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2011.01.21

日本字のコードを増やすのだそうだ

朝日新聞より「日本IT界の鬼っ子「外字問題」解消を 経産省が着手

2011年1月21日8時45分

「外字(がいじ)」。コンピューターで使う漢字として日本工業規格(JIS)が定めた約1万字に含まれない、規格外の文字たち。

文字化けや正常なデータ通信ができない原因になり、IT業界にとって悩ましい、この「外字問題」を一気に解消しようというプロジェクトが始まった。パソコンで文章を書くときの使い勝手は大きく変わるのか――。

例えば「渡辺」の「辺」。
JIS規格には「邊」「邉」をあわせた3文字しか含まれないが、100字近い異体字があるとされる。

約58万人分の戸籍を扱う東京都足立区。区役所のパソコン画面には49もの「辺」の異体字が現れた。戸籍などを管理するコンピューターシステムに区が登録したものだ。名前に未登録の漢字がある住民が転入するたびに増え、今では外字全体で約5千もある。

外字を作るのは区職員。パソコンで、1文字に30分ほどかけて点描する。完成後は庁内や出先機関にある千数百台のパソコンに登録する。

さらにややこしいことに、新たに作った一つの漢字を外字登録する際、区が割り当てる文字コード番号はコンピューターシステムごとに異なる。メーカーが違うことなどが理由で、例えば住民基本台帳システムの個人情報を国民健康保険のシステムにそのまま転送しても同一人物とは認識されない。

このため、区はコンピューターがデータをやりとりする際に文字コードを変換するシステムを約1億8千万円かけて導入した。

足立区戸籍住民課の初鹿野(はじかの)学課長は

「どの自治体にもある問題。膨大なコストがかかるが、システムが変われば作り直し。無駄でしかない」。
こうした問題は企業でも同じだ。異体字を正字に直して登録するケースもあるが、金融機関などでは、公的書類と照合する本人確認の妨げになるとして対応が分かれる。

プロジェクトを進めるのは経済産業省と大手IT企業。民間側の協議会は昨年12月6日に発足し、コンピューターで日本語を扱うのに不可欠なソフトを作っているマイクロソフト、ジャストシステムなど9社・団体が加わった。マイクロソフトの加治佐俊一CTO(最高技術責任者)は「外字問題という、世界でも例のない日本固有の問題が解決に向かう」と語る。

経産省が動いたのは、官民ともにインターネットによる電子的な手続きの導入が進むなか、正しい人名表記を扱う必要に迫られると考えたためだ。

法務省が幅広い電子化を目指して04年にまとめた「戸籍統一文字」(5万6040字)をもとに5万8713字のデータベースを作る。

世界共通の文字コード体系「ユニコード」に反映させ、あらゆるコンピューターで人名や地名を網羅する狙いだ。

外字の存在はネット上の同じサービスを大勢の個人や企業が共有する「クラウド」化を妨げ、日本が世界的な流れに取り残される原因にもなりかねないとされ、解決が急がれている。

政府側でプロジェクトを統括する経産省の平本健二さんは「1980年代から続く問題を解決したい」と語った。

普及が進む電子書籍についても成果が期待できる。日本文芸家協会副理事長で芥川賞作家の三田誠広さんは

「文字が1万字しか使えないのは大きなネックだ。特に人名が表記できないのは致命的欠陥。文学書や歴史書を正確に電子書籍化できない」
と語る。

一方で、懸念の声もある。

国立国語研究所の高田智和准教授は

「戸籍や地名にはすでに使われていない異体字や誤字も多い。いたずらに使える字を増やすのでなく、使われているかどうかで仕分けるのが先ではないか」
という。

プロジェクトが完了すれば、パソコンの日本語変換で「渡辺」の候補は現状の3から一気に22に増える。

JIS規格を決める際、多くの異体字を集約した東京外語大の芝野耕司教授(言語学)も

「多くの漢字が画面上に並ぶ中から、延々探せというのか。漢字を増やすことはコンピューターにとって意味のある行為かも知れないが、人にとっては使い勝手が悪化するだけだ」
と話している。

何とも悩ましい話ですね。

ワープロが出来た当初「ワープロの文字は活字と同等に扱って良いのか?」という議論がありました。
プリンターでドットの集まりとして示した文字と、活字の文字が同じとみるかどうか?という話ですね。

ぞの後に、コンピュータの文字コードが規格化されたのですが、かなり色々な文字を組み込まない規格になりました。

そもそも文字の規格化というのは、ある意味でキリがないわけで、無制限に異字体を組み込むというのは間違っているでしょう。
実用上で困るのが、人名であれば人名に使われる文字についてだけ組み込むというのでも良いかと思います。

例えば、地名などで昔の名前の文字は使っていない、といった場合にその時代の文字をコンピュータで扱えなくてはならない、との考え方はまずいと思います。
あくまでも、現時点での実用性の範囲の中だけで文字数を増やすべきでしょう。

1月 21, 2011 at 07:58 午後 もの作り | | コメント (1) | トラックバック (0)

郵便不正事件・障害者団体元会長の控訴審が結審

朝日新聞より「郵便不正事件 検察側の訴因変更認めず結審 大阪高裁

2011年1月21日16時30分

障害者団体向けの郵便割引制度をめぐって厚生労働省から偽の証明書が発行された事件で、虚偽有印公文書作成・同行使罪などに問われた自称障害者団体「凛(りん)の会」(現・白山会)元会長(75)=一審・一部無罪、検察側控訴=の控訴審の公判が21日、大阪高裁であった。

湯川哲嗣裁判長は、被告の起訴内容から厚労省元局長(無罪確定)の関与の部分を外すとした検察側の訴因変更を認めず、結審した。

判決は2月25日。

郵便不正事件の捜査過程で起きた大阪地検特捜部の証拠改ざん事件を踏まえ、「証拠を捏造(ねつぞう)してまで組み立てた起訴内容が誤りだった責任を被告に転嫁しようとしている」として訴因変更を認めないように求めていた被告の元会長の弁護人は閉廷後、「検察側の控訴が棄却される可能性が高まった」と指摘。

元局長と被告の元会長の共謀関係を認めず、同被告が問われた虚偽有印公文書作成・同行使罪について無罪とした一審の判断が維持されるとの見方を示した。

被告の元会長は元局長に証明書の発行を頼んだなどとして起訴された。

昨年4月の一審・大阪地裁判決は「元局長との共謀は認められない」として虚偽有印公文書作成・同行使罪について無罪とし、郵便法違反罪については罰金540万円(求刑懲役1年6カ月、罰金540万円)を言い渡していた。

検察側は元局長の無罪判決が昨年9月に確定したことを受け、同11月に被告の元会長の起訴内容から元局長の関与の部分を外す訴因変更を求めていた。(平賀拓哉)

この控訴審は、検察が元局長との共謀を認めなかった第一審判決を不服だとして、控訴したものです。
だから、訴因変更で元局長との共謀を外すと、第一審判決の郵便法違反についての判決に不服があるとなりますが、控訴の本旨である訴因がなくなれば、控訴棄却は当然です。

高裁が、控訴棄却にするか、自判するかが興味深いですね。
高裁が、ノーコメントで控訴棄却にした場合、世論は高裁に批判的になるでしょうから、裁判所としてコメントを出すという意味でも、自判するのではないだろうか?

1月 21, 2011 at 07:34 午後 事件と裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.01.20

電子出版が進まないから自炊に走るし、代行業者も出で来る

サンケイ新聞より「書籍電子化 自炊代行業者にNO! 著作権侵害? 出版社が対抗策

2011.1.20 14:16

自ら書籍を電子化する「自炊」を代行する業者が増えるなか、店舗内にある裁断済みのコミックとスキャナーを有料で使えるサービスが昨年末に登場し、著作権をめぐる議論が改めて巻き起こった。

インターネット上で批判が集中したことから業者は一時的にサービスを休止したが、21日から「業務を変更して」再開する予定。自炊業者の興隆に対し、一部の大手出版社は、「購入者以外の電子化は認められていない」と書籍の奥付に明記する対抗策を打ち出し始めている。(猪谷千香)

業務変更で再開へ

ネットで“炎上”した自炊業者は、昨年12月27日に東京・秋葉原で“試験オープン”した「自炊の森」。
利用者は店舗内に配置された裁断済みのコミックをスキャナーで電子化し、データを自宅へ持ち帰ることができた。

書籍の利用から電子化までがセットとなり、1冊当たりの料金が設定されていたことから、「(著作権法で許された)私的複製の範囲を超える」「著作権者に対する利益還元がない」などと指摘された。

著作権法では、個人が個人的な目的で自ら著作物を複製することや、施設内で書籍を使わせることを認めており、「自炊の森」は一見、同法をクリアしているようにもみえる。

しかし、著作権法に詳しい福井健策弁護士は、

「自らの管理下で著作物を利用させ、利得を取得している場合には、自らが利用の主体になるという最高裁の判断がある。
本も機材も店の管理下にある『自炊の森』はこれに近く、違法の可能性が強い」
とみる。

指摘を受けた「自炊の森」は同月31日にサービス休止としていたが、

「店内の書籍利用に関して課金は行わない」形で今月21日から正式オープンする予定。「『店内の書籍は自由に利用していただいて構わない』というスタンス」
と説明する。

奥付に注意明記

「電子書籍元年」と呼ばれた昨年以来、裁断から電子化まで代行する業者が続々と現れている。

「違法性が高い」として、代行業者に対し法的措置も検討してきた日本書籍出版協会では「事態が進んでおり、今年から啓発活動に力を入れたい」と話す

また、文芸春秋や光文社などの出版社は今月から、書籍の奥付に「購入者以外の第三者による本書のいかなる電子複製も一切認められておりません」といった明記を始めた。

「『自炊の森』は作家に対する尊敬がなく、不安を感じる」と語るのは、絶版漫画を無料配信し、広告益を作家に還元するサイト「Jコミ」試験版を立ち上げた人気漫画家、赤松健さん。
「著作権法違反は親告罪だが、(出版社が関与しない)同人誌や絶版本などの漫画について訴えることは難しい」。ツイッターには「Jコミで『自炊の森』を倒したいです」と書き込んだ。

自炊業者が増える背景には、電子書籍のニーズに出版業界が追いついていない現状もある。

日本電子出版協会の三瓶徹事務局長は

「年間8万点近い本が刊行されるなか、電子書籍はまだ一部。本と同時に電子書籍も出さなければ、違法行為はなくならない。読者に便利な環境を提供しなければ」
と話している。

確かに、自炊の森のやり方は、法律の穴を突くというよりも正に脱法的であり、批判もされたが確実に著作権法違反とは言い難いものであった。

それが、先の最高裁判決で著作権法違反となるだろうが、こんな馬鹿な商売を抑止するために、出版社がさっさと電子出版を進めれば良いだけの話だ。

それを「啓発を進める」とは何様のつもりなのだろう?

出版界のユーザー無視の姿勢が、自炊の森を登場させた事に気づかないのだろうか?

1月 20, 2011 at 07:40 午後 書籍・雑誌 | | コメント (0) | トラックバック (0)

ゴルフカートで故意に人をひいた事件

読売新聞より「遼クン取材のカート暴走、カメラマンに有罪判決

高知県芸西村のゴルフ場で2009年11月、石川遼選手らを取材していたTBS(東京)の下請け制作会社スタッフの乗ったカートが暴走した事故で、自動車運転過失傷害罪に問われた東京都練馬区、フリーカメラマン田中雅人被告(48)の判決が20日、高知地裁であった。

平出(ひらいで)喜一裁判官は

「よい映像を撮りたいという自身の都合から、大勢のギャラリーがいて危険なのに無理にカートを発進させるなど、過失は非常に重大
として禁錮2年、執行猶予4年(求刑・禁錮2年)の有罪判決を言い渡した。

判決によると、田中被告は09年11月29日、石川選手が出場し混雑していた「Kochi黒潮カントリークラブ」2番ホール付近でカートを運転した際、ギャラリーと十分な間隔を取るなどの注意を怠り、女性3人をはねて重軽傷を負わせた。

(2011年1月20日18時57分 読売新聞)

この事件は、ビデオがネットに公開されて大々的に知られたのですが、実はごく最初のビデオとその後に長くながれたビデオは若干違っていました。

元のビデオは、おそらくテレビで中継されていた映像だと思うのですが、事件後も長らくながれたバージョンでは観客がカートになぎ倒されたところから、下敷きになった女性を引き出そうとしているところだったと思います。

しかし、わたしが見た最初のバージョンでは、確か舗装してある歩道の向こう側から、歩道(通路)をカートが横切って、歩道からコースの間に大勢いる群衆をカートで押しのける様子がはっきりと写っていました。

つまりこれが判決で「大勢のギャラリーがいて危険なのに無理にカートを発進させるなど、過失は非常に重大」と指摘された点でしょう。

わたしには、自動車運転過失傷害罪ではなくて、危険運転致傷罪を適用するべきか、あるいは傷害罪を適用するべき事件であったと思います。
もちろん、番組制作会社やテレビ局も幇助罪で、刑事罰を科すべき事件だと考えています。

人がいるところに、故意にカートを突っ込んで「人の方が避けるべきだ」と考えた時点で、処罰するべきだろうと強く思うのです。

1月 20, 2011 at 07:20 午後 事件と裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

「まねきTV・最高裁判決・逆転判決の上で、高裁に差し戻し・その2

「まねきTV・最高裁判決・逆転判決の上で、高裁に差し戻し」の続きです。
facebook で落合洋司弁護士が紹介していた記事です。

ITmedia News より「1対1通信のロケフリは「自動公衆送信装置」になりうるか 「まねきTV」最高裁判決の内容
1対1の通信しかできないロケフリ機器でも「自動公衆送信装置」になりうる──「まねきTV」が著作権を侵害しているとの初判断を示した最高裁の判決文が公開された。
2011年01月19日 19時03分 更新

 日本のテレビ番組をネット経由で海外でも視聴できるようにする「まねきTV」は著作権侵害に当たると初めて判断した最高裁の判決文が1月18日、公開された

 一審、二審判決では、1対1の通信を行うソニーの「ロケーションフリー」(ロケフリ)機器を使ったサービスは、ネットによる不特定多数への送信(送信可能化、公衆送信)には当たらないと一貫して判断してきた。

だが最高裁判決では、ロケフリが1対1通信しか行えないとしても、まねきTVは誰でも契約できる以上は不特定多数への送信に当たり、送信の主体もユーザーではなくまねきTVだと判断。
まねきTVによる著作権・著作隣接権の侵害を認め、テレビ局側敗訴とした一審、二審の判決を破棄した。

訴訟の経緯

 まねきTVは「永野商店」が運営するサービス。ロケフリ用ベースステーションを個人ユーザーから預かり、設定済みの端末を使って海外でも番組を視聴できるようにしている。

 これに対し2006年2月、NHKと在京キー局5社が著作権を侵害されているとして、サービス差し止めを求めて仮処分を申請したが、東京地裁は同年8月、請求を棄却

同年12月の知財高裁も地裁の決定を支持して申し立てを棄却し、翌年1月、最高裁への抗告は許可されないことが決定。テレビ局側の敗北に終わった。

 テレビ局側は07年3月、サービス停止と損害賠償を求めた本訴を起こしたが、08年6月の一審・東京地裁判決はテレビ局側の主張を認めず、同年12月の二審・知財高裁もテレビ局側の控訴を棄却。
テレビ局側は最高裁に上告していた。

 最高裁は昨年12月、双方の主張を聞く弁論を開いたため、これまでの判決を変更する可能性が出てきたとして、今年1月18日の判決が注目されていた。

知財高裁「ロケフリでは不特定多数への送信は行えない」

 テレビ局側は、テレビ番組を不特定多数(=公衆)にネットなどで配信する状態にできる「送信可能化権」と、配信できる「公衆送信権」を侵害されたと主張してきた。

 主な争点になったのは、(1)まねきTVサービスが「自動公衆送信」に当たるか、(2)送信を行う主体は誰か──だった。

 テレビ局側は「サービスは誰でも加入でき、まねきTV側から見たユーザーは『不特定』に当たる。不特定の者に送信行為を行っているから公衆送信に当たり、アンテナやネットと機器を接続しているのはまねきTV側だから、送信可能化の主体もまねきTVだ」として、まねきTVサービスが著作権・著作隣接権の侵害に当たると訴えてきた。

 これに対し、一審判決二審判決は、

  1. 送信可能化は「自動公衆送信装置」(ネット上のサーバなど)の使用を前提としている。
    自動公衆送信装置は、公衆(不特定または多数の者)が、通信回線を使って著作物を直接受信できるようにする送信機能を持つ装置でなければならない。
  2. ロケフリのベースステーションは、あらかじめ設定した端末との1対1の送受信だけが可能であり、不特定多数への送信は行えないから、自動公衆送信装置とは言えない。
    ユーザーはまねきTVと契約し、1対1通信を行うためのベースステーションをまねきTVに持参・送付した者なのだから、まねきTVにとってユーザーは不特定または特定多数とは言えない。
  3. ロケフリベースステーションからどの番組を端末に送信するか/しないかはユーザーが決めることであり、まねきTVには決定に関与していない。
    まねきTVは送信の主体と言うことはできない。
  4. 従って、まねきTVはテレビ番組の「送信可能化」には当たらないから、まねきTVが主体となって送信可能化権を侵害したとは言えない。
  5. ベースステーションは自動公衆送信装置ではないから、テレビ番組をユーザー端末に送信することは自動公衆送信には当たらず、公衆送信権の侵害も成立しない。

 ──として、テレビ局側の訴えを退けた。

最高裁「サービスが自動公衆送信に当たるのなら装置も自動公衆送信装置に当たる」

 だが18日の最高裁判決は、一審、二審判断を「是認することができない」とした。

 判決は前提として以下を示した。

  1. 著作権法が送信可能化権を定めたのは、自動公衆送信の準備段階を規制することにある(編注:ネット上における動画などの「違法アップロード」がこれに当たる)。
  2. この趣旨からすると、機器に入力したコンテンツなどを、ネット経由で受信者からのリクエストを受けて自動的に送信する機能を持つ装置は、それが1対1の通信機能しか持たない場合であっても、その送信行為が自動公衆送信に当たる場合は、この装置も自動公衆送信装置に当たるというべきだ。
  3. 自動公衆送信を行っている主体は、自動公衆送信装置が受信者からのリクエストに応じて情報を自動的に送信できる状態を作り出す行為を行う者と解するべきだ。
    今回のように装置がネット回線に接続され、これに継続的にデータが入力されている場合には、装置にデータを入力する者が送信の主体である。

 つまり「1対1通信のロケフリは自動公衆送信装置には当たらない」との一審、二審の解釈を退け、サービスによってはロケフリも自動公衆送信装置に該当しうるとした。
そしてこの場合、送信を行っている主体はロケフリにテレビ番組データを継続的に入力している者だとした。

 その上で、以下のように結論した。

  1. まねきTVは、ロケフリベースステーションに対し、アンテナで受信した電波を分配機を介するなどして継続的に入力されるように設定し、ベースステーションを事務所に設置して管理しているのだから、ベースステーションの所有者がユーザーであっても、ベースステーションに入力しているのはまねきTVであり、送信を行っている主体はまねきTVとみるべきだ。
  2. ユーザーは誰でもまねきTVと契約してサービスを利用できる。
    まねきTVからみてユーザーは不特定の者として「公衆」に当たり、まねきTVを主体としたロケフリによる送信は自動公衆送信であり、ロケフリは自動公衆送信装置に当たる。
    従って、ロケフリベースステーションに放送を入力することは、「放送の送信可能化」に当たる。
  3. アンテナからベースステーション、ベースステーションからユーザー端末まで、まねきTVが送信の主体として行うテレビ番組の公衆送信に当たる。

 ──として、まねきTVがテレビ局の送信可能化権、公衆送信権を侵害しているとの判断を示し、一審、二審判決を破棄。損害額などを算定させるため、知財高裁に審理を差し戻した。判決は裁判官4人の全員一致だった。

まねきTV側「将来に大きな禍根を残す」

 テレビ局側は二審で、まねきTVにとってユーザーは「公衆」に当たり、ロケフリが1対1通信しかできないからと言ってロケフリが自動公衆装置に当たらないとは言えないと主張してきた。
最高裁判決はこうしたテレビ局側の主張に沿った形と言える。
判決を受け、テレビ局側は、「主張が認められた適切な判断」とコメントした。

 まねきTV側は「国民の著作物利用を制限する不当な判決。今後のネットを利用した活動に大きな禍根を残す」とした。弁護団の小倉秀夫弁護士はTwitterで「日本が情報化社会の進展に完全に乗り遅れて後進国路線まっしぐらになるとすれば、その起点となる裁判例」と批判した。

赤字の「サービスによってはロケフリも自動公衆送信装置に該当しうる」と判決文を解説した部分が骨子で、ここをもっと厳密に考えると、「サービスによっては、人によって自動公衆送信であると解釈しうる」でしょう。

これでは、法律上の決定とは言い難い。
だから、対価を支払え、ならまだ分かるが、サービスを停止する論拠がこれでは、さじ加減でどうにでもなってしまう。

なぜサービスを停止する事が必要なのか?という必要条件を示さないで「なりうる」では、近代の裁判とはとうてい思えない。
それが法律の不備であるのなら、それを検討するべきだろう。
なんというか、裁判官の偏見だけで出来ている判決なのではないのか?

1月 20, 2011 at 11:17 午前 | | コメント (0) | トラックバック (0)

新幹線システムトラブルを報道した記事に違和感

読売新聞より「新幹線システム、処理限界警告なし…設計不備か

JR東日本の新幹線が総合管理システム「COSMOS(コスモス)」のトラブルで運行ができなくなった問題で、同システムがダイヤ修正などで処理能力の限界を超えた際、パソコン画面上などで係員に警告する機能を備えていなかったことがわかった。

今回のトラブルでは、処理能力を超えてデータが表示されなくなる現象が起こり、同社はこれをシステムダウンと疑って新幹線全線の運行を停止していた。

国土交通省ではシステムの設計に不備があったとみて調べている。

JR東日本によると、17日朝は雪の影響で東北新幹線24本のダイヤ修正を処理したところ、「1分あたり600件」の設定上限を超過してしまったという。
その結果、運行本部のパソコン画面上で運行情報の一部が表示されなくなる不具合が起きた。

システムにはパソコン画面に処理件数を表示する機能や、限界が近づいたことを警告する仕組みがなかった。
(2011年1月20日09時00分 読売新聞)

朝日新聞より「新幹線運休、同じフロアにシステム開発者 連携できず

2011年1月20日8時47分

JR東日本の新幹線が一時運休した問題で、「システムの不具合が発生した」と誤解した運行担当の指令部門が所属する新幹線運行本部には、システムの開発者もいたことが関係者への取材でわかった。

しかし連携できず「不具合ではない」と見抜けなかったため、1時間15分の全面運休を招いた。

JR東の発表によると、17日朝、東北新幹線の沿線で雪が降り、福島県内でポイントが切り替わらなくなる事故が相次いだ。
新幹線運行本部(東京都)では同8時ごろから、指令部門の7人が、24本の列車ダイヤの変更を入力し始めた。

運行管理システム「COSMOS(コスモス)」では1分ごとにデータ修正が必要な箇所をチェックしており、上限の600件を超えると各列車の駅到着予定時刻を示す線がモニター上から消える仕組みになっていた。
だが、これを知らされていなかった指令部門はシステムの不具合が起きたと考え、同8時23分に全線で停車を指示した。

しかし、JR東の関係者によると、同じフロアにあるシステム部門には、システムを開発して仕組みをすべて把握している社員が複数いた。
だが、発生時のシステム部門の当番は開発者に連絡をとらず、指令部門とも十分な協議をしなかったという。

同本部に詳しいJR東社員は「表示が適正だと知っていれば列車は止めない」と指摘する。

同本部の元幹部は「指令はシステムに聞くべきだったし、システムは情報を集約して指令に教えるべきだった」と話す。

JR東は朝日新聞の取材に

「システムに最も詳しい社員の勤務は午前9時からだった。発生時に適切な助言ができる社員がいたとは承知していない」
としている。

今回の問題でJR東は、システム導入以降に列車本数が4割増え、2008年にはシステム更新をしたのに上限は600件のままにしていたことが原因で、「配慮不足だった」と説明した。

その上で

  1. (1)続けてデータを修正する場合、時間をおいて入力する
  2. (2)600件を超えても到着予定時刻を示す線をモニターに表示するようにする
を再発防止策に掲げた。

だが、元幹部は「対症療法でしかない。部門間の連携を密にしなければ同じトラブルが繰り返される」と危惧する。(小林誠一、宮嶋加菜子)

わたしは、どうもこの2本の記事には、かなりの違和感を感じます。
そもそも、今回のシステムエラーとその対処が、それほど問題になることなのだろうか?

読売新聞の記事は、設計不備かとありますが、設計時の入力想定を超えたという事実があって、それに適切な対処が出来なかったから、システムを止めたわけです。
だから記事は、その通りなのだが、原因が分かって対策が出来たのだから、同じことは今後起きないでしょう。

そうなると、入力範囲のチェックが不完全なシステムであった事が、大問題なのか?となりますが、現場の実情から言えば、この種のトラブルはそうそう珍しい事ではないし、特に古いシステムではおきがちな事です。
つまり、わたしにはわざわざ報道するほど珍しい事件とは思えないのです。

朝日新聞の記事は全く違う観点からの記事ですが、運用の現場に開発の人間がいたから、ちゃんと対応出来て当然だ、という事なのですが、これは全く間違っていると思いますね。

基本的に新幹線のダイヤ管理システムは、巨大システムに分類されるものであって、そこに偶然対応できる人がいたから、何とかなるはずだ、はあり得ない。
そんな事が「出来るべきだ」だとすると、現場に開発担当が張り付いていて当然だ、となってしまって合理化の観点からはあり得ないし、そもそもヒューマンエラーの原因を大増産します。

大昔の本で「自動車絶望工場」1973年がありますが、その中に著者の鎌田慧氏が「労働とは・・・・」として、趣味の園芸のような組織化されない、個人的な「働き」が本来の労働の姿である、として自動車の量産工場自体を否定しています。

わたしが、この本で一番異様に感じたのが「本来の労働」が、趣味の園芸作業のような「隣の人と手を携えて」という範囲に限定したら、中世以前ぐらいでしか成り立たない世界になってしまうと思ったところです。

今回の朝日新聞の記事には「隣の人と手を携えて」という雰囲気を感じて、近代社会はそれでは動かないし、オフショア開発といった事が日常化している現在この記事はいったいどういう世界観で書いているのか?大いに疑問があります。

この2本の記事は、どうも方向性がヘンで、新幹線のような巨大システムを正しく評価する視点が報道機関にはないのでは?という危惧を感じました。

1月 20, 2011 at 10:19 午前 もの作り | | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.01.19

H3ロケットの開発計画

朝日新聞より「宇宙機構、3段ロケット「H3」開発検討 有人も視野

Up

2011年1月19日3時0分

宇宙航空研究開発機構と三菱重工業が、次世代ロケット「H3」の技術的な検討を始めた。 国産の主力ロケットH2A、H2Bは2段ロケットだが、H3はまったく新しい3段ロケットを想定。

有人飛行に使うことができ、太陽系探査では「はやぶさ」などより大きな探査機も打ち上げられる。H2シリーズは基本設計から30年になるため、部分改良よりも新規開発する方が多目的化できるとみている。

試案によると、H3は1段目に、H2Aの2段目と同じ形式のエンジンを3基ほど並べる。1基ずつは高出力ではないが、噴射される燃料の温度が低く、安全性が高い。
複数積むことで、国際宇宙ステーション(ISS)の高度に6トンの有人船を運べる能力を持たせる。1基故障しても推進力を確保でき、このエンジンを2段目にも使えば低コスト化を図れる。

20日には、H2Bで有人船にも発展可能な無人補給船「HTV」2号機が打ち上げられる予定だ。H2Bなどは固体燃料の補助ロケットで推進力を補っているが、固体燃料は米スペースシャトル・チャレンジャー爆発の原因にもなった。このため、H3を有人で打ち上げる際は、固体燃料を使わない方針だ。

3段ロケットにすれば、有人飛行では3段目エンジンを打ち上げ失敗時の緊急脱出に使える。太陽系探査でも、探査機を飛ばす方向の自由度が増す。

日本の探査機はこれまで、ロケットの制約から大型化が難しかった。
観測機器を多く積むと予備系を少なくしなければならず、失敗の一因にもなっていたが、ロケットの運用に幅ができることで、大型化も図れそうだ。

静止軌道など普通の衛星には下2段を使えばすむようにし、打ち上げ費はH2Aの80億~120億円より2~3割ほど安くする。技術的には2020年ごろに初飛行できるという。

1段目に小さめのエンジンを複数使うのは、ロシアのソユーズや米民間ロケット「ファルコン9」などと同じ設計思想だ。

米オバマ政権は昨年、米航空宇宙局(NASA)によるロケット開発をやめ、民間ロケットの活用を打ち出した。

ただ、ファルコン9などは旧世代の技術を使っており、新しいロケットを開発し続けている欧州のアリアンスペースに差をつけられつつある。

09年に策定された宇宙基本計画は、月面有人活動も視野に入れた基盤技術を構築するとしている。
有人月探査のハードルは高いが、宇宙機構の立川敬二理事長は13日の会見で「有人ロケットについて国の決定は出ていないが、研究は続けたい」と話していた。(東山正宜)

絵を見ると、ちょっと小型化していて、これでより大型の衛星などを打ち上げることが出来るのが、ちょっと不思議な感じです。2段目・3段目により大出力のエンジンが使えるようになる、ということなのでしょうね。

記事中にもありますが、宇宙開発も民間主導が当たり前になりつつあり、日本が三菱重工が主体になってエンジンの改良が進んだのも、世界的に見れば先行事例のようです。

特に有人衛星を日本が打ち上げる必然性はないでしょうが、より制御しやすいロケットを使うと、いろいろな事が出来るようになり、火星に探査機を送るといった事がやりやすくなるでしょう。

さほど開発に手間が掛かるようにも見えないから、是非とも速く実現して欲しいものです。
こういった「未知の方面の実現」こそが今の日本で一番重要な事だと思うのです。

1月 19, 2011 at 07:58 午前 もの作り | | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.01.18

阿久根市・新市長が最初にやったこと

Google で「阿久根市」と入力してニュース検索をしてみた。
「報復人事だ」阿久根副市長解任の仙波氏ら集会読売新聞1時間前
選挙:阿久根市長選西平氏当選混乱市政のかじ取り託す/鹿児島毎日新聞7時間前
阿久根市長選住民は独善手法を拒んだ西日本新聞12時間前
阿久根市長室、久しぶりにベール脱ぐ西平新市長が指示朝日新聞13時間前
「専決は違法、見直す」阿久根新市長・西平氏、一問一答と公約MSN産経ニュース13時間前
解任の仙波副市長「フォローできず後悔…行革は見届ける」MSN産経ニュース13時間前
竹原色払拭、ボトムアップ呼び掛け阿久根新市長・西平氏MSN産経ニュース13時間前
西平・阿久根新市長、専決で副市長選任の仙波氏解任読売新聞13時間前
「改革の推進」46%が期待阿久根市長選出口調査朝日新聞14時間前
「正当なやり方で阿久根変えて」市民・知事の声朝日新聞14時間前

専決処分で任命されている副市長が新市長に解任されて「報復人事だ」というのは無理がありすぎ、と思いますね。
また、消防署の壁などの「壁画」を消すことを新市長が検討と伝えられて、これも騒動になりそうですが、問題の「壁画」はネット上でも「いかがなものか」とかなり批判的なトーンで話題が広まっているもので、まあ消す方が妥当でしょう。

結局のところ、前市長の独裁的な市政の部分については、是正されるのが当然であると思います。
議会制民主主義は、ベストではないかもしれないが、常にベターではあるはずだと思うのです。

1月 18, 2011 at 11:23 午後 国内の政治・行政・司法 | | コメント (0) | トラックバック (0)

まねきTV・最高裁判決・逆転判決の上で、高裁に差し戻し

毎日新聞より「TV番組:ネット海外転送は違法…最高裁が差し戻し判決

インターネットを通じて海外で日本のテレビ番組を視聴できるサービスを提供するのは著作権法違反だとして、NHKと在京キー局5社が、運営会社にサービス停止と計約1000万円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第3小法廷(田原睦夫裁判長)は18日、請求を棄却した1、2審判決を破棄し、サービスは著作権を侵害するとの初判断を示した。

そのうえで、審理を2審・知財高裁に差し戻す判決を言い渡した。

◇著作権侵害認める

判決により運営会社側の敗訴が事実上確定した。
同業者はサービス停止を迫られることになりそうだ。差し戻し後に賠償額などが審理される。

被告は「まねきTV」の名称でサービスを提供している「永野商店」(東京都文京区)。

同社によると、番組送信用の市販機器を購入して同社に預け、入会金1万円と月額使用料4800円を支払えば、海外や東京から離れた地域でもキー局の番組をリアルタイムで見ることができる。

訴訟では、番組提供がテレビ局側の著作権を侵害する「公衆送信行為」に当たるかどうかが争われた。

1、2審は

「各利用者と1対1の関係でサービスを提供しており、公衆に対する送信ではない」
などと判断したが、小法廷は
「誰でも契約できるサービスで、永野商店は主体的に不特定の人に番組を送信している」
と結論付けた。

【伊藤一郎】

◇「無秩序許されず」…民放関係者

業界関係者によると、使用する機器や技術的形態が異なるケースも含め「まねきTV」と同様のサービスを提供している業者は30社程度あるという。最高裁判決に従えば、ほぼすべてのサービスが違法と判断される可能性が高い。

在京各局は別の業者を提訴したり、悪質な業者を刑事告発してきた。民放関係者は「海外に番組を販売する場合は出演者らに利益を還元できるよう権利処理をしている。

番組が無秩序に海外に送信されれば、正当な報酬を支払えなくなる」と説明。「フリーライド(ただ乗り)は許されない」と話す。

これに対し、05年に現行のサービスを開始した永野商店の永野周平社長は

「テレビ局の既得権益を守るため、便利なサービスを受けられる権利を奪うのはおかしい」
と主張。
差し戻し後に判決が確定するまではサービスを続ける意向だ。現在の利用者は不明だが、07年時点では74人が契約していたという。

ただし、判決は個人同士による番組転送まで違法としているわけではない。海外在住者が日本にいる家族や知人に送信用の機器を預けるなどすれば、現地で日本の番組を見ることは可能だという。

毎日新聞 2011年1月18日 20時21分

岡村久道弁護士が、ブログに早速コメントしています。
情報法学日記 by 岡村久道より「速報-最高裁が「まねきTV」訴訟で原判決を破棄差し戻し

2011年1月18日 (火)

速報-最高裁が「まねきTV」訴訟で原判決を破棄差し戻し

だそうである。

本件では、すでに弁論が開かれていたので、予想できたとはいえ、たいへん残念な内容だ。

いずれ分析したいが、とりあえず、早くも判決文がアップロードされている。

次のとおりなので、ご覧いただきたい。

===============================

       主 文

原判決を破棄する。
本件を知的財産高等裁判所に差し戻す。

     理 由

上告人X1代理人梅田康宏ほかの上告受理申立て理由並びに上告人X2代理人松田政行ほか,上告人X3代理人岡崎洋ほか,上告人X4代理人前田哲男ほか,上告人X5代理人伊藤真ほか及び上告人X6代理人尾崎行正ほかの上告受理申立て理由(ただし,いずれも排除されたものを除く。)について

1 本件は,放送事業者である上告人らが,「まねきTV」という名称で,放送番組を利用者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する機器を用いたサービス(以下「本件サービス」という。)を提供する被上告人に対し,本件サービスは,各上告人が行う放送についての送信可能化権(著作権法99条の2)及び各上告人が制作した放送番組についての公衆送信権(同法23条1項)を侵害するなどと主張して,放送の送信可能化及び放送番組の公衆送信の差止め並びに損害賠償の支払を求める事案である。

2 原審の確定した事実関係の概要は,次のとおりである。
(1)上告人ら(上告人X4を除く。)は,放送事業者であり,それぞれ,原判決別紙放送目録記載のとおり,同目録記載の各放送(以下,同目録記載の各放送を「本件放送」と総称する。)について送信可能化権を有する。Aは,放送事業者であった者であり,同目録記載のとおり,同目録記載の放送について送信可能化権を有していた。
上告人ら(上告人X4を除く。)及びAは,それぞれ,別紙放送番組目録記載の
とおり,同目録記載の各放送番組(以下「本件番組」と総称する。)を制作した。
上告人X4は,放送事業者であり,平成20年10月1日,会社分割により,Aのグループ経営管理事業を除く一切の事業に関する権利義務を承継した。
(2)本件サービスにおいては,Bが販売するロケーションフリーという名称の商品(以下「ロケーションフリー」という。)が用いられるが,ロケーションフリーは,地上波アナログ放送のテレビチューナーを内蔵し,受信する放送を利用者からの求めに応じデジタルデータ化し,このデータを自動的に送信する機能を有する機器(以下「ベースステーション」という。)を中核とする。

ロケーションフリーの利用者は,ベースステーションと手元の専用モニター等の端末機器をインターネットを介して1対1で対応させることにより,ベースステーションにおいてデジタルデータ化されて手元の端末機器に送信される放送を,当該端末機器により視聴することができる。その具体的な手順は,①利用者が,手元の端末機器を操作して特定の放送の送信の指示をする,②その指示がインターネットを介して対応関係を有するベースステーションに伝えられる,③ベースステーションには,テレビアンテナで受信された地上波アナログ放送が継続的に入力されており,上記送信の指示がされると,これが当該ベースステーションにより自動的にデジタルデータ化される,④次いで,このデータがインターネットを介して利用者の手元の端末機器に自動的に送信される,⑤利用者が,手元の端末機器を操作して,受信した放送を視聴するというものである。

(3)被上告人は,本件サービスを行うに当たり,利用者から入会金3万1500円,月額使用料5040円の支払を受けて,利用者が被上告人から本件サービスを受けるために送付した利用者の所有するベースステーションを,被上告人事業所内に設置し,分配機等を介してテレビアンテナに接続するとともに,ベースステーションのインターネットへの接続を行っている。
本件サービスの利用者(以下,単に「利用者」という。)は,ベースステーションと対応関係を有する手元の端末機器を操作することにより,ベースステーションの設置された地域の放送を視聴することができる。

3 上告人らは,被上告人が,ベースステーションに本件放送を入力することにより,又は本件放送が入力されるベースステーションのインターネットへの接続を行うことにより,利用者が本件放送を視聴し得る状態に置くことは,本件放送の送信可能化に当たるとして,上告人らの送信可能化権の侵害を主張する。
また,上告人らは,被上告人が,本件番組を公衆である利用者の端末機器に送信することは本件番組の公衆送信に当たるとして,上告人らの公衆送信権の侵害を主張する。

4 原審は,次のとおり判断して,上告人らの請求をいずれも棄却すべきものとした。
(1)送信可能化は,自動公衆送信装置の使用を前提とするところ(著作権法2条1項9号の5),ここにいう自動公衆送信装置とは,公衆(不特定又は多数の者)によって直接受信され得る無線通信又は有線電気通信の送信を行う機能を有する装置でなければならない。各ベースステーションは,あらかじめ設定された単一の機器宛てに送信するという1対1の送信を行う機能を有するにすぎず,自動公衆送信装置とはいえないのであるから,ベースステーションに本件放送を入力するなどして利用者が本件放送を視聴し得る状態に置くことは,本件放送の送信可能化には当たらず,送信可能化権の侵害は成立しない。
(2)各ベースステーションは,上記のとおり,自動公衆送信装置ではないから,本件番組を利用者の端末機器に送信することは,自動公衆送信には当たらず,公衆送信権の侵害は成立しない。

5 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。
(1)送信可能化権侵害について
ア 送信可能化とは,公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力するなど,著作権法2条1項9号の5イ又はロ所定の方法により自動公衆送信し得るようにする行為をいい,自動公衆送信装置とは,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,その記録媒体のうち自動公衆送信の用に供する部分に記録され,又は当該装置に入力される情報を自動公衆送信する機能を有する装置をいう(著作権法2条1項9号の5)。
自動公衆送信は,公衆送信の一態様であり(同項9号の4),公衆送信は,送信の主体からみて公衆によって直接受信されることを目的とする送信をいう(同項7号の2)ところ,著作権法が送信可能化を規制の対象となる行為として規定した趣旨,目的は,公衆送信のうち,公衆からの求めに応じ自動的に行う送信(後に自動公衆送信として定義規定が置かれたもの)が既に規制の対象とされていた状況の下で,現に自動公衆送信が行われるに至る前の準備段階の行為を規制することにある。このことからすれば,公衆の用に供されている電気通信回線に接続することにより,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置は,これがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しない場合であっても,当該装置を用いて行われる送信が自動公衆送信であるといえるときは,自動公衆送信装置に当たるというべきである。
イ そして,自動公衆送信が,当該装置に入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的に送信する機能を有する装置の使用を前提としていることに鑑みると,その主体は,当該装置が受信者からの求めに応じ情報を自動的に送信することができる状態を作り出す行為を行う者と解するのが相当であり,当該装置が公衆の用に供されている電気通信回線に接続しており,これに継続的に情報が入力されている場合には,当該装置に情報を入力する者が送信の主体であると解するのが相当である。
ウ これを本件についてみるに,各ベースステーションは,インターネットに接続することにより,入力される情報を受信者からの求めに応じ自動的にデジタルデータ化して送信する機能を有するものであり,本件サービスにおいては,ベースステーションがインターネットに接続しており,ベースステーションに情報が継続的に入力されている。被上告人は,ベースステーションを分配機を介するなどして自ら管理するテレビアンテナに接続し,当該テレビアンテナで受信された本件放送がベースステーションに継続的に入力されるように設定した上,ベースステーションをその事務所に設置し,これを管理しているというのであるから,利用者がベースステーションを所有しているとしても,ベースステーションに本件放送の入力をしている者は被上告人であり,ベースステーションを用いて行われる送信の主体は被上告人であるとみるのが相当である。そして,何人も,被上告人との関係等を問題にされることなく,被上告人と本件サービスを利用する契約を締結することにより同サービスを利用することができるのであって,送信の主体である被上告人からみて,本件サービスの利用者は不特定の者として公衆に当たるから,ベースステーションを用いて行われる送信は自動公衆送信であり,したがって,ベースステーションは自動公衆送信装置に当たる。そうすると,インターネットに接続している自動公衆送信装置であるベースステーションに本件放送を入力する行為は,本件放送の送信可能化に当たるというべきである。

(2)公衆送信権侵害について
本件サービスにおいて,テレビアンテナからベースステーションまでの送信の主体が被上告人であることは明らかである上,上記(1)ウのとおり,ベースステーションから利用者の端末機器までの送信の主体についても被上告人であるというべきであるから,テレビアンテナから利用者の端末機器に本件番組を送信することは,本件番組の公衆送信に当たるというべきである。

6 以上によれば,ベースステーションがあらかじめ設定された単一の機器宛てに送信する機能しか有しないことのみをもって自動公衆送信装置の該当性を否定し,被上告人による送信可能化権の侵害又は公衆送信権の侵害を認めなかった原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反があり,論旨は理由がある。原判決は破棄を免れず,更に審理を尽くさせるため,本件を原審に差し戻すこととする。
よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官田原睦夫裁判官那須弘平裁判官岡部喜代子裁判官大谷剛彦)

(別紙)放送番組目録
1 X1
番組名 「バラエティー生活笑百科」
番組名 「福祉ネットワーク」
2 X2
番組名 「踊る!さんま御殿!!」
3 X3
番組名 「関口宏の東京フレンドパーク Ⅱ」
4 A
番組名 「MUSIC FAIR21」
5 X5
番組名 「いきなり!黄金伝説。」
6 X6
番組名 「ハロー!モーニング。」

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:原文は

http://www.courts.go.jp/hanrei/pdf/20110118164443.pdf

素人の目から見ると「まねきTV」が公衆送信であるか否かについては、グレーゾーンとしか言いようがないから、例えば「有料サービスだから」といったことで違法とするのなら、まだ納得出来るが「会員制で、入会金を払えば、だれにでもそうしんするのだから、公衆送信である」というのは無理があるように感じる。

一般的になり会としては、放送は公衆通信を経てどこかで私的コピーとか私的再放送になるわけであろう。
どこまでを「私的」とするのかは常に問題で、例えば学校の授業での利用などは現実的に問題になっている。

また、今回はテレビ放送であるが、著作権の及ぶものとして、音楽、映画、インターネット、書籍など色々あって、それらが家庭内、学校など団体、郵送、ネット送信など色々な形で情報として共有化されている。
そして、実務的にはメディアごとに対応が変わってきます。

とどのつまりは「著作物の利用」ならぬ「著作権法の利用の仕方」になっている。

岡村先生が「たいへん残念な内容だ」とおっしゃっているのは、おそらくはこの判決に含まれている著作権者の「見せない権利」あるいは「放送しない権利」につながるということかと思う。

そもそも、新聞記事中にある

ただし、判決は個人同士による番組転送まで違法としているわけではない。海外在住者が日本にいる家族や知人に送信用の機器を預けるなどすれば、現地で日本の番組を見ることは可能だという。
と「まねきTV」は実態としてどこが違うのか?新聞の「ただし」以下は判決上は著作権法違反とされるのではないだろうか?
私的録音・録画についても、デジタル放送化によってコピー回数の制限などをしているわけだから、それを著作権法上で是認しているのは、見る権利の制限ではなくて、見せない権利の確定、という色彩の方が強いと思う。
放送事業者にとって、特定地域で見せないとは電波の割り当てという物理的な問題によって、担保されていたわけで、ワールドワイドネットワークになった今では、明らかに無理すぎる。

なんか別の方法を考えなくてはいけないのに、守旧のために無理矢理こじつけた判決、としか思えない。
秋葉広島市長が不出馬宣言をネットで行い、記者会見を拒否したことに代表されるように、情報の伝達手段にネットワークが出てきた現在では、守りに入った放送には将来がないと思う。

1月 18, 2011 at 10:13 午後 事件と裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.01.16

センター試験衰亡史

読売新聞より「センター試験に変化の兆し、慶大が来年撤退へ

22回目となったセンター試験。

利用校は増え続け、今年も過去最高を更新し800校余りが参加したが、来年から主要大学では初めて慶応大が“撤退”するなど変化の兆しも出ている。

「正直に言ってショック」。

大学入試センターの担当者が話す。慶大は、第1回から参加していた私大16校の一つ。

だが、2006年度入試の医学部(英語)に続き、来年度入試から法学部と薬学部でも利用を取りやめて全学部から「センター利用受験」が消える。

慶大の担当者は、

「優秀な学生の獲得を目指し、独自の特色ある入試を導入する」
と説明する。
「センター試験のレベルでは、難関大を目指す層では差がつきにくい」
(塾関係者)との指摘も出ており、こうした点に不満を持つ有力大学に撤退の動きが波及する可能性もある。 (2011年1月16日09時07分 読売新聞)

まあ、そりゃ当然だろう、という印象です。

そもそも日本では、社会として大学進学率を高くすることがよいことなのか?という視点が抜けているように思う。

そして、少子化が見えてきてから、大学の経営戦略として事業範囲の拡大があからさまになってきたのではないのか?
法科大学院がきわめて高額の授業料を取りながら、司法試験に合格することを保証しない(出来ない)というのは、実務家養成のための専門機関だろうと思っていた者にとっては「分けがわからない」ことになります。

法科大学院で一番ビックリするのが「相対評価」を採用していることで、学校内の相対評価をしても現実の司法試験は、他校卒業者との競争だから成績自体が意味が無くなってしまう。
こんなことなら、法科大学院全国一斉テストで絶対評価をした方がマシだろう。

だいぶ以前に「何で相対評価なのです?」と法学者の先生に伺ったら「文科省管轄ですから」と言われて一発で納得してしまった。

今後、教員養成も専門大学院を作る方向に向かうらしい。

これらは、結局は「大学業界」のためにはなっても、個々の大学(大学院)のためになるとは必ずしも言えない。
そのために、「みんなでやろう」から脱落して、実務的に効果のある「教育」に向かう学校が出てくるのは当然だ。

そういう経緯戦略の面で、慶応大学など成績も良い人気大学にとって、センター試験は意味がない、都判断するのは当然だろう。
これが、大検そのものであれば、まだ利用大学は多いのだろうけど、大検を一般化すると今度は高校生が来なくなるから、高校が反対してしまうだろう。

とどのつまりは、教育業界の生き残り戦略に受験生が巻き込まれている、というひどい話になってしまった。

1月 16, 2011 at 11:28 午前 教育問題各種 | | コメント (0) | トラックバック (0)