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2011.08.21

医療自動化の落とし穴

埼玉新聞より「誤調剤容疑75歳死亡 薬剤師2人書類送検

調剤ミスで春日部市の無職女性を死亡させたとして、県警捜査1課と春日部署は19日、越谷市七左町、「小嶋薬局本店サンセーヌ薬局」の管理薬剤師(65)を業務上過失致死容疑で、同薬局の経営者で県薬剤師会会長の経営者(76)を業務上過失傷害容疑で、それぞれさいたま地検に書類送検した。
同課によると、自動錠剤包装機で調剤された薬の誤調剤による死亡事故は全国初という。

管理薬剤師の送検容疑は昨年3月25日、脳梗塞の後遺症で同薬局を利用したYさん=当時(75)=に自動錠剤包装機を使って「胃酸中和剤」を調剤した際、厚労省から毒薬指定され、重症筋無力症などの治療に使う「コリンエステラーゼ阻害薬」を調剤。同年4月1日、誤調剤に気付いたが服用中止の指示や薬剤の回収をせず、同月7日にYさんを臭化ジスチグミン中毒で死亡させた疑い。
経営者の送検容疑は、薬局開設者として注意義務を怠り、同中毒の傷害を負わせた疑い。

同課によると、昨年2月下旬ごろ、別の薬剤師がパソコンで自動錠剤包装機に「胃酸中和剤」の番号を登録した時、既に登録されている「コリンエステラーゼ阻害薬」と同じ番号を打ち込み二重登録。
「胃酸中和剤」を選択しても、実際には先に登録されていた「コリンエステラーゼ阻害薬」が調剤されていたという。
誤調剤は2月下旬ごろから、ミスが発覚した4月1日まで行われ、Yさんを含む約20人に計約2700錠が処方されたとみられる。

管理薬剤師は

「失敗を叱責(しっせき)されるのが嫌で、回収の指示や報告をしなかった」
、経営者は
「客を待たせたくなかったので(部下に)薬の中身を確認させなかった」
と話しているという。

死亡したYさんは「小嶋薬局本店サンセーヌ薬局」を10年ほど前から利用していた。
同薬局は薬剤師2人が書類送検されたこの日も営業。薬局内で約10人が薬の処方を待っていた。
同薬局に勤める女性は埼玉新聞の取材に「(書類送検された2人は)今日は来ない。(事件についても)分からない」と繰り返した。

Yさんは事故当時、長男(46)と2人暮らし。長男は県警を通じて「薬局には二度とこのような事故を起こさないように、しっかりした対応をお願いしたい」とコメントした。

■人為ミスで重大結果

高齢女性が誤って調剤された薬を服用して死亡した事故は、1回に飲む分量ごとに、数種類の薬を同じ袋に詰める自動錠剤包装機で分けられたものだった。
この機械は多くの種類の薬を使っている患者が薬を服用し忘れたり、誤飲するのを防ぐために開発、普及してきたもの。
だが、どれほど技術が進歩しても、人為的ミスが原因の事故は完全に防げるわけではない。

自動錠剤包装機は、数百個に分けられた「引き出し」に、薬を種類ごとに収納。
そこから、1回に服用する薬を、処方せんに基づいて数百種類の中から必要な種類と分量だけ選び出し、1包みごと袋に小分けしていく装置だ。
「引き出し」には番号を割り当て、管理用のパソコンで薬剤名を登録。
今回の死亡事故は「胃酸中和剤」と「コリンエステラーゼ阻害薬」の「引き出し」に、同じ番号をつけてしまったために起きた。

正しく使えば患者が医師の処方した通り薬を服用でき、治療の効果が上がる。さらに、患者側の誤飲防止にも役立つ。
だが、「引き出し」に違う薬を補充してしまったりした場合は、大規模な誤飲事故を招きかねない。
そこで不可欠となるのが、「監査」と呼ばれる確認作業だ。

さいたま市内の中規模病院では、外来と入院患者を合わせて、1日約600人以上に約500種類の薬を処方。
新しく番号を割り当てて登録する場合は2人で確認するか、試しに動かしてみて正しいものが出てくるのを確かめるという。
調剤するときも、処方せんと実際に小分けした薬が一致するかを毎回チェック。薬局長男性は「どんなに忙しくても、確認は欠かさない。調剤薬局は千種類以上の薬を扱うはずだから、チェックはさらに重要だ」と指摘した。

メーカーによると、一部の小規模施設を除けば、自動錠剤包装機はほとんどの病院や調剤薬局に導入されているという。県薬務課は事故の報告を受けて昨年4月23日、県薬剤師会や県内の保健所を通じて、県内2488薬局に機械の適正管理と「監査」の徹底を注意喚起。
同課は「自動錠剤包装機による誤調剤事故は、年に数件報告されていたが、昨春に対策を強化してからはない。今後も指導を継続していく」としている。

自動化したら大規模事故になった、というのは自動化技術の歴史では当たり前のことで、少なくとも同じ番号を二重に登録できるようになっているシステムを使っていてはダメでしょう。

さらに、出てきた薬が間違っているときに、全体をストップする仕組みを自動化するのは当然で、例えば薬のパッケージのバーコードをスキャンする、といった手法ですら回避できます。

ところが、今回は「失敗を叱責(しっせき)されるのが嫌で、回収の指示や報告をしなかった」と、一人で穴を開けることが可能であったのだから、自動化でもなんでもないですね。
自動化=機械が動くこと、とだけ考えた仕組みの失敗です。

電子カルテも含めて、医療の自動化では、結果として安全性が高まるのが目的であって、一幅なれも含めて部分的にでも安全性が低下するようでは、自動化を達成しているとは言いがたいし、自動化システムに人の作業を合わせるというのでは、自動化になっていません。

8月 21, 2011 at 08:49 午前 医療・生命・衛生 |

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コメント

>出てきた薬が間違っているときに、全体をストップする仕組みを自動化するのは当然で、例えば薬のパッケージのバーコードをスキャンする、といった手法ですら回避できます。

錠剤の一包化でそれは無理では?

投稿: koko | 2011/08/21 9:40:42

>錠剤の一包化でそれは無理では?

実は、この医療関係の電子化については、何年も前から湯沢で開かれている「ネットワークセキュリティワークショップ in 越後湯沢」 http://www.anisec.jp/yuzawa/ で講演がありまして、電子カルテ化によって事故が激増した、といった事について、どうするべきかという講演がありました。

結論は、行き帰りと言いますか、オーダー & チェックと言いますか、確認も自動化すべし、と言うことでした。

電子カルテによって起きた事故とは、次のような仕組みだそうです。

  1 前日の診断で、ドクターが薬局に、翌日の薬をオーダーする
  2 薬局は、夜間に各患者の薬を作る。
  3 当日、ドクターが診断すると、患者の容態が変化して必要な薬が違っている事がある。
  4 手書きのカルテで、ドクターがカルテに書き込めば、薬は変わる。
  5 しかし、電子カルテだとその場(患者のベッド)から指示できなかった。
  6 このために、不適応な薬を投与してしまうことがあった。

具体的には、血糖値の下げ過ぎとかになったそうです。

そこで、情報を一元化して、「今」「この患者に」「この薬を投与する」といった情報を、アップするようにして、即時に対処できるようにした。
そうしないと、事故が増える。というものでした。

今回のケースでは、薬の分類箱に入れた後はノーチェックだったようですが、上記の考え方だと家庭においても、服用時にそれが正しいのかをチェックするべきだ、となります。

現実に、本当に薬を飲むのかを見ていると、といったチェックもあるわけですから、自動化のための自動化にしないとは、このような後からの情報を蓄積とセットにならないと、ダメだと言えます。

紹介した病院の例では、薬の廃棄が減って、ITシステムのコストを上回って、利益が出たとのことでした。

投稿: 酔うぞ | 2011/08/21 10:05:02

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