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2011.08.31

安愚楽牧場・夏原武氏の解説

SAFETY JAPAN より「隣は詐欺師--遂に来た「すぐそばに詐欺師」の時代」で、作家の夏原武氏が、安愚楽牧場事件についてズバリと解説しています。

非常に分かりやすいのですが、長文でもありわたしが注目したところを赤文字で示します。

夏原氏は、最後で

仮に詐欺としての認定がなかったとしても、被害額が史上最大になるという意味では、同じことなのである。
として、締めくくっています。
詐欺あるいは極めて詐欺的な事件であり、被害の構造は詐欺であると言っています。

このような見方に対して、民事再生でスポンサーを見つけて売却するべきだ、とする安愚楽牧場側の主張はまあ勝手だとしても、被害者の中にも事業を売却して出資金の一部を回収しようと考える方々は、このような「詐欺物件」にどれほどの価格がつくとお考えなのでしょうか?

ビジネスになんの問題が無く、価値が減るはずがない不動産ですら、買い叩かれるのが普通です。
今回の民事再生手続で、まっとうなスポンサーが名乗り出ない可能性も少なからずあるだろうと思います。
悪事には悪者が寄ってくるものなのです。

非常に大きな事件であることは確かで、間違えなく歴史に残るものです。

安愚楽牧場4300億破綻。そもそも悪名高い「和牛預託商法」の「生き残り」安愚楽牧場に、なぜ大金を預けるのか。――出資詐欺の悪党手口を全部書く!

作家 夏原武
2011年 8月31日

豊田商事の2倍以上、空前絶後の被害額

 

 豊田商事事件は、永野会長の凄惨な最後で強く記憶されているが、なによりも注目すべきは、2000億円と言われる被害額だろう。

 マルチや詐欺・詐欺商法では他にもオレンジ共済組合事件(96億円)、経済革命クラブ事件(350億円)などがあるものの、2000億円という被害額は目を疑うほどであった。

 2000億はとにかく巨大で、これ以上の巨額な被害を生む事件は起きないだろうと言われていた。

 しかしつい最近、豊田商事の2倍以上もの被害額の事件が起きてしまった。和牛オーナー制度運営「安愚楽牧場」倒産である。

 2011年8月22日時点において「詐欺である」と認定されたわけではなく、今のところは「経営不振によるもの」とされている。だが、疑わしい部分もあり弁護団からは「詐欺的」という言葉が出ている。

 筆者も長年詐欺や詐欺商法を見てきた「プロ」として、とてもではないが、現時点での牧場側のコメントには首肯できない。

 今日はこのあたりのカラクリを全部書いてしまおう。

安愚楽牧場は、悪名高い「和牛預託商法」とどう違うのか

 

 最初に以下の記事を読んでもらおう。

 4300億円を超える負債が判明した和牛オーナー制度を運営する「安愚楽牧場」(栃木県那須塩原市)。

 全国安愚楽牧場被害対策弁護団(団長・紀藤正樹弁護士)は、違法な勧誘が行われていた可能性があるとして消費者庁に行政処分などを求め、「5000億円以上の被害規模が確実な情勢で、豊田商事事件を上回る戦後最大の消費者被害となる」と危機感を強める。

 同社は経営が悪化した7月中旬、これまでより高利回りで新たなオーナーを勧誘しており、被害拡大につながったとみられる(読売新聞2011年8月16日)

 まず考えてもらいたい。そもそも「和牛オーナー制度」というのが、真っ当な商売なのだろうか?

 この名称を聞いて思い出されるのは、90年代に「和牛預託商法」と呼ばれた悪徳ビジネスである。

「和牛預託商法」のイカサマ手口

 

 「和牛預託商法」とは、簡単に言えば、和牛仔牛の飼育に出資することで「成牛となって売買されたときに、高額な配当を得られる」と謳うもの。

 きちんと機能すれば理論通りになるのかもしれない。しかし実際には「高配当」がひとり歩きし、実際には「飼育も牛保有もしてない」などという会社が続出した。

 早い話、単に出資金を集めるだけの詐欺が行われていたのである。

 これまでに弁護団が結成されただけでも「和牛の里共済牧場」「あさぎり高原共済牧場」「ふるさと共済牧場」「みちのく都路村共済牧場」などの事件がある。

 こうした事件が起きた背景には「特定商品等の預託等取引契約に関する法律」に家畜が含まれていなかったことがある。

安愚楽牧場は、和牛預託商法の「生き残り」

 

 1996年から97年に被害が続発した和牛預託商法を鑑みて、同法律にの特定商品に家畜が含まれることになった。

 それにより、前述の牧場をはじめ、最盛期に17社もあった預託会社は、出資金返還に応じざるを得なくなり、次々に破綻。

 軽井沢ファミリー千紫牧場とジェイファームの両社長は、出資法違反と詐欺で逮捕・起訴に到っている。

 つまりはっきり書けば、「和牛預託商法」はかなり怪しい商売だったわけである。

 安愚楽牧場の「和牛オーナー制度」、どことなく「和牛預託商法に似ている」と思わないだろうか。

 それもそのはず。実は安愚楽牧場はこの「和牛預託商法の元祖」と呼ばれていたのである。破綻せずに生き残ったのは、曲がりなりにも牛を飼育する実態があったからだ。

なぜ安愚楽牧場に何千万も金を預ける

 

 早い話、安愚楽牧場は「和牛預託商法」グループ「最後の生き残り」なのである。

 つまり、出資法違反や詐欺で逮捕者が出たビジネス業界の一員であったことは間違いないのだ。

 この話は当時さんざん報道されていたわけで、そのような企業に出資するリスクは明白だったはず。なのに疑問も抱かず、なぜ何千万も虎の子の金を預けるのか。

 和牛預託商法の話に戻そう。

 この商法をやっていた連中は、集めた金を牛の飼育などには使わず、不動産投資など他のことに使っては費消していったのが実態。集めた金から「配当金」を払うという、詐欺独特の自転車操業状態であったこともわかっている。

 要するに「和牛」という高級商品をお題目にしてはいるものの、中身はずっと以前から存在している出資詐欺や投資詐欺の類と同じなのである。

エビ養殖、和牛飼育……、毎度おなじみ「出資詐欺」

 

 出資詐欺は手を変え品を変え登場する。なぜならある商法が行き詰ってバレると、別の品に変えてカモを探すからだ。

 考えてもみてほしい。真珠養殖詐欺だの東南アジアでのエビ養殖詐欺など、大規模な詐欺事件の報道を思い出すはずだ。

 もちろんいずれも「養殖」実態はほぼなく、金を集めるだけが目的という悪質なもの。被害者も多数出ている。

 金を集めるだけ集めると配当が滞り、「台風でエビの養殖が打撃を受けた」とかなんとか言い訳しながら、悪党は撤退を始めるわけだ。

 養殖というビジネスが重要なのはたしかだが、それによって高配当が得られるという絵図には、なんの保証もない。

高配当なら、なぜ銀行に行かない?

 

 そもそも、もし高配当が本当であれば、一般投資家などに小口で売る手間を掛けるより、銀行に話を持ち込めばいい。喜んで出資してくれるはず。

 ――なのになぜ年寄りの退職金を狙ってくるのか。

 投資する前にたったこれだけ考えれば、「怪しい」とわかりそうなものである。

 こういった怪しい出資・投資話は、枚挙に暇がない。ラスベガスカジノ出資から始まり、ブラジルで金鉱山に出資しないかとか、果てはアフリカの砂金産出地域の不動産購入などまである。

 毎年のように話が出てくるのだが、ここ数年では、マカオカジノ出資があちこちで勧誘されていたのが記憶に新しいところだ。

安愚楽牧場「手口」は、撤退期の詐欺ビジネスに酷似

 

 和牛預託というのは、本質的には素人が関わるものではない。

 生産農家や共同組合員などがリスク分散の意味も込めて出資を募集するもの。本来、成牛が売買されたとしても「高級和牛肉がもらえる」程度のものだ。

 つまり、和牛預託「商法」とはまったく違うし、そもそも儲かるものではない。

 今回の安愚楽牧場事件で弁護団が指摘しているのは、破綻が明らかになった時点でも、新たに勧誘し、しかも配当率をアップしている点。

 これは撤退期の詐欺商法がよくやる手口に、きわめてよく似ている。

 つまり、詐欺商法業者の話だが、もう破綻必須と悟った悪党が、社会で目立つ危険性を犯しても、「行きがけの駄賃」で被害者を増やして逃げるパターンだ。

安愚楽牧場「配当」はどこから出ていたのか

 

 そこがきわめて「詐欺的」なのである。

 今回の安愚楽牧場も、この「逃走パターン」に酷似している。

 これに対し安愚楽牧場側は「末端にまで情報が行き渡っていなかった」と言い訳している。

 まさに盗っ人猛々しい言いぐさだ。破綻が見えているのなら、細かな話は伏せていたとしても新規勧誘の全面禁止を通達することぐらい、いくらでもできるはずだからだ。

 被害者の話も報道されているが、これまで配当が滞ることはなかったと話している。

 たしかに配当さえ続いていれば、問題はない。

 問題は、その配当をどこから出していたかだ。生育牛の売却利益から出ていたならいいが、集めた金額を考えるに、出資金から配当を捻出していたのではないかと思えてしまう。

出資金は保全されていたのか?

 

 穿った見方だとは思うが、この手の「商法」には、よくあることだからだ。

 つまり「配当を出し続けている」という事実が、新規顧客を呼び込むための「餌」になるからである。

 筆者のこれまでの同様事件の取材例の話をしよう。

 被害者が見せてくれる通帳には、きちんと決まった日付で配当が記されていることが多い。

 ただし、出資した金額に比べれば微々たるものだ。たとえば1000万円出資して年8%配当であれば、わずか80万円。5年受け取っても、元金の半分にもならない。

 それなのに配当を受け取った「カモ」は、知り合いなどに「いい出資先」として紹介したりする。そのときに圧倒的な効力を有するのが、「配当の事実」なのである。

残るものなどない

 

 しかし、ここで「もしこの出資先が詐欺企業だったらどうするか」、ちょっと考えてみよう。

 前述の計算でもわかるように、事業など一切していなくても、配当は預かった金から払うことができてしまう。

 つまりひとりの出資金で、12人くらいのカモに1年配当を出せる。残り11人の1億1000万円は、まるまる懐に入れればいい。たった1年でこれだ。

 早い話、「約束した配当」を続けても、詐欺師の手元には莫大な金が残るのである。

 つまり、配当などはなんの保証にもならないというわけだ。

 この手の詐欺でいちばん困るのは、兌換できるものが一切手元に残らないことである。

 契約証であろうと預かり証であろうと、そんなものは私企業が発行しただけのものであり、公的な保証とはまったく関係ない。

 現物が存在していればまだいいが豊田商事事件でもわかるように、そもそも投資事業をしていないのだから、現物すら存在しない。

生き物に投資する危うさ

 

 今回の場合、現物は存在するのだが、なにしろそれは生きた牛である。被害弁済として受け取れるものではない。

 さらに、売却したとしても被害額を埋めることなど絶対に不可能なのである。

 たしかに、311の東日本大震災による影響はあっただろうし、原発による放射能の影響もあったのだろう。

 だが「それがすべて」と思えないのは、和牛預託商法というビジネスの範疇に存在しているからである。

 高級和牛は高級マグロ同様、宝石のような取引価値を有している。が、それは消費が前提にあるわけで、需給バランスが大きく影響してくる。

 安定した一定相場が続くという保証はどこにもない。

怪しい投資話には乗るな

 

 震災も原発もなかったとしても、だから大丈夫だったという理屈にはならない。

 最低金利が続き、景気の先行きも不透明、そこに加えての震災・原発という未曾有のアクシデントが起きている日本では、資産をどう運用したらいいのか誰もが迷うことになる。

 だが、だからといって、理論ばかりが先走りし、自分に都合のいい経済見通しや市場分析ばかりの業者に預けることは絶対に避けなければいけない。

 今回は、その典型的なケースであることだけは間違いない。

 仮に詐欺としての認定がなかったとしても、被害額が史上最大になるという意味では、同じことなのである。

夏原武(なつはらたけし)

作家
1959年生まれ。雑誌編集者を経てフリーランスに。著書に「サギの手口」(データハウス)「現代ヤクザのシノギ方」(宝島社)「バブル」(同・共著)など多数。漫画原作として「クロサギ」(小学館ビッグコミックスピリッツ)「ギャングスターズ」(秋田書店プレイコミック)を連載中。

8月 31, 2011 at 06:07 午後 事件と裁判 |

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