2008.02.18

歌手のための著作権延長論・EU

日経新聞より「音楽著作権の保護期間、EUが大幅延長を検討

歌手や演奏家らの音楽著作権をめぐって、欧州連合(EU)の欧州委員会は保護期間を大幅に延長する方向で検討に入った。
今夏をメドに現行の50年から95年への延長をEU加盟国などに提案する。

平均寿命が延びるなか、若年から活動を始める歌手らが高齢になって著作権収入を失う恐れがあるためだ。

EU域内では歌手らが著作権収入を得られるのは音楽の録音後50年まで。
一方、作曲家の著作権の保護期間は約70年で、マクリービー委員(サービス担当)は「歌手らの著作権の保護期間を50年に限る理由はない」と指摘した。

著作権法の実務には詳しくありませんが、作曲家の著作権は死後何年かになっているのでしょう。それに対して歌手が録音した時点から50年というのは、映画が公開されてから何十年、といった規定があったと思いますがそれと同様かな?

歌手は直感的に分かりやすいですが演奏家はどうなのだろう?特定の演奏家を区別できない場合も多いですよね。

さらに著作権料という意味ではどういう配分になっていてそれは円滑に処理されているのか?

保護期間の延長だけで問題の多くが解消するとはちょっと思えないのですが・・・・・。

著作権法が現実に合わなくなってきていて、今となっては乱暴すぎる法律という印象が強いです。
全体的な見直しをするべきでありましょう。

2月 18, 2008 at 10:45 午前 セキュリティと法学 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2008.01.06

ネットバンキングの弱点は公表するべし

サンケイ新聞より「ネットバンキングであわや被害 海外サーバー経由で追跡に限界

京都市内の男性が昨年、ネットバンキングで預金を引き出されそうになる事件があり、京都府警が捜査したところ、海外のサーバーを経由して何者かが男性になりすまして別口座に預金を送金、現金引き出し役を不特定多数に送ったメールでスカウトするなど、巧妙な偽装工作が行われていたことが分かった。

国境の壁にも阻まれて犯人の正体はつかめないままで、府警幹部は「ネットバンキングは利便さの裏側で国際的な犯罪集団の標的にされている」と警鐘を鳴らしている。

調べでは、被害者は京都市在住の会社社長の男性。昨年3月に預金口座の残高が数百万円も減っていることに気づき、府警に相談。何者かが男性のIDとパスワードでネットバンキングにログインし、預金を別口座に振り込む手続きをしていたことが分かった。

振込先の口座の捜査から、東京都内に住む外国人留学生らが現金を引き出そうとしていたことが判明。
留学生らは海外の見知らぬアドレスから引き出し役を募集するメールが送りつけられたといい、任意の事情聴取に対し、「依頼者の正体は知らないが、報酬を約束されて引き受けた」と話した。犯罪の認識がなく逮捕は見送られた。

一方男性のパソコンは、保存された情報を勝手に外部に送る「トロイの木馬」系ウイルスに感染しており、ネットバンキングのIDが海外サーバーに送信されていた。

犯人は、ネット接続中の他人のパソコンに侵入して一時的に乗っ取っては次のパソコンに侵入することを繰り返し、最終的に盗んだ男性のIDでネットバンキングにログインしたとみられる。経由されたパソコン所有者は「犯罪に悪用されたことに全く気づかなかった」と話したという。

府警は外国人の関与を疑っているが、複数のパソコンを経由して犯人までたどるのは極めて困難。
犯人がどの国に拠点を置くか、グループか単独犯かも不明という。ネット上の解析で引き出し役の勧誘メールは膨大な数が発信されたことを確認しており、今回は氷山の一角とみられる。
男性は実際に振り込みが行われる銀行の営業日までに気づき、現金被害はなかったという。

京都府警幹部は「関係国に捜査員を派遣したいが、捜査権がない海外では限界がある」とし、「通信を記録したログの保存期間はプロバイダー任せになっていて、短いことが多い。内偵に数カ月かかる場合、ログが消去され犯人を追跡できないことがよくある」と、現状での捜査そのものの限界も指摘している。

恐ろしいですね。リモートアクセス状態になっていたのかな?

サンケイ新聞は続けて「ネットバンキング犯罪、倍々ペースで増加」を書いています。

ネットバンキングを狙った犯罪はここ数年、倍々ペースで急増しており、銀行はセキュリティー強化を図る一方、政府は国境を越えた通信ログの証拠保全などが可能になるサイバー犯罪条約の締結を目指すなど、対策を急いでいる。

ネットバンキング犯罪をめぐり、金融庁が金融機関から被害報告をまとめた結果によると、年度統計を取り始めた

平成17年度49件
18年度103件
19年度は上半期だけで137件

に達しており、前年度から2倍以上にのぼることはほぼ確実となっている。

サイバー犯罪条約は加盟国の間で国境をまたいだ通信ログの保全や差し押さえ、通信傍受などが可能になるため、増え続けるネット犯罪を取り締まるハイテク捜査の大きな武器になると期待される。一方、通信の秘密やプライバシーが侵害される懸念もあるが、国内では締結に必要な国内法の整備が進んでいない。

こうした状況に対し、都銀などの金融機関は利用者に個別の乱数表を渡し、振り込みなどの際にパスワードとは別に乱数表に基づく数けたの数字を入力させたり、ログインする度にパスワードが変化する方法を導入したりするなど、セキュリティー強化を進めている。

サイバー犯罪に詳しい甲南大学法科大学院の園田寿教授(刑法、情報法)は「ネットバンキングは今後さらに普及するだろうが、銀行のセキュリティーが強固になっても、利用者側がIDやパスワードを盗まれては元も子もない。パスワードなど重要な情報を保存したファイルはロックをかけるなど、利用者の意識向上も重要」と指摘する。

本当に倍々で増えてますね。

サイバー犯罪条約は国内法の整備にどうしても躓きますから、現実的に有効に機能するためには「国際警察」のようなものが必要になるのじゃないでしょうか?
冗談抜きでEEスミスの「銀河パトロール隊」になってしまいますが・・・・・。

銀行も「自宅で簡単に」としか言わないのは問題だと思いますね。
現実に「PCが壊れた」「不調だ」という相談が来たり見たりしているわけで、そういう危なっかしい機械にお金の管理を任せること自体が問題だし、銀行が言う「自宅で簡単」は「自宅に銀行並みに管理されている機械を用意しろ」だからちっとも簡単じゃないと思うんですがねぇ。

やはり、どうしてハッキングされたのかは、警告の意味も含めて「どの銀行のどういうシステムの、どの弱点を突かれた」と公表するべきだと考えます。
それによってその銀行の評価は一時的には下がるでしょうが、対策が進歩するし、ユーザも進歩する。
結果的によりセキュアーになると思いますから、やはり公表するべきです。

1月 6, 2008 at 12:52 午前 セキュリティと法学, 事件と裁判 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2008.01.04

民主党・プロバイダに削除義務の法案

日経新聞より「有害サイト削除、民主が独自法案・プロバイダーに義務化

民主党は18歳未満の若年者が犯罪に巻き込まれるのを防ぐため、インターネット上の違法・有害サイトの削除をプロバイダーなどに義務付ける法案の国会提出に向け、党内調整を始めた。

自殺勧誘や、児童買春の温床とされる出会い系や児童ポルノなどに簡単にアクセスできないようにする狙い。
与党との共同提出も視野に入れており、今月召集の通常国会での成立を目指す。

検討中の法案では、サイト開設者やプロバイダーは違法情報を発見し次第、削除しなくてはならないと規定。
違法かどうか明確でなくとも、有害な恐れがある場合は児童が閲覧できなくなるような措置を講じるよう義務付ける。
罰則を設けることも視野に入れる。(09:19)

法的根拠が明確でなくても義務

なんてことを、大政党が言い出して良いというのか?

このニュースは「弁護士 落合洋司 (東京弁護士会) の 「日々是好日」」の記事「有害サイト削除、民主が独自法案・プロバイダーに義務化」で知りました。落合弁護士は

「違法情報」と一口に言いますが、違法性が明らかなものから、非常に微妙なものまで、様々であり、それらを一切合財、「発見し次第削除しなければならない」と義務付けて本当に良いのか、プロバイダ等に過度な負担をかけることにならないのか、ということは検討すべきでしょう。こういった法律ができれば、削除してほしい側は、法律を盾にとってかなり厳しくプロバイダ等に削除を迫ることになると予想されますが、微妙な案件に関し、削除すべきかどうかの狭間で苦悩する人々が増えることが予想されます。

罰則まで設けるのであれば、特にこの点については十分な考慮、配慮が必要でしょう。

とコメントされています。

実際に発言削除などをやっていた側からすると「基準を事前に決めることすら難しい」と思いますし、単語や言い回しなどに注目してもその発言が出る場所によって評価も変わります。

いったいどうやって、こんな事を義務→罰則することが出来るのでしょうか?
もう、この民主党案は実行しようすると、想像を絶する問題点が続出することが目に見えてます。どうやって法律にするというのでしょう?

1月 4, 2008 at 11:09 午前 セキュリティと法学 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2007.12.03

地方新聞だけが名誉毀損とされた事件の控訴審

毎日新聞より「東京女子医大・手術事故:配信記事掲載で名誉棄損 責任の所在、どこに!?

11日から控訴審--1審は地方紙のみに賠償命令

共同通信社が配信した記事について、掲載した地方紙のみに名誉棄損での賠償を命じる判決が9月に東京地裁であった。
定評ある通信社の配信記事を掲載した場合、新聞社は免責されるとの主張を判決は退けた。
これに対し、共同や地方紙は、多様な言論を封じ、国民の知る権利を阻むものだとして猛反発している。
11日に東京高裁で控訴審が始まり、改めて「配信記事の責任」の所在が問われる。
【本橋由紀、北村和巳】

地方紙「知る権利大きく損なう」/共同通信「報道の萎縮につながる」/識者「配信制度に理解がない」

裁判は東京女子医大病院で心臓手術を受けた女児の死亡事故をめぐり、業務上過失致死罪に問われ、1審無罪(検察側控訴)となった医師が起こした。
判決は、医師の基本動作ミスが事故を招いたとする配信記事(02年7月)について「警視庁の記者会見に基づくなどしており、報道内容を真実と信じる相当の理由がある」として、共同の賠償責任を否定した。

その一方で、

  1. 定評ある通信社からの配信を受けたことだけを理由に、記事が真実と信じる相当の理由があったとはいえない
  2. 共同通信の定款施行細則で、配信記事には配信元の表示(クレジット)を付けると規定されているのに、そのクレジットを付けずに自社が執筆した記事のような形で掲載している
として、掲載した上毛新聞社(前橋市)▽静岡新聞社(静岡市)▽秋田魁新報社(秋田市)の3紙に計385万円の賠償を命じた。共同によると、この記事をクレジットを付けて掲載した新聞はなかった。

実情無視と批判

堀部政男一橋大名誉教授(情報法)は「今回のような形で地方紙が責任を負わされるのであれば萎縮(いしゅく)して、読者の知る権利に応えられなくなる」と話すが、地方紙側はどう受け止めているか。

当事者の上毛新聞は「通信社とその加盟社の実情を無視した判決。認められれば配信制度や地方紙の根本にかかわる」と主張する。

他の加盟社も「覆ると思うが、仮に確定すれば知る権利、言論の多様性への悪影響は計り知れない」(河北新報)▽「加盟社は多くの読者を抱え、世界で起きるニュースを提供する責務があり、仮に確定すれば、表現の自由を大きく侵害する」(信濃毎日新聞)▽「通信社制度の存在意義を否定し、国民の知る権利を大きく損なう」(北海道新聞)▽「報道の自由を制限し容認しがたい」(西日本新聞)など、民主社会の根幹にかかわる問題だと指摘する。

背景にあるのが、通信社と地方紙など加盟社との密接な関係だ。

共同は社団法人で、NHKやブロック紙も含め加盟する計57の報道機関は「社員」となっている。運営方針などを決めるのは最高の意思決定機関「社員総会」や社員から選ばれた理事による理事会だ。通信社とは単なる契約関係ではなく、同じ共同体ということになる。

共同の配信記事に誤りや名誉棄損の部分があった場合の責任について、共同通信の安斉敏明・総務局総務は「配信した共同にある」と明言。加盟社も「責任は配信側にあり、地方紙は免責される」との意見でほぼ一致する。地方紙が中心の米国では、この「配信サービスの抗弁」の法理は一般的だという。

この考え方に沿い、加盟社は地域の独自ニュースと世界規模、全国規模のニュースを紙面に掲載できる。新聞社間の無用な競争を避け通信のコストを下げながら、多様な言論が保たれ、国民の知る権利にも応えられることになるという。

判決は判例踏襲

最高裁は「ロス疑惑」をめぐる名誉棄損訴訟で02年1月、「社会の関心を引く私人の犯罪やスキャンダル」報道に関し、「配信サービスの抗弁」を否定した。報道合戦が過熱し、慎重さを欠いた記事があると指摘し、「一定の信頼性を持つとされる通信社の配信記事でも、真実性について高い信頼性が確立しているとは言えない」と結論づけた。今回は、公的な使命を帯びる医師が医療ミスの刑事責任を問われたケースだったが、東京地裁は「社会の関心と興味を引く分野の報道」として、判例を踏襲した。

さらに今回の判決は、3紙が「配信元の表示(クレジット)」を付けなかった点を重視し、「新聞社自ら執筆した記事と体裁が変わらず、読者は配信記事かどうか判別できない」と指摘。共同と3紙は一定の関係があっても別の責任主体で、共同の「(免責とされる)相当の理由」を3紙は援用できないとした。

クレジットについてはロス疑惑をめぐる別の訴訟の最高裁判決(02年3月)で意見が分かれた。2人の裁判官は「報道の自由は、どの社の責任で記事が作成されたか認識できて初めて十分に発揮される」として、クレジットを付さない場合は配信を理由にした抗弁は一切主張できないと述べた。だが、別の3人の裁判官は「クレジットの付いていない記事でも、その内容や記事を掲載した加盟社の規模などから、通信社からの配信記事と推認できる可能性があれば、加盟社と通信社が実質的に同一性を持つと考えて差し支えない」「クレジットがないからといって、配信サービスの抗弁を認めないという意見には賛同できない」と意見を述べている。

「クレジット」は必要か

今回の判決も指摘しているように共同の定款施行細則は配信記事の掲載時にクレジットを付けなければならないと規定。だが、現実には国内のニュースには付けないのが長年の慣行で、共同も問題にしてこなかった。原告医師の代理人の喜田村洋一弁護士は「クレジットがなく自分の記事の形で掲載した以上、責任を問われるのは当然。取材を尽くしたかで個別に名誉棄損を判断するのは妥当だ」と話す。

これに対し、上毛新聞は「すべての記事にクレジットを付けると読者の混乱を招く懸念もある。記事の内容ではなく、クレジットの有無を問うのは本質的ではない」と主張。「クレジットを付けたからといって加盟社が免責になる保証はない」(中日新聞)との疑問の声も消えない。

そのような中、北海道新聞は10月から、話題の人を紹介する囲み記事「ひと2007」について、自社原稿の署名だけでなく、配信記事にも原則としてクレジットを入れることにした。「原稿の出自を明らかにする観点から」と、見直した理由を説明する。

控訴審では何を訴えるのか。共同は「直接の取材手段を持たない加盟社に配信記事の真実性を証明させようとし、報道を萎縮させる判決の不当性を主張したい。クレジットなど個別の主張については訴訟で明らかにしたい」と話す。

通信社の歴史に詳しい秀明大総合経営学部の里見脩教授(メディア史)は「メディアがすみ分けることで成り立ってきた配信制度にとってゆゆしき判決だ。最高裁判例の一部を一方的に解釈しているという印象を受けざるを得ない。『赤福』がチョンボしたからといって、みやげ物屋が責任を負いますか? メーカー責任の原則からもはずれている。クレジットの点もおかしい。共同は社団法人で地方紙は社員。地方紙は社説まで共同から配信を受けるような関係だ。配信記事にクレジットを付ければ地方紙は共同のクレジットで埋まってしまう。すべての記事にクレジットを、という実態を理解しない考え方で、民主社会にとって大切なものを犠牲にすべきではない」と断じる。

共同通信社が配信したニュースをそのまま載せた地方紙が名誉毀損に当たるとされた事件で、控訴審が始まるという解説記事です。

素人考えとして非常に不思議なのは、ニュースを配信した共同通信社に対しては「信ずるに足る情報を伝えたから、賠償責任は無い」としておきながら、そのニュースを掲載した新聞が名誉毀損に当たる、という理屈が成立するのか?です。

地裁判決では「共同通信社が配信したニュースなのか独自取材の記事なのか区別が付かないから、名誉毀損」としているようですが、共同通信については「警察発表など」を根拠に「信じて当然」との情報を「共同通信が配信したから信じてはいけない」と読めるわけで、それでは情報の伝達ということを自体に無理難題を吹っかけた判決となりませんかね?

また、地方新聞社が共同通信と同列で警察を直接取材して書いた記事であれば、やはり名誉毀損に当たらないのでしょうね。だとすると「共同通信のクレジットを表示しない」ことにどういう意味があるのか?
さっぱり分からない判決だと感じます。

12月 3, 2007 at 12:21 午後 セキュリティと法学, 事件と裁判, 国内の政治・行政・司法 | | コメント (6) | トラックバック (0)

2007.12.01

オリコン訴訟・最終局面

昨日(2007/11/29)「恫喝訴訟で口封じ?! 表現の自由を考える 11・29シンポジウム」に参加してきました。

パンフレット(PDF)から引用します。

パネルディスカッション
烏賀陽弘道雑誌の取材に答えたらオリコンから訴訟を起こされた
西岡研介週刊現代に書いた記事でJRの労組から50件の訴訟を起こされた
山田厚史テレビ出演で日興コーディアル証券の問題にコメントして、安倍前総理の秘書から訴訟を起こされた
斉藤貴男週刊現代に書いた日本経団連会長の御手洗氏についての記事で訴訟を起こされた
釜井英法烏賀陽氏の弁護士
田島泰彦上智大学・文学部・新聞学科

コーディネータを田島泰彦教授が務めました。

弁護士とコーディネータを除いた4人のパネラーはいずれも記者で事件についてもわたしはだいたいは承知しておりました。
西岡記者・斉藤記者はいずれも新聞記者からフリーライターに転じて、週刊現代で重い記事を書いている方です。

烏賀陽記者は「オリコン訴訟」をネットで知ったときに初めてお名前を聞いたし、それ以前の記事についても知らなかったので「どんな方なのだろう?」という野次馬根性が先行して見にいったというのが実情です。
しかし、結論としては4人の記者は似たような雰囲気の方でした。
朝日新聞記者でテレビにも出ている山田記者についても、意外とフリーのライターに近い感覚を感じました。

今回のシンポジウムのきっかけとなった「オリコン訴訟」を私が知ったのは2006年12月の新聞記事などだと思います。

烏賀陽氏のページの説明によると

ヒットチャートで有名な株式会社「オリコン」が、烏賀陽弘道個人を被告に、月刊誌サイゾー06年4月号の電話取材に応じた20行ほどのコメントに対して5000万円の損害賠償を求める訴訟を東京地裁に起こしました(061213)。

確かにまとめるとこういう話なのだけど、もっと詳しい説明をアップしてほしい・・・・
月刊誌サイゾーの記事は、烏賀陽氏が記者の質問にコメントしていました。つまり一般常識として、出版社→編集者(責任者)→記者までが記事の内容が名誉毀損であるような場合の責任追及の対象だと考えていました。
それが「記者に取材された人だけが責任追及された」というのが特異ではあります。

シンポジウムで烏賀陽氏も強調していましたが

「わたしは取材対象です」
「取材対象を名誉毀損で訴えて、
出版社などの責任は追及しない」
「訴訟目的は裁判に勝つことではない」

なんてのがキーワードになっています。

結局は、反対者を黙らせる(抹殺する)ために形として裁判を利用したとも言えるわけですが、このような裁判を利用するのは濫訴だとして「環境ホルモン濫訴事件」では、わたしは2005年7月から apj さんが始めた「中西応援団」を手伝っていました。

当時は「こんな裁判はアリか?」ということで「濫訴というのだろう」などと、たしか喫茶店で呼び方を決めたりしました。
似たようなことを「先進国アメリカでは「SLAPPStrategic Legal Against Public Participation)」と呼んで対策の法律まで出来ているのだそうです。栗原 潔氏によるSLAPP の解説記事

資力のある大企業等が巨額の賠償請求訴訟をすることで資力のない個人や小企業をびびらせて、結果的に言論を封じる手法です。意訳すれば「恫喝訴訟」ということですね。

米国では、カリフォルニア州をはじめとして多くの州でSLAPPが州法により禁止されているようです(SLAPPと認定されれば、被告と原告のどちらの言い分が正しいかの議論以前に提訴自体が却下になるということのようです)。

日本では、SLAPPが全然OKということになってしまうと、個人が実名ブログ等で正当な理由に基づいて企業を批判することが困難になる可能性があります。そうなると、結局、批判は匿名掲示板でということになってしまいます。ネット言論の適正化のためにも何らかの形でSLAPPには歯止めをかけてもらいたいものです。

訴訟を提起したオリコン株式会社の主張がオリコン社のサイトに掲示されています。
「事実誤認に基づく弊社への名誉毀損について」 ( 2006年12月19日 12時00分)

本日、一部報道にありました「ライター烏賀陽弘道氏への提訴」について弊社の見解を述べさせていただきます。直接的な原因は、烏賀陽氏の(株)インフォバーン発行の「サイゾー」4月号における明らかな事実誤認に基づく以下の2つの発言にあります。また、烏賀陽氏は、長年に亘り、明らかな事実誤認に基づき、弊社のランキングの信用性が低いかのごとき発言を続けたことが背景にあります。

①「オリコンは調査方法をほとんど明らかにしていない」(烏賀陽氏発言)

弊社は、調査方法について昭和43年のランキング開始時以来明示しています。またその調査店についても平成15年7月以降、弊社の WEBサイト、雑誌等のメディアにおいて開示しています(3,020店)。さらに、調査方法については、他社メディアの取材にも応じています。

②「オリコンは予約枚数をもカウントに入れている」(烏賀陽氏発言)

昭和43年のランキングの開始時から今まで予約枚数をカウントしたことはありません。

以上2つの発言につきまして、明らかな事実誤認に基づき弊社の名誉を毀損していることに対して提訴しています。

申し上げるまでもなく、弊社が発表するランキングは、弊社事業の中核を担うものであり、明らかな事実誤認に基づいた報道によって、その信用性が低いとの印象が社会的に浸透するならば、弊社の事業に多大な影響を与えることにもなりかねません。

烏賀陽氏は、弊社からの平成18年6月23日付け内容証明郵便の中での「サイゾーの記事のとおり発言ないし指摘をされているのでしょうか」という問いに対し、平成18年6月30日付けのFAXにて「自分が電話でサイゾー編集者の質問に答え、編集者が発言を文章にまとめました。まとめたコメントはメールで自分に打ち返され、修正・編集を加え、若干の意見交換ののち掲載の形にまとめられました」(同氏からのFAX原文)と回答してきています。このように、烏賀陽氏は、発言は自分が責任をもって行ったものと明言されています。

烏賀陽氏は、同様の発言を他のメディアでも行っており、同氏の発言の社会的影響力は決して小さいものではありません。

社会的信用とは長年の不断の努力によって成されるものと確信しています。ジャーナリズムの名の下に、基本的な事実確認も行わず、弊社の長年の努力によって蓄積された信用・名誉が傷つけ、損なわれることを看過することはできないことからやむを得ず提訴に及んだ次第です。 この度の提訴はあくまで烏賀陽氏によって毀損された弊社の名誉を回復するための措置であることをご理解ください。

( 2006年12月19日 12時00分)

わたしがオリコン社の主張を読んだ印象は「将来の損害の抑止」に重点があるように感じます。
賠償請求では「将来の損害」はなかなか認められないし、では将来の損害になるような現在の被害の大きさはどうなのか?ということなると、1/100とか1/1000なのでしょうね。
逆に言えば「現在の損害の1000倍の請求」をした事になりそうです。

これがどんどん拡大するとアメリカのような「対策」も必要になるのでしょう。
まぁ、SLAPP 禁止を法的に定めるのは極めて難しいだろうし、そもそも反対意見に対抗する形として損害賠償は認めない、という社会も困るわけです。

実際問題として、記事を載せた月刊サイゾーと編集者、烏賀陽氏の三者を提訴したのであれば、問題にはならなかったでしょう。
そういう事例は珍しくありません。

しかし、裁判では裁判外のことについては言及しませんから「三者が提訴すれば・・・」なんてことは法的判断としては出てきませんね。
社会の動きとして注目しておくべき裁判です。

このオリコン裁判は次回が人証で烏賀陽氏も証言するそうで、民事裁判の流れとしては、人証の後は最終弁論を経て判決となりますから、次回が事実上最後の法廷の論争です。

オリコン訴訟第6回口頭弁論
12月11日 13時30分~
東京地裁709号法廷(傍聴券配付)

だそうです。

12月 1, 2007 at 11:02 午前 セキュリティと法学, 事件と裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2007.10.22

情報ネットワーク法学会

情報ネットワーク法学会・第7回研究大会のご案内。

Up

第7回研究大会の個別報告の内容について

●個別報告の内容
第 1会場 10:10

10:40
砂金 伸一(山本秀策特許事務所)
田中 規久雄(大阪大学)
「匿名ファイル交換ソフトで違法複製物をダウンロードした者の法的責任」
10:45
|
11:15
奥村 徹(大阪弁護士会)
「プロバイダの刑事責任~名古屋高裁平成19年7月6日と東京高裁平成16年6月23日」
11:20
|
11:50
石井 夏生利(情報セキュリティ大学院大学)
「情報セキュリティと専門家の責任」
第 2会場 10:10

10:40
李 丹丹 (神戸大学)
「中国電子署名法の成立および中国電子政府の現状」
10:45
|
11:15
淺井 達雄(長岡技術科学大学)
王 悦(日本IBM)
「中国における営業秘密の法的保護の現状と課題」
第 3会場 10:10

10:40
中村 有利子・石丸 湖美(龍谷大学)
加藤 晶子・高橋 香名・平谷 明子・吉田妃穂子(キャリアパワー)
「大学図書館からの法情報発信
―R-LINEの開発・運営と課題、今後の展開について」
10:45
|
11:15
長谷川 元洋(金城学院大学)
大嶽 達哉(愛知県弁護士会)
大谷 尚(名古屋大学)
「インターネットの電子掲示板上での児童・生徒間の誹謗中傷トラブルに対して教師が直面している問題についての検討」

スケジュールがこんな事になっていて、9時に新潟ですね・・・・・・

09:00受付開始
09:30開会挨拶
09:35~10:00総会
10:10個別研究報告(第1~第3会場)
11:50昼食
12:50~13:50基調講演「情報ネットワーク社会と刑法」
山口厚・東京大学大学院法学政治学研究科教授
14:00~17:35パネル・ディスカッション
第1分科会テーマ「違法・有害情報と匿名性」
第2分科会テーマ「法学教育のIT化~ロースクール完成年度を契機として」
17:40閉会挨拶
18:00~20:00懇親会(ホテル日航新潟)

10月 22, 2007 at 11:22 午前 セキュリティと法学 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2007.10.19

行政が削除請求

東京新聞より「ブログに『公園で犬放し飼い禁止、違法』都など『削除を』接続業者側は拒否

東京都内在住とみられる愛犬家が、インターネットのブログ(日記)に「公園での犬の放し飼いの禁止は違法」との主張を書き込み、東京都と西東京市が「違法行為をあおり、公園でのマナー低下を招く」として「プロバイダ責任制限法」に基づき、サイトを提供するプロバイダー(接続業者)に削除を求めていたことが分かった。
接続業者側は「内容の正否を判断できない」として請求を拒否している。(中沢誠)

ブログの掲示板には三年前の開設当初から「しつけのいい犬は放し飼いでもいい」「リードは動物虐待」「狂犬病予防法は時代遅れの悪法」などの主張が展開され、都や市には「放置していいのか」との苦情が寄せられていた。
公園で放し飼いを注意した市職員が、飼い主から「ブログには問題ないと書いてある」と反論されたケースもあるという。

プロバイダ責任制限法は、ネット上で中傷されたり、プライバシーを侵害されたりした場合については被害者が接続業者に書き込みの削除を求めることができると規定。
都福祉保健局と同市みどり公園課は、同法に基づき二月、違法行為を招くとしてサイト提供者の「楽天」と「ヤフー」に書き込みの削除を求めた。

しかし、両社とも自治体の請求を拒否。同市があらためて六月、楽天に発信者の身元情報の開示を求めたが、楽天はやはり拒否した。

接続業者らの「テレコムサービス協会」(本部・東京)の桑子博行サービス倫理委員長は「自治体からの削除請求は聞いたことがない」とした上で、「安易に削除に応じれば、表現の自由を定めた憲法二一条や、電気通信事業法に抵触する恐れがある」としている。

これに対し都環境衛生課は、公園での動物の放し飼いを禁じている都条例や予防注射を義務づけている狂犬病予防法を挙げ「ブログは明らかに法律を否定する内容。誤った考えを先導するブログを放置するのは好ましくない」と反論する。

公園での犬の放し飼いをめぐっては、トラブルが後を絶たない。環境省によると、二〇〇五年度に犬にかみつかれた被害は約五千三百件。愛知県では大型犬が主婦を襲い、七月に飼い主が逮捕された。東京都檜原村では先月、四十四匹の犬を放し飼いにしていた飼い主が狂犬病予防法違反容疑で摘発された。

「ブログは明らかに法律を否定する内容。誤った考えを先導するブログを放置するのは好ましくない」

法律に反論する権利は当然あるわけで「法律を否定する考えだから削除するべき」というのではちょっと無理だろう。

このような場合は「対抗言論するべし」との判決が出ているくらいで、行政が堂々と反論するべきだと思う。

仮にここで削除できても、次々と同じようなサイトが出てくることも十分に予想できる。
どのような考え方で削除請求する事にしたのか?検証するべきだと思う。
削除すればOKという事ではない。

10月 19, 2007 at 09:22 午前 セキュリティと法学 | | コメント (5) | トラックバック (1)

2007.10.15

著作権延長についての議論

IT media News より「著作権保護期間の延長、経済学的には「損」 「毒入りのケーキ」が再創造を阻む

大変に長い解説記事なので本文を読んでいただくとして、わたしが注目したのは次のところです。

  • 著作権保護期間を今より20年延長すると「損」なのか「得」なのか――。
  • 長すぎる著作権保護期間が書籍の“死”をむしろ早める
  • 著作者の死後は、売れるものだけが生き残る極端な弱肉強食
  • 絶版書は、以前はただ忘れ去られていくしかなかったが、ネットが状況を変えている。
  • 欧米で著作権保護期間が70年に延長されたのは、ネット時代以前
  • 保護期間の延長によって著作者が得る収入の増加は、1~2%程度
  • 保護期間延長が創作者の意欲を高めて映画制作本数が増加する――という根拠は、まだ得られていない
  • 自由にパロディを作れるまで、さらに20年待たなくてはならなくなる
  • 2次創作が行われる可能性が減り、権利者には「権利が有効活用されない

といった著作権保護期間の延長によるデメリットが数々紹介されて

「経済学的に不合理」な延長、なぜ欧州では行われたのか

これらの研究から「インセンティブが見えないのにデメリットは確実にある」(成蹊大学法務研究科の安念潤司教授)とほぼ証明された著作権保護期間の延長。そもそも欧米ではなぜ、70年に延長したのだろうか。

東京大学大学院 情報学環・学際情報学府の酒井麻千子さんの研究「EUの保護期間延長の事情」によると、EUが保護期間を70年に統一したのは「EC(当時)域内の単一市場形成を達成するための手段だったとしか考えられない」という。

ECは1993年までに域内で単一市場を形成しようと急いでいた。その動きの中で、著作権保護期間の不統一――著作者の死後50年の国と70年の国の混在――が問題になっており、長いほうに合わせることで、どの国の著作者も不満なく統一できるよう図った、というわけだ。

「(50年という短いほうに統一せず、50年から70年に延ばした)EUの政治家は『バカじゃん』と思うかもしれないが、政治家は、政治的影響力の強い文化的エリートの反感を買うわけにはいかなかったのだろう。保護期間延長問題は、経済学的には大差で判定負けだが、政治の世界ではそうはならない」(安念教授)

というわけで「欧米の著作権法に合わせないで根本的に考え直そう」となって

  • 「著作権登録制」の現実味
  • 著作権はどうあるべきか
弁護士でクリエイティブ・コモンズ・ジャパン事務局長の野口祐子さんは「延長で著作者のやる気が高まり、文化が豊かになると主張するなら、過去の作品の延長は不要なはず。
過去の著作物と将来生まれる著作物とはきちんと区別して議論すべき」と指摘する。

野口祐子インタビュー02に著作権法のあり方について幅広い考え方を述べています。
これはお勧めです。

ようやく、著作権がどうあるべきかが記事になったという感じですが、今後どうなるのでしょうか?

10月 15, 2007 at 12:09 午後 セキュリティと法学 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2007.07.01

高校の個人情報流出事件

読売新聞より「愛知で県立高生徒情報流出、教諭PCから…空自基地資料も

愛知県教委は30日、同県立高校の男性教諭のパソコンから、県立高校2校の個人情報がインターネット上に流出したと発表した。

教諭の自宅パソコンに入っていたファイル交換ソフト「シェア」のウイルスを介して流出したとみられ、情報が流出した生徒数は延べ1万4598人に上るという。

航空自衛隊岐阜基地の個人情報なども、この教諭のパソコンから流出していた。

県教委によると、流出したのは教諭が勤務する一宮工業高と前任校での1994年度以降の内部資料。
生徒の氏名、進路希望、成績表や大学、専門学校などの受験の合否結果、指導要録を作成するための性格検査の結果などが流出した。

教諭は、進路指導資料作成のため、無断で持ち帰り、自宅のパソコンで作業をしていた。

空自岐阜基地の情報は、教諭の親族が同基地に以前勤めていた関係で、同じパソコンに資料を保存していた。
流出したのは退職者名簿や行事内容などで、機密資料などはないという。

教諭は県教委の調査に対し「ファイル交換ソフトが入っているパソコンでデータを扱ってはいけないと知っていたが、毎日ウイルスチェックをしており、大丈夫だと過信していた。個人的な目的には使用していない」と話している。

同県教委高等学校教育課の高須勝行課長は、「仕事熱心な教諭で、極めて残念。教員一人ひとりに徹底されるよう、指導のあり方を考えたい」と話した。

結構詳細な情報なので色々と検討することができます。

  • 一万5千人以上のデータ
  • 現在と前任地、家族の勤務先のデータ
  • 進路指導資料の作成
  • シェアをインストールしていたが、ウィルスチェックで大丈夫と判断
  • 教育委員会は「教員一人ひとりに徹底」とコメント

業務用のPCでシェアーを使う神経が分かりませんが、それ以上に分からないのが「1万5千人以上の個人情報」そんなものを個人で抱えてどうするつもりだったのでしょうか?
ましてや、前任地の学校のデータは何に使うつもりだったのか?

要するに「情報を捨てられない人」なのだろうと思いますし、言い分としては「進路指導の基礎データを集めていた」というのはあるでしょう。
しかし、なんで個人のPCでやるのか?となります。

最悪なのが、教育委員会のコメント

ですね。
今回の事件は早い話がアクシデントの一種で、防止策は何重にも掛けなければならない。
個人の責任に負わしてもまた同じような事件が出てくるだろう。

個人のPCで仕事をするな、と教育委員会は主張できる程のものではあるまい。
わたしが見ている範囲でも、教員のITスキルが十分に世間に通用する人はかなり少ない。
もちろん「これはやってはいけない」と言われたことを忠実に守ればアクシデントにはならないが、そういうレベルでは個人PCを使ってまで仕事をする必要もないIT利用が現実だ。

ウイルス感染、ハードウェアの破損、データの流出、不正アクセスなどは誰にでも起きる可能性があるのであって「こうすれば絶対」なんてあり得ない。
一番確実な安全策はコンピュータを利用しないことだ。

わたしが見るところ、教員のPC利用スキルを大幅に引き上げることが必須で、その結果として「個人PCの使用禁止・教育委員会がPCをすべて供給する」というのようなことになるだろう。

だいたい、学校には1000人以上もの人がいるわけで、扱っている個人情報の数は莫大だ。
それらを安全に運用するために、それなりの体制や設備が不可欠だが、現実にはネットワーク・プリンターもまともに運用出来ない。メールは個人に届かない。情報管理者が居ないという仕事場がかけ声を掛ければなんとかなるものなのか?

「個人の責任」で全部まとめてしまうようでは、対策にはならない。

7月 1, 2007 at 11:57 午前 セキュリティと法学, 個人情報保護法, 教育問題各種 | | コメント (8) | トラックバック (0)

2007.06.16

捜査情報流出を考えると

朝日新聞より「警視庁情報流出、わいせつ画像コピーがきっかけ

警視庁北沢署の巡査長の自宅パソコンから警察書類を含む計1万件の文書がネット上に流出した問題で、この巡査長が同僚所有の外付けハードディスクから、わいせつ画像をコピーしたのが流出のきっかけだったことが13日、わかった。

調べによると、巡査長は自宅に私用パソコンを2台所有。
ファイル変換ソフト「ウィニー」が入った1台にデータをコピーしたため、同僚のハードディスクの情報がほぼ丸ごと、遅くとも今年4月までに流出していた。

1万件のうち1000件は画像で、逮捕前の被疑者を隠し撮りしたと見られる写真もある。
9000件の文書の中には、強姦(ごうかん)や強制わいせつ、恐喝事件に関する捜査書類や被疑者の携帯電話の解析記録もあった。
暴力団関係者の使用車両などを示した捜査資料もあり、ほとんどが実名入りだった。

警視庁は今年3月、私用の全パソコン約4万1000台に、ウィニー導入の有無を調べるソフトを走らせる一斉点検を実施。
この際、巡査長はウィニーを入れたのが発覚するのを恐れ、流出元になった1台には点検ソフトを使わなかったらしい。

なんで winny を入れたPCに捜査資料のデータを繋いだのか、この巡査長は自分のやっていることが分かってなかったのでしょうか?
しかしこういう詳細が伝わってくると、「winny を使わなければ」といったことでは防げないのではないか?と思うところです。

今回の捜査情報流出は社会システムに影響を与えたことは確実で、DMの名簿が流出したのとはレベルが違うと考えても良いでしょう。
原理的には情報流出で政府が潰れるとか、核戦争が起きるなどといった空想的な可能性も皆無ではないのですが、法的にそういう「社会の安定を壊す可能性がある」として規定されているものに、偽造通貨の扱いがあるな、と思い出しました。

刑法 第十六章 通貨偽造の罪

第百四十八条 通貨偽造及び行使等

行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
2 偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。

第百四十九条 外国通貨偽造及び行使等

行使の目的で、日本国内に流通している外国の貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、二年以上の有期懲役に処する。
2 偽造又は変造の外国の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。

第百五十条 偽造通貨等収得

行使の目的で、偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を収得した者は、三年以下の懲役に処する。

第百五十一条 未遂罪

前三条の罪の未遂は、罰する。

第百五十二条 収得後知情行使等

貨幣、紙幣又は銀行券を収得した後に、それが偽造又は変造のものであることを知って、これを行使し、又は行使の目的で人に交付した者は、その額面価格の三倍以下の罰金又は科料に処する。ただし、二千円以下にすることはできない。

第百五十三条 通貨偽造等準備

貨幣、紙幣又は銀行券の偽造又は変造の用に供する目的で、器械又は原料を準備した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。

こうして調べてみると、通貨偽造や行使の罪が思いっきり重罰であることが分かります。
そこで、今回の捜査資料流出を通貨偽造や行使に比べて社会的な被害はどのようなものだろうか?と考えてみます。

世界中で偽札事件は続いていて、そのために通貨の変更で対策するのが普通です。
米ドルは世界中で流通することあって、頻繁に変更しているという印象があります。
日本でも過去何回も緊急事態扱いで通貨を更新したことがあります。

こういうことがあるから、通貨偽造は世界的に重罪になっているのでしょう。それに比べて、捜査情報流出といっことの被害はどうか?と考えると、現時点で法的にはなんの処罰も無いというのはかなり問題ではないだろうか?
別に捜査情報でなくても、銀行や税金といった情報が流出した場合に、国家としての信用が毀損されて、国際取引に問題が出てきたら偽装通貨問題を上回る被害となりうるでしょう。

それで、片方は無期懲役で片方は全く罪がない、というのはいつまでも通用するものではない、という印象が強くします。

明らかに、P2P技術や winny そのものを規制してもダメで、例えば「電磁的公文書流出罪」とでもいった法律を作って、結果を積極的に処罰するというぐらいしか抑止効果が無いと思うのです。

こんな「対策」にでもしないと、今回のように

  1. 他人のHDDを
  2. 個人的管理下のPCの内
  3. winnny を使用中の機械に接続した
なんていう組合せを事前に回避できるわけがない。
そりゃ元をたどれば、データの入ったHDDを他人に渡すのが論外だ、とは言えますがだからと言って無くなるとは思えない。
結局は、結果に対して処罰するしか無いのかな?と思うところです。

6月 16, 2007 at 11:15 午前 セキュリティと法学, 個人情報保護法, 国内の政治・行政・司法 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2007.06.06

中学校で事務管理情報がハッキングされる

信濃毎日新聞より「テスト成績データなど生徒が見て持ち出す 小諸東中

小諸市加増の小諸東中学校で、生徒が校内のパソコン教室の端末から、学校のサーバー内にある教員用データを集めた「フォルダー」を閲覧し、勝手にテストの成績や生徒の住所録などのデータをコピーして自宅に持ち帰っていたことが5日、分かった。
同校は管理ミスがあったとして同日の朝会で生徒に報告し謝罪、夜に保護者説明会を開く。
市教育委員会も同日、市議会全員協議会で報告した。

市教委や同校によると、持ち出されたデータは、1学年分個人ごとの中間・期末テスト得点をまとめた成績表と名簿、住所録、学級編成資料。男子生徒2人がパソコン教室で昨年10月ごろから放課後の部活動の時間に閲覧していたとみられ、4月以降に何回かに分けてUSBメモリーなどの記憶媒体にコピーして自宅に持ち帰った。
さらに別の2人の男子生徒にデータをコピーして渡したという。

5月25日に「情報が漏れている」と別の生徒が教員に訴え発覚。

業者が調べたところ、本来なら教師用パスワードを入力しないとアクセスできないフォルダーが、生徒用パスワードで開ける状態になっていた。
システムは一昨年9月に更新。
教員側が何らかの設定変更をした際にアクセスが可能になったとみられる。学校はデータの入った記憶媒体や自宅のパソコンの提出を受けてデータを消去した。

校長は5日、取材に対し「学校の管理ミスで生徒に申し訳ないことをした」と述べた。
データを持ち出した生徒には厳重注意したという。
同市教委は「生徒が閲覧できる環境をつくってしまい、ミスを発見できなかったのは学校や教育委員会の責任。
生徒のケアに努めるとともに、教職員を対象にした研修会を開いて再発を防止する」としている。

学校(校長)や教育委員会が「再発を防止する」と言っても、調査段階で業者が調べたらパスワードの設定が混乱していた、と言うのですから技術的には当事者能力が無いですね。

高校では情報の授業が必修になっていて、一クラス40人が同時にコンピュータ実習が出来るようにコンピュータ実習室があって、ちょっと昔のことを考えると隔世の感というよりもウソみたいといった印象です。

当然のことながら、学校自体でもネットワーク利用環境の整備は進んでいますし、教育委員会は教員1人ずつにメールアドレスを配付することも多いのですが、実情はかなりお寒いところもあります。

学校での事務合理化を考えると、何十人かの教員・職員がいる職場ですから複数の端末を置いて、サーバに情報を集中して、ネットワーク構築をしなければならない。となりますが、学校でネットワーク管理を任せるのが適任の方、となると情報の先生が当てられてしまうことがあります。

情報の授業をする先生が、ハードウェアの故障診断から工事に至るまで担当しているのが現実で、ネットワーク環境を活かすことが出来る可能性はあるとは言えますが実際には「担当者が多忙で」とかなっても不思議ではありません。

こんな実情なので、教員が学校でメールを使う(メールアドレスを取得する)のも個々の事情によるとされていて、必ずしもメールが機能していない学校も少なくありません。
また、中途半端にネットワークが機能しているので、メールを受信する専門の担当者が印刷して宛先の先生に配付する、なんてこともありネットワーク活用とは言い難い状況もあります。

問題の中学校で事務管理と授業用の情報が同一ネットワークに流れていたこと方が問題じゃないかと思います。
学校・教育委員会の認識は「間違えないようにする」なのだと思いますが、人間は間違えるものだ、間違えても重大事故にならない、という対応こそが大事でどうも基本的なところを理解していないのではないか?と感じます。

6月 6, 2007 at 10:44 午前 セキュリティと法学, ネットワーク一般論, 教育問題各種 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2007.03.29

大塚商会から情報流出・Winny

INTERNET Watch より「大塚商会、有力見込先5,488社の情報がWinnyで流出
大塚商会は28日、5,488社分の企業情報がファイル交換ソフト「Winny」を通じて流出したことを明らかにした。
同社社員の私物PCが、Winnyを通じてウイルスに感染したことが原因だという。

流出したのは、2001年度における兵庫県の企業5,488社分の情報で、同社が有力見込先として市販の企業データなどから収集していたもの。
社名、住所、電話番号、代表者名などが含まれていた。該当する企業に対しては、個別に連絡するほか、専用窓口を設けて問い合わせに対応する。

今回の流出を受け、セキュリティや関連法規に精通した学識経験者、技術専門家で構成する諮問委員会を4月中旬までに設置し、管理体制や情報システムの総点検を実施する。
また、社員が所有する私物PCについても、専用ツールを用いて定期的にデータの監査するとしている。
今回の流出に関係した社員とその上位役職者に対しては、社内規程に基づき懲戒処分を行なうという。

大塚商会では、業務関連情報の社外持ち出しや私物PCの業務利用のほか、Winnyの利用についても禁止していた。
なお、同社はWinnyがインストールされたPCを検知するなどの情報漏洩対策サービスを提供しており、Webサイトでは「P2P型ファイル共有ソフトによる情報漏洩対策は『使わない、使わせない』が一番」などと記載していた。
大塚商会は「情報流出についてのお詫びとお知らせ」を発表していて、全体としては最善の対応のように見えます。
しかし、大塚商会に管理を任せているところも多いことを考えると企業イメージには相応のダメージがあるかもしれません。

それ以上に問題なのは「大塚商会をもってしても社員の行動までは規制しきれなかった」でしょうか?

大塚商会の発表によると
  1. データを自宅に持ち帰り
  2. 個人パソコンに読み込んだ
  3. パソコンウイルスに感染した
この事実に対して、大塚商会は
  1. データの持ち帰りを禁止していた
  2. 個人所有のPCに業務データをコピーすることを禁止していた
  3. Winny なんかインスートルしないのが一番とアドバイスしていた
というのですから、会社の方針を個人に徹底することの難しさを改めて知らせる事件といえるでしょう。

もう10年ぐらいこの種の問題については勉強しているわけですが、わたし自身も管理者・責任者としての見方しかしていなかったような気がします。
今回の大塚商会の「P2P ソフトなどインストールするな」という説明も「流出したら大変ですよ」という説明とセットになっていたはずですが、考えてみると「大変なのは責任者」であって、実行した社員の方はそんなことを考えないからやっちゃうのでしょう。

なにしろ、「データ持ち出し禁止を破って」→「個人のPCにコピーした」というのですから、もし情報窃盗罪があれば犯罪ですよ。
責任ある立場あれば、普通は業務データと P2P を同居させることはしないでしょう。
なぜこの社員はそういうことをしてしまったのか?今やこの部分に着目して対応策を考えるべきでしょう。

3月 29, 2007 at 10:08 午前 セキュリティと法学 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2007.01.25

欧州委員会の制裁金決定に関連して

朝日新聞より「三菱・東芝など重電10社に制裁金1200億円 EU
欧州委員会は24日、変電所設備の納入を巡る国際カルテルで三菱電機、東芝など日本の5社を含む日欧の重電企業10社に総額7億5071万2500ユーロ(約1200億円)の制裁金を科すと発表した。
単独のカルテルに対する制裁金としてはEUで過去最高という。

日本企業の制裁金は、
  1. 三菱電機  1億1857万5000ユーロ(約190億円)、
  2. 東芝       9090万ユーロ(約140億円)、
  3. 日立製作所   5175万ユーロ(約80億円)
  4. 富士電機(現富士電機ホールディングス〈HD〉)
  5. 日本AEパワーシステムズ(富士、日立、明電舎の合弁企業)も対象になった。
最高額は独シーメンスの3億9656万2500ユーロ(約620億円)でほかにアルストムなど仏3社とオーストリアの1社が含まれている。

欧州委によると、1988~2004年に、変電所のガス絶縁開閉装置の価格を事前に話し合ったり、入札地域を決めたりしていたという。
日本企業は欧州での入札を見合わせ、欧州企業は日本市場に参入しなかった。
欧州委は「日本企業は参入見合わせで欧州市場での競争を阻害した」と判断。制裁金は主導性や企業規模、カルテルに加わっていた時期などで決めたという。シーメンスは欧州司法裁判所に提訴するとしている。

カルテルにはスイスの重電大手ABBも加わっていたが、欧州委に情報を提供したため、制裁金は免除された。

東芝は「欧州委の調査に協力してきたが、当社の調査では欧州競争法に違反する行為を行っておらず、今後、欧州裁判所で争っていく方針」とのコメントを発表。
三菱や日立も「内容を精査した上で、提訴も含めて対応を検討していく」との考えを示した。

一方、富士電機HDは「内容を精査した上で公正に対応していきたい。決定内容や社内調査の結果を踏まえて、社内処分、再発防止の徹底を行う所存」とした。
読売新聞より「絶縁装置でカルテル、EUが日欧10社に巨額制裁金
制裁対象の日本企業は、三菱電機、東芝、日立製作所、富士電機ホールディングス、日本AEパワーシステムズ。
欧州委は、10社が1988年から2004年にかけ、GISの入札過程で情報を共有したうえで落札価格を事前に相談したほか、落札企業の順番を決めた合意を交わしていた、としている。

合意には、日本企業が欧州市場に参入せず、欧州企業が日本市場に参入しないことを互いに約した文言も含まれていたという。
NHKニュースより「EU 日欧企業に巨額制裁金
ヨーロッパ側の企業と日本側の企業が、それぞれ相手の市場で販売活動を行わないことも申し合わせていたということです。
ヨーロッパ委員会は、情報を提供したスイスの1社を除く10社に対して、総額7億5000万ユーロ余り、日本円にしておよそ1200億円の制裁金を科すことを決めました。
これは、ヨーロッパ委員会が単独のカルテルに科す制裁金としては史上最高額だということです。

これに対し、10社の中で最も高額の制裁金を科されたドイツのシーメンスは「事実認定に誤りがあり、制裁金額が高すぎる」として、処分の見直しを求めてヨーロッパ司法裁判所に提訴する方針を発表しました。
けっこう話が混乱気味ですが、問題になった「ガス絶縁開閉装置」とはこのページの写真が代表的なものです。タンクの中にガスを入れて大電力に対応するスイッチを作る、という技術です。
重電機の代表ですが、大きな物を鋳造するので東芝や日立が先に出てくるのでしょう。

さて、その上で今回の日本企業に幅広く制裁金を科する決定はどんなのものか?と思います。
朝日新聞は、どちらか言うと「日本企業が悪い」といったトーンの記事と読めますが、読売新聞の記事では「日本企業はヨーロッパでは売っていないが・・・・」となっていて、さらにNHKニュースでは「シーメンスが事実認定が違い、制裁金が高すぎる」となっています。

現実問題として、変電所の設備ですから日本企業がヨーロッパで商売するのはほとんど無いのは確実でしょう。特に「ガス絶縁開閉装置」だけのビジネスというのは考えにくい。
一方で、欧州委員会の主張は「市場参入しないことを申し合わせていた」とのことですが、法律的に「○○をしない」という文章が違法の証明になるのでしょうかね?

法的判断では「無いことの証明」は「悪魔の証明」と呼ばれ不可能であるから採用しないとなっています。
無いことを証明するのはあまりに広範囲になるので不可能だが、あることの証明なら一つだけだから簡単だ。との原理です。
今回の「市場参入しない」という文章や文言はこれにちょっと近いかと思います。
つまり、問題の文章がなければ日本企業は参入したのだろうか?ですが、上記に書いたようにかなり難しいのではないか?と思うところがあります。
さらに実際には参入しなかったことが参入の可能性があるすべての企業に制裁金を課するとなったので、東芝・日立から始まって、すべての企業に課徴金となっています。
これは「やっていないことに処罰」となるとこうならざるを得ない証明でしょう。

この問題は、日本では安倍首相が他のほとんどすべてが反対しているのに成立を指示したことでまたまた有名になった共謀罪の適用にかなり近いでしょう。
共謀罪は「やっていなくても話したら処罰」ですから、欧州委員会の制裁と原理的にはかなり近い。

近年、法の厳しい適用が求められる傾向がありますが、痴漢えん罪などでもこの手の「やっていないことを証明せよ」的な法的判断が多くなってきた、と感じます。

今回の欧州委員会の決定は色々なことを考えさせてくれました。

1月 25, 2007 at 09:42 午前 セキュリティと法学 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2007.01.10

通信の秘密は未定義なのか?

昨日の夜は情報ネットワーク法学会の勉強会でした。

内容はミスターITこと高橋郁夫弁護士のプレゼンテーションでタイトルが「通信の秘密の数奇な運命」というものでした。

高橋弁護士とはずいぶん前からの知り合いで、あちこちでお目にかかっている間柄です。
タイトルだけでは内容はさっぱり想像がつかないのですが、高橋弁護士のお話なら面白くないはずもない。ということで出かけました。

実は情報ネットワーク法学会の総会以外の会議に参加したのは今回が初めてです。
ざっと20人ほどの勉強会でしたが、目からうろこと言うかものすごいお話を伺いました。

ネットワーク管理者として何かと考えなくてはならないことも一つに「通信の秘密」があります。
高橋弁護士のプレゼンテーションは、この「通信の秘密」というものが法律的にどういうことなのかを憲法の成立時点にまでさかのぼって解き明かしてみるというものでした。

一般的な理解として通信の秘密は憲法21条によるとされています。
第二十一条
  • 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
  • 検閲は、これをしてはならない。
  • 通信の秘密は、これを侵してはならない。
これを素直に読むと、通信の秘密は表現の自由の中に含まれていると、なってしまいます。
つまりあまりよくわからない。

帝国憲法では現憲法の通信の秘密に相当するのは
第26条
  • 日本臣民ハ法律ニ定メタル場合ヲ除ク外信書ノ秘密ヲ侵サルヽコトナシ
となっていて、いわゆる信書の秘密にあたります。

そこで、通信の秘密とは「通信の本文=コンテンツ」と「通信をしていることの情報」のどちらなのか、あるいは両方なのか、が問題だとされます。

通信の秘密を守る側の立場から言うと、通信をしているかしていないか自体を明らかにしないとされますが、DDoS攻撃対策やWinny対策は、通信をしているという事実をもとに、通信を遮断するといったことをプロバイダーが行う、とされています。
ここで通信をしている事実(高橋弁護士によると「トラフィック」)は通信の秘密に当たらないとすることで初めて対策できるとなります。

ネットワーク管理といった実務の観点からいうと、法律の専門家あるいは国がここら辺について明確な説明をしていないことが気になっているわけですが、高橋弁護士のプレゼンテーションによるとなんと憲法制定時にまでさかのぼっても、実は議論がされていなくて「通信の秘密とは何か」は憲法にはないも同然となるそうです。

この憲法で通信の秘密を明確に定義していないことが、刑法や通信に関する法律が、通信の秘密を明確に定義していない、当然通信の秘密を侵すことが何かわからない。というヘンテコな事態を引き起こしています。

確かに通信の秘密というものがはっきりしなかったことはよく承知していますが、なんとこれら憲法にまともに転院されていないし。元をさかのぼっても、まともに議論していなかったらしい。ということが、分かってきました。大変に興味深くも、びっくりするプレゼンテーションでした。

1月 10, 2007 at 09:04 午前 セキュリティと法学 | | コメント (1) | トラックバック (1)

2006.12.26

発信者情報開示のための新たな手続き?

毎日新聞より「発信者情報:同意なしで開示へ ネット被害で業界が新指針
インターネット上のプライバシー侵害や名誉棄損について総務省と業界団体は、情報を書き込んだ発信者の同意がなくても被害者に発信者の氏名や住所などを開示する方針を固めた。

業界は総務省とも協力し、同法に基づく自主的な発信者情報開示のためのガイドラインを策定することを決めた。
原案によると、他人の氏名や住所、電話番号など個人を特定する情報を掲示板などに勝手に書き込む行為を幅広く「プライバシー侵害」と認定。
個人を名指しして病歴や前科を公開することも含まれる。

こうした場合にプロバイダーが被害者からの要請を受け、発信者の同意がなくても、その氏名や住所、電話番号、電子メールアドレスなどを開示できるようにする。

一方、名誉棄損については、プロバイダーによる任意の発信者情報開示をあまり広く認めると「政治家や企業経営者らの不正や問題点の内部告発までネット上からしめ出す懸念もある」(業界団体幹部)と判断。
これまでの名誉棄損裁判の判例も踏まえ、公共性や公益性、真実性などが認められない個人への誹謗(ひぼう)や中傷に限って自主的な開示の対象とする。

被害者は裁判で発信者情報の開示を求めることが多かったが、悪質な書き込みをした発信者を早急に特定し、損害賠償請求できる可能性も高くなるとみられる。

業界と総務省は一般からの意見も募集したうえで、早ければ来年2月にも導入する方針。
直観的にはすごくわかりにくいニュースで、プロバイダー責任制限法では「発言削除」と「発信者情報開示」の二つに大きく分かれていました。
実務的には、「発言削除」と「発信者情報開示」では「発信者情報開示」の方が重大視されていて、発信者情報を開示してしまうと取り消すことができないために手続きを厳重にするべきだ、となっていました。

上記のニュースでは一見発信者情報開示を簡単にしているように見えて、ちょっと違和感があったのですがよくよく読むと発信者情報開示のための手続きとして「プライバシー侵害」を新たにつくるということのようです。

プロバイダー責任制限法はプロバイダーなどに法律的な判断をさせるという意味で、実務的には極めて難しくまた法的な根拠もあいまいでかなり問題があると思っています。

その上にさらに難しい手続きを決めるというのでは、現場はちょっとやっていられないでしょう。
どうもうまくいくとは思えません。

12月 26, 2006 at 09:00 午前 セキュリティと法学 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2006.12.14

Winny 判決

昨日(2006/12/13)は Winny 裁判の判決が京都地裁であった。
求刑が著作権法違反幇助で懲役1年に対して判決は罰金150万円であった。
金子被告は即日控訴した。

新聞の社説を集めてみた。

日経新聞社説   「技術も配慮したウィニー判決
読売新聞社説   「技術者のモラルが裁かれた
朝日新聞社説   「ウィニー有罪 開発者が萎縮する
サンケイ新聞社説 「ウィニー判決 開発意欲そがない議論を
毎日新聞社説   「ウィニー有罪判決 実態は変わらないむなしさ
東京新聞社説   「ウィニー判決 ソフト開発にも良識を

タイトルだけでも色々な社説があり、この裁判の影響が多岐に渡る複雑なものであることが分かります。
現時点では判決文の全文を見ていないのでわたし自身の判断は後にしますが、社説の中から注目するところをピックアップすると。

日経新聞社説より
ウィニーを巡っては防衛庁の機密情報が流出する事件も起きており、元助手の責任は免れないだろう。

2年前に京都府警が元助手をほう助の疑いで逮捕した際、技術開発を萎縮させるという批判の声が上がったが、判決は「技術を提供すること一般が犯罪行為になりかねない無限定な範囲拡大は妥当でない」と枠をはめた。

そのうえで、元助手が「著作権を侵害する状態で利用されるのを十分認識しながらソフトの公開を続けた」ことに違法性があると判断した。
技術開発の有用性を評価しつつ、技術を悪用した違法行為を抑止する点で、妥当な判決だといえる。
読売新聞社説より
技術者のモラルを重く見た判断と言えるだろう。

技術開発に当たって技術者は「暗」の側面を自覚する必要がある、というメッセージだろう。
ウィニーに限らない。科学技術の研究開発に携わる者にとって共通に求められるモラルだ。

今回の判決で技術者が委縮するという指摘もある。だが、同種ソフトの開発は止まっていない。心配は無用だろう。
朝日新聞社説より
運転手が速度違反をしたら、速く走れる車をつくった開発者も罰しなければならない。

そんな理屈が通らないのは常識だと思っていたが、ソフトウエアの開発をめぐってはそうではなかった。

新しい技術を生み出した者は、それを悪用した者の責任まで負わされる。
こんな司法判断では、開発者が萎縮(いしゅく)してしまわないか。納得しがたい判決である。

ファイル交換ソフトの開発者が刑事責任を問われたのは韓国と台湾で計3件あり、それぞれで1件ずつ無罪判決が出ている。
問題のソフトでは著作権を侵害しないよう警告しており、合法的な情報も流れている。
それが無罪の理由だが、こうした事情はウィニーも同じだ。
サンケイ新聞社説より
ソフトが悪用された場合、その開発者も刑事責任を問われるのか-。

弁護側は、「刃物を作った人が、その刃物が使われた事件の責めを負うのと同じ」と主張、終始無罪を求めてきた。
これに対し判決は、被告側に違法行為が行われるとの「十分な認識、認容」があれば、たとえ技術自体は中立的価値があるにせよ罪を問われるとの判断基準を示した。

その