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2010.06.23

浜名湖で、カッターが転覆、女子中学生1名が死亡・その6

読売新聞より「ボート転覆で死亡、西野さんの告別式しめやかに

浜松市の浜名湖で起きたボート転覆事故で亡くなった愛知県豊橋市立章南中学校1年の女子生徒(12)の告別式が22日、同市牧野町の葬儀場で営まれた。

女子中学生が所属していた同校吹奏楽部のメンバーや同級生、豊橋市の加藤正俊教育長、川勝平太静岡県知事ら約330人が参列し、女子中学生の遺影が飾られた祭壇に焼香した。

この日は女子中学生が小学生のときから習っていたピアノとバイオリンの先生、吹奏楽部のメンバーが遺影の前で「カノン」「それが大事」を演奏。
同級生らが女子中学生へのメッセージを書いた寄せ書きのカードを花と一緒にひつぎに入れて最後の別れを惜しんだ。

父親は「たくさんのみなさんに来ていただいて娘も喜んでいると思う」と涙をこらえてあいさつした。

川勝知事は参列後、

今回の事故は完全に不可抗力とは言えず、誠に残念。原因を徹底的に究明し、委託業者が自然体験学習の危機管理を徹底できるようなマニュアルをつくり、再発防止に取り組んでいきたい」
と述べた。

(2010年6月23日09時27分 読売新聞)

県知事が「不可抗力ではない」と言ってしまいましたね。
まあ、正しい判断だとは思いますが、県知事がこの時点で言って良いことだったのかは、いささか疑問があります。

なによりも、今回の事件全体を通じて感じるのは「なんで、そう先走るの?」でした。

  • 天候をじっくりと確認していない
  • 学校の先生、施設側の職員とのキチンとした打合せをしていない
  • 乗船名簿を作っていない。当然、乗船者の氏名確認をしていない。
  • カッターが動けなくなったときに、各方面に協力を要請する前に、所長が自分でモーターボートで「救助」に向かった。
  • えい航には、牽かれる側の操船技量が必要なのに、教師しか乗っていないカッターをえい航した。
  • 転覆後に、モーターボートに救助したのが、10人で残り10人は救助の手立て無く放置
  • 転覆しなかった、ボートをバラバラに岸に着けたために、点呼が出来なかった。
  • 点呼が、人数ではなくて、個人名で行うことを消防が行った。

これらの、一つ一つが「とりあえずやる」であったと思うのです。
別の言い方をすると「この程度でよいはずだ」という思い込みと言えるでしょう。
そして、それらが犠牲者をひっくり返ったボートに中に放置して、その結果死亡した、となります。

根本的な問題点は「とりあえず」とか「この程度でよい」といった先を考えない行動にあったはずです。

こういう観点で、県知事の「不可抗力ではない」発言が、今後どういう影響を及ぼすのか?を考えてみると、全く問題なしとは言いがたいでしょう。
それに

原因を徹底的に究明し、
委託業者が自然体験学習の危機管理を徹底できるようなマニュアルをつくり、
再発防止に取り組んでいきたい

というのは問題でしょう。

原因を徹底的に究明するのはよいとして、マニュアルが完成すれば、委託業者は危機管理ができるのか?というのは、まだ分からないでしょう。
そもそも、委託業者が危機管理できる綿密なマニュアルが出来るのかどうか分からないですし、カッター訓練を安全に出来るというところまで見直したら、カッター訓練は廃止、という結論になるかもしれないでしょう。
また、徹底的な危機管理マニュアルを作ってみたら、委託できる業者がなくなってしまった、ということもありうるでしょう。

県知事の発言は

  1. 不可抗力の事故ではない=対応が不十分であった
  2. だから、原因を徹底的に究明する。
  3. しかし、カッター訓練は委託業者で継続する
  4. 十分に危機管理が出来るマニュアルを作る
  5. これで事故の再発は防止できる

ということになりますが、全部が繋がっていないことは明らかで、それをまとまっているかのように述べるのは、先走りなのではないかと思います。

6月 23, 2010 at 11:03 午前 事故と社会 |

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コメント

>徹底的な危機管理マニュアルを作ってみたら、
ぶ厚いマニュアルを持ち歩いていないと危機管理が出来ないっ、てことになるでしょう。
安全管理に必要な、だれでもいつでも復唱できる程度の最低限の決まりだけ作るという発想のほうが重要と思います。
・乗船名簿作成
・乗船確認、員数確認
・各艇毎に必ず操船技術を持つ者が1名以上乗船し責任を持つ(船員法の船長格)
・サポート艇
・退船時の退船員数・氏名、残存員数の確認
・操船責任者の最後退船
程度で十分なのではと思いますがね。

今頃になって、救助側が員数を一人数え間違ったと報道されていますが、乗船員数を確実に救助側が共有できなければ、そんなことは十分あり得るでしょうね。この報道が元で、1名水死は全て救助側に責任があるなんて言う本末転倒な後始末をされては困ります。

投稿: 昭ちゃん | 2010/06/23 17:33:36

早くも責任のなすりつけが始まったようです。
たとえば、asahi.comに載っている記事です。
http://www.asahi.com/national/update/0623/TKY201006230188.html
酔うぞさんが早くから指摘なさってますように、今回(に限らず)の事故は、いろいろな要因が重なり合って発生してるものですから、それぞれの立場から、対策の検討を行って、未然に防ぐ体制を作ることが大切です。
> しかし、スタッフはその後、曳航訓練をしていなかった。
という、教育委員会での報告だけが一人歩きして、そのスタッフや指示する立場の人だけが業務上過失致死傷に問われても、何の解決にもなりません。

投稿: mimon | 2010/06/23 23:08:31

前述の記事ですが、
>ボート訓練の際、転覆時には曳航の必要があるとの申し送り
ですので、曳航するのはひっくり返った後の船でしょう。
ひっくり返った後でかつ救助が全て終わった後ならば、極論すればほかの舟にぶつけなければ、左右にゆれたり再度ひっくり返っても問題なしと考えます。
それと、人が乗ったままの船の曳航は安全性確保の点で次元が違うと思います。

投稿: みっちゃん | 2010/06/24 8:53:08

基本的には付き添いの教師の質、責任感の欠如だと思います。生徒の命を預っていることに対する意識が低いので、十分な準備がなされていないし、彼らの勉強不足が結果として、出航の判断を他人任せにして、最悪の結果を招いたのではないだろうか?亡くなったお子さんの当時の心情を考えると居た堪れなくなります。
教師はどう償うのか?怒りを感じる。
担当の教師から回答を貰いたい。

投稿: HM | 2010/06/24 10:17:04

>HM さん

中学校側が三ヶ日青年の家に今回の野外活動プログラムを「丸投げ」していたとすると、
>出航の判断を他人任せにして、最悪の結果を招いたのではないだろうか?

は、的外れな批判かも知れませんね。
「その5」で引用の中日新聞記事(http://www.chunichi.co.jp/article/national/news/CK2010062202000034.html)には、
>教員には船着き場内でこぎ方を教え、湖に出てからかじの取り方を説明したという。
とありますから、教員も「お客さん」扱いされていたようなものです。

私も30過ぎてから(浜名湖じゃないですが)カッター訓練(体験)をした経験があります。その時はちゃんとした指導者が同乗していたし、緊急事態に備えて漁船が伴走していました。

投稿: エディ | 2010/06/25 21:48:52

 一般的に、乗船したままの艇を曳航することは禁止項目には含まれませんが、曳航する側は勿論のことされる側にもそれ相当の操船技能は必要です。
 今回も、消防側が曳航した艇は無事に岸に着いているわけで、明らかに指定管理者(小学館)側の操船技能・知識が劣っていたこと、さらに曳航される側に操船技能のある者を乗船させなかったという、非常に重大なミスが有ったために、転覆・死亡という事態に陥ったわけです。
 朝日報道から出てきた、県と指定管理者(小学館)側の取り決めが「転覆時曳航の必要」では、『転覆したら乗員は見捨てて艇は引きずってでも持って帰る』という「人命は無視してでも県の資産は無くさない」というとても考えられない次元の取り決めだったと言うことです。
 結局、当初開設・運営していた県も、県から運営を任された指定管理者(小学館)も、来館者の安全などはハナから考えないで運営するという、単に金儲けの手段と言われても反論できないような体制だったから、この事故が起きたのです。

 指定管理者制度になって2年目のようですが、今までは運が良かったか、はたまた何か起きていても119番、110番しないで済んでいたので表に出てこなかった、と見るべきでしょうね。

 本来、落船した生徒を救助・励ましすべき2名の教員が、実は単に生徒と同じお客さん扱いで先に転覆艇から離れており、艇にしがみついたり取り残された生徒達がどんなに不安に駆られ恐怖におののいていたことでしょう。この恐怖を、引率責任者はもちろんのこと県も指定管理者(小学館)も想像する出来なかったとしたら、彼らには等しく自己の責任が有ると言っても良いでしょうね。

 当たり前ですが、艇が満員でも必ず1人は操船技能を持った乗員(小型船舶の船長資格)が各艇に乗り、緊急事態に備えるための動力船のサポート艇が少なくとも1艇随伴し、サポート艇の船長(当然こちらも小型船舶の船長資格)が、曳航技術と、海難者救助手順を熟知していれば、少なくとも死者は出なかったと思うのは私だけでしょうか。

投稿: 昭ちゃん | 2010/06/26 12:26:50

わたしは、責任問題は、段階を分けて考えるべきだと思います。

 0 企画の安全性、実施可能性などについての責任
   企画を買うという考え方をすると、学校(豊橋市教育委員会)
   の責任が大。

 1 出発前
   乗船名簿の不備、教員をカッターの操縦者に指定したこと
   施設側の責任が大。学校側が、問題にしなかった責任あり。

 2 転覆時の救難体制
   水上に出ている人たちには、何も出来ないから、陸上の責任。
   主に施設の責任。学校側で、陸上で連絡係などがいれば共同責任

 3 救難手続
   モーターボート一隻で、操縦不可能なカッターをえい航したこと
   転覆落水などに備えて、補助のボートなどを用意するべきこと
   消防、警察など外部の支援を得ること
   全て、所長の責任(正確には、指揮する責任を放棄して、救助に当たった)

 4 点呼漏れなど
   生徒初め、参加者の確実な名簿を持っているのは学校
   点呼の責任は、学校にある。

一番の問題は、これらの各段階全部を統括し責任を取る者がいなかったこと。

   

投稿: 酔うぞ | 2010/06/26 13:29:49

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