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2009.12.13

裁判員裁判・初の無罪主張その4

「裁判員裁判・初の無罪主張その3」などで紹介してきたさいたま地裁での裁判員裁判の判決が出ました。

埼玉新聞より「無罪主張の男に懲役8年 「公判長く疲れた」和光の強盗致傷

少年らと共謀し、現金などを奪ったとして強盗致傷などの罪に問われ、共謀はしていないと無罪を主張していた探偵業(33)の裁判員裁判の判決公判が11日、さいたま地裁であり、中谷雄二郎裁判長は、懲役8年(求刑懲役10年)を言い渡した。

選任から判決まで、過去最長の12日間。裁判員経験者らは「内容からして適切な期間」と理解を示したが、「大変疲れた」と話した。

裁判員裁判で共謀の有無が争点となったのは初めて。

検察側は、

被告が実行犯の少年らに「とことんぶっ飛ばして、金や金目のものを取って来い」などと犯行を指示したと主張し、
弁護側は
「強盗の指示はしていない」と反論した。

中谷裁判長は、「実行犯の少年らの証言は具体的、迫真的で矛盾は認められず、十分信用できる」と共謀を認定。

その上で「犯行は計画的で、自分は犯行に関与していないと装うなどずる賢い。被告は首謀者で、果たした役割は極めて大きい」と述べた。

判決後の記者会見には裁判員2人と、補充裁判員1人(いずれも男性)が参加。有罪か無罪かを争った長丁場に、60歳代の自営業男性は「2週間にわたったので、長かった。内容も非常に複雑で難しかった」と感想を述べた。

被告は控訴する意向を弁護士に伝えた。

判決によると、被告は少年ら(4人は少年院送致など、成人1人は公判中)と共謀し、昨年9月21日、和光市の男性宅に押し入り腕時計などを強奪、同居の女性に軽傷を負わせ、コンビニのATMで、46万円を引き出させた。

判決文は争点に対する判断が詳しく記載され、裁判員裁判としては異例の長さの12㌻に上った。

■「12日間」周囲の理解力カギ

閉廷後、4番の会社員男性(60)、6番小売業男性、20代の男性補充裁判員の3人が記者会見に応じた。

有罪か、無罪か。異なる主張に耳を傾け、下した判決について、補充男性は

「一つのチームとして出した結論。妥当だと思う」。日程が長期間に及んだ点には3人とも「これくらい必要だった」
と話した。

選任手続きから判決言い渡しまで、最長の12日間。

事件の背景が複雑な上、7人の証人尋問と被告人質問が行われるなど、中身が濃い公判だったことに、6番は

「大変疲れた。内容が複雑で難しかったからかな」
と息をついた。補充男性も
「少々疲れがある」
と話した。

公判日程については

「3日目くらいまでは出ていただけで、後から難しさが分かってきた」
と6番。4番も
「不都合はなかった」
と理解を示した。それでも
「公判が終わってから会社に行き、遅い時は夜9時まで働いた日もあった」、6番も「戻ってから仕事をした」
という。

判決内容を決める評議を前に、補充裁判員3人が解任されたことには「かかわった以上は最後までいたかったと思う」と気遣った。

公判では検察側、弁護側双方の主張が真っ向から対立。

4番は

「公平公正な立場で、と決めていた」
。補充男性も
「ありのままを受け止めようと思っていた」
と先入観をなくして挑んだ。

有罪、無罪を決めるプレッシャーは

「精神的にきつい部分はあったが、平常心で臨めた」
と4番。判決については
「妥当だと思う」
と答えた。

今後も否認事件や、審理が長期間にわたる裁判員裁判が開かれることが予想されるが、4番は「(家庭や会社などの)周囲の理解をいかに得られるか。制度ではなく、個々の問題だと思う」と話した。

■「旧来踏襲の判決文」 弁護人が会見

判決後、無罪を主張してきた被告の弁護人の村木一郎弁護士は

「証拠は証人の証言が軸で、どの切り口を見るかで、結論が変わる裁判だった」
と話した。その上で、
「少年たちの証言が正しいという前提で話が進んだ。有罪の結論を出すために、いろいろな疑問点を消していった。旧来の裁判のやり方の特徴だ」
と述べた。

判決文については、

「旧来のものを踏襲し、裁判員裁判としてはがっかり。全員一致で有罪だったのか、疑問を感じた人はいたのか、市民の視点から、有罪か無罪で悩んだ様子が書いてあってもおかしくなかった」
と不満そうだった。

事件から裁判に至るまでの経過は、「裁判員裁判・初の無罪主張その3」などに書きましたが、被告の主張などについては、サンケイ新聞の記事「【法廷から】被告と検察の全面対決に裁判員どう判断」には次のようにあります。

共謀は成立しているのか-。

さいたま地裁で11日に判決が言い渡される強盗致傷事件の裁判員裁判は、無罪主張の被告側と懲役10年を求刑した検察側が対立。
初公判から判決まで12日間という長期間を要した裁判での裁判員の判断に注目が集まる。

強盗致傷罪に問われているのは、東京都墨田区の探偵業(33)。

起訴状によると、被告は平成20年9月21日未明、数人と共謀して和光市の男性会社員宅に押し入り同居の女性を鉄パイプで脅して転倒させ軽傷を負わせた上、現金約7万5000円を奪うなどしたとされる。

被告が強盗の現場にいなかったことに検察側、弁護側双方に争いはない。

争点は被告が東京都新宿区のカラオケ店で実行犯に強盗を指示していたかどうかに集約されている。

出廷した証人は7人。特に注目されたのは、実行犯の少年3人だ。

1日の証人尋問で、少年が被告とカラオケ店で初めて会ったときの印象を

「暴力団かと思った。肩に入れ墨を入れ、色眼鏡にセカンドバッグを持ち、派手な服だった」
と証言した。

この日の被告は黒色のスーツに青色の取り付け式ネクタイに、縁なし眼鏡で出廷。
法廷での印象との違いに裁判員は驚きの表情を見せていた。

また少年は

「被告から『手足を4本折ってでもカネや金目のものを持ってこい』と指示された」
と証言した。

共謀を決定づけるように思えるこの証言。しかし、被告は4日の被告人質問で、こう反論した。

弁護人「暴力を振るってカネを持ってこいと言ったのか」
被告「それはあり得ない。少年の証言は意味合いが全然違う」
弁護人「『死ぬ気で行けと指示した』と供述調書にはあるが」
被告「少年は貧弱なので、金銭トラブルの解決で被害者宅に行っても恫喝(どうかつ)されて戻ってくるのが分かっていたから、軽口をたたいている意味で言った」
弁護人「被害者が抵抗してきたら、手足を折るくらいやってもいいという意味か」
被告「その通りです」

被告は、「手足を折っても-」の発言の趣旨は強盗の指示ではなかったと供述したのだった。

終始、事件への関与を否定し続けた被告。
裁判員は時折首をかしげたりしながら思案顔でこうした証言や供述を聞いていた。

「疑わしきは被告の利益に」は刑事裁判の原則。一方、犯罪の“やり得”を許すことは社会正義に反する。法廷でうそをついているのは誰なのか。(西尾美穂子)

まあ、この記事で見る限りは被告側の主張が無理すぎるという感じではあって、少年院にいった証人の証言には勝てないように感じます。
ところが別の事情もあったようです。

毎日新聞より「裁判員裁判:全国最長12日間…裁判員「妥当な日程」

評議を含めて7日間の期日を要し、初公判から判決まで12日間かけた全国最長の裁判員裁判の判決公判が11日、さいたま地裁(中谷雄二郎裁判長)であった。

強盗傷害罪などに問われ、無罪を主張した東京都墨田区江東橋、探偵業、赤谷拓治被告(33)に懲役8年(求刑・懲役10年)を言い渡し、判決後の記者会見で裁判員は「妥当な日程だった」と感想を述べた。

裁判員2人と補充裁判員1人が会見に出席した。

期間の長さについて60代の小売業の男性は「3日間では訳が分からなかったと思う。他の裁判が3日間で終わることが信じられない」。会社員の男性(60)は「裁判後に午後7時や9時ごろまで働き、仕事に支障はなかった」と話した。

被告人質問で裁判員が直接質問したのは1回だけだった。

「被告も被害者も暴力団とかかわりがあったからか」
との質問に、小売業の男性は
「非常にはばかられた。事件の内容が複雑だったことも理由」
と話した。

赤谷被告は、少年ら5人に強盗を指示したとされたが、公判で「指示していない」と無罪を主張。

証人7人が出廷するなど、関係者の証言の信用性が争点となり、中谷裁判長は「被告は責任を転嫁しようとしている」として実刑判決を言い渡した。【飼手勇介、浅野翔太郎】

これでは、裁判そのものも大変だったでしょうし、まして裁判員一人ひとりのプレッシャーも大変だったろうな、と思います。

今回の裁判員裁判は、被告が無罪を主張しているとはいえ、実行犯への指示に相当する発言が、指示に当たるかどうか?というものであって、言葉の解釈の問題です。
従って、解釈そのものは社会の基準で判断するべき事ですから、社会の基準では発言には被告の意志が犯行に及ぶ、と判断して問題は無いでしょう。

私が応援しているホームオブハート裁判でも、ホームオブハート側の証言にはしばしば言葉の解釈が違うという主張が出てきます。
確かに相手に応じて言い方を変えるのは社会で普通に行いますが、例えば、大人に向かって「幼児に声をかけるのと同じように」といった普通はあまり考えられない主張があった場合には、そういう証言の背景にある事情に普通ではない意図がある、と解釈するのが当然です。

これが、足利事件とか、東金市の幼女殺人事件といったことになると、事実関係そのものが信用できるのか?となりますから、裁判員裁判であった場合、検察側に求められる立証の精密さは、格段に重要になるでしょう。

12月 13, 2009 at 09:31 午前 裁判員裁判 |

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