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2010.05.26

凜の会事件・検察の証拠ほとんど採用されず

毎日新聞より「不正:元局長、無罪の公算大 部下の供述不採用

2010年5月26日 19時29分 更新:5月26日 21時45分

障害者団体への郵便料金割引制度を悪用した郵便不正事件で、虚偽有印公文書作成・同行使罪に問われた厚生労働省元局長(54)の第20回公判が26日、大阪地裁であった。

横田信之裁判長は、元局長の事件への関与を認めた厚労省元係長(40)の捜査段階の供述調書15通すべてを「(大阪地検特捜部の)取り調べに問題がある」として証拠採用せず、捜査を批判した。

元係長は公判では元局長の関与を否定しており、捜査段階の供述調書は元局長の有罪を立証する上で重要だった。証拠採用されず、元局長は無罪判決を言い渡される公算が大きくなった。

この事件では、実体のない障害者団体「凜(りん)の会」に郵便料金割引制度の適用を認める偽証明書を作成したとして、4人が起訴された。

横田裁判長は

「証明書の作成は自分1人でやったと伝えたのに、元局長から指示された内容の調書を検事がでっち上げた」
とする元係長の公判証言について、
「(元係長が拘置中に記載していた)被疑者ノートの内容は公判証言に合致する。検事は元局長関与のストーリーをあらかじめ抱いていた」
と指摘。さらに、元係長が自身の犯行を認めている点にも触れ、
「虚偽の公判証言をする理由が見当たらない」
と公判証言が信用できると判断した。

取り調べ段階の供述調書に特信性(高度な信用性)を認めず、証拠採用を却下した。

また元係長のほか、横田裁判長が先月、一部無罪の判決(検察側が控訴)を言い渡した「凜の会」代表(74)ら2人の調書についても

「検察官による誘導があった」
などとして証拠採用を却下した。

検察側は、元係長や厚労省元部長(58)ら8証人の捜査段階の検察官調書計43通について、

「公判証言と内容が食い違うが、調書に特信性がある」
とし、証拠として採用するよう地裁に請求していた。

横田裁判長は、部長ら計5人の調書9通については
「証拠能力までは否定できない」
として証拠採用した。

元局長の公判は6月22日に検察側が論告求刑をし、同29日に弁護側が最終弁論をして結審する予定。判決は9月10日前後になる見通し。【日野行介】

【ことば】郵便不正・偽証明書事件

実体のない「凜の会」を障害者団体と認める厚生労働省の証明書を偽造したとして、元局長・元同省局長ら4人が大阪地検特捜部に起訴された。

特捜部は「証明書の偽造は元局長に指示された」とする同省元係長、元係長勉の捜査段階の供述を立証の柱に据えたが、元係長は裁判で

「自分1人でやった」
と主張を一変。
凜の会代表も捜査段階では
「元局長に証明書を依頼した」
と供述し、公判では
「元局長に依頼はしていない」
と翻した。

落合洋司弁護士が、「[刑事事件]郵便不正 村木被告無罪の公算大 元部下の供述調書不採用」とエントリーしていて、検察(特捜部)を強く批判しています。

検察庁としては、立証の主要な柱が軒並み倒壊してしまったようなもので、論告すら書けない可能性もあって、極めて深刻な事態と言っても過言ではないでしょう。

このような事態を招いてしまった捜査の在り方について、猛省の必要があることは明らかです。

従来の検察庁における独自捜査では、

  1. 警察よりもはるかに頭の良い、経験も備えた主任検事等(ロッキード事件における吉永祐介氏のような人)が、内偵に基づき実態に即したストーリーを作る
  2. 低調な弁護活動を遥かに凌駕する圧倒的な捜査力が集中的に投入され、そのような捜査力に屈服し「しゃべる」被疑者が確保される
  3. 裁判所が、検察捜査を信頼してくれ、多少の無理には目をつぶってくれる

といった好条件に恵まれ、それなりの成果を挙げてきたと言ってよいでしょう。

しかし、今や、1のストーリー作りが、かつての完成度が8、9割とすれば、3、4割程度がせいぜいというレベルにまで落ち込んきている上(その背景には世の中が複雑になってストーリーが追いつかないことや、うまくストーリーが作れる熟達者がいなくなったということがあるでしょう)、2についても、弁護活動が、熾烈化、活発化し、その一方でかつてよりも捜査力が低下する中、被疑者側としても安易にぺらぺらと自白しなくなって、「しゃべる」被疑者が確保しにくくなっているということもあると思います。

3についても、裁判所の事実認定が厳格化し、かつてのように、検察庁にはおまけしてくれたり目をつぶってくれるといった検察寄りの裁判官が、まだ残ってはいるものの徐々に減ってきているということも言えると思います。

検察の独自捜査というものを根本的、抜本的に見直して行かないと、今後、ますます、無理な捜査により墓穴を掘り無残な結果に終わり国民の信頼をますます失墜させて行く、ということになりかねない(と言うか、確実にそうなって行く)と思います。

「論告すら書けない」とはすごい話ですが、素人目にも「これでいったい何を論告できるというのか?」と思います。

被告自身は、当然有罪に繋がるような発言は無いでしょうし、捜査段階での関係者の供述が証拠採用されないとすると、実際問題として有罪を論告するための根拠がない、というすごいことになりそうです。

いくら何でも、これはひどすぎるでしょう。
実態は典型的な人質司法であったわけで、そのあげくに事実上論告できないとなった場合、いったいどういう事になるのか?

検察は、「後半での証言より、捜査段階の調書の方が信頼性がある」と主張したのですが、それ自体を被疑者ノートでひっくり返されているのですから、どうしようもない。

これでは、控訴審に持ちこむことも難しいのではないのか?
どこをどうやるとこういうことになるのか、検察に大疑惑が発生してしまった、というべきでしょう。

5月 26, 2010 at 10:36 午後 事件と裁判 |

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