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2011.04.01

東電の取締役全員を即刻解任するべきだ

東電の経営陣を、即刻解任するべきだ。

現状は会社全体として、何も動いていない。

「電力は供給しているじゃないか」と業務が行われているとおっしゃる方は多いと思うが、極論を言えば、会社はなにか特別な変化の時に備えて、経営者から現場の担当者までの人事体系、指揮命令系統が認められているわけで、日常業務については現場の裁量に任されているし、いちいち経営者が出て来る必要もない。

しかし、現況の東電は「極めて特殊な事態」にありながら、会社として何も動いていない。

現場作業員が持つことが義務づけられている、線量計が足りなくなったから、そのままにしていた。
なんと、柏崎原発から持ってくることが出来る、と言う。

なんにもやっていないではないか。

線量計を例に取れば、実際に線量計が必要な現場に入る作業員はNHKのインタビューに対して「不安である」と言っている、つまり現場の作業員が「いりません」としているわけではない。
その話がどうして、線量計を「柏崎原発から持ってくる」という事にすらならないのだ?

まして、海外まで買い付けに行けば、すぐに用意できるだろう。

こんな事すらやっていないのは、どう見ても経営者が「やらないことを認めている」か「経営者が何もしない」に決まっている。

もし、経営者が「NHKのニュースに出ていたが線量計が足りないのならすぐに手配しろ」と言えば、それで解決だ。 NHKは東電の広報に「本当か?」と聞いている。広報の答えは「安全だから必要ない」、これで厚労省が「法律違反だ」と怒った。

間違えなく、この情報は経営陣に届いていただろうと思う。にもかかわらず広報にこんなバカなことを言わせたのは「それどころではない」とか返事したのだろう。

要するに、経営陣として必要な事をやっていない。

だから、即刻解任しろ。

そもそも、傷害罪の疑いは強く、すでに善管義務にも忠実とは言えないのだから、証拠隠滅のおそれがあるとして、刑事捜査をして逮捕しても良いだろう。

4月 1, 2011 at 11:23 午前 事故と社会 | | コメント (1) | トラックバック (0)

2011.03.31

東京電力は、線量計の手配すら出来ない。

NHKニュースより「一部作業員の被ばく量量れず

3月31日 19時8分

深刻な状態が続く福島第一原子力発電所の復旧作業現場で、放射線の量を量る「線量計」が地震で壊れて不足し、一部の作業員の被ばく量の管理ができていないことが分かりました。

厚生労働省は「作業員を大量の被ばくから守るうえで問題だ」として、東京電力の安全管理の在り方を調べることにしています。

福島第一原発では、水素爆発などが相次いで広い範囲に放射性物質が飛び散り、場所によって高いレベルの放射線が検出されています。
しかし、東京電力では、被ばく量を量るのに必要な線量計の多くが地震で壊れたとして、一部の作業グループでは代表者にしか持たせず、作業員一人一人の被ばく量の管理ができていないことが分かりました。

国の規則では、被ばくを伴う作業を行う場合、作業員全員に線量計を持たせるよう事業者に義務づけていて、福島第一原発で電源復旧に当たった作業員の男性は「被ばく量は作業によって一人一人変わるはずで、自分がどのぐらいの放射線を浴びたか分からない」と不安を訴えています。

東京電力では「放射線量が高くない場所に限った運用で、安全管理はできている」と説明していますが、厚生労働省では

「原発事故の現場ではいつどこで大量の放射線を浴びるか分からず、事実なら作業員を被ばくから守るうえで重大な問題だ」
として、東京電力の安全管理の在り方を調べることにしています。

  1. 地震で線量計が不足した
  2. 放射線量が高くない場所に限った運用で、安全管理はできている
  3. 作業員全員に線量計を持たせるよう事業者に義務

これだけ見るとそれほど極端に問題は無いように感じますが、実際に原発が壊れたのは3月11日で、その時点から被曝量を管理しながら作業する必要がありました。

そこで、線量計が足りないから「やむ得ず、1グループに1個」といった体制で作業に入った。
問題あるにしても「緊急措置だ」という点は認めましょう。

しかし、今日は3月31日です。ほとんど三週間です。
個人用の線量計は、たかだか数万円のもので、世界中にあります。国産品を通販でも買えますが、現在は品切れのようです。
しかし、世界中どこからでも入手可能です。三週間あれば、必要数の何倍も余裕を持って集めることができます。

もし、キチンと手配できていたら「事故当初は一時的に線量計が不足したが、現在は問題無く行き渡っている」と発表するでしょう。

線量計で被爆を管理しながら作業するのは、この種の作業の基本中の基本です。
それすら出来ないのが、東電ですね。

ひどい会社だ。

3月 31, 2011 at 10:09 午後 事故と社会 | | コメント (1) | トラックバック (0)

裁判員裁判制度の意味について高裁はどう考えているのか?

読売新聞より「裁判員裁判判決破棄した高裁判決、被告側が上告

東京都葛飾区で2009年9月、アパートに侵入して現金を盗み放火したとして、窃盗や現住建造物等放火罪などに問われた被告(40)の弁護側は30日、放火について無罪とした東京地裁の裁判員裁判の判決を破棄し、審理の差し戻しを命じた29日の東京高裁判決を不服として最高裁に上告した。

同高裁は「前科に関する立証を認めなかった1審の判断は違法」としていた。

(2011年3月30日21時51分 読売新聞)

なんとも地味な記事ですが、元の報道はこちらです。
読売新聞より「裁判員裁判の無罪破棄、初の差し戻し…東京高裁

東京都葛飾区で2009年9月、アパートに侵入して現金を盗み放火したとして窃盗と現住建造物等放火などの罪に問われ、1審・東京地裁の裁判員裁判で放火について無罪となった被告(40)の控訴審判決が29日、東京高裁であった。

飯田喜信裁判長は

「放火の前科に関する立証を認めなかった1審の判断は違法」
と述べ、懲役1年6月(求刑・懲役7年)とした1審判決を破棄し、審理を同地裁に差し戻した。高裁が裁判員裁判の判決を破棄し、差し戻しを命じたのは初めて。被告側は上告を検討する。

検察側は1審で、放火について無罪を主張した被告の11件の放火の前科について、犯罪を証明するための

「特殊な手口の前科」
にあたるとして判決謄本などを証拠請求したが、同地裁は
「特殊な手口とはいえず、裁判員の予断を生む」
として却下した。そのうえで地裁判決は「被告が放火の犯人の可能性は高いが、第三者の犯行の可能性も否定できない」として、無罪を言い渡した。

しかし、この日の判決は

「窃盗で得た現金が少ないことに腹を立て、室内に灯油をまいて放火する前科の手口は、今回と類似性が認められる」
と指摘し、事実認定に必要な前科の立証は裁判員裁判でも認められると判断した。

(2011年3月29日16時47分 読売新聞)

一言で言えば、「地裁の裁判進行そのものが違法だからやり直せ」ということなのですが、なぜ高裁は自判しなかったのだろう?
裁判員裁判を否定するために、差し戻ししたのではないのか?とも思えます。

さらに、被告側が最高裁に上告したものだから、一つの事件について地裁と最高裁で別々に争うことになる。
しかも内容が、判決では無くて裁判の進行の是非になってしまった。

最初の判決は次の通り、読売新聞より「裁判員裁判 窃盗被告、放火は「無罪」 東京地裁「第三者犯行否定できず」

盗み目的で侵入したアパートに放火したとして、現住建造物等放火罪などに問われた被告(40)の裁判員裁判の判決が8日、東京地裁であった。

河合健司裁判長は「第三者が放火に及んだ可能性を否定できない」として放火の事実を認めず、窃盗罪と住居侵入罪について懲役1年6月(求刑・懲役7年)を言い渡した。
事実上の一部無罪判決で、検察側は控訴も視野に対応を検討する方針。

被告は昨年9月8日、東京都葛飾区のアパートの一室に窓ガラスを割って侵入、現金1000円を盗み、室内にあったストーブの灯油を床にまいて放火したなどとして起訴された。

被告は住居侵入と窃盗は認めたが、放火は捜査段階から一貫して否認。
部屋に住む女性が外出したのは同日午前6時30分頃で、出火したのは、それから5時間20分が経過した同日午前11時50分頃。
被告は「午前7時30分から40分頃に侵入し、約10分で立ち去った」と主張していた。

判決はまず、被告が出火前に室内に侵入したことや、ライターを所持していたことなどを踏まえ、

「被告が放火の犯人である可能性はかなり高い」
とした。

しかし、検察側が

「わずかな時間に第三者が放火したとは考えられない」
と主張したのに対し、判決は
「約5時間20分は『わずか』とは言えない。社会常識に照らせば第三者が侵入して放火した可能性を完全には否定できない」
と判断した。

検察側は5日の初公判で、被告に放火の前科があることを指摘しようとしたが、河合裁判長は

「裁判員の予断と偏見を生む」
とした弁護側の異議を認め、有罪・無罪を判断する証拠から除外。

検察側は、情状に関する事情でのみ言及していた。

判決後に記者会見した裁判員経験者の男性は

「本当に正しかったのかという思いはある」
としながらも、
「前科に関する証拠が消え、検察側の立証から核がなくなった印象を受けた。採用されていれば反対の結論になっただろう」
と話した。
判決で
「被告が放火した可能性が高い」
としたことについては
「白か黒ではなく、グレーだと伝えることに何ら問題はないと思う」
と述べた。

大鶴基成・東京地検次席検事の話

「訴訟手続きと判決内容を検討し、上級庁とも協議して対応を決めたい」

◆前科での立証認められず

「厳しすぎる認定だ」。判決を受け、検察幹部らは一様に驚きを隠さなかった。

放火事件では目撃者がいるケースはまれで、火災で証拠が失われる場合も多いため、被告が否認した場合の有罪立証は困難となる。
しかし、今回は被告が放火現場に盗みに入ったことを認めており、「証拠は厚い」との見方が強かっただけに、ある検察幹部は

「犯人と100%断定できない事件では、自白がないと有罪が得られないのか」
と険しい表情を浮かべた。

被告には過去に同様の手口での放火の前科があった。前科による犯罪の立証は、

「特殊な手口による前科」の場合には例外的に許される
とされており、検察側は公判前整理手続きで、被告人質問の中で前科に言及する方針を示していた。

しかし、公判で裁判長は

「特殊な手口ではなく、前科の言及は許されない」
としたことから、検察側は
「公判前整理手続きの段階では被告人質問での立証は制限されておらず、違法な訴訟手続きだ」
と強く反発している。

読売新聞より「放火「無罪」 検察控訴へ 裁判員裁判2例目 「事実認定に誤り」

盗み目的で侵入したアパートに放火したとして、現住建造物等放火罪などに問われた被告(40)について、同罪の成立を認めず、窃盗と住居侵入罪で懲役1年6月(求刑・懲役7年)とした東京地裁の裁判員裁判の判決について、東京地検は16日、

「事実認定に誤りがある上、訴訟手続きに法令違反があった」
として、東京高裁に控訴する方針を固めた。
週明けに上級庁と協議し、最終的に判断する。裁判員裁判で、検察側による控訴は2例目となる。

被告は昨年9月、東京都葛飾区のアパートに侵入して現金1000円を盗み、灯油を床にまいて放火したなどとして起訴された。8日の判決は、被告が「放火の犯人である可能性はかなり高い」としながらも、「第三者が侵入して放火した可能性を否定できない」とした。

検察側は公判で、同様の手口による放火の前科があることを示そうとしたが、同地裁は「裁判員の予断を生む」として認めなかった。

東京地検は
  1. 〈1〉第三者が侵入した形跡はなく、侵入の可能性があるとした認定は誤り
  2. 〈2〉放火の間接証拠である前科を証拠から排除したのは法令違反
とした。

このような経過で、今回高裁が差し戻しの判決を出し、被告が上告しました。
落合洋司弁護士は「[刑事事件]’11裁判員:「無罪」を破棄、差し戻し 東京高裁「訴訟手続きに誤り」 10:51」で次のように意見を述べています。

http://mainichi.jp/select/jiken/news/20110330ddm041040034000c.html

飯田裁判長は「起訴内容と被告の前科10件は、放火の手段方法に特徴的な類似性がある」と指摘。検察側が証拠請求した前科事件の判決書や供述調書の一部を起訴内容と関連する証拠と認め、「地裁が公判前整理手続きで証拠採用しなかったのは違法」とした。

被告は09年、東京都内のアパートで現金を盗み、室内に放火したとして起訴された。放火の直接証拠はなく、1審は「第三者による放火の可能性を否定できない」とし、放火罪成立を認めず懲役1年6月を言い渡した。

この件については、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20100707#1278433207

とコメントしたことがありますが、問題は、例外として前科による立証が許容されるほどの、犯行手口に特殊性があるかどうかでしょうね。

記事で、高裁は「起訴内容と被告の前科10件は、放火の手段方法に特徴的な類似性がある」と指摘、とありますが、前科に特徴的な類似性があっても、それ自体に特殊性がなければ、そういった手段方法で犯行に及ぶ人は他にも存在する蓋然性が高く、そういった証拠を事実認定の資料にすることは、裁判所の判断を誤らせることにつながりかねません。特に、判断するのが裁判員であればなおさらでしょう。

裁判員制度下で、差戻審が行われるることになれば、初めてのケースということですが、既に取調べられている証拠を、どのようにして新たな裁判員に理解してもらうのか、審理の進め方をどうするのかなど、手続面でも今後について興味を感じます。

前科を証拠とすることに、制限があるのは当然だと思いますが、裁判員裁判だから最初から証拠採用しないというのはどうかなと思います。
裁判員は証拠採用には関わらないからということなのでしょうか?

もし、前科を証拠採用する特殊性がないとして、証拠採用しなかった場合、高裁はどのような判決を出したのでしょうか?
やはり、差し戻しではなくて自判するべきだったではないか?

非常に興味深い裁判になってきました。

3月 31, 2011 at 09:39 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2011.03.29

社会をデジタル的に見ることの恐ろしさ

昨日から話題になっている、YouTube に記録された放送「原子力保安院の大ウソ暴露!(関東エリア未放送)」での武田邦彦教授の説明は、なんでこんな事になっているのかを、社会の問題(人災)だとして解説しています。

しかし、先生の見解は正しいと思うのだが、放送としてはどうなのか?と思うところが多々あります。
放送の進行は「先生に結果を教えろ」と迫っています。

しかし、先生は「こんな事になったのは、こんなところに原因があるのに、それをすり替えた」といったことを延々と説明しています。

そこで、原子力保安院が問題だ、となります。
わたしの考えでは、現時点では東電だって、政府だって大問題なのですが、この放送を見た方が「保安院を解体するべきだ」と発言されているのだけれども、保安院を解体するとうまくいくのはどういう仕組みなのか?ということを考えているとは思えない。

つまり、「誰が悪者か」という「結果」を放送は探しているのだけれど、誰かが悪いと言っても他に良くすることが出来ないのなら、悪いと言っても意味がないでしょう。
「こっちが良い」というものが無いときに、良い悪いを考えることには明らかに意味がない

こんな日本にどうしてなってしまったのか?と感じるのだが、結果だけを判断しているとこんな事になってしまって、結果としておそろしい無責任社会になっている。

これをどう建て直すのか?というのは、「結果は結果。問題は別だ」という声がキチンと通用する社会にすることしかない。

ところが、社会全体がデジタル的な、○×思考になっていて、だから「×なのは誰の責任だ」と平気に誰でも主張する、これ自体がまずいと強く思うのだ。

3月 29, 2011 at 11:10 午前 事故と社会 | | コメント (3) | トラックバック (0)

2011.03.28

ニューズウィークの記事が語ること

Newsweek日本版より「震災でわかった日米の競争力格差

日本製部品はさほど重要ではなくなったという見方と同様、経済競争でアメリカが日本に勝利したという見方も嘘だった

2011年03月25日(金)16時44分

クライド・V・プレストウィッツ(米経済戦略研究所所長)

津波と原発事故が複合した日本の震災の深刻さが明らかになる中、90年代にアメリカが日本に経済的に勝利したという考えもまた、実際には神話に過ぎなかったことが明らかになりつつある。

ボルボは今週、日本製のナビゲーションとエアコンの在庫が10日分しか残っておらず、工場が操業停止になる可能性があることを明らかにした。
ゼネラル・モーターズ(GM)は先週、シボレーコロラドやGMCキャニオンを組み立てているルイジアナ州シェリーブポートの従業員数923人の工場を、日本製の部品が不足しているために閉鎖すると発表した。

アーカンソー州マリオンでは、ピックアップトラックのタンドラなどトヨタ車の後部車軸を作っている日野自動車の製造工場が、日本から輸入されるギアなどの部品が急激に減っていることで操業停止の危機に瀕している。

他の産業でも事情は同じだ。半導体を製造する設備の大半が日本だけで作られているか、または主として日本で作られている。

半導体の回路を焼き付けるステッパーは、3分の2がニコンかキャノン製だ。

携帯端末やラップトップパソコンに使われる樹脂「BTレジン」の約90%、
世界のコンピューターチップに使われるシリコンウェハーの60%は、日本から輸入されている。

日本の混乱が長引けば、アップルやヒューレット・パッカード(HP)は深刻な問題に直面しかねない。

今まで誰も気にしたことがないような製品、例えば小型マイクやメッキ素材、高性能機械、電子ディスプレイ、それにゴルフクラブやボーイングの新型旅客機ドリームライナーの羽に使われる炭素繊維など、すべて日本だけで作られているか、または主に日本で作られている。

アメリカが被災しても世界は困らない

最近の報道では、世界のサプライチェーン(部品調達網)の複雑さや、各企業が生産ラインを止めないためにどれだけ競い合っているかが盛んに紹介されている。しかしこの点に関する日本とアメリカの違いについては、誰も論じていない。

考えてみれば分かることだ。北米以外にある世界中の自動車工場で、アメリカ製の部品が不足して操業停止の危機に直面するところなどいくつあるというのか?
もしシリコンバレーで地震が起きたとして、アップルはどれだけの危機に瀕するだろうか?

もしそうした事態になったらアップルは被害を受けるかもしれない。特にスティーブ・ジョブズがけがをしてしまったら、事態は深刻だ。
しかしアメリカが被災しても、今回の日本の震災が世界の部品調達網に与えている影響には遠く及ばない。

理由は簡単だ。インテルのチップなどいくつかの例外を除けば(ボーイングでさえ国内ではドリームライナーの30%しか製造していない)、アメリカはもう世界市場に向けてそれ程多くの製品を出荷していないからだ。

アメリカが表向きはサービスとハイテク経済の国だということはわかっている。

だが実際は、アメリカの1500億ドルのサービス黒字は、6500億ドルの貿易赤字と比べれば極めて小さい。

それどころか、ハイテク貿易の収支も実は1000億ドル以上の赤字だ。
真実を言うと、世界の市場で競争力があるアメリカ製品などほとんどないのである。

これで思い出されるのは、70年代後半から90年代前半の日米貿易摩擦だ。

当時の日本経済は今の中国並みの高成長を遂げていた。
日本の製造業は、アメリカの繊維、家電製品、工作機械、鉄鋼などの産業を事実上絶滅させ、アメリカの自動車メーカーから大きな市場シェアを奪い、半導体市場で50%以上のシェアを奪ったときにはシリコンバレーさえ屈服させた。

見せ掛けの繁栄に浮かていただけ

エズラ・ボーゲルのベストセラー『ジャパン・アズ・ナンバーワン』に刺激され、GDP(国内総生産)で日本にアメリカが抜かれてしまうかもしれないという脅威論も生まれた。

だが、本当の競争は当時アメリカ政府が日本に市場開放を迫った農業や大規模小売業の競争ではなく、国際市場向けの製品やサービスの競争だったのだ。

結局1985年のプラザ合意で日本は劇的な円切り上げを容認することになり、円は最終的に対ドルで100%も上昇した。

この円高と、91~92年にかけての不動産と株式市場のバブル崩壊は、日本の成長の足かせとなり90年代の「失われた10年」を生み出した。

その一方、アメリカは90年代に入りインフレなき高成長を謳歌した。
日本の停滞とアメリカの繁栄を比較すると、いかにもアメリカは日本を打ち負かしたように見えた。
アメリカ人は口々に、なんで日本に抜かれる心配などしたんだろうと言い合った。

だがアメリカでもITバブルとサブプライム・バブルが崩壊してみると、90年代のアメリカの高成長もまた見かけ倒しだったことがはっきりした。

今、国際的な部品調達網に日本が与える影響の大きさをアメリカのそれと比較すれば、グローバル競争の本当の勝者はアメリカではなく、日本だったことは明らかだ。

Reprinted with permission from The Clyde Prestowitz blog, 25/03/2011. (c) 2011 by The Washington Post Company.

なんとも自虐的な記事だと思うのだが、驚いたことに3月10日付けで以下の記事を出している。「iPhoneが「アメリカ製」だったら

iPhoneの作られ方を検証したら、人件費の安い中国に負けたのではない意外なカラクリが浮き彫りに

2011年03月10日(木)17時48分

クライド・V・プレストウィッツ(米経済戦略研究所所長)

ジョン・マケイン上院議員は先日、ABCテレビのインタビューに応じ、iPhoneとiPadは「メイド・イン・アメリカ」の素晴らしさを象徴する製品だと語った。

事実誤認もいいところだ。ハイテク機器産業の一大拠点であるアリゾナ州選出のマケインが、こんな勘違いをするなんて容認できない。
上院議員たちの知識レベルに国民が不安を感じるのも無理はない。

では、アップルが誇るiPhoneやiPadは、実際にはどの国で作られているのだろう?
大半の人が中国と答えるだろうが、実はそれも間違いだ。ここには、興味深い真実が隠れている。

アメリカの製造業の崩壊を憂う立場の人々は以前から、国内の製造業と雇用が中国に流出している典型例として、iPhoneを名指しで批判してきた。

彼らに言わせれば、iPhoneの海外生産委託によってアメリカの貿易赤字は年間20億ドル上積みされ、20~40万人の国内雇用が失われているという。

巨額の対中貿易赤字は数字のトリック

一方、自由貿易の信奉者たちはまったく逆のことを言う。iPhoneの小売価格、約500ドルのうち、中国での製造・組み立てにかかるコストは180ドル足らず。
それ以外の320ドルはデザイン、ソフトウエア開発、マーケティング、輸送、販売がらみのコストで、すべてアメリカ国内で行われている。

つまり、中国の2倍近い価値がアメリカで生み出されている計算になる、という。

さらに、中国の製造コストが低いおかげで、アメリカの消費者はiPhoneを安く購入できる。
その結果、消費者はより多くの電話を購入し、より多くの国内雇用が生まれる──。

そうだとしても、アメリカには依然としてアメリカには巨額の対中赤字が残り雇用も犠牲になるが、その赤字は、米企業が強い競争力をもつ航空機などの輸出を倍増させることで解消できると自由貿易主義者は言う。

ところが、アジア開発銀行研究所(ADBI)が最近行った調査からは、まったく別のシナリオが浮かび上がる。

iPhoneのサプライチェーン(原材料の調達網)を詳細に調べたところ、中国が関与しているのはほんの一部に過ぎないことがわかったのだ。

中国はアジア各国から集まってきたiPhoneの部品を最終的な製品に組み立て、アメリカに送るだけ。

貿易統計上、アメリカの税関は中国から届いたiPhoneの価値すべてを中国からの輸入とみなす。
iPhoneの貿易でアメリカが中国に20億ドルの赤字になるように見えるのはそのためだ。

だがADBIによれば、中国での組み立てによる付加価値は完成品の3%、つまり約6ドル相当にすぎない。
しかも中国はいくつかの高価な部品をアメリカから輸入しており、iPhone貿易で赤字なのはむしろ中国のほうだという。

つまり、iPhone生産の大部分を担うのは、中国をはじめとする労働コストの低い国ではない。
充電器やカメラレンズ、水晶振動子は台湾製で、スクリーンは日本製、映像処理半導体は韓国製。
それ以外の半導体の多くも台湾の台湾積体電路製造社で作られている。

中国の組み立てラインには、最終的に9カ国以上の国で生産された部品が集まる。そのため、対中国だけでみれば実際にアメリカが黒字になる可能性はかなり高い。

得意分野のハイテク部品も日本に丸投げ

対中貿易では黒字なのにiPhone貿易全体では赤字なのは、アメリカの貿易赤字の相手が中国ではなく、アジア全体であることを示している。
iPhoneにまつわるアメリカの対中貿易赤字は、実は「対アジア赤字」なのだ。

そう考えると、さらに興味深い論点が浮上する。日本や韓国、台湾などのアジア諸国の労働コストは決して安くない、ということだ。
日本と韓国は、富裕国が集まるOECD(経済協力開発機構)の加盟国でもある。

しかも、これらの国々が供給するiPhoneのハイテク部品(半導体チップや液晶ディスプレー、レンズなど)は労働集約型ではなく、高度に技術集約的な製品だ。アメリカが先導しているはずの分野の製品なのだ。

こうしたハイテク部品が本当にアメリカの得意分野なら、これらを国内で生産すれば対アジアの貿易赤字は解消されるだろう。
iPhone貿易はアメリカに黒字をもたらし、2~4万人の雇用も創出してくれるはずだ。なのにアメリカはなぜ、それをしないのか。

Reprinted with permission from The Clyde Prestowitz blog, 10/03/2011. (c) 2011 by The Washington Post Company.

一言で言えば、「Newsweekが警告していた通りになったのだよ」という記事なのだが、それ以前に自由貿易信奉者がアメリカ国内での付加価値を大きくするために、安い中国で作らせているのだ、と主張していることを紹介している。

ところが、困るかどうか?という問題になると、アメリカに手の打ちようがない現状が見えてきた、ということなのでしょう。 確かに、カーボンファイバーの供給は、東レ一社といっても良いわけで、そういうキーパーツが供給されないと、他をどうしようが、経済原理すら働かなくなってしまう。
これでは、動産の不動産化とでも言わざるを得ないわけで、不自由貿易を甘受するしかない。

やはり、自由貿易論自体が無理であったということになるのだろうか?

3月 28, 2011 at 11:19 午前 国際経済など | | コメント (1) | トラックバック (0)

2011.03.27

「謝罪する」を報道するマスコミはバカなのだ

朝日新聞より「東電、2号機の高放射線量を事前把握 作業員らに伝えず

2011年3月26日18時32分

東京電力福島第一原子力発電所(福島県大熊町、双葉町)3号機のタービン建屋内で起きた作業員3人の被曝(ひばく)で、3人が作業に入る6日前の18日、2号機のタービン建屋地下で、通常時に比べて異常に高い放射線量を確認しながら、東電は作業員に注意喚起をしていなかったことがわかった。

東電は「情報共有が早ければ被曝を防げた可能性がある」と認め、謝罪した。

東電福島事務所によると、6日前の18日、2号機のタービン建屋地下1階で放射線量を測定したところ、作業員の被曝線量の上限(250ミリシーベルト)を上回る毎時500ミリシーベルトだった。

一方、3人の作業員が3号機で作業を始めたのは、24日午前10時半ごろ。
作業員には2号機の情報は伝わっていなかった。

前日にはなかった水が深さ15センチになっていたが、3人は前日の作業では線量が低かったこと、「タービン建屋は通常、線量が高い場所でない」と思っていたことなどから、水につかって作業をして、局所被曝した。
18日のデータが事前に伝わっていれば、作業員らの思い込みを防げた可能性がある。

東電福島事務所の担当者は「情報共有が悪かったために24日の被曝が起きた。おわびしたい。今後は社内の情報共有に努めたい」と述べた。

東電や経済産業省原子力安全・保安院によると、1、2号機のタービン建屋地下にも高い放射線量の水がたまっていることがわかった。1号機では、24日に水を採取して分析。

3号機と同様、通常の原子炉内の冷却水より約1万倍強い、1立方センチ当たり380万ベクレル(放射能の単位)の放射能が検出された。

含まれている放射性物質の種類は3号機とほぼ同じだった。燃料に含まれる物質が検出されているうえ、半減期の短い物質が多いことから、原子炉内から漏れ出した可能性が高いという。

2号機の水は、表面付近の放射線量が毎時200~300ミリシーベルトだった。これにより、1~3号機について、今後、配管の損傷などからどういう経路で漏出が広がったのかを調べていくことになる。

水の深さは3号機で最大1.5メートル、2号機は1メートル、1号機は40センチ。4号機でも、放射性物質の状況は不明だが、80センチの水がたまっているという。1号機では、ポンプを使って建屋内のタンクに排水する作業を進めている。

また、2号機では26日午前、消防ポンプで原子炉に送り込んでいた海水を真水に切り替えた。海水に含まれる塩分の悪影響を防ぐためで、これで原子炉を冷却する必要がある1~3号機すべてが真水の注水になった。

午後には2号機の中央制御室の照明が点灯した。1、3号機に続き3基目。

「責任追及ではなくて原因解明を優先する社会にするべきだ」では、社会全体として、現在は原因究明よりも責任追及の方が価値がある、となっているからマスコミも一般企業も政府も後で責任を追及されないように、情報を出さなくなる。

「物言えば唇寒し・・・」
ということなのだが、今回のように「言わないから伝わらなかった」という事実があったときにどうするべきか?についても、「拡大しない方がよい」として「謝罪で済ませる」事になるわけだ。

今回の事件は、

  1. 事前に汚染した水が溜まっている事は把握していた。
  2. その情報は共有されなかった。
  3. 情報を知らないまま作業した。
  4. その結果被爆した。
なのですから、情報共有しなかった原因に問題があるのは明らかです。

情報共有しなかったから、情報共有すればよいと言うのは、一見まっとうな見解のように見えますが、事故を起こさねば良かった、というほどの話しであって対策でもなんでもない。

そういう風に見てみると、結局のところ「謝罪する」しかない。

謝罪とはなんのために謝罪するのか?
マスコミは、社会は、謝罪すれば後は何もしなくて良いと考えているのか?

日本の事故に対する考え方は、極端に善菅義務に偏っているのでしょう。
責任者をより強く処罰すれば、処罰を恐れてより安全に管理するだろう、という想定になっているのでしょう。

それでは安全にならないことは、多くの研究が示していて、航空機事故などではたびたび裁判にもなっている。
しかし、今も原因追及の方が処罰よりも優先するべきだ、という意見は少数派のままであり、そういう社会に沿って、東電も原因など明らかにするべきではない、と対応しているのだろうと思う。

政府も同様です。

その結果、非常にデコボコになった情報に社会は振り回されています。
そのデコボコの情報を拡大して流しているのがマスコミ。

マスメディアが、情報を加工しないでそのまま流す、ネット中継だけに限定した方がまだマシではないのか?
東電や政府のよく分からない説明に対して、国民が「何を言っているのか分からない」とぶつける方がマシで、マスコミが分からないところ穴埋めするのは、結果として東電などの言い分を補ってしまっているのだ。

3月 27, 2011 at 09:12 午前 事故と社会 | | コメント (1) | トラックバック (0)