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2010.04.20

国交省・高速道路建設計画でシミュレーションをごまかした?

東京新聞より「高速建設 評価“水増し” 国交省の便益計算 本紙試算

高速道路建設の是非を判断する最重要な指標をめぐり、国土交通省が、建設による影響をほとんど受けない遠方の道路まで「その他道路」として効果の評価対象に含め、建設によって住民らが受ける便益を大幅に水増ししていた可能性の高いことが十九日、本紙の調査で分かった。

国交省はこの三年間に八十八件の高速道路事業を「十分な便益あり」と判定したが、本紙が遠方の道路を外して再計算すると、二十三件にまで減った。

無駄な道路を造らないため、新道建設による走行時間の短縮や交通事故減少などのメリットを金銭に換算。

その便益額(B)を建設費用(C)で割った数(B/C(ビーバイシー))が1以上にならないと、建設は認められない決まりになっている。

本紙はこのルールが適正に実施されているか、専門家の助言を得て検証した。

その結果、便益額の大半を占める走行時間の短縮効果を計算する際、国交省は新道と直接関係のない「その他道路」を恣意(しい)的に設定。

平均すると効果の影響が出やすい「主な周辺道路」に比べ距離にして百倍近くも計算に入れていた。

また道路の合計(延長)で八十八件のうち二十七件までが四十万三千百六十キロでそろっているが、その根拠は非公開にしている。

遠方の道路でも、理論上はごくわずかな時間短縮効果が出る。計算対象を全国の道路にまで広げることで、便益額をかき集めた形。

こうした実態を伴わない効果は、本来は評価対象外とされ、「その他道路」を外して計算すると、時間短縮による便益額は大幅に減り、事故減少などの他の便益を同省の計算通りに加えても、B/Cが1に満たないケースが七割以上に上った。

国道の一部も検証したが、「その他道路」は数千キロまでしか対象にしておらず、再計算でも1を下回る例はなかった。

<国土交通省高速道路課の話>

評価する道路の合計が約四十万キロでそろうのは全国の道路を対象とするモデルで計算しているため。道路が完成した後も、遠方のため結果的に効果が出ない路線は計算上も数値に表れない。距離が長くても、便益の過大評価にならない。

(東京新聞)

ヘンに分かりにくい記事ですが、東京新聞の計算では、国交省が「便益が建設費を上回る」とした88件の高速道路事業計画が、実は単に計算上だけでも23件しかなかった。
88件をそのまま建設すると、建設費を取り戻せない。
ということですね。

これは、計算式に入れる情報が適正ではない、という観点からの指摘でしょうから、実際には社会構造の変化などで、もっと外れるという可能性もあるわけでしょう。

国交省はもっと詳しい報告をするべきです。

4月 20, 2010 at 12:24 午後 国内の政治・行政・司法 |

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コメント

>遠方の道路でも、理論上はごくわずかな時間短縮効果が出る。計算対象を全国の道路にまで広げることで、便益額をかき集めた形。

これのどこが問題なのでしょうかね?
わずかな効果を大きな効果とねつ造したわけでもなく、そのまま積み上げただけだし、効果が無いのに、有るとねつ造したわけでもなく、遠くでも効果が出るから効果に入れているだけでしょう。使っている理論が実態に合わない間違ったものであるということなのでしょうか?

投稿: zorori | 2010/04/21 22:58:49

たぶん、計算が1以上つまり採算が合うとする計算の根拠の解釈に問題あり、ということなのだと思います。

「北京で蝶が羽ばたくと、ニューヨークで嵐が起こる」といった、普通では理解し難いシミュレーション結果を出すのはまずいだろう、というほどの意味ではないでしょうか?

まあ、一般化する議論なのか、東京新聞だけがケンカを売ったと見るのかが、興味の中心ですね。

投稿: 酔うぞ | 2010/04/21 23:14:34

スパコンを使って、バタフライ効果を扱うような大層なシミュレーションとは思えないのですけどね。
工事箇所から,遠くなれば効果も小さくなるという単純なことかと思います。

国交省の「費用対便益分析マニュアル(案)」
http://www.mlit.go.jp/pubcom/03/pubcom20/pubcom20-2.pdf
の,計算する道路網の範囲についての次の記述からもそれは伺われます。

「ただし、道路網を大きくすると周辺部での交通量の変化が小さくなる一方で分析作業量が大きくなるため、誤差の範囲程度と考えられる部分については、道路網の範囲に含めない。」

遠方は効果も小さいから,無視してもよいという当たり前のことですね。小規模な地方路線の工事ではそれなりに小さな範囲で計算しているんでしょう。片や高速道路ともなると,遠方でもそれなりの効果があるので,全国を分析範囲としているという高速道路課の回答なのでしょう。
しかし、国交省のシミュレーション手法は、遠方の効果を過大評価する間違ったものである、という批判かなと思い、東京新聞の記事を読み直して見ると,なんと次のように書いてあったではないですか。

>国交省はこの三年間に八十八件の高速道路事業を「十分な便益あり」と判定したが、本紙が遠方の道路を外して再計算すると、二十三件にまで減った。

え,これって,国交省の手法を使って、十分に効果のある遠方の道路を外しただけのことじゃないの。逆に分析範囲を決めた根拠を東京新聞に聞きたいですね。
国交省の手法が正しいなら,効果のある遠方を除く東京新聞の範囲の決め方は間違っています。国交省の手法が間違いなら,同じ手法を使っている東京新聞の計算も間違っています。

投稿: zorori | 2010/04/22 20:43:39

> これのどこが問題なのでしょうかね?

この問いに対する答えになりそうな記事を (私のブログに) アップしましたので、よろしければご覧ください。

「公共事業におけるB/C分析、その問題点と改善策」
http://blog.goo.ne.jp/memo26/e/a8d568fbceb2efa4e00b937e812413fb

投稿: memo26 | 2010/04/23 14:41:45

memo26さん、情報ありがとうございます。
読ましていただきましたが,東京新聞の論点とは別の視点での考察ですね。
私の疑問とは無関係ですが、せっかくですので,コメントさせていただきます。

> 第一点は、「新たな公共投資」に限っていることである。

改修工事も対象です。事実誤認です。

>第二点は、B/C分析をやる場合、「事後的」に見た数字ではなく、「事前」の見積もりによって計算されていることである。

事業を行う前に採択するかしないかを判断するのに、事後的な数字を使えとは酷いですね。タイムマシンでも使えというのでしょうか?不可能な提案です。
なお,再評価といって,事後的な検証も行っています。長期間の継続工事では,途中で工事完了部分の実績を評価して,工事継続するか中止するか決めることになっています。

>プロジェクト採択後に環境が変化して、コストが当初の見積もりより多くかかるという事態は常に起き得る。
 だから、実際にはベネフィットは五割減、コストは五割増とすれば、B/C分析の基準を、一ではなく、三ぐらいに設定するのが合理的だ。

これ、考え方がひっくり返っています。ベネフィットを5割減、コストを5割増にして、B/Cの基準は1以上にするのが筋でしょう。B/Cの意味からして。
見積もりが変だから、それに合わせて基準も変えるというますます変で訳のわからない方向にするのではなくて、見積もりを正確にしろというべきです。
相手は信用できない嘘つきだから、こっちもウソで対抗すべきだ、と言っているみたいですね。

高橋洋一氏という人の考え方はめちゃくちゃだと思いました。

投稿: zorori | 2010/04/23 22:36:30

もう少し考えてみたら、東京新聞と高橋洋一氏の主張には共通点がありました。

東京新聞にしても、高橋洋一氏にしても、国交省の見積もり(計算手法)がおかしいと主張するのなら、理解出来るんですよ。正しい見積もりは、こうすべきだと提案すればよいのです。

ところが、両者ともに、おかしいと主張する計算手法はそのまま採用して、事業採択にならないようにするためには、どのような操作をすればよいかということを考えているだけです。これは、事業採択させないという結論ありきであり、国交省が事業採択という結論ありきなのとどっこいどっこいです。いや、国交省が結論ありきというのは私の推測にしかすぎませんが。

投稿: zorori | 2010/04/24 7:41:45

シミュレーションには高校ぐらいから興味津々でありまして(アイザックアシモフ「銀河帝国の衰亡」を読んで)、その後「成長の限界」を読んで、コンピュータシミュレーションが可能なソフトウェア(当時はダイナモ)があることを知りました。

その後、PC用ソフトの stella を購入して、今も使えます。

何年か前に、日本の人口減少についてのシミュレーションを自分で作ってみたのですが、計算の論理が正しいということと、パラメーターの決定の間には、シミュレーションを作る人の判断が入ります。

その結果は、色々に変化するので、パラメーターの設定について、説明しないと結果の説明にならないのですね。

今回の話は、この点については典型的な誤導と言えるのかもしれません。
しかし、こういう話は現状では、学術的研究発表の分野ですよね。

かたや、国交省、かたや新聞、では「決定的」という前提が分からない、罵りあいのようなことだとも言えそうです。

投稿: 酔うぞ | 2010/04/24 11:34:40

> 改修工事も対象です。事実誤認です。

とすると…、著者の経歴 ( 元大蔵官僚、国交省国土計画局特別調整課長などを歴任 ) から考えて、著者が「改修工事も対象である」ことを知らないはずはなく…。どうなっているのでしょうね?

> 事業を行う前に採択するかしないかを判断するのに、事後的な数字を使えとは酷いですね。タイムマシンでも使えというのでしょうか?不可能な提案です。

これはその通りだと思います。ですので、私は、計算に用いるパラメータ値を「事後的に」設定していない(完成後を想定して評価していない)、ということなのかなあ? と、思ったりしていました。

> なお,再評価といって,事後的な検証も行っています。長期間の継続工事では,途中で工事完了部分の実績を評価して,工事継続するか中止するか決めることになっています。

ありがとうございます。勉強になります。


私が思いますに、(1) 見積もりを正確にする方法と、(2) 見積もりが甘くなりがちであることを見越して、基準を厳しくする方法と、2 通りの方法があると思います。(1) も (2) も、適切な事業のみを採択しようとしていることには変わりなく、私としては、どちらでもよい ( 併用してもよい ) と考えます。

投稿: memo26 | 2010/04/24 19:11:07

>私が思いますに、(1) 見積もりを正確にする方法と、(2) 見積もりが甘くなりがちであることを見越して、基準を厳しくする方法と、2 通りの方法があると思います。(1) も (2) も、適切な事業のみを採択しようとしていることには変わりなく、私としては、どちらでもよい ( 併用してもよい ) と考えます。

B/Cの基準を3などのように1以上にするというのは、いわゆる安全率の考え方に近いですね。それには、一つの前提があります。

強度計算では、安全にしすぎればコストが増えるものの、安全上の問題は有りません。しかし、強度不足の場合は危険ですから、安全率を考えます。計算間違いで危険という判断をするのはやむを得ないが、計算間違いで安全と判断するのは避けなければならないという非対称の考え方です。

同様に、BやCも誤差が有りますので、「間違って」事業が採択される危険が有ると考えて、安全率3とするわけです。間違って事業が採択されないのは問題ないと考えていることにもなります。

つまり、間違って事業が採択されるのは強度不足同様に問題があり、間違って事業が採択されないのは強度が十分にあることに対応していると考えているのですから、事業を行うことは、どちらかと言えば悪いことであるという前提なのです。

しかし、B/Cにはそのような非対称性は有りません。単純に利益の出る方を選ぶというだけです。B/C>1ならば、事業を行う方が得であり、B/C<1なら事業をしない方が得です。事業を行うことが経済的に良いことなのか、悪いことなのかをB/Cで評価するのであって、最初からどちらかが悪いことと決まっているのではないですから。

ただ、立場によって、先入観があります。国交省の役人なら事業を行うことが良いことであると考えがちですし、財務官僚は事業を査定して支出を抑えることが良いことであると考えがちです。B/CのBは国民にとってのBであり、財務省の税収にはなりませんが、Cの方は予算から支出しますから、どんな場合でも、B/C=0という感覚になりがちでしょう。。

投稿: zorori | 2010/04/24 22:50:43

> ただ、立場によって、先入観があります。国交省の役人なら事業を行うことが良いことであると考えがちですし、財務官僚は事業を査定して支出を抑えることが良いことであると考えがちです。B/CのBは国民にとってのBであり、財務省の税収にはなりませんが、Cの方は予算から支出しますから、どんな場合でも、B/C=0という感覚になりがちでしょう。。

高橋洋一氏の主張は、(国交省の役人なら事業を行うことが良いことであると考えがちなので) 国交省はB/Cを大き目に見積もる傾向がある。したがって、事業採択の基準となるB/C値は (たとえば) 3 以上でなければならない、といった趣旨ではないかと思います。

大き目に見積もられる傾向があるのであれば、(傾向的な偏りを想定していない)安全率の場合とは、すこし、状況が異なるのではないかと思います。

投稿: memo26 | 2010/04/25 23:02:50

>大き目に見積もられる傾向があるのであれば、(傾向的な偏りを想定していない)安全率の場合とは、すこし、状況が異なるのではないかと思います。

その通りです。そういうことを言いたかったのです。
国交省の見積もり(計算手法)は過大評価であることを、根拠をもって示すべきなのです。ところが、過大評価であることを前提として述べられているということです。
私が、財務官僚の便益の見積もりは過小評価になりがちであるというのが根拠によるものではなくて、推測にすぎないのと同じです。もっとも、財務官僚も他の誰も見積もりを示しませんから、反論できません。国交省は示していますから反論出来るんです。

投稿: zorori | 2010/04/26 6:46:16

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