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2010.07.08

学者同士の名誉毀損事件ではあるが

読売新聞より「東北大、学長が教授を提訴…論文で全面対決

論文に不正があったという告発文を、個人のホームページ(HP)に掲載されて名誉を傷つけられたとして、東北大の井上明久学長らが、HPに掲載した同大の大村泉教授ら4人を相手取り、1650万円の損害賠償などを求める訴えを仙台地裁に起こした。

井上学長らは、謝罪広告の掲載やHP上の告発文の削除も求めている。

原告側の弁護士によると、大村教授らは昨年10~12月、井上学長と同大の横山嘉彦准教授が1996年と2007年に共同で執筆した金属ガラスに関する論文2本について、データの改ざんや捏造(ねつぞう)があったとする告発文をHPに掲載。
井上学長らの社会的評価を失墜させた、としている。

井上学長の研究を巡っては、大村教授らが09年10月、「07年の論文などに改ざんの疑いがある」と同大に告発したが、受理されなかった。

大村教授らはさらに、今年6月下旬にも井上学長が日本金属学会の論文賞を受賞した99年の論文にも捏造があるとして、同学会理事会に授賞取り消しを申し入れた。

大村教授は

「学術的な説明を求めただけなのに、名誉棄損とは理解に苦しむ。訴えには全面的に争う」
とし、不当提訴として反訴する方針だ。

(2010年7月8日10時24分 読売新聞)

う~ん、特に舞台がHPということで「ネット上の表現の自由問題」と捉えることができますが、その一方で、学者同士の意見の衝突が裁判沙汰になった例としては「中西裁判」を思い出します。

中西裁判では環境問題の専門家として互いに認める二人の学者の学術上の見解について、表現の仕方が名誉毀損に当たるのか?という事件でした。
わたしは、被告である中西先生の応援をしたのですが、学問上の発表について意見の相違は学問上の議論として戦うべきであろうという比較的単純な考え方でした。

今回の東北大学を舞台にした事件は、ちょっと不思議なことに、原告と被告の専門分野がまるで違っていることです。
記事にあるとおり、問題となった論文はどう見ても工学系の論文ですが、HPで告発した大村教授は、経済学の先生です。

要するに、大村教授のコメント

「学術的な説明を求めただけなのに、名誉棄損とは理解に苦しむ。訴えには全面的に争う」
とは専門分野の争いではなくて、研究者あるいは教育者としての、態度について「告発」した物らしいです。

「井上総長の研究不正疑惑の解消を要望する会(フォーラム)」というHPがあったようです。
http://sites.google.com/site/httpwwwforumtohoku/Home

これをざっと読んでも、「告発者」は自分の手の届かない研究内容について、他の研究者の結果などを引っぱっていますが、これでは「トンデモ本の手法」でしょう。
「「研究者の作法」に合致しない、というのが主張の根幹なのでしょうが、それは「告発」者があきらかにできる範囲のことだったのだろうか?

なぜ自らは詳細部分については、説明できないような範囲で「告発」をしたのか?という動機の問題になるが、普通に考えて学内の権力争いと見るのが普通だろう。

というわけで、これは「表現の自由」問題以前の争いなのかもしれない。

7月 8, 2010 at 12:32 午後 事件と裁判 |

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