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2010.08.06

ようやく、周産期・新生児医学会が緊急声明を出した

朝日新聞より「ビタミンK2投与を 周産期・新生児医学会が緊急声明

日本周産期・新生児医学会(理事長=田村正徳・埼玉医科大総合医療センター教授)は5日、新生児の頭蓋(ずがい)内出血を防ぐため、ビタミンK2シロップ投与の重要性を再確認するよう、会員の産婦人科医や小児科医、助産師らに求める緊急声明を出した。

代替療法「ホメオパシー」を実践する一部の助産師が、シロップの代わりに「レメディー」と呼ばれる砂糖玉を渡し、新生児が死亡し訴訟になったことを受けた。

緊急声明は長妻昭・厚生労働相にも提出、厚労省として積極的に指導するよう求めた。

緊急声明にしては、時間がかかりすぎているのではないのか?という印象がありますが、かなりデリケート(?)な問題です。

記事中にある「新生児が死亡し訴訟になった」事件とは、朝日新聞のアビタルが特集しています。

問われる真偽 ホメオパシー療法2010/8/3
5600万円の賠償求める 山口地裁 ホメオパシー絡みトラブル2010/8/5
「ホメオパシー」トラブルも 日本助産師会が実態調査2010/8/5

5600万円の賠償求める 山口地裁 ホメオパシー絡みトラブル

2010年8月5日

山口市の女性(33)が同市の助産師(43)を相手取り、約5600万円の損害賠償を求める訴訟の第1回口頭弁論が4日、山口地裁であった。

訴状などによると、女性は2009年8月に長女を出産。助産師は出血症を予防するためのビタミンK2シロップを投与せず、長女はビタミンK欠乏性出血症にもとづく急性硬膜下血腫を発症し、同年10月に死亡したという。

女性は、

  • 助産師が母子手帳にあるK2シロップ投与欄に「投与した」とウソの記録を残していた
  • K2シロップを投与しない場合の出血症の危険性も説明しなかった
などと主張している。

一方、助産師は関係者などに対し、ホメオパシーのレメディーを与えたと説明しているという。

ビタミンK欠乏性出血症は、K2シロップの適切な投与でほぼ防ぐことができるとされる。

この日の弁論に助産師側は出席せず、事前に請求棄却を求める書類を提出したが、詳細については言及していないという。

◇医師ら以外の処方、問題◇

ホメオパシーを治療に取り入れている、東京女子医大自然医療部門の川嶋朗准教授の話

ワクチンを打つなとか薬を飲むななどと主張する過激なホメオパシーのグループも存在する。
山口のケースでのビタミンK2シロップや抗生剤など、西洋医学で明らかに治療できるものは西洋医学で対応するのが当たり前だ。
患者にレメディーを投与するのは医療行為で、医師や歯科医師ら、薬の処方権がある人以外がホメオパシーを使うのは大きな問題だ。

◇考え、科学的におかしい◇

「科学と神秘のあいだ」などの著書がある大阪大の菊池誠教授(物理学)の話

原子や分子の存在が分かった今では、「元の物質の分子が残らないほどに希釈した水を含む砂糖玉が体に作用を及ぼす」との考えが科学的におかしいのは明らか。
科学的なものは不自然で体に優しくないという信念など、「ファッショナブルな自然志向」の存在が、ホメオパシーをはやらせる背景にあるのではないか。
ホメオパシーに頼り、医療を拒否する危険性を理解する必要がある。

代替医療を本当の医療と同格に扱って、保険適用しようという動きが世界的にあって、鳩山前首相は「統合医療を真剣に検討、推進していきたい」と答弁しています。

現時点の「医療」が近代医療技術であって、伝統的医療が世界各地に残っています。
鍼や灸は日本でもずっと続いていますし、カイロプラクティック、整体も根付いています。
わたしの知っている範囲では、アーユルベータ、ホメオパシーといったものも最近は有名になってきています。

イギリスではホメオパシーの保険適用が認められていたのが、7月になって「効果がない」との判定がでて、保険適用を止めるべきだとの声が上がったのですが、利用者の選択の自由を根拠に、適用除外が見送られたようです。

医療費増大を防ぐために、保険的ようにの範囲を狭めようとして、漢方薬の保険適用を外そうといった動きがあったり、その逆に代替医療を促進すれば高度医療で大金を使わないでも良い、といった主張もあったりして、それぞれの思惑の綱引き状態と言えるでしょう。

今回の、K2シロップを投与しないという、一部の助産師会の動きについては多くの方面から問題しされています。
朝日新聞より「「ホメオパシー」トラブルも 日本助産師会が実態調査

「ホメオパシー」と呼ばれる代替療法が助産師の間で広がり、トラブルも起きている。

乳児が死亡したのは、ホメオパシーを使う助産師が適切な助産業務を怠ったからだとして、損害賠償を求める訴訟の第1回口頭弁論が4日、山口地裁であった。

自然なお産ブームと呼応するように、「自然治癒力が高まる」との触れ込みで人気が高まるが、科学的根拠ははっきりしない。社団法人「日本助産師会」は実態調査に乗り出した。

新生児はビタミンK2が欠乏すると頭蓋(ずがい)内出血を起こす危険があり、生後1カ月までの間に3回、ビタミンK2シロップを与えるのが一般的だ。

これに対し、ホメオパシーを取り入れている助産師の一部は、自然治癒力を高めるとして、シロップの代わりに、レメディーと呼ぶ特殊な砂糖玉を飲ませている。

約8500人の助産師が加入する日本助産師会の地方支部では、東京、神奈川、大阪、兵庫、和歌山、広島など各地で、この療法を好意的に取り上げる講演会を企画。

2008年の日本助産学会学術集会のランチョンセミナーでも、推進団体の日本ホメオパシー医学協会の会長が講演をした。

同協会のホームページでは、提携先として11の助産院が紹介されている。

日本助産師会は「問題がないか、実態を把握する必要がある」として、47支部を対象に、会員のホメオパシー実施状況やビタミンK2使用の有無をアンケートして、8月中に結果をまとめるという。

また、通常の医療の否定につながらないよう、年内にも「助産師業務ガイドライン」を改定し、ビタミンK2の投与と予防接種の必要性について記載する考えだ。
日本ホメオパシー医学協会にも、通常の医療を否定しないよう申し入れた。

助産師会の岡本喜代子専務理事は

「ホメオパシーを全面的には否定しないが、ビタミンK2の使用や予防接種を否定するなどの行為は問題があり、対応に苦慮している」
と話している。

助産師は全国に約2万8千人。
医療の介入を嫌う「自然なお産ブーム」もあり、年々増えている。
主に助産師が立ち会うお産は、年間約4万5千件に上る。

テレビ番組で取り上げられたこともある有名助産師で、昨年5月から日本助産師会理事を務める神谷整子氏も、K2シロップの代わりとして、乳児にレメディーを使ってきた。

取材に応じた神谷理事は

「山口の問題で、K2のレメディーを使うのは、自重せざるを得ない」
と語る。この問題を助産師会が把握した昨年秋ごろまでは、レメディーを使っていた。
K2シロップを与えないことの危険性は妊産婦に説明していたというが、大半がレメディーを選んだという。

一方で、便秘に悩む人や静脈瘤(りゅう)の妊産婦には、今もレメディーを使っているという。

ホメオパシーをめぐっては英国の議会下院委員会が2月、

「国民保健サービスの適用をやめるべきだ。根拠無しに効能を表示することも認めるべきではない」
などとする勧告をまとめた。

薬が効いていなくても心理的な効果で改善する「偽薬効果」以上の効能がある証拠がないからという。

一方、同国政府は7月、科学的根拠の乏しさは認めつつ、地域医療では需要があることなどをあげて、この勧告を退ける方針を示している。

日本では、長妻昭厚生労働相が1月の参院予算委で、代替医療について、自然療法、ハーブ療法などとともにホメオパシーにもふれ、「効果も含めた研究に取り組んでいきたい」と述べ、厚労省がプロジェクトチームを立ち上げている。(福井悠介、岡崎明子)

〈ホメオパシー〉 約200年前にドイツで生まれた療法。

「症状を起こす毒」として昆虫や植物、鉱物などを溶かして水で薄め、激しく振る作業を繰り返したものを、砂糖玉にしみこませて飲む。
この玉を「レメディー」と呼んでいる。
100倍に薄めることを30回繰り返すなど、分子レベルで見ると元の成分はほぼ残っていない。

推進団体は、この砂糖玉を飲めば、有効成分の「記憶」が症状を引き出し、自然治癒力を高めると説明している。

がんやうつ病、アトピー性皮膚炎などに効くとうたう団体もある。

一方で、科学的な根拠を否定する報告も相次いでいる。豪州では、重い皮膚病の娘をレメディーのみの治療で死なせたとして親が有罪となった例や、大腸がんの女性が標準的な治療を拒否して亡くなった例などが報道されている。

少なくとも、この「レメディー」はオマジナイとか、カルトでありましょう。
こんなモノに命を託すというのは、それ自体が間違っているとしか思えない。

8月 6, 2010 at 07:53 午後 医療・生命・衛生 |

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コメント

私には、21世紀の現代の日本にどうしてホメオパシーなんて言う前近代的なものを輸入する動きがあるのか、不思議でしかたがありません。
欧州のほうに根付いていた、民間療法で、その無効性については、証明されているのですから、浸透していない国では、あっさり「禁止」しちゃえばいいだけのことです。

18世紀までの中世ヨーロッパでは、瀉血や吐瀉などの伝統的(野蛮)な医療がなされていまして、症例によっては効果もあったかもしれませんけれども、全般的には、リスクのほうが大きかったと思います。それに対して、19世紀初頭にハーネマンがホメオパシーという「何もしない」医療を提唱しました。効果もないけれども、害もありません。だって、何もしないのですから。まあ、それはそれで受け入れられていたようです。
19世紀半ばに欧州でも、コレラが流行して、話が変わります。コレラの対症療法としては、脱水症防止が大切ですから、生理食塩水の輸液や経口摂取をするべきところなのですけれども、その逆の瀉血や吐瀉などをされたら、助かる命も救えません。しかたなしに、「何もしない」ホメオパシーの評価が高まり、根付いちゃったわけです。パスツールやコッホに始まる近代医療は、19世紀後期からですから、惜しくも間に合わなかったのですね。
その後、普通の医療の発達により、ホメオパシーは駆逐されていったのですが、一度根付いちゃったヨーロッパでは、それを排除するのにご苦労なさっているようです。アメリカは、18世紀に独立していますから、ホメオパシー流行の感染を受けておりませんで、日本と同様「清浄国」です。19世紀に植民地だったインドやオーストラリアなどでは、いまだに影響が残っているようですが、それは、韓国や台湾に「正露丸」があるのと同様、占領による「被害」といえます。

すでに、世界的に排除されるべきものと、評価が確定している療法をいまさら掘り返している者の気が知れません。「金儲けのため」と仮定しますと、説明はつきますが、詐欺師でも「ヒトの命」だけは扱わないという掟がありますので、問題が大きかろうと存じます。

投稿: mimon | 2010/08/08 11:23:46

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