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2011.08.30

安愚楽牧場・現実は簡単では無いはずです

紀藤弁護士のtwitterからたどって、「弁護士近藤早利のいいたいこと」を読んでみました。
紀藤弁護士がtwitterで批判し、近藤弁護士がブログで反論する、という形になっていました。

最初に、近藤弁護士が「安愚楽牧場 債権者説明会 レポート」をアップしたところから、始まったようです。
債権者集会の報告に、近藤弁護士の「感想」が最後についています。

感想です。

1 安愚楽牧場は破産させるべきか?

被害者弁護団は、民事再生手続えは、現経営陣が事業に携わるので、手続きが不透明になり、保有資産の食いつぶしが懸念されるなどの理由から、破産手続きによるべきだ、と主張しているようです。

しかし、本件は、扱っているのが和牛という「生き物」ですから、製造業とちがって、操業を停止する、という選択肢は事実上ありません。

破産させて、15万頭の和牛を、破産管財人に管理せよ、といったって、それは無理です。そうなった場合にも、専門家の補助者を雇用せざるをえませんが、いきなり、外部からきて、全国にちらばる15万頭の牛を管理できるはずもありません。

そうなれば、破産管財人も、現経営陣、従業員を管財人補助者として雇用して、牛を飼育せざるをえないでしょう。それなら、民事再生と同じことです。

申立代理人の栃木先生は、個人的にも尊敬している胆力も能力もある弁護士です。

ただでさえやることの多い、申立代理人に余計な手間をかけず、現在の手続きの上で、最善の策を探ってもらうのがよいと考えます。

2 被害者弁護団に加入するべきか?

上記の理由で「破産させたい」という理由なら賛成しません。

手続きを遅延させ、資産を目減りさせるだけでメリットはありませんから。

同じような立場人との連帯がほしい、弁護士の情報分析がほしい、ということなら、着手金に見合うサービスを受けられるかどうか、よく考えて参加してください、ということになります。

3 民事再生手続きで配当は期待できるか。その率は。

あまり多くを期待するべきではないでしょう。

直近の決算で安愚楽牧場の有する現預金は63億円しかありません。

これは相当程度、目減りしているとみるべきでしょう。

そのほかの資産としては、仕掛品が256億円あります。これは、加工中の和牛だとすれば、実質価値は、限りなくゼロに近いのではないか。

不動産は、本社、各地の牧場でしょうか。市街地なら銀行担保に入っており、農地なら市場価格はほとんどつきません。
長期貸付金の76億。これはなんでしょうか。オーナーや役員へのへの貸付、だとすれば、そう多くは回収できないでしょう。

負債は、再生手続き申立前のものについては、裁判所の保全命令で支払わなくていいので、とりあえず措きます。
しかし、税金の9億は支払いが必要です。

一番の問題は、牛の飼料代と飼育代です。毎月20?30億円かかる。
申立後の費用は、随時弁済しなければなりません。

したがって、現在有している現預金が尽きるまでに、安愚楽牧場を(できれば一括で)引き取ってくれるスポンサーがみつからなければ、安愚楽牧場は現預金を使い切って、破産、牛は餓死を免れない、ということになりそうです(契約農家のみなさんは、手弁当でも飼育してくれるかもしれませんが、その牛を、出資者の皆さんが現金化する方法はなさそうです。引き渡してもらうには、それまでの飼育料を支払わなければなりません)。

こうみてくると、申立代理人の説明どおり、牛を早期に一括売却してもらい、その代金がもらえれば、それ以上は望まない、というのが一番、リアリティのある解決に思えます。

以上

この説明の構造は、「○○は選択できない。××も出来ない」となっていて、それ自体は問題無いし、現実には出来ないことは多いでしょう。
しかし、それが

申立代理人の説明どおり、牛を早期に一括売却してもらい、その代金がもらえれば、それ以上は望まない、というのが一番、リアリティのある解決に思えます。
に直結するのか?というと、そこにもまた判断が入ってくるでしょう。

例えば、一括売却した結果が、赤字だったらどうするのか?

一括売却=代金が入る、という前提が無条件で成立するから、民事再生手続で旧経営陣による一括売却がよい、と断言できる根拠があるのですかね?

わたしの理解では、個々の出資者が買った価格は、市場価格を上回っています。
これを売却するとなると、1/10とかそれ以下になるでしょう。

多少とも収入になれば、あきらめろというにしても、その金額が「0」とか赤字になると分かれば、7万人が合意するわけがない。

つまり、近藤弁護士の「一括売却」というのは「売却」が常識的な範囲で成立する場合の話しであり、売り手と買い手の合意が成立するのかが怪しいような状況で、一括売却するべき、と言い切るのは、全てを明らかにしていないのだから、想定が入って来るわけで、売却に当たっての価格をどう見るか?というぐらいは付け加えないと、根拠無く煽っている、と思われてもしかたないでしょう。

宮崎の口蹄疫と原発事故が破たんの引き金だというのが、安愚楽牧場側の主張ですが種々の情報は、ずっと前から事業としては赤字であって、それを新規入会者からの入金で穴埋めする、自転車操業であったことは、確実です。

破たんの直接の原因が、売上げ不振であったとは思えない。
そもそも、牛肉のような物の売上げが、全部無くなったり、半分になることはないでしょう。
だから、売上げ不振になったとしても、10%・20%といったところではないか?

そして、市場取引で価格が決定するのだから、元本保証は出来るはずがない。
逆に言えば、安愚楽牧場の価格決定は、市場とは無関係に決めていた。

それが、口蹄疫とか原発事故で、と市場の問題を持ちこむこと自体が、話が違うでしょう。

だから、新規入会者が止まった、おそらくは新規入会者と退会者の割合が限界を超えた、のが直接の理由でしょう。
だとすると、被害者の声として「老後の資金として取り崩して・・・」といった理由こそが、退会者の増加の理由でしょうから、新規会員が増加し続けなくては、存続自体が出来ない(事業縮小できない)ことが破たんの原因で、口蹄疫とか原発事故に注目するのは、本当の問題から目をそらすことになります。

8月 30, 2011 at 11:32 午前 事件と裁判 |

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