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2009.10.15

教員養成6年制以前の問題の方が重大でしょう

毎日新聞より「教員養成制度:民主新制度、教員養成課程6年に 経験10年で1年研修

民主党政権が導入する新たな教員養成制度の概要が分かった。

大学院修士課程(2年)の修了を教員免許取得の条件とし、養成課程は計6年に延長。教育現場で実習する総時間を現行の2~4週間から1年程度に増やす。

また、10年程度の現場経験を積んだすべての教員が、大学院などで1年程度研修を受け「専門免許状」を取得することを事実上義務化する。

早ければ11年にも関連法案を成立させ、新制度に移行する。

鈴木寛副文部科学相は14日の政策会議後、報道陣に「来年度、教育現場と教員養成現場から意見を聞き、相当精力的に検討する。拙速にはしない。教員に不安を与えないようにしたい」と話した。

10年ごとに教員に30時間の講習受講を義務付ける教員免許更新制度は、今年度スタートしたばかりだが、新制度移行後は専門免許制度に吸収される。
鈴木副文科相は「(受講の実績は)専門免許取得時に単位換算するなどの配慮をする」との方針を示した。

新制度の核になるのは全国24校の教職大学院。教育学部だけでなく他学部卒業生も受け入れ、実習を中心とした2年間のカリキュラムを組む。

教育現場での実習は大学1年の段階から長期的に実施できるか検討する。
「小1で出会った子が小6になるまで成長を見守るのが理想」(鈴木副文科相)という。

教職大学院は現職教員再教育の場にもなる。

専門免許は「学校経営」「教科指導」「生活・進路指導」の3種を想定し、各コースで高度な実務能力を養う。

文科省は47都道府県に教職大学院を最低1校設置したい考えで、指導教員確保や能力向上、カリキュラム見直しなどを急ぐ。
来年度実施予定の更新講習は縮小せず、3コースを意識したものへの変更を促す。

民主党は「教員の質と数の充実」をマニフェストに掲げたが、教職員定数について文科省は、来年度概算要求に5500人の増員を盛り込むことを決めた。

前政権下で8月に行った要求と同じ人数。今後、11年度以降の大幅増員と少人数学級の実現を目指し、複数年度にわたる定数改善計画を策定し、採用のあり方も抜本的に見直す。【加藤隆寛】

◇「金持ちだけ先生に」/「強い意志、質高まる」

教員養成期間の2年間の延長には、教員志望の学生や採用する側の教育委員会などから「負担が大きい」「教員希望者が減るのでは」と懸念する声が上がっている。

早稲田大学の教員志望者でつくるサークルの代表で、教育学部3年の豊田昂希さん(21)は「6年間に延ばして何を学ぶことになるのかも、はっきりしない。
現在の学部の教育の質を高めることが先決ではないか」と疑問を示す。

同じサークルで1年の柴田直樹さん(20)は「経済的負担が増えることが心配。金持ちだけが先生になれるということになれば問題だ」と指摘する。

東京都教委も「採用後4年間、一人前の教師に育てるための独自の研修システムがすでにある。

今のままで十分」(選考課)と延長に否定的な立場。

団塊世代とその直後の世代の教員が今後10年間、毎年2000人以上退職する都教委にとって、教員の確保はただでさえ懸念材料だ。「教育学部を避けたり、教員になることをあきらめたりする学生が増えれば元も子もない」と語った。

鈴木副文科相は、志望者が減少するとの指摘に対し「年10万人強が免許を取得し、実際教員になるのは2万人強。
6年制にすればより強固な意志を持った人たちが教員を目指すことになり、実習で受け入れる側の熱意も高まるだろう」と説明している。【井上俊樹】

まるで法科大学院の構想そのままです。

そもそも、現在求められている「教育の質の向上」は教員養成制度の問題なのか?という視点が欠落しているように見えます。
おそらくは、大学院を義務づけるというのはフィンランドの例のパクリではないのか?と思いますが、外国でも教育がうまくいっているという国の事情を聞くと、教員の負荷の軽減と教育技術の向上に集中できるように研究を義務づけるといったことがセットになっているようです。

実際に学校の組織にはかなりいびつなところがあって、教員なのか事務員なのか区別がつかないような状況になっています。
例えば、学校全体・学年全体の授業計画の調整といった仕事は不可欠ですが、これは事務の仕事でしょう。それが、職員室に事務の人がいない。

実験や実習といった準備や後片付けといった作業は、大学の例で考えると助手の仕事ですが、高校以下では助手の制度がない。

現在、神奈川県立学校では教育委員会で成績の集計をしていますが、これが全部IT化されました。つまり個々の先生は成績を集計をPCで行うべきなのに、先生にPCをようやく渡すようになった。
必然的に、紙に集計した成績をPCが得意な先生に渡して代理入力させる、というのが多かった。

小中高は現在でも最大級だと一つの事業体として1000人ぐらいが集中しているわけで、地域で見ると最大級の企業ともいえる存在です。
そこに、管理運営のための総務部門が存在しない、その状況でIT化を進めたから、情報の先生がルータの管理からケーブル張までやっています。

その上、だれも問題にしないのが「部活の顧問」なんて事があります。
先生が古き良き先生だった時代は遙か何十年も前の事であって、特に情報化社会で事務のIT化から生徒の携帯電話問題といったものが、新たに付け加わっているのに、文科省は何もしてこなかった。

そのあげくに「教員養成の6年制」と言い出したわけです。
いったそれで何がどうなるのだ?

わたしは、法科大学院の失敗は文科省にあると考えています。

法科大学院は実務者(法曹人)の養成機関だと思っていたので、例えばパイロットの養成などと同様に、絶対評価によって有資格者を選別するものだと思っていました。
現在の法科大学院の成績表は相対評価です。

法科大学院内で相対評価をするから、司法試験の合格者が極端に少ない法科大学院が出てきてしまう。
校内では成績上位だが、外部では通用しないという学生を早めに排除した方が、本人のためにも良い事でしょう。

つまり文科省が法科大学院でも相対評価としたのがかなり重大な問題なのですが、絶対評価をするのであれば、これは法務省の管轄になるのでしょうね。

教員養成は法科大学院よりはマシかもしれませんが、現在学校が要求されている多彩な人材の供給や、学校のスタッフ部門の拡充、人事管理の問題、教職者の固定化問題などに教員養成の6年制で対応できるようには見えません。

10月 15, 2009 at 09:55 午前 教育問題各種 |

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コメント

酔うぞさん、

 本筋とは関係ないですが1点だけ。

>実験や実習といった準備や後片付けといった作業は、大学の例で考えると助手の仕事ですが、高校以下では助手の制度がない。

 大学でも助手のポストが激減しているため、この手の作業は教員が、研究室の院生(TA)に手伝ってもらいながらやっているのが現状です。

投稿: apj | 2009/10/15 10:57:41

 高等学校の教員では専修免許を保持する者、すなわち修士課程を修了している人が多くなっているような印象はあります(もちろん私の周囲では、という話ですが)。

>例えば、学校全体・学年全体の授業計画の調整といった仕事は不可欠ですが、これは事務の仕事でしょう。それが、職員室に事務の人がいない。

 こういう仕事は「校務」などと呼ばれるのですが、分業がなされないのは、やはり人件費の問題でしょうかね。

>その上、だれも問題にしないのが「部活の顧問」なんて事があります。

 実際生徒に面接していると、「中学校の理科教員で野球部の顧問をしたい」などという子もいるわけです。つまり、そういう連鎖にどっぷりつかった我々現場の教員では、部活の問題に対して最適な解が出せるとどうしても思えないのです。
 この件に関しては、全くしがらみのない視点から改革した方が、良い方向に進むような気がします。中途半端に現場の声に寄り添うと、変なことになりそうです。

投稿: miya-h | 2009/10/15 23:23:54

 まず、中学校に部活動が必要なのかどうかという問題から始めないといけないでしょう。

投稿: Inoue | 2009/10/23 15:34:51

部活をどう見るのか?という問題を放置しているところに、問題があるのは明らかです。

小学校だと、教科学習と生活科の指導(団体生活の訓練)を明確にやっているわけですが、中学になるといきなりキャリア教育になってしまいます。

社会生活の訓練というのは、社会人になっても続くわけで、それこそが社会教育だと言えますが、昔は部活などにもその役目が大きかったわけですね。

一方で、社会教育の機械が減っているから、学校に相対的に「躾をしてくれ」といった要望が増えているわけです。

そこで、放置してきた部活についてどうするか?と考えると、教員に顧問として責任を問うということ自体がヘンですよ。
正に、近所の大人のボランティアなどで(責任が生じるなら臨時職員かな)カバーして、教科の教員は教科教育の研究などを主にして欲しいですね。

現状はどっちつかずであり、将来の方向性もはっきりしていないということでしょう。

投稿: 酔うぞ | 2009/10/24 12:10:03

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