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2010.05.11

パロマ湯沸かし器事故で有罪判決

毎日新聞より「パロマ中毒事故:元社長らに有罪判決 東京地裁

2010年5月11日 13時38分 更新:5月11日 13時54分

パロマ工業(名古屋市)製湯沸かし器による一酸化炭素(CO)中毒事故で、東京地裁(半田靖史裁判長)は11日、業務上過失致死傷罪に問われた元社長(72)に禁固1年6月・執行猶予3年(求刑・禁固2年)、同社元品質管理部長(60)に禁固1年・執行猶予3年(求刑・禁固1年6月)の判決を言い渡した。

販売後の改造による事故でメーカー側の責任が問われていたが、トップに厳しい判断が示された。

検察側は、問題の湯沸かし器について、不完全燃焼を防ぐ安全装置が故障しやすく、装置が動かないままでも湯沸かし器を使えるようにする不正改造が横行していたと指摘。

「元社長は社長として安全確保を含む業務を統括し、元品質管理部長は事故対応の責任者だったが、事故を認識しながら抜本的な対策を取らずに放置した」
と主張した。

これに対し弁護側は

  1. パロマは修理業者を指揮監督する立場になかった
  2. 修理業者に不正改造の禁止を連絡しており、事故はなくなったと思っていた
  3. 全国的な防止策を取ることができたのは経済産業省だけだった
などと無罪を主張していた。

検察側は、元社長らが不正改造された湯沸かし器の事故で85~01年に計14人が死亡していたことを認識しながら、回収などの安全対策を怠り、05年11月に東京都港区のマンションで大学生(当時18歳)をCO中毒で死亡させ、兄(29)に重傷を負わせたとして起訴していた。

マンションの湯沸かし器を不正改造したパロマ系列の販売店員は07年8月に病死している。

一連の事故は全国で28件あり、死者は21人に上る。96年に起きた別の事故の遺族の要望で再捜査した警視庁が経産省に連絡し、同省が06年7月に事故情報を公表して初めて問題が表面化した。【伊藤直孝】

メーカーが出荷した製品を市場で不正改造したものについて、メーカー側に責任があるのか?という正面衝突型の裁判ですね。

NHKニュースより「パロマ元社長に猶予付き有罪

ガス湯沸かし器による一酸化炭素中毒で大学生が死亡した事故で、業務上過失致死傷の罪に問われたパロマ工業の元社長に、東京地方裁判所は「事故が起きることは予測できたのに、対策をとらず漫然と放置し続けた」と指摘し、執行猶予の付いた禁固1年6か月を言い渡しました。

この事故は、平成17年に、東京・港区の大学生(当時18歳)がパロマ工業のガス瞬間湯沸かし器による一酸化炭素中毒で死亡し、兄が重傷を負ったものです。

パロマ工業の社長だった元社長(72)は、修理業者によって安全装置が不正に改造されて死者が出ていたのに対策をとらなかったとして、業務上過失致死傷の罪に問われました。

検察が禁固2年を求刑したのに対して、元社長側は「製品自体には欠陥はなく、パロマには点検や回収を行う義務はなかった」と無罪を主張していました。

判決で、東京地方裁判所の半田靖史裁判長は

「昭和60年以降、不正改造が原因の事故が13件起きて15人が死亡し、このうち12件の事故についてパロマは情報を入手し、独自に点検や回収を行うことができたのに、対策をとらず漫然と放置し続けた」
と指摘し、元社長に禁固1年6か月、執行猶予3年を言い渡しました。

また、いっしょに起訴された元品質管理部長(60)には禁固1年、執行猶予3年が言い渡されました。

判決は、製品そのものの欠陥がなくても修理業者の不正改造によって起きた事故をめぐって、メーカートップの刑事責任を認めるものとなりました。

結局、この判決では「実態として事故が起きていることを知っているのだから、何とかしろ」という考え方だと見えます。

対して、弁護側の主張が「指揮監督する立場になかった」といった、外形的条件を重視したものですが、これは悪徳商法裁判で被害者側が勝訴した時の型式にそっくりですね。

おそらくは、改修漏れであって、不正改造した業者が系列販売店ではない、といったことであれば、「偶然の事故」であったとされたかと思います。

簡単に言えば、「安全の確保が不十分であった。その理由についてメーカー側が納得出来る説明がなかった」ということかと感じます。

なによりも、不正改造があった場合に、どう対策するのか?という問いかけに対して、「不正改造の禁止を通達していた」だけでは、弁明としては弱すぎるでしょう。

それゆえ「回収の義務がなかった」という主張になったわけですが、普通に考えて、不正改造の事実を知ったら、それは回収し不正回収した業者に、ペナルティーを課すべきだったでしょう。
そうでなければ、結果として不正改造機が市場に増えてしまう。

全体として、メーカーの主張は矛盾があった、ということだったのだと思います。

5月 11, 2010 at 06:41 午後 もの作り, 事件と裁判 |

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コメント

私は、この有罪判決は、行きすぎだと感じています。

確かに、パロマ工業が無過失だったとは、いえませんから、会社として民事的な責任を負って、損害賠償や製品改修を行うことは、まだ理由があると思います。
また、無改造でも安全装置が作動しないような欠陥があれば、速やかにリコールするべきだったでしょう。それを怠っていたのなら、管理者として、業務上の過失があると言わざるを得ません。(製造当時には、PL法もまだ施行されていませんでしたが。)

しかし、その社長が自分で改造をしたわけでもないのに、個人に対する刑事責任を問うのは、法の精神にかなっているのでしょうか。私も、以前、同業のメーカで設計などをしていましたから、存じていますが、民生家庭用品というのは、いったん現地に設置されてしまうと、メーカでは、なかなか手出しできないのです。それどころか、どこに設置されているのかすら、調査してもわからないのが実情です。事故が発生して、初めて設置されていたのかが判明します。
1985年にリコールした三洋電機の石油ファンヒータの場合、テレビCMを流し続けて、改修を進めましたが、無理がたたって、その後の事業撤退に結びつきました。サンヨーは、他にも事業がありますから、会社自体は存続していますが、パロマがガス機器から撤退するということは、会社が解散する事を意味します。
現地で改造されたのが原因の事故に対して、100億円単位の出費をして、社員を路頭に迷わせるのを躊躇したことは、刑事責任を問うほどの罪ではないと思うのです。

今後も、このような判決が続くようであれば、日本では、物を売る事をあきらめて、海外に活路を見出すか、日本国内販売の高いリスクと引き換えに、暴利を要求するしかないようにも思えてきました。
近年、ISO 12100シリーズに対応した安全規格として、JIS B9700シリーズが充実してきました。その規格の考えかたでは、しっかりリスクアセスメントを実施して、保護方策を講じれば、残留リスクは許容されることになります。ところが、日本では、この考えかたをなかなか受け入れてもらえていないのが実情です。(メーカ側もユーザのワガママを安全よりも優先する面がありますから、そちらの問題でもあります。)

投稿: mimon | 2010/05/11 23:46:35

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