« 2009年4月5日 - 2009年4月11日 | トップページ | 2009年4月19日 - 2009年4月25日 »

2009.04.18

北朝鮮問題・いよいよヨロイがあらわになった?

読売新聞より「PSI全面参加なら「宣戦布告」…北朝鮮、韓国に警告

【ソウル=前田泰広】
北朝鮮の朝鮮中央通信によると、朝鮮人民軍総参謀部報道官は18日、韓国が「大量破壊兵器拡散阻止構想(PSI)」に全面参加する方針を明らかにしていることについて、「いかなる圧力も我々に対する宣戦布告となる」と警告した。

報道官は、韓国の李明博(イミョンバク)政権が北朝鮮の弾道ミサイル発射に対する制裁などに固執していると非難。
「ソウルが南北軍事境界線から50キロほどしか離れていないことを忘れてはならない」と強調した。

韓国政府は当初、北朝鮮の弾道ミサイル発射直後に、PSI参加を表明することを検討していたが、「ミサイル発射とは関係ない措置」としていったん延期。
18日には、北朝鮮が南北対話を提案してきたことを受け、19日に予定していた表明を再び、先送りした。
(2009年4月18日21時08分 読売新聞)

18日には、北朝鮮が南北対話を提案してきたことを受け、19日に予定していた表明を再び、先送りした。とは,同じく読売新聞の記事「北が韓国に接触要求…開城工業団地で「重大事案」と」の事でしょう。

【ソウル=前田泰広】
韓国統一省は18日、北朝鮮当局が南北経済協力事業の開城(ケソン)工業団地の事業に関連し、南北の政府当局者が21日に接触することを提案してきたと発表した。

聯合ニュースによると、北朝鮮当局は16日、「重大事案を通知する」と連絡してきたという。北朝鮮は、対北朝鮮融和政策を見直す李明博(イミョンバク)政権への反発を強めており、今回の政府間対話でも何らかの警告を発するとみられる。

韓国政府は提案意図を分析中だが、工業団地進出企業の韓国人従業員が北朝鮮当局に拘束されている問題が取り上げられるとの見方が出ている。
(2009年4月18日19時51分 読売新聞)

これでは、冷戦というかどちらが折れるかというチキンレースですね。

現在までの事態の進行は、

4月5日ミサイル発射
4月13日国連・安保理議長声明採択
4月16日IAEA要員を追放

と進んできました。
開城工業団地の韓国人要員が北朝鮮に拘束され、韓国側からの面会も出来ない状態はそのままで、韓国からの会談要求があり、その後に韓国のPSI参加を宣戦布告と宣告したわけで、普通に考えるとかなり深刻な事態です。

人質をテコに外交交渉を進めようとしているように見えるから、意外な感じを受けますが、北朝鮮は1968年にプエブロ号事件を引き起こしています。
プエブロ号事件はベトナム戦争の真っ最中であり、正しく米ソ冷戦時代の事件でありました。ひょっとすると、北朝鮮は「冷戦なのである」という判断で、武力による国際政治展開をやっているのかしれません。

4月 18, 2009 at 09:58 午後 海外の政治・軍事 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2009.04.16

御殿場事件・驚愕の一審判決を最高裁が是認

大石英司の代替空港で知りましたが、「御殿場事件」が上告棄却になりました。

大石英司の代替空港より「※ 元少年5人の有罪確定へ 静岡・御殿場の少女集団強姦未遂」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20090415-00000544-san-soci

>2審東京高裁は、少女の証言の信用性について、「日時を除きほぼ一貫しており、具体的で自然」と指摘、

 凄まじく滑稽な話。「日時」という肝心要の部分で、もう公訴棄却って話ですよ。普通なら。それが、裁判官が堂々と、「日時を除いては合っている」とか、何だそれは…‥。だいたい、日時所か、天候まで全く違っているのに。

 言ってみれば、死因は銃創なのに、「刺しました」と自白した犯人を有罪にする時に「凶器を除き被告の証言は一貫しており…‥」みたいな話をするような無茶ですよ。

 なんでこんな無茶苦茶な話が堂々とまかり通るのか。

この事件に付いては、大石英司氏や阿曽山大噴火氏(阿曽山大噴火コラム「裁判Showに行こう」)でも取り上げていて、わたしも以前取り上げています。

2007.08.27の記事「御殿場事件を考える」、2008.09.05の記事「御殿場事件判決」です。

一審の静岡地裁の判決が問題で、地裁での審理中に「起訴した日時には事件が起きていないことは確認された」のに、地裁判決はこの点について「被害者の供述は犯行日を除き、一貫している」「被告人らの供述も、犯行日を除き一貫している」という理解しがたい、判決理由で有罪としています。

高裁も地裁もどうも、事実調べをしないで弁護側の控訴と上告を棄却したようです。

静岡新聞より「不当決定 と弁護団 御殿場の少女暴行未遂

御殿場市で2001年、少女に乱暴しようとしたとして当時16―17歳の元少年らが強姦(ごうかん)未遂罪に問われた事件で、最高裁は15日までに元少年5人の上告を棄却し、いずれも有罪とした東京高裁判決が確定する見通しとなった。
元少年らや家族、支援者たちは「最後の希望も裏切られた」と不満をあらわにした。

決定は弁護側の上告趣意について「単なる法令違反、事実誤認の主張であり上告理由に当たらない」と退け、「事件当日は雨で野外での犯行は不自然」と降雨記録に関する新証拠を提出するなどした弁護側の主張には一切言及しなかった。

弁護団の鈴木勝利弁護士は「門前払いに等しい不当な決定。物証がないのになぜ有罪か、合理的な理由を示さない姿勢は危険であり、自白偏重の傾向を招きかねない」と批判した。

元少年らはいずれも社会人となった。決定の通知を受けて「前向きに生きるしかない」と声を掛け合ったという。実刑判決の4人は近く収監される見通し。

物証がなく被害者証言が起訴の柱となっている点で、法学者の間では14日に最高裁が無罪判決を言い渡した痴漢事件との類似性を指摘する意見が出ている

荒木伸怡立教大大学院教授(刑事法学)は「無罪判決は物証なくして有罪にできない、という基本原則を重視した。逆に本件は降雨データなど被害証言と食い違う証拠があるのに、証言や自白が重視された。
判事の間で意見の差異がうかがえる」と疑問を呈した。

山本雅昭静岡大法科大学院准教授(刑法)は「本件は全員一致の棄却であり、裁判官は確信を持って判断したと見るべき。供述の信用性に疑問はあるが、混雑する電車の痴漢とは状況の複雑さが違い、供述が明白だったことも結論が分かれた一因では」と分析した。

たまたま、最高裁の痴漢事件・無罪自判判決があって、報道記事も色々出ていますが、わたしが最初に無罪報告を読んだのは山口利昭弁護士の「ビジネス法務の部屋」に書かれた「必読!!痴漢事件・最高裁逆転判決(速報版)」でした。

すでにマスコミ各社で報道されているとおり、防衛医大教授の強制わいせつ被告事件につきまして、本日逆転無罪の最高裁判決が出ました。(すでに最高裁HPにて判決全文が閲覧できます)ひさびさに背筋がゾクゾクとするような判決文です。これはプロの法律家であれば必読でしょう。裁判官5名のうち、反対意見2名という僅差の多数判断ですが、ビックリするのは「被告人は本当に痴漢をしたのか、しなかったのか」という点だけでなく、「被害者の供述は詳細で理路整然としており、時系列的にも合理的である」といった一般的な供述の信用性判断の手法を批判し(これ、涙が出そう・・・・!裁判員制度にも大きな影響を与えそうです)、かつ事後審制の法律審たる最高裁の「事実審理の在り方」にまで論争がなされている点であります。これはおそらく学者の先生を交え、大いに今後論争される判決になるものと思われます。また、きちんと判決全文を読んでからエントリーしたいと思います。(とりいそぎ、速報版です)

※ちなみに、私が痴漢被告事件を扱った経験からすると、満員電車のなかで「下着のなかに手をいれた」場合は強制わいせつ罪、「下着もしくは服の上から触った」場合は大阪府条例(迷惑防止条例)違反罪として立件されるのが通常かと思われます。(なお、交通ルールさんのご指摘により、スカートをめくって下着を触った時点で強制わいせつ罪に該当する、とのことのようです。また確認させていただきます)

※なお、裁判官が述べているとおり、本件は被害者であるAさんの証言が信用できない、というものではなく、記憶違いや人違いなどについての可能性がないことに「合理的な疑いが残る」というものであります。このブログも、冤罪者支援とか、痴漢被害者支援といった立場からではなく、冷静に事実審理の在り方を考える、というスタンスで述べるものであります。(あしからず)

さっそく、最高裁判決をPDFで見ました。

裁判官那須弘平の補足意見は,次のとおりである。

1 冤罪で国民を処罰するのは国家による人権侵害の最たるものであり,これを 防止することは刑事裁判における最重要課題の一つである。
刑事裁判の鉄則ともいわれる「疑わしきは被告人の利益に」の原則も,有罪判断に必要とされる「合理的 な疑いを超えた証明」の基準の理論も,突き詰めれば冤罪防止のためのものである と考えられる。

本件では,公訴事実に当たる痴漢犯罪をめぐり,被害を受けたとされる女性(以 下「A」という。)が被告人を犯人であると指摘するもののこれを補強する客観的 証拠がないに等しく,他方で被告人が冤罪を主張するもののやはりこれを補強する 客観的証拠に乏しいという証拠状況の下で,1審及び原審の裁判官は有罪・無罪の 選択を迫られ,当審でも裁判官の意見が二つに分かれている。

意見が分かれる原因 を探ると,結局は「合理的な疑いを超えた証明」の原理を具体的にどのように適用 するかについての考え方の違いに行き着くように思われる。

そこで,この際,この 点について私の考え方を明らかにして,多数意見が支持されるべき理由を補足して おきたい。

2 痴漢事件について冤罪が争われている場合に,被害者とされる女性の公判で の供述内容について「詳細かつ具体的」,「迫真的」,「不自然・不合理な点がな い」などという一般的・抽象的な理由により信用性を肯定して有罪の根拠とする例 は,公表された痴漢事件関係判決例をみただけでも少なくなく,非公表のものを含 めれば相当数に上ることが推測できる。

しかし,被害者女性の供述がそのようなも のであっても,他にその供述を補強する証拠がない場合について有罪の判断をする ことは,「合理的な疑いを超えた証明」に関する基準の理論との関係で,慎重な検 討が必要であると考える。
その理由は以下のとおりである。

ア混雑する電車内での痴漢事件の犯行は,比較的短時間のうちに行われ,行為 の態様も被害者の身体の一部に手で触る等という単純かつ類型的なものであり,犯 行の動機も刹那的かつ単純なもので,被害者からみて被害を受ける原因らしいもの はこれといってないという点で共通している。

被害者と加害者とは見ず知らずの間 柄でたまたま車内で近接した場所に乗り合わせただけの関係で,犯行の間は車内で の場所的移動もなくほぼ同一の姿勢を保ったまま推移する場合がほとんどである。

このように,混雑した電車の中での痴漢とされる犯罪行為は,時間的にも空間的に もまた当事者間の人的関係という点から見ても,単純かつ類型的な態様のものが多 く,犯行の痕跡も(加害者の指先に付着した繊維や体液等を除いては)残らないた め,「触ったか否か」という単純な事実が争われる点に特徴がある。

このため,普 通の能力を有する者(例えば十代後半の女性等)がその気になれば,その内容が真 実である場合と,虚偽,錯覚ないし誇張等を含む場合であるとにかかわらず,法廷 において「具体的で詳細」な体裁を具えた供述をすることはさほど困難でもない。

その反面,弁護人が反対尋問で供述の矛盾を突き虚偽を暴き出すことも,裁判官が 「詳細かつ具体的」,「迫真的」あるいは「不自然・不合理な点がない」などとい う一般的・抽象的な指標を用いて供述の中から虚偽,錯覚ないし誇張の存否を嗅ぎ 分けることも,けっして容易なことではない。

本件のような類型の痴漢犯罪被害者 の公判における供述には,元々,事実誤認を生じさせる要素が少なからず潜んでい るのである。

イ被害者が公判で供述する場合には,被害事実を立証するために検察官側の証 人として出廷するのが一般的であり,検察官の要請により事前に面接して尋問の内 容及び方法等について詳細な打ち合わせをすることは,広く行われている。

痴漢犯 罪について虚偽の被害申出をしたことが明らかになれば,刑事及び民事上の責任を 追及されることにもなるのであるから(刑法172条,軽犯罪法1条16号,民法 709条),被害者とされる女性が公判で被害事実を自ら覆す供述をすることはな い。

検察官としても,被害者の供述が犯行の存在を証明し公判を維持するための頼 りの綱であるから,捜査段階での供述調書等の資料に添った矛盾のない供述が得ら れるように被害者との入念な打ち合わせに努める。

この検察官の打ち合わせ作業自 体は,法令の規定(刑事訴訟規則191条の3)に添った当然のものであって,何 ら非難されるべき事柄ではないが,反面で,このような作業が念入りに行われれば 行われるほど,公判での供述は外見上「詳細かつ具体的」,「迫真的」で,「不自 然・不合理な点がない」ものとなるのも自然の成り行きである。

これを裏返して言 えば,公判での被害者の供述がそのようなものであるからといって,それだけで被 害者の主張が正しいと即断することには危険が伴い,そこに事実誤認の余地が生じ ることになる。

ウ満員電車内の痴漢事件については上記のような特別の事情があるのであるか ら,冤罪が真摯に争われている場合については,たとえ被害者女性の供述が「詳細 かつ具体的」,「迫真的」で,弁護人の反対尋問を経てもなお「不自然・不合理な 点がない」かのように見えるときであっても,供述を補強する証拠ないし間接事実 の存否に特別な注意を払う必要がある。

その上で,補強する証拠等が存在しないに もかかわらず裁判官が有罪の判断に踏み切るについては,「合理的な疑いを超えた 証明」の視点から問題がないかどうか,格別に厳しい点検を欠かせない。

3 以上検討したところを踏まえてAの供述を見るに,1審及び原審の各判決が 示すような「詳細かつ具体的」等の一般的・抽象的性質は具えているものの,これ を超えて特別に信用性を強める方向の内容を含まず,他にこれといった補強する証 拠等もないことから,上記2に挙げた事実誤認の危険が潜む典型的な被害者供述で あると認められる。

これに加えて,本件では,判決理由第2の5に指摘するとおり被害者の供述の信 用性に積極的に疑いをいれるべき事実が複数存在する。

その疑いは単なる直感によ る「疑わしさ」の表明(「なんとなく変だ」「おかしい」)の域にとどまらず,論 理的に筋の通った明確な言葉によって表示され,事実によって裏づけられたもので もある。

Aの供述はその信用性において一定の疑いを生じる余地を残したものであ り,被告人が有罪であることに対する「合理的な疑い」を生じさせるものであると いわざるを得ないのである。

したがって,本件では被告人が犯罪を犯していないとまでは断定できないが,逆 に被告人を有罪とすることについても「合理的な疑い」が残るという,いわばグレ ーゾーンの証拠状況にあると判断せざるを得ない。
その意味で,本件では未だ「合 理的な疑いを超えた証明」がなされておらず,「疑わしきは被告人の利益に」の原 則を適用して,無罪の判断をすべきであると考える。

この那須弘平裁判官の補足意見は一般常識として反対の余地が無いかのよう見えますが、堀籠幸男裁判官の反対意見は

私は,多数意見には反対であり,原判決に事実誤認はなく,本件上告は棄却すべ きものと考える。その理由は次のとおりである。

第1 事実誤認の主張に関する最高裁判所の審査の在り方

1 刑訴法は,刑事事件の上訴審については,原判決に違法又は不当な点はない かを審査するという事後審制を採用している。

上訴審で事実認定の適否が問題とな る場合には,上訴審は,自ら事件について心証を形成するのではなく,原判決の認 定に論理則違反や経験則違反がないか又はこれに準ずる程度に不合理な判断をして いないかを審理するものである。
そして,基本的に法律審である最高裁判所が事実 誤認の主張に関し審査を行う場合には,その審査は,控訴審以上に徹底した事後審 査でなければならない。

最高裁判所の審査は,書面審査により行うものであるか ら,原判決に事実誤認があるというためには,原判決の判断が論理則や経験則に反 するか又はこれに準ずる程度にその判断が不合理であると明らかに認められる場合 でなければならない。刑訴法411条3号が「重大な事実の誤認」と規定している のも,このことを意味するものというべきである。

2 刑訴法は,第一審の審理については,直接主義,口頭主義を採用しており, 証人や被告人の供述の信用性が問題となる場合,第一審の裁判所は,証人や被告人 の供述態度の誠実性,供述内容の具体性・合理性,論理の一貫性のみならず,論告 ・弁論で当事者から示された経験時の条件,記憶やその正確性,他の証拠との整合 性あるいは矛盾等についての指摘を踏まえ,その信用性を総合的に検討して判断す ることになるのであり,その判断は,まさしく経験則・論理則に照らして行われる のである。証人や被告人の供述の信用性についての上訴審の審査は,その供述を直 接的に見聞して行うものではなく,特に最高裁判所では書面のみを通じて行うもの であるから,その供述の信用性についての判断は,経験則や論理則に違反している か又はこれに準ずる程度に明らかに不合理と認められるかどうかの観点から行うべ きものである。

第2 事実誤認の有無

1 本件における争点は,被害者Aの供述と被告人の供述とでは,どちらの供述 の方が信用性があるかという点である。

被害者Aの供述の要旨は,多数意見が要約しているとおりであるが,Aは長時間 にわたり尋問を受け,弁護人の厳しい反対尋問にも耐え,被害の状況についての供 述は,詳細かつ具体的で,迫真的であり,その内容自体にも不自然,不合理な点は なく,覚えている点については明確に述べ,記憶のない点については「分からな い」と答えており,Aの供述には信用性があることが十分うかがえるのである。

多数意見は,Aの供述について,犯人の特定に関し疑問があるというのではな く,被害事実の存在自体が疑問であるというものである。すなわち,多数意見は, 被害事実の存在自体が疑問であるから,Aが虚偽の供述をしている疑いがあるとい うのである。しかし,田原裁判官が指摘するように,Aが殊更虚偽の被害事実を申 し立てる動機をうかがわせるような事情は,記録を精査検討してみても全く存しな いのである。

2 そこで,次に被害者Aの供述からその信用性に対し疑いを生じさせるような 事情があるといえるかどうかが問題となる。

(1) 多数意見は,先ず,被害者Aが車内で積極的な回避行動を執っていない点 で,Aの供述の信用性に疑いがあるという。この点のAの供述の信用性を検討する に際しては,朝の通勤・通学時における小田急線の急行・準急の混雑の程度を認識 した上で行う必要がある。この時間帯の小田急線の車内は,超過密であって,立っ ている乗客は,その場で身をよじる程度の動きしかできないことは,社会一般に広 く知れ渡っているところであり,証拠からも認定することができるのである。身動 き困難な超満員電車の中で被害に遭った場合,これを避けることは困難であり,ま た,犯人との争いになることや周囲の乗客の関心の的となることに対する気後れ, 羞恥心などから,我慢していることは十分にあり得ることであり,Aがその場から の離脱や制止などの回避行動を執らなかったとしても,これを不自然ということは できないと考える。Aが回避行動を執らなかったことをもってAの供述の信用性を 否定することは,同種痴漢被害事件において,しばしば生ずる事情を無視した判断 といわなければならない。

(2) 次に,多数意見は,痴漢の被害に対し回避行動を執らなかったAが,下北 沢駅で被告人のネクタイをつかむという積極的な糾弾行動に出たことは,必ずしも そぐわないという。しかし,犯人との争いになることや周囲の乗客の関心の的とな ることに対する気後れ,羞恥心などから短い間のこととして我慢していた性的被害 者が,執拗に被害を受けて我慢の限界に達し,犯人を捕らえるため,次の停車駅近 くになったときに,反撃的行為に出ることは十分にあり得ることであり,非力な少 女の行為として,犯人のネクタイをつかむことは有効な方法であるといえるから, この点をもってAの供述の信用性を否定するのは,無理というべきである。

(3) また,多数意見は,Aが成城学園前駅でいったん下車しながら,車両を替 えることなく,再び被告人のそばに乗車しているのは不自然であるという。しかし ながら,Aは,成城学園前駅では乗客の乗降のためプラットホームに押し出され, 他のドアから乗車することも考えたが,犯人の姿を見失ったので,迷っているうち に,ドアが閉まりそうになったため,再び同じドアから電車に入ったところ,たま たま同じ位置のところに押し戻された旨供述しているのである。Aは一度下車して おり,加えて犯人の姿が見えなくなったというのであるから,乗車し直せば犯人と の位置が離れるであろうと考えることは自然であり,同じドアから再び乗車したこ とをもって不自然ということはできないというべきである。そして,同じ位置に戻 ったのは,Aの意思によるものではなく,押し込まれた結果にすぎないのである。 多数意見は,「再び被告人のそばに乗車している」と判示するが,これがAの意思 に基づくものと認定しているとすれば,この時間帯における通勤・通学電車が極め て混雑し,多数の乗客が車内に押し入るように乗り込んで来るものであることに対 する認識に欠ける判断であるといわなければならない。この点のAの供述内容は自 然であり,これをもって不自然,不合理というのは,無理である。

(4) 以上述べたように,多数意見がAの供述の信用性を否定する理由として挙 げる第2の5の(1),(2)及び(3)は,いずれも理由としては極めて薄弱であり,こ のような薄弱な理由を3点合わせたからといって,その薄弱性が是正されるという ものではなく,多数意見が指摘するような理由のみではAの供述の信用性を否定す ることはできないというべきである。

3 次に,被告人の供述については,その信用性に疑いを容れる次のような事実 がある。

(1) 被告人は,検察官の取調べに対し,下北沢駅では電車に戻ろうとしたこと はないと供述しておきながら,同じ日の取調べ中に,急に思い出したなどと言っ て,電車に戻ろうとしたことを認めるに至っている。これは,下北沢駅ではプラッ トホームの状況についてビデオ録画がされていることから,被告人が自己の供述に 反する客観的証拠の存在を察知して供述を変遷させたものと考えられるのであり, こうした供述状況は,確たる証拠がない限り被告人は不利益な事実を認めないこと をうかがわせるのである。

(2) 次に,被告人は,電車内の自分の近くにいた人については,よく記憶し, 具体的に供述しているのであるが,被害者Aのことについては,ほとんど記憶がな いと供述しているのであって,被告人の供述には不自然さが残るといわざるを得な い。

(3) 多数意見は,被告人の供述の信用性について,何ら触れていないが,以上 によれば,被告人の供述の信用性には疑問があるといわざるを得ない。

4 原判決は,以上のような証拠関係を総合的に検討し,Aの供述に信用性があ ると判断したものであり,原判決の認定には,論理則や経験則に反するところはな く,また,これに準ずる程度に不合理といえるところもなく,原判決には事実誤認 はないというべきである。

第3 論理則,経験則等と多数意見の論拠

多数意見は,当審における事実誤認の主張に関する審査について,「原判決の認 定が論理則,経験則等に照らして不合理といえるかどうかの観点から行うべきであ る」としている。この点は,刑訴法の正当な解釈であり,私も賛成である。

しか し,多数意見がAの供述の信用性に疑いを容れる余地があるとして挙げる理由は, 第2の5の(1),(2)及び(3)だけであって,この3点を理由に,Aの供述には信用 性があるとした原判決の判断が,論理則,経験則等に照らして不合理というにはあ まりにも説得力に欠けるといわざるを得ない。

多数意見は,Aの供述の信用性を肯定した原判決に論理則や経験則等に違反する 点があると明確に指摘することなく,ただ単に,「Aが受けたという公訴事実記載 の痴漢被害に関する供述の信用性についても疑いをいれる余地があることは否定し 難い」と述べるにとどまっており,当審における事実誤認の主張に関する審査の在 り方について,多数意見が示した立場に照らして,不十分といわざるを得ない。

裁判官田原睦夫の反対意見は,次のとおりである。

私は,多数意見と異なり,上告審たる当審としての事実認定に関する審査のあり 方を踏まえ,また,多数意見が第2,1において指摘するところをも十分考慮した 上で,本件記録を精査しても,原判決に判決に影響を及ぼすべき重大な事実誤認が ある,と認めることはできないのであって,本件上告は棄却すべきものと考える。
以下,敷衍する。

1 当審は,制度上法律審であることを原則とするから,事実認定に関する原判 決の判断の当否に介入するについては自ら限界があり,あくまで事後審としての立 場から原判決の判断の当否を判断すべきものである(最二小判昭和43.10.2 5刑集22巻11号961頁参照)。具体的には,一審判決,原判決及び上告趣意 書を検討した結果,原判決の事実認定に関する論理法則,経験則の適用過程に重大 な疑義があるか否か,あるいは上告趣意書に指摘するところを踏まえて記録を検討 した場合に,原判決の事実認定に重大な疑義が存するか否か,及びそれらの疑義 が,原判決を破棄しなければ著しく正義に反すると認めるに足りるものであるか否 かを審査すべきこととなる。

2 本件は,被告人が全面否認し,物証も存しないところから,原判決の事実認 定が肯認できるか否かは,被害事実の有無に関するAの供述の信用性及びAの加害 者誤認の可能性の有無により決するほかない。そのうち加害者誤認の可能性の点 は,一審判決が判示する犯人現認に関するAの供述の信用性が認められる限り,否 定されるのであり,また弁護人からも加害者誤認の可能性を窺わせるに足る主張は ない。そうすると本件では,Aの被害事実に関する供述の信用性の有無のみが問題 となることとなる。

3 そこで,上述の視点に立って本件記録を精査しても,Aの供述の信用性を肯 認した原判決には,以下に述べるとおり,その論理法則,経験則の適用過程におい て重大な疑義が存するとは到底認められないのである。

(1) Aは一審において証言しているが,その供述内容は首尾一貫しており,弁 護人の反対尋問にも揺らいでいない。また,その供述内容は,一審において取り調 べられたAの捜査段階における供述調書の内容とも基本的には矛盾していない。

(2) 多数意見は,Aの述べる公訴事実に先立つ向ヶ丘遊園駅から成城学園前駅 に着く直前までの痴漢被害は相当に執ようで強度なものであるにもかかわらず,車 内で積極的な回避行動を執っておらず,成城学園前駅で一旦下車しながら,車両を 替えることなく再び被告人の側に乗車している点も不自然であるなどとしている が,Aは,満員で積極的な回避行動を執ることができず,また痴漢と発言して周囲 から注目されるのが嫌だった旨,及び成城学園前駅で一旦下車した際に被告人を見 失い,再び乗車しようとした際に被告人に気付いたのが発車寸前であったため,後 ろから押し込まれ,別の扉に移動することなくそのまま乗車した旨公判廷において 供述しているのであって,その供述の信用性について,「いささか不自然な点があ るといえるものの・・・不合理とまではいえない」とした原判決の認定に,著しい 論理法則違背や経験則違背を見出すことはできないのである。

(3) また,多数意見は,本件公訴事実の直前の成城学園前駅までの痴漢被害に 関するAの供述の信用性に疑問が存することをもって,本件公訴事実に関するAの 供述の信用性には疑いをいれる余地があるとするが,上記のとおり成城学園前駅ま での痴漢被害に関するAの供述の信用性を肯定した原判決の認定が不合理であると はいえず,他に本件公訴事実に関するAの供述の信用性を肯定した原判決の認定に 論理法則違背や経験則違背が認められず,また,Aの供述内容と矛盾する重大な事 実の存在も認められない以上,当審としては,本件公訴事実にかかるAの供述の信 用性について原判決と異なる認定をすることは許されないものといわざるを得な い。

4 なお,付言するに,本件記録中からは,Aの供述の信用性及び被告人の否認 供述の信用性の検討に関連する以下のような諸問題が窺える。

(1) Aの供述に関連して
Aの痴漢被害の供述が信用できない,ということは,Aが虚偽の被害申告をした ということである。この点に関連して,弁護人は,Aは学校に遅刻しそうになった ことから,かかる申告をした旨主張していたが,かかる主張に合理性が存しないこ とは明らかである。女性が電車内での虚偽の痴漢被害を申告する動機としては,一 般的に,①示談金の喝取目的,②相手方から車内での言動を注意された等のトラブ ルの腹癒せ,③痴漢被害に遭う人物であるとの自己顕示,④加害者を作り出し,そ の困惑を喜ぶ愉快犯等が存し得るところ,Aにそれらの動機の存在を窺わせるよう な証拠は存しない。

また,Aの供述の信用性を検討するに当たっては,Aの過去における痴漢被害の 有無,痴漢被害に遭ったことがあるとすれば,その際のAの言動及びその後の行 動,Aの友人等が電車内で痴漢被害に遭ったことの有無及びその被害に遭った者の 対応等についてのAの認識状況等が問題となり得るところ,それらの諸点に関する 証拠も全く存しない。

(2) 被告人の供述に関連して
本件では,被告人は一貫して否認しているところ,その供述の信用性を検討する に当たっては,被告人の人物像を顕出させると共に,本件当時の被告人が置かれて いた社会的な状況が明らかにされる必要があり,また,被告人の捜査段階における 主張内容,取調べに対する対応状況等が重要な意義を有する。

ところが,被告人の捜査段階における供述調書や一審公判供述では,被告人の人 物像はなかなか浮かび上っておらず,原審において取り調べられた被告人の供述書 及び被告人の妻の供述書等によって,漸く被告人の人物像が浮かび上がるに至って いる。また,その証拠によって,被告人は,平成18年4月に助教授から教授に昇 任したばかりであり,本件公訴事実にかかる日の2日後には,就任後初の教授会が 開かれ,その時に被告人は所信表明を行うことが予定されていたことなど,本件事 件の犯人性と相反すると認められ得る事実も明らかになっている。

また,近年,捜査段階の弁護活動で用いられるようになっている被疑者ノートは 証拠として申請すらされておらず,被告人が逮捕,勾留された段階での被告人の供 述内容,心理状況に関する証拠も僅かしか提出されていない。さらに,記録によれ ば,被告人の警察での取調べ段階でDNA鑑定が問題となっていたことが窺われる ところ,その点は公判では殆ど問題とされていない。

(3) 仮に上記(1),(2)の点に関連する証拠が提出されていれば,一審判決及び 原判決は,より説得性のある事実認定をなし得たものと推認されるが,以上のよう な諸問題が存するとしても,当審として原判決を破棄することが許されないことは いうまでもない。

この反対意見にある通り、狭く解釈すると上訴審では事実認定をしていけない、という解釈も成り立つわけで、御殿場事件では「日にちがずれていても犯罪があった。被告が犯人」が事実認定であるから、上訴審は判断をしなかった、という事になりそうです。

これでは、近い将来「日本の裁判所は信用できない」という評判が立ちかねないわけで、その危機感が痴漢えん罪事件の疑いがあるとして、最高裁判所が自判した。 それ自体が異例のことなので、三対二の多数決になった。ということでしょう。

4月 16, 2009 at 12:17 午後 事件と裁判 | | コメント (5) | トラックバック (2)

2009.04.15

北朝鮮・IAEAを追放

国連安保理が北朝鮮に対して議長声明を全会一致で採択した事に対して、北朝鮮が、

  • ミサイル(人工衛星)の発射の自由
  • IAEA(国際原子力機関)の追放

を同時に主張しました。

まあ、これをセットにすると、核兵器の弾道弾化ということなるわけで、冷戦中から米ソを中心に延々と続けられ来た種々の国際交渉が元に戻ってしまう、ような状況とも言えます。

この状態を称して「東アジアでは冷戦の最中だ」といった意見をあります。

東西冷戦が、レーガン大統領が仕掛けた軍拡競争で、ソ連が経済的に行き詰まり、最終的には政治体制の崩壊によって終結したことを考えると、全く同様に進むのであれば東アジアにおいて、軍拡競争を進めることになります。

個人的には、今や戦争のコストは高すぎて、どの国でも取り得ない選択なってきていると思いますから、政治手段としての軍事技術の向上=質的高度化での競争にはなりそうです。
しかし量的な拡大はとても出来ないでしょう。

西欧諸国から見れば、東アジアの冷戦的なにらみ合い状態は、熱い戦争になる危機が無い状況では「関与しない」とするでしょう。
その意味では「東アジアの冷戦の激化」の可能性があらわになりつつあるのかと思います。

以下に、興味を惹いた新聞記事を列挙します。

日経新聞社説より「議長声明に映る6カ国協議の空洞化(4/15)

国連安全保障理事会は、北朝鮮による「発射を非難」する議長声明を全会一致で採択した。

常任理事国間の思惑の違いで法的拘束力のない議長声明に落ち着いた。
安保理の現実は、結果的に実効性の乏しい合意文書を発表してきた北朝鮮に関する6カ国協議の空洞化と重なる。

声明は「非難」を明記したが、打ち上げたのは「ミサイル」とせず、単に「発射」とした。ミサイル関連活動の停止を求めた2006年の決議違反も指摘し、再び発射しないよう求めた。決議が定めた制裁の徹底も加盟国に要請した。

法的拘束力のある決議であれば、文言を柔軟にし、拘束力のない議長声明であれば、厳しい文言を盛り込む。合意文書をまとめる場合、安保理がとる手法である。今回もそうだった。米国と非常任理事国である日本は当初、決議を主張し、中国、ロシアは反対した。

今回の交渉で主要な役割を演じた日米中ロは、6カ国協議の構成国である。韓国と当事者である北朝鮮を加えた6カ国で北朝鮮の核、ミサイルなどの問題を協議してきたが、実質的な進展はほとんどない。

当初、米国は6カ国協議を通じて北朝鮮に孤立感を味わわせ、態度を変えさせようとした。北朝鮮「封じ込め」を考えたのだが、中国の意向もあり、北朝鮮を「関与」させようとする場に変わった。

今回の安保理の交渉でも中ロは6カ国協議への悪影響を避けようと腐心した。結果を出すのを目的とすべき協議で、協議自体の継続が目的に変わる。
交渉当事者が陥りやすい傾向であり、協議参加か不参加という北朝鮮の立ち回りの余地を生む。

安保理の議長声明と同様、6カ国協議の合意にも法的拘束力がない。北朝鮮を拘束するには理論的には6カ国協議の合意を安保理決議で確認する必要がある。

日米中ロ4カ国が交渉した今回の経過は、安保理よりも非公式な枠組みである6カ国協議でさえ、4カ国が一致して北朝鮮に対処する難しさを見せつける。
北朝鮮の核やミサイルに対する脅威認識が4カ国で共有されていないからだろう。

協議の場としての6カ国協議の意味はある。
残念ながら、それを相当の忍耐をもって見守らねばならないのが国際政治の現実である。

日米両国ができるのは、06年の安保理決議を踏まえた制裁である。中ロ両国は早く気づいてほしい。
核を廃棄せず、ミサイル実験をする北朝鮮が、両国を含む地域全体の安全を脅かしている明白な事実に――。

毎日新聞社説より「北朝鮮声明 ひるまず確かな対応を

北朝鮮外務省がまるで脅迫状のような声明を発表した。
「人工衛星打ち上げ」と主張する弾道ミサイル発射を国連安全保障理事会の議長声明で非難され、これに逆襲した形だ。

声明が、北朝鮮の核問題を扱う6カ国協議に「二度と、絶対に参加しない」と強調表現を重ねて断言したこと自体は驚くにあたらない。
発射前から、この問題を安保理で扱えば「6カ国協議の破綻(はたん)を意味する」と公言していたからだ。

それにしても特に日本を名指しした批判が激しい。同協議不参加の理由として「日本が今回の衛星打ち上げに言いがかりをつけて」この協議の存在意義を失わせた、などと主張している。
日本に責任転嫁し、他の協議参加国との間に亀裂を生じさせようという意図が透けて見える。

これを含めて、声明の内容はいかにも北朝鮮らしい瀬戸際外交の典型そのものだ。
特に日米韓3国は北朝鮮の揺さぶりに動じることなく、一致団結して確実な対処を進めることが何より肝要である。

やや懸念されるのは、米オバマ政権の対北朝鮮政策が、その戦略にせよスタッフの陣容にせよ、しっかり固まっていないことだ。

北朝鮮が6カ国協議を拒否しながら、米朝直接交渉を望むのは目に見えている。
米国は速やかに態勢を整え、中国とも緊密に協力して北朝鮮を6カ国協議へと導く工夫をしてほしい。

声明には、一見穏やかな表現を用いた脅しともとれる部分がいくつもある。
「自主的な宇宙利用の権利を引き続き行使していく」とは、人工衛星打ち上げを装った長距離弾道ミサイルの発射実験を重ねる構えを示唆したものと読める。
「自衛的核抑止力の強化」や「使用済み燃料棒の再処理」に言及した部分は、6カ国協議の合意に従って進んできた寧辺(ニョンビョン)の核関連施設の無能力化措置を逆戻りさせ、おそらく原爆数個分にあたるプルトニウムを新たに確保する狙い、と解釈せねばなるまい。

もちろん、これらは直ちに実現できることではない。
だが北朝鮮は放射能に対する作業員の安全を軽視してでも核施設の再稼働を急ぎかねない。
しかも数十年にわたる核開発、ミサイル開発の歴史を見れば、最終的に核兵器を搭載できるミサイルの保有により自らの安全を確保しようと願っている可能性を否定できない。そんなことになれば大変だ。

北朝鮮も破局は望んでいまい。
声明の末尾にある「非核化のプロセスが破綻しても朝鮮半島の平和と安全は守る」という言葉が、そのシグナルであろう。
甘い妥協を排しつつ交渉を通じて問題解決への道を探ることは可能なはずである。関係国の粘り強い努力に期待する。

読売新聞社説より「安保理議長声明 北朝鮮の挑発行為を許すな

国際社会の総意にあらがう北朝鮮の危険な挑発行為だ。

国連安全保障理事会は全会一致で弾道ミサイル発射を非難する議長声明を採択した。北朝鮮はその直後、6か国協議をボイコットし、核施設を再稼働させる方針を表明した。

東アジアの緊張を高め、平和と安定に逆行する動きだ。北朝鮮の核廃棄を目指す6か国協議の合意を反古(ほご)にする行動に出るなら、日米韓中露の5か国は結束して強い対応措置を取らねばならない。

安保理の議長声明は、「北朝鮮による4月5日の発射」について、「安保理決議1718に違反する」と認定し、さらなる発射を行わないよう北朝鮮に求めている。

発射が「人工衛星」か「弾道ミサイル」かには触れず、「発射」自体が決議違反と明示した。

「衛星打ち上げは主権国家の権利」という北朝鮮の主張を認めれば、発射に歯止めをかけられなくなる。弾道ミサイル計画に関連した活動は容認できない、との日米の主張を反映したのは当然だ。

北朝鮮は、安保理が発射問題を扱えば、6か国協議は「なくなる」と強く牽制(けんせい)してきた。議長声明を糾弾する外務省声明をただちに発表したのは予想通りだが、その内容は看過できない。

北朝鮮は「宇宙利用の権利を引き続き行使する」として、衛星打ち上げに名を借りたミサイル発射の継続を明らかにした。

さらに、6か国協議の早期再開を求めた議長声明を無視して、今後、協議には「二度と絶対に参加せず、いかなる合意にも拘束されない」と宣言した。

加えて、無能力化した核施設を再稼働させ、使用済み核燃料棒の再処理で核兵器用プルトニウムを抽出する方針を示したことは、核ミサイルの開発を目指すと公言したに等しい。

いつもながらの瀬戸際戦術で、オバマ米政権に米朝交渉の早期再開を迫り、譲歩への見返りを狙っているのかもしれない。だが、北朝鮮が言葉の通り、核施設の再稼働に踏み切れば、6か国協議は意味を失ってしまう。

6か国協議の議長国である中国の責任は重みを増している。最大の貿易国、支援国として、北朝鮮への制裁の徹底などあらゆる有効な手段を講じてもらいたい。

ノドン・ミサイルの射程に入っている日本にとっては深刻な事態だ。米国や韓国と緊密に協議し、核開発阻止に実効的な方策を探っていく必要がある。
(2009年4月15日01時39分 読売新聞)

朝日新聞より「北朝鮮、IAEA監視要員に退去通告 安保理声明に反発

【ウィーン=玉川透】
国際原子力機関(IAEA)は14日、北朝鮮・寧辺の核施設の無能力化を監視するために駐在しているIAEA要員3人に対し、北朝鮮が退去を通告してきたことを明らかにした。

北朝鮮のミサイル問題をめぐり、国連安全保障理事会が発射を非難する議長声明を採択したことに反発した動きとみられる。

北朝鮮はIAEAに対し、核施設に設置している監視用カメラなども撤去するよう要求。

その上で、施設だけでなく、速やかに北朝鮮から離れるよう求めているという。

AFP BB より「北朝鮮、IAEA監視要員に国外退去求める

【4月15日 AFP】
国際原子力機関(IAEA)は14日、北朝鮮がIAEAに対するすべての協力を即時停止すると通告し、寧辺の核施設にいるIAEA監視要員の国外退去を求めたと発表した。

監視要員らは、2007年2月の6か国協議の合意事項の一部として兵器級プルトニウムを製造していた施設を監視するため寧辺に駐在していた。

この数時間前、北朝鮮は国連安全保障理事会が北朝鮮が5日実施した打ち上げを非難する議長声明を採択したことに反発し、朝鮮半島の非核化を目指す6か国協議から離脱し、核開発計画を再開するとの声明を発表していた。

■各国は協議継続を求める

ロシアと韓国は北朝鮮の発表に遺憾の意を示した。
中国は、北朝鮮と友好的な関係を維持してきたこと、日本などが求めていた安保理決議に反対したことを強調して、北朝鮮に6か国協議にとどまるよう求めた。
日本は北朝鮮に6か国協議に復帰するよう強く求めた。

ヒラリー・クリントン米国務長官は、IAEA査察官の国外退去は「不必要な対応」で、北朝鮮が協議に復帰することへの期待感を示した。

■瀬戸際外交強化か

韓国・東国大学のキム・ヨンヒュン教授は、
「北朝鮮は掛け金を徐々に上げている。北朝鮮の瀬戸際外交は米国と国際社会から最大限の譲歩を引き出すのが目的だ」と述べ、北朝鮮が軍事的挑発に乗り出す可能性が高まったと指摘する。

北朝鮮大学院大学の梁茂進(ヤン・ムジン)教授は、14日の北朝鮮の声明は記憶にある限りこれまでで最も厳しいものだと話す。
「この声明は、北朝鮮が行動に向けて動いていると言っている。米国とその同盟国、中国が状況をコントロールするよう賢明な対応をとることが非常に重要だ」

ある韓国の高官は、北朝鮮は核施設の無能力化作業11段階のうち8段階まで終わらせ、現在は9段階目の使用済み燃料棒を原子炉から取り出し、冷却槽に移動させる作業を行っているが、燃料棒の再処理を再開しプルトニウム抽出を始めるまでどの程度の時間がかかるか分からないと述べた。
(c)AFP/Park Chan-Kyong

ロイターより「北朝鮮による国連査察団への国外退去命令、不必要な反応=米国務長官

[ワシントン 14日 ロイター]
クリントン米国務長官は14日、国連安全保障理事会が、前週の北朝鮮によるロケット発射を非難したことを受け、北朝鮮が国連の核施設査察団に国外退去を命じたことについて、不必要な反応だとの見解を示した

同長官は、記者団に対し「われわれはこれを、安保理の懸念から出された合法な声明に対する不必要な反応とみている」と述べた。

さらに「言うまでもなく、われわれは、この件について話し合う機会を同盟国とだけでなく最終的には北朝鮮とも持つことを望んでいる」と語った。

ロイターより「北朝鮮、監視団に早期の国外退去命令=IAEA

[ウィーン 14日 ロイター]
国際原子力機関(IAEA)によると、北朝鮮は核施設の監視団との協力をすべて打ち切るとした上で、監視団に対しできるだけ早期の国外退去を命じた。

これに先立ち、北朝鮮は核問題について話し合う6カ国協議からの離脱と核施設の稼動再開を表明した。

広報担当のマーク・ビドリケア氏は声明で「(北朝鮮は)この日、寧辺施設のIEAE監視団に対し、IAEAとのすべての協力を即刻停止すると通告してきた」と指摘。

核施設のすべての封印および監視機器を撤去するよう求められ、監視団はできるだけ早期に国外退去するよう命じられたことを明らかにした。

読売新聞より「北朝鮮制裁、米が資産凍結の対象リスト…安保理委に提出へ

【ニューヨーク=白川義和】
北朝鮮のミサイル発射を非難し、国連安全保障理事会の制裁決議徹底を求める議長声明採択を受け、米国が近く安保理の制裁委員会に提出する北朝鮮企業の資産凍結対象リストが14日、明らかになった。

弾道ミサイル関連の取引を担う貿易会社や金融機関の計11社を挙げており、制裁委は24日までに対象企業を指定し、国連加盟国に制裁措置の徹底を促す。

2006年の北朝鮮の核実験を受けて採択された安保理決議1718は、核・ミサイル開発に関連する企業の資産凍結を定めているが、具体的な対象は指定していなかった。
13日に採択された議長声明は、今月中に制裁対象リストを作成する方針を示しており、日米などのリストを基に制裁委で安保理の各理事国が討議する。

読売新聞が入手した米国のリストは、11社の筆頭に「朝鮮鉱業開発貿易会社」を挙げている。
同社が北朝鮮の「主要武器取引業者」で、弾道ミサイル関連の物資・設備輸出の中心になっているとし、複数の国の事務所を通じて武器売却を推進していると指摘した。
防衛複合企業体の「朝鮮リョンボン総合会社」もリストに含めており、同社は軍需物資の獲得や、軍事関連物資の売却支援を専門に行っていると説明している。

金融機関で唯一リストに入っているのは「端川(タンチョン)商業銀行」
弾道ミサイルや通常兵器の取引決済を担い、前身の「蒼光(チャングァン)信用銀行」は1980年代後半から、中東やアフリカへの武器売却の利益を集めてきたとしている。
米側は、こうした売却益が北朝鮮の兵器開発や武器購入の財源になっていると指摘している。

朝鮮鉱業開発貿易会社と朝鮮リョンボン総合会社の子会社計8社もリストに含まれた。

制裁委の決定は全会一致が原則で、制裁対象企業を決定できなかった場合は、安保理が30日までに指定を終える。確定したリストは決議1718の関連文書となり、国連加盟国は対象企業への制裁履行が義務付けられる。

すでに日本と米国は、これら11社に独自の金融制裁を行っているが、北朝鮮に最も影響力がある中国は制裁を限定的にとどめており、全体の効果は不十分だ。
今回、安保理がリストを作成しても、制裁履行は各国の意思に委ねられるため、実効性を疑問視する見方も強い。
(2009年4月15日03時23分 読売新聞)

4月 15, 2009 at 09:44 午前 海外の政治・軍事 | | コメント (0) | トラックバック (0)

麹町でクレーン転倒・その2

朝日新聞より「クレーン横転、作業員「つり上げでバランス崩した」

東京都千代田区のマンション建設現場で14日、作業中の大型クレーンが横転し通行人ら6人が重軽傷を負った事故で、クレーンを操作していた作業員の男性(38)が警視庁の事情聴取に、「(ケーシングと呼ばれる枠を)つり上げようとしてバランスを崩した」などと説明していることが分かった。同庁幹部が明らかにした。

捜査1課は、業務上過失傷害の疑いで工事関係者から事情を聴くなどして原因を捜査。クレーンを操作していた場所が適正だったかについても調べている。

この建設工事は、東亜建設工業(千代田区)が施工。クレーンを所有する大洋基礎(中央区)や光北産業(埼玉県新座市)などが実際の作業に携わり、14日は、大洋基礎の現場責任者1人とクレーン操作の作業員ら光北産業の社員4人らが基礎工事のくい打ちを進めていたという。

ケーシングは、掘削した穴に地表の土が入らないようにするための円筒形の鉄製の枠で、直径約2.5メートル、長さ約7メートル、重さ10トン前後。事故直前にはワイヤ2本でつって穴から引き上げていたという。

東亜建設によると、ワイヤ2本なら最大13トンのつり上げが可能だが、アームを下げて遠くの物をつり上げる時は最大荷重は小さくなる。同課は、クレーンとケーシングの距離が本来より離れていた疑いもあるとみて調べている

大洋基礎によると、このクレーンは00年3月に購入し、直近の今年1月13日の点検で問題はなかったという。

この事故では、倒れた工事用フェンスの下敷きになった歩行者の女性(62)=東京都武蔵野市=が頭の骨を折って意識不明の重体、男性(33)も頭を打撲した。クレーンのアームは、走行中の物流業者のトラックを直撃し、運転手(29)ら男性3人が運転席に一時閉じ込められ、足の骨が折れるなどのけが。クレーン操作の作業員も運転席から投げ出され、背中を打撲した。

読売新聞より「最大荷重近く、支えきれずクレーン横転か

東京都千代田区麹町のビル建設工事現場で14日、大型クレーンが横転し、歩行者ら6人が負傷した事故で、事故当時、クレーンは最大荷重に近い重さの鉄管をつり上げる作業をしていたことがわかった。

この現場では、同じ鉄管をこれまでにも2回、問題なく引き上げていたが、つり上げることができる鉄管の重さはアームの角度によって大幅に減少することから、警視庁ではクレーンが適切に操作されていたかを詳しく調べるとともに、業務上過失傷害容疑で工事関係者から事情を聞いている。

クレーンを操縦していた男性オペレーター(38)は警視庁の調べに、「クレーンで鉄管をつり上げようとしたら、バランスを崩して倒れた」と説明。現場の作業員も「鉄管を引き出している途中、クレーンが突然ふわふわした状態になり、横倒しになった」と話しているという。

工事の元請けの「東亜建設工業」(千代田区)によると、事故は地上19階、地下2階建て複合ビルの基礎工事中に発生。下請けの「大洋基礎」(中央区)の作業員らが作業にあたり、クレーンは杭(くい)を打ち込む縦穴に挿入されていたケーシングと呼ばれる11トンの鉄管(長さ約7メートル、直径約2・5メートル)を、地中から地上約3メートルまで引き上げたところで横転した。この現場で鉄管を引き上げる作業は3回目で、これまでの作業で問題はなかったという。

クレーン製造元の日立住友重機械建機クレーン(台東区)によると、倒れたクレーンはもともと基礎工事で地面に縦穴を掘る掘削機。穴の内部に鉄管や鉄筋などを搬入するために備え付けられている補助的なクレーンは最大で13トンの荷物をつり上げられるが、アームの角度によって最大荷重は減少する。

アームが水平に近い角度になって重機と鉄管が離れるほど、重いものをつり上げられなくなるといい、東亜建設工業の説明によると、13トンをつり上げられる重機と鉄管の適正距離は6・7メートル~9・4メートルの間。10・9メートルでは9・2トン、13・1メートルでは5・5トンしかつり上げられなくなるという。

同社によると、現場はビルの解体後、埋め戻した土地で地盤が弱く、鉄板を敷いて作業をしていたという。

この事故では、横転のはずみで倒れた、工事現場を取り囲む鉄製の囲いの下敷きになった武蔵野市の女性(62)が頭の骨を折るなどして意識不明の重体となったほか、アームの下敷きになったトラックに乗車していた男性(39)ら3人が足の骨を折るなどの重傷。クレーンの男性オペレーターと歩行者の男性(33)が背中を打つなどの軽傷を負った。

クレーンが横転した国道20号は一時、上下計6車線のうち5車線で通行止めとなった。東京国道事務所によると、クレーンを解体して撤去するのに手間取り、発生から10時間40分後の午後9時50分に全面復旧した。
(2009年4月15日03時04分 読売新聞)

どうにも両方の記事とも、タイトルと記事の内容を端的にあらわしていると感じられないですね。

読売新聞の記事にある

クレーンを操縦していた男性オペレーター(38)は警視庁の調べに、「クレーンで鉄管をつり上げようとしたら、バランスを崩して倒れた」と説明。現場の作業員も「鉄管を引き出している途中、クレーンが突然ふわふわした状態になり、横倒しになった」と話しているという。

が真実だとすると、カウンターウエイト不足だったのかもしれない、と感じます。
写真を良く見ると、問題の基礎工事は敷地の境界線に沿って行っていたようで、地面に空けた穴が境界線ギリギリところに空いています。
ところが、鉄板の敷板が敷地の中央だけにあるようで、ひょっとすると転倒したクレーンを敷地の真ん中に置いて、アームを伸ばして工事を進めていたのではないか?とも想像できます。

テレビニュースでは、目撃者は「強い風が吹いていると思ったらゆっくりと倒れてきた」といったような表現をしていましたから、

  1. アームの伸ばしすぎで、カウンターウエイト不足の状況であった
  2. 後部が持ち上がって不安定になってしまったが、前方に転倒するほどではなかった
  3. 横方向から強風が吹いて横倒しになった。

といったところではないかと想像します。

4月 15, 2009 at 08:47 午前 事故と社会 | | コメント (7) | トラックバック (0)

2009.04.14

麹町でクレーン転倒

読売新聞より「クレーン転倒、歩行者1人が重体…東京・千代田区

14日午前11時10分頃、東京都千代田区麹町4のマンション建設工事現場で移動式の大型クレーンが横転。工事現場に面した国道20号で信号待ちしていたトラックがクレーンのアームの下敷きになった。

東京消防庁と警視庁麹町署によると、この事故で、歩行者2人が巻き込まれ、うち1人が重体となっている。

アームは新宿方面に向かう下り線の3車線をふさぐようにして倒れており、警視庁などによると、下敷きになった2トントラック内に男性運転手(29)など3人、クレーン内にオペレーターの男性(38)の計4人が一時、閉じこめられた。午後0時10分現在、4人はいずれも救出されたが容体は不明。また、事故に巻き込まれた歩行者のうち、40歳代の女性が病院に搬送されたが意識不明の重体、男性(33)が軽傷の模様。

現場の国道20号はJR四ツ谷駅から皇居に向かう主要道路(新宿通り)で、周囲には上智大学などの学校や各国大使館のほか、オフィスビルやマンションなどが立ち並ぶ人通りの多い地域。

現場では、クレーン車が工事の囲いをなぎ倒し、歩道と通りの片側3車線をまたぐ形で倒れていた。中央分離帯に近い追い越し車線では、トラックが下敷きになり、運転席が押しつぶされた状態になっていた。

歩道には通行人らしい男性が頭を押さえてぼうぜんとした様子で立っていた。

現場向かいの会社内で勤務中だった会社員男性(47)は、「交通事故のようなガシャンという音がして外に出たら、工事現場のクレーンがトラックの運転席付近に倒れているのが見えた。トラックの運転席にいた男性は、足を挟まれているようで運転席から出られないようだったが、上半身は動いていた」と驚いた様子で話した。 (2009年4月14日12時58分 読売新聞)

このあたりは、法律事務所がたくさんあるところで、わたしの知っている弁護さんの事務所が複数ありますし、大勢の知人がいる地区でもあるので、誰かが何らかの被害に遭っていないかとちょっと心配しました。

報道には現時点では出ていませんが、新宿通のこの地区(麹町)の古いビルは再開発中です。
新宿に向かって左側のビル群が建て替えになります。

今回事故を起こした工事現場も正に立て替えのための取り壊しをしていたビルで、何年もウロウロしている地域ですから、写真を見ただけで分かってしまいました。
昨日は、幼稚園の送迎バスが民家に突っ込むという事故が大田区矢口でありましたが、ここは大学まで住んでいたところですから、裏道も含めてよく知っているところでした。

立て続けに知っているところで事故というのは、イヤなものですね。

4月 14, 2009 at 01:33 午後 事故と社会 | | コメント (8) | トラックバック (0)

2009.04.13

個人情報保護・国が敗訴して損害賠償

共同通信ニュースより「個人情報漏えいで国に賠償命令 議員宿舎移転計画で70万円

東京都千代田区紀尾井町への参院議員宿舎移転計画をめぐり、個人情報が無断で参院事務局などから推進派側に流されたとして、反対派の地元住民(64)が国に約250万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は13日、「必要もないのに個人情報を第三者に開示した」として、国に70万円の支払いを命じた。

松本光一郎裁判官は「反対派を攻撃する材料を提供するのと同然の行為で、公正性が要求される国の機関の規範に著しく違反する」と指摘した。

判決によると、参院事務局の職員らは2007年1月、移転計画について原告(被害者)が電話で問い合わせをした際の会話内容や原告(被害者)本人の氏名、住所などを記録した文書を、推進派団体の求めに応じて手渡した

原告(被害者)らは同6月、移転宿舎が高さ制限などを定めた都条例に反するとして、都知事に建設を認めないよう求め東京地裁に提訴。
都知事が建設に反対したため、昨年取り下げた。

これで、国が損害賠償の責を負うというのは、常識的にはあり得ない事件で、逆に考えると、この事件の判決が「賠償するほどの責任はない」という判決であった場合には「個人情報保護法は無効です」という解釈になったでしょう。

アメリカであれば懲罰的賠償で100億円とかになるのではないでしょうか?

4月 13, 2009 at 07:01 午後 個人情報保護法 | | コメント (1) | トラックバック (1)

2009.04.12

チベット問題を考えてしまう映画

映画・雪の下の炎を見てきました。

原作は「雪の下の炎」 パルデン ギャツォ 著 、1998新潮社刊の自伝です。

ダライ・ラマ法王日本代表部事務所のHPの記事「チベット僧元「良心の囚人」パルデン・ギャツォ講演会 ドキュメンタリー映画「雪の下の炎」抜粋試写

チベット僧パルデン・ギャツォ氏は28歳のときにチベット侵略を抗議した「罪」で逮捕され、33年間、牢獄や強制収容所で肉体的、精神的拷問、飢餓、激しい労働など受けました。

92年に出所、今なお不屈の精神と魂の炎を燃やし続け、チベットの人々のため世界平和のために祈り続けていらっしゃいます。

この度、彼の人生を描いた最新のドキュメンタリー作家、楽真琴(ささ・まこと)さんもニューヨークからお招きし、パルデン・ギャツォ氏とのトークが実現いたしました。

ぜひともこの貴重な機会に、パルデン・ギャツォ氏の強靭な精神力と深い信仰心にふれていただければ幸いです。

何か日本語がヘンですが、この講演会が2008年7月に開催され、「抜粋試写」となっていますから、映画として完成していなかったのでしょう。

映画の公式サイトの案内の通り、昨日から渋谷アップリンクで始まった上映に行ってきました。

上映後に楽真琴監督とジャーリスト西条五郎氏のトークショーがありました。

『雪の下の炎』の公開初日に、トークイベントを開催いたします。

チベット民衆蜂起から50周年となる今年の3月、中国当局はチベット自治区及び四川・青海・甘粛各省内のチベット自治州から外国人を締め出しました。そんな中、四川省内のチベット自治州での潜伏取材に成功した数少ないジャーナリスト、西条五郎氏をゲストにお招きし、ニューヨークから一時帰国中の楽真琴監督とトークショーを行います。

■日時:4月11日(土) 上映 18:30~/ トーク 19:45~ (20:30終了予定)

■出演:
楽真琴氏(「雪の下の炎」監督)
西条五郎氏(ジャーナリスト)

■会場:アップリンクX (渋谷区宇多川町37-18トツネビル2F)

■イベント料金:当日一般¥1,500/学生 ¥1,300/シニア ¥1,000
*前売り券もご利用いただけます。
*予約不要。17:30より整理券を配布いたします。

【西条五郎氏プロフィール】

1974年東京生まれ、ジャーナリスト。08年に長野で北京オリンピックの聖火リレーを現地したことで、チベット問題の取材を開始。同年8月、北京オリンピック期間中に北京のほか、チベット亡命政府があるダラムサラ、チベットのラサを訪れ、11月にダラムサラでチベット人特別総会を取材。09年3月上旬から中旬にかけて、中国政府が事実上の戒厳令とも言える厳戒態勢を敷いた四川省カンゼ・チベット自治州のリタンに潜伏。livedoorニュース内「PJ ニュース」で体験ルポを発表。

PJニュース「チベット潜伏記」

まあ、中国がチベットに侵攻したことで、ダライラマがインドに亡命政権を作っていること、いまでもチベットではしばしば治安状況が悪化することは承知していましたが、具体的にどんな状況なのかは知りませんでした。

2008年の北京オリンピックに対して、チベット問題を理由に反対意見が多数あり、2006年のトリノオリンピックで、パルデン・ギャツォ師はハンストをおこなっています。 ダライ・ラマ法王日本代表部事務所のHPの記事「チベットが解放されるまで、中国オリンピックはありえない- チベット青年会議、ハンストを主導 -」より

2月14日午前4時、TYC(チベット青年会議)は、イタリア・トリノの聖ピエトロ寺院でチベット組織の後押しを得てハンストを決行した。

秘書官のぺマヤンチャン氏は開始宣言の中で、冬季オリンピックが開かれているトリノでハンストを行う重要性とその目的を語った。

プログラムは、厳かなチベット賛歌の演奏に合わせたデンティスクモノラムの暗唱とともに始まった。黙とうは独立運動で自らの命を犠牲にした勇敢なチベット人のために捧げられた。

オリベロ氏の代理人であり、SERMIG(青年使節団)の指揮官であり、開会式の主賓として招かれたアンドレア氏は、ハンガーストライカーたちと結束を誓いながら、チベットの人権状況を改善するために中国に圧力をかける効果的なプログラムを遂行することを引き受けた。

SERMIGは世界中に強いネットワークを持つ使節団体の一つである。裁判院長官のエンリコ・ブエミ氏もまたチベット解放運動に対する結束を誓った。

バルデン・ギャッツォ氏は、以前政治犯として投獄されたハンガーストライカーであるが、体調が好ましくないにもかかわらず、TYCが主催するハンストに参加できることに対する喜びと誇りを述べた。

そしてスピーチの中でIOCに対し、オリンピックの主義と理念をもう一度掲げることを強調した。

彼はまた、中国の牢獄の中で苦しんだ33年間に及ぶ拷問の経験を語るとともに、TYCがデリーの中国大使館前でチベットの政治犯を死刑から救うためにデモを行ったことも回想した。

他の演説者としてタンディン氏、ケルサン氏、クラウディオ氏、ロザンナ氏が呼ばれた。タンディン氏はチベットの団体に所属しており、イタリアでのハンストメンバーの一人である。ケルサン氏は前チベット青年議会の 議長を勤めた。

クラウディオ氏はチベット人のための運動を行う一人で、ロザンナ氏はトリノの急進派政党に所属する議員である。

TSG(Members of Tibet Support Group)のイタリア支部もこのプログラムに参加した。

演説者は激励と感謝の念を他の支援者に表した。

「チベットが解放されるまで、中国オリンピックはありえない」と書かれたマスコミ向け資料は多くのメディアに流された。

【三人のハンガーストライカーの簡単な紹介】

Palden Gyatso パルデン・ギャツォ

チベット、パナンで生まれる。彼はチベットの政治犯として最もよく知られる人物の一人。

1959年から33年間、中国の刑務所に服役していた。

服役中の体験を綴った本『雪の下の炎』の著者。

この本はすでに19ヶ国語に翻訳され、祖国と自由を愛する最もパワフルな男として評価されている。彼は執筆活動とともに、これまでに20カ国以上をめぐり、チベットの完全な独立を熱心に訴え、国連を始めとする様々な国際フォーラムの場で、中国支配下で受けた体験を語ってきた。

映画は、わたしには面白かったのですが、ちょっと不思議な感じで、そもそも現在のチベットで反中国映画が撮影できるはずもないので、ニューヨークでのフリーチベット運動の様子などが主になります。
インド・ダラムサラに亡命チベット人の町が出来ているのだそうで、その様子などが映画の中心です。

もちろん、パルデン・ギャツォ師はお坊さんですから、チベット仏教の法衣で画面に登場するし、過去の写真などの挿入画面も異文化であり、同時に少々の知識では追いつけないような内容であるために、私のような素人にとっては「小説のようだな」と感じる作品でした。

冷静に考えると、映画の最後に「チベット人は自国で少数民族になったしまった」と出てくるのですから、国際問題として大変なことであるのですが、映画はちょっと違った視点を強調しているよう思います。

映画を見て、トークショーを聞いてから、色々と検索して書きましたが「この位の事前知識があった方が良かったな」と思っています。

監督の楽真琴(ささ・まこと)氏を取り上げた記事を見つけました。

サンケイ新聞より「チベットの悲劇、伝えよう 相次ぐ支援作品

中国の侵略によるチベット動乱とダライ・ラマ14世の亡命政府樹立から50年の今年、日本人アーティストらがこの悲劇を描き、独立回復を願う作品を発表。主婦の翻訳本刊行や僧侶らの追悼行事なども続く。いずれも「日々の生活の中からチベット支援を」と呼びかけている。(八並朋昌)

◆国境や人種を越えて

「チベットでとてつもない悲劇が続いている。アジアの一員として僕たち一人一人が日々の生活で、できることから実践し、この悲劇を伝えることが大切」

25日発売のCD「ソングス・フォー・チベット・フロム・ジャパン」発起人でロックミュージシャンの難波章浩さん(38)は話す。平成11年の「チベタン・フリーダム・コンサート日本公演」にハイスタンダードの一員(当時)として出演。昨夏発売の「ソングス・フォー・チベット」にも日本向けボーナス曲で参加した。

今回のアルバムは「日本からもアクションを」と難波さんが呼びかけ、細野晴臣さんやコーネリアス、ブラフマンなど18組が所属レーベルを超えて曲を提供。難波さんも新曲「ヒマラヤは泣いている」を寄せた。収益の一部はチベット支援事業に寄付する。

参加したハワイアンシックスの安野勇太さん(29)は「僕らはこうして歌うことしかできないが、小さな希望が生まれることを祈る」。コークヘッドヒップスターズのKOBAさん(39)も「チベットの人たちは自由が奪われたまま…。国境を越え、人種を超え、自由と平和を叫ぼう」と訴える。

◆「真実を友人に」

来月11日公開のドキュメンタリー「雪の下の炎」を手がけた映画監督の楽真琴(ささまこと)さん(35)は、動乱で中国軍に不当逮捕され、33年間の拷問に耐えたパルデン・ギャツォ師(77)を4年がかりで描いた。

映画の一場面、2006年2月のイタリア・トリノ。断食で北京五輪開催決定に反対した師に密着し、「自由になれても、なお闘い続ける姿に涙が止まらなかった」と話す。

そして、「一人の人間にも小さいなりにできることがある。真実を友人、その友人の中国人へと伝えることが、やがてチベットの悲劇の解消、独立回復につながる」。

◆支援の輪

主婦として活動するチベット交流会代表の朝野玉美さん(50)は、亡命政府の要請で3作目の邦訳『中国侵略下のチベット』を来月出版する。チベット本土の実態を亡命政府がまとめたもので、「宗教弾圧や洗脳教育、天然資源略奪などがここまで進んだのかと、訳しながら絶句した。中国が公表した『チベット民主改革50年白書』のウソが明白になる」と話す。

そして、「チベットでは今も多くの子供たちが肉親と別れ、中国軍の狙撃をかいくぐって、ヒマラヤを越え亡命している。母親として、この悲劇を一人でも多く伝えたい」という。

昨年の北京五輪聖火リレー出発地を辞退した長野市の善光寺周辺では、チベット人犠牲者の追悼行事やチベット僧による舞踏劇、映画上映会など支援活動が5月末まで続く。活動の一端を担う市民組織「チベットの風」呼びかけ人で海禅寺(長野県上田市)副住職の飯島俊哲さん(28)は「継続的な活動でチベット問題への理解が一般市民にも深まり、支援の輪が広がっている」と話している。

問い合わせは

CDトラフィック(電)050・5510・3003
「雪の下の炎」渋谷アップリンク(電)03・6825・5502
チベット交流会(電)045・942・2439。

4月 12, 2009 at 09:41 午前 日記・コラム・つぶやき | | コメント (0) | トラックバック (0)