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2010.04.07

電子書籍の途は遠い

サンケイ新聞より「【イチから分かる】電子書籍 出版システム変える可能性

活字電子化の取り組みが、今年はさらに進みそうな状況だ。電子書籍を読むことができる専用の電子書籍端末が米国で大ヒット。近く日本にも、本格的に上陸すると予測されているからだ。市場の拡大に備えるため、日本の主要な出版社が団結した一般社団法人も設立された。「紙」ではなく「画面」で読む本に注目が集まっている。(堀晃和)

「電子書籍市場が日本の出版界にもたらす大きな影響は決して無視できない。かといって、悲観すべき材料でもない。積極的な取り組みをしていきたい」

3月24日、東京都新宿区の日本出版クラブ会館。小学館や新潮社など国内の主要な31社で立ち上げた「一般社団法人 日本電子書籍出版社協会」(電書協)の会見で、代表理事に就任した講談社の野間省伸副社長が設立趣旨を読み上げた。

電書協は、任意団体の「電子文庫出版社会」を発展させた。すでに10年前から電子書籍の販売サイト「電子文庫パブリ」を運営しており、今後は著作者の利益確保や電子書籍データの統一規格の研究などを進めていくという。

電子書籍とは、パソコンや携帯電話などデジタル端末上の画面で、本や雑誌などの印刷物を読めるようにしたもの。米国では、米インターネット小売り大手アマゾン・ドット・コムのキンドルなど、持ち運びできる電子書籍端末の大ヒットが、市場の成長を後押ししている。

日本国内の市場規模を調査している「インプレスR&D」によると、平成14年度にわずか10億円だったのが、20年度には464億円にまで拡大。今後も大きな成長が見込まれている。

しかし、そのうち86%は携帯電話で読まれ、大半がコミックとされている。このため、一般書の普及には懐疑的な声も聞こえてくる。

米国でのブームは、キンドルやソニーのリーダーなどの端末の存在が大きいが、日本も同様に端末の本格上陸を起爆剤として、市場が急速に拡大するのか。
野間副社長は「今のところ、その展望は見えていない」と打ち明ける。

それでも、各社が電子書籍で連携姿勢を取るのは、市場の健全育成をはかる出版社としての義務感に加え、出版不況下における新たな需要開拓のチャンスとも、とらえているからだろう。

従来の出版システムでは、紙代や輸送費などがかかるが、電子書籍ではそれらのコストが不要。本の価格を下げた上で、利益率が上がる可能性もある。

「電子書籍やデジタル化の波が押し寄せてきても、紙か電子かのゼロサムで考える必要はない」。

野間副社長は再三、「紙との共存、共栄」を強調したが、電子書籍端末が出版システムを変える可能性を秘めていることは否定できない。

それだけに、専門書などを扱う中小出版社の業界団体「出版流通対策協議会」が勉強会を開き、作家団体の「日本文芸家協会」も検討委を設置するなど電子書籍に向けた動きが、各方面で顕在化している。

■iPad 日本でも下旬に

「黒船襲来」と、日本への本格上陸が見込まれる電子書籍端末。電子書籍ブームを牽引(けんいん)するキンドルは2007年に米国でデビューし、今や日本を含む100カ国以上で販売されている。

日本語対応キンドルへの期待感がふくらむ中、今月下旬に、日本で発売開始となるのが、電子書籍も読むことができる米アップルの新型多機能端末「iPad」(アイパッド)だ。

米国では今月3日に499ドル(約4万7千円)で売り出され、同時に電子書籍の販売サイト「iBookstore(アイブックストア)」も開設。

初日に30万台以上が販売され、25万冊の電子書籍が購入されたという。キンドルとリーダーで2強を構成する米国のシェアが、iPadの参戦で大きく変動するのは確実な情勢だ。

iBookstoreの日本でのサービス開始時期は未定という。キンドルなどの人気端末が日本で普及し、“電子書店”が本格稼働となれば、日本の電子書籍市場が急速に拡大する可能性はある。

「一般社団法人 日本電子書籍出版社協会」(電書協)の代表理事に就任した講談社の野間省伸副社長は、

  • 「今のところ、その展望は見えていない」
  • 「電子書籍やデジタル化の波が押し寄せてきても、紙か電子かのゼロサムで考える必要はない」
  • 「紙との共存、共栄」
と述べたとなっていますが、並べてみると矛盾だし、なんでこんな事を言うのかと考えれば「電子書籍など無い方が良い」と考えているとみた方が理解しやすいです。

日本の出版業は、取次が金融をコントロールする他業種にはちょっと有り得ない形になっていて、全てがシステム化されているので、紙の本という形態を変えると全体を作り替えることになってしまいます。

  1. 出版社は、取次に書籍を渡す
  2. 取次は、手形で支払う
  3. 手形は、出版社が印刷所などへの支払の原資になる
  4. 取次は、書店に書籍を納入する
  5. 書店に書籍を置く期間はあらかじめ契約している。
  6. 期間が過ぎると、書店から取次に返品される
  7. 取次に返品された書籍は、出版社に返品される
  8. 出版社で見た、返品率はほぼ50%に近い
  9. 出版社は、本来は前に受け取った「書籍代」から返品分を取次に返すべきだが、清算金として別の科目を立てる
  10. 出版社と取次の間の契約で、出版社の取り分が変わる、その率は取引実績などで決まり、書籍の内容で決まるものでもない
  11. 出版社は実際に売れた分から、印税相当額を著者に支払う

こんな事をやっているので、出版社の資産がそもそも分かりません。商品在庫が書店にあって、どの書店に自社の資産があるのかを出版社は知らない。

書籍の定価を決めるのは、出版社であって、再販指定商品なので値引き販売もありません。
ところが、書店に販売を委託するだけなので、場合によっては全く陳列されずに返品されるといったことも起こります。
要するに、返品されないといくら売れたのかが分からない。

これでは、ビジネスとして継続性がないから、仮払いのようなものを手形で出しているわけです。
しかもややこしいことに、出版社が1000部を取次に持ちこむと、7割に相当する700冊分だけ、定価の8割で引き取って手形で支払う、といったことをやっています。 この例だと、1000部を持ちこんで、560部分の手形を受け取ることになります。

そして、書店で500部が売れて、500部が返品されたとすると、出版社は560部分の受け取り金額から、60部分を取次に返金するところを、別の本の支払分から差し引いて次回の手形の金額になる。

普通の意味で年次決算ができません。

再販制であるために、売った・買ったという「清算」ではなくて、「品物の移動」で動いているのです。
そこに、「紙代や輸送費などがかかるが、電子書籍ではそれらのコストが不要」というのが登場しても、全くの別物にするしかビジネスとして扱えないでしょう。

わずかですが、再販ではなくて書店が買い取りになっている書籍もありますが、全体としては上記の説明です。

このような、「特殊な取引」である紙の本と、電子書籍をどうやって共存させることができるのか?わたしには理解できません。
本格的にやるのであれば、全く別に「電子書籍オンリー」にせざるを得ないでしょう。 つまりは、従前の出版社・取次が入れない「書籍」を作らざるを得ない。

もう一つは、取次の特殊な金融機能を、もっと普通のモノに変えてしまうことでしょう。
再販制があるために、個々の商品の値引きなどができず、そのためにマージンの率とか、引き取り数のコントロールになってしまうから、ややこしくなっています。
再販制度の対象外にするのが、一番簡単でしょうね。

結局のところ、アメリカでできる電子書籍が日本でできない理由は、この特殊な出版業界のビジネスの形態にあるとしか思えません。

4月 7, 2010 at 10:11 午前 経済・経営 |

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