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2010.02.07

トヨタのブレーキ問題・その後

「トヨタのアクセルペダル問題」にたくさんのコメントが付きました。

FAフォーラムの流れで、現場に強い方がおおぜいいらっしゃるのですが、今回のトヨタのブレーキ問題は技術や製造の問題なのか、会社の経営の問題なのか?という点を考えるべきでしょう。

結論から言いますと、わたしの考えは「豊田章男氏を社長にしたトヨタ自動車の経営問題」が大変に大きいと思っています。

ZAKZAK より「トヨタ“こども社長”やっと会見 「空々しい」対応に批判噴出

豊田章男・トヨタ自動車社長が5日夜、リコール、新型プリウスのブレーキなど一連の品質問題で緊急会見し、「心よりおわび申し上げます」と陳謝した。

昨年秋以降、品質問題が広がる中で、初めての経営トップ会見。だが、もはや時機を逸し、「製品品質ではなく、経営者の質の問題」(自動車ジャーナリスト)という激しい意見も出るなど、豊田社長への批判はおさまらない。

会見では明らかにはならなかったが、豊田社長は直前までスイスのリゾート地、ダボスで開催されている世界経済フォーラムの年次総会、通称ダボス会議に出席していた。

政治家、経営者、財界人、学者、芸能人ら世界のリーダーが登場。経営トップ同士が直接顔を合わせることから、「大型の企業提携や、合併などのきっかけ」(証券会社首脳)になり、経済界では重要視されてはいる。豊田社長にとっても、この会議にでることは、名誉でもあり、今後の戦略を考えても有効だ。

しかし、ダボス会議は個人の資格で招待され、社業とは位置づけられないのが一般的だ。

1月後半からの会議期間は、リコール問題への対応が鈍いトヨタに業を煮やした米国政府が、公聴会の開催などで、安全面での厳しい改善要求を突きつけていた。

さらに、プリウスブレーキ問題が新たに報道され、株価も急落し、時価総額も半月で約3兆円目減りした。5日の会見で豊田社長が「(会社が)危機的状況」と表現する事態ながらも、ダボス会議出席を続け、会見開催が遅れたことは問題視されそうだ。

創業家出身でありながら「現場に最も近い社長でありたい」と、就任に際して語った豊田社長。
しかし、一連の行動に「空々しさを感じる」と語るトヨタ幹部がいるほどだ。

「品質問題の“現場”は、製造や設計、メンテナンスだけではない。それよりも経営体制やどう取り組むのかのトップの姿勢が重要」(自動車ジャーナリスト)とされる。
“現場”を間違えたのか。品質問題を軽視したのかは不明だが、豊田社長の対応は、完全に後手に回った。

すでにネットの掲示板ではトヨタのCMになぞらえ豊田社長を「こども社長」という言葉が飛び交い始めた。この苦境を乗り越えるには、本当の意味での現場主義が必要だ。

ひどい言われようだが、なぜ豊田章男氏が社長になったのかという必然性が見えない。
トヨタほどの人材豊富な会社で、「豊田家だから」では通用するわけがないと思うのだが。

確かに、タレントではあると思うのだが、経営者として駆け出しであるわけで、その点だけを見れば経営者としての能力で有名になったわけではない。
むしろ、トヨタが「有名な経営者を欲した」と考えるべきなのだろう。

大企業で、就任したときから有名な経営者と言えばソニーの大賀社長を思い出します。
ソニーについて言えば、経営者が有名人であり、音楽業界にはかなりの影響力があったことから、それなりの効果はあったのだが、その裏面としてソニーはもの作り競争で大きく遅れてしまった、とわたしは考えています。

いわば、ソニーもトヨタも「世界一」のようなポジションに就いたときに「社長も有名でなくては」と考えてしまったのではないのか?

大小多くの企業で「有名人だから社長に据えた」という例は少なからずあります。
しかし多くの場合は、業績が向上したということはないようです。

トヨタが攻めの姿勢ではなく、内側を向いてしまったから「社長も有名でなくては」とか思ったのだと想定すると、今回のプリウスのABS問題記者会見も理解出来ます。

中日新聞より「トヨタ、ブレーキ欠陥を否定 プリウス苦情で会見

トヨタ自動車の横山裕行常務役員(品質保証担当)は4日、東京都内で記者会見し、ハイブリッド車「プリウス」のブレーキに対する苦情問題について、「ブレーキを踏み増せば安全に車は止まる」と述べ、ブレーキの性能に欠陥はない、との認識を示した。

プリウスはガソリン車と同じ「油圧ブレーキ」と、ハイブリッド車特有の「回生ブレーキ」を併用。走行状態に合わせ、自動的に車自体が最善の組み合わせを選ぶ仕組みだ。

ただ、凍結など滑りやすい路面で車体をコントロールするアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)が作動すると、回生ブレーキとの併用から油圧ブレーキ単独への切り替えに、時間差が生じるという。

これについて横山氏は「ブレーキを踏めば(車は)きちっと止まる。(制動距離が)伸びることはない」と車両の安全性を強調。ただ、トヨタはドライバーが感じる「違和感」を解消するため、2009年5月の発売から10年1月下旬にかけ国内で販売した車両を対象に、ブレーキ制御のコンピューターを改良ソフトに書き換える無料改修を行う。

◆3月期予想は800億円黒字

トヨタ自動車は4日、2010年3月期連結決算(米国会計基準)の業績予想を発表し、日米欧の需要刺激策に伴う販売増などで、純損益を従来の2000億円の赤字から800億円の黒字に上方修正した。

ただ、米フロアマット問題とアクセル不良の改修問題の対策費が約1700億~1800億円に達するとみて、営業損益は200億円の赤字とした。プリウスのブレーキに対する苦情問題は、業績予想に反映させていない。

今の時代、品質保証担当役員がこのような発言をすること自体にビックリします。

世間がたとえ偏見であってもこの発言に反発することは分かるでしょう。
しかし「欠陥はない」と言ったのはどこに向けてなのか?

要するに社内向けなのでしょうね。

ここがダメだ、と思うのです。
子ども社長についても同じ。社内をみて決定しているから、万事が批判されるようなことになる。
結局、現在のトヨタが直面している難題は、それらの決定を下す、社内文化の微妙な変質にこそ原因があるのだと思います。

2月 7, 2010 at 05:19 午後 もの作り |

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アクセルペダルをめぐる大量リコール(回収・無償修理)に続き、ハイブリッド車(HV 続きを読む

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コメント

回生ブレーキは、バッテリーが満充電状態だと効かなくなるのはずです。だって、バッテリーで消費(充電)できないから。
電車でも、回生電力を他の力行中の電車が消費しているときは失効しないけど、近くに力行電車が無いとブレーキ失効が起こります。
トヨタの場合も、ABSと関係なく回生ブレーキ失効が起きているのかもしれません。
今回の騒動でひな壇に登った役員は、自分でプリウスを運転して機構を理解しているのかどうかも疑問です。

対外的説明をウヤムヤにしたために潰れた有名会社はたくさんあったのに。たしかに、お子さま社長、お子さま役員会と言われても仕方ないですね。

投稿: 昭ちゃん | 2010/02/08 8:50:11

回生ブレーキを含む電気ブレーキから機械ブレーキへのスムーズな切替は、それなりに難しいものです。電車は50年の歴史がありますが、それでも時々、切替時に衝撃を感じます。

投稿: Ikegami | 2010/02/08 12:08:54

初めまして。

>しかし「欠陥はない」と言ったのはどこに向けてなのか?

欠陥を認めるとリコールを実施しなくちゃいけなくなるから、欠陥を認めなかったんでしょう。
私は、元関係者に近い人だったからある程度は知っているんですが、この程度の不具合ならリコールにならないケースは結構あります。リコールにならなくても、大きな問題にならないのが普通でしたから。
でも、後からリコールになったのは、不具合を欠陥と認めたからでしょうね。

新聞報道では品質保証担当役員の発言を簡略化していますが、実際はもっと酷い事を言っていますね。
http://response.jp/article/2010/02/06/135993.html
>「油圧ブレーキと回生ブレーキ(電気モーターで発電を行い、その抵抗で減速する機構)の協調制御の問題。限られた状況下でブレーキ抜けはあるが、踏み増せばちゃんと止まる。素人的には違和感を覚えるかもしれず、1月にはプログラムを改良した」

“素人的には”なんて、、、

違和感を覚える一般ユーザーは多いと思うし、それが普通だと思うんですけどね。
ABSの付いた車を運転した事がない人は多いでしょうし、その人たちが初めてABSの作動を経験すれば違和感を感じるのは確実ですから。
また、他車のABSの作動とフィーリングが大きく異なれば、経験者でもこれはちょっと、と思うでしょう。

それを“素人的には”と言い切っちゃうところが、既にユーザーの目線から離れていますね。
以前のトヨタはもっとまともな対応をしていた筈なんですが、いつからこんな会社になっちゃったんでしょうね。

昭ちゃんさん、初めまして。

>回生ブレーキは、バッテリーが満充電状態だと効かなくなるのはずです。

この時は、油圧ブレーキだけで作動します。むしろ、こちらの方が回生ブレーキと油圧ブレーキの切り替えがない分、普通の車のフィーリングに近付くので、フィーリングの問題は少ないと思います。
なお、回生ブレーキを使うかどうかは、ブレーキ制御コンピュータがバッテリー電圧を検出して判断しています。

投稿: e10go | 2010/02/08 14:14:24

ABSというのは、フルブレーキ中にもステアリングが利くというのが実用上で最大のメリットだと思いますが、ほとんどのユーザは知らないのじゃないでしょうかねぇ?

「マンホールで滑った」みたいなコメントをテレビで流していましたが、マンホールなんてのは滑って当たり前で「何を求めているのだ?」と思ってしまいましたよ。

投稿: 酔うぞ | 2010/02/08 14:21:14

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