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2010.02.27

雑誌記事について第三者委員会を作ることになった

「NBL編集倫理に関する第三者委員会設置のお知らせ」(PDF)なる告示がありました。

NBLは法律関係専門の出版社、商事法務が発行している隔週間誌です。

この「告示」めぐって、わたしが読んでいる範囲で「ボ2ネタ [ボ2] 」、「落合弁護士のブログ」、「町村先生のブログ」で、一斉に取り上げられました。

Matimulog より「NBL第三者調査委員会発足

ボ2ネタコメント欄でも、落合ブログでも取り上げられており、また別の編集者からもビックリニュースとしてメールで教えてもらったものだが、NBL編集部名義の記事に以下のような問題があったということである。

①その内容が他誌の判例コメントの内容と著しく類似していること ②その内容は、編集部によって書かれたものとしては、不自然に当該訴訟の一方当事者の立場に偏りすぎている

この件については第三者の調査委員会が発足したということだ。

興味深いのは、編集部名義の記事が偏っていたということよりも、他誌の判例コメント内容と著しく類似している記事が、当該訴訟の一方当事者の立場に偏っていたということである。

漏れ聞こえるところでは、判例コメントは多くの場合、担当裁判官自身が書く、あるいは最高裁なら調査官が書く、担当裁判官自身ではなくとも別の裁判官が書く、というもののようである。

しかし、この問題から推測されるのは、訴訟の一方当事者(代理人)が書くということもあり得るということであろうか。

このことは、もし一般化できるとなると、時折見られる判決批判的なコメントの執筆者が誰か、推測できそうな気がするし、ほとんど理由を示さず「妥当であろう」とか「異論のないところと思われる」というコメントも担当裁判官自身ではなく勝訴した側の代理人という可能性もあるわけだ。

匿名コメントなんてのは、その程度の信憑性だと理解していればよいのだが、時折、判例評釈なんぞより判決のコメントが役に立つという人がいたり、また院生の判例評釈の練習で判例コメントに引用された判決をわけも分からず評釈の中に引用して支離滅裂なことになっている時があったり、とにかく判決雑誌の判例コメントは盲信される傾向があるのだ。

そう言う人に1つの警告となるような、徹底的な調査を望みたい。

ほ~、そういうことなのかと、「NBL編集倫理に関する第三者委員会設置のお知らせ」(PDF)を読んでみました。

平成22年2月23日

各 位

株式会社商事法務 代表取締役 大林 譲
NBL編集倫理に関する第三者委員会設置のお知らせ
当社は、平成 22 年2月23日付けで、下記のとおり第三者委員会を設置致しましたので、お知らせ致します。 記

1.第三者委員会設置までの経緯

当社が発行する法律雑誌「NBL」2010年1月1日号に掲載された編集部名義の「東証売買システムの不備によるみずほ証券の取消注文の不処理をめぐる損害賠償請求訴訟の検討」という題名の記事(以下「本件記事」といいます)について、①その内容が他誌の判例コメントの内容と著しく類似していること、及び②その内容は、編集部によって書かれたものとしては、不自然に当該訴訟の一方当事者の立場に偏りすぎていると思われたことから、当社は社内調査を実施致しました。 その結果、本件記事は、編集部名義となっているものの、実際には、当該訴訟の一方当事者の関係者が執筆していたことが判明致しました。 当社は、かかる事態を重大なものと受け止め、本件記事の掲載に至る経緯や原因、当社における責任の所在等を明らかにすべく、外部の専門家・有識者から構成される第三者委員会の設置を決定したものであります。 なお、第三者委員会からは、当社からの調査依頼の受諾にあたり、①調査報告書の起案権・編集権は第三者委員会にあること、②調査報告書は外部に公表すること、③第三者委員会の調査に当社は全面的に協力すること、を条件としたい旨の確認依頼があり、当社はこれらの事項について確認のうえ、第三者委員会に下記の調査事項をお願いするものであります。

2.第三者委員会の委員

  • 委員長 久保利英明(弁護士・大宮法科大学院大学教授)
  • 委 員 堀部政男(一橋大学名誉教授(情報法・メディア法))
  • 委 員 田中早苗(弁護士・マスコミ倫理懇談会「メディアと法」研究会アドバイザー)
  • 調査事務局長 野宮 拓(弁護士)

3.調査事項

  • (1) 本件記事の掲載に至る経緯・原因等の事実解明
  • (2) 本件記事の掲載に関する当社の責任
  • (3) 再発防止策の提言

4.第三者委員会の名称

第三者委員会の名称は、「NBL編集倫理に関する第三者委員会」に致しました。

5.報告スケジュール

第三者委員会からは1ヶ月程度を目途に調査報告書を提出・公表する見込みである旨の報告を受けております。
以上

ということでありました。

落合洋司弁護士は「[不祥事]NBL編集倫理に関する第三者委員会設置のお知らせ」でこのようなお考えを述べています。

http://www.shojihomu.co.jp/oshirase/20100223.pdf

ボ2ネタのコメント欄経由で知りました。

NBLの問題記事を読んでいないので、どういう内容であったかはわかりませんが、この「お知らせ」を見る限り

1 当該事件について、訴訟の一方当事者の関係者が記事を執筆し、その内容が不自然に当該訴訟の一方当事者の立場に偏りすぎていると思われるものであった
2 それにもかかわらず、「編集部」名義の記事になっていた
3 しかも、他誌の判例コメントの内容と著しく類似していた

という問題になっているようです。

特に問題なのは、おそらく1及び2で、偏った内容を「編集部」名義の記事として発表することで、あたかも中立、公平な立場からの見解のように偽装しつつ流布しようとしたと解する余地もあって、今後の調査結果如何によっては、NBLという雑誌の信頼性を大きく揺るがしかねないでしょう。

【後略】

この部分で「ハッ!」と思ったのです。

NBLは型式としては雑誌です。
例えば、問題になっている2010年1月1日号の目次がサイトに載っていますが、多くが署名記事です。その中に編集部名義の記事もある、という構造です。

もちろん「編集部名義では匿名だから信用できない」という乱暴な意見も可能ですが、それ言うのなら署名が偽名ではないのか?とかペンネームはどうなのだ?という議論にも展開するでしょう。

結局、商事法務は第三者委員会を設置するほどの深刻に受け止めているのでしょうが、なぜ信用ならない記事が紛れ込んだのか?と言えば、NBL(雑誌)自体に信用があるとするから、信用ならない記事も一旦発行されることになると、そのまま通過してしまった。
ということですね。

蟻の一穴とでも言うのでしょうか?強固な仕組みでも、どこか1ヵ所を突破されると全滅する、ということの代表例でしょう。

この「1ヵ所が壊れると」という問題に取り組んで出来たのが、インターネットであり、ネットワーク時代と言えます。

つまりは、雑誌を編集して発行するというモデル自体に、信用のならない情報が信用ありとされる危険性をはらんでいて、そのために堅固なダムを造るほど、決壊したときの被害大きい、と理解するべきでしょう。

2月 27, 2010 at 12:47 午後 事故と社会 |

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