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2009.12.05

子どもの減る世界

サンケイ新聞より「4割が「子ども必要ない」20~30歳代は6割-内閣府調査

結婚しても必ずしも子どもを持つ必要はないと考える人が42・8%に上ることが5日、内閣府がまとめた男女共同参画に関する世論調査で分かった。

2年前の前回調査に比べ6・0ポイント増で、平成4年の調査開始以来最高となった。持つ必要があるとする人は同6・5ポイント減の52・9%だった。

少子化の背景に、国民の家庭に対する意識の変化があることを示した結果と言え、内閣府の担当者は「個人の生き方の多様化が進んでいる」としている。

調査は10月1~18日、全国の成人5千人に個別面接方式で実施。

64・8%にあたる3240人から回答を得た。同種の調査は4年以降、数年に一度実施しており8回目。

子どもを持つ必要はないとした人は、男性が38・7%、女性が46・4%だった。

年齢別では20歳代が63・0%、30歳代が59・0%と高く、若い世代ほど子どもを持つことにこだわらない傾向が顕著になった。

「夫は外で働き、妻は家庭を守るべきか」との質問に「反対」と答えたのは、19年の前回調査より3ポイント増の55・1%で過去最多となり、「賛成」(41・3%)を大きく上回った。
結婚後も仕事を続けたいと思う女性が増えたことが背景にあるとみられる。

一方、「結婚は個人の自由だから、しなくてもよい」と考える人は4・9ポイント増の70・0%。
16年以降、2回連続で減っていたが、一気に7割台に戻った。

「結婚しても相手に満足できないときは離婚すればよい」と思う人も3・6ポイント増の50・1%。

9年調査(54・1%)以降、3回連続で減少していたが、反転した。夫婦や家族の生活よりも、自由な生き方を求める人が多い実態が浮き彫りになった。

職場での男女の地位については「平等」と考える人が24・4%で、「男性が優遇されている」が62・1%、「女性が優遇」は5・3%にとどまった。

政治の場での男女の地位では、「男性が優遇」が71・8%、「女性が優遇」が2・1%だった。

今さらな調査という感もあります。
仮定として、男女の就職条件が全く同じで、扶養家族とか年金の掛け金といったものが、家族単位ではなく個人単位になってしまった世界を想像します。
このような世界では、結婚の実態と同棲は区別することができないでしょう。
そのような状況において、結婚の率が変わらないか?と考えると、普通に考えると日本では結婚数は減るでしょうね。

つまり、現状の結婚の数は結婚した方が有利であるという政策的誘導の結果だと考えて良いでしょう。
それが、ドンドン減少してきていて、さらに子供を持たないという方向になると、これはかなり結婚した方が有利ではあるが、子供を作るほどのメリットはないと考えているからだとなります。

こうなると、結婚した方が有利だとしておけば、,子どもができるという政策的での思考放棄的な考え方を修正する必要があるでしょう。

もっと自然に、子どもが生まれるような方向に政策を転換するべきだと思います。

12月 5, 2009 at 07:30 午後 医療・生命・衛生 | | コメント (1) | トラックバック (0)

日航・七〇〇〇億とはどういうことだ!

NHKニュースより「日航に政府保証7000億円

深刻な業績不振に陥っている日本航空の資金繰りの悪化に備えるため、政府は、金融機関の融資や出資に最大で7000億円規模の政府保証を付ける措置を、今年度の第2次補正予算案に盛り込む方向で調整に入りました。

政府は、先月、日本航空の当面の資金繰りを支えるため、航空機の運航に支障があると認定した場合には、日本政策投資銀行が必要な融資を行う新たな支援策を決めました。

これを受けて、日本航空は、日本政策投資銀行から1000億円の融資を受ける契約を結びましたが、今後の景気動向などによっては資金繰りが再び悪化するおそれもあります。

こうした事態に備えて、政府は、日本航空への融資や出資に最大で7000億円規模に上る政府保証を付ける措置を、今年度の第2次補正予算案に盛り込む方向で調整に入りました。

これは、政府の経済対策とは別枠で盛り込む異例の措置で、融資の80%を対象に政府が返済を保証することで、日本政策投資銀行や民間の金融機関が融資を機動的に行えるようにするねらいがあります。

ただ、政府としては、税金の投入につながるこうした支援に対して国民の理解を得るには日本航空が企業年金を減額する必要があるとしており、会社側が年金の減額を自主的に実行できない場合は強制的に減額できるようにする法案を来年の通常国会に提出することを検討しています。

何だってこうも想像しがたい方向に向かうのだろうか?

国鉄を解体したときにも色々と議論があったが、当時は国鉄と同様な企業がなかったから、議論は本質的に架空の議論であって、大いに揉めたわけです。

しかし航空会社は世界レベルで競争をしているし、国内でも全日空が日本航空に比べるとはるかに健全な経営をしている。このような現実があるのに「なぜ日航を救済するのか?」という疑問が出て来ます。

別に年金の問題ではない。

さらに言えば、「七〇〇〇億で済むのか?」という問題も出てきますし、さらには「いくら出さないとダメなら潰すのか?」という問題もあります。
要するに「ルール」とか「線引き」といったものです。

会社経営の法的なルールとしては「資金繰りがダメなら銀行取引停止」が基本でしょう。政府保証や政府融資といったものが、特例として実施されるために「相応の理由が不可欠」ですが、今回の日航問題では政府から「政府が保証する必要性の説明」を聞いた覚えがありません。

前原国交相は「運行を止めてはならない」と理由を説明していますが、日航の改善策では神戸空港・静岡空港・松本空港などでの運行停止が発表されています。
何が「運行を停止しない」事なのか?

さらには、静岡県の地元航空会社FDAが日航の後を受けて、松本空港に進出すると決定しました。
ますます日航に保証する理由は無くなってきます。

にもかかわらず「七〇〇〇億を保証」とは、限度が分からない。
分からないけど金を出すというのでは、政治ではないでしょう。

12月 5, 2009 at 08:17 午前 経済・経営 | | コメント (2) | トラックバック (1)

国交省がコンテナー車横転対策を検討しているというのだが

NHKニュースより「コンテナ事故防止へ新法検討

トレーラーに積んだコンテナが倒れ、巻き添えとなった死亡事故などが相次いでいることを受けて、国土交通省は、コンテナ内部の積荷の状況をドライバーが把握していないことなどが事故の背景にあるとして、荷主側に通知を義務づける新しい法律を検討することになりました。

トレーラーに積んだコンテナをめぐっては、ことし5月に、名古屋で走行中のトレーラーから落下したコンテナが隣の車線を走っていた乗用車を押しつぶし、3人が死傷するなど、この4年間で事故が71件相次ぎ、あわせて10人が死亡しています。

国土交通省は、コンテナ内部の積荷の状況をドライバーが把握していないことなどが事故の背景にあるとして、新しい法律を作って安全対策を強化することになり、4日夜、その内容を検討する初めての会議を開きました。

国土交通省によりますと、速度オーバーや荷台にコンテナをしっかり固定していないといったドライバー側の問題がある一方で、コンテナ内部の荷物の積み方が不適切なため、低い速度でも横転してしまうなど、荷主側にも原因があるということです。

新しい法律では、荷主の責任を明確にして、積荷の中身や積み方などの情報をドライバー側に伝えるよう義務づけることなどを検討しており、早ければ来年の通常国会にも法案を提出したいとしています。

「コンテナー内の荷物の片寄りぐらい計測できるはずだ」に書いた通りで、コンテナー内の荷物の片寄りによってトレーラーが転倒することがあると国交省が動き出したのは、今までの「全てドライバーの責任」という姿勢から比べればけっこうなことではあります。

しかし「荷主が積荷の中身や積み方などの情報をドライバー側に伝えるよう義務づける」なんてことが実際的に機能するとはとうてい思えない。
そもそも荷主だってコンテナー内の荷物の積み方なんて把握できないでしょう。
いかにも手続を用意したから行政の責任は回避できる、という作戦にしか見えません。

そもそも、本当にコンテナー内の荷物の片寄りがトレーラーを転倒させるほどひどいものなのか、あるいはトレーラーの許容度が低すぎるのか、を検証しているのでしょうか?
もちろん、事故なのだから頻度の問題もあるでしょう。事件として有名になったから、手を打ちましたというだけでは社会的には意味がないでしょう。

12月 5, 2009 at 07:57 午前 事故と社会 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.12.03

三菱自動車にプジョーシトロエングループが出資

日経新聞より「三菱自、仏プジョーが出資 3~5割で最終調整

仏自動車大手のプジョーシトロエングループ(PSA)が、三菱自動車に資本参加することが2日、明らかになった。

PSAが三菱自の2000 億~3000億円規模の第三者割当増資を引き受けて筆頭株主となり、議決権の3~5割を取得する案を軸に最終調整している。

三菱自は資本支援を受け経営再建を加速する一方、PSAは三菱自が持つ電気自動車など環境技術や新興国の事業基盤を活用。

環境車の共同開発なども検討しており、激変期の世界市場を共同で開拓する。

海外勢による日本の自動車メーカーへの大規模な資本参加は、1999年の日産自動車と仏ルノーの資本提携以来、約10年ぶり。

金融危機後の世界的な需要急減と環境車シフトで自動車業界はかつてない試練に直面している。

環境技術を軸とした「三菱自―PSA連合」の誕生は、合従連衡の新たな枠組みとして世界の自動車メーカーの再編戦略に影響を与えそうだ。 (06:00)

たまたま、三菱自動車とPSAに電気自動車のモーターとインバーターを供給している明電舎をよく知っていて、色々な話を聞いていますが、三菱自動車とPSAという自動車業界内では小規模メーカーが電気自動車の製造で先行しているところが歴史的にも面白いことだと見ています。

電気自動車自体は自動車が発明されるとほとんと同時期に出てきていて、電力を使って走るトロリーバスは日本でも昔ありました。
明電舎が電気自動車のモーターを製造することになったのは、電動フォークリフトのモーターなどを生産しているからだそうです。

つまり車輌にモーターを使うこと自体は極端に変わった技術とは言えないのですが、現実には電気自動車の量産はいまだに行われていないようです。
三菱自動車とスバルが電池自動車の商品化を決めていますが、まだ試作程度の生産速度です。

数年前に慶応大学が作った、電池自動車エリーカの開発について聞いたことがあります。

エリーカが8輪のホイール内にモーターがある、インホイールモーターであることは有名ですが、このためにエリーカは外見は自動車のような形をしていますが、構造的には電車に近いです。

平らなフレームの内部に電池を詰め込んで、板状にしたところにモーター付きをホイールを取付、その上にボディーを載せています。

このアイデイアのために、全長が調整できるということで、コミュニティーバスの提案もあります。

外見は自動車ですが、構造が自動車とは言いがたいわけで、衝突安全性などについては「横に置いて」開発したのでしょう。
「自動車の専門家ではこの設計は出来ない」と言われています。

この話を拡大すると、電気自動車を開発するのは自動車メーカーではないのかもしれません。
自動車生産では、エンジンを量産するためにトランスファマシンを製造することが必要ですが、そのためにエンジンの種類は自動車の種類に比べても格段に少なくなります。
これに対して、モーターでは同じ原理のモーターが無数と言って良いほどの多種類が作られています。

つまり、動力機関としてはモーターはエンジンに比べて極端に小規模な生産体制で製作できます。
これらが、三菱自動車・PSAといった小規模メーカーが電気自動車に手を出せる理由でしょう。

電気自動車の将来は、電池のコストが下がらないと内燃機関搭載の自動車とは競争できそうもありません。
その上で、ガソリンスタンドに変わるインフラの整備も不可欠です。
しかし、エリーカの例に見られるように、色々な種類・性能の車を作り分けることが出来る可能性もあるわけで、自動車と電気自動車は別の物と考えた方が妥当かもしれません。

わたし自身は、電気自動車と自動車は自動車と鉄道ぐらいの違いがある交通機関ではないかと思っています。

12月 3, 2009 at 08:53 午前 もの作り | | コメント (0) | トラックバック (0)

東金市女児殺害事件・指紋に疑問符

毎日新聞より「東金女児殺害:レジ袋の指紋、被告と不一致 弁護側鑑定

千葉県東金市で08年9月、保育所園児(当時5歳)が殺害された事件で、殺人罪などで起訴された被告(22)の弁護団が、物証とされる指紋の鑑定を民間研究所に依頼したところ、被告と一致しない結果だったことが分かった。
事件関係者が2日、明らかにした。弁護団は3日に会見し、鑑定結果を公表する見通し。

捜査関係者によると、保育園児の衣服と靴が入れられていたレジ袋から検出された指紋の一つが、県警の鑑定で被告の指紋と一致したという。

この指紋を改めて鑑定したのは、斎藤鑑識証明研究所(宇都宮市)の斎藤保氏。

事件関係者によると、レジ袋の指紋と被告の指紋が、一部合致しない部分があった。

斎藤氏によると、指紋が一致すると判断するためには、指紋線にある12の特徴点がすべて一致しなければ完全一致とはならない。
一つでも特徴が異なる「矛盾点」があれば不一致とされるという。

3日は公判前整理手続きが予定されており、弁護側は今回の鑑定結果を、無罪主張の根拠の一つにする方針。
【中川聡子、神足俊輔】

被告はいわゆる知的障害者だとされていますが、白昼の犯行でありながら目撃者が無く、裏道を複雑にたどったとされていて、その行動自体が無理ではないのか?などと捜査に疑問符が付けられていました。

今回の指紋の不一致問題というのは、どうなのでしょうか?
鑑定自体の見間違え、という論争になってしまうような気もするのですが・・・・・。

全体として、捜査に強いシナリオ性を感じています。
実際はもっと意外なことがあったのではないでしょうか?

12月 3, 2009 at 08:15 午前 事件と裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

裁判員裁判・初の無罪主張その3

サンケイ新聞より「無罪主張の裁判員裁判 実行犯「指示された」と証言

住宅に押し入って女性にけがを負わせ現金を奪ったとして、強盗致傷などの罪に問われた東京都墨田区の探偵業(33)の裁判員裁判の第2回公判が1日、さいたま地裁(中谷雄二郎裁判長)で開かれた。

被告は強盗に加わっておらず、実行犯との共謀が争点。
被告は共謀を否定し、無罪を主張している。

この日は強盗の実行犯の少年が証人として出廷し、検察側主張に添った証言をした。

検察側は少年への証人尋問で、共謀が成立したとされる東京都内のカラオケ店内での赤谷被告とのやりとりについて尋問。

少年は「手足を4本折るぐらいぶっ飛ばして金目のものを持ってくるよう指示された」などと述べた。

また、これに先だって行われた被害者の男性への証人尋問で、裁判員番号2番の女性が質問。

男性の声が聞き取りづらかったのか、「マイクの方に近づいていただけると、話が聞こえるんですが。お願いします」と丁寧に依頼する場面があった。

サンケイ新聞より「実行犯とのつなぎ役、共謀について「記憶ない」 裁判員裁判

埼玉県和光市の住宅に押し入って女性にけがを負わせ現金を奪ったとして、強盗致傷などの罪に問われた東京都墨田区の探偵業(33)の裁判員裁判の第3回公判が2日、さいたま地裁(中谷雄二郎裁判長)で開かれた。

赤谷被告に実行犯の少年を紹介したとされる男が証人として出廷。

男は赤谷被告が少年に犯行を指示したことについて「記憶にない」と証言した。

検察側冒頭陳述によると、男は赤谷被告に強盗の話を聞き、実行犯として少年を紹介。
赤谷被告は東京都内のカラオケ店内で少年に犯行を指示した。
男も同席していた。

男は弁護人からカラオケ店内での様子について質問され、

「少年に『おれたちだけにやらせるつもりなのか』と詰め寄られて恐怖感を感じていたので、ハッキリした記憶はない」
と証言した。

赤谷被告は強盗に加わっておらず、裁判では少年との共謀が争点になっている。
赤谷被告は共謀を否認し、無罪を主張している。

朝日新聞より「裁判員法廷@さいたま「ぶっ飛ばして金を」

◇「無罪」主張の強盗致傷事件/実行役少年が証言

強盗致傷事件をめぐり、さいたま地裁で無罪かどうかが争われている裁判員裁判は2日目の1日、実行役とされる少年の証人尋問が始まった。

被告が事前に犯行を指示したかどうかが争点で、少年は

「被告に『とことんぶっ飛ばして、金か金目のものを取ってきて』と言われた」
などと証言した。

審理されているのは、強盗致傷罪などで起訴された被告(33)。

少年は証人尋問で、「被告と知人の男から(強盗の)指示を受けた」と証言。

事件の2日前にカラオケ店で会った時、被告から「手足を折ってもいい」などと言われたと話した。

被告の様子を「過激で威圧的な話し方だった」と表現。
被告が、インターネットを使って被害者の口座から被告の口座に金を移す提案をしたとも指摘した。

弁護側は

「被告は店で知人と少年の話をすべて聞いていたわけではなく、強盗を指示していない」
と無罪を主張している。

少年は、弁護人から

「店を出た後、被告と連絡を取っていないのか」
と聞かれると、
「被告とは取らず、知人の男と取った」
と答えた。また、裁判員から
「あなたが実行役の中心か」
と尋ねられると、
「自分が他の少年を誘った」
と答えた。

けっこうややこしい話ですね。

実行犯の少年と、被告と、知人の3人が登場人物で、実行犯の少年は被告に指示されたとし、知人も聞いていたはずだ、というのが主張なのでしょう。

被告は指示していない、が主張なのですが、知人は「記憶にない」と証言しています。
しかし記憶にない理由が「少年に『おれたちだけにやらせるつもりなのか』と詰め寄られて恐怖感を感じていたので、ハッキリした記憶はない」では、ちょっと信用しがたい印象ですが、共謀犯というからには、それなりにはっきりと「襲って金を取って来い」という話は伝わっていないと共犯とは言いがたいでしょうね。
証言が信用できない場合に、他の証拠が優先するわけですが、この場合は会話しか無いようですから、非常に重要な証言だったと思います。

単に「痛めつけてこい」が指示だったとすると、強盗にはならない。
しかし、強盗傷害の共犯ですから、立証としては「襲って金品を奪ってくるという指示」が何らかの形で伝わっている必要があると思います。
なんらかのというのは隠語や符丁、動作でも良いようです。

しかし、この場合はその「指示の場」に知人が居たわけで、知人が「聞いていない、見ていない」ではいきなり証拠が極めて弱くなるし、「聞いたが指示とは思えない」となると、それだけでも相当に大変でしょう。

元もと、この事件では検察側は「聞いている」であって、弁護側は「全部は聞いていない」なのですから、知人の証言が「記憶にない」では、検察側はこの段階ではかなり厳しい状況に追い込まれたような印象を受けます。

12月 3, 2009 at 12:50 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.12.02

裁判員裁判・初の無罪主張その2

「裁判員裁判・初の無罪主張」の内容が分かりました。
朝日新聞より「裁判員法廷@さいたま/初の「無罪」主張

◇真実見極め 長期戦/候補者「外れてほっと」

県内で初めて無罪かどうかが争われる裁判員裁判が30日、さいたま地裁(中谷雄二郎裁判長)で始まった。

和光市で昨年起きた強盗致傷事件をめぐり、「少年らを集めて強盗を指示した」とする検察側に対し、被告は共謀に関する事実関係を否定して無罪を訴えた。裁判員は、約2週間の長期日程での判断が求められている。

強盗致傷罪などに問われているのは東京都墨田区、探偵業(33)。

起訴状によると、知人の男や少年らと共謀して昨年9月21日、和光市の経営コンサルタントの男性宅に侵入して男性と妻に包丁を突きつけ、約53万円などを奪ったとされる。

実行行為には加わっておらず、事前に犯行を指示したかどうかが争点。

初公判の罪状認否で「共謀はしていない。無実だ」と強調した。

冒頭陳述でも、共謀の有無をめぐって検察側と弁護側の主張が対立した。

地裁は当初、120人の裁判員候補者を選んだが、繁忙期や長期日程、インフルエンザの影響などを考慮して10人を追加した。
30日の選任手続きには、辞退が認められた人らを除く51人が出席を求められ、41人が参加。
選任されずに安心した表情の人もいた。

さいたま市のペット雑貨販売店長の女性(25)は、クリスマス商戦の最中で上司から「タイミングが悪かったね」と言われた。
いったん勤務を外れた日程を再調整し、職場に戻るという。
上尾市の主婦(58)は「有罪か無罪かを自分で考えるのかと思うと、胃が痛い。選ばれなくてほっとした」と話していた。

◆無罪主張の強盗致傷事件冒頭陳述(要旨)

◇検察側

被告は昨年8月下旬か9月上旬、知人に強盗の実行役を集めるように依頼した。

知人と少年らと被告は昨年9月19日、東京都新宿区のカラオケ店で打ち合わせをした。

そこで被告は被害者の男性を襲うよう指示。
被告と知人は男性宅の地図を渡し、被告が「ぶっ飛ばしてでも、現金と金になるものを全部持って来い。
手足4本、折っちゃってもいい」などと告げた。

男性に大けがをさせたかった理由は、暴力団組長と男性の間の金銭トラブルだった。

組長にかわいがられていた被告は、組長の裁判を男性が傍聴していることを不快に思っていて、同22日に予定されていたその裁判を見せたくなかった。

指示を受け、少年ら4人のグループは同21日未明に男性宅に侵入。男性やその内縁の妻に包丁を突きつけ、現金計53万5千円と腕時計など約144万2千円相当を奪った。
その際、妻に約1週間のけがを負わせた。

◇弁護側

被害者の男性に関する金銭トラブルの解決を被告が知人に依頼したところ、被告の知らないところで強盗事件が起きてしまった、というのが真相だ。

被告は知人や少年らに、強盗を依頼したり指示したりしたことはない。

検察側が「指示した」というカラオケ店では、知人と少年たちの会話をすべて聞いていたわけではない。

自分の携帯電話にかかってきた相手と話すため、部屋の外に出ている。
部屋にいる間に、強盗の話は一切なかった。

被告は、この後、少年らがどんな行動を取ったのか知らない。

金も一切もらっていない。

事件後、男性との共通の知人から「被害者はとても怒っているが、500万円出せば何もしないと言っている」と告げられた。

結果として少年らが被害者に危害を加えたのなら責任の一端があると考え、500万円をこの知人に渡した。

「強盗をしよう」と話し合った証明はなく、無罪だ。

弁護側の主張は

「強盗をしよう」と話し合った証明はなく、無罪だ。
に集約されるのでしょう。

「強盗」というのは実効行為としては極めてはっきりしていますから、それを指示し実行させたというのも明確な指示があることが事件の前提でしょう。
検察側が「強盗しろ指示したと解釈できる」という論理である場合には、そこに解釈論を持ち込めるのか?とはなるでしょう。いわば「強盗しろという意外に解釈のしようがない指示があった」ということにしないと、「強盗」という言葉が無いようなケースでの「指示」の解釈は出来ない。

「ボコボコにしろ」ぐらいの話があったとして、それが「強盗を実行しろ」にはならないわけですが、被害者と加害者は元もと知人であるようですから、「襲って金を取ってこい」といった形で「金」という言葉がキーワードのように思います。

取り組んでいる裁判員の方は大変でしょうが、非常に興味深いし、警察・弁護の対立が厳しいですから、どのよう判決であっても控訴があると予想します。
それによって裁判員裁判の評価も出て来るわけで、注目するべき裁判でしょう。

12月 2, 2009 at 09:19 午前 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.12.01

ニューヨーク・パリ間往復飛行

CNN.co.jp より「NY発エールフランス機、パリ到着前に引き返す

CNN)
ニューヨークからパリに向かっていた仏航空会社エールフランスのエアバスA380型旅客機が、パリ到着まであと1時間半の段階で引き返し、ニューヨークに戻った。エールフランスが11月30日明らかにした。

エールフランスは小さな技術的問題があったと述べるにとどまり、具体的な言及を避けた。問題発生を受けて操縦士らは、地上点検の実施に向け、手順に従い安全措置として引き返しを決めたとされる。

A380型機は米東部時間11月27日午後10時17分、ニューヨークのケネディ国際空港に到着した。整備作業後、大西洋横断飛行を完了した。

エアバスは引き返しの原因について詳しいコメントを避け、エールフランスの整備チームの問題であるとの認識を示した。

エールフランスのA380型機は引き返しの数日前にあたる11月21日に大西洋横断便に投入され、パリのシャルル・ドゴール空港からケネディ国際空港に到着した。

エールフランスはA380型機を導入した世界4番目の航空会社で、1機目は10月末に引き渡された。

ニューヨーク・パリ間は7時間半ぐらい掛かるんですよね。
だから、あと1時間半ではほとんど到着しているようなもので、そこからまたニューヨークに引きか返すというのは、何があったのだろう?
だから、ニュースになるのでしょうが・・・・・。

2ちゃんねるでは「忘れ物取りに戻ったのじゃないのか?」となっております。

それにしても、13時間以上に飛び続けたことになるわけで、よくもそんなに燃料を積んでいたものだというのも含めて、呆れます。

12月 1, 2009 at 07:50 午後 海外の話題 | | コメント (0) | トラックバック (0)

裁判員裁判・初の無罪主張

朝日新聞より「判決まで12日間、最長の裁判員裁判始まる さいたま

さいたま地裁で30日、11日午後の判決まで12日間にわたって続く強盗致傷事件の裁判員裁判が始まった。

初公判から判決まで2~4日の例が多い裁判員裁判で、12日間はこれまでで最長。裁判員の負担は大きくなる。

午前中の選任手続きでは6人の裁判員のほか、審理途中で裁判員が出られなくなった場合に備える補充裁判員が4人選ばれた。
補充裁判員は通常は2人ほどだが、期間が長いために人数が多くなった。

審理されるのは、東京都墨田区の探偵業(33)。
昨年9月、数人と共謀して埼玉県和光市の住宅に侵入し、包丁や鉄パイプで住人を脅してけがをさせ、現金53万円余や腕時計などを奪ったとして起訴された。

しかし、被告は公判前から無罪を主張。

午後に始まった初公判でも「共謀は一切していない。私自身は無実」と訴えた。

被告は実行行為に加わっていないことから、事前に実行者に指示していたかどうかが有罪・無罪を左右する争点に。

事件に関係する人数が多いうえ、無罪主張に伴って共謀したとされる少年や被害者ら7人の証人尋問を実施する必要が生じたため、審理期間が長くなった。

裁判員の負担に配慮し、検察側と弁護側は質問を絞り、毎日午後4時までには審理を終えたい考えだ。

初日の審理は冒頭陳述や証拠調べなど1時間余り。
合間に3回、約40分間の休憩が取られた。裁判長は「争点や証拠の理解を深めるため」などと休憩の理由を法廷で説明した。(沼田千賀子)

■2日目以降の審理予定

09年11月30日(月)裁判員選任(計10名)・冒頭陳述
09年12月01日(火)証人尋問
09年12月02日(水)証人尋問
09年12月03日(木)
09年12月04日(金)被告人質問など
09年12月05日(土)
09年12月06日(日)
09年12月07日(月)論告求刑など
09年12月08日(火)
09年12月09日(水)評議
09年12月10日(木)予備日
09年12月11日(金)評議、判決

今までの裁判員裁判が量刑判断だけであったので、否認事件では裁判員裁判が出来ないのではないのか?という懸念を多くの専門家が述べていて、裁判員裁判にとって正念場といったところです。

補充裁判員を4名にして総数10名を選任したのですから、裁判員になった方々も「なんで当たったんだ」という感もあるでしょうが、頑張って欲しいものです。

この事件では、被害者は脅されて怪我もしているわけですから、被告が犯行に加わったとの証言は出来ないでしょう。
そこで共謀罪になっているわけですが、これは実行犯の証言によるわけで、さらに被告が実行犯に話した内容が、犯行を支持するものであったかが、問題になるわけです。

実行犯が被告の指示に従って被害者を襲った場合は、実行しない被告が正犯であり、実行犯が従犯になる可能性もありますね。
これはオウム事件などでも問題になった例でしょう。

こんな事を考えると、弁護側の力の問題が大きいかとも思いますが、それ以上にこの短期間に審理を進めて終わらせることが出来るものなのか?がやはり心配です。

12月 1, 2009 at 09:29 午前 裁判員裁判 | | コメント (1) | トラックバック (0)

2009.11.29

神戸市・補助金返還判決の帳消し条例の是非その3

Google のブログ検索で「神戸市 外郭団体 大阪高裁」をキーワードにすると、今回の高裁判決を論じたブログが17本見つかります。

中には新聞記事だけを出していて、ブログオーナーの意見が無いものもありますが、他方で地方議会の議員など相応に専門家の方も居ます。
また、記事の内容も「市長(市議会)がダメだ」と決めつける論調など割とブロガーに多い記事と、判決文を読みたいというのもあります。

ところが不思議なことに、問題の条例を引っぱっている記事には当たらなかった。

そもそも、裁判所の決定について議会がひっくり返すことは許されるべきです。
もちろん、合理的で正当な理由を住民に説得できるという前提のもとにです。

今回の住民訴訟は、納得出来ないから訴訟になっているわけで、議会の決定を住民が納得してる場合にも、条例で判決通りにしないことまでも許さない、というのはヘンでしょう。

つまり、今回の高裁判決で注目するべきは、条例の中身です。
しかし、上記の通りに検索で見たブログで条例を引っぱって論じているブログは見つからなかった。
所詮はその時の検索だから、たまたま引っかからなかったのは間違えないですが、議論の中心を外していると感じるのも確かです。

高裁判決に、

請求権放棄に伴う市財政への影響の大きさや、市が市長らの資力を検討していない点などを挙げ、「議決に合理的な理由はない」と指摘した。

とあると報道したから、裁判所がこの点を評価(程度問題の判断)があることで、裁判所が条例を是とする条件が動く、と受け取るのは当然でありますが、わたしが掘り出した条例の文章では「損害賠償請求権は,放棄する。」としか書いていない。
高裁は「検討していない」と言ったから「何か書いてあるだろう」と普通は思うでしょうが、これでは「理由が書いてない」でしょう。

すべての法律行為には、理由の説明があって、結論が続くのが当然です。
もちろん当然のことだから理由を説明しない場合はありますが、基本的人権の擁護、とか財産権の存在、といったものはわざわざ説明することはない、というものであって説明無く「損害賠償請求権は,放棄する。」は通用するわけがない。

わたしは、高裁判決に注目することも大事だが、こんな条例を可決した市議会の対応が大問題だろうし、市の法務担当者や地方自治法に穴が空いているのではないのか?とも思う。
単にトンでもない市長がヘンなことをやった、という理解ではまずいことだと思う。

【追記】

「説明するまでもなく結果を示しても構わないこともある」と書きましたが、今回の条例の問題は「一審の判決を条例によって実施しない」ことの是非が問題とされました。
よってこの条例の根源は、判決よりも条例が優先することは説明するまでもない。という原理に基づくものです。

このようなことができる論拠を議会の決定による、としているわけですが、それでは議会は裁判所の判決を理由を示すことなく否定できるということになってしまいますから、これ自体が有り得ない考え方です。

高裁の判決が「検討していない」としたのは、判決に従わない理由を説明するべきところを、何もやっていないことを問題にして、検討していないとしたのでしょう。
普通に考えて、判決に従わない理由の説明は相当に高度なものを示す必要があるはずで、検討が不十分だというだけで、条例を正当化することが出来ない、という判決でも結果は同じであったでしょう。
それを「検討していない」ですから、裁判所としては議会の市長の思惑であろう「条例を制定するだけでよい」のちょうど逆で「条例を制定する理由には十分な説明と検討が不可欠だ」と言うことでしょう。

神戸市の矢田立郎市長は「きわめて意外な判決で、たいへん驚いている。

地方自治法に従い、適法に行われた議会の議決を否定するものであり、判決内容を精査したうえで、上告する方向で検討したい」というコメントを出しました。

市長は、このコメントによれば「議決に理由はいらない」という主張なのですね。

11月 29, 2009 at 11:59 午後 事件と裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

弁護士バー計画が座礁

サンケイ新聞より「弁護士バー 身内が待った 民間との仲介業は法に抵触

■弁護士会、近く注意文書

弁護士がバーテンダーになって酒を振る舞いながら法律相談もする「弁護士バー」。

そんな店舗を東京都内の弁護士が飲食事業者らと共同で計画したところ、弁護士会から“待った”がかかる事態となっている。

「弁護士資格を持たない者が報酬目的で法律事務に参入するのは違法」というのが弁護士会の言い分。
近く注意の文書を出すという。
一方、弁護士側は「法律違反には当たらない」と反発、何とか店をオープンさせたい考えだ。

出店計画をしているのは第二東京弁護士会(二弁)所属の外岡潤弁護士(29)。

友人のシステム開発会社役員、三上泰生理事長(33)と8月に出店の母体となる「弁護士とみんなの協会」を立ち上げた。

三上さんが「トラブルが起こってから弁護士を探しても遅い。
普段から一般の人が弁護士と気軽に交流できる場が必要」と外岡弁護士に設立を持ち掛けた。

■気軽な交流必要

交流の場の具体例として持ち上がったのが、弁護士自らがバーテンダーとして酒を提供する弁護士バーだった。
外岡弁護士は「バーなら会社勤めの社会人が仕事帰りに立ち寄りやすい」と説明する。

協会と飲食事業者による共同経営とし収入は折半。

従業員として常駐する弁護士は無報酬で、客の要請があれば別室などで法律相談を行い、契約に至れば弁護士報酬を受け取る構想だった。

その際、弁護士は別室の利用料などを協会と飲食事業者に定期的に支払うことにしていた。

10月4日には約100人を招いた協会創立記念パーティーも開き、あとは具体的な出店準備をするだけだった。

■議論は平行線

だが計画を聞いた日本弁護士連合会(日弁連)が、事業内容について「民間が入っての営利目的の弁護士仲介業にあたり、弁護士法に抵触する」と問題視。外岡弁護士が所属する二弁が対応に乗り出した。

弁護士法では、弁護士の仲介業務を含む法律事務の取り扱いが、弁護士か弁護士事務所を法人化した弁護士法人にしか認められていない。

そうした事業を行う非弁護士(組織)に弁護士が協力することも禁じられている。
協会や飲食事業者が関与する点が問題となると判断されたようだ。

二弁では外岡弁護士から事情を聴いたが、従う姿勢がないことなどから近く会長名で注意の文書を出すことにした。

二弁の味岡良行副会長は「顧客が弁護士に法律相談をすることを容易にする時点で事実上の仲介業務」と指摘。

店がオープンした場合には「それなりの措置を取らなければならない」と、弁護士法違反罪での刑事告発も示唆している。

これに対して、外岡弁護士は「あくまでも弁護士と顧客が直接やり取りをする場の提供であって、法律事務の仲介にはあたらない。何がだめなのか基準をはっきりと示すべきだ」と反論、何とか店を開きたい考えだ。

米国ではカリフォルニア州に弁護士がコーヒー(10ドル=860円~45ドル)を提供しながら法律相談に乗る「リーガル・カフェ」がある。

二弁の味岡良行副会長は「顧客が弁護士に法律相談をすることを容易にする時点で事実上の仲介業務」と指摘。

う~ん・・・・、容易にする時点で事実上の仲介となる、とまで拡大解釈するとネット上や本や雑誌にある弁護紹介記事も、弁護士法違反だと言えそうですね。

弁護士パーの計画では、仲介自体に仲介料金を取らないのだから報酬目的ではない、ということだったのでしょう。
それを間接的にしろ場所を用意したのだから、というのは一見すると分かりやすいようだけど、現実問題としてネットでの紹介とか、色々なケースがあるし、そもそもネット上でも「弁護士を紹介して欲しい」という声があるわけで、 それらをどう交通整理できるのか?

二弁の決定は、いささか以上に乱暴すぎる判断だと感じます。

11月 29, 2009 at 10:32 午後 セキュリティと法学 | | コメント (0) | トラックバック (0)

神戸市・補助金返還判決の帳消し条例の是非その2

「神戸市・補助金返還判決の帳消し条例の是非」は、けっこう力を入れて書きました。
条例を探し出すのに、いささか手間取りましたが、神戸市のHPの構造が理解しがたいものであるために、ウロウロして「わざと隠しているのではないのか?」とまで思いかけた程です。

結果として Matimulog さん(町村教授)にもご紹介いただいています。

その後、関連記事を調べていたら、原告側弁護士が阿部泰隆弁護士(元神戸大学教授)だと知りました。神戸市にとっては相手が手強すぎる(^_^)

わたしが阿部泰隆先生に注目したのは「犬も歩けば行政法に当たる」「六法の半分分捕る行政法」といった阿部語録を知り司法試験に行政法を取り上げるべきだと主張されていたことを知ってからです。

そういう論客ですから、今回の事件についても書かれています。 「神戸市議会の権利放棄議決」より

神戸市議会での陳情  外郭団体有給職員派遣の試み、賠償請求権放棄の試みは、法律違反

神戸市議会議長 殿

                                原告訴訟代理人弁護士・中央大学教授 

               2009年2月23日                    阿部泰隆 

神戸市公益法人等への職員の派遣等に関する条例の改正案は違法・無効である

 神戸市長が議会に提案した神戸市公益法人等への職員の派遣等に関する条例の改正案は一見明白に違法無効である。その要点は、2つある。

一   権利放棄条項は無効

 三セクへの不当利得請求権、市長個人への賠償請求権を放棄するとの条項は、住民の提起した裁判で、市が獲得した財産を、市民の利益に反して、市長個人の私的利益のために、及び三セクという神戸市とは別団体の利益のために、市民から信託された財産を善良な管理者として注意して管理すべき職務に反して、ドブに捨てるもので、職務義務違反である。

 放棄するとの市長の提案の根拠は、権利の放棄を議会の議決事項とする地方自治法96条であるが、これは、権利の放棄は、重要であるから、執行機関だけで判断してはならず、議会も判断するというダブルチェックの制度にすぎず、善良な管理者の注意義務を免除するものではない。議会の放棄議決は、放棄が有効のための必要条件の一つにすぎず、市民の信託に反しないことであって初めて十分条件を満たすのである。

 もっとも、権利の放棄も、やむを得ない場合には許されるが、市長は、違法過失により市に損害を与えたのであるから、払えるだけは払ってもらうべきであり、全額を免除する公益性はない。また、三セクには公益性があるとしても、職員は地方公務員法上、神戸市の職務に専念しなければならないのであり、公益法人派遣法では、市の仕事をしている場合だけ、有給としているのであるから、それ以外は三セクの職員に市から給料を払う公益性はないのである。したがって、市の権利を放棄する公益上の理由はないから、放棄は無効である。

この放棄議決は司法で決まったことを覆そうとするもので、法治国家ではありえない司法への挑戦である。

 そして、今回議会が放棄議決をすれば、その議員は、違法な放棄に荷担して、市に損害を与えたので、違法なカルテルで市に損害を与えた企業と同じく、共同不法行為者であり、住民訴訟で、市長に対して、議員に対して、市へ連帯して賠償するように請求せよとの訴訟が可能である。市長個人では払えない数十億円も、議員が連帯すれば払えるであろうから、市としては、むしろ、議会が違法な議決をするほうが損害を回復できるという皮肉な結果になる。さらに、市民の権利の放棄は刑法の背任罪に当たる可能性が高い。前例はまだ見つからないが、私は当たると解釈している。

 この議案への賛成は重大事件であるから、記名式にして、賛成する議員の名前を残すべきである。さもないと全員に賠償請求することになる。

 しかも、その提案者は、責任を負っている市長である。司法で違法・過失ありとされて、賠償義務を課された市長が、議会にその責任を免除してくれと自ら平気で言うのにはあきれるしかない。他の人が、市長は、市に貢献したから、何十億も払わせて気の毒と言って、破産しない程度で勘弁しようと言うなら分かる。しかし、市民への責任をないがしろにして、過失を犯して、賠償責任を負っている市長が、自分の債務を全部勘弁してくれと言うのであるから、こんな図々しいことがありますか。

 私は、市長にも、払える分を払ってもらえば、残りは免責して良いという意見を持っていたが、このように司法と法治国家に挑戦して責任を逃れようと悪あがきする市長の姿を見れば、悪質な確信犯であり、情状酌量の余地なしと、全部払ってもらうべきだとの意見に変えようかと思っている。

 二    改正条例では、有給派遣を正当化できない

 派遣法6条1、2項は、職員派遣は無給を原則とし、市の業務を行うなら有給派遣も許されるとしている。改正条文4条2項、8条2項は、「派遣先団体における業務の従事を本市における勤務、・・・とみな」している。これは、有給派遣を適法にしようというものであろうが、明らかに無効である。職員の従事する業務が市の業務になるかどうかは事実問題であり、条例でみなすとすることはできない。市のために働いていない人を市のために働いていると見なして、給料を市から出すことはできないのである。この条例改正案は、派遣法6条2項に違反して無効である。

 これもまた、法6条2項を潜脱しようとする規定である。外郭団体訴訟大阪高裁判決(平成21年1月20日)で、職員を無給で派遣する代わりに人件費を補助金として支給することを、給料付派遣を原則禁止する法律の脱法行為と指摘されたにもかかわらず、では、神戸市の業務をしていない外郭団体に有給で職員を派遣して、その仕事を神戸市の業務とみなそうというのであるから、これまた脱法行為である。

 市は、本当に損したのかという疑問があると聞くが、市と外郭団体は別団体であるから、市民の税金で外郭団体の職員を雇えば、それは市の損害である。外郭団体が市と同じ仕事をしているのであれば、市の組織にすべきなのである。

三    議会のなすべきことは

 議会のなすべきは、違法行為オンパレードの市長を支えるのではなく、まったく逆で、市長の違法行為を早期に是正させること、市長不信任決議をして、法令に則って、市民を尊重する市長を市民に選出してもらうことである。

 最後に、議会での審議の仕方も不適当である。今回、市長とその部下は議員の方々にたくさんご説明しているはずであるが、私と原告住民への説明の依頼はない。この事件は、市長が、公金を違法に支出して、市に損害を与えたので賠償を命ぜられたのに免責してくれというのであるから、いわば泥棒側である。泥棒が勘弁してくれと言うときに、なぜ被害者である住民、特に住民の被害を防止した代理人と原告住民の意見をなぜ真っ先に聞いてくれないのか。

 議会の姿勢自体、市民の代表としてはふさわしくない、不公平なものである。しかも、この意見陳述自体、「陳情」という時代錯誤である。

  私は、42年も住み、我が愛する神戸市がこの惨状であることに情けなくなる。

 賛成する議員には、司法への挑戦、国法への挑戦、自ら市へ膨大な債務を負担するという危険という、異常な行為をしているとの自覚を持ってもらう必要がある。

今回の判決に対する、見解は近いうちにアップされるでしょうが、

提案者は、責任を負っている市長である。司法で違法・過失ありとされて、賠償義務を課された市長が、議会にその責任を免除してくれと自ら平気で言うのにはあきれるしかない。

他の人が、市長は、市に貢献したから、何十億も払わせて気の毒と言って、破産しない程度で勘弁しようと言うなら分かる。

しかし、市民への責任をないがしろにして、過失を犯して、賠償責任を負っている市長が、自分の債務を全部勘弁してくれと言うのであるから、こんな図々しいことがありますか。

私は、市長にも、払える分を払ってもらえば、残りは免責して良いという意見を持っていたが、このように司法と法治国家に挑戦して責任を逃れようと悪あがきする市長の姿を見れば、悪質な確信犯であり、情状酌量の余地なしと、全部払ってもらうべきだとの意見に変えようかと思っている。

ここに集約されている、阿部泰隆先生の考えが高裁で「その通り」とされたと言って良いでしょうから、どんなコメントを出されるのか楽しみです。

11月 29, 2009 at 12:23 午前 事件と裁判 | | コメント (5) | トラックバック (0)