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2010.08.31

消費者庁発足1年

2009年9月1日に消費者庁が発足して1年になります。
サンケイ新聞が3日間がかりで、特集記事を出しています。

2年前になる、2008年9月9日に品川で消費者庁設置を促進する集会がありました、これには当時、首相退陣を発表したばかりの福田首相が登場してスピーチしていました。

このときは、紀藤弁護士の案内で集会に参加したのですが、その後近くの呑み屋で、現在の日本弁護士会会長の宇都宮健児弁護士の隣で、色々と事情を伺いました。

わたし自身は、消費者庁の設置を重要視しておりましたが、同時に自民党政権下では出来るわけがないだろうと思っていたのに、当時自民案と民主案が競っていて、最終的に自民党の決定で消費者庁が設置されました。

ヨーロッパで、消費者大臣会議が開かれるようになっていて、日本には消費者庁が無いから参加できない、というのが設置を促進した大きな動機の一つだそうです。

その結果が、当然のように「寄せ集め」の役所であり、全国の消費者センターとの関係についても、企画倒れのようなところがあります。

消費者庁の設置は、「消費者庁及び消費者委員会設置法」によるもので、消費者委員会が色々な審議を行って、先日「自動車リコール問題」を消費者庁と国交省に建議しました。

わたしは、この時の「第33回消費者委員会」を傍聴しました。
そして、何人かと「消費者委員会Watch」ブログを始めました。
まだ、軌道に乗っているとは言い難いのですが、まじめに取り組む予定であります。

サンケイ新聞より「【消費者庁発足1年】(上)“すき間”規制できず こんにゃくゼリー法整備

2010.8.28 21:37

「こんな物のために息子の命が奪われてしまったかと思うと…。私が望むのは二度とこんなつらく悲しい事故が起こらないことです」

6月29日、荒井聡消費者担当相に出された手紙の一節だ。差出人は三重県伊勢市の村田由佳さん(49)。平成19年に長男の龍之介君=当時(7)=を、こんにゃくゼリーによる窒息で失った。

消費者庁の発足のきっかけの一つが各地で相次いだ、こんにゃくゼリーによる窒息事故だった。7年以降、少なくとも22人の死亡報告がある「特異な消費者事故」(同庁資料)に対して、“消費者目線”からの安心安全の実現が期待されていた。

こんにゃくゼリーのような食品には、硬さや形状を規制する法令や担当省庁がない。いわゆる“すき間事案”だ。消費者庁には、こうした事案に関し、事業者への改善勧告・命令を出す権限などが与えられた。

庁内では食品の事故防止対策を練るプロジェクトチームで食べ物の硬さや形などの指標をつくるための検討を開始。今年の7月中に指標の結論を出すべく作業が進んだ。

手紙が出されて半月後の7月16日。消費者庁が見解を出した。「法的整備が必要」(泉健太政務官)としながらも、「結論を出すにはデータが不足している」。指標の結論は「年内をめど」に先送りになった。

村田さんが受けた衝撃は察するにあまりある。村田さんはいま「対応できる状態ではない」(担当弁護士)という。

なぜこんなに時間がかかるのか-。
法や指標の整備には正確な窒息リスクの把握が必要となる。だが、専門家らの調査が異なる評価を出すなど、リスクを明確に示せないのだ。

消費者庁が導き出した評価は、

「こんにゃくゼリーにはモチやアメよりも重い事故につながるリスクがある」
というもの。
一方で、内閣府の食品安全委員会は
「アメと同程度でモチに次ぐ」
と、ニュアンスの異なる評価を消費者庁に答申してきた。

食品安全委は食品のリスクを評価する機関で、消費者庁に「意見」を出せる関係。
安全委の見解は

「こんにゃくゼリー規制だけで、窒息事故は防げるのか」
という疑問を投げかけた。

 

結局、検討作業は膠着(こうちゃく)状態となり、1年前と同じ状態が続いている。
そんな行政のもたつきをよそに、こんにゃくゼリー製造者による商品や表示改良は進み、過去約2年間、窒息死亡事故の報告はない。

食品をめぐる課題はほかにもある。発がん性が懸念される成分が検出された花王の食用油「エコナ」。
商品に与えられていた「特定保健用食品(特保)」の認定がどうなるかが社会の関心事となった。

特保を所管する消費者庁は昨年10月、特保の再審査手続きに入ることを決定。
花王側は即日、自主的に認定を返上した。

だが、肝心の発がん性については、昨年7月から食品安全委で調査中だ。
こちらも行政のもたつきをよそに、メーカー側の販売自粛などでこの成分を含む食用油はすでに市場から消えている。

消費者行政で強い権限を与えられた消費者庁。
だが、こんにゃくゼリーやエコナをめぐっては、どう権限を行使したらいいか手探りの状態が続いている。

消費者庁の活躍に期待していた人たちの中には、そんな状態が歯がゆく見える。

国民生活センター理事長の野々山宏弁護士は、

「行政が消費者の目線に立ち、消費者もそれを実感できることが大切な課題だった。
だが、現段階では十分ではないと思っている」
と1年を振り返る。

主婦連合会の山根香織会長も

「期待はあるがいまは十分だと思っていない。消費者も『何でもやってくれる』と期待したのに、『トントンと進むものが見えてこない』と思っている」
と厳しい見方だ。

昭和46年の環境庁(当時)以来の新官庁として、昨年9月1日に誕生した消費者庁。“消費者目線”を期待された省庁の活躍ぶりはどうだったろう。発足から1年を検証する。

■消費者庁

内閣府の外局。
相次いだ食品偽装事件などの発生を背景に設置構想が出された。
「消費者が安心安全で豊かな消費生活を営むことができるような社会をつくること」を任務にしている。
発足当初の担当大臣は野田聖子氏(自民)。
政権交代を経て福島瑞穂氏(社民)、荒井聡氏(民主)。
正規職員数は約200人。都心の民間ビルに入居しており、当初その賃料(年8億円)が高すぎると国会などで問題視された。

【消費者庁発足1年 期待と現実】(中)火遊び防ぐライター規制

2010.8.30 08:05

他省庁との連携 道半ば

「ベビーカーやライターの件は割と機敏に反応できたところがあった」

昨年12月、消費者庁の発足3カ月を振り返り、福島瑞穂担当相(当時)はそう自賛した。

ベビーカーとは、英マクラーレン社製の折りたたみ式ベビーカーで、子供が指を挟まれる事故への対応を迫られた件。
11月9日に米国でリコールが発表されると、消費者庁は即座に同種ベビーカーの一時使用自粛を呼びかけた。

庁内には「海外でのリコール案件までを所管するのか」という消極的な声もあったという。

だが、庁の発足理念である「消費者目線」が優先された。経済産業省と連名でマクラーレン社と連絡を取り、12月4日には日本国内での対応策を確約させている。

一方で、ライターとは、ライター火遊びが原因とみられる火災で子供の死亡が相次いだ問題への対応。

昨年11月に東京都が、子供が簡単に着火できないライターの必要性などを提言。それを受ける形で、国が規制作りに乗り出した。

▼自画自賛

福島氏は5月、経済産業省の審議会がライターの規制強化を打ち出すと、

「消費者庁としては、ライター火災のデータ提供など審議に協力してきた。消費者庁は基準を満たさないライターの廃棄・回収についても関係省庁と連携して周知徹底を図る」
と、消費者庁の“縁の下での活躍”ぶりを語った。

ライターに関して消費者庁は、経産省に対策作りを働きかけたほか、消防庁と連携して全国的な実態調査を実施。一般にもリーフレットの配布など3度にわたって注意喚起をした。

商品の安全性にかかわる情報を一元化して他省庁に働きかけたり、消費者目線で「公表」「注意喚起」するのは、消費者庁に与えられた主要な任務の一つだ。
福島氏だけでなく、消費者庁内にも「消費者庁の存在が貢献した」とみるむきは多い。

だが、周囲の反応は必ずしも、福島氏ら消費者庁の自己評価ほどには高い評価を与えてはいない。

ライター規制をとりまとめた経産省製品安全課は、スピード対応ができた理由について、消費者庁の功績よりも「東京都の調査があったから」と言い切る。
同課の担当者は「消費者庁の貢献はゼロではないが…」と言葉を濁した。

経産省内からは

「設置間もない消費者庁には不慣れな担当者が多く、連絡を取っても『大臣からやれといわれたから…』という“子供の使い”のようなやり取りもあった」
という証言も聞こえてくる。

▼権威なし

一連の経緯をみてきた全国消費者団体連絡会の阿南久事務局長は、同様の問題への消費者庁のより積極的な関与を期待する。

「消費者庁がメーカーの社長を呼びつけてもいい。本来はそういう庁のはずだが、いまは権威がない。それだけの権威をつけることも必要だ」
と阿南事務局長。

もちろん消費者庁も周囲からの声を自覚している。

同庁の2代長官として今月11日に就任した福嶋浩彦長官が、今後の消費者庁のあるべき姿についてこんな話をしている。

「原因は確定できないが『問題がある可能性がある』という段階で情報を出すことはとても大事」。そして「時には事業者や企業と摩擦が起こることも当然ある」
とも。

情報発信や他庁への影響力では、自己満足に近かったこの1年。どう外部から評価されるまでに強化するか。2年目の課題だ。

【用語解説】主な注意喚起

消費者庁は発足以降18日までに、消費者や各省庁などに45件の注意喚起や情報提供を行った。昨年11月、英マクラーレン社が米国でベビーカーのリコールを発表した際は、福島瑞穂消費者担当相(当時)が即座に「使うのをやめてください」と呼び掛け話題に。
乗用車のフロアマットの扱いや、携帯音楽プレーヤー「iPod nano」の過熱などについても注意喚起を行っている。

【消費者庁発足1年 期待と現実】(下)寄せ集め小所帯に危惧、景表法違反措置命令が激減

2010.8.30 21:07

「景品表示法違反による措置命令が少なくなった」。消費者庁が発足した昨年9月以降、いくつかの消費者団体からそんな懸念が出ていた。

それは今月10日の消費者庁の発表で裏付けられた。景表法違反での平成21年度の措置命令は12件。前年度の52件に比べ激減だった。

消費者に誤解を生じさせるような不当表示などに対処する景表法は、消費者庁発足の際に公正取引委員会から同庁に移管された。

消費者庁は「1つの調査で複数企業を処分する事例がなかった」と説明する。
しかし、周囲からは、消費者庁の体制の問題や、他省庁との役割分担がうまくいっていないことを指摘する声があがっている。

■情報1.5倍

公取委時代は約30人の担当者が、商品の不当表示に目を光らせていた。
だが、消費者庁には約20人の担当者しかいない。

また、関東以外の地方の商品調査は、従前通り全国に8つある公取委の地方事務所などが担っている。そこでの調査結果が、消費者庁に集められ、同庁が処分を判断する仕組みだ。

措置命令の激減を懸念する消費者団体の一つ、「食の安全・監視市民委員会」代表の神山美智子弁護士は

「頭の法令だけを消費者庁に移した一方で、手足となる実動部隊は地方においたまま。縦割り意識が強い日本の官僚機構の中で、これでは消費者庁は身動きがとれない」
と危惧(きぐ)する。

ほかに、「農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律(JAS法)」「食品衛生法」のうち食品表示にかかわる部分の所管も、それぞれ農林水産省と厚生労働省から消費者庁に移されたのに、「食品表示Gメン」や「食品衛生監視員」といった地方の実動部隊は旧来の組織に属したままだ。

そもそも消費者庁の職員は217人しかいない。一方で、仕事は増えるばかりという。景表法の担当課でも一般などからの情報提供は前年度の1・5倍、約3千件に増加。

「ネタはたくさんあるが、調査に取りかかれていない状態」
と話す。

217人の職員が、内閣府、経済産業省、公正取引委員会など12府省庁からの出向職員と、全体の5%ほどの弁護士ら任期付き採用の常勤職員で構成されている点も、誕生したばかりの役所ゆえの特徴だ。

■連携強化

プロパーがおらず、寄せ集めの職員だけで消費者行政を担えるのか。

福嶋浩彦長官は、

「ほかの省庁に戻っても、消費者、生活者の視点を身につけたことは生きる。そういう人を各省庁に増やすのは、消費者庁が司令塔として機能していくうえで必要だ」
と、前向きにとらえている。

だが、消費者庁と協力しあう関係にある国民生活センター理事長の野々山宏弁護士が指摘するように、

「各省庁からの寄せ集めで、何年かすれば元の省庁に帰っていく。
職員全体が目指せる明確なビジョンも示されてこなかった」
という声は強い。

設立2年目に入るにあたり消費者庁は今後、景表法関連や、消費者事故の分析や対応の分野を強化する方針。

23年度には81人の出向職員と、34人の非常勤職員の増員も要望する予定だ。プロパー職員の採用に向けた検討も進む。

事務方トップに今月就任した福嶋長官は、元「改革派市長」。職員の一体感醸成や他省庁との連携強化を打ち出す。

食や商品の安全性などへの社会の関心は高まるばかりだ。新たな事故調査機関の設置について検討を始めるなど、消費者庁は省庁横断的な重要事案も抱える。

「司令塔としての真価がこれから問われていく」(福嶋長官)。関心とともに高まる期待にいかに応えるか。消費者庁は正念場の2年目を迎える。

■消費者庁所管の主な法律

消費者庁発足で、消費者に身近な法律は同庁が所管することになった。
食品表示に関するものでは、原産地などのJAS法、添加物などの食品衛生法、栄養成分などの健康増進法。
取引での消費者トラブルを防ぐ特定商取引法や旅行業法、製品の安全を確保する消費生活用製品安全法なども所管する。
担当省庁のない“すき間事案”などに対応する消費者安全法も新設された。

連載は高橋裕子が担当しました。

8月 31, 2010 at 09:25 午後 国内の政治・行政・司法 |

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コメント

> 当然のように「寄せ集め」の役所であり、

私も、その「寄せ集め」をたまに実感します。
例えば、景表法第十二条では、従来公取委が行っていた業務に一枚かんで、提出された書類に「受領印を押してファイルしておくだけ」という体質が見受けられます。
それで、何か業務改善されていればいいのですが、違反が疑われる報告を上げても、回答が遅くなっただけとしか、感じられません。

投稿: mimon | 2010/09/01 0:24:25

mimon さん

わたしには、「大臣のいすが一つ増える」に代表される、行政側のメリット(?)で闇雲にスタートさせたのではないか?という印象があります。

今日(2010年9月2日)消費者委員会Watch にアップしましたが、消費者委員(定員10名以下)の一人桜井敬子学習院大学教授が、消費者委員を辞任しました。

この方は、日経新聞によると
「桜井氏は行政法が専門で、消費者委の人選や審議方法に苦言を呈し、組織全体を見直すように求めていた。」
のだそうで、基本的に新しいことをやりたくないのかもしれません。

消費者委員会を注意深く見ていると、供給側(メーカー・流通)が熱心に参加していますが、消費者団体の勢力争いといった面もあるし、ものの流通ではなくて、宣伝など情報流通も来ています。

つまり、本当の消費者の立場は相対的に低いようで、そんな点からも、注意している必要はありますね。

投稿: 酔うぞ | 2010/09/02 1:55:48

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