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2011.03.28

ニューズウィークの記事が語ること

Newsweek日本版より「震災でわかった日米の競争力格差

日本製部品はさほど重要ではなくなったという見方と同様、経済競争でアメリカが日本に勝利したという見方も嘘だった

2011年03月25日(金)16時44分

クライド・V・プレストウィッツ(米経済戦略研究所所長)

津波と原発事故が複合した日本の震災の深刻さが明らかになる中、90年代にアメリカが日本に経済的に勝利したという考えもまた、実際には神話に過ぎなかったことが明らかになりつつある。

ボルボは今週、日本製のナビゲーションとエアコンの在庫が10日分しか残っておらず、工場が操業停止になる可能性があることを明らかにした。
ゼネラル・モーターズ(GM)は先週、シボレーコロラドやGMCキャニオンを組み立てているルイジアナ州シェリーブポートの従業員数923人の工場を、日本製の部品が不足しているために閉鎖すると発表した。

アーカンソー州マリオンでは、ピックアップトラックのタンドラなどトヨタ車の後部車軸を作っている日野自動車の製造工場が、日本から輸入されるギアなどの部品が急激に減っていることで操業停止の危機に瀕している。

他の産業でも事情は同じだ。半導体を製造する設備の大半が日本だけで作られているか、または主として日本で作られている。

半導体の回路を焼き付けるステッパーは、3分の2がニコンかキャノン製だ。

携帯端末やラップトップパソコンに使われる樹脂「BTレジン」の約90%、
世界のコンピューターチップに使われるシリコンウェハーの60%は、日本から輸入されている。

日本の混乱が長引けば、アップルやヒューレット・パッカード(HP)は深刻な問題に直面しかねない。

今まで誰も気にしたことがないような製品、例えば小型マイクやメッキ素材、高性能機械、電子ディスプレイ、それにゴルフクラブやボーイングの新型旅客機ドリームライナーの羽に使われる炭素繊維など、すべて日本だけで作られているか、または主に日本で作られている。

アメリカが被災しても世界は困らない

最近の報道では、世界のサプライチェーン(部品調達網)の複雑さや、各企業が生産ラインを止めないためにどれだけ競い合っているかが盛んに紹介されている。しかしこの点に関する日本とアメリカの違いについては、誰も論じていない。

考えてみれば分かることだ。北米以外にある世界中の自動車工場で、アメリカ製の部品が不足して操業停止の危機に直面するところなどいくつあるというのか?
もしシリコンバレーで地震が起きたとして、アップルはどれだけの危機に瀕するだろうか?

もしそうした事態になったらアップルは被害を受けるかもしれない。特にスティーブ・ジョブズがけがをしてしまったら、事態は深刻だ。
しかしアメリカが被災しても、今回の日本の震災が世界の部品調達網に与えている影響には遠く及ばない。

理由は簡単だ。インテルのチップなどいくつかの例外を除けば(ボーイングでさえ国内ではドリームライナーの30%しか製造していない)、アメリカはもう世界市場に向けてそれ程多くの製品を出荷していないからだ。

アメリカが表向きはサービスとハイテク経済の国だということはわかっている。

だが実際は、アメリカの1500億ドルのサービス黒字は、6500億ドルの貿易赤字と比べれば極めて小さい。

それどころか、ハイテク貿易の収支も実は1000億ドル以上の赤字だ。
真実を言うと、世界の市場で競争力があるアメリカ製品などほとんどないのである。

これで思い出されるのは、70年代後半から90年代前半の日米貿易摩擦だ。

当時の日本経済は今の中国並みの高成長を遂げていた。
日本の製造業は、アメリカの繊維、家電製品、工作機械、鉄鋼などの産業を事実上絶滅させ、アメリカの自動車メーカーから大きな市場シェアを奪い、半導体市場で50%以上のシェアを奪ったときにはシリコンバレーさえ屈服させた。

見せ掛けの繁栄に浮かていただけ

エズラ・ボーゲルのベストセラー『ジャパン・アズ・ナンバーワン』に刺激され、GDP(国内総生産)で日本にアメリカが抜かれてしまうかもしれないという脅威論も生まれた。

だが、本当の競争は当時アメリカ政府が日本に市場開放を迫った農業や大規模小売業の競争ではなく、国際市場向けの製品やサービスの競争だったのだ。

結局1985年のプラザ合意で日本は劇的な円切り上げを容認することになり、円は最終的に対ドルで100%も上昇した。

この円高と、91~92年にかけての不動産と株式市場のバブル崩壊は、日本の成長の足かせとなり90年代の「失われた10年」を生み出した。

その一方、アメリカは90年代に入りインフレなき高成長を謳歌した。
日本の停滞とアメリカの繁栄を比較すると、いかにもアメリカは日本を打ち負かしたように見えた。
アメリカ人は口々に、なんで日本に抜かれる心配などしたんだろうと言い合った。

だがアメリカでもITバブルとサブプライム・バブルが崩壊してみると、90年代のアメリカの高成長もまた見かけ倒しだったことがはっきりした。

今、国際的な部品調達網に日本が与える影響の大きさをアメリカのそれと比較すれば、グローバル競争の本当の勝者はアメリカではなく、日本だったことは明らかだ。

Reprinted with permission from The Clyde Prestowitz blog, 25/03/2011. (c) 2011 by The Washington Post Company.

なんとも自虐的な記事だと思うのだが、驚いたことに3月10日付けで以下の記事を出している。「iPhoneが「アメリカ製」だったら

iPhoneの作られ方を検証したら、人件費の安い中国に負けたのではない意外なカラクリが浮き彫りに

2011年03月10日(木)17時48分

クライド・V・プレストウィッツ(米経済戦略研究所所長)

ジョン・マケイン上院議員は先日、ABCテレビのインタビューに応じ、iPhoneとiPadは「メイド・イン・アメリカ」の素晴らしさを象徴する製品だと語った。

事実誤認もいいところだ。ハイテク機器産業の一大拠点であるアリゾナ州選出のマケインが、こんな勘違いをするなんて容認できない。
上院議員たちの知識レベルに国民が不安を感じるのも無理はない。

では、アップルが誇るiPhoneやiPadは、実際にはどの国で作られているのだろう?
大半の人が中国と答えるだろうが、実はそれも間違いだ。ここには、興味深い真実が隠れている。

アメリカの製造業の崩壊を憂う立場の人々は以前から、国内の製造業と雇用が中国に流出している典型例として、iPhoneを名指しで批判してきた。

彼らに言わせれば、iPhoneの海外生産委託によってアメリカの貿易赤字は年間20億ドル上積みされ、20~40万人の国内雇用が失われているという。

巨額の対中貿易赤字は数字のトリック

一方、自由貿易の信奉者たちはまったく逆のことを言う。iPhoneの小売価格、約500ドルのうち、中国での製造・組み立てにかかるコストは180ドル足らず。
それ以外の320ドルはデザイン、ソフトウエア開発、マーケティング、輸送、販売がらみのコストで、すべてアメリカ国内で行われている。

つまり、中国の2倍近い価値がアメリカで生み出されている計算になる、という。

さらに、中国の製造コストが低いおかげで、アメリカの消費者はiPhoneを安く購入できる。
その結果、消費者はより多くの電話を購入し、より多くの国内雇用が生まれる──。

そうだとしても、アメリカには依然としてアメリカには巨額の対中赤字が残り雇用も犠牲になるが、その赤字は、米企業が強い競争力をもつ航空機などの輸出を倍増させることで解消できると自由貿易主義者は言う。

ところが、アジア開発銀行研究所(ADBI)が最近行った調査からは、まったく別のシナリオが浮かび上がる。

iPhoneのサプライチェーン(原材料の調達網)を詳細に調べたところ、中国が関与しているのはほんの一部に過ぎないことがわかったのだ。

中国はアジア各国から集まってきたiPhoneの部品を最終的な製品に組み立て、アメリカに送るだけ。

貿易統計上、アメリカの税関は中国から届いたiPhoneの価値すべてを中国からの輸入とみなす。
iPhoneの貿易でアメリカが中国に20億ドルの赤字になるように見えるのはそのためだ。

だがADBIによれば、中国での組み立てによる付加価値は完成品の3%、つまり約6ドル相当にすぎない。
しかも中国はいくつかの高価な部品をアメリカから輸入しており、iPhone貿易で赤字なのはむしろ中国のほうだという。

つまり、iPhone生産の大部分を担うのは、中国をはじめとする労働コストの低い国ではない。
充電器やカメラレンズ、水晶振動子は台湾製で、スクリーンは日本製、映像処理半導体は韓国製。
それ以外の半導体の多くも台湾の台湾積体電路製造社で作られている。

中国の組み立てラインには、最終的に9カ国以上の国で生産された部品が集まる。そのため、対中国だけでみれば実際にアメリカが黒字になる可能性はかなり高い。

得意分野のハイテク部品も日本に丸投げ

対中貿易では黒字なのにiPhone貿易全体では赤字なのは、アメリカの貿易赤字の相手が中国ではなく、アジア全体であることを示している。
iPhoneにまつわるアメリカの対中貿易赤字は、実は「対アジア赤字」なのだ。

そう考えると、さらに興味深い論点が浮上する。日本や韓国、台湾などのアジア諸国の労働コストは決して安くない、ということだ。
日本と韓国は、富裕国が集まるOECD(経済協力開発機構)の加盟国でもある。

しかも、これらの国々が供給するiPhoneのハイテク部品(半導体チップや液晶ディスプレー、レンズなど)は労働集約型ではなく、高度に技術集約的な製品だ。アメリカが先導しているはずの分野の製品なのだ。

こうしたハイテク部品が本当にアメリカの得意分野なら、これらを国内で生産すれば対アジアの貿易赤字は解消されるだろう。
iPhone貿易はアメリカに黒字をもたらし、2~4万人の雇用も創出してくれるはずだ。なのにアメリカはなぜ、それをしないのか。

Reprinted with permission from The Clyde Prestowitz blog, 10/03/2011. (c) 2011 by The Washington Post Company.

一言で言えば、「Newsweekが警告していた通りになったのだよ」という記事なのだが、それ以前に自由貿易信奉者がアメリカ国内での付加価値を大きくするために、安い中国で作らせているのだ、と主張していることを紹介している。

ところが、困るかどうか?という問題になると、アメリカに手の打ちようがない現状が見えてきた、ということなのでしょう。 確かに、カーボンファイバーの供給は、東レ一社といっても良いわけで、そういうキーパーツが供給されないと、他をどうしようが、経済原理すら働かなくなってしまう。
これでは、動産の不動産化とでも言わざるを得ないわけで、不自由貿易を甘受するしかない。

やはり、自由貿易論自体が無理であったということになるのだろうか?

3月 28, 2011 at 11:19 午前 国際経済など |

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コメント

困らないとかの問題でもないとおもうけどなぁ・・

投稿: 楽増さん | 2011/03/30 16:09:00

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