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2009.10.31

ネット犯罪に関する白書

読売新聞より「ネット犯罪「裏経済白書」

ネット犯罪を中心としたアンダーグラウンドエコノミー=地下経済が成長している。個人データ販売やスパム大量送信で収益を出し、さらにネット犯罪そのものに使うためのツール、手段でも金儲けをしている。(テクニカルライター・三上洋)

スパムメール送信が手っ取り早い収益源

ドイツのセキュリティー大手・G Dataが、「アンダーグラウンドエコノミー」という調査リポートを発表した。ネット犯罪の裏経済白書ともいえるもので、ネット犯罪グループの動きや取引の実態などを詳しく分析している。

まず白書に掲載されている、ネット裏市場における価格表を見てみよう。

ネット犯罪者が集まるコミュニティーでは、様々なデータやサービスが販売されている。

最もわかりやすいのはクレジットカード情報、メールアドレス、ゲームのアカウントといった個人情報の販売だ。例えばクレジットカード情報は、272円から4万764円程度で販売されていた。

注目すべきは価格差が非常に大きいことだ。

例えばクレジットカード情報では、番号と有効期限だけだと安いが、生年月日、住所、電話番号、メールアドレスといった付随する情報があると100倍以上も高くなる。

同様のことはメールアドレスでもいえる。特定のジャンルに絞ったメールアドレスなら価格がハネ上がる。そのデータが犯罪者によってどこまで使い物になるか、という基準で価格が変わってくるわけだ。

もう一つ注目すべきは、スパムメール(迷惑メール)送信の価格が高いことだ。100万通のスパムメール送信の代金は、約4万円から約10万円程度とされており、ほかのサービスやデータ販売よりもまとまった金になりやすい。

G Dataによれば、100万通のスパムメール送信では、2万台規模のボットネット(一般ユーザーのPCを乗っ取ったネットワーク)なら毎秒2通のペースで送信できるため、約25秒でその仕事を終えてしまうという。

ネット犯罪者にとっては、もっとも手っ取り早く儲けられる手段なのだ。

ネット犯罪フォーラム同士の抗争も

ネット犯罪者のフォーラムにおける売買の書き込み。一般ユーザーのPCを足場とするボットネットを販売している(アンダーグラウンドエコノミー:G Data)

ネット犯罪者たちは、フォーラムを通じて情報交換・売買などを行っている。ネット犯罪者が集うフォーラムは、掲示板やメッセージ機能、売買するための市場(マーケットプレイス)などが一体化したものだ。

初心者向けの内容は公開されているが、掲示板やダウンロードなどの機能は、アクセス制限をかけている場合が多い。

フォーラムの市場では、盗難クレジットカード情報、メールアドレスリスト、ボットネットなどが売買されている。この市場を広告として使い、実際の取引はICQやYahooメッセンジャーといったインスタントメッセンジャーを使う場合が多いそうだ。

このようなネット犯罪フォーラムは多数あるが、ナンバー1の座を巡ってのフォーラム間の抗争が常にあるとのこと。

同業者のサイトを改ざんしたり、DDos攻撃によってサイトをダウンさせるなどの抗争が行われている。ライバルのフォーラムを改ざんすることが一種のステータスとなるそうで、これは暴力団の覇権争いにも似ている。

もう一つ面白いのは、ネット犯罪者をだます詐欺者「スキャマー」が多いことだ。

いわば「詐欺者中の詐欺者(G Data白書による)」であり、ネット犯罪のサービスを提供すると称してダマし、前払い代金だけを盗み取る。

多くのフォーラムが、このスキャマー対策に頭を悩ましているようだ。
そのため多くのフォーラムでは、販売者、購入者の評価システムがあるとのこと。

Yahoo!オークションの評価システムと同じものが、ネット犯罪者のフォーラムにもあるのだから面白い。お互いが信用できない犯罪者だけに、なおのこと信用度が重要になるという皮肉な話だ。

犯罪ツール・身元隠しサービスで儲ける

クレジットカード情報やネット送金アカウントを売買するショップ(アンダーグラウンドエコノミー:G Data)

ネット地下経済では様々なデータ・サービスが販売されている。前述したスパムメール送信代行、個人データ販売は、多くのネット犯罪フォーラムで行われている。それ以外で目に付くのは、ネット犯罪自体に使うサービス、データの販売だ。いわば地下業界の玄人向けのサービス・データであり、身元隠しや犯罪ツールとして利用されている。

●コンピューターのボット化

一般ユーザーのパソコンをウイルスに感染させ、ロボットのように遠隔操作するもの。ネットワーク化したボットネットは、スパム送信やサイト攻撃などに使えるため、ネット犯罪の温床となっている。ボットネットの時間貸しなども盛んに行われている。

●カーダブルショップ(Cardable Shop)のデータ

カーダブルショップとはクレジットカードのチェックが甘いショップのこと。盗難クレジットカードでも購入できてしまうショップの情報が販売されている。

●身元隠しのためのプロシキサーバー

プロキシサーバーとは中継サーバーのこと。追跡を逃れるために匿名性の高いプロキシサーバーが有料でレンタルされている。

●防弾ホスティング

追跡を逃れるために匿名で利用できるレンタルサーバー。違法商品を並べるショップ、ウイルスのダウンロード元サーバー、ボットへの命令送信サーバーなどに利用される。ロシア、トルコ、パナマ所在のサーバーが多い。

●ドロップゾーン

商品の中継・転送サービス。盗んだクレジットカードなどで購入した商品を、いったんこの場所に送り転送してもらう。追跡されにくい第三国に置かれている場合が多い。

このように玄人向けのサービスが多く提供されており、これだけでビジネスが成り立っている。犯罪に直接手を染めるのではなく、犯罪者向けのツールを提供することで金儲けをしていることになる。

日本でも同様のことが進行中?

このようなブラックマーケットは、欧米を中心とした英語圏や、ロシア、中国などが中心となっている。それに対して日本は、今まで比較的安全なエリアだと思われてきた。
日本語という言語の壁があるために、組織的なネット犯罪の被害を受けにくいと考えられていたからだ。

しかし、その状況も崩れつつある。G Dataによれば「日本でも地下経済の発展が進行している」とのこと。

今までのスパムメールや詐欺は、下手な日本語訳だったり、商品が日本にふさわしくなかったため、あまり大きな被害は出ていなかった。

それが日本でもなじみのあるスタイルに変わりつつあるという。「スパムメールは、今まではバイアグラなど海外で人気のある商品が多かったが、日本向けに競馬やパチンコなどのスパムメールが増加。日本の政治や社会状況に合わせたタイトルをつけるなどの工夫をしている。ボット利用と思われるスパムメールが増えてきた(G Data)」とのことだ。

私たちが注意すべきは、地下経済の発展に手を貸したり、加害者にならないようにすることだ。

例えばウイルス対策ソフトのないパソコンは、ボットに感染することで知らないうちにスパム送信などに利用されてしまう。パソコンのセキュリティーをしっかりしないと、自分が被害に遭うだけでなく加害者にもなるので注意したい。

なかなかここまで整理された情報が公表されることはないので、良い資料だと思います。

G Data日本法人のHPに「ネット犯罪「裏経済白書」を公開」とのプレスリリースがあります。

ネット犯罪「裏経済白書」を公開 2009.10.29

G Data Software株式会社(本社:東京都千代田区、代表取締役社長:Jag 山本)は、アンダーグラウンドで行われているネット犯罪の仕組みや商品・サービスの取引の実態を調査し、ホワイトペーパー「アンダーグラウンドエコノミー」としてまとめました。

これにより、ネット犯罪の経済活動が、実際どのように行われているのかを把握し、被害を最小限に抑えるための手がかりとしてほしいと考えます。

ネットの裏市場はどのように動いているのか、何を取り引きしているのか、どのような役割分担がなされているのか、そして、どのように世界中にネットワークを張りめぐらしやりとりをしているのか――こういった疑問に答えるべくジーデータのセキュリティラボでは、数カ月にわたって実際に不法な取引場や犯罪者専用板に潜入し調査を行いました。

その結果、実際の経済体制と同様に、地下経済もまた、グローバルなネットワークをもち、高度に組織され、きわめて効率のよい販売戦略で働いていることが明らかになりました。

ネット犯罪のコミュニティは、世界中に広がっており、よく組織化されて、かつ、きわめて高い匿名性を維持しています。

経済原則がはっきりとしており、犯罪者たちは利益を最大にすることに専心しています。

この市場は需要と供給のシンプルなバランスで成り立っています。
それは同時に、弱者はたちまちポートフォリオから除外されることをも意味します。

裏市場で提供される商品やサービスは、コンピュータウイルス、ボットネットレンタル、サイバー攻撃など、きわめて広範囲にわたっています。

企業相手だけでなく、競争相手に仕掛けられることもあります。

人気商品は、DDoS攻撃、スパムメール送信、盗まれたクレジットカード情報などです。

銀行から金銭を奪うためのハードウェアまでとりそろえています。

商品とサービスを提供する者同士の競争は熾烈です。
当然、価格設定にはかなりの注意が向けられています。

同時に広告営業も盛んで、裏の広告代理店がバナーを作成・掲示するほか、デザインやプログラミング、およびウェブホスティングの世話をする場合もあります。

さらには、初心者でもスムーズに実行できるようにコンサルタントサービスも含み、フォーラムやFAQ、ビデオチュートリアルも充実し、かつ、リーズナブルな価格で提供されています。

このコミュニティの通信手段には、インスタントメッセンジャーまたはインターネットリレーチャット(IRC)がよく使われています。それは、通常の検索では見えてこない、裏市場の入り口でもあります。

【ネット犯罪「裏経済」白書 目次】

1 概要: 無邪気なハッカー攻撃からドル箱市場を狙った犯罪へ
2 裏経済の構造
 2.1 犯罪者のたまり場とコミュニケーション手段
 2.2 盗難クレジットカード情報の販売
 2.3 スキャマー
3 取引される物品とサービス
 3.1 金になるデータ
 3.2 プロキシを利用したトラッキング回避
 3.3 コンピュータのボット化
 3.4 防弾ホスティング
 3.5 収入源となるスパムメール
 3.6 DDoS攻撃がサーバーをダウンさせるメカニズム
 3.7 偽装IDを使ったID隠蔽
 3.8 カーディング詐欺
 3.9 スキミング詐欺
 3.10 フィッシング詐欺
 3.11 ボットネットとその構成
4 現金化
5 結論: サイバー犯罪は更なる増加へ
 付録1 裏市場における価格表
 付録2 用語集

「アンダーグラウンドエコノミー」(PDF/日本語)

G Data Software

White Paper 2009

―アンダーグラウンドエコノミー―

G Dataセキュリティラボ
マークアウレル・エスター&ラルフ・ベンツミュラー
(岸本眞輔・瀧本往人 訳)

目次

1 概要: 無邪気なハッカー攻撃からドル箱市場を狙った犯罪へ 3
2 地下経済の構造 4
2.1 犯罪者のたまり場とコミュニケーション手段 4
2.2 盗難クレジットカード情報の販売 6
2.3 スキャマー 9
3 取引される物品とサービス 11
3.1 金になるデータ 11
3.2 プロキシを利用したトラッキング回避 12
3.3 コンピュータのボット化 12
3.4 防弾ホスティング 13
3.5 収入源となるスパムメール 15
3.6 DDoS 攻撃がサーバーをダウンさせるメカニズム 15
3.7 偽装ID を使ったID 隠蔽 16
3.8 カーディング詐欺 16
3.9 スキミング詐欺 17
3.10 フィッシング詐欺 18
3.11 ボットネットとその構成 19
4 現金化 22
5 結論: サイバー犯罪は更なる増加へ 24
付録1 裏市場における価格表 25
付録2 用語集 28

1 概要 無邪気なハッカー攻撃から ドル箱市場を狙った犯罪へ

ここ数年の地下経済(アンダーグラウンドエコノミー)の成長ぶりには、著しいものがあります。
一昔前までのハッカーといえば、自己の能力をひけらかしたり、多数の人々を困難に陥れて楽しんだ りといった、愉快犯的な犯行を行う人物がほとんどでした。それが、今では、大量のコンピュータを 不正プログラムに感染させて不正に操作し、スパムメールの送信、各種個人情報の窃取、様々な標的 への攻撃を行う人物を指すようになりました。

何故ハッカーの性質は、これほどまでに変わったのでしょうか?

それは、巨大なビジネスチャンスが、そこにあるからです。

急速なインターネットの普及に伴い、そこにビジネスチャンスを見出した犯罪者は、ハッカーを巻 き込み、次第に地下経済を形成してゆきました。地下経済の構造といっても、その構造は表社会のそ れと全く変わりません。メーカー、リセラー、サービス業者、詐欺師、顧客によって構成され、あら ゆる業種・サービスが存在・成立しています。地下経済での取引がこの短期間で急成長した理由の1 つとしては、実行現場が仮想上であり、リアルな人物との接触がほとんどないため(このため、多く が軽はずみで犯罪に手を染めはじめます)、犯罪者側にとってはもってこいのプラットフォームであ ったこと、インターネット普及・マーケット拡大による高収益性、あるいは、自国の政治情勢や景気 悪化による就職難(高度なIT 専門知識をもつにもかかわらず、職に溢れた若者がやむなくこの業界 に入っていくケース)などです。

また、地下経済で活動するのは、特定の少数グループではなく、無数の犯罪組織という点も理解し ておく必要があります。

地下経済の実情や地下経済の構造については、以下に詳しく説明してゆきます。

専門用語については、本資料の巻末の用語集を参照してください。

2 地下経済の構造

2.1. 犯罪者のたまり場とコミュニケーション手段

犯罪者のコミュニケーションの場所として利用されるプラットフォームの1 つは、インターネット のフォーラムです。このフォーラムでは、犯罪ツールや犯罪手段ごとにカテゴリーが分類されていま す。また、このようなフォーラムには、ハッカーの真似事をするスクリプトキディ向けのビギナー用 サイトから、個人情報やクレジットカード情報、盗難品を公然と取引する犯罪を助長するサイトまで あり、サイトの特質や特長はそれぞれです。また、フォーラムで扱うコンテンツの違法性が高いほど、 運営者は一般のインターネットユーザーや権限のない閲覧者のアクセスに対し制限を設けています。 このような犯罪用フォーラムは、一見したところでは、普通のフォーラムとは大差はありません。し かし、同じ犯罪組織に所属するメンバー、もしくは組織に大きな利益を齎すものだけにアクセスを許 可するエリアが存在します。この特殊領域に入れない者は、フォーラム内のオープンになっているエ リアだけにアクセスすることになりますが、このエリアだけでも実効性の高いサイバー犯罪情報を見 つけ出すことができます。

下の図はあるサイトのスクリーンショットです。このサイトでは、ボットネット、脆弱性に関する 最新情報、RAT(Remote Administrations Tool)をインストールするための手引きなど、初心者用サ ービスが提供されています。閲覧には、管理者によるアクセス権の付与が必要なため、一般閲覧者は コンテンツを閲覧できません。

図1: ある裏フォーラムのスクリーンショット

このようなフォーラムでは、盗難クレジットカード情報、メールアドレスリスト、ボットネットの 品から、サイバー犯罪の実行に必要となるボットネットのサービス(DDoS 攻撃やスパム送信を実行す るために基礎となるサービス)が提供されているマーケットプレイスが存在します。

さらに、多くのフォーラムでは、不正にコピーされたソフトやツールなどのダウンロードサービス も提供されています。利用者は、様々な違法コピー品をここから簡単にダウンロード入手できます。

なお、フォーラムが運営されているバーチャル空間では、No.1 の座をめぐってのフォーラム間の争 いも絶えません。同業者のサイト改ざん、ウェブサーバーへのDDoS 攻撃を仕掛けることもあります。

更に、競合のフォーラムのデータベースをコピーし、別のフォーラムで公表するなどして、自身の有 能性を誇示しながら競合に深いダメージを与え、コミュニティ内の自身の地位を確固たるものへと築 き上げることもあります。なお、ウェブサイトのハッキングに成功した際は、証拠としてサイトに視 覚的エフェクトを残すのが一般的です。

このコミュニティ内では、購入・販売・交換などのやりとりは、MSN、ICQ、Yahoo メッセンジャー、 Jabber などのインターネットメッセンジャーで行われます。最初のコンタクトに、サイバー犯罪者が 他のフォーラムでは頻繁に利用されるプライベートメッセージ機能を利用することはほとんどありま せん。フォーラムにおいては、2,3 の拡張機能だけを備えた通常のソフトが利用されます。

図2: 裏フォーラムにおけるボットのオファー

この業界においては、顧客と接触する手段に、インスタントメッセンジャーが好んで使われます。 入力フォームやメールアドレスに代わり、ICQ の番号を連絡先情報として公開します。そして、取引 に興味のある顧客がこのICQ の番号にコンタクトして取引開始、というのが一般的な取引開始までの 流れです。

ICQ に次いで、利用頻度の高いサービスツールは、インターネットリレーチャット(IRC)です。 IRC は、その機能の多様性から、混乱させることにより情報の錯綜が可能なツールとして地下業界で 考えられ、好んで利用されるプラットフォームです。IRC では、一度に数千ものユーザーが1つのチ ャットルームに入室でき、リアルタイムでチャットできます。しかし、IRC 取引は、スキャマー(犯 罪者を騙す犯罪者)による詐欺被害が発生しているため、多くのフォーラムでは、IRC 取引に対して 十分注意を払うように促しています。

IRC は誰でもアクセスできるネットワークで利用されるケースもありますが、普通は、プライベー トIRC サーバーで通信が行われます。プライベートIRC サーバーの運営には、地下経済のニーズにあ うように、ポピュラーなIRC サーバーをカスタマイズしたバージョンが数多く存在しています。

図3: カスタマイズされたIRC サーバーのダウンロード先

2.2. 盗難クレジットカード情報の販売

盗品(クレジットカード情報、ネット送金サービスやインターネットオークションのアカウント情 報など)販売の大部分は、犯罪フォーラムのマーケットプレイス経由で取引されています。盗品販売 に特化したフォーラムもありますが、その数は多くはありません。

販売はフォーラム内の専用領域で行われ、既述のようにブラックマーケット 、または単にマーケ ットと呼ばれています。このマーケットにおける取引は、次のようなステップで行われます。まずは、 販売者が取引情報(インターネットオークションのアカウント情報などの取引物、取引物の販売価格、 大量購入時の割引率、利用可能な支払方法、売り手の連絡先)をマーケットに書き込みます。次に、 フォーラムには例に漏れず購入希望のレスポンスを連絡先情報と共に書き込んだり、購入希望者が直 接売り手にコンタクトを取り、取引を開始します。

図4:多種多様な品が取引されるマーケットプレイス

なお、不正コードの取引は、オンラインショップ形式で運営されているケースもあります。

図5 は、盗難された各種情報をネット販売する業者のサイトです。このサイトでは、盗難された各 種クレジットカード情報、ネット送金アカウント、無人小包受取り所(ドイツではパックステーショ ン)の利用アカウント情報を販売しており、犯罪者が新たなクレジットカード情報を必要とする場合、 または盗難したネット送金用アカウントの利用が停止された場合は、このようなサイトから必要な数 だけ入手できます。

図5:盗難された各種アカウント情報をネット販売する違法ショップ

また、市場のニーズに対し、ショップ、ホスティングサービス、ドメインなどショップ運営に欠か せないサービスをセットにして提供する事業者まで出現してきています。この業者が提供するお任せ パックにより、違法品の販売を目論む売り手は、販売準備の手間や時間の削減とスムーズな販売開始 ができるようになっています。このサービスに関する価格は、図6 を参照してください。

下記は、上述のお任せパックを提供する、あるショップのウェブサイトに掲載されていたFAQ です。

ショップレンタル FAQ

*******.net のサービス概要

  • - サーバー費用の負担
  • - ドメイン取得
  • - サーバーおよびスクリプトの無料更新
  • - ビジネスモデルに関する無料相談
  • - サーバーの設定(DDoS 攻撃回避するための堅牢なセキュリティ)
  • - 有名フォーラムへの広告(費用負担込み)
  • - スクリプトの提供(スクリプトに関する詳細は、 ******.net/products を参照)など。

ショップをレンタルするための条件

- ポジティブな与信*
(ポジティブな与信とは、あなたの信頼性を確認でき、かつ私たちと面識がある人物がいること)

*ポジティブな与信は以外に条件がありますが、ショップレンタルにおける重要な要素です。
なお、ポジティブな与信情報を提示できない場合は、ショップは開設できません。

利用料金

オンラインショップ設立費用:
50 . - ヘッダー、フッター、ボタンの設置
100 . - 要望に応じたカスタムデザイン(カスタマイズされたヘッダー、フッター、ボタン)
200 . - カスタムデザイン・コンプリート(素材のアレンジや配置が auf *******.cc 、 ******.net 、 ******.net 、 *****.net などのように予め未定義で、デザインが完全に 固有のもの。)

売上手数料

0~1,000 .(月あたり): 33.33 %
1,000~3,000 .(月あたり): 30 %
3,000 . ~(月あたり): 20 %

売上手数料は、上記の率を基に計算され、毎月の売上高から差し引かれます。
レンタル契約者側から特段の要望がない場合を除き、支払いは3 日毎に行われます。
(最後の支払いから、24 時間後)

なお、顧客に対してショップがサービス機能を保証する点は、顧客にとっては非常に魅力的なポイ ントと思われます。購入したクレジットカードが利用できない場合は、購入額全額を顧客の銀行口座 へ返金する仕組みになっています。この業者は、売り手が買い手側の心理を十分に考慮し、それをビ ジネスに反映された経営が図られている例の1つです。盗みを実行する側とそれを販売する側の関係 もはっきりしています。質の劣った盗難品を提供すると、当然顧客からの評判は落ちて業者は信頼を 失います。さらに、既存顧客は他の販売業者へ流れ、ビジネスに大きなダメージを被る可能性があり ます。

図6: クレジットカード情報、ネット送金アカウント情報を提供するオンラインショップ

2.3. スキャマー

サイバー犯罪業界におけるスキャマー(Scammer)は、今まで記述したようなサイバー犯罪を駆使 して、犯罪を行う犯罪者です。言わば、彼らは詐欺者中の詐欺者です。スキャム(Scam)の定義は以 下のとおりです(ウィキペディアからの引用)

スキャム: 大量のメール(以前はFax の送信)の送信を詐欺手口とする詐欺。受信 者は、絶対にありえない話を信じ込まされ、無限連鎖講への参加もしくは送信者に 対し仲介手数料を事前に支払わせることにより、送信者に利益を得る違法行為。受 信者を騙す手口は多岐に渡る。犠牲者は通常膨大な利益を得ることができるように 思い込ませ、その対価として送信者に事前に金品を徴収する仕組み。

スキャマーとは、提供を謳うサービスを実際には提供せずに、前払いで支払わせた金額を詐取する 詐欺者です。購入者がスキャマーから本当にサービスを受けるケースはほとんどなく、サービス提供 される場合も、ビジネス開始時期の信頼構築が必要な場合の初期の客2、3 名のみです。多くのフォ ーラムでは、アマゾンやインターネットオークション同様に、販売者・購買者の評価システムがあり、 この評価は取引成立の重要な指標となっています。スキャマーはこのシステムと高評価によって安心 する購入者の心理をつき、購入者を巧みにだますのです。

フォーラムでは、スキャマーに対する非難や警告を促すスレッドもよく見られます(図7 を参照) が、このネガティブなポスティングは、邪魔な同業者の営業妨害に利用されることもあります。その ため、現在は、フォーラム管理者が当該ユーザーへの対応する前に、スクリーンショットや確固たる 証拠の提示を要求するフォーラムが増えてきています。

図7: フォーラムでのスキャマー(リッパーとも呼ばれている)に関するトピック

犯罪者は、さまざまな手法やツールを用いて商売を行ないます。犯罪者が利用するツールの中で最 も重要なものは、ボットネットです。ボットネットは、ウイルスに感染したPC を攻撃者の支配下に おき、思い通りに操作します。ボットネットを使えば、さまざまなサイバー犯罪関連の違法行為を行 うことが可能となります。

3 取引される物品とサービス

3.1. 金になるデータ

地下経済で流通する物品は、多岐に渡ります。ニーズが高いのは、犯罪に使うアカウントを作成し たり、ID を乗っ取るために必要な情報です。個人の氏名、住所、銀行口座、数百~数千個単位のユー ザー情報が収められた「データベースダンプ」など、様々な品が取引されています。なお、データベ ースダンプとは、オンラインショップやフォーラムのユーザーデータが大量に保存されたデータベー スの内容を丸ごと出力したものです(図8 を参照)。このようなデータは無料で公開されることもあ りますが、専ら他のフォーラムのデータベースの情報に限定されることがほとんどで、価値のあるオ ンラインショップに関するデータは、通常無料で公開されることはありません。

他に需要の高い情報としては、カーダブルショップ(Cardable Shops)と呼ばれるショップのリス トです。カーダブルショップとは、チェックが甘い、盗難クレジットカード情報でオンラインショッ ピングが可能なショップです。このカーダブルショップのリストは、サイトでの支払い時に入力を要 求されるクレジットカード情報の項目数が少なければ少ないほど、価値は上昇します。これは、クレ ジットカードでも同じことがあてはまり、情報の完全性が高ければ高いほど、情報の価値は上がりま す。

図8: アンダーグラウンドでデータベースを販売する業者
(1 万ユーザーの氏名、ユーザーID、メールアドレス、パスワードなどが含まれている)

3.2. プロキシを利用したトラッキング回避

地下経済の参加者は、自身の身元が割り出されるのを防ぐため、様々な手段を講じています。その 1 つがプロキシの利用です。簡単に説明すると、通常コンピュータをウェブサイトに接続させると、 その接続ログがウェブサーバーに記録されます。しかし、プロキシを利用すると、プロキシの中継機 能で、自身のIP アドレスが記録されるのを防ぐことができます。従って、犯罪者はウェブサイトや フォーラムを移動する際、プロキシ経由で接続し、自身の接続元の情報が記録されるのを防ぎます。 ただし、司直による調査命令に基づいて、プロキシサーバー運営者やISP などに情報提供が求められ る場合は、そこから足がつくことがあります。

東欧の犯罪者は、ドイツ、オランダ、スイス所在のプロキシサーバーを好んで利用します。逆にド イツの犯罪者は、ポーランド、ロシア、ウクライナにあるプロキシサーバーを犯罪に利用する傾向に あります。この業界では、様々なサイト上に無料プロキシサーバーのリストが見られます。しかし、 無料プロキシサーバーは無料というだけあり、通信速度が遅いという問題があります。そのため、犯 罪者は、より通信速度の速い有料プロキシサーバー業者のサービスを利用します。また、有料プロキ シサーバー業者を利用するメリットとして、ログ未作成や悪質なメールの受信時の未対処があります。 このような業者が提供するサービスは、SSH やOpenVPN を使い匿名でのインターネット利用が可能な 簡易プロキシの提供です。OpenVPN やSSH ならば、一般的なプロキシでは不可能な、インスタントメ ッセンジャー、IRC、Skype などの普通のプログラムが利用できることがあるからです。

この地下業界では、支払いはネット送金サービスで行われるのが一般的で、このやりとりもインス タントメッセンジャーでよく行われています。

3.3. コンピュータのボット化

ボットネットは、感染させた大量のマシンで構成され、スパイウェアやアドウェアで商業的利益を 得るために利用されます。コンピュータをマルウェアに感染させるには、様々な手法が使われていま す。常套手段は、ウェブサイトやメールを介した感染です。以前頻繁に利用され、現在は減少傾向に あるメールの添付ファイルも健在で、感染にはワンクリックで十分です。更にファイル交換経由でも 同様のことが言え、有用なプログラムやゲームと見せかけたトロイの木馬系マルウェアも大量に流通 しています。マルウェアの種類により振舞いは異なりますが、一度マルウェアに感染すると、マルウ ェアは、インターネットからボットをロードし、ついには、コンピュータはボットネットへと組み入 れられます。なお、これらの感染手口からマシンを防御するには、ウイルス対策ソフトを導入はもち ろんのこと、定期的なウイルス定義ファイルの更新やウイルススキャンの実行、OS やインストールさ れたプログラムの更新など、ユーザー側での適切な対応が非常に重要になります。

コンピュータを感染させるサービスを提供する専用業者も存在するので、犯罪者は大量のコンピュ ータを感染させる手間を省略することもできます。このような業者は、裏フォーラムでサービス提供 の告知をしています。価格は、感染したコンピュータの所在国別で値段付けされています。人気が高 いのは、西欧、北米、オーストラリアの感染コンピュータで、IT インフラ環境の整備と普及度の高い 国々です。また、昨今では1000 台単位でボットネットを提供する業者も出てきました。この業者で も、感染コンピュータの所在国ごとに価格が設定されています。幸いなことにヨーロッパの裏市場で は日本は、言語の違いがあるせいか、今のところ、あまり人気がありません。

購入希望者がサービス提供者を募集することも稀ではありません(図9 を参照)。

図9: ウイルス感染をサービスとして提供するウェブサイト
(イギリスが最も高く240 ドル、次いでカナダが220 ドル。アジアは最安値で32 ドル)

なお、コンピュータは感染すると、金銭価値のあるファイルがコンピュータからコピーされ、その データは売買の対象とされます。さらに、コンピュータ内の各種アカウントが盗みだされ、ブラック マーケットで売買されます。そして、金銭価値のあるデータを盗みだされたコンピュータは、ボット ネットに組み込まれ、スパム送信やDDoS 攻撃に加担させられるのです。

3.4. 防弾ホスティング

防弾ホスティングの提供者とは、調査機関による追跡から逃れるため、匿名で利用できるサーバー 所在地を提供する業者です。防弾ホスティングで最も有名な組織の1つとしては、ロシア最大のネッ ト犯罪組織であるロシアン・ビジネス・ネットワーク(RBN、Russian Business Network)やアメリ カのモッコロ(McColo 、2008 年にインターネット接続を遮断されています)などがあります。RBN が提供するホスティングで、ボットネットのファイル用ドロップゾーン(感染マシンにインストール されたスパイウェアが収集したデータを保管するサーバー)、違法ショップ、C & C (Command & Control)サーバーなどがみられます。提供されるサービスは、小さなウェブスペース、仮想サーバー、 サーバークラスタにまで至り、提供するサービス群は、正規のサービス提供業者のサービスに劣りま せん。

図10:あるホスティング業者のレンタルサーバーによるサービス一覧表
(トルコのアンカラにあるVPS。ディスクスペースが10GB(月額39 ユーロ)から50GB(月額39 ユーロ)まで。)

このプロバイダーの利用規約では、とてもあいまいに記述がなされています。『禁止事項』という 注意書きもありますが、全く意味なしていません。コミュニティ内では、どの提供者がどのサービス を容認しているのかは周知となっています。違法コピーに留まらず、法に触れる様々なデータをサー バーに置くことも許可するサービスもあります。この種のサービスは、様々な国で提供されています が、ロシア、トルコ、パナマ所在のサーバーが多くなっています。

図11:ホストの許可するサービスの一覧表

通常のホスティング業者においてはドメイン登録すると、ドメインが所属するデータベースに保存 されます。これは、犯罪者たちにとって大きな問題で、登録時に保存された名前、住所、電話番号、 メールアドレスなどの情報が調査機関などによる情報の公開を求められた場合に漏れ、そこから足が つく可能性があります。これを回避するため、防弾ホスティング業者は、この情報にアジアやアフリ カなどの適当なダミーの情報を割り当てるなどの細工を行います。そうすると、防弾ホスティングの ユーザー情報から割り出されることを防ぐことができます。

防弾サービスはホスティングだけに収まらず、バルクメールというサービスも存在します。バルク メールとは、大量のメールをプロバイダーのサーバー経由で送信するサービスです。サービス提供者 は、送信メールがスパムフィルタに引っ掛からないように高度なソーシャルエンジニアリングを使っ ています。また、業者によっては、メールアドレスのリストも(有償で)提供する業者もいます。

このようなサービスの運営者は有名な裏フォーラムに出没し、提供サービスやその価格をフォーラ ムに書き残してゆきます。

また、業界内での競合間闘争でDDoS 攻撃を仕掛け、競合のビジネスを麻痺させるケースも頻繁に あるため、顧客をDDoS 保護から保護するサービスなどもよく提供されています。

3.5. 収入源となるスパムメール

地下経済の活動で最も一般に知れわたっている活動は、スパムメールの送信です。コミュニティ内 でもその収益性の高さから、非常に好んで利用されています。例えば100 万通のスパムメールを送信 は、あるボットネット運営者では、250~700 ドルで提供されています。2 万台規模のボットネットの 運営者では毎秒2 通のペースで、スパムメールが送信できるので、スパム100 万通を送信する依頼で は、その仕事はたった25 秒で完了となります。

この例からもわかるように、ボット運営者にとって、スパム送信ビジネスは有益なビジネスであり、 ボット運営者が自身のボットネット拡大に躍起になるのも当然と言えます。

なお、スパム送信を依頼する側は、スパムの送付先や国地域別で選択できます。またたり、オンラ インゲームユーザーなど特定のターゲットに的を絞ったスパム送信を指定することも可能です。

メールアドレスのリストは、裏フォーラムのショップやバルクメールのサービスを提供するプロバ イダーから購入できます。メールアドレスは様々なカテゴリーやソースなどに分類され、扱うメール アドレスはスパムメールの受信履歴のないものが通常です。ただし、これは売りに出されたことがな いということで、他のスパマーがこのメールアドレスを使ったことがないということではありません。

3.6. DDoS 攻撃がサーバーをダウンさせるメカニズム

今日のインターネットのウェブサイト運営者の最大の悩みは、自身のウェブサイトへ降りかかる DDoS 攻撃です。DDoS 攻撃とは、分散型サービス拒否(ディストリビューション・デナイアル・オ ブ・サービス)の略で、ボットネットなど、複数のネットワークに分散する大量のコンピュータから 一斉に特定のサーバーへパケットを送出し、通信路を溢れさせて機能停止にする攻撃です。DDoS 攻撃 には様々の種類のものがありますが、ウェブサーバーに対し大量のパケットによって高負荷をかけて 利用不能の状態にします。ウェブサーバーへの攻撃に次いで多いのが、ターゲットに対し大量の確立 しない接続を試みるスィンフラッド(YN-Flood)です。接続は数秒から数分間、接続が完全に確立す るのを待機する設定ですが、ターゲット側がこの大量の問い合わせを送信されると、すべての不完全 な接続に対し、1 つのエントリが作成されます。攻撃されたサーバー側ではいずれメモリが不足の状 態になりますが、その状態に達すると、サーバーへの接続や呼び出しができなくなります。

集中攻撃を受けてしまうと、攻撃されたウェブサイト運営者は攻撃が止むのを待つ以外にサイト復 旧の手立てはありません。そのために、同業者間の攻撃合戦も頻繁に起こります。つまり、競合に対 し攻撃を仕掛けて相手のビジネス基幹システムを麻痺させ、業務不能の状態に陥れます。システムを ダウンさせられた競合のサービスを利用する顧客は、攻撃によりサービスを利用できなくなり、これ はより強大な業者への乗り換えの動機となっています。

図.12:ウェブ上で表示されるDDoS 攻撃サービスのバナー広告
(英語、ロシア語、ドイツ語)

アンダーグランド業界でのDDoS 攻撃は、サービス提供業者間だけでは収まりません。また、特定 のサイトやフォーラムをダウンさせるために、DDoS 攻撃が実行されることもあります。この攻撃は、 商業的理由だけでなく、単純な嫉妬や憎しみを動機として行われることもあります。

3.7. 偽造ID を使ったID 隠蔽

盗難ID は、需要が非常に高い商品の1 つです。身分を詐称するための身分証明書、運転免許証、 学生証などのID 情報が売買の対象となります。特にロシアのフォーラムで盛んに取引されています。

偽造もしくは盗難ID は、取引用の銀行口座開設やオンラインカジノやインターネットオークショ ンなどの登録に利用されます。

3.8. カーディング詐欺

クレジットカード詐欺(またはカーディング)は、犯罪者がフィッシングやトロイの木馬を被害者 のコンピュータに忍ばせたり、ウェブショップのデータベースに侵入して目的の情報にアクセスし、 既述のカーダブルショップなどで正当な権限のない人物によって買い物に利用されます。一方、クレ ジットカード情報の盗難は、上で説明した仮想空間上での詐欺だけでなく、財布から盗んだり、郵便 ポストから書類を取り出したり、実際に買い物をした時にカード所持者の気付かないように一瞬で用 意した読み取り機でコピーするスキミングなどの昔ながらの手口も今尚報告されています。

例に漏れず、クレジットカード情報も様々なフォーラムやショップにおいて大量に売り買いされて います。

図13:クレジットカード情報を販売するショップ

クレジットカード番号はある一定の法則に基づいて生成されますが、地下経済で流通するクレジッ トカード番号生成ソフトのクレジットカードジェネレータを使うと、所有する1 つの有効なクレジッ トカード番号から、様々な発行業者に発行された有効なクレジットカード番号を生成できます。何故 このような不正が可能かというと、ほとんどのカードではカード発行会社で割り当てる内部番号や連 番、チェックデジットと呼ばれるクレジットカード番号が正しいかチェックをする数字が公に知られ ているためです。

カーダー(Carder)と呼ばれる人物にとって重要なのはクレジットカードデータの完全性です。あ まりデータの揃っていない クレジットカード番号単体から、有効期限・セキュリティ番号付きの完全性の高いクレジットカー ド情報など、データの完全性に基づいて販売価格が設定されています。

3.9. スキミング詐欺

スキミングとは、特殊なカード読み取り装置やカメラをATM に取り付け、カードの情報を不正に記 録する犯罪行為です。スキミングは実社会で行う必要があるため、実行者にとっては高い危険性が伴 い、犯罪行為の普及度はネット犯罪と比較すると、その数はそれほど多いとは言えません。また、ス キミングで使われている専用機器も非常に高価で、フォーラムでは数十万円ほどの価格で取引されて います。更に、購入後設置した装置はいつ発見・押収されてしまうかわかりませんし、ほとんどの ATM は通常ビデオ監視が行われていて、これもスキミングの絶対数が少ない理由の1つとなっている と考えられます。

図. 14:スキミング装置が掛けられたATM (出典:バイエルン州警察白書、2007 年8 月7 日)

ドイツおよびヨーロッパ諸国におけるスキミングの実行者は、東欧出身者が大半を占めています。 スキミング装置取り付けの対象となる地域は、利用者数のポオ大都市で取り付けられる傾向にありま す。

以前はスキミング機器の設置は、ATM 利用客が発見し、警官もしくは銀行に通報されることがほと んどでしたが、最近は一般人が見ただけでは気付かないほどの精巧なスキミング機器も作られるよう になってきました。これはスキミング機器開発者がATM の寸法を設計段階から考慮にいれ、ATM 毎の スキミング機器を製作しているためだと考えられています。

3.10. フィッシング詐欺

フィッシングはまさに必要とされる任意のデータを抽出できる手段として、犯罪を行う側が非常に 好んで行う犯罪手段です。詐欺者が銀行口座のデータが必要とする場合は、本物そっくりの偽銀行ウ ェブページを作成し、ボットネットで偽銀行サイトのリンクを含んだ大量のスパムメールを送信し、 獲物を偽サイトへと誘導します。対象となるデータの種類は多岐に渡り、オンラインゲームアカウン ト、クレジットカード情報、オンラインバンキングのアカウントなど、アンダーグラウンドで換金出 来得るあらゆる種類のデータやアカウント情報などです。同様に好まれるのがオンラインのギャンブ ルやカジノのアカウントです。このアカウントは詐欺によって得た資金の行き先の追跡を困難にする ために利用されます。

地下経済で取引される品のラインナップには、リミットや制約がありません。フォーラムを見てみ ると、MySpace やTwitter のアカウントが売りだされていたり交換取引に出されています。犯罪者は 人物のID 情報を可能な限り多く収集し、実際にその人物を名乗って犯罪を行うこともあります。 オンラインバンキングやオンラインゲームを利用する方は、アカウント情報の入力時など、アカウ ント情報の入力を行うページが本当に正しいのかどうか、情報は暗号化されているのかどうかを確か め、アカウント情報の取扱いに十分に気をつける必要があります。

よく利用するサイトは、ブラウザのブックマークに登録しておき、その登録先からログインしまし ょう。また、銀行やオンラインゲーム名義で送信されたメールでも、送信者名を偽装している可能性 もあり、ワンクリックでマルウェアが仕掛けられたサイトや詐欺サイトへ誘導される可能性もあるの で、無闇にメール内のURL をクリックすることは避けるのが得策です。

3.11. ボットネットとその構成

詐欺者はエクスプロイトを利用してトロイの木馬やワームを目的のマシンにインストールさせます。 エクスプロイトとは、OS やプログラムに存在する脆弱性をついて攻撃する行為やその利用されるコー ドです。ウイルス対策ソフトからの検出を回避するため、トロイの木馬は暗号化ソフトで暗号化しま す。暗号化ソフトには様々なバージョンがありますが、表の世界で流通するパブリックバージョンを 使って作成したものはだいたいのウイルス対策ソフトで検出されます。一方、検出できないマルウェ アを生成するプライベートバージョンは、ウイルス対策製品に搭載されているウイルススキャナーに 対応する定義ファイルがありません。そのため、裏フォーラムなどで取引されていて、プライベート バージョンの暗号化やパッカーの需要は非常に高いと考えられています。

ボットについても同様のことが当てはまります。ボットにはボットマスターが密かに侵入し、コン ピュータを乗っ取るバックドア(裏口)が仕掛けられています。ボットがコンピュータに仕掛けられ ると、ユーザーに気付かれないように、バックグラウンドでDDoS 攻撃やキーロガーなど様々な命令 の処理が行われ、犯罪行為の加害者となります。ボットの規模には色々ありますが、規模の大きなも のほど一度に大量のメールを送付できパフォーマンスは高くなるので、アンダーグラウンドでの提供 価格は相対的に高くなります。

ボットネットの管理は、C&C (Command & Control)サーバーを通して実行され、ボットマスターの 支配下にあるボットのノードは、C&C サーバーからの命令を待ちます。なお、C&C サーバーのコンセ プトは数種ありますが、通信手段には一般的にはIRC が用いられ、ノードは特殊なチャンネルに参加 します。なお、犯罪者は自身の安全性確保にも抜かりなく、プライベートのIRC サーバーを利用して います(図15 を参照)。IRC に接続したボットネットのノードは、IRC チャンネルで指令を待ちます。

図. 15:ボットのIRC チャンネル

ボットネットは、ユーザー名とパスワードを入力すると利用できるウェブインターフェース経由で も利用され(図. 17 を参照)、ボットに指示、感染したノードの数、オンラインのノードの数、ノー ドのOS の種類などを統計表示、ノードにインストールされたボットの更新などを操作できます。

図.16:ボットネットのウェブインターフェース(ロシア語)

多くのケースでは、トロイの木馬がコンピュータに侵入すると、まずそのトロイの木馬は詐欺者が 置いたボットをインターネット経由でロードします。ボットのロード先は防弾ホスターが利用されま す。詐欺者が最新のボットネットが必要な場合は、プログラマーに接触してバイナリコードやソース コードで提供されるバージョンを購入します。なお、ソースコードでの購入は、バイナリコードより 高価な価格で(約5~10 倍の値段)取引されます。売り手は、希望する購入者に対し、バックドアの 有無をチェックさせるサービスを提供しています。

RAT を使うと、ノードと接続を確立でき、感染の成功やウイルス対策ソフトベンダーが運用するハ ニーポットに侵入したかなど、確認できます。

ボットがハニーポットに入ると、そのボットのバージョンがウイルススキャナーに検出されるのも 時間の問題となるので、犯罪者はボットを改変します。また、インストール済みボットもウイルス対 策ベンダーのウイルススキャナーが検出から逃げるために、インストール済みボット用のアップデー トを提供します。

図 17:RAT クライアント

RAT は高度な手法ですが、完全自動インストールと比べると、費用負担が増大します。RAT の拡散 する犯罪者の手法には、ドライブバイダウンロード、P2P ネットワーク、大量のメールなど、ありと あらゆる手法を用いて送信されます。

また、RAT やトロイの木馬と同じ手法で拡散されているスティーラー(アカウント情報盗難用のツ ール)もよく使われています。これらの脅威への対策としては、高度な検出力を持つウイルス対策製 品(HTTP フィルタやメールスキャナ機能をもつ製品)をコンピュータにインストールすることです。

このグループには、キーロガーが含まれます。キーロガーは小さなプログラムですが、コンピュー タにインストールされると、ユーザーのキー入力を記録し、ネットバンクの口座番号やログイン用パ スワードを盗みだします。

4. 現金化

すでに紹介したように、サイバー犯罪には様々なツールや犯罪手口が使われていますが、犯罪者の 目的はどのように利益を得るかです。ここでは、犯行完了後の現金化(キャッシュアウト)の方法に ついて説明します。

図18:あるフォーラムにおけるドロップゾーンのオファー
(ドロップ、ドロッピング、ダンパー、シッピングという言葉が見出される)

現金化とは、金の出所など痕跡を残さずに仮想貨幣をリアルマネーに変換することです。多くのケ ースでは、盗まれたクレジットカード情報や仮想貨幣は、インターネットでの買い物にそのまま利用 されます。ここで購入した品の受け取りには足がつかないようにドロップゾーン(予め用意した送付 先)に配送されます。ドロップゾーンには、スパム経由で送信業者や運送業者として雇われた仲介者 が存在し、配送された品を転送します。従って、犯罪者にとってドロップゾーンは非常に重要な意味 を持ちます。更にこれはドロップゾーン業者増殖の連鎖を生みだします。フローは、品物を注文した 後、用意したドロップゾーンの住所(ほとんどが外国)に発送されます。送付先に配達されると仲介 者が引き取り、それを転送します。なお、仲介者への報酬額は、ドロップゾーンの所在国の生活レベ ルを考慮しても、同国ではかなり高報酬のレベルにあります。また、プラスアルファとして注文の際 に、この仲介者用の品物も併せて注文することもあります。

過去にはハウスドロップという家主が不在の家やアパートなどが利用され、銀行からの重要な通知 なども問題なく送達されていました。住所変更はオンラインで可能ですが、実際に銀行に足を運び変 更手続きを行う犯罪者も存在します。銀行窓口で変更手続きをする際は、特定の書類が必要になりま すが、この書類もアンダーグラウンドでの入手が可能です。

他にはオンラインカジノ経由で金を移動させる方法があります。盗みだしたネット送金サービスの アカウントを使って、盗み出したオンラインギャンブルサイトのアカウントに金を移動させます。犯 罪者の情報交換に利用されるフォーラムでは、オンラインギャンブルサイトの犯罪への適正度に関す る評価を確認でき、サイト毎のアカウント作成にどのようなデータが必要か、データの真正性、偽装 ID で通るか、などの情報もまとめられています。好まれるのは、認証済みのアカウントです。このア カウントを利用してバンクドロップといわれる口座に送金します。バンクドロップとは、他人名義で 開設された銀行口座です。バンクドロップ用のアカウントの入手マニュアルは高値で取引され、その 内容は、郵便局従業員の買収によるバンクドロップ口座開設方法から、不正ID による口座開設方法 まで、多岐にわたります。

また、カーダブルショップで犯罪者が買い物し、盗み出した無人小包引取所のアカウント情報で無 人小包引取所宛てに配達させます。引き取られた商品はオンラインオークションなどを通して換金し、 犯罪者の口座へ振り込まれます。

5. 結論:

サイバー犯罪は更なる増加へ

自身の卓越した能力をひけらかす愉快犯、もしくはスクリプトキディなどのハッカーたちがシーン を主導していた時代は終わった今、このシーンで活動している者たちをハッカーという表現で一括化 するのは、適切ではありません。技術的な専門知識を有し、犯罪に加担する彼らは、金庫破りやその 他の犯罪行為を行う犯罪者と同線上に存在するグループに属するものと言えます。しかも今やこの犯 罪市場は、全犯罪市場でも最大の市場規模を誇ります。犯罪を実行する人物はプロの犯罪組織に属し、 その犯罪手法も組織化・効率化・分業化が進んでいます。

IT インフラの整備に伴うインターネットの普及で、私たちの生活は便利になりましたが、その一方 で、インターネットの利用は、サイバー犯罪という新たな犯罪に巻き込まれる新たな要因となってい ます。インターネットを利用する一般のホームユーザーや企業ユーザーは、インターネット内に潜む マルウェアや様々な攻撃から自身のコンピュータやネットワークを迅速かつ適切な対処方法で保護し ていく必要があります。

続いて重要なテーマは、個人情報の取扱いです。多くのインターネットユーザーは、自身の個人情 報が犯罪者の手に渡る危険性を考慮せずに、SNS、ブログ、ホームページなどに公開しています。と りとめもないように思われる生年月日が、犯罪者側にとってはクレジットカード情報の完全化に必要 な情報である可能性もあります。

現在増加中で今後も増加すると推察されるのは、被害者のマシンからウェブサイトのログイン情報 を盗み出し、そのサイトを犯罪に利用するというものです。運営するサイトのログイン情報が盗まれ ると、犯罪者はマルウェアをウェブサイトに自由に仕掛けるなどし、マルウェア配布に悪用します。 更に、サイト運営者は、信用を問われるだけでなく、訪問者を感染させたとして損害賠償などの深刻 な被害に発展する可能性も十分考えられます。インターネット利用において自身の安全性を保持する には、自身のコンピュータだけでなく、ネットワーク全体、更にプラスアルファ(この場合は、運営 サイト)も入念にチェックするなど、徹底した対応を心がける必要があります。

付録1 裏市場における価格表

この価格表は、2009 年6~7 月に裏サイトのフォーラムで実際に取引されていた商品やサービスの 価格表です。価格は幅が広く、ボリュームディスカウントや交渉スキルによって変化します。

【略】

付録2 用語集

*カッコ内は英語での表記。略号はカタカナを併載しています。

【略】

2009年10月29日発行

10月 31, 2009 at 01:53 午後 セキュリティと法学 | | コメント (0) | トラックバック (0)

日航処理に対するサンケイ新聞社説

サンケイ新聞社説より「【主張】日航再建 民事再生法なぜ活用せぬ

経営が悪化した日本航空は政府管理下で再建をめざすことになった。

官民出資の企業再生支援機構を使って債務を整理した上、公的資金で日航に出資や融資を行う方向で検討に入った。

しかし、「一私企業である日航を、なぜ公的資金を使ってまで支援するのか」という国民にとって最大の疑問は解けない。
前原誠司国土交通相は「このままでは飛行機が飛ばなくなる」と説明するが、説得力は弱い。

米国ではデルタ航空やユナイテッド航空など大手航空会社が経営破綻(はたん)し、連邦破産法11条にのっとって債務を整理し再生している。
期間中、各社は政府に頼ることなく営業を継続し、運航に支障はでなかった。日本にもそれと同等の民事再生法がある。なぜそれを活用できないのか。

政府支援を受ける日航と同じケースでは、自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)がある。

GMは債権者や労組、年金受給者らの利害関係者との調整を事前に行った上、11条を活用し再生した。

企業再生支援機構を使っても、公的資金の思惑が絡んで利害関係者間の調整がうまくいくとは限らない。

日航はすでに債務超過とされている以上、民事再生法を活用する方が管財人の下で迅速に再建手続きに移行できる。
法的整理を排除する理由はないはずだ。

時間を空費している間に、資産劣化と資金繰りの悪化が進む。

前原国交相は9月に就任後、大臣直属の専門家チームを組織し、再建策作りを委ねた。チームは1カ月にわたって利害関係者間の調整を進めてきたが、まとまらなかった。

前原国交相が「法的整理を選ばない」と早々と言明したため、破綻しないと高をくくった債権者らは、債権カット案などに首を縦に振らなかったからだ。

結局、専門家チームは資産査定の中身や人員、路線削減などのリストラに関する報告書も公表しないまま解散した。

国交相は「再生支援機構が改めて資産査定する」との理由を挙げるが、何のためのチームだったのか。

公的資金の活用を柱に据える以上、国民に対してきちんと公表すべきだ。

日航自身の問題も大きい。「親方日の丸」意識が抜けないまま経営再建を先送りしてきたあげくの経営危機である。

批判を浴びている高額の企業年金など、高コスト体質を自ら改めない限り、再建は危ういと認識すべきだ。

全く、サンケイ新聞の主張の通りであって、そもそも「法的整理をしないと、担当の大臣述べた理由が分からない」のでは話が始まっていないだろう。

そのために特別立法で年金給付額を減らすなどというのは、明確に憲法違反である。
アメリカのGM破たんと比して、世界中の物笑いの種になることは確実で、絶対にやってはいけないことに踏み込んでいると言わざるを得ない。

10月 31, 2009 at 11:16 午前 経済・経営 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.10.29

日本航空再建策の暗黒化

日経新聞より「国交相、日航再生に支援機構の活用表明 再建案公表せず

前原誠司国土交通相は29日午後の記者会見で、日本航空の経営再建について企業再生支援機構を活用する方針を正式に表明した。

同日に国交相直轄の「JAL再生タスクフォース」から報告案を受け取ったが、「企業再生支援機構に委ねる以上、タスクフォースの再建案を公表するのは適当でない。むしろ邪魔になる」と述べ、作業部会の再建案の公表を見送った。
(16:30)

「ちょっと待て」
と言いたい。

企業再生支援機構とは要するに公的資金を導入するための機関だろう。
理屈としては、確かに企業再生支援機構が「日本航空の再生は無理だ」と判定したり、あるいは必要なリストラ策を決めたりすることは出来るだろうが、引きうけた以上「出来ませんでした」では済まないわけで現段階でそこまでの見通しが付いているとは思えない。

民間金融機関がコンソーシアムを組めば資金手当ては不可能な額ではない、また民間主導で再生計画を立てて、それを政府がバックアップするといったことも可能だろう。
しかし、日本航空の経営陣は民間金融機関の支持を得るための再建策を提示できなかったわけで、タスクフォースが現経営陣に代わって将来計画を完成させることが出来た、とはとうてい思えない。

つまりは、再生計画のあらすじが出来た、資金がこれだけ必要だ、だから公的資金の投入、という話にすらなっていないのではないか?

あからさまに言えば、「日本航空が明日を(年内を)生き延びるためには、政府の保障が必要だ。その後のことは知った事じゃない」という話ではないのか?
そのようなところに公的資金の投入も問題だが、政府保証など入れたら民間金融機関の本来であれは損失になるところをカバーすることになるぞ。

そして、単に目立つからというだけの理由で、年金の給付額の減額を特別立法に依って強制する、というのでは、これに反対意見を表明するのには、一揆や革命といった実力行使に直結しかねないのではないのか?

現時点で2歩航空を潰すのか、将来に渡って日本国民の法的倫理感覚をぶち壊すのか、という問題にしか見えない。

そういう視点でこのニュースを見ると、前原国交相は国の金を自分が社長の会社の金と勘違いしているのではないだろうか?
もっと庶民に畏れをもって接するべきだと強く思う。

10月 29, 2009 at 05:48 午後 経済・経営 | | コメント (0) | トラックバック (1)

日本航空再建案は三段論法ではないのか?

日本航空の再建策は三段論法のような理屈で、政府主導でやってはいけないだろう。

今日も「国民を税金を日本航空再建に使うのだから、高い年金に注ぎ込むわけにはいかない、だから年金を引き下げる」と言っているが、全く関係ない話をくっつけているとしか思えない。

確かに、年金を支払うために税金を投入するなどということは許されないわけで、だから税金は投入できない、その結果として日本航空が法的整理になって何が問題なのだろう?

前原国交相は「飛行機が飛ばない事態は起こさない」とか言っているが、なんでそれが大事なことなのだ?
飛行機が飛ばないのは日常茶飯事であって、会社を分離するなどすれば問題になるほど運行が差しつかえることになるとも思えない。
もっと言えば、日本航空が無くても全日空はあるわけで、飛行機が飛ばないという観点は問題になるまい。

第一、日本航空を救済できないから年金を引き下げるとか言っているわけでしょう。
そうなると、これからの時代に日本航空が生き残れるのか?が問題なるはずで、年金問題はその条件の一つでしょう。
年金を引き下げるだけで、日本航空は生き延びることが出来るのだから、公的資金を一時的に投入する、という話ではない。

実際、人員削減9000人とか言っている。
そういう色々な物事を総合的に判断して、年金を削減するという合意を取り付けるのなら、まだ分かるが全体の展望がよく分からない段階で、一部分を決定してしまうのではまずいだろう。

日本航空の法的処理はしないどういう理由なのか説明がない
公的資金を投入するますます理由が分からない
だから年金給付を法律で削減する憲法違反の疑いが強い

こんな無茶を批判しないマスコミはどういうつもりなのだ?

10月 29, 2009 at 12:12 午後 国内の政治・行政・司法 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2009.10.28

ホームオブハート裁判・2本目の勝訴判決

わたしが2004年(最初)から応援している、ホームオブハート裁判で2件目の裁判で判決がありました。

やや日刊カルト新聞より「ホームオブハート関連事件で判決。 原告らの請求をいずれも棄却

本日、東京地裁第527号法廷にて、2004年4月に児童相談所に一時保護され、その後、乳児院入所や児童福祉司による指導措置がなされた、ホームオブハートとトシオフィスの子供とその母親が、子供達を拉致された等として、児童相談所に通報した弁護士2名と元メンバー2名を訴えた民事裁判の判決が出されました。

【東京地裁判決 2009年10月27日】主文
  1. 原告らの請求をいずれも棄却する。
  2. 訴訟費用は原告らの負担とする。

傍聴席から判決が読み上げられるのを聞きながら、私は当然の判決だと思いました。
ちなみに、原告側の席には誰もいませんでした。

原告の請求が全て棄却されたのは、損害賠償請求権が時効により消滅したと判断されたためです。

何故なら、既に、同じ理由により、2004年11月1日、被告の紀藤正樹弁護士と山口貴士弁護士に対する懲戒請求が、原告8名のうち当時乳児であった者を除く6名によって行われているからです。

すなわち、遅くとも2004年11月1日の時点においては、損害賠償請求が事実上可能であったと考えられ、それから3年の2007年11月1日で時効が成立したという理由により、裁判官は原告の請求を全て棄却したわけです。

【中略】

判決終了後、司法記者クラブで記者会見が開かれましたが、この訴訟は、「本来は止めるべき訴訟」であるとの、被告の山本さんの言葉が印象に残りました。

まだ幼児である原告まで使って、被害者の口封じと弁護団の労力を殺ぐことを目的として、1億7000万円もの巨額の訴訟を起こす、ホームオブハートのやり方には強い憤りを覚えます。

このような「嫌がらせ訴訟」に対して、沢山の弁護士が力を貸してくれました。

被告側の代理人は、総勢85名であり、このような訴訟が提起されることへの強い危機感が伺えます。

「紀藤正樹弁護士とホームオブハート被害者を支援する市民の会」代表世話人のいのうえせつこ氏は、記者会見席で「子供たちに裁判を起こさせること自体が『子供虐待』である」と言っておられました。

今回、裁判官は当然の判断を下しました。
原告側が控訴してくるのかは分かりませんが、この裁判は本来、起こされてはいけない裁判です。

ホームオブハートを巡る裁判は、本件だけではなく、多数ありますが、このような「嫌がらせ訴訟」を行う団体を、そのまま放置してはならないと考えます。

この記事の説明の通りなのですが、ちょっと読んだだけではなかなか理解しがたいかと思います。

2004年4月だと覚えていますが、「元X-JapanのToshiが児童虐待」とテレビのワイドショーで連日大々的に報道された事件です。

この時に、児童相談所が乳児を含む子どもたちを一時保護(長期では半年以上)したことに対して、紀藤正樹弁護士らに損害賠償を請求した、という素人には関係性が分からない訴訟です。

児童相談所の保護は法的強制力がある行政の仕事ですから、行政に対して賠償請求するというのは分かりますが、なぜ他のことで争っている弁護士らに損害賠償請求を起こせるのか?という時点でかなり問題だと言えます。
(行政に賠償請求をしているといった情報はありません)

紀藤弁護士らは当初から「時効だろう」との判断でしたが、判決もその通りとなったようです。

ホームオブハートをめぐる裁判は、「HTP 最 新 情 報」によると現在、6本あるようで、その一つは平成19年(2007年)2月26日に一審判決が出ています。
この事件は、被害者の全面勝訴となり、その後ホームオブハート側の控訴も高裁で敗訴(2009年5月28日)しています。

こういう見方をすると、二つ目の判決が出たとなります。
現在のところ、ホームオブハート裁判はいずれも結審が近づいていますから、ほとんどが今年度内に判決が出るものと考えています。

10月 28, 2009 at 10:56 午前 事件と裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

サイエントロジー・フランスで敗訴

AFP BB より「サイエントロジー教会に罰金刑、組織的詐欺罪で フランス裁判所

【10月27日 AFP】
フランスの裁判所は27日、1990年代に弱い立場にある信者から金銭をだまし取ったとして、新興宗教団体サイエントロジー教会(Church of Scientology)のフランス支部に、組織的詐欺罪で60万ユーロ(約8200万円)の罰金を言い渡した。

しかし、フランスで近年改正された法律により、同宗教団体を即座に解散させることができなくなったため、当局高官らは遺憾を表明している。

罰金を言い渡されたのは、サイエントロジー教会のフランス支部で、パリにあるサイエントロジー・セレブリティーセンター(Scientology Celebrity Centre)と同センターの書店。

裁判所は、同団体のフランス人指導者、Alain Rosenberg被告にも、同罪で執行猶予2年、3万ユーロ(約410万円)の罰金を言い渡した。

同教会フランス支部のパトリック・メゾンヌーブ弁護士は、控訴する方針を示した。

サイエントロジー教会は、トム・クルーズさんやジョン・トラボルタさんなどハリウッド・スターも入信していることで知られている。

■法改正で解散命令が見送りに

パリの検察官は当初、セレブリティーセンターと書店の閉鎖を求めていた。

しかし前月、裁判所は、ことし5月に議会でほとんど気づかれることなく成立した改正法について気づかされることになる。

公判開始の月に成立した同改正法では、判事は詐欺罪で有罪となった組織を解散させることができなくなっていた。

その後この改正法は撤回されたものの、撤回は遡及的に適応されないため、現在開かれている裁判ではサイエントロジー教会を解散させることができず、そのため裁判所は減刑した判決を余儀なくされることになった。

今回の裁判は、女性2人の訴えによるもの。1人は、1998年に人間の精神エネルギーを計測できるとする「エレクトロメーター」など、同教会の高価な製品を買わされて2万ユーロをだまし取られたとしており、もう1人は、同じく98年に、同教会の信者だった雇用主にテストを受けさせられ、プログラムに参加するよう強要されたが、拒否すると解雇されたとしていた。
(c)AFP/Dorothee Moisan

この記事のニュースは、最近スタートしたやや日刊カルト新聞にも紹介されています。「サイエントロジー、詐欺で有罪判決(フランス)

イギリスBBCのニュース他によると、フランスの裁判所が、サイエントロジーに対して詐欺罪で有罪判決を下しました。

この事件が立件される直前に、詐欺に関する刑事法が改正されたため、詐欺罪での法人解散は実現しなかったようですが、パリにあるサイエントロジーのセレブリティーセンターとブックストアに対しては60万ユーロの罰金刑、フランスのサイエントロジーのトップであるアラン・ローゼンバーグ(Alain Rosenberg)に罰金3万ユーロおよび執行猶予付きの禁固2年の刑が言い渡されたようです。このほかに3人の幹部に対しても、5000ユーロ以上の罰金刑と10ヶ月以上の執行猶予付きの禁固刑が言い渡されたようです。

過去10年間で、何人かのサイエントロジー・メンバーについて詐欺罪や虚偽広告で立件された事件があったようですが、団体としてのサイエントロジーに対する詐欺罪での立件は今回が初めてのものだったようです。

【中略】

被害女性(2人)は、性格テストを受けた後、精神操作され、合計2万ユーロにのぼる高額なコース、ビタミン剤、その他の商品を購入させられたと言います。

サイエントロジー側は、信教の自由の危機だとして、控訴の意向を表明しているようです。

冒頭に述べた、刑事法は、この事件の公判が始まってから再改正されていますので、次に同様の事件で有罪になれば、サイエントロジーは解散させられる可能性があります。

【参考】 この判決を報じているその他のニュースサイト
ワシントンポスト(アメリカ)

サイエントロジーは最近になって、あちこちで取り上げられるようになってきましたが、紀藤正樹弁護士のブログに10月9日付けで「注意喚起!!サイエントロジーとXJapanのTOSHI」といった記事が出たりしています。

カルト問題として注目するべきです。

10月 28, 2009 at 10:05 午前 海外の話題 | | コメント (0) | トラックバック (0)

関門海峡の衝突事故

読売新聞より「護衛艦とコンテナ船衝突・火災、3人けが…関門海峡

27日午後7時56分頃、福岡、山口県境の関門海峡で、海上自衛隊佐世保基地所属の護衛艦「くらま」(5200トン)と韓国籍のコンテナ船「カリナ・スター」(7401トン)が衝突し、両船で火災が発生した。

北九州市消防局などが消火に当たり、コンテナ船の火災は午後8時35分に鎮火、くらまも午後11時20分頃、鎮火状態になった。海上幕僚監部によると、くらま側で乗組員1人が足に軽い裂傷を負い、2人が煙を吸って気分が悪くなった。門司海上保安部は業務上過失往来危険容疑で、関係者から事情を聞き始めた。

第7管区海上保安本部(北九州)や防衛省によると、現場は北九州市と山口県下関市を結ぶ関門橋のほぼ真下で、海峡の幅は約650メートルと狭かった。くらまは瀬戸内海方面から西に向かって、コンテナ船は玄界灘から東に向かって、それぞれ関門海峡に進入したと見られる。波はほとんどなかったが、視界は約3~4キロで、見通しが良い状態ではなかったという。

くらまは艦首部分が大きく破損し、シンナーなどを収納していたペイント庫付近が炎上した。コンテナ船は右船首部分に穴が開き、積み荷のコンテナが燃えた。

現場は、海上衝突予防法の特別法である港則法施行規則により、右側航行が義務づけられている。くらまの艦首部分は左から右に衝突を受けたような破損状況のため、くらまが左前方から来たコンテナ船と衝突した可能性がある。

くらまは1981年に就役。全長159メートル、全幅17・5メートル、定員360人で、対潜ヘリ3機を搭載できる。25日に相模湾で行われた観艦式に観閲艦として参加、佐世保基地に戻る途中だった。297人が乗船し、負傷するなどした3人は船体前部で見張りをしていた。午後11時頃、自力航行を再開、門司港に向かった。

韓国海洋警察庁によると、カリナ・スターはナムソン海運(本社・ソウル)が所有。全長127メートル、幅20メートルで、同社釜山事務所によると、韓国人ら16人が乗り組み、釜山港から大阪へ向かっていた。

釜山事務所の社員は読売新聞の取材に、「コンテナ船の船長から『前を走る船の後を追って航行していたら、前方から護衛艦が接近してくるのが見えた。かじを切ったが間に合わず衝突した』と報告を受けた」と話した。

関門海峡の航路は約4時間閉鎖された。

政府は27日午後8時15分、海上自衛隊の護衛艦「くらま」と貨物船の衝突に関し、首相官邸内の危機管理センターに情報連絡室を設置した。鳩山首相は同日夜、関係省庁に対し、早急な情報収集と被害実態の把握を行うよう指示した。
(2009年10月28日01時22分 読売新聞)

朝日新聞より「海自護衛艦と貨物船衝突、炎上し3人けが 関門海峡

27日午後7時56分ごろ、本州と九州の境にある関門海峡で、海上自衛隊の護衛艦「くらま」(艦長・柏原正俊1等海佐、5200トン)と韓国のコンテナ船「カリナスター」(7401トン)が衝突。双方が炎上した。防衛省海上幕僚監部によると、「くらま」の3人が負傷した。第7管区海上保安本部が業務上過失往来危険の疑いなどで調べている。

海保によると、現場は本州と九州を結ぶ関門橋のほぼ下。「カリナスター」は衝突約40分後の午後8時35分ごろに鎮火した。船首の右部分が大破したが、浸水や油漏れはなく負傷者もいない。同船の船主である韓国の海運会社「南星海運」の釜山事務所によると、コンテナの一部から出た火を乗組員らが消し止めた。

一方、「くらま」は艦首部分が激しく損傷し炎上。防衛省によると、28日午前0時ごろまでにほぼ鎮火したが、消火作業の際に乗員1人が右足に切り傷を負い、ほかに2人が煙を吸って気分が悪いと訴えている。艦首部分に船体を塗り直すためのペンキの缶の倉庫があるという。

防衛省によると、双方ともに自力航行可能という。

「カリナスター」の韓国人の船長(44)は朝日新聞の取材に「前を走る船を追い越そうとしたときにぶつかった。前から(護衛艦が)来ているのはわかり、早めにかじを切ったがぶつかった」と話した。

防衛省によると、両船はほぼ正面衝突だったとみられる。海保によると、海上衝突予防法で海峡の航行は「右側通行」と定められており、前方に相手船を発見した場合も互いに「右へ回避」が原則。だが、「カリナスター」は船首右側が損傷しており、海保は今後その経緯を調べるとみられる。関門海峡は大規模海難事故の起こりやすい「ふくそう海域」に指定されており、港則法の細則で追い越しなどは禁止されている。

下関地方気象台によると、事故当時、現場海域の天候は快晴だった。

「カリナスター」はコンテナを韓国・釜山から大阪に運ぶ途中で、韓国人12人ら16人が乗り組んでいたという。

「くらま」は長崎県の佐世保基地の第2護衛隊群に所属するヘリ搭載型護衛艦で、進水は79年。25日に神奈川県の相模湾であった観艦式に参加した後、佐世保に戻る途中で、297人が乗っていた。

FNNニュースより「関門海峡護衛艦衝突事故 双方の船が近くにいた別の船をよけようとして衝突した可能性

27日夜、関門海峡で起きた護衛艦とコンテナ船の衝突事故で、双方の船が、近くにいた別の船をよけようとして衝突した可能性が高いことがわかった。

この事故は27日夜、福岡・北九州市沖の関門海峡で、海上自衛隊の護衛艦「くらま」と韓国のコンテナ船「カリナスター」が衝突して炎上し、護衛艦の乗組員6人がけがをしたもの。

海上保安庁の関係者によると、当時、コンテナ船の前を別の外国船が航行しており、これをよけようと護衛艦が右に、コンテナ船が左にかじを切ったために、双方の進路が交錯し衝突した可能性が高いことがわかった。

海上保安庁は、これら3隻の船の航跡を分析するなどして、事故の原因を調べている。
(10/28 06:04 テレビ西日本)

朝日新聞より「コンテナ船、護衛艦の針路にはみ出す? 衝突事故

その瞬間、暗い海峡を火柱が照らし、爆発音が周囲を揺らした。27日夜、北九州市沖の関門海峡で起きた護衛艦とコンテナ船の衝突事故。国内有数の「海の難所」で何が起きたのか。

防衛省や海上保安庁などによると、護衛艦「くらま」の艦首とコンテナ船「カリナスター」の船首右側がぶつかったとみられる。コンテナ船の船長(44)は、事故直後に朝日新聞の取材に応じ、「前の船を追い越そうとしていた」などと話しており、コンテナ船が護衛艦の針路にはみ出す形になって衝突を引き起こした可能性が出てきた。

コンテナ船は韓国・釜山から大阪に向かっており、事故で船首右側が大きく損傷した。船長の説明によると、コンテナ船は前方からの護衛艦には気づいていて、早めにかじを切ったが避けられなかったという。

海上保安庁によると、海峡での船の航行は海上衝突予防法により、互いに右側を通ることがルール。前方に相手船を発見した場合は、互いに右へ回避するのが原則だ。このルールを互いに守っていれば、船首右側が相手の船とぶつかることは考えられない。

コンテナ船がどのようにして前の船を追い越そうとしたかははっきりしないが、船長の証言や双方の船の衝突部位などから、海保関係者は「コンテナ船がかじを左に切って追い越そうとして左側に膨らみ、左前方から来た護衛艦の針路に入った可能性も考えられる」と話す。

衝突事故があった関門橋付近は関門海峡のなかでも幅が約600メートルと狭く、大型船同士がすれ違うには危険が伴う。特に、北九州市側からせり出す部分があり、西から東に向かうコンテナ船からは視界が悪く、向かってくる船が直前まで視認できないケースがあるという。

護衛艦の監視態勢について、元海上自衛隊潜水艦隊司令官の西村義明さんは「狭い水道を通過するときは、艦橋の見張りや指揮所の人員など、通常の当直態勢よりも強化した状態で、細心の注意を払って航行するはずだ」と話す。

軍事ジャーナリストの神浦元彰さんは「関門海峡は狭く、潮流も国内では最も速い場所。船の通行も多く、本来は追い越しをするような場所ではない。潮流の激しいところで追い越しをしようとしたコンテナ船がコントロールを失った可能性もある。護衛艦も船の行き来が多い中で身動きが取れなかったのではないか」と分析する。

海保は、レーダーなどで両船の航跡を確認し、衝突の状況を詳しく調べる。

昨日の関門海峡での衝突事故は炎上ということもあってかなり驚きました。
4本の記事を時系列で並べてみました。

1時22分読売新聞
3時2分朝日新聞
6時4分FNNニュース
8時5分朝日新聞
となっています。

1時22分の読売新聞の記事で注目する点は

くらまは艦首部分が大きく破損し、シンナーなどを収納していたペイント庫付近が炎上した。

コンテナ船は右船首部分に穴が開き、積み荷のコンテナが燃えた。

現場は、海上衝突予防法の特別法である港則法施行規則により、右側航行が義務づけられている。

くらまの艦首部分は左から右に衝突を受けたような破損状況のため、くらまが左前方から来たコンテナ船と衝突した可能性がある。

ですね。
この時点で、コンテナー船が護衛艦側の航路に進入した可能性が出てきました。

3時2分の朝日新聞の記事では以下の点が注目です。

「カリナスター」の韓国人の船長(44)は朝日新聞の取材に「前を走る船を追い越そうとしたときにぶつかった。前から(護衛艦が)来ているのはわかり、早めにかじを切ったがぶつかった」と話した。

NHKテレビで、この画面は何度も見ましたが、どう見ても航路の右側で衝突していると思っていました。
この画面はNHKは山口県下関市に設置したカメラの映像と解説していますから、東側から撮っています。つまり、長崎に向かっていた護衛艦は画面の左下から右上に向けて関門大橋の下を通過する航路を後攻していたことになります。
その進路上で衝突したように見えます。

6時4分のFNNニュースでは

海上保安庁の関係者によると、当時、コンテナ船の前を別の外国船が航行しており、これをよけようと護衛艦が右に、コンテナ船が左にかじを切ったために、双方の進路が交錯し衝突した可能性が高いことがわかった。
船は右側通行ですから、海峡で左にかじを切ると対向する航路に進入することになります。

8時5分の朝日新聞では

軍事ジャーナリストの神浦元彰さんは「関門海峡は狭く、潮流も国内では最も速い場所。船の通行も多く、本来は追い越しをするような場所ではない
関門海峡は、海上保安庁が一隻ずつ航行管制出来るようになっています。そこで、追い越す必要が生じたとはどういうことでしょうか?

現時点では、コンテナー船の海峡内では不適切な操船で衝突に至った、と見えます。

10月 28, 2009 at 09:42 午前 事故と社会 | | コメント (5) | トラックバック (0)

2009.10.25

ドル安・日本人口減少・生産性向上・安心感の必要性

朝日新聞より「ドル基軸、米国益に沿わず 米シンクタンク所長指摘

【ワシントン=尾形聡彦】
世界的にドル安傾向が強まるなかで、米国でドルの基軸通貨体制の今後の方向性を巡る議論が高まっている。

米政権とのかかわりが深い、米有力シンクタンク「ピーターソン国際経済研究所(PIIE)」のフレッド・バーグステン所長(68)は朝日新聞のインタビューで「米ドルの基軸通貨体制はもはや米国の国益に沿わない」と指摘し、米ドルの支配的な役割を徐々に下げるべきだと提言した。

今後、20年ほどかけて「米ドルと欧州の単一通貨ユーロの2極体制に移行する」との見方を示すとともに、アジア各国が対ドルへの自国通貨切り上げで政策協調する「アジア版プラザ合意」を求めた

米ドルの地位を次第に低下させる必要性を説いていますね。なぜですか。

「国際通貨システムで米ドルが支配的な地位を占めていることは、米国の国益に沿わなくなっている。
理由は二つある。

まず貿易赤字の拡大につながる
世界からの米国への貸し出しが突然止まれば、ドルは暴落する。
巨額の資本流入は低金利や過剰流動性をもたらし、現在のような経済危機につながってしまう」

「第二に、米国が自らの為替レートを制御することが困難だ。輸出競争力を高めるため、自国通貨を弱めるための(ドル買い)介入を行うと、米ドルは過剰に高くなってしまう

ドル・ユーロの2極体制になるのでしょうか。

「現在は(世界の外貨準備に占める割合は)ドルが65%、ユーロが25%だが、10~20年先にはともに40~50%を占めるかもしれない。

約100年続いたドルの時代が、10~20年でユーロとの2極体制に進化するのではないか

ただ、米政権は「強いドルが米国の利益だ」と言い続けています。

彼らが恐れているのは、ドルの価値が急激に落ちることだ。『強いドル』の定義はなく、財務長官が言わなくてはいけない『公式なレトリック(修辞法)』にすぎない」

米政権は、強いドル政策を実質的に放棄しているのでは。米国は輸出主導型の景気回復を目指していて、そのためドル安は不可避です。

「その指摘は正しい。
米政権が世界経済の不均衡の是正や、輸出主導型の景気回復を目指すなら、競争力のあるドルの交換レートが必要だからだ。

我々の計算では、人民元や、いくつかのアジア通貨はドルに対して切り上げが必要だ。
日本円に対しては、それほど必要ない」

ただ、中国は実質的に1年以上人民元の切り上げをしていません。
アジア諸国も輸出競争力を気にしてドル買い介入を実施しています。

「その通り。中国こそが一番大きなずれをもたらしている。
韓国やマレーシアなどアジア各国もドルに対し人民元が切り上がらなければ、自国通貨切り上げは難しい。
中国も人民元切り上げは、他国が同調しなければ困難だ」

「アジア各国は共通の為替相場政策を追求すべきだ。

為替政策面での連携が賢明な選択で、アジア版の『プラザ合意』(1985年に主要国が、ドル安を進めることで一致した合意)だ。
各国が為替政策の永続的な連携や、『2~3年で2割の切り上げ』などの合意をしてもいい

米中(G2)時代の必要性を指摘していますね。

「私が『G2』を提唱しているのは、気候変動でも国際通貨でも、米中が合意できれば、国際合意にできる可能性がずっと高まるからだ」

米欧日中のG4の形成を目指す動きもあります。

「日本を含めるか否かは、難しい問題だ。
理想は、米中と欧州のG3だ。

日本は人口減や過去20年の経済成長の弱さを考えれば、G3ほど強い経済ではない。

ただ、欧州も政治的に一枚岩になれない弱さがある。だからG2を拡大する場合は、G4か、インドも加えたG5だろう」

鳩山政権への期待は。

日本は依然として貿易黒字に過剰に依存しており、不均衡を是正する必要がある

さらに非常に大事なのは、人口減少を補う生産性の向上だ。

さらなる改革と、市場志向の戦略が必要だ。
私は、現政権が違う方向に向かっているかもしれないと懸念している」

なかなか明確な意見ですね。
日本の政財界などが触れない最重要な問題として人口減に適した社会作りがあります。

現在のところ「人口減が問題だから、人口を増やす」という意見ばかりなのですが、生産人口をすぐに増やすのには移民しかあり得ませんし、今から出生率が上がったとしても、200年程度は人口減になっていきます。
その時に、最大の人口であった社会を維持し続けることが出来るのか?と言う問題ですし、日本の社会全体を維持するためには、限界集落と言われるような社会構造を維持し得ないところは無人にする政策が必要でしょう。

大都市圏周辺のマンモス団地などと言われた新興住宅地の多くは、開発以前は山林などであったところが多く、いわば無人の土地の大勢が住んだと言えます。その大勢の人が居なくなれば、また無人の地になるしかないでしょう。

同じような事は、工業団地などにも言えます。
同じような業種を並べた工業団地では、全く違う業種に転換することは難しいでしょうから、結局は工場なき工業団地となっていくのかもしれません。

どちらにしても、各種団地がドンドンできた当時の「土地が足りない」時代から見ると全く逆の「土地を使用するアテが無い」時代になっていきます。
土地がないから干拓をするといった手法の逆の政策に真面目に取り組むべきでしょう。
そして、小数の日本人が世界に冠たる地位を維持するためには、人口減を遙かに超える生産性の向上が不可欠です。

基本は、教育の充実と高度化でありましょう。
そのためには、国民の個人生活の安心が何よりも必要だと思います。
自由主義の根幹である、競争では日本の安心は育たないでしょう。
エリートや先端分野の促進と同時に、それを支える基礎になるはずの庶民レベルの安心感のより一層の向上こそが最重要なのではないのか?と思うのです。

10月 25, 2009 at 11:36 午前 日記・コラム・つぶやき | | コメント (0) | トラックバック (0)

コイン式携帯充電器事業・特商法違反で事件化

読売新聞より「携帯用の充電器マルチ商法、解約妨害で2社捜索

ホテルなどに設置する携帯電話用の有料充電器の連鎖販売取引(マルチ商法)で、解約希望者に虚偽の説明をしたなどとして、販売会社「MMS」(現・メディアクロス、大阪市)と、関連会社の「ワールドビジョン」(同市)を、大阪府警が特定商取引法違反(解約妨害)容疑で捜索したことがわかった。

読売新聞の取材に対し、M社役員は「捜索容疑についてはコメントできない」としている。

経済産業省などによると、M社は2003年以降、コイン投入式の公衆用充電器を1台約50万円で販売

新たに購入者を紹介すれば、4万円以上のボーナスを支払うといううたい文句で、07年8月までに約154億円を売り上げた

ワールド社はM社元社長を社長(当時)として07年7月に設立。
同9月にM社の販売業務を引き継ぎ、約6億円を売り上げた。購入者は全国で2万5000人以上いた。

連鎖販売契約について、特商法は、クーリング・オフ(無条件解約)期間が過ぎても中途解約がいつでも可能と規定している。

しかし、両社は契約解除を申し出た購入者に対し、「委託契約期間(3年間)は解約できない」などと説明していたという。
(2009年10月25日03時08分 読売新聞)

確かに、ホテルなどにコイン式の携帯電話充電器が設置されているのを見かけますが、使っている人はあまり見かけませんから「この程度のモノか」と思っていたのですが、50万円の商品を154億円売ったと計算すると、3万台を売ったことなります。

特商法の事件としては、かなり多額事件になりますね。

平成電電事件・近未来通信で指摘しているのですが、この種のトンデモ商法は「聞いたことがあるキーワードで欺す」のが共通しているようです。

事件名キーワード
平成電電電話中継基地
近未来通信貸しサーバー
電話充電器公衆サービス

といったもののようで、勧誘された人が具体的に分からないのに何となく知っている、というところをターゲットにしているのでしょう。
いずれの場合は「まだ世間には知られていないから先行者利益」といったことで勧誘するのでしょうし、被害者も「自分は他の人が知らない先端的情報に詳しい」と思っているのではないかと想像しています。

それにしても、2万5千人もこんな商品に手を出しているとは驚きです。
機器なのだから、メンテナンスとか償却とか、さらに設置場所との契約などけっこう面倒なことが必要なはずなのですが、そこらを乗り切れるものなのでしょうか?

平成電電や近未来通信では、設備の設置は実体がありませんでした。
つまりは、契約して集金だけした詐欺事件なのですが、今回の携帯充電器は詐欺ではないのでしょうか?

金額と言い、被害者数と言い、かなりの大事件に拡大するのではないか?と感じます。

10月 25, 2009 at 11:00 午前 事件と裁判 | | コメント (2) | トラックバック (0)