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2009.02.19

理不尽は刑罰の対象になりうるか?

サンケイ新聞より「【星島被告に無期】理不尽殺人は計画犯より軽い?

被害者が1人の殺人事件で極刑が下されるかどうかが注目された今回の判決公判で、「慎重な検討が必要だ」として判決期日を延期していた平出喜一裁判長は、最終的に死刑を回避した。被害者参加制度が始まるなど遺族や犯罪被害者への配慮を求める世論が強まり、量刑は厳罰化の傾向にあるが、死刑の適否は従来通り、厳格に検討すべきだと判断した。(小田博士)

「永山基準」

死刑は、昭和58年の最高裁判決が、犯行の罪質、動機、態様(特に殺害手段の執拗(しつよう)性、残虐性)、結果の重大性(特に殺害された被害者の数)-などを考察し、やむを得ない場合に許されるとの判断を示している。「永山基準」と呼ばれて一般化されており、判決もこの基準に従った。

検察側は、遺体を200個以上の肉片、骨片に切り刻み、汚物のようにトイレなどに捨てるなどの残虐な行為を強調。犯行動機に直結するわいせつ目的略取罪を加え、罪状を重く見た。

だが、基準は残虐さを問うべき対象を、「殺害の方法」としている。判決は、首を一突きに刺した殺害行為を「極めて残虐とはいえない」と指摘。遺体をバラバラに解体した行為も「悪質だが過大に評価できない」とした。遺体損壊罪は、あくまでも最高刑が懲役3年であるため、殺害とは区別したといえる。

場当たり的

判決は、わいせつ目的略取と住居侵入の罪について計画性を認めたが、殺人と死体損壊などの罪は、被告が凶器を用意していなかった点などから、「事前に計画していたとは認められない」と認定した。

このため、「計画的犯行をした者とそうでない者への非難の程度には差がある」と指摘。計画性のなさを、罪状を軽く見る理由のひとつに挙げた。

「被害者1人は無期、3人なら死刑が暗黙の基準」(司法関係者)とも言われ、判決は、今回の事件を「死刑とするには強い悪質性が必要」と説明した。

だが、諸沢英道常磐大教授(刑法)は「この理屈でいくと、相手が誰でも良い衝動的な犯行は、罪が軽くなってしまう」と批判。評論家の佐藤健志さんは「最近は“理不尽”な犯罪が増えている。計画性はないが罪はむしろ重いというロジックがないと、裁判所はこの種の事件に対応できなくなる」と疑問を呈する。

捜査関係者は「無計画な凶悪事件が増える中、虫を殺すようにあっさりと人を殺害する場当たり的な犯行より、計画犯の方が悪質という従来型の判断の適否が、今後、問われるのでは」と推測している。

裁判員裁判?

検察側は今回、裁判員制度を念頭に置いて、分かりやすい視覚に訴える立証方法を選択した。

犯行の残虐性や特異性を訴えるため、検察側は遺体の肉片や骨片を大型モニターに映し出し、マネキンを使用して遺体解体の様子を再現するなどした。これらの手法は、“情”に流された裁判員に、冷静な判断を誤らせる危険性がある一方、裁判員制度では厳罰を求める際の大きな武器になる可能性はある。

ただ、裁判員制度の開始は5月であり、ある法曹関係者は「証拠として多くの残酷な写真を見てきた職業裁判官の判断に、この立証方法が有効だったのかは疑問だ」と指摘する。

今回の判決を、永山基準に照らして「妥当」ととらえる法曹関係者が多いのは事実だ。だが通常の刑事裁判で、従来通りの立証方法ではなく、裁判員裁判を意識した立証方法を採用したことが、量刑に何らかの影響を及ぼしたか否かは、検証する必要があるだろう。

わたし自身は、判決が無期懲役であったとの報道を見て、それ自体は「まあそうだろ」といった感想でした、しかし事件としてはビックリなものであって、判決文が伝わってくるにつれて判決というか裁判全体を通じて違和感を感じています。
ここらについては、同じくサンケイ新聞にこんな記事が出ています。「【神隠し公判】「理不尽に対応するロジック必要」 識者反応

東京都江東区のマンションで会社員当時(23)=が殺害され、バラバラにされた事件の判決で、被告(34)が無期懲役とされた事について、元東京高裁判事の荒木友雄・流通経済大教授(刑事法)は「遺族の心情は痛いほど分かるが、第三者として理性的な判断をするのが裁判の大原則で今回の判断は妥当、穏当だと思う」と指摘する。

一方、評論家の佐藤健志さんは「死刑を宣告しない理由に、殺人の計画性のなさを挙げているが、今回は計画性がなかった故に、凶悪性、残虐性が高まった。計画性はないが、罪はむしろ重いというロジックがないと、裁判所はこの種の理不尽な事件に対応できなくなるのではないか」と分析する。

また、谷川恒太・東京地検次席検事は「死刑が選択されなかった点については遺憾。判決内容を精査し適切に対応したい」とコメントを出した。

この中で「計画性がなかった故に、凶悪性、残虐性が高まった。計画性はないが、罪はむしろ重いというロジック」が必要というの意見には若干ですが同意します。

多くの犯罪は、経済的な利益など被告の利益のために事件を起こしたと説明できるのですが、なかには得られる利益が犯罪の動機になるとは思えない、というケースがあります。そういう事件が、一時的な興奮などで理性的に考えると法を犯す行為であること忘れて実行したのか?と見ると必ずしもそうではない。

様々な理由で、刑法犯が出てきますが中には「全くの理不尽」=「理解不可能」というのもあります。
困ったことに、わたしが注目しているカルト宗教系の問題の多くが「理解不可能」です。

そういう中で犯罪が起きたときに、例えば「被害者が重罰を望まない」といったことを機械的に適用できないのは、DVなどにはありがちです。

そこらヘンに着目すると「理不尽なことに法的な対応をする」という意見は分かるのですが、理不尽であることを証明できるか?となると、無理ではないのか?とも思うところです。
問題が、刑罰の程度であるのなら終身刑の積極的な採用は重要な論点であるかもしれません。

2月 19, 2009 at 10:16 午前 事件と裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

GMとクライスラー問題

日経新聞社説より「混迷続く米ビッグスリーの再建(2/19)

米ゼネラル・モーターズ(GM)とクライスラーは米政府に新たな再建計画を提出し、両社合計で216億ドル(約2兆円)の追加支援を要請した。米自動車市場の落ちこみは止まらず、公的支援はさらに膨らむ恐れがある。
発足早々のオバマ政権は難しい判断を迫られる。

GMとクライスラーは昨年末の政府決定で計174億ドルの公的融資を受けた。ところが、その後も資金流出に歯止めがかからず、追加支援を要請せざるを得なくなった。
GMなどは人員削減やブランドの整理を進めると表明したが、それで収支が均衡するかどうか微妙だ。

再建の具体策をめぐって、関係者間の調整が難航していることも前途の多難さを示している。
退職者向けの医療保険基金への拠出について、GMは負担軽減を要求しているが、全米自動車労組(UAW)は譲らず、着地点は見えていない。

債権者に対しては「債権の株式化」を求めているが、こちらも先行き不透明だ。債権を株式化できれば貸借対照表の強化につながり、金利負担も軽減されるが、債権者の合意を取り付けられなかった。

米自動車危機はGMなどの大手3社(ビッグスリー)にとどまらず、部品会社にも広がっている。
米自動車部品工業会は破綻回避のために最大255億ドル(2兆3000億円)の支援を政府に要請した。
部品会社が破綻すれば、そこから部品を購入する日系企業にも支障が出る。

米政府としても多数の雇用を抱える自動車産業の先行きに無関心ではいられず、ガイトナー財務長官らが率いる特別チームをつくって、追加支援の是非などを検討する。

GMが倒産した場合の世界経済に与える衝撃を考えれば、追加支援もやむを得まい。
だが、公的支援は緊急避難のための一時的な措置で、そこから先は企業独自の力で経営を立て直す必要がある。
そのためにはUAWなどの関係者も痛みを分かち合う覚悟が不可欠だ。

いま世界的に自国企業優先主義の風潮が高まっているが、その出発点は米政府によるビッグスリーの救済問題だった。
近く訪米する麻生太郎首相も、オバマ大統領に対して、自国企業の保護が行き過ぎないようしっかりクギをさしてほしい。

民間企業は自由競争による優勝劣敗が原則であり、政府支援はあくまで例外措置だ。これが常態化すれば、競争条件はゆがみ、産業構造の転換も進まない。
自由競争の原則に立ち戻るためにも、ビッグスリーの一日も早い経営再建が望まれる。

読売新聞社説より「米自動車再建 大統領は追加支援するか

経営危機に陥った米自動車大手の再建の道筋はいまだに霧の中だ。追加支援するかどうか、オバマ大統領は、難しい決断を迫られよう。

大手3社(ビッグスリー)のうち、ゼネラル・モーターズ(GM)とクライスラーが、経営再建計画を政府に提出した。

昨年末、政府が両社に緊急のつなぎ融資を決め、破綻(はたん)を一時的に回避した際に義務付けていた。

その再建計画の柱は、資金繰りに苦しむGMが、最大166億ドル(約1兆5000億円)の追加支援を要請したことだ。クライスラーも、50億ドル(約4500億円)を新たに求めた。

国がすでに投入した分を含めると、GMへの支援額は合計で300億ドル、クライスラーは90億ドルに達する計算だ。

支援額が際限なく拡大しかねない事態に対し、議会や国民の間から、厳しい批判が高まることも予想されよう。

両社は一応、リストラ策も打ち出した。GMは、世界全体で4万7000人の従業員を削減し、2012年までに米国で計14工場を閉鎖する。クライスラーも従業員3000人を削減する。

巨額支援を再び仰ぐ以上、当然の対応だ。しかし、最も肝心な点が盛り込まれなかった。それは、GMで言えば、約600億ドルに上る巨額債務と、割高な労働コストの削減策である。

再建計画の提出期限までに、これに抵抗する債権者や、全米自動車労組(UAW)との交渉がまとまらなかった。

今後の焦点は、両社が、債務削減と労働コストの削減の具体策を早期に決定できるかどうかだ。UAWも、このままでは業績不振に拍車がかかるという厳しい現実を見つめ直すべきでないか。

米国新車市場は急速に冷え込み、米自動車各社の販売不振は深刻だ。こうした逆風のもと、売れる車をどう作っていくかという、具体的な戦略も欠かせない。

オバマ政権は、3月末までに再建計画の実現性を精査し、追加支援の是非を判断するという。

納得できるような追加策を盛り込まないと、政府は計画を承認できまい。

そうなれば、日本の民事再生法にあたる連邦破産法11章の適用が現実味を帯びる。GMなどを顧客とする日本の部品業界や、米国内で部品調達する日本車メーカーへの影響も懸念される。

経営再建か、破綻か。ビッグスリーの苦闘はまだ続く。

(2009年2月19日01時37分 読売新聞)

どちらも社説で取り上げては、いるものの「全米自動車労組(UAW)の対応次第だ」とも取れるわけで、実際にGMが政府に追加の融資を求めた際にも、全米自動車労組(UAW)との話し合いは事実上全く進んでいなかったようです。

高コスト問題の中核に、退職者の医療保険という問題があって、対象者が何人なのか分かりませんがこんなビジネスモデルは企業の縮小に対応できないのが当然で、想像するに全米自動車労組(UAW)としては企業に対して「企業活動の縮小自体を認めることが出来ない」といったことなっているのでしょう。
もしそういうことであれば、まるで交渉のしようがないわけで、世界中の自動車メーカーが大減産に向かっている現在、GMの(日本の)民事再生法適用、クライスラーの清算という展開もあり得るでしょう。

アメリカの自動車メーカーとしては、GMが一番内向きで国際化がまったくできていませんが、クライスラーは比較的世界メーカーとして国際化した自動車を作っているように思います。
極端な予想をすると、GMの清算、クライスラーの救済というのも経済合理性の点からはあり得ることかもしれません。

全米自動車労組(UAW)が了解するような、医療保険給付の減額が出来るのであれば、ここまで問題が長引くことはなかったでしょう。
つまり、手の打ちようがないのでは?と思っています。

2月 19, 2009 at 09:41 午前 国際経済など | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.02.18

近代国家の事件とは思えないが

サンケイ新聞より「女子中生に売春強要、横須賀の無職の女ら3容疑者を逮捕

中学生の少女に売春などをさせていたとして、県警少年捜査課などは17日、児童福祉法違反容疑で、神奈川県横須賀市に住む無職の女(49)ら男女3人を逮捕した。
女らは「指示はしていない」などと否認している。

県警の調べによると、女らは共謀し、同市内に住む無職の少女(16)に、昨年6月3日から同月27日までの間、4回にわたり、伝言ダイヤルで募った横浜市戸塚区内に住む男性会社員(36)=児童買春罪で罰金刑確定=ら3人を相手に、横須賀市内のホテルでみだらな行為などをさせた疑いがもたれている。

県警によると、少女は、中学生だった平成19年9月ごろから20年8月ごろにかけて、女らに売春などを強要され、延べ約300人の相手をさせられ、900万円以上の売り上げを稼いだと話しているという。
少女は昨年2月には妊娠、中絶。少女が昨年8月に横須賀署に相談に行き、事件が発覚した。

酷い事件だと思いますが、逮捕容疑が児童福祉法とのことなので他の法律に抵触していないのか?と手元の模範六法CDを検索してみると、売春防止法は当然出てくるのですが、意外なほど軽い罰則でした。

第7条(困惑等による売春)

人を欺き、若しくは困惑させてこれに売春をさせ、又は親族関係による影響力を利用して人に売春をさせた者は、三年以下の懲役又は十万円以下の罰金に処する。
2 人を脅迫し、又は人に暴行を加えてこれに売春をさせた者は、三年以下の懲役又は三年以下の懲役及び十万円以下の罰金に処する。
3 前二項の未遂罪は、罰する。

「模範六法 2008」(C)2008(株)三省堂

まあ考え方としては、本人が同意しないと売春行為が実行されないから、強制性は無く「困惑など」が強制に当たるということなのでしょう。

サンケイ新聞の記事には別の事件が紹介されていました。
中3娘に売春強要の母親に懲役3年6月 「許し難い犯行」と裁判官

中学3年だった娘に売春させたとして、児童福祉法違反と売春防止法違反の罪に問われた和歌山市の母親(37)の判決公判が25日、和歌山家裁で開かれた。杉村鎮右裁判官は「あまりに卑劣で非人道的」として懲役3年6月、罰金10万円(求刑懲役5年、罰金10万円)を言い渡した。

判決理由で杉村裁判官は「自分たちの遊興費のために娘の気持ちを踏みにじった許し難い犯行」と指弾。そのうえで「彼女にとって、あなたは世界でたった1人の母ちゃんなんだよ。何ができるのかよく考えてほしい」と説諭した。

判決によると、母親は夫(47)と共謀し、当時15歳の娘に「体売ってでも金をつくってこい」などと繰り返し売春を強要。和歌山市のホテルで今年2月下旬、男性客相手にみだらな行為をさせ、現金1万2000円を受け取らせた。

判決が懲役3年6月、罰金10万円というのは、児童福祉法と売春防止法の両方で売春防止法の懲役3年以下を突破した判決になりましたが、求刑でも懲役5年なわけです。

今回の事件のように、事実上の奴隷の強制といった事件に対しては、あまりに罰が軽いのではないか、というよりも法律は全体としてこのような奴隷的な強制を想定していないようなのです。

事件がこのままで判決に至ったとしても、懲役5年になるかならないかでしょうね。
なんというか、奴隷的な強制行為を罰するような法律があっても良いようにも感じます。

2月 18, 2009 at 12:09 午後 事件と裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

韓国KTXの欠陥枕木製造事件

韓国KBSニュースより「KTXの工事区間で枕木332本に亀裂 大邱-釜山間

韓国高速鉄道(KTX)の第2期工事区間の大邱-釜山間でレールの敷設工事に使うコンクリート製の枕木のうち332本に亀裂が入っていることが分かりました。

KTXの第2期工事区間は総延長が254.2キロで、レールの敷設工事は2002年に始まり、これまでに96.9キロの区間にコンクリート製の枕木15万5000本が敷かれています。

韓国鉄道施設公団は先月5日、一部の枕木で亀裂が見つかったため、先月19日から今月12日まで3回にわたって全ての枕木を調査し、332本に亀裂が入っていることを確認しました。

時速300キロで走る高速列車とレールを支える枕木に亀裂が入れば、レールが曲がって列車が脱線するなど、大規模な事故につながる恐れがあり、枕木の取替え作業が行われることになりました。

鉄道施設公団は、レールに枕木を固定する部品に欠陥があったのが原因と見ており、亀裂が見つかった枕木を全て取り替え、亀裂が見つかっていない枕木についても改めて検査をして、亀裂が見つかれば取り替える方針です。

韓国鉄道施設公団はまた、工事をした会社が故意に設計通りに施工しなかった可能性もあるとして、捜査機関に捜査を依頼することも検討しています。 韓国鉄道施設公団の関係者は、「問題がある枕木は上半期中に全て取り替え、品質と安全管理を徹底させる。工事期間内に工事を終わらせることはできるだろう」と話しています。

ナンダなんだ?という記事ですが、韓国朝鮮日報にもっと詳しく記事が出ています。

KTX欠陥工事:枕木15万本、すべて不良品

韓国高速鉄道(KTX)の第2期工事区間である大邱‐釜山間のレール敷設工事で、コンクリート製の枕木数百本に亀裂が入っていることが判明した問題で、工事に使われた枕木約15万3000本がすべて不良品だったことが確認された。
これにより、工事費がさらに数十億ウォンかかり、工事期間にも遅れが生じることが避けられない見通しとなった。

韓国鉄道施設公団と軌道の敷設を担当した「サムピョE&C」社、枕木を製造した「チョノン・レールワン」社などは16日、「2008年3月から現在までに、大邱‐慶州間の96.9キロの区間に設置された枕木は15万3394本だが、そのすべてで設計図に示された防水材ではなく、吸収材を使用していた」と発表した。
このため、現在のところ亀裂が見つかっていない枕木も、雨水などがしみ込んで凍結すれば、すべて亀裂が入る可能性が高い。一方、同公団側はこの日、亀裂が入っていた枕木の数が、当初判明した222本よりも100本余り多い332本であることが分かった、と発表した。

大邱=チェ・スホ記者

KTX欠陥工事:欠陥品の枕木フックボルトは韓国製

韓国高速鉄道(KTX)の第2期工事区間である大邱-釜山間のレール敷設工事で発覚した枕木の亀裂は、専門性のないメーカーとずさんな現場監理による「共同作品」だった。
軌道分野での経験者が一人もいない会社が不良品を生産し、現場監理業者は外国の技術を盲信するだけで十分な役割を果たせなかった。

枕木を製造した慶尚北道尚州市化西面の「チョノン・レールワン」社は2006年12月、コンクリート製品メーカーの「チョノン工業」社と、ドイツの「レールワン」社の合弁で設立された。
事実上、KTXの第2期工事のために設立された会社で、軌道分野での施工実績はまったくなかった。

現在、約60人の社員が在籍しているが、軌道分野での経験を持つ社員は一人もいない。
品質管理を担当する6-7人の管理職でさえ、建設現場でコンクリートやセメントを取り扱った経験はなかった、と会社側は話している。
イ・ハンセ工場長は「社名を明かすことはできないが、全羅道のある業者が製造したフックボルト(枕木を固定する部材)の納品を受け、これを使って枕木を製造し、施工会社に納品しただけだ。
亀裂が見つかっていなければ、今も(設計図に示された)防水材が使われているのか、吸収材が使われているのか分からなかっただろう」と釈明した。

一方、工事現場の監理を担当した韓国鉄道技術公社は「枕木を製造した会社にはドイツの技術者たちが常駐しているため、製品の品質を疑うことはなかった」と語った。
部材の監理を担当したチン・ヒョンムン課長(51)は「枕木の製造工程だけを監督していたため、枕木に使われるフックボルトに問題があるなどとは考えもしなかった。
亀裂が見つかるまで、フックボルトはドイツで製造され、枕木に取り付けられたものとばかり思っていた」と述べた。

これに対し、軌道関連の会社は「外国の技術にばかり依存し、専門性に欠けていたためにこうした事態になった」と指摘した。
防水材として使われる半固形状の圧縮用潤滑油(50ミリリットル当たり250ウォン=約16円)は、吸収材に使われるスポンジ(1個当たり50ウォン=約3円未満)より5倍ほど高いが、単価が非常に安いことから、コスト削減のために不良品を生産したという可能性は低いという。
軌道関連会社のある関係者は「この業者が、大邱から蔚山までの131キロ(上下線の合計)の区間(第4工区)で、枕木に吸収材を使うことによって節約できる金額は約4100万ウォン(約260万円)=差益200ウォン(約13円)×20万6514本=にすぎない。コスト削減よりも、経験不足がゆえに起こったトラブルだ」と話している。

一方、監督官庁である国土海洋部は、枕木に亀裂が入っているのが見つかってから1カ月以上も報告を受けていなかった。
同部とKTXを運行する韓国鉄道公社は「手抜き工事の実態について、専門家との合同調査団を派遣して調査を行っていく予定だ」と語った。

大邱=チェ・ジェフン記者

尚州(慶尚北道)=チェ・スホ記者

【社説】KTX、ひび割れた枕木の上を走るのか

京釜高速鉄道(KTX)の第2期整備区間の大邱-釜山間のレール敷設工事でコンクリート製の枕木の一部がひび割れで折れた。
列車とレールの重みを支える枕木が破損すれば、レールが曲がり、時速300キロで走る列車が脱線する事故が起きる可能性がある。
7兆ウォン(約4500億円)もの建設費が投入される高速鉄道の安全性に致命的な欠陥が見つかった形だ。

れまでに敷設された枕木15万3000本のうちひびが見つかったのは332本だが、全ての枕木が危険状態に置かれている。
枕木にレールを取り付ける締結装置とその下部の埋め込み栓がすべて不良品と判明したためだ。
設計図面には埋め込み栓に防水物質を使うことになっているが、それが守られていないために雨水が入り込み、寒さで水が凍結して体積が増えたことで枕木にひびが入った。
現在表面的には異常がない枕木もいつ折れたり割れたりするか分からない

埋め込み栓メーカーは、設計図面と異なる不良品を作り、枕木メーカーは納品された埋め込み栓が不良品かどうか検査もせずにそのまま使用し、施工業者と管理業者もそれに目をつぶり、何の手も打たなかった。
このうちの誰かがしっかり仕事をすれば、こんなことは起きなかったはずだ。巨額の国民の税金が使われる大型国策事業の工事がこれほどいい加減だとは話にならない。
工事中に問題が明らかになり、大惨事を防ぐことができたことは幸いだった。

ひびが入った枕木とは別に、鉄道施設公団が第2期区間に使用する締結装置として選定した英パンドロール社の製品も時速300キロの高速鉄道には使われた実績がなく、性能が確認されていないという。
監査院も2007年に安全性が立証されていない製品なので、軌道のずれやレール損傷などの問題が発生する可能性があると指摘していた。

高速鉄道の第1期工事は、1992年に車種も決まらず、設計図面もない状態で着工された。
結局1996年に米安全診断業者に精密調査を依頼し、190カ所は補修、39カ所は部分的な再工事が必要と判断された、当時、韓国政府は常時点検班を設置するなどの対策を取り、徹底した安全管理を誓った。
しかし、第2期で再び問題が明るみに出た。責任者を探し出し、国策事業の手抜き工事を防ぐための抜本的な対策を示すべきだ。

朝鮮日報/朝鮮日報日本語版

詳しく読んでみると、わけの分からない話です。

問題の工事は、KTXの第2期工事でウィキペディアの説明では

2010年には、ソウル近郊と釜山近郊を除く全区間が高速路線に移行し、ソウル-釜山間は1時間56分に短縮される計画であった。
しかし、慶州市街地の地下化および周囲の山へのトンネル建設をめぐって自然保護などの立場から反対運動が起こり、トンネル計画の中止などの理由により当初の計画の2時間以内の走行は不可能になってしまった。

大邱から慶州を経て釜山につながる部分の専用路線を建設する第2期工事は、2002年6月に始まった。
2006年8月、建設交通部は大田市内及び大邱市内の専用線増設について、地下短絡化ではなく、在来線と並行する高架化を正式決定。
それぞれ1兆ウォン超の費用で高架化、沿線道路立体化、沿線の緩衝緑地の設置などの事業が始まり、2010年の完成を予定している。
また五松、金泉亀尾、新慶州の駅新設とあわせて、全通後の所要時間は現行より約30分短縮の2時間10分を予定している。

となっていますから、2010年完成予定の工事であった、となります。
事実、朝鮮日報の社説には「工事中に問題が明らかになり、大惨事を防ぐことができたことは幸いだった。」とまで書いていますが、第1期工事で完成したKTXは運行しているわけです。
そうなると、第1期工事と第2期工事の間で「経験の会社が重要部品を受け持ち、それ自体をチェックしなかった」ということになってしまいます。

第1期の工事の経験が第2期工事に活かせなかったところこそが最大の問題点でしょう。
情報伝達の重要性を教えてくれる事件と言えます。

2月 18, 2009 at 11:34 午前 もの作り | | コメント (2) | トラックバック (0)

2009.02.16

続・ソマリアにP3Cを派遣するべし

サンケイ新聞より「護衛艦2隻がセットで護送、4日に1度で護送漏れも ソマリア海賊対策

アフリカ・ソマリア沖の海賊対策で、防衛省が検討している海上自衛隊の活動概要が15日、明らかになった。

商船の護送方法は、日本から派遣する護衛艦2隻が商船を前方と後方から護送し、護衛艦搭載のSH60哨戒ヘリ1機が上空から周辺海域の監視にあたる。
防衛省は、全長約900キロのアデン湾の航行に片道2日かかると試算しており、商船の護送は最多でも4日に1回のペースに限定されることになる。

防衛省は、自衛隊法82条の海上警備行動に基づき、3月上旬に海自第4護衛隊群(呉基地)所属の護衛艦「さざなみ」(4650トン)、「さみだれ」(4550トン)の2隻を派遣する方針だ。
2隻は格納庫を使用すれば哨戒ヘリ各2機を搭載可能だが、海自特殊部隊「特別警備隊」が使う特殊ボートの収容で格納庫の活用が不可能なため、各1機の搭載にとどめる。

海警行動では武器使用が正当防衛、緊急避難に限定される。このため、当面の派遣では海賊船が商船団に近づく前に発見し、進路を変えるなどの回避行動をいかに早く取るかが焦点となる。

護衛艦の水上レーダーの監視範囲は十数キロにすぎず、「飛行高度によっては300キロ先まで監視が可能」(海自筋)とされるSH60哨戒ヘリが重要な役割を担うことになる。

哨戒ヘリには、7・62ミリ機関銃を積み込む。海賊船が停船命令などに応じない場合、船団からできるだけ離れた海域で警告射撃などにより接近をくい止める任務も担う予定だ。

防衛省幹部は、哨戒ヘリについて「故障した場合や他国艦船への緊急通報に備え、バックアップを含め2機が必要」としており、護衛艦2隻をセットで運用する判断を固めている。

アデン湾を通航する日本関係船舶は1日6隻程度だが、2隻セットによる護送だと4日に1回程度の護送しかできず、「護送を受けられない商船がかなり出てくる」(自民党議員)との危(き)惧(ぐ)が出ている。
また、防衛省は護衛艦の燃料補給のため、2往復ごとにジブチに寄港させる必要があるとみており、給油による任務中断を含めると護送は1週間に1回ほどのペースに落ちる可能性もある。

ただ、「海賊船の警戒監視をP3C哨戒機に任せれば護衛艦1隻での護送も可能」(海自筋)とされるため、防衛省は護衛艦派遣の数カ月後になるとみられるP3Cの派遣後、護送方法に関する運用の見直しを図る考えだ。

誰が考えても当たり前のことで、なるべく早くP3Cの派遣を実現するしか手がないでしょう。
単なる国際的なシンボルとして「軍艦を派遣しました」という事にするのなら、韓国や中国のように大々的に宣伝しつつ「とりあえず送り出す」という選択でよいと考えますが、こんなに時間を掛けてしまっては「効果あり」とされる方法でないと、意味がないでしょう。

さらに、一過性ではなくて継続的に安全確保に結びつけるのにはどうするか?という難しい問題も出てきます。
どうも、政府のセンスが悪いところが現れている、としか思えません。

2月 16, 2009 at 09:02 午前 国内の政治・行政・司法 | | コメント (0) | トラックバック (0)