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2011.07.08

児童にだけ責任があるという裁判

読売新聞より「校庭ボール遊び、なぜ小5少年側に高額賠償命令

愛媛県今治市で小学校の校庭から飛び出たサッカーボールをオートバイの80歳代男性が避けようとして転倒、その際のけがが原因で死亡した事故を巡り、大阪府内の遺族が訴えた民事訴訟で、大阪地裁がボールを蹴った当時小学5年の少年(19)の過失を認め、両親に約1500万円の賠償を命じた。

校庭でのボール遊びが、高額の賠償命令につながったのはなぜか。

判決(6月27日)などによると、2004年2月の事故時は放課後で、少年は校庭のサッカーゴールに向け、ボールを蹴っていた。
ゴール後方に高さ約1・3メートルの門扉とフェンス、その外側に幅約2メートルの溝があったが、ボールは双方を越え、男性が転倒した道路まで届いた。

裁判で少年側は

「校庭でボールを使って遊ぶのは自然なこと」
と主張したが、判決は
「蹴り方次第でボールが道路に飛び出し、事故が起きることを予見できた」
と過失を認定した。

法律上、過失とは「注意を怠り、結果の発生を予測しなかった」場合を指し、これにあたると判断したためだ。

さらに、事故から約1年4か月後の男性の死亡との因果関係も認めた。

判決は、民法の「自分の行為でどんな法的責任が発生するか認識できない未成年者」には責任能力がないとする規定を適用し、当時11歳の少年でなく両親に賠償責任を負わせた。

過去には11歳でも責任能力を認めた裁判例もあり、裁判ごとに年齢や行為を勘案して判断されるのが実情だ。

一方、今回の判決で大きな疑問として残るのは、学校側の責任の有無だ。

訴訟関係者によると、少年側は他人に損害を与えた場合に備えた保険に加入しており、保険会社と男性の遺族間の示談交渉が折り合わず、裁判に発展した。

遺族側は

「少年側の責任は明らか。学校の責任を問うことで争点を増やし、審理が長期化するのは避けたい」
として、裁判の被告を少年と両親に限定。

このため、学校設置者の今治市は「利害関係者」として少年側に補助参加したものの、「学校管理下の出来事でなく、監督責任はなかった」との主張は争われず、判決も触れなかった。

(2011年7月8日08時47分 読売新聞)

  1. 少年が校庭でサッカーボールを蹴った
  2. 校外にボールが飛び出した
  3. オートバイで通りがかった80歳代の男性が転倒
  4. 男性は、骨折で入院
  5. 男性は長期の入院の後に死亡。

以上が事件の経緯です。
少年、学校、男性のそれぞれに責任があると思いますが、なんで少年だけを相手に裁判で争うことになったのか?が気になっていました。

遺族側は

「少年側の責任は明らか。学校の責任を問うことで争点を増やし、審理が長期化するのは避けたい」
として、裁判の被告を少年と両親に限定。

ということで、少年だけ訴えたのでしょう。

しかし、「少年の責任は明らか」と「少年だけの責任追及で十分」は大きく違っていて、わたしには学校側の責任の方がより重いと思います。

ゴール後方に高さ約1・3メートルの門扉とフェンス、その外側に幅約2メートルの溝があったが、ボールは双方を越え、男性が転倒した道路まで届いた。

上記の説明通りだとすると、ゴールの後方にネットが無いことになりますが、そんなバカな施設はあり得ないだろう。
それでもなおかつ、学校側の責任を追及するには及ばない、という原告側の主張には非常に強い違和感を感じます。

原告と、保険会社の交渉は不調に終わっているわけですね。
そういう外見的なところを見ると、当然と言えば当然ですが、一番弱い交渉相手に裁判を起こした、と見ることが出来ます。

少なくとも、学校と少年の責任の比率を問題にしない、というのは社会の安定といった点では、非常に良くない。
天秤秤が傾いている裁判であった、と感じます。

7月 8, 2011 at 10:00 午前 事件と裁判 |

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» サッカーボール避け高齢者が転倒死亡した事故は控訴へ。 トラックバック うろうろドクター
先日、多くのコメントを頂いた話 ですが、控訴となりました。 http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20110709-00000183-yom-soci ボール遊び転倒死亡賠償、少年の両親が控訴 読売新聞 7月9日(土)9時22分配信  愛媛県今治市で2004年2月、オートバイに乗っていた80歳代男性が、小学校の校庭から飛び出たサッカーボールを避けようとして転倒、その際のけがが原因で死亡したとして、大阪府内の遺族が起こした損害賠償訴訟で、ボールを..... 続きを読む

受信: 2011/07/09 14:56:14

コメント

この記事には書かれていない事実を追加させてください。

原告側は、5000万円の損害賠償を請求したが、
「老人にバイクの運転をさせた原告にも過失がある」とされ、少年の両親には1500万円の支払いが命じられた。


この裁判までの経緯には腑に落ちない点があるけど、原告側の過失を加味した判決は妥当なものだったと思います。

投稿: 爺 | 2011/07/08 18:20:27

一番の問題は、学校側の責任を全く考慮しなかったところでしょう。

というか、学校は訴訟外の当事者だから、判決で触れるわけにもいかない。

これが、学校と少年の責任分担がどうなるのか?考えてみると、記事の通り環境であれば、7対3ぐらいで学校側の責任が重く評価されるように思います。

投稿: 酔うぞ | 2011/07/08 18:33:19

僕としては酔うぞさんのおっしゃる7対3でも少年には重過ぎると思いますね。
公にサッカーをやって良いとされている場所でゴールに向けてけったのに450万円の賠償可能性があるという事は
子供に球技をするなと言っていることと同義と感じます。
少年が損害保険に入っている事を見越した裁判所の(本来の意味での)モラルハザード事例と感じました。

投稿: サルガッソー | 2011/07/08 20:25:53

この裁判が始まったのは、少年が加入していた損保会社との交渉が決裂したからだ、となっています。

さらに、請求5千万円とのことですから、極めて法律の隅っこを突いたような訴訟で、裁判長としては原告に厳しい判決を出しても問題無いと思いますけどね。

いやにテクニカルな感じがあって、法匪という種類に属するように思う。

投稿: 酔うぞ | 2011/07/08 22:08:16

学校側の管理に問題があるなら(私も学校側の責任が一番重いと思いますが)
少年(の両親)が求償請求すればよいのでは?
学校(つまりは自治体)相手に裁判するなんて面倒を、
被害者原告が負わなければならない義務もないでしょう

投稿: 若 | 2011/07/11 12:37:11

>少年(の両親)が求償請求すればよいのでは?

そりゃ無理です。

少年は学校から被害を受けていませんから、請求する理由がない。

では、原告つまり亡くなった方からの賠償請求が学校の責任の結果だと、学校を訴えた場合、原告が「学校に責任がある」と言っていないとなるでしょうから(現実に学校を訴えていない)、少年が学校に請求する根拠がない、となると思います。

投稿: 酔うぞ | 2011/07/12 8:09:13

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