支配されているからこそ、他人を裁くことが許されるのである」

=おわり

この連載は白浜正三、半田泰、福田哲士、森本昌彦、大泉晋之助が担当しました。

大変な大作で、このように多方面からの記事を長文で発表しているサンケイ新聞社の姿勢には、敬意を表するものです。

さて、この記事全体に問題はないか?と考えてみると、裁判員制度(裁判員裁判)の周囲をぐるぐる回っているような印象を受けます。

例えば、裁判員になると仕事を休むといった面での負担が大変だ(4回目)、との記事がありますが日本では一般市民に公的な義務が課せられるのは、選挙に一番に行った人が投票箱を確認することぐらいでしょうか?
まぁあまり無いわけです。だから裁判員になったときの負担は飛び抜けて大変ですが、負担が大変という事実への対抗軸は、裁判員制度の必要性でありましょう。

裁判員制度が必要 vs 裁判員の負担が大変、と見るべきだろうと思うのです。
しかし、この記事では裁判員制度の必要性、元をたどると「なぜ裁判員制度が決められたのか?」という点について言及していません。
むしろ1番では裁判員制度批判について色々な方面からの意見を掲載しています。

サンケイ新聞社が裁判員制度反対の立場を取るのであれば、このような回りくどい反対の根拠となるだろう事実の列挙という手段を執ることもないと考えるのです。
5番目では、結局のところ法務省や裁判所も含めて「問題の要素はあるだろうが、やってみないとわからないし、改善の余地はあるだろう」というところに納めています。
これは、サンケイ新聞社としても「現時点で裁判員制度に反対との意見表明はしない」という風に受け取りました。

結局、問題はたくさんあるよ。と指摘する記事であっても、これだけの大作になるというのはよく分かるし、その意味ではこの記事には一定以上の評価を与えるべきだと思うのですが、読者にとってはもっと踏み込んだ記事を期待するのではないのか?と思うところもあります。
特にサブタイトルが「あと1年」なのですから。

5月 9, 2008 at 01:20 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (3)

2008.04.08

裁判員裁判・来年秋から本格化?

サンケイ新聞より「裁判員制度、来年5月21日に施行 法務省、政令案を公表

法務省は8日、裁判員制度の施行日を来年5月21日とする政令案を与党に公表した。政府は近く閣議決定する。

方針通り5月21日施行となれば、同日以降に殺人や強盗致傷などの罪で起訴された事件については、裁判員裁判として公判が開かれる。

初めての裁判員裁判は、早ければ7月下旬から8月上旬になる見通しだ。

裁判員法では、施行日について公布日(平成16年5月28日)から5年以内と定め、来年5月27日が期限だった。施行日を5月21日としたことについて、法務省は、

  1. 国民への周知、体制整備のためできる限りの期間を確保する必要がある
  2. 5月21日は裁判員法の国会での成立日で丸5年にあたり、施行日としてふさわしい

としている。
最高裁や日弁連も5月中旬以降を希望していた。

裁判員制度の審理対象は施行日以降に起訴された殺人、強盗致傷、危険運転致死罪などの重大事件。

すべての対象事件は、初公判前に争点を整理するための公判前整理手続きがあり、初公判の原則6週間前までに裁判員候補者に呼び出し状を送付する必要があるため、施行後、実際に裁判員裁判が開かれるのは、早くても7月下旬から8月上旬になる見通しという。

法務省はあわせて、裁判員候補者名簿の作成準備を始める期日について、今年7月15日とする政令案を公表。

同日以降、裁判員裁判を実施する各地裁・支部は管内の市町村にどれぐらい有権者がいるかを照会した上で、9月1日までに各市町村に必要な裁判員候補者数を知らせる。
裁判員候補者には今年11月以降に通知が届く予定という。

18年から始まった捜査段階での容疑者の弁護活動に国費を出す「被疑者国選弁護制度」の対象事件を5月21日から拡大するとした政令案もまとまった。現在は、殺人や強盗など一部の事件に限定されているが、拡大後は窃盗や詐欺、恐喝などの事件にも適用される。

自民党は裁判員法制定過程で、施行日の政令について閣議決定前に了承を得るよう求めていた。

与党は8日、裁判員法の施行日を来年5月21日とする政府案を了承した。政府は近く施行日を定めた政令を閣議決定する。

同じくサンケイ新聞より「裁判員制度施行日、「希望通り」と最高裁 日弁連は最大限努力

「希望通り。あとは準備を進めるだけ」。
裁判員制度を来年5月21日から始動させる政府の施行日案が8日示され、最高裁幹部らは安堵(あんど)の表情を見せた。準備の遅れが指摘されている日弁連は「最大限の努力をしていく」としている。

最高裁の小川正持刑事局長は「具体的な日にちが決まり、国民の間に制度への『現実感』が一層高まると思う。気持ちを新たにし、準備する」と述べた。今後、裁判員選任手続きや審理、評議の進め方などについて細部を詰める。

一方、日弁連関係者によると、個人加入の各弁護士会は組織で対応する最高裁や法務省・検察庁に比べ、準備が効率的に進まない。
裁判員裁判の弁護人確保や弁護技術の向上が課題で、今年1月に陪審制度の米国から弁護士を招いた研修会後、弁護技術はレベルアップが図られているという。

2009年5月21日に起きた事件が裁判員裁判になるまでの手順は、逮捕・送検・起訴・公判前整理手続,裁判員呼び出し手続、第一回公判となるのでしょうから、計算上は最短だと7月16日には初めての裁判員裁判が開かれる可能性があります。
新聞記事にある「7月下旬」というのは容疑者逮捕が5月21日であっても検察が起訴するまで時間の掛かるややこしい事件であった場合に7月29日と計算できるので、このことを指しているようです。

現実には、事件直後に逮捕・送検にならずに10日間ぐらい警察の捜査に時間が掛かるようですと、8月は裁判所も夏休みですから、9月になってから裁判員裁判が数多く開かれることになるでしょう。

4月 8, 2008 at 02:34 午後 裁判員裁判 | | コメント (1) | トラックバック (1)

裁判員裁判の難点

朝日新聞より「一審は裁判員…「市民の常識」覆せるか、悩む高裁裁判官

一審で裁判員が意見を出し合ってまとめた結論を、これまで通り裁判官だけで審理する高裁、最高裁が覆せるのはどんな場合か――。
来春始まる裁判員制度で「手つかずの最大の課題」と言われているのが控訴審のあり方だ。高裁の裁判官も悩んでいる。

「一審で決着する裁判はまれです。二審、三審は裁判官が独自に判断するのなら、一審判決は事件の決着に何の影響も及ぼさないのでしょうか」

朝日新聞社に1月、読者から寄せられた質問メールの疑問は、裁判員制度がつくられた時からの課題だ。司法制度改革推進本部の03年の議事録には、弁護士や学者らのこんなやりとりがある。

「控訴審は一審の記録の検討が中心。市民には負担が重すぎる」

「一審の内容に誤りがないかを、記録に照らして事後的にチェックすることに裁判官が徹すればよいのではないか」

結局、控訴審や上告審は裁判官だけで審理することで固まったものの、昨年7月と10月に全国から裁判官が集まった研究会では、さまざまな意見が出た。

「検察、弁護側とも一審を主戦場にするべきなのは間違いないが、結論に影響のある新たな証拠が控訴審で提出された場合は、どうするのか」

「仮に、経験則に反するとして一審判決を破棄すれば、国民の常識が反映された結論が誤っていると宣言することになってしまう」

二審で一審判決を破棄する場合は、自ら結論を出す「自判」をするか「差し戻す」かどちらかを選ぶことになる。

「有罪から無罪に変える」など被告にとって有利な変更ならまだしも、「無罪から有罪に」という判断を下すことに、抵抗を感じる裁判官は少なくない。差し戻すとなると、改めて裁判員を選び直し、一審と二審の記録を市民に読み込んでもらうなどの必要があり、大きな負担となる。

最高裁の司法研修所はいま、高裁の裁判官や若手裁判官、刑事訴訟法学者を交えたチームをつくり、「控訴審の審理のあり方」をテーマに研究を続けており、今秋には報告書を公表する予定だ。

高裁での経験が豊富な裁判官の一人は「これまでよりは当然、一審の判断を尊重することになるだろう」と話す。別の高裁裁判官は「実際に制度が始まり、一審の裁判が一般の国民にどのように受け止められるかによって、控訴審のあり方も変わってくるのではないか」と予測。まさに手探りだ。(岩田清隆)

ここまで踏み込んだ議論は今までほとんど無かったと思うのですが、いよいよ実施が近づいてくると色々と考えてしまいますね。

日本の裁判は地裁・高裁・最高裁の三審制ですが、その内容について実際的なところはあまり知られていないかと思います。

もちろん地裁の判決に不満があれば高裁に控訴審の判決を求め、それでも不満なら最高裁に上告するのはよく分かっていることです。
もうちょっと細かく考えて、高裁は地裁と同じ裁判をやり直すのが仕事でしょうか?と考えてみます。
それでは単に二重にしているだけになってしまって意味がありません。地裁と高裁は役割が違っていて当然です。

建前として、地裁(第一審)で全ての事実が法廷に出されて、審理した結果が判決になります。
もちろん判決に不満がある側は「地裁の判断がおかしい」とするわけで、高裁はこの「おかしい」について審理するのです。

だから、地裁と高裁では判断するところが違っています。
こういうことを踏まえて、新聞記事を読んでみるとわたしが重要だと思うのは

二審で一審判決を破棄する場合は、自ら結論を出す「自判」をするか「差し戻す」かどちらかを選ぶことになる。

差し戻すとなると、改めて裁判員を選び直し、一審と二審の記録を市民に読み込んでもらうなどの必要があり、大きな負担となる。

つまり、差し戻しするよりも高裁が自判した方が良い、とするかどうかという問題が出てきそうです。
もちろん、差し戻し審で新たに集められた裁判員は、記録を読んで改めてやり直しの判決を出すのでかなり大変な作業になるでしょう。

こうなりますと、裁判員裁判制度の広報で「3日で判決」とか言っているように進むのが、現実的には無理という場合(裁判)も出てきそうです。
いくら迅速に進めるとしては「結論が出せないから打ち切り」には出来ませんから、裁判員裁判でも「予想外の長期審理」というのはありうることだと思います。

現在のところ、新聞記事のように「差し戻し審をどうする」とか「予想外の長期審理にどう対応する」といった、「起こりうる事柄」についての検討が十分ではないと思います。
一応の目安ぐらいは出しておきませんと、裁判員が全員ストライキといったことが起こるかもしれません。

4月 8, 2008 at 11:03 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2008.02.07

連日開廷が通常に

読売新聞より「初公判から判決まで「連日開廷」…東京地裁、4月から

来年スタートする裁判員制度を前に、東京地裁は今年4月以降、殺人など対象となる全事件について、初公判から判決までを原則数日間で終わらせる「連日開廷」とする方針を固めた。

国民が参加する裁判員裁判の約9割は連日開廷で5日以内に終えると想定されているが、同地裁は、プロの裁判官による現行刑事裁判でこれを前倒しすることで、制度の順調な滑り出しを図りたい考えだ。

来月上旬、東京地検と東京の3弁護士会との協議会で正式提案し、協力を求める。

裁判員裁判の対象となるのは殺人や傷害致死などの重大事件で、最高裁によると、2006年には全国で3111件、東京地裁では388件。初公判から判決までの平均審理期間は6か月だが、被告が否認している事件では1年以上かかるケースも少なくない。

これを3~5日で終えるため、同地裁はまず、初公判前に検察、弁護側の主張を整理して争点を絞り込む「公判前整理手続き」を全対象事件に適用する。06年にこの手続きがとられた対象事件の平均審理期間は1・3か月に短縮された。

さらに、証拠や証人の数を減らしたり、証人尋問などを効率的に行ったりすることで、連日開廷を実現させたいとしている。

同地裁の方針について、ある検察幹部は「全く異論はない」と、前向きの姿勢を示す。カギを握るのは弁護士側の協力だ。組織的な対応ができる検察と違い、各事件を個々に担当する弁護士にとって、連日開廷となれば、その間、他の弁護士活動が全くできなくなるなど大きな負担がかかる。

このため、国選弁護人を複数つけたり、公判前整理手続きの進め方や開廷時期などで弁護士側に配慮したりするなど、負担軽減が図られることになりそうだ。

同地裁の刑事裁判官は「裁判員制度が始まれば連日開廷は避けて通れない。本来、審理計画は個々の裁判官の判断に任されるが、制度がスムーズに開始できるよう、すべての刑事裁判部が連日開廷を目指すことで一致した」としている。

裁判員制度については以前から強い関心がありました。
これは、昔からえん罪というか裁判官の判断力が工学系の問題について常識外れであったりすることに驚いていたからです。

つまり、陪審員制度の導入が適当かと思っていたので、裁判員制度にも賛成していたのですが、段々と現実になってくるにつれて「大変だな」と思うようになっています。

その一つが「連日開廷」で、2005年ぐらいからいくつかの裁判を継続的に傍聴し関係者の説明を個人的レベルで聞いたりしていると、法定外のでの仕事が莫大であることが分かりました。

開廷のたびに前回の法廷での相手側の証拠などについて反論をしないと意味がないわけで、そのための資料作成など準備作業があるわけです。

その時間を取ることが出来るのか?

確かに、手続のための手続といったケースもなきにしもあらずのようですが、そういうムダを排除するとしても、本当に連日開廷できるぐらいに公判前整理手続で真実を追究できるか?と感じます。

だからこその裁判員制度一年前の実験なのでしょう。これは注目しなければいけません。

2月 7, 2008 at 09:19 午前 裁判員裁判 | | コメント (1) | トラックバック (0)

2007.11.15

取り調べDVDが証拠不採用

読売新聞より「録画から「任意性に疑い」と調書却下、大阪の殺人未遂公判

大阪地検が取り調べの様子をDVDに録画し、殺人未遂罪で起訴した大阪市西成区、無職蓮井一馬被告(88)の第4回公判が14日、大阪地裁であった。

蓮井被告は捜査段階で自白調書を作成されたが、公判では殺意を否認しており、西田真基裁判長は前回の法廷で上映されたDVDの録画内容から「取調官による誘導や誤導があった。任意性に疑いがある」として、検察側による自白調書の証拠請求を却下した。

裁判員制度を控え、検察当局は裁判員の負担を軽減し、自白の任意性を判断しやすいよう取り調べの録音・録画を試行。公判でのDVDの証拠採用は全国で4例あるが、調書の却下につながったのは初めて。

起訴状によると、蓮井被告は5月、自宅アパートで、共同トイレの修理を巡って住人男性とトラブルになり、果物ナイフで胸などを刺して約3週間のけがを負わせた。公判では、自白調書の任意性を判断するため、検察、弁護側双方がDVDを証拠請求した。

DVDには、自白調書の内容を確認する様子を約35分間にわたって録画した。検察官から「殺そうと思ったのは間違いないね」と聞かれ、蓮井被告が「間違いないです」と認める一方で、「殺そうとは思わんけど」と殺意を否認したり、調書の内容について「わかったようなわからんような……」と言葉を濁したりする場面も収められている。

西田裁判長は「殺意を否定しようとしたのを無視し、調書に沿う供述をするまで質問を続けた」と指摘。「高齢で聴力が著しく低下しているのに早口で次々に質問し、被告に不利な内容を押しつけていた疑いがある」などと批判した。

蓮井被告の弁護人で、「日本弁護士連合会取調べの可視化実現本部」副本部長の小坂井久弁護士は「裁判員制度で、録音・録画が任意性を判断する有力なツールになり得ることが証明された」としている。

どういう意図で検察がDVDを証拠申請したのか分からないというのは、モトケンさん(矢部弁護士)も述べています。
素人考えとして、検察が取り調べ状況の映像を証拠申請するのであれば「強要など問題のある取り調べはしていません」と証明すると思っていたので「全取り調べ状況を示すしかないだろう」と考えていました。
その場合「何時間にも及ぶ映像記録をどうするのか?」とも思っていて検察が抵抗するのも当然か?と思っていたら意外とあっさりと出てきたので「どういう意味なのだ?」とちょっと不思議に思っていました。
そうしたらちょっと前に落合洋司弁護士がこんな記事を紹介して解説しています。
中日新聞より「裁判員が自白調書の任意性を判断・最高裁研修所の研究結果判明

最高裁司法研修所(埼玉県和光市)による裁判員裁判の在り方に関する研究結果の骨子が10日判明し、自白調書の任意性が争われた場合、裁判員が認めない限り証拠採用しない方針が示されることが分かった。裁判官は検察側、弁護側双方の任意性立証を解説したり、自分の考えを説明したりしないことも盛り込まれている。

研究結果の骨子は「裁判員裁判のイメージを示したもの」(最高裁刑事局)とされ、実務上の指針となりそうだ。また骨子は、富山などの冤罪(えんざい)事件で注目されている取り調べの録画を「有効な手段」と評価し、本格導入を促す可能性もある。

司法研修所は本年度、東京地裁などの裁判官計5人に「裁判員制度の下における大型否認事件の審理の在り方」に関する研究を委嘱し、10月までに骨子がまとまった。

骨子によると、まず裁判員裁判の基本的な考え方として

  1. 法廷での供述・証言に基づき審理する「口頭主義」を徹底する
  2. 審理時間を大幅に削減し、公判に立ち会うだけで必要な判断資料が得られるよう工夫する
  3. 裁判官室で供述調書などを読み込む従来の方法は採らない
-などと指摘した。

続いて被告が捜査段階の自白を翻して起訴事実を否認し、捜査段階の自白調書は任意の供述か、取調官の強要によるものかが争われるケースに言及。これまでは取調官の尋問や被告人質問などが長く続き、裁判官が全供述調書を証拠採用した上で供述の変遷を検討して判断してきたが、裁判員裁判では「こうした手法は採り得ない」との見解を示した。

取調官の尋問について「供述経過を証言させ、任意性などの肯定判断を得ることは期待すべきでない。尋問も30分-1時間程度(主尋問)で終える場合に限る」とし、検察側に取り調べ時間、場所などのほか容疑者の体調も含めた経過一覧表の作成も求めている。

その上で自白調書の証拠採用に裁判員が同意する必要性を示し「捜査の実情に関する裁判官の理解を前提にすれば任意性を肯定してもよいケースでも、裁判員が確信する決め手がない場合(検察側は)任意性立証に失敗したと考えるべきだ」と付言した。

この最高裁研修所の発表に対して、落合洋司弁護士は

「供述経過を証言させ、任意性などの肯定判断を得ることは期待すべきでない」ということになると、常識的な意味での「任意」(刑事訴訟上の「任意」は常識的な意味では使われていないので)とは言えない取調べがあったと判断されれば、供述調書の取調べ請求が次々と却下されるということが起きる可能性が高いでしょう。正にその点を、上記の通り、「捜査の実情に関する裁判官の理解を前提にすれば任意性を肯定してもよいケースでも、裁判員が確信する決め手がない場合(検察側は)任意性立証に失敗したと考えるべきだ」と指摘しているものと思います。

この研究成果は、現行の捜査、特に被疑者取調べに対し、大きな変革を求めるものと言っても過言ではなく、その意味には極めて重いものがあります。

諸外国における取調べ改革(可視化など)を尻目に、改革を怠り従来の制度に安易に依存してきたツケが、ここに来て一気に噴出してきた、と言っても過言ではないと思います。

との見解を発表されています。
そこで、改めて最高裁研修所の発表を読んでみると

取調官の尋問について「供述経過を証言させ、任意性などの肯定判断を得ることは期待すべきでない。尋問も30分-1時間程度(主尋問)で終える場合に限る

これに注目が行くわけで、それを落合弁護士が

供述経過を証言させ、任意性などの肯定判断を得ることは期待すべきでない」ということになると、常識的な意味での「任意」
(刑事訴訟上の「任意」は常識的な意味では使われていないので)
とは言えない取調べがあったと判断されれば、供述調書の取調べ請求が次々と却下されるということが起きる可能性が高いでしょう。

と書かれていることから、結局のところ今までの自白の任意性の争いでは、取調官と被告のどちらが信用できるのか?という「雰囲気を争っていた」という意味じゃないのか?と思ったのです。

自白が客観的に見て証拠能力があるのか?という問題であれば、取り調べそのものに立ち会うわけにはいかないのだから、映像記録を残すぐらいしか手がないと思っていたのですが、実は自白の信用性について客観的な判断ではなくて、自白の真実性について争っている検察と被告とのどちらを信用するのか、という間接的な手法で判定していたということになるのでしょうか?

であるとすると、今回の裁判で検察が35分のDVDを出してきた意図も「取り調べは妥当な範囲です」という雰囲気の証拠だったのかもしれません。
いくら雰囲気が妥当でも被告の意志が定まっていないのでは、検察が有罪の証拠とすることは出来ないでしょう。
その点をモトケンさんは

検事の取り調べ技術が下手くそだったのではないか。
何のために録画するのか、という問題意識のピントがずれていたのではないか。
検察官は本件の立証の柱をどう考えていたのか。

などの疑問が頭に浮かびます。

とコメントされています。
刑事裁判だけではなく民事裁判においても一般社会の常識からはすぐに思いつかない(よく考えると妥当であっても)ヘンな「お約束」があります。
わたしは、この何年間か複数の裁判の応援をしてきたので段々と「お約束」の存在やその意味を理解できるようになってきましたが、刑事裁判においても裁判員制度がこれらを分かりやすくすることは全体にとっては良いことかもしれません。

11月 15, 2007 at 10:51 午前 裁判員裁判 | | コメント (1) | トラックバック (1)

2007.10.12

裁判員裁判では量刑にバラツキ

サンケイ新聞より「裁判員裁判、量刑に開き 同一シナリオでも無期~懲役16年 (1/2ページ)

今年に入って全国35カ所で行われた模擬裁判員裁判で、起訴事実は最高裁が作成した同一シナリオで証拠もほぼ同じであるにもかかわらず、判決が懲役16年から無期懲役まで開きがあることが、最高裁のまとめで分かった。

一般市民が有罪・無罪だけでなく量刑まで決めるのが裁判員制度の特徴。職業裁判官による現在の裁判では量刑のばらつきは少ないとされるが、市民感覚を量刑にも反映させる裁判員制度では、受け止め方で大きな差が出る特徴が浮かび上がった。

今年2~8月、全国35カ所の地裁(支部を含む)で行われた模擬裁判では、最高裁が作成した同じ設定の事件を題材にした。
男性被告が、タクシー運転手の男性をナイフで刺して死亡させ、約8700円を奪ったとして起訴され、被告は事実関係を認めている-というシナリオだ。

起訴罪名は、地裁ごとに強盗殺人罪と強盗致死罪に別れている。しかし、両罪とも法定刑は「死刑または無期懲役」。酌量によって「懲役7年以上30年以下」にまで減刑できる点も同じ。

各地裁で同じ事件を審理したにもかかわらず、最も軽かったのが懲役16年(1地裁)、最も重かったのが無期懲役(8地裁)と、大きな開きが出た。最も多かった量刑は、懲役20年(9地裁)。そのほか、懲役30年(8地裁)、懲役28年(1地裁)、懲役25年(6地裁)、懲役23年(2地裁)だった。

最高裁は、ばらつきについて「被告役、証人役の演技力に差がある」などの点を挙げ、「ある意味当然」としている。

一方で別の見方もある。シナリオは今月1~3日に東京地裁で行われた模擬裁判でも使われたが、熱演した被告役が終了後、裁判員に「演技は判断に影響したか」と質問。裁判員は「あまりなかった」と答えている。

裁判では、事実認定に加え、被告にとって有利な事情と不利な事情を加味して量刑が決められる。職業裁判官にはケースの似た事件を審理した経験などから、量刑は「だいたいこの辺になる」という“相場観”が形成されているという。

東京地裁の模擬裁判の評議では、職業裁判官3人は「無期懲役は重すぎる」と判断。量刑は懲役25年が2人、「20~30年の範囲」が1人だった。一方、裁判員の量刑は無期懲役1人、懲役30年2人、懲役25年3人とばらつきが見られた。結局、判決は裁判員法の規定により懲役25年となった。

ベテラン裁判官は「今までの相場はプロの裁判官が作ったもので、裁判員裁判がこれに影響された量刑でいいのかという問題がある。裁判を重ねることで、新たな相場が形成されるのではないか」と話している。

バラツキがどのような形なのか表にしてみました。

量刑35ヶ所の地裁中
懲役16年(1地裁)3%
懲役20年(9地裁)26%
懲役23年(2地裁)6%
懲役25年(6地裁)17%
懲役28年(1地裁)3%
懲役30年(8地裁)23%
無期懲役(8地裁)23%

東京地裁での模擬裁判では、3人の職業裁判官の判断は、懲役25年が2人、「20~30年の範囲」が1人ですから、裁判員裁判の判決バラツキの中央になって正に平均値です。

そういう視点でこの表を見てみると、量刑を重くする方向と軽くする方向に大きく分かれていて、正にバラツキが大きくなるわけですがこれこそが社会が現在の刑事裁判制度に漠然とした不満を持っていた理由の表れではないでしょうか?

また、裁判員裁判ではその時々の社会の風潮がダイレクトに反映されのではないかと思います。
現在の社会の風潮は、先行きの不透明感などから重罰化を求めているのは明らかで、社会の風潮が重罰化を求めているときに、判決に反映しないのであれば裁判員制度の意味はないとも言えるでしょう。
日本の刑法では、量刑の相場という言葉があるとおり、量刑は機械的に決まりません。
このために、現在の職業裁判官だけが判決する裁判制度においても長期的には相場は変化していますし、そのことで法律改正も進んでいます。

こんなことを考えると、社会のその時々の判断が判決に反映するのは必要なことであると思います。
見方によっては「ボツネタ」氏(岡口裁判官)がおっしゃるように「現実にも,ラッキーな被告人やアンラッキーな被告人がでてきそうですね。」となりますが、これも「何に比べて」「いつに比べて」なのかということになるでしょう。

量刑の相場があるのですから「今どきこんな事件に以前からの相場では」という判断があって量刑の相場が変化してきたことは間違えないでしょう。
その辺かの速度を裁判員裁判は大きく変えることになると思います。それを「行きすぎだ」となるのかどうか、これはやってみないと分からない。

現実の被告にとっては、期待する量刑のどこら辺の判決になるのか分からない、ということあるでしょう。

その面で「ラッキー」と「ガックリ」に分かれるのは容易に予想できますが、これはすぐに「裁判員裁判では判決はこの位の範囲になる」と幅をもった表現に変わると考えます。

スッパリ言えば「裁判員裁判では量刑にバラツキが出る」と考えるのが現実的でしょう。

10月 12, 2007 at 09:42 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2007.08.16

裁判員制度対応で自白調書を不提出に

東京新聞より「自白調書、不提出も 裁判員対策で最高検試案

市民が刑事裁判の審理に加わる裁判員制度に備え、最高検は15日までに、捜査・公判対策の「試案新版」を作り、「任意性、信用性に問題がある自白調書は、疑問を抱かれたときのダメージが極めて大きく、証拠提出しないという選択もあり得る」との方針を打ち出した。

自白調書は、任意性などを否定されて無罪判決につながるケースもあるが、これまでは「ほかに取って代わる明確な証拠があれば別だが、よほど信用性に問題がある場合を除けば自白調書を証拠請求してきた」(検察幹部)とされてきた。
提出自体の回避は従来方針の転換となる可能性もあり、捜査や公判の実務に影響を与えそうだ。

最高検は昨年3月に旧版の試案を公表。その後の法曹界の議論や模擬裁判などを踏まえて大幅改訂し、より実践的な指針として新版を作成した。

新版は、有罪への疑問を抱かせかねない立証を控える一方、犯行の悪質さを訴えるため被害者を効果的に尋問することなど、裁判員に与える印象を重視した点が特徴。
(共同)

「本当かよ?」と思ってしまう報道ですが、自白調書の任意性が否定されて無罪になった事件では、自白調書の内容自体だけで無罪になった例はさすがにないでしょう。

ほとんどの場合が、自白調書が信用できないとする他の証拠との評価で自白調書が信用できないとなっているでしょうから、そのようなケースであらかじめ自白調書を出さないと決定したとすると、公判では捜査自体が違法であったとするような展開になりかねないから、自白調書を出さないから有罪に持ち込めるということならないのではないか?

つまりは最高検が問題だと考える「自白調書に疑問を抱かれたときのダメージが極めて大きい」とは他の裁判へのダメージのことで、問題の裁判では検察が負けることは必然、という事なのだろ。

なんかヘンではないか?と感じます。
裁判全体を問題にしているのではなく、検察の権威=面子を潰さないことを目的にしている、と言われても仕方ないのではないか?

法律の権威は、明らかにすることで保たれているのだから、公開裁判が全世界で支持されている。 何かを公開しないで隠すことは、裁判=法の権威を多少とも傷つけることになると思うのだが。

むしろ、日弁連が主張している「取り調べ全てのビデオ記録」を使う方が実際的ではないだろうか?

8月 16, 2007 at 10:25 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2007.05.24

裁判員制度、問題がゾロゾロ

読売新聞より「裁判員制度、裁判長から死刑選択の可否質問も…諮問委答申

2009年に始まる裁判員制度に向け、最高裁の刑事規則制定諮問委員会は23日、裁判員の日当を上限1日1万円とするなど裁判員制度に関する規則案をまとめ、最高裁に答申した。

裁判員の選任手続きでは、呼び出しを受けて裁判所に来た約30人の候補者の中から、事件を審理する6人の裁判員が選ばれる。

候補者への質問は原則、全員に対して個別に行われるが、まず、予断や偏見なく審理出来るかどうか判断するため、〈1〉事件の被告や被害者と関係があるか〈2〉自分や家族などが類似の犯罪の被害に遭ったことがあるか〈3〉事件のことを報道などで知っているか――などを聞くことになる。

さらに、死刑の可能性がある重大事件では、「有罪とされた場合、法律で定められた刑を前提に量刑を判断出来ますか」「どのような犯罪であっても、絶対に死刑を選択しないと決めていますか」など、死刑制度に対する考え方を確かめる質問もされるという。

裁判員候補者に対する質問案については、法曹3者の中には、もっと候補者の家族構成や学歴、職歴、裁判員としての心構えなどにも踏み込んで聞くべきだとの意見もあったが、裁判員の負担軽減を考え、ぎりぎりまで質問数を絞り込んだ。

わたしは裁判員制度について、当初から賛成でしたが実施が近づくにつれてドンドン問題が出てきて「本当に出来るのか?」という感じが強くなってきています。

今回発表された内容もちょっと「???」です。整理すると

  • 30人の裁判員候補を裁判所に呼び出す
  • 1人ずつ面接する
  • 事件の被害者・加害者と関係があるか
  • 自分や家族が類似の犯罪被害に遭ったことがあるか
  • 事件のことを報道で知っているか
  • 量刑を判断できるか
  • 死刑を選択できるか
  • 4人までは検察・弁護側が裁判員になることを拒否できる。
  • 最終的に6人の裁判員を選任する

これを実行するのにどれほどの時間が掛かるのでしょうか?
そもそもこれを一日で全部終わらせることが出来るのか?

8時間として(そんなに時間は掛けられないと思う)480分、30人で割ると1人16分。
各種手続きを考えると、1人の面接に割ける時間は数分でしょう。

そもそも、上記の内容を一律に面接で聞くとして、その結果の反映は一律になるとは思えない。
特に「類似の犯罪被害に遭ったことがあるか?」について、YES であれば裁判員として不適格とするのは合理的と言えるのか?
まぁ被害に遭ったとなれば、相応に思い込みがあると断ずるのは当然かもしれないが、被害に遭わなくても思い込みがある例は幾らでもあるだろう。
わたしは、裁判員制度すなわち一般市民が判決に関わる必要があると考えた理由の一つに、裁判官の知識が社会の常識とずれている場合にどうするのだ?という問題が意識がありました。

特に技術的あるいは専門家の領域の知識については、裁判所が選任した鑑定人の意見を無批判に採用したりしていないのか?といったところが問題だと思っています。
裁判員制度で改善が期待できるのがこういった面であるとすると「思い込みがあった方が良い」とも言えるわけです。

冷静に考えるとえらく難しい問題であるのは明らかですが、これを「同種の犯罪被害に遭ったことがあるか? YES or NO を聞いただけで判定できるのか?判断の意味があるのか?」とは思うわけです。

「量刑の判断が出来るか」については聞くだけムダだと思う。
元の記事では「有罪とされた場合、法律で定められた刑を前提に量刑を判断出来ますか」となっているが、この質問に対して「判断できません」というのはどういう人を想定しているのだろう?逆に「どんな場合でも絶対に正確に判断できます」と返事できる人は居るのだろうか?
まして「刑の相場はどうなっているのだ?」は以前から問題になっています。「判断できません」という回答の中に少なからず「相場は分からない」が入ってしまう可能性がある、おそらくは「相場の判断については問題にしない」となるとは思いますが、そんなことを面接時間数分の間で説明や議論が出来るとは思えない。

こんな風に問題点を考えた場合、30人の候補から6人を選ぶことについて、何日も掛かるようだと実際の裁判を開くのがいつになるか分からない、ということになりかねないのではないか?と危惧します。

読売新聞の別の記事を紹介します。「同一被告複数事件の「部分判決制」成立…裁判員制へ法改正

2009年に始まる裁判員制度に向け、複数の事件で起訴された被告の裁判を事件ごとに分離し、それぞれ別々の裁判員が審理する「部分判決制度」を盛り込んだ改正裁判員法が22日、衆院本会議で可決、成立した。

今回の改正は、1988~89年に幼女4人を次々に殺害した宮崎勤死刑囚の裁判のようなケースを想定している。
この裁判では四つの事件を順々に審理したため、1審の死刑判決まで7年かかった。
裁判員制度で同じ方法をとると、裁判員の負担が大きくなる。

このため、導入される部分判決制度では、例えば、被告がA、B、Cの三つの事件で起訴された場合、裁判官が裁判を三つに分離する決定をし、それぞれ別の裁判員を選ぶ。
裁判官はすべての審理を担当する。

この法律改正については、わたしが読んでいる法曹関係者の記事にかなり明確な批判が出ています。

元検弁護士のつぶやき

●裁判員制度の「部分判決制」
誰が考えたのか知りませんが、かなり無茶苦茶な制度のように思います。

ボツネタ

裁判員法 施行もされていないのに 改正法が成立
最初の法案が,よく考えず,とりあえず,成立させたものだっていうのが,よくわかりますね。

こういうニュースと合わせて読むと「現行の法体系に裁判員制度だけ取って付けてもダメだろう」となりますが、これは以前から指摘がありました。

1年前の記事ですが「裁判員制度・自白を考える」で、落合弁護士の記事を紹介しています。

自白に依存した立証が多用される制度(正に「自白の重要性」が語られる、我が国の現行刑事司法です)においては、自白の任意性(証拠能力)、信用性(証明力)の評価が極めて重要にならざるを得ず、そういった評価を裁判員に強いるのは、極めて困難(ほとんど不可能)であるというのが、私の率直な意見です。

この問題は、

自白に依存した立証を多用させる刑事実体法の
内容によるところが大きく、
本当に裁判員制度を実効性のあるものにしよう
とするのであれば、
刑事実体法を大改革し、
犯罪成立上、客観的な要素を中心に据えて、
犯罪体系を構築する必要があるでしょう。
その点を放置したまま、裁判員制度を導入しても、裁判官や検察官、弁護士(いずれも専門教育を受け職業として刑事裁判に携わっている)ですら認定に悩む自白の任意性、信用性を、裁判員に的確に判断しろ、というのが無理というものです(例外はあると思いますがごく一部でしょう)。

各地で、裁判員制度を想定した模擬裁判が行われているようですが、やればやるほど、こういった本質的な問題を解決しないまま制度だけを作ってしまった問題点が深刻化するだけではないかと思います。

と述べていらっしゃいます。

おそらくは、問題のかなり多くがここに集中するのですが、実は法律の構成に「犯意」が入っているので、今度は法律全体を変えないとダメだとなって、それでは法律の基になっている文化についても検証が必要だ、となりますから「百年河清を待つ」でも出来ないことでしょう。
一方で、法律も国内や国内の文化だけに立脚していればよいという時代は終わりつつあって、刑事罰や裁判のあり方について世界中が相互に批判しているのですから、何らかの世界的な文化水準に合わせた法的判断の標準化、といったことが求められているのも明らかです。
ドンドン話は大きくなっていきますが、これが現代なのでしょう。

5月 24, 2007 at 09:57 午前 裁判員裁判 | | コメント (8) | トラックバック (2)

2007.05.05

裁判員の心得だぞうで

東京新聞より「証拠と常識で判断 裁判員に審理前説明へ

2009年から始まる裁判員が加わった刑事裁判で、裁判長が審理に先立ち、裁判員に口頭で説明する内容のモデル案が4日、明らかになった。
「法廷の証拠だけに基づき、常識に従って判断する」「報道情報で判断しない」「意見は裁判官と同じ重み」「務めた印象は話しても構わない」などと裁判のルールや注意事項が並んでいる。

裁判員への説明は、裁判員法で「裁判長は最高裁規則で定めるところにより、権限、義務その他必要な事項を説明する」と規定されている。最高裁は規則で「立証責任の所在」「証拠主義」などと大枠を示し、具体的内容は各裁判所に任せる方針。

裁判員はこうした説明を了解し「公平誠実に職務を行う」と宣誓する。

今回のモデル案は東京地裁を中心に作成され、諮問委員会準備会で法曹三者(最高裁、法務省、日弁連)や法学者らからも意見を聴いた。モデル案は23日に開かれる最高裁規則制定のための諮問委員会で報告され、全国の裁判官に配布される予定。

この記事は、東京新聞、中日新聞に載っていて、共同通信の配信です。
共同通信が配信して、新聞社の中で一社だけ取り上げた場合には後から訂正があったりするのですが・・・・

まぁこういう説明にならざるをえないでしょうねぇ。
しかし「常識に基づき判断する」だけでは「報道情報で判断しない」というのと「世評を判断基準にするかしないか」が矛盾しませんかねぇ?
さらに言えば、あまり無いかもしれませんがたまたまその事件の問題について極めて専門的な知識の持ち主が裁判員になっていたらどうするのか?

現行のプロの裁判官だけが判決する、という仕組みが誇張して言えば「裁判官は世間知らずだが、判決そのものは平均値に収まる」(判決には保守的安定がある)とは言えると思います。
わたしはその点について批判的であるから、一般市民が判決に加わる方が良いと考える者ですが、それは「判決(裁判)の不安定性」とか「裁判官+裁判員の構成が当事者にとって不公平になることがある」に直結します。

逆に言えば「今までと同じ裁判結果ではない」ことは明らかであるし、裁判員制度の導入そのものの目的がこれであった。

であるのなら「報道情報で判断しない」とだけ言い切れば済むことなのだろうか?
証拠の採用については自由心証であるから、裁判官と裁判員の知識によって証拠採用は決まるわけで、知識が自力で判断するほどのレベルではないから「報道情報で判断しない」というのは良く分かるが、その逆に「報道情報よりも深く知っている裁判員」が参加している場合には証拠採用も大きく変わる可能性があります。
つまり「報道情報で判断しない」では説明になっていない、と感じるところです。

今まで、トンデモ裁判として記事にされたものの中に「裁判官の常識欠如」が幾つもあります。
つまり「常識に従って判断する」という「常識」とはナンなのか?となりそうです。

5月 5, 2007 at 02:22 午後 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2007.05.03

裁判員が自信を持って良いわけがない

読売新聞より「裁判員制度、最高裁長官が「自信持って参加を」と呼びかけ

最高裁の島田仁郎長官は2日、憲法記念日を前に記者会見し、2009年に始まる裁判員制度について、「制度の認知度や参加意欲も少しずつ上がっている。制度開始前にさらに多くの人が前向きな気持ちになれるよう、環境整備に総力を挙げて取り組みたい」と抱負を述べた。

昨年12月の内閣府調査では約65%が参加の意思を示す一方、半数以上が「責任が重い」などの理由で不安を感じていると回答した。この点について、島田長官は「裁判官と十分に意見交換をして、一緒に結論を出すのだから心配ない。自信を持って参加してほしい」と呼びかけた。

なんか違和感のある発言だと思っていたら、落合洋司弁護士がガッチリと批判しています。

弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 「日々是好日」より「[話題][裁判制度]裁判員制度、最高裁長官が「自信持って参加を」と呼びかけ

この話を聞いて、「そうか、心配ないんだな、自信を持とう」と思うような人は、人の運命を左右する裁判員になる適性に問題があるおめでたさ、安易さの持ち主と言えるでしょう。

この問題の深刻さを、このような安易な発言でごまかそうとする最高裁長官も、長官としての資質に問題があるのではないかと思います。

わたしは裁判員制度に当初から賛成していますし、今でも反対ではありません。
その理由は、いくつかのトンデモ裁判やトンデモ法曹関係者の情報に接して「社会に対して畏れを持たない司法は無いだろう」と感じたからです。

少なくとも社会に畏れを持っているのであれば、刑事裁判に自信を持って参加しちゃいかんでしょう。
これは職業裁判官だって同じ事だ。

最高裁長官がこんなコメントを出すような状態だから、社会が裁判に関わるべきだと。
裁判を信用しなくなったのだと。

遠因はこういうところにあるのだと思う。

5月 3, 2007 at 01:22 午後 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2007.04.21

裁判員の呼び出し免除期間

読売新聞より「多忙期は裁判員に呼び出さず…年2か月免除を最高裁が検討

裁判員の選任手続きで、特定の期間だけ参加が難しいという裁判員候補者に対し、年2か月を上限とする呼び出し免除期間を設ける方向で、最高裁が検討していることが分かった。

昨年10月から今年2月に約5600人を対象に行ったアンケート調査の結果を踏まえたもので、国民の負担を軽くする一方、なるべく多くの候補者を確保するには年間2か月程度が妥当と判断した。

最高裁が昨年11月に公表した選任手続き案では、毎年、選挙人名簿から1年分の候補者(約37万人)をくじで選んだ後、全員に「調査票」を送付し、

〈1〉農繁期や企業の決算期など特定の期間だけ参加困難
〈2〉重病で年間を通じて参加できない

などの事情を把握。個別事件の候補者になった段階で、それぞれの事情に応じて呼び出しを免除するとしていた。
その際、参加困難な「特定の期間」をどこまで考慮するかが検討課題となっていた。

その他、転勤時期が集中する3月・4月をどうするのか?という問題はあるでしょうね。
4月には裁判官も異動が多いので、3月中に結論を出してしまう、あるいは次年度に引き継ぐといった決断を裁判長がしているのは、民事裁判ではよく知られているところです。
裁判員裁判では「数回の審理で結審」が目標ですから年度末といったことには対応できるということかもしれませんが、裁判員は集めにくいでしょう。

こんな事情が積み重なって、アメリカでは陪審員になる人たちの層が固定化してしてしまい、弁護技術としてそういう陪審員層にアピールする方向に向いてしまう、といったことが起きているようです。

多くの人が関わる制度ですから、やってみないと現実にどんな問題が出てくるのかは分からないでしょうね。

4月 21, 2007 at 08:57 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2007.04.08

模擬裁判員裁判・福岡

毎日新聞より「裁判員制度:「裁判員役」の市民、量刑判断に負担の声--死刑求刑の模擬裁判 /福岡
9年5月までに始まる裁判員制度の模擬裁判が5、6日、福岡地裁であった。
タクシー運転手1人が殺害された強盗殺人事件で死刑求刑された被告人に「更生可能性がある」と懲役30年を言い渡す結果となったが、裁判後の座談会では裁判員役の市民から「判決後も心理的負担が残りそう」など不安の声が上がった。

地裁によると、内閣府の世論調査で裁判員となった場合に量刑判断について不安を感じる人が多いという結果があるため、どのような工夫をすれば負担を軽減できるかを知るために死刑求刑事件を題材にしたという。

模擬裁判後の座談会では、裁判員役の市民から「同種事件の量刑をまとめた資料を早めに渡してほしい」「論告や弁論は本当に分かりやすさを意識しているのか疑問」との指摘が出た。
さらに「これが本当の裁判なら一生背負っていかないといけない。かなりきつい」との本音も漏れていた。【木下武】
これは新聞記事をそのまま受け取るとちょっとヘンですね。
裁判員役の市民から「判決後も心理的負担が残りそう」など不安の声が上がった。
心理的な負担が残らないような判決なんてあるはずがないでしょう。
例えば心理的負担が大きいから死刑判決を回避する、と言ったことが現れるかもしれないけどそれも裁判への市民参加の一つの形でありましょう。
「裁判員裁判だからこの判決になった」という意見がが当然出てくるでしょうが、それを言えば「○○裁判長だからこんな判決」という話は以前からあります。裁判は極力公平を目指してはいるでしょうが、結果が絶対に公平なものとは言えないし、同種の事件ついての評価も時代によって変わって行っています。
裁判制度が変わることによって、判決の傾向が変化することは大いにあることでしょう。

福岡地裁(高裁)が
どのような工夫をすれば負担を軽減できるかを知るために死刑求刑事件を題材にしたという。
というのは大変に意欲的な取り組みで高く評価するべきでしょう。
裁判員制度が明らかになってすぐ「2日間で判決出来る」という話になっていたから「無理だろう?」と思っていたのですが、公表されいる模擬裁判ビデオ(ドラマ)ですら、いつの間にか3日以上になっている。
例えば、昼間に裁判員が裁判所に「こういう判例を整理して持ってこい」などと資料請求をしたとすると、請求された相手である裁判所は夜の間に処理しないと連日開廷は出来なくなります。
もちろん、その間に裁判員が資料を読む時間もない。

早い話が素人の裁判員が連続開廷できるように資料を整理して提示できるとは思えない。
現実的に出来そうなのは、週一回ぐらいのペースになってしまうのではないだろうか?
それだと、仮に4回の公判があったとして丸々一月間は拘束されてしまうし、資料を読む時間をどうやって捻出するのか?
裁判員が裁判所の事務職員の交替を要求する、といったケースにも対処できないとことは進まないように思う。

4月 8, 2007 at 10:24 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2007.03.08

被害者参加制度

サンケイ新聞より「裁判への「被害者参加制度」 一部被害者が「反対」要望書
犯罪被害者や遺族らが刑事裁判に参加して被告人に直接質問などができる「被害者参加制度」に絡み、導入に反対する一部被害者や弁護士らが7日、「被害者と司法を考える会」を設立し、法務省に要望書を提出した。
同制度の導入を盛り込んだ刑事訴訟法改正案が今国会に提出されるのはほぼ確実だが、同会は「現行制度案では公判で被害者が加害者側から攻撃される恐れがある」などとして導入に反対している。
「被害者に手厚い司法」をめぐり、被害者や関係者の受け止め方が多様であることを物語る動きといえ、制度導入に向け今後も議論を呼ぶことになりそうだ。

法制審議会(法相の諮問機関)は2月、被害者参加制度と、被害者が刑事裁判の法廷で民事上の損害賠償を請求できる「付帯私訴制度」の導入を答申。
法務省は「被害者参加制度」と被害者が刑事裁判の法廷で民事上の損害賠償を請求できる「付帯私訴制度」の導入に向け、閣議決定を経た上で刑訴法改正案を今国会に提出する予定だ。

法案が成立すれば、来年の秋から冬には制度が始まり、一般国民からくじで選ばれた裁判員が裁判官とともに刑事裁判の審理に参加する裁判員制度(21年5月までに導入)より先行することになる。
しかし「被害者と司法を考える会」は7日の要望書で、「制度を選択した場合、公判で加害者側から攻撃される二次被害、選択しなかった場合は被害者感情を過少にとらえられる危険性が予測される」と問題点を指摘。
その上で、(1)事件直近から被害者を支援する弁護士を国費で付ける(2)裁判員制度の導入後に被害者参加制度を加えた模擬裁判を実施し、導入すべきプランを複数用意した上で議論する-などを提言している。
この記事は、3月7日に「被害者と司法を考える会」が要望書を出したというものですが、旧知の山下幸夫弁護士が3月4日に「刑事裁判に犯罪被害者や遺族が直接参加する制度を認めることができるか?」を書いています。
犯罪被害者や遺族が、刑事裁判に出廷して検察官の横に座り(要綱では明確にされていないが、そのようになることが予想される)、証人尋問、被告人質問、求刑を含む意見陳述を行うことによって、日本の刑事裁判は大きく変質することになる。

それは、刑事裁判の場に、犯罪被害者や遺族の「怒り」を持ち込むことを認め、その結果、刑事裁判が「闘いの場」となって、冷静で公平な審理が期待できなくなることを意味している。
特に、2009年から開始される裁判員制度においても、被害者参加制度が実施されることから、普通の市民である裁判員に強い影響を与え、混乱を招くおそれがある。

政府は、お互いに市民同士である犯罪被害者や遺族と加害者を、直接に刑事裁判の場で対峙させ戦わせることによって、より被告人に対する厳罰化を進めるとともに、犯罪被害者や遺族に対する経済的な支援を行うことなく済まそうとしているのであり(「安上がりな刑事政策」)、犯罪被害者や遺族が政府に不満の矛先を向けないように目を逸らさせようとしていると考えられる。
被害者(遺族)が法廷に出て何かをすることにどれほど意味があるのか以前から疑問に思っていましたが、こんな意見が実際の被害者から出て来て驚いています。

被害者が一律に法廷に出たいとは思わないでしょうから、裁判の公平性という点でも大問題でしょう。
もちろん完璧に公平ということはないわけですが、検察・弁護・判事という形はどんな刑事裁判でも揃っていて、手続きが文章中心だとの批判はあるものの手続き自体はどの裁判でも同じ。
検事・弁護士・判事の個性によって例えば証拠書類をどの程度用意するのかといった裁判の質の面ではそれぞれの裁判で違うわけですから、この段階で完全な公平ではないと言えます。

これに裁判員制度が入ってくると、裁判員の個性はバラバラですから判決がバラつくことにはなるわけで、それは社会一般が「裁判員制度が良いよ」とすれば「判決のバラつきも社会的に許容される範囲内」ということでしょう。

それぞれの裁判で証拠そのものの提出の仕方が違うのは当然で、その中には「証人による証言(証人尋問)」も違うわけです。
証人については検察・弁護・裁判所がそれぞれコントロールしていて証人は基本的には「聞かれたことについてだけ回答する」立場ですから受け身なわけです。

「被害者参加制度」は証人とは別の次元にしないと新たに制度を新設する意味はないわけで、報道されている範囲では尋問・質問を積極的に発言する主体的な立場になるのでしょう。

これは被害者誰にでも同じように出来ることではないのは明らかだし、第一被害者といっても一人だけではないでしょうから「だれが被害者代表になるのだ?」といったことになると思います。

そもそも、裁判制度(公訴制度)が人類史上で長く評価されているのは個人的な復讐システムはうまく機能しないから、だったのでしょう。
事件の判断を社会にあずけることによって、安定した判決が保証されそれが社会の安定になる。
これを個人に戻して復讐刑的な要素を入れることと、安定した判決を得ることが両立するとはちょっと思えない。

要するに「被害者参加制度」は実際的に無理であって、(被害者)証人への法的サービス(アドバイス)の拡充といったことの方が実際的なのではないだろうか?

3月 8, 2007 at 10:46 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (4)

2007.01.30

裁判員フォーラム問題を分析する

読売新聞より「裁判員フォーラム、共催新聞社が日当払い動員
最高裁は29日、裁判員制度の広報のために全国で実施している「裁判員制度全国フォーラム」で、共催した新聞社が人材派遣会社などに依頼し、1人当たり3000~5000円の日当を支払ってフォーラム参加者を動員していた事例が4件あったと発表した。

最高裁によると、今月20日に大阪市内で開かれたフォーラムで、産経新聞大阪本社が1人5000円を支払うことを条件に人材派遣会社から70人を動員したことが発覚。

また、昨年1月の千葉市でのフォーラムでは千葉日報社が1人3000円で38人を集めていた。

同フォーラムは、最高裁と各地の地方新聞社などの共催で、2005年10月から全国の県庁所在地などで順次開催しており、これまでに計64か所で開催された。

最高裁の事情聴取に対し、産経新聞大阪本社の担当者は「当初、定員の半分以下しか希望者がいなかったので、危機感を覚えてやってしまった」と話したという。
最高裁は、「金銭を支払って参加を募るのは、制度に対する国民の理解を深めるフォーラムの趣旨、目的に沿わない不適切な行為」としている
実はわたしはフォーラム参加を申し込んだことがあります。

その結果がちょっと意外なことになったのですが、ここに書いた「最高裁からお手紙♪」です。

東京新聞のシステムの不具合でうまく参加申込が受け付けられなかったということで、最高裁と東京新聞の連名のお手紙が来ちゃったのです。

で、これで感じるのは最高裁は新聞社にかなりの圧力というか強力な協力依頼をしたのでありましょうね。

東京新聞のシステムの不具合も、常識的な判断としてはあまりに時間がないところで特急でやったからでしょうね。

そういう「成果重視」でありながら「現場無視」的な体質が「金を払ってでも参加者を集める」となったのだろうことは想像に難くありません。

冷静に考えれば、新聞社ほどの組織的に人脈のあるところが「金を払ってでも人集め」というのがヘンですよ。
仮に公募の参加者が少なくても、時間を掛ければ人脈で人集めすることになんの問題もないでしょう。
だから「時間がなかった」のだろうと想像するのです。

サンケイ新聞の説明記事を見ますと
  • 12月21日(木) 社告で募集を開始
  • 12月25日(月) 朝刊に告知広告
  • 12月28日(木) 夕刊に告知広告
  •  1月 6日(土) 夕刊に告知広告
  •  1月 8日(月) 朝刊に告知広告
  •  1月10日(水) 締め切り 550人の定員に200人強の応募しかなかった。
  •  1月20日(土) 「裁判員制度全国フォーラム in 大阪」開催
12月25日(月)からの週は28日が木曜日で実質的に年末休暇の時期でしょう。
つまり正月休みの時期に募集をしたが集まらなかったとなりますが、なんで12月の初めやそれ以前から募集しなかったのか?
ましてや、1月10日締め切りでは、1月なってから参加しようと思った人は参加できない。
いくら何でも要領悪すぎると思いますが、新聞社のそれも広告する部署がこんなことが分からないわけがない。
12月の初めやそれ以前に募集を開始したり、1月20日の直前まで参加申込を受け付けるといったことが出来なかったところに問題があるでしょう。

それ以上に、正月休みだから期間が一月延びるといった社会常識が発揮でなかったところにこそ問題があるし、それは最高裁の判断によるところが大きいのではないだろうか?

こんな事で、庶民の裁判への参加が円滑にいくものですかね?

1月 30, 2007 at 11:14 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (2)

2006.09.26

裁判員裁判のテレビ画像そのものだった

今日は奈良地裁で女児誘拐殺害事件の死刑判決がありました。

これについては特にコメントしませんが、朝日新聞の記事「笑う被告、涙の両親 奈良女児殺害判決」によると
開廷直後の午前10時過ぎ、奈良地裁101号法廷に響く裁判長の言葉を、口ひげをはやした小林被告は立ったまま聴き入った。
この法廷をテレビのニュースで見ていると、裁判官席が裁判員制度の9名が着席できるものでした。

今回の裁判の対象になった事件は誘拐殺人ですから、裁判員裁判制度が適用になる事件(裁判)でした。

つまり、テレビニュースには出ないことになっていますが、裁判員裁判が始まればあの席には裁判員が並ぶことになります。

とても重い法廷風景であると感じました。

9月 26, 2006 at 06:41 午後 裁判員裁判 | | コメント (2) | トラックバック (1)

2006.09.20

横浜地裁に裁判員制度対応法廷が稼働

神奈川新聞より「裁判員用に改装の法廷が初披露/横浜地裁
裁判員制度のスタートを控え、横浜地裁一〇一号法廷の改装が終了し十九日、報道陣に公開された。地裁では順次、刑事裁判に使う他の七法廷のうち、六法廷を裁判員裁判用に改装する。

一〇一号法廷は、旧地裁庁舎の仕様を壁面や家具のデザインに盛り込んだ、歴史を伝える法廷。
傍聴席は八十四席と、同地裁で最も大きい。

改装では、三人の裁判官が座っていた法卓を約一・五メートルのばして約七・四メートルとし、裁判員を含め計九人が座ることができるようにした。
また、裁判を分かりやすくするための映像機器などの導入を図りやすいよう、配線に配慮したフロアにした。



同法廷は、二十日から使用開始される。

いよいよ、裁判員制度対応の法廷が実用されるのですね。
10月27日には「環境ホルモン裁判」で横浜地裁に行きますから、見てこよう。


裁判員裁判は2009年5月まで始まることが法律で決まっていますから、たぶん2009年4月からの裁判では裁判員裁判が始まるでしょう。

最高裁判所のサイトにある「裁判員制度」に詳しい説明がありますが、その中の「裁判員の選ばれ方」を見てみると、
  1. 裁判員候補者名簿を作ります。
  2. 事件ごとにくじで,裁判員候補者が選ばれます。
  3. 裁判所で,候補者から裁判員を選ぶための手続が行われます。
  4. 裁判員が選ばれます。
裁判員候補者に選ばれると、通知が来るのだそうです。
手順を逆に辿ると、個々の裁判で裁判員を揃えるためには、
  1. 裁判員を決める
  2. 裁判員候補者の面接
  3. 裁判員裁判の適用を決める
  4. 裁判員候補決定通知
となりますから、有権者名簿から抽出して裁判員候補決定し個人に通知されるのは、余裕を見ると3ヶ月以上前になるでしょう。
もし、2009年4月に裁判員裁判が始まるのであれば、

2009年の正月からすぐに
「あなたは、裁判員候補に決定しました」
という通知が来る

ことになりますね。
2年半後に来ます。

平成17年(2005年)の全刑事裁判11万2千件を対象に裁判員裁判の適用を計算すると、3.2%である3629件であるとされています。
これを「各地方裁判所別の裁判員候補者の必要数の試算表」(PDF)で見てみると、横浜地裁では、1万2700人から2万5400人の候補者が必要となります。有権者の0.18%から0.36%です。
400人に一人ぐらいですから、町内から一人は選ばれるといった感じでしょう。
最近は裁判を傍聴する人も着実に増えていると思いますが、もっと傍聴する人が増えるべきだと思います。

9月 20, 2006 at 09:42 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2006.09.17

裁判員制度アンケート

毎日新聞より「裁判員に「参加」回答51%に 課題も残る
毎日新聞が実施した全国世論調査(面接、9月1~3日)によると、裁判官と一緒に重大な刑事裁判の審理をする裁判員に選ばれた場合に、51%の人が「参加する」と回答した。
04年9月の前回調査に比べて10ポイント増えたものの、なお46%の人が「できれば参加したくない」と答え、裁判員制度を「評価しない」という人も6割に達した。

裁判員に選ばれた場合に「積極的に参加する」と答えたのは17%(前回調査17%)▽「義務なので参加する」は34%(同24%)だった。両者を合わせると過半数の51%に達した。

「できれば参加したくない」という回答は46%で、前回調査の56%より減少した。

裁判員制度を「評価する」と答えたのは34%で、「評価しない」の60%を大きく下回った。「評価しない」と答えた人に理由を聞いたところ「判決が感情に左右されるおそれがある」が43%▽「専門性が必要」が41%▽「裁判員になりたくないから」が13%だった。
わたしは裁判員制度が話題になった頃には、無条件で裁判員制度賛成でしたが、段々具体的になってくるにしたがって、極めて難しいと感じるようになっています。
仕組みはマクロには賛成だが、簡単にできることではないな、という感じで世論調査も同じような傾向かと思います。

裁判員に選ばれた場合今回前回
積極的に参加する17%17%
義務なので参加する34%24%
できれば参加したくない46%56%
裁判員制度を
評価する34%
評価しない60%
評価しない理由
判決が感情に左右されるおそれがある43%
専門性が必要41%
裁判員になりたくない13%



裁判員制度を評価しないとする意見の内容に「専門性が必要」と「判決が感情に左右される」を挙げている方が多いのは、それだけ深く考えている方が増えたのだと思います。

ほとんど同時に刑事裁判への被害者の参加が検討されていてこれは正に被害者感情によって判決は左右されるべきだ、という考え方です。
その意味では、判決が感情によって左右されて良いという方向に向かっているようですが、個別の事件に感情を持ちこむのであれば復讐に近づくわけで、公訴という手続きを取っている限りは刑法の改正を優先するべきだと思います。

一方、判決には専門性が必要というのも深刻で、モトケンさんの説明で納得したのですが
刑法が主観的要素を多く要求しているからです。
例えば、故意、目的などですが、問題なのは、内心の事情の内容によって、成立する罪名が変わり法定刑も大きく変わる場合があります。

典型的な場合としては、深夜、路上を歩いている女性を犯人が無言で殴りつけたところで別の通行人に捕まったという事案を考えてみますと(被害者は怪我をしていないとします)、犯人が強姦するつもりだったら強姦未遂、わいせつ行為をするつもりだったら強制わいせつ未遂、金を取るつもりだったら強盗未遂になります。
しかし、このいずれかは無言で殴りつけた段階で捕まってしまいますと、外形的な行為からは判別がつきません。
「金を出せ」とか「やらせろ」などという言葉が出ていて、それを被害者が聞いていれば、被害者の供述から犯人の内心を推認することはできますが、無言であるとそういうわけにはいきません。

そうすると被疑者を取り調べて、どういうつもりだったのかという自供を得なければ、何罪が成立するか決められないのです。

つまり刑法の規定の仕方というものも、取調べと自白の重要性に影響を与えるわけです。
この話を読んだ(3月ですね)に「こりゃ大変だ」と思ったのです。

模擬裁判員裁判を2ヶ所でやって有罪・無罪に分かれたという報告がありました。
無罪になった理由は検察の立証が不十分、というものでした。

今まではプロ同士の判断の相場というものがあったのでしょう。それを素人に説明する必要がある。ところが説明する内容が、客観的な証拠ばかりでない、となると主観的判断を証拠として裁判員が信じるレベルまで持ち上げることが出来るのか?ということになるのでしょう。

さらには、麻原裁判のように極端に長い裁判になってしまったらどうするのか?
裁判員裁判を適用しない場合も考慮されていますが、裁判員裁判を始めてから途中で変えるなんて出来るのでしょうかね?
あるいは、被告が有利になるために二つの裁判制度を選択するなんて事にならないのでしょうか?

こういった法廷そのものよりも裁判員として裁判に参加するだけで専門性が必要になってしまうような気がして、これは法律の改正をして自白を重要な証拠にしないといったことにしないと無理ではないか?とも思うのです。

9月 17, 2006 at 11:38 午後 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2006.06.15

裁判員制度・ワイドショー

裁判員制度は、
  • 平成16年5月21日法律成立。
  • 公布の日(平成16年5月28日)から5年以内(平成21年5月27日=2009年5月27日まで)に裁判員制度が実施される予定。
今日は平成18年6月15日(ですから、まる3年以内に裁判員裁判が始まります。

連日、ワイドショー(古い表現だな)で秋田の小学生殺害事件について弁護士の会見や警察の発表をジャンジャン流してます。
捜査進行中ですから裁判が始まるのはまだ先ですが、仮に事件が発覚してから3ヶ月後に裁判になると仮定しましょう。
一方実際の裁判員裁判が始まるのが、2009年4月だとすると4月1日が水曜日なので裁判所にとって新年度の裁判の扱いになる事件について4月以前から切り替わっていく可能性があるのかな?という気もします。

そこで2009年1月以降に発覚というか逮捕された該当事件は裁判員裁判になると考えて良いでしょう。
つまり裁判員裁判になる事件までは2年半しかありません。

実質2008年までの世間の情勢によって裁判員になった場合の対処がどうなるか?を考えておく必要があると思います。
2008年は世界的には大事件が予定されている年です。

「近未来の出来事」に並べたとおり2008年の出来事は
  • 2008年 2月 韓国大統領選挙
  • 2008年 8月 北京オリンピック
  • 2008年   ロシア大統領選挙
  • 2008年11月 アメリカ大統領選挙
というわけで、秋田の小学生殺害事件のワイドショーの放送を見ていると裁判員裁判への報道はどうなるのか、非常に気になります。
どうも裁判員制度は司法のお約束も含めて社会のあっちこっちに影響を与えるのは確実のようですが、細かい検討が全く行われていないように思いますね。

例えば裁判員が「テレビで見た様子では真犯人は」なんて話にしたらどうするんでしょうか?
もちろん裁判は法廷に出された証拠によって判断することになっていますが、素人である裁判員は法廷に示されない事柄を無視しするという訓練を受けていないのだから影響されないと考える方が無理です。

さらには裁判員制度そのものが「市民感覚を法廷に持ち込む」を狙っているのですから、テレビの影響を排除することが良いとばかりも言えないわけです。

逆に言えばワイドショーも裁判に参加しているという側面があるわけで、秋田の小学生殺害事件でのワイドショー報道はどうよ?と思う今日この頃です。

6月 15, 2006 at 09:34 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2006.05.23

裁判員制度・毎日新聞社説は?

毎日新聞社説より「裁判員制度 市民も意識改革を進めよう
一般の市民が刑事裁判の審理に参加する裁判員制度のスタートが、3年後に迫った。
市民の一人一人が、意義や仕組みについての理解を深め、改革の機運を高めることが大切だ。

法曹界は当初、司法改革に必ずしも積極的でなかったが、関係法が制定されてからは態度を一変させている。
裁判所当局は、昨年11月の刑事訴訟法改正で裁判迅速化のため裁判員制度の対象事件に適用が義務づけられた「公判前整理手続き」の定着に、取り組んでいる。

検察当局は今月になって、検察官による容疑者の取り調べ状況の録画・録音を7月から試行する計画を打ち出した。
録画・録音の対象は検察官が必要と認めた場合に限られるというが、裁判員制度をにらみ、自白の任意性、信用性をめぐる争いで裁判を長引かせまいと考えてのことだ。決断を評価したい。

おぼつかないのは市民の意識と意欲だ。
最高裁が今年1、2月に行ったアンケート調査では、審理が3日以内なら裁判員として参加できる、と過半数が答えたが、4日以上の場合は参加できないという人が激増する。
6割強は「参加したくない」とも回答している。

今、私たちに求められているのは、裁判を真に市民のものとするため改革を断行しようとの新たな決意と、必要な施策を講じる知恵と勇気だ。
法曹関係者は自らの利害得失ではなく国家百年の大計と心得、現行の法制度を冷静に点検して万全を期してほしい。
裁判員制度を着実に根付かせるには、市民への広報、啓発にも一層力を入れねばならない。

裁判所とは無縁だった市民も、刑罰や刑事政策を自身の問題として見つめ直すべきだ。
マクロには同意しますがね、裁判所・弁護・検察が裁判員制度に向かって変革しているからといって、裁判員になる一般市民がやる気になればそれで万事OKとは言い切れません。

よく考えると日本の刑法は日本の社会や日本人の考え方に良く合っているとは思いますが、あまり論理的では無いです。
その代表が「自白」で、いままで幾つか裁判員制度と自白問題について記事を書いたり矢部弁護士(モトケンさん)落合弁護士のご意見を中心に理解を進めてきた結果「裁判員制度・自白を考える」にまとめました。
  • 日本の刑法では犯意によって刑罰が変わる
  • 自白が真実かウソかは冤罪が起きていることからも非常に判断が難しい
素人である裁判員が確実に判断できるのは事実関係でしょう。事実関係についても、社会から各種の専門家が偶然にでも参加すれば裁判に影響すると思います。しかし自白の信頼性を判断できる素人なんてのは居ないでしょう。それで、裁判員裁判では自白調書を使わないで判決が出せないか?とわたしは以前は考えていたのですが、モトケンさんが「自白によって犯意が分かり、それで刑罰が変わる」という説明をされて「あ、そうだった!」です。

裁判員裁判には市民による「復讐刑」的な側面はあるでしょう。つまり「犯意」を代表として被告が犯行時にどんなことを考えていた・感じていたといったことは裁判員裁判ではけっこう大きな判断要素になるようにも感じます。

こんなことを考えると「自白調書」が重要な判断材料になるでしょうが、自白が別々の事件(被告)で同じ水準・同じ信頼度になるとはとうてい思えないわけで、だからこそ専門家として数多くの自白調書の判断をしてきた検察官・裁判官・弁護士の判断に意味があったのだと思います。
それをそのままにしておいて裁判員に判断させるというの無理でしょう。

わたしはモトケンさんの説明を読むまでは「自白調書の真実性が分からないから評価しないで事実関係だけで判断するしかない」と思っていたのですが、それでは刑法上の正しい判断にはならない、と分かりました。
こんな面倒な判断を必要することは、あまり裁判制度に関心の無い一般市民は知らないだろうと思うのですね。
つまりは「裁判員裁判が成立しない」危険があるわけで、この点を落合弁護士は心配しているのです。

というわけで、毎日新聞の社説が「市民がもっと対応しろ」という言うだけではいささか脳天気だと思ってしまうのです。
刑法を体系的に変える必要があるかもしれません。

5月 23, 2006 at 08:36 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2006.05.09

裁判員候補の都合を調べると言うのだが

読売新聞より「裁判員の候補者、年30万人に都合打診…最高裁検討
最高裁は、年間30万人に上る裁判員候補者全員を対象に、1年のうち裁判参加が難しい時期などを尋ねる予備調査を行うなど、国民が参加しやすくする方策の検討に入った。
例えば、農林水産業の人は繁忙期を避けるなど、呼び出す時期を候補者ごとに配慮することも視野に入れている。
最近の各種意識調査でも、仕事の忙しさなどを理由に参加を嫌がる国民の割合が6割を超えており、最高裁はこの負担軽減策を国民の参加意欲の向上につなげたい考えだ。
う~ん微妙ですね。
アンケートを採ると「一年中忙しくて、裁判員を務めることが出来ない」が圧倒的な多数になってしまうような気がします。
それに、参加しやすい人を優先的に裁判員にしてはアメリカで陪審員逃れをする金持ちが増えたという話と同じになってしまうでしょう。
地道に説明・検討を進めるのが一番ではないでしょうか?

裁判についての議論を進めることが、裁判制度全体(関わっている人たちの意識)を変える効果があって、わたしが関わっている中西 vs 松井裁判では「環境ホルモン濫訴事件:中西応援団」を作ってバーチャル法廷になっています。
このようなやり方について弘中絵里弁護士のご意見は「緊張感があります」ですから、裁判そのものにネットは影響を与えうるのです。
最高裁はもっと庶民を信用するというか、多くの情報を知らせることで「大変だけど仕方ないか」と言いつつも裁判員として参加してくれる人を増やす方向にするべきでしょう。

5月 9, 2006 at 08:26 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2006.03.05

裁判員制度・文化の変革が必要?

「裁判員制度・自白を考える」は裁判員には自白調書といった専門的な内容を素人の裁判員に説明するのが困難だ、ということも含んだ話題です。

法曹三者(検察・弁護・裁判所)は裁判員に分かりやすく事件を説明する必要があるから言葉遣いを変えようとして現在、作業しているそうですが、わたしの考えでは、それ以上に日本において専門家だから無条件で信用する、といった文化的な側面を問題にしないわけにはいかないなと考えています。

裁判所というか法曹三者の間では判断が出来ない専門的な事柄の判断は鑑定人が判断しています。
これは考えようよってはけっこう大変なことで、証拠の一部とは言え議論のあることを一人の鑑定人が決めてしまう、という側面もあると思うのです。

では専門家が決めることの何が問題があるのか?ですが、実業というか技術の世界では「○○に関する専門家です」「お願いします」で中身を説明することなく、結果がよければOKというのが普通でしょう。
これが裁判となった場合にどうなのか?と考えてみると検察・弁護・裁判所も法曹の専門家であるわけですから、鑑定人も専門家であるとすると、4者の専門家が了解すればよい、つまり「説明することなく」進行するわけです。

このようなところに、裁判員という素人が加わるのです。裁判員に「専門家の判断ですから」というだけで裁判員が納得するものでしょうか?
裁判員が納得しない場合に鑑定人などの専門分野の説明を延々とやったら時間ばっかり掛かってまとまらないでしょう。
最悪の場合は鑑定の内容が分からないから証拠採用しない、ということになりかねない。
これは言わば「専門家同士の説明では、信用して進める」という日本の(主に商業的な)文化の性質ですから、素人にも分かるように丁寧なプレゼンテーションを鑑定人に課するといったことでもやらない限り自然になんとかなるものではないでしょう。

こうなると裁判員制度は日本の文化が変化しないとうまくいかないのかしれませんが、文化の問題ですから日本的な察するといったところからアメリカ流のプレゼンテーションや細かい説明といったものに重点を移さないといけないのかもしれません。

3月 5, 2006 at 01:59 午後 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

裁判員制度・自白を考える

元検弁護士のつぶやきさんの記事「自白の重要性」は法律素人で、まして刑事捜査の実際なんて知らない者にはとても感心させられる内容です。
日本の刑事裁判においては、自白がとても重要です。
それは、単に犯人性の確認(被疑者が本当に真犯人か)だけではなく、犯人に何罪が成立するのかという問題においても重要なのです。
内心の事情というのは、外形的な行動からある程度推認することは可能ですが、外形的行動からは分からない場合もかなりあります。
典型的な場合としては、深夜、路上を歩いている女性を犯人が無言で殴りつけたところで別の通行人に捕まったという事案を考えてみますと(被害者は怪我をしていないとします)、犯人が強姦するつもりだったら強姦未遂、わいせつ行為をするつもりだったら強制わいせつ未遂、金を取るつもりだったら強盗未遂になります。
しかし、このいずれかは無言で殴りつけた段階で捕まってしまいますと、外形的な行為からは判別がつきません。
「金を出せ」とか「やらせろ」などという言葉が出ていて、それを被害者が聞いていれば、被害者の供述から犯人の内心を推認することはできますが、無言であるとそういうわけにはいきません。

そうすると被疑者を取り調べて、どういうつもりだったのかという自供を得なければ、何罪が成立するか決められないのです。

つまり刑法の規定の仕方というものも、取調べと自白の重要性に影響を与えるわけです。
このエントリーを引き取って、弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 「日々是好日」さんが「[裁判制度]「自白の重要性」雑感」を書かれています。
全くその通りだと思います。ただ、私が危惧しているのは、そういった現状を、特に裁判員制度の下で維持できるか、ですね。

したがって、自白に依存した立証が多用される制度(正に「自白の重要性」が語られる、我が国の現行刑事司法です)においては、自白の任意性(証拠能力)、信用性(証明力)の評価が極めて重要にならざるを得ず、そういった評価を裁判員に強いるのは、極めて困難(ほとんど不可能)であるというのが、私の率直な意見です。

この問題は、自白に依存した立証を多用させる刑事実体法の内容によるところが大きく、本当に裁判員制度を実効性のあるものにしようとするのであれば、刑事実体法を大改革し、犯罪成立上、客観的な要素を中心に据えて、犯罪体系を構築する必要があるでしょう。その点を放置したまま、裁判員制度を導入しても、裁判官や検察官、弁護士(いずれも専門教育を受け職業として刑事裁判に携わっている)ですら認定に悩む自白の任意性、信用性を、裁判員に的確に判断しろ、というのが無理というものです(例外はあると思いますがごく一部でしょう)。

各地で、裁判員制度を想定した模擬裁判が行われているようですが、やればやるほど、こういった本質的な問題を解決しないまま制度だけを作ってしまった問題点が深刻化するだけではないかと思います。

今のままでは、裁判員制度のカタストロフィが、それほど遠くない将来に確実にやってくると言わざるを得ません。
いや~えらいことになっちゃったな~と思います。
わたしはお二人の見解の内では落合弁護士のお考えは想像していました。

自分が裁判員として判断するときに「自白調書を読みこなせるか」と考えてみると、とても無理だろうと思うのです。
外見的には自白調書は作文であり、事件の真相を現しているものか、検察官の作文なのか区別できるとは思えません。わたしは物証などに重点を置いて自白調書を無視するような判断をすることになるでしょう。
その結果は落合弁護士の指摘する「裁判員制度のカタストロフィ」といったことになるとは思っていませんでした。

自白調書以外の証拠が示されれば良いではないか、と思っていたのです。ところがモトケンさんの説明のように「事件の事実だけでは、犯人の犯意などは分からない」という指摘を聞いて「なるほどね」と思ったのです。

犯意によって刑罰が変わることには世間一般は慣れているでしょうから、自白調書を事実上不要とする刑事裁判という想定が無理だとなります。
そこに裁判員裁判を持ち込むと・・・・・・落合弁護士の指摘の通り「両立しないだろう!!」ですね。
どうなっていくのでしょうか?

3月 5, 2006 at 01:01 午後 裁判員裁判 | | コメント (2) | トラックバック (1)

2006.03.02

裁判員制度と自白調書

元検弁護士のつぶやきさんの記事「身柄拘束と自白」にトラックバックしました。
タイトル通りで、自白について論じています。
この問題を考えるときによく語られるのが、「百人の罪ある者を逃がしても、一人の無辜を処罰してはならない」という言葉です。
正論です。
理念としては反駁できません。
しかし、
「千人の罪ある者を逃がしても、一人の無辜を処罰してはならない」ではどうでしょう。
「一万人の罪ある者を逃がしても、一人の無辜を処罰してはならない」では?
「百万人の罪ある者を逃がしても、一人の無辜を処罰してはならない」では?

極端な例かもしれませんが、百万人の犯罪者を逃していては治安維持も何もありません。
犯罪者天国になってしまいます。

そして、被疑者の自供なしには十分な証拠が収集できない事件はいくらでもあるのです。
そして、在宅捜査では、自白が得られない事件、罪障隠滅し放題になる事件もいくらでもあるのです。

真犯人をきちんと処罰する、ということと、冤罪を絶対に出さない、ということは刑事司法に本質的に内在する矛盾です。
結局、この矛盾する要請をどのように折り合いをつけるかが刑事司法制度論であると考えます。
この通りなのでしょう。わたしは自白問題について裁判員裁判とセットにして考えています。

裁判員制度については「裁判員制度の紹介」が適当だと思いますが、3年後には始まります。
裁判員裁判になる事件は「死刑を含む刑罰に相当する事件」となっていて、これだけで平成16年(2004年)の統計で3308件だそうです。

また、裁判員裁判は第一審だけですから地方裁判所だけで開かれることになります。そこで、地裁別の3308件の実績がどうなっているのかを並べてみると、東京、大阪、名古屋、千葉、横浜、福岡、さいたま、神戸、水戸、宇都宮、静岡、広島、京都の13地裁でほぼ70%に当たる2269件の事件を担当しています。

地方裁判所は各県に一つずつあるのが原則で、北海道だけ札幌、釧路、旭川、函館と4つあります。
裁判員は選挙人名簿から選ばれるとなっているので有権者は誰でも裁判になる可能性があります。一つの裁判では正式な裁判員が6名で予備が6名決定するそうです。合計12名を選ぶために有権者から30名を指名すると仮定すると、平均すると上記13の裁判所のある都道府県では年間に0.1%ぐらいの人が裁判員候補になる計算です。

有権者として50年間は裁判員に指名される可能性があるわけで、生涯では5%の確率つまり20人に一人は裁判員に指名される可能性があることになります。

思っていたよりも裁判員になる可能性は高いわけで、わたしは「自分が裁判員になったらどうするか?」を考えてみました。
「自白調書」をどう判断するか?ですが、裁判員裁判ではかなり短期間で判断をしなければなりません。
現在のところ裁判は「証拠を総合して判断する」こともあって、莫大な書類が出てきます。とても1日で読むなんてことは不可能です。裁判員裁判では「証拠を総合して判断するために、十分に証拠を読み込むことが不可能だ」となります。

自白調書しか無く、その自白調書がどのようにして作られたのかが分からない場合にどうします?
別に自白調書でなくても鑑定書によって判断しなければならない場合に「この問題の権威の鑑定です」というだけで、鑑定者の判断の正否を決めることが出来るでしょうか?

裁判員裁判にすると裁判官以外の社会の専門家が裁判に関わる可能性があるので、鑑定書に反論する裁判員も登場する可能性はあります。

これら「前提の説明抜きで信用するのか?」は簡単に言えば「プロの仕事は信用しよう」ということで、逆に専門家からは「素人は知らないでよろしい」ということでもあります。
裁判員制度は正に「素人が参加する」なので、ここらの「専門家にお任せ」や「素人には分からないでしょうが」では裁判員裁判にする意味がありません。

「素人に分かるように説明する」ことが要件で、自白調書だけでは「なんだこの紙切れ」という判断になっても仕方ないでしょう。「じっくり読んで、全体像を理解すれば分かります」なのでしょうが、そのじっくり読む時間が無いのだから、それもダメですね。
この点からは「自白調書は良く分からないから証拠採用しない」とわたしは決定するだろうと思います。
こんな問題にしないためには「取調の可視化」と言いますが、取調の録画を提出する、といったことが不可欠であろと思うのですが、どうもこの方向には進まないようです。

3月 2, 2006 at 12:47 午後 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2006.02.03

最高裁からお手紙♪

最高裁から書類が郵送されてきました(^^ゞ

「裁判員制度全国フォーラム in 東京」にオンラインで申し込んだのですが、何日経っても連絡が無く「抽選で落選したな」と思っていたら留守電に「明日なのですが、速達で入場券を送りました」とか入ってました。

さすがに「明日ですが」で、まだ入場券が着いていないでは行けません。
そうしたらお手紙です。
御応募いただいた皆様へ
拝啓時下ますます御清祥のこととお喜び申し上げます。
さて,この度は,「裁判員制度全国フオーラムin東京」に御応募いただいたに もかかわらず,入場整理券の発送が大幅に遅れ,多大なる御迷惑をおかけしたこと を深くお詫び申し上げます。このフオーラムの共同主催者である東京新聞社内のイ ンターネットシステムの不具合が原因で,インターネットで御応募いただいた方々 に対する御連絡が遅れる結果となったものです。事態が判明した時点で,一人でも 多くの方に御参加いただけるよう連絡に努めましたが,既に日が差し迫っていたこ ともあり,残念ながらお越しいただくことのできなかった方も多いかと存じます。
ここに御迷惑をおかけしたことを重ねてお詫び申し上げる次第です。
皆様には,フォーラムでお配りした資料を同封いたしますとともに,このフオー ラムの載録特集記事が掲載される2月15日付けの東京新聞朝刊を,別途送らせて いただきます。
今後とも,裁判員制度への御理解,御支援を賜りますよう,よろしくお願い申し 上げます。
時節柄,御自愛のほどお祈り申し上げます。
敬具

平成18年2月1日
最高裁判所
東京高等裁判所
東京地方裁判所
東京新聞
ひぇ~~~~(^^ゞです。

なんでこの「お手紙」をOCRしてまでも全文を引っ張ったのかというと、実は他に「裁判員制度ブックレット(A5版80ページ」)とノベルティを「裁判員制度」と印刷してある専用ケースに入れて送ってきたのです。
これを見て「最高裁は裁判員制度にすごく力を入れているのね」と思いましたし、留守電を入れていたのわけも分かりますね。
そういう観点から「お手紙」を読み直してみると「残念ながら」に力が入っているんでしょうね。と感じます(^_^)

大須賀さんは元気にやっているのかな?

2月 3, 2006 at 05:06 午後 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.06.21

裁判員制模擬裁判

NHKニュースより「裁判員制度に向け模擬裁判
模擬裁判は、制度の導入に向けて試みに作られた東京高等裁判所のモデル法廷で行われ、消費者団体や民間企業などに勤める6人が現職の裁判官とともに裁判員の席に並びました。殺人未遂事件を想定して、実際の裁判と同じ手続きで進められました。裁判員たちは検察官や弁護士の主張に耳を傾け、被告や証人に直接質問していました。このあと、裁判員たちは判決を出すために裁判官との評議を行い、被害者の証言と食い違う被告の主張が信用できるのかどうか話し合いました。今回は3時間話し合っても結論に至らず、参加した人たちは裁判の難しさを実感した様子でした。参加者の1人は、「だれの言うことが正しいのか客観的に判断するのはたいへんで、ほんとうに疲れました。模擬裁判とはいえ、人を裁く責任の重さを感じ、貴重な体験でした」と話していました。
大変に注目していました。
今回の模擬裁判は東京高裁内に設置されて「裁判員制の法廷のモデル」として使われていた施設のはずですが、今回の模擬裁判は判事・検事・弁護士・裁判員と一応本物(?)を揃えた上で行われたので、設備から登場人物まで本番と同じと言えるでしょう。
テレビ放送では裁判員がしっかりと被告に質問し、被告もはっきりと答えるというシーンがありましたが、これは実際の裁判では期待出来ないでしょう。


社会一般の傾向として日本は20年ぐらい前に比べると明らかに説明するとか話しをするといった能力の減退を感じます。
ネット上の相談事に回答者を続けていますが、明らかに説明下手になってきました。 たまたま高校生に総合学習の社会人講師として接していますが、同じチーム内で話し合いをさせることを指導しないといけない、という経験をしています。
電車の中で高校生を見ていると、個々には騒々しいのですが最近は集団で盛り上がってしまって、周囲に注意されるといった風景を見かけません。さらに言えば4~5人で固まっている高校生がよくよく観察すると、話をしている二人とそれを見ているだけの残りといった構図であるように思います。つまり、グループで盛り上がるコトがない。

先日、経団連がIT技術者を使えるレベルで養成する必要がある、とアピールしたのを受けて、SLASHDOT で「今年の新人は使えますか」というスレッドが立って実情報告が多数上がりましたが、大学生からの質問に「日本語が使えること」というコメントが付く時代です。

こういう心配な背景があるところに、今回の模擬裁判で想定した事件が難しいとは言え3時間話し合って結論が出なかったことはかなり問題だと思うのです。
先日マイケルジャクソン裁判が決着しましたが、ものすごい長時間を要しています。これに対して裁判員制度では当初は即日判決とか言ってましたが、最近では2~3回の審議で判決できるようにする、という方向性のようです。
個人的には、これは無理なのではないか?と思っているので、実は非常に長期間に渡って裁判員を拘束することになるのではないか?と思っていて、今回の結論が出なかったこと自体がまだ続いていると考えると、裁判員制裁判はまだ難しいところが沢山あるな、という証明になったように感じました。

6月 21, 2005 at 12:37 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2005.04.16

裁判員になりたくない、7割

サンケイ新聞より「裁判員制度、70%が参加希望せず 内閣府調査」

刑事裁判で2009年までに導入する裁判員制度について71.5%が「知っている」と答えた一方、「参加したくない」と答えた人は70.0%。
参加したくない理由は「有罪・無罪の判断が難しい」46.5%、「人を裁きたくない」46.4%。

裁判員に参加したく無いが70%というのは意外で、うまくすると50%ぐらいで納まるのではないか?と思ってましたが、

ただ、現状では裁判員になった時に実際にどの程度の期間拘束されるのかといった身近な問題についてよく分からないところが多々あって、特に裁判の期間が極めて長いと言わざるを得ない現在の裁判のペースを想定してしまうと「とても付き合いきれない」=「裁判などに関係したくない」というのがあるような気がします。

死刑判決もありうる裁判を2~3日で判決できるのか?というのは今でも疑問です。もし出来るのなら、現在の裁判だって速めることが出来るだろうに。

また、わたしの周囲の人でも「素人が下す判決じゃトンでもないことなる」という意見もあります。
これについては、刑法は罪と罰を定義してあり、捜査や求刑は警察・検察で行われているのだから、裁判員が加わる裁判が裁判官だけで行う裁判に比べてトンでもない判決になる、ということは無いはずです。

最高裁の「裁判員制度について」のページを見ると。
2004年5月28日に裁判員法が施行され「施行の日から5年以内に実施」ということなので、2009年5月には裁判員制度による裁判が行われます。
裁判員制度の対象となる事件の数によれば、平成15年(2003年)には3089人の被告の裁判が裁判員制度の対象になることなる。
裁判員制度では、裁判員6名を選びますが予備と除外される人を含めると一つの裁判で50人ぐらいの裁判員候補者が必要になりそうです。
50人で3000件の裁判となると全国で15万人が裁判所に呼び出されることになります。これは成人人口1億人とすると、千人に一人ぐらいという計算で、自治体の目標単位である10万にでは150人が候補として呼び出されることになり、意外と多いのです。

4月 16, 2005 at 07:59 午後 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2004.09.10

裁判員制度に反対が多いと言うが

毎日新聞より「裁判員制度:「やってみたい」わずか17% 全国世論調査」

毎日新聞が今月3~5日に実施した全国世論調査(面接、成人男女4571人の中から2589人から回答を得た。回答率は57%。
裁判員に選ばれた場合、やってみたいかどうかを尋ねた結果、「やってみたい」17%、「義務なのでやる」24%、「やりたくない」は56%。
裁判員制度を「知っている」と答えたのは66%、「知らない」の32%。裁判員制度の導入で、現行の裁判よりも「よくなると思う」が37%、「思わない」が54%。

毎日新聞の論調は裁判員制度に否定的なトーンで書いているが、細かく見ると別の解釈もあるように感じる。

「やってみたい」と「義務だからやる」を足すと41%、「やりたくないが」56%、結構妥当なところでは無いだろうか?
そもそも現段階では裁判員制度での裁判員の拘束期間や職場での扱い、日当など何も決まっていないのだから「とりあえずやれる状況ではない」という判断の人も多いだろう。

毎日新聞の調査での実際の設問が分からないが「やりたい」「義務だからやる」と並んでいたら「条件が合わないからやらない」「義務でもやらない」と並べるべきでは無いのか?

さらには、年齢・職業・家庭環境なども調査項目に入れるべきだろう。ちょっと乱暴な調査だと思う。

裁判員制度で問題になるかな?と思うのは、法律の知識というより法律の使い方の知識が多くの国民は知らないのではないか?と思われるところにあると考えています。
裁判員制度は対象する事件を死刑が課される可能性のある事件となっていますが、併合罪の最高刑なんてのは普通は知らないでしょう。さらに法令を調べ・検討するとしてもそれ自体に技術が必要とかなると、裁判員の判断が助言する法曹界の人の代理になってしまうかな?とも思っています。
実際的には陪審制度の方が参審制度よりも現実的なのだろうか?参審制度でやっている諸国の実例を紹介するなんてのは無いのだろうか?

9月 10, 2004 at 11:03 午後 裁判員裁判 | | コメント (2) | トラックバック (1)

2004.07.22

裁判員制度の具体的なイメージ

産経新聞より「裁判員候補者の呼び出し確率トップは大阪

裁判員制度は平成21年(2009年)春から地方裁判所で開かれる殺人などの重大事件に一般市民(有権者)から選ばれた人たちが裁判官と一緒に第一審の審理に参加する制度です。
実際に審理に参加する6人の他に予備の裁判員を含めて選任するために50人の候補者を呼び出すとして、大阪地裁管内が400人に一人で呼び出される確率がトップで、最低は秋田地裁管内の2410人に一人、全国平均では660人に一人だそうです。

地方裁判所は日本全国に合計50ヶ所あります。どこにあるかは下記をご覧下さい。

昨年は裁判員参加の対象裁判に相当する重大事件では3089人に判決が言い渡されていて、これはほぼ裁判の件数でしょうから、平均値としても各地方裁判所ごとに年に62回の裁判員参加の裁判が開かれる計算になります。

わたしの住んでいる神奈川県では横浜地裁だけですから、有権者は700万人。
これに対して660人に一人となると、1万600人を呼び出すことになります。1年間に1万600人が横浜地裁に出頭する、50人で計算しているので、1年間に200回つまり毎日裁判員の参加する重大事件の裁判が開かれる、という計算になります。地裁も混雑しますね。

660人に一人というのは1年間についての計算ですから、有権者で50年間(70歳まで)は呼び出される可能性があると仮定すると、12人に一人は裁判員として生涯に一度は呼び出されるとも言えます。けっこう高い可能性です。

東京高裁判所管内 11ヶ所
東京地裁、横浜地裁、さいたま地裁、千葉地裁、水戸地裁、宇都宮地裁、前橋地裁、静岡地裁、甲府地裁、長野地裁、新潟地裁

大阪高等裁判所管内 6ヶ所
大阪地裁、京都地裁、神戸地裁、奈良地裁、大津地裁、和歌山地裁

名古屋高等裁判所管内 6ヶ所
名古屋地裁、津地裁、岐阜地裁、福井地裁、金沢地裁、富山地裁

広島高等裁判所管内 5ヶ所
広島地裁、山口地裁、岡山地裁、鳥取地裁、松江地裁

福岡高等裁判所管内 8ヶ所
福岡地裁、佐賀地裁、長崎地裁、大分地裁、熊本地裁、鹿児島地裁、宮崎地裁、那覇地裁

仙台高等裁判所管内 6ヶ所
仙台地裁、福島地裁、山形地裁、盛岡地裁、秋田地裁、青森地裁

札幌高等裁判所管内 4ヶ所
札幌地裁、旭川地裁、釧路地裁、函館地裁

高松高等裁判所管内 4ヶ所
高松地裁、徳島地裁、高知地裁、松山地裁

7月 22, 2004 at 11:36 午後 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)