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2010.08.30

まだ続いていていた神栖市のヒ素問題

NHKニュースより「“ヒ素中毒 疑い強い”と指摘

8月30日 6時56分

茨城県神栖市の住民らが旧日本軍が関係した有機ヒ素化合物に汚染された井戸水を飲んで健康被害を受けたとして、公害等調整委員会に国に賠償を命じるよう求めている問題で、調査に当たった医師らが

「健康被害の一部は有機ヒ素化合物による中毒の疑いが強い」
などと報告書で指摘していることがわかりました。

この問題は、茨城県神栖市の住民39人が、旧日本軍の毒ガス兵器の原料に用いられた有機ヒ素化合物に汚染された井戸水を飲むなどしたことで、健康被害を受けたとして、国と県に損害賠償を命じるよう公害等調整委員会に求めているものです。

国は

「健康被害と汚染された井戸水との関係ははっきりしない」
などと主張しています。

この問題で、公害等調整委員会に専門委員として委託された医師4人が29日までに報告書を委員会に提出しました。

住民の弁護団や関係者によりますと、報告書では汚染された井戸水を日ごろから飲んでいた住民15人について、

「手足のふるえやめまいなどについては、有機ヒ素化合物による中毒の疑いが高いか、またはその可能性が否定できない」
と指摘しているということです。

弁護団は

「健康被害と井戸水との関連を指摘したものと受け止めており、国に一刻も早い住民の救済を求めたい」
としています。

まだこんなところでウロウロしているのかとびっくりです。

「神栖市 ヒ素」で検索を掛けると、

といったページがあります。神栖市 - Wikipediaの説明が一番明快で、

2003年には、有機ヒ素化合物で汚染した井戸水により、住民がヒ素中毒を起こした事件が各メディアで報道され有名となった。

この原因は現在も調査中であるが、当初言われていた旧日本軍の化学兵器説は実証されず、近年に不法投棄された産業廃棄物に含まれた有機ヒ素化合物による可能性が高まっている。

なお、住民は2006年7月24日に公害等調整委員会に対して国の責任を認める裁定を下すよう申請を行い、現在継続中となっている。

  1. 井戸水で健康被害があった
  2. 健康被害の原因を旧日本軍の毒ガス兵器によるとして大規模調査をした
  3. その後、昭和30年代に投棄されたと見られるコンクリートブロックからヒ素を検出
という経過になっています。

中西準子先生の雑感より「雑感245-2004.2.5「神栖町井戸水ヒ素汚染-汚染源ほぼ確定か?

ヒ素中毒発生
 
2003年(昨年)3月、茨城県神栖町(かみすまち)で複数の中毒患者が発生し、それが砒素中毒であることが確認された。その砒素は、井戸水に起因し、住民が使用する井戸(数戸での共用井戸が複数掘られている)に含まれていた。

旧日本軍の毒ガス兵器に使用されたとされる有機ヒ素(ジフェニルシアノアルシンとジフェニルクロロアルシン)の分解生成物と思われるジフェニルアルシン酸が検出され、この化学物質が他のヒ素化合物から生成されるとは考えられなかったので、毒ガス兵器に起因するヒ素化合物が中毒の原因とされた。

ただちに、環境省は大がかりな汚染源調査に入ったが、昨年末(12月27日)、原因は特定できなかったという発表をして、2003年の調査を終了した。もちろん、2004年になっても調査は続いているが、それに関する報道はない。

他方、茨城大学広域水圏センター神栖町有機ヒ素地質汚染調査団を結成し、調査をしていた楡井(にれい)久氏らは、8月に中間報告をし、さらに12月に報告会を開き、ほぼ汚染源を確定したと発表した。

汚染源は砂利採取跡地に捨てられた廃棄物

楡井さんらの報告は、当初私が予想した結果と一致しており、詳細を知りたいと資料を頂いてきた。それによれば、汚染源は複数あり、いずれも砂利を採取した凹地に埋められた廃棄物の人工地層中に存在すると推定している。1970年代から1980年代に埋められた汚染残土石または汚染ゴミである可能性が高いとしている。

この地区は、昔の河川敷で地中に良好な砂利がある。その砂利が骨材として採取された。砂利の値段は、土地代の10~100倍と言われている。その砂利が採掘されあとの凹地は、下の方は廃棄物で、やや上は残土で、表面は土で埋め戻され、宅地に造成された。

茨城大学報告書には、年代を追った航空写真があるが、それによるとA地区(A地区とB地区の井戸がヒ素で汚染されているが、その区別については後で述べる)では、1983年の写真では、1ヘクタールくらいの敷地の2/3ほどの大きな穴が見える。88年には完全に埋めも出されているのが分かる。

人工地層

2003年12月4日、「神栖町有機砒素地質汚染調査 第二次報告」(茨城大学広域水圏センター神栖町有機ヒ素地質汚染調査団)には、つぎのような記述がある。

「凹地に、ダンプ・カーなどで搬入され堆積した人工地層内には、ダンプ・カー1杯分の物質(時間的地層単元)が、下から上へと累々と重なっている。累重している地層(時間的地層単元)は、非汚染土石類や汚染土石層、又はゴミ層からなっている。」

まだ続く砂利採取

ここに、この問題が起きたばかりの4月に撮った写真を一枚掲載する(撮影者濱田弘さん)。

Kamisu_hiso


これは、最初に汚染が問題になったA地区の、その住居に隣接する場所の写真である。今でも、砂利の採取は続いており、汚染井戸のすぐ隣まできているが、茨城県は中止命令を出していない。

茨城県の責任

もし、砒素汚染が埋め戻しのための廃棄物に原因があるとすれば、責任はむしろ茨城県にあるのではないか?もちろん、そのもともとの原因は旧日本軍かもしれない(これも、もう一度疑ってみる必要がありそうだ)。しかし、この埋め戻しは茨城県が認めたことである。とすれば、茨城県の責任はかなり大きい。

にも拘わらず、最初から治療費の補助や補償金は、国(環境省)が全額支払うものというような雰囲気で話が進んでいる。どこかおかしい。汚染の原因によって支払い責任者は違う筈で、国の責任という前提で進めないでほしい。

すべては、原因が明らかになってからの筈である。確か、そういうことが最初の頃、環境省から出された文書に書いてあった。しかし、これほど時間が経つと、払ったことが既成事実になってしまうのではないか。

では、原因は(B地区の汚染)

汚染源は、人工地層(廃棄物)の中にある

まず、B地区の汚染原因からはじめよう。(茨城大学広域水圏センター神栖町有機ヒ素地質汚染調査団、「神栖町有機砒素地下水汚染(B地区)の汚染機構解明」 第1次報告、平成15年7月22日による。)

最初に身体異常を訴えた人々の居住区を、茨城県(環境省)はA地区とよび、そこから、西北西に1kmほどの地区にも井戸水のヒ素汚染があることがわかったが、この地区をB地区と呼んでいる。A地区の井戸水中ヒ素の最高濃度は4.5 mg/Lで、B地区のそれは0.43 mg/Lである。

茨城大学の調査は、B地区から始まった。そして、最終的な結果が、以下の図―1(報告書では図-5-2)と図-2(報告書では図-5-3)である。
ここで、B-4というような記号は井戸を表す。T.P.は東京湾標準高度である。

Zak2451


図-1

Zak2452


図-2

V-V’が地表面を表す。TPで -6m程度まで人工地層(ごみと表層の覆土)がのび、その下に自然地層がある。その境界を人自不整合(じんじふせいごう)とよぶ。汚染井戸のストレーナは-8mから-13mの間にある。最も汚染されているのがB-9で0.43 mg/L、最も西側のB-18の濃度は0.006 mg/Lと低い。
 
そして、茨城大学調査団は以下のように結論する。

1)B-9を中心に汚染がひろがっている様子が読める。このことは、B地区の汚染は、A地区の汚染源から汚染地下水が移動してきたものではなく、近傍に汚染源があることを示唆するものである。

2)汚染源は、人工地層内に遺棄された有機ヒ素が、下に引っ張られ、帯水層に漏出した。汚染源は砲弾とは限らない。

3)この地域の地下水流動は、B地区の周辺にある鹿島工業用水道のための地下水取水に支配されている。そのために、地下水は西方向に移動する(もっと複雑だが、簡単に書いておく。もし、鹿島工業用水による取水がなければ、地下水はちがった方向に移動する。この括弧内は、中西による追記)

4)ボーリング調査等で確認が必要
(人工地層中の汚染物が、水平方向に移動せず、垂直方向に落ちるのは、人工地層の透水性が悪いためである。中西追記)

A地区の汚染源

茨城大学広域水圏センター神栖町有機ヒ素地質汚染調査団、「神栖町有機砒素地質汚染調査」 第2次報告、平成15年12月4日による。)は、環境省の調査結果をもとに解析した。その結果は以下の通りである。

図-3(報告書では、図6)にA地区の汚染井戸(最高値4.5 mg/L)と、そのすぐ近傍に掘られたNo.26のボーリングした地層中の砒素の濃度を示す。この地点での人工地層は薄く、そこにも、その直ぐ下層にも汚染は存在しない。むしろ、深い部分に汚染がある。A地区井戸のストレーナは深度-13~15mで、丁度この汚染地層にかかる。

Zak2453


図-3


1)A地区の汚染源は、やはり人工地層中にあると思われるが、B地区と違い、その汚染源は東側のやや離れたところにある。

2)A地区の井戸のストレーナが、数m浅ければA地区の被害はなかったであろう。その代わり、広域汚染に発展した畏れがある。

3)工業用水の取水で、汚染物が下層の帯水層に絞り出され、広域にひろがっている。

4)15m以浅(TPで-10m程度か?中西追記)の井戸の汚染があれば、その汚染源は真上または周辺の人工地層内にあり、それより深い井戸の汚染の場合は、やや広域の汚染と考えていいだろう。

君津

楡井さんは、千葉県君津市での東芝コンポーネンツによるトリクロロエチレンによる汚染解明でも功績を挙げた。楡井さんらの研究で、ほぼ汚染源の推定ができた。これは、あの地域の事情を知る者には、実に理にかなった推定に思える。しかし、その推論を確かめるための調査が必要である。そのために、文科省の研究費を申請し、約2000万円が認められたという。これからが楽しみである。

環境省は何故?

環境省は、すでに調査費として20億円使ったという噂がある。あまりの大きな金額で、ちょっと信じられないが、多額の調査費を使ったことは確かである。A井戸の周辺だけでも、30カ所以上でボーリングをしている。それでも、原因を特定できずにいる。何故だろう?(暇ができたら書くことにしよう)

地元の人間はことのはじめから、砂利穴の埋め戻しによって原因物質が持ち込まれたものと見ているから、環境省のやり方を冷ややかに眺めていて「環境省はいつから建設省並みのトンカチ土建屋になったんだっぺ。あちこちむやみにボーリングしたって何にもめっかんめぇーよ。もっと智慧を絞れば的もしぼれっぺーのによ。」と醒めたものである。

(最近、茨城ネタが多い。生活時間の半分を茨城県つくば市で過ごしているためである。ただ、これらの問題が国レベルでの重要性をもっている。これだけ問題が発掘できるのなら、やはり、北九州市とか、東大阪市とかに住んでみる必要があるなと思ったりする。)

ここまで、ガッチリと原因を特定できているのだから、それなりに結論が出ているのだろうと思ったら、いまだにNHKニュースに報道されたレベルのことをやっているのだから、これはいったなんなのだ?と強く思う。

中西先生が、書かれている通り

環境省は、すでに調査費として20億円使ったという噂がある。
あまりの大きな金額で、ちょっと信じられないが、多額の調査費を使ったことは確かである。
A井戸の周辺だけでも、30カ所以上でボーリングをしている。
それでも、原因を特定できずにいる。

これでは、行政のメンツの問題や落とし所を探している、といった事なのかもしれない。

8月 30, 2010 at 11:49 午前 国内の政治・行政・司法 |

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