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2010.05.29

ロマンシング詐欺事件と被疑者叩きについて

サンケイ新聞より「ウイルスを使った架空請求摘発

2010.5.26 09:50

ファイル共有ソフト上でウイルスを仕掛けたゲームをダウンロードさせて「著作権を侵害した」とうそを言い、和解金名目で現金をだまし取っていたとして、警視庁ハイテク犯罪対策総合センターは詐欺容疑で、ネット関連会社「ロマンシング」社長の男(20)と会社員、O容疑者(27)を逮捕した。

同センターによると、コンピューターウイルスを使った詐欺事件の摘発は全国初で、ウイルス作成者の摘発は2例目。

同センターの調べによると、男らは昨年11月26~30日までの間、ファイル共有ソフト「シェア」上に実名のアダルトゲームを装ったウイルスを公開。

ダウンロードの際に品川区の20代の男性ら4人に入力させた個人情報などを、男らが開設した架空の著作権団体のサイトに掲載した上、ダウンロードが著作権法違反に当たることを警告。

同サイトに掲載された個人情報などの削除と合わせ、和解金名目でそれぞれ5800円計2万3400円を指定口座に振り込ませた疑いが持たれている。

2人は大筋で容疑を認めており、男は

「名前を公表すれば驚いて利用者が金を出すと思った」
と供述しているという。

同センターによると、昨年11月26日現在で、1456人がウイルス入りのファイルをダウンロードした形跡が残っていたという。

この事件そのものは報道された時点で知りましたが、ある意味では「どっちもどっち」的に捉えていました。
しかし、夏井高人先生のブログCyberlawのエントリー「ロマンシング詐欺首謀者に対する個人情報暴露が横行」を読んで、こんな事になっているのか、と驚きました。

下記の記事が出ている。

ロマンシング詐欺首謀者、ネットは個人情報暴露で“逆襲”
IT Media: 2010年05月27日
http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1005/27/news054.html

この事件の容疑者は逮捕されたばかりで,有罪判決を受けたわけではない。あくまでも机上の理論としては,全額を被害弁償することにより起訴猶予や執行猶予付きの判決もあり得る。

また,実刑の有罪判決となったとしても,被告人としての名誉権が奪われるわけではない。

かつて,ロス疑惑の亡三浦氏は,有罪判決となったあとも,新聞社を相手に,名誉毀損を原因とする多数の損害賠償請求訴訟を次々と提起し,その大半が勝訴で終わっている。つまり,有罪と確定した者であっても名誉権はあるのであり,その侵害をする者は,マスコミといえども巨額の賠償責任を負わされることがあるということになる。

どういうわけかマスコミはこの事実をあまり報道しようとしないし,自己批判をしたとの報道に接したこともないからあまり知られていないかもしれない。しかも,上記の記事においても,むしろ個人情報暴露を煽るかのような論調のようにも読めるから,そのセンスを疑いたくなる。

ところで,マスコミのように強力な組織と潤沢な資金があって有能な弁護士を雇うことができるところならまだしも,一般人を被告として名誉毀損を原因とする損害賠償請求訴訟を提起された場合,弁護士を雇うことは難しいことが多いだろう。だから,まず間違いなく敗訴し,賠償を命ずる判決を受けることになってしまうだろう。このことをきちんと理解しておく必要がある。マスコミは潤沢な資金をつぎ込み,有能な弁護士を多数雇って亡三浦氏が提起した損害賠償請求訴訟において徹底的に防戦したのにもかかわらず,ほぼ全面的に敗訴しているのだ。

ちなみに,匿名で書き込みをした場合でも,その行為が名誉毀損罪を構成する場合には,告訴することによって警察が強制捜査をしてくれるから,匿名がひっぱがされ,書き込みをした者を明確に特定することができる場合がある。発信者情報開示請求がうまくいかなくても,被害者として告訴すれば良いわけだ。だから,匿名の書き込みだから大丈夫と楽観するのは馬鹿だ。

ネット上の電子掲示板でいい気になって書き込みをするのは良いが,あとになって損害賠償責任を負わされるかもしれないというリスクをよく考えるべきだ。

なお,誤解のないように言っておくと,私は,このようなロマンシング詐欺のような違法行為を許す気は全くない。その犯人は,厳罰に処するべきだと考えている。しかし,その加害者がどういう人物であるかについてはあまり興味がないし,ましてその加害者の経歴や私生活については全く興味がない。刑事判決における量刑は,基本的に法益侵害の大小・程度・性質または法益侵害の可能性の大小・程度などを重視すべきだと考えている。

夏井先生のエントリーを読んだ時点では、IT Media の報道を批判しているのか、報道している内容だと思われるロマンシング事件首謀者の個人情報をネット上に暴露していることに向かっているのか、よく分かりませんでした。
そこで、元の報道である ZAKZAK の記事「ロマンシング詐欺首謀者、個人情報暴露され“返り討ち”に」を読みましたが、返り討ちということで良いとは思えない内容です。
つまり、夏井先生は ZAKZAK に報道された、返り討ちにしているネットワーカーの行為が、名誉毀損に当たる可能性が大である、という観点からのご意見をエントリーされたのです。

2010.05.27

ファイル共有ソフト上にウイルスを仕込んだフォルダを配信し、ダウンロードしたユーザーの個人情報を「著作権法違反者」としてインターネット上に公開。削除に際し「和解金」名目で金を振り込ませていた男らが、詐欺容疑で警視庁に逮捕された。男らの行為を苦々しく見ていたネットユーザーたちは逮捕を機に猛然と“逆襲”。男らの個人情報を大量にネット上にさらし始めている。

《ざまぁwww》《最高にかっこ悪いな》《流出したやつも逮捕、ウイルス作ったやつも逮捕、万事解決》《大勝利》

今回の逮捕の一報直後から、これまで容疑者らに煮え湯を飲まされてきた被害者や、これまでの容疑者らの行為をつぶさに観察していたネットユーザーらは一斉に歓喜した。

警視庁ハイテク犯罪対策総合センターによると、逮捕されたネット関連会社「ロマンシング」社長の男(20)=事件当時未成年=とプログラマーのO容疑者(27)は昨年11月ごろ、個人情報暴露ウイルスを仕込んだフォルダをアダルトゲームに偽装してファイル共有ソフト上に配信。これをダウンロードして感染した数人の個人情報をネット上に公開し、著作権法違反を警告したうえで、「1500円で情報を削除する」と持ちかけ、現金計数万円をだまし取った疑い。コンピューターウイルスを使った詐欺の摘発は初という。

社長は「金がほしかった」と容疑を認めているが、O容疑者は自身の名を冠したウイルス「Kenzo」の作成を認めつつ、詐欺容疑についてはあいまいな供述をしている。

たしかに、ファイル共有ソフトのユーザーは映画や音楽などを違法にダウンロードして著作権法に抵触している可能性がきわめて高い。

だが、その弱みにつけ込む行為はさらに悪質だ。

実際、O容疑者らの犯行で人生を狂わされた被害者が多数いるとみられる。

昨年3月に詐欺に引っかかった九州地方の中学校校長は、自身や家族の個人情報から学校関係書類、アダルト動画の収集歴まですべて暴露され、学校や教育委員会に電話が殺到。教委が処分に乗り出す事態になった。

因果応報というべきか、今回の逮捕を受け、ネット上では被害者や悪行を知るネットユーザーが大逆襲。

犯行当時未成年だった社長の個人名はもとより、O容疑者の経歴から音楽系の活動歴、本人や妹の幼少期の写真、さらには妹の結納日程まで公開。

情報は今後ますます増えていくとみられる。

夕刊フジでは昨年11月と今年3月、2人の犯行が「ロマンシング詐欺」と呼ばれ、被害が相次いでいることを指摘した。

ロマンシング社は当初、振り込みを促すメールを送りつけるだけだったが、最近ではインチキ著作権団体「ICO国際著作権機構」を名乗り、情報削除料も1500円から5800円に値上げするなど悪質さを増していた。

この報道で例として採りあげられた中学校校長のPCデータの暴露については、ZAKZAK に「長崎ロリコン校長もハマった!「ロマンシング詐欺」って何?」がありました。

2010.03.23

長崎市立江平中学校の男性校長(51)の自宅パソコンから、全校生徒や卒業生計約200人分の個人情報が、インターネット上に流出している可能性があることが分かった。

流出情報には、違法にダウンロードした幼女や女子中学生の性的画像も大量に含まれていた。

きっかけはまたもファイル交換ソフトだが、今回は新手のネット詐欺も絡んでいるという。

校長のパソコンは家族共有で、生徒の個人情報や指導内容、教諭の勤務査定に加え、妻や大学生と社会人の2人の娘のフォルダも含まれていた。

さらに、ファイル交換ソフト「Share(シェア)」や「Winny(ウイニー)」で違法ダウンロードした多数のロリコン動画も同時に流出した。

ただ、今回の流出はファイル交換ソフトを狙う暴露ウイルスの仕業ではなく、ユーザーの間で「ロマンシング詐欺」と呼ばれるネット詐欺の延長だという。

ファイル交換ソフトのヘビーユーザーが解説する。

「ロマンシング詐欺の一味は、ファイル交換ソフトのネットワーク上にウイルスを仕込んだフォルダを置き、それをダウンロードした者に個人情報を入力させます。

その入力が完了した瞬間、画面は『ICO 国際著作権機構』という架空の団体のホームページに移り、今回のダウンロードが著作権に違反することを警告する画面が表示されるのです。

そのうえで和解金の支払いを要求し、集金代行会社を名乗る『株式会社ロマンシング』の口座が表れます」

ニセ団体であるICOの画面には、直前に入力した個人情報や、パソコンで管理しているすべてのデータなどが表示され、これは支払いが確認されるまで削除されない。

そのため、被害者は実際に“和解金”を支払う可能性が高い。校長の流出情報も、ICOのページにすべて列挙されていた。

「ウイルスが仕込まれているのはエロ系タイトルのフォルダとはかぎらない。今回の校長は、セキュリティーソフトのつもりでダウンロードしてワナにかかってしまったようです。ユーザーには、自分が違法ダウンロードをしているという負い目があるため、犯行は表沙汰になりにくいのです」
(前出のユーザー)

夕刊フジは昨年11月、「ロマンシング」という名称を伏せたうえで詐欺の実態を報じたが、当時はICOなどというインチキ団体のホームページは存在せず、1件あたりの要求額も1500円と少額だった。

だが今回は、要求額が5800円にアップ。手口は巧妙かつ悪質化している。

夕刊フジは前回同様、ロマンシング社に電話取材を申し込んだが、やはり回答は得られなかった。

なんというか、まるで決闘罪の適用であるかのように、両方ともアウト、ということでしょう。

夏井先生の指摘は、正に調子に乗って、犯罪者などをネット上で叩く記事を書くと、それは名誉毀損に当たる可能性が極めて高い、ということを注意喚起したということなのでしょうが、それ以前に「なんでこんな情けない世の中になったのだ?」という感が強くします。

5月 29, 2010 at 06:17 午後 事件と裁判 |

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