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2009.09.23

法科大学院をどうするべきか

読売新聞より「多すぎた法科大学院…新司法試験、崩れた構想

法科大学院の修了生を対象にした新司法試験の合格率が低迷している。

4回目となった今年の合格者数は2043人で、初めて前年割れとなり、合格率も27・64%と3割を切った。

法科大学院で充実した教育を行い、修了生の7~8割が合格できる――。そんな当初の構想は崩壊し、受験生たちからは「国による詐欺だ」との声も漏れる。なぜ、新司法試験の合格率はこれほどまでに低いのか。

◆受験資格◆

「幅広い人材を法曹にとの理念はどうなったのか」

合格発表があった今月10日。愛知県内の受験生の男性(26)は、その低い合格率に衝撃を受けた。自身も2回目の挑戦だったが、不合格。新試験は5年間で3回不合格だと受験資格を失うため、次がラストチャンスになる。

大学で美術を学んだが、法曹界が幅広い人材を求めていると知り、受験勉強をして、法科大学院の法学部以外の出身者を受け入れるコース(未修者コース)に入った。勉強のためアルバイトはできず奨学金を受けた。今後約700万円を返さなければならない。「次の試験に失敗したら、その後、別の仕事を探せるだろうか」と不安は募る。

中国地方の法科大学院の教授は、未修者コースを修了した30代の教え子が3回目の受験に失敗し、受験資格を失った。「不況の上、年齢も高いこともあり就職も難しい。学校も支援するが、今後同様の修了生が増えたらサポートしきれるか……」と頭を抱える。

◆過剰定員◆

「法科大学院の数が多すぎて、定員数が膨れあがってしまった」。ある法務省幹部は合格率の低さの原因をそう解説する。

法科大学院と新司法試験は、幅広い見識を持つ法曹を数多く養成するという司法制度改革の一環で生まれた。国が掲げた目標は、2010年頃までに司法試験の年間合格者数を3000人へ引き上げるというもの。新司法試験は、知識詰め込み型の勉強が必要とされた旧司法試験と比べ思考力重視の内容とし、法科大学院は修了者の7~8割が新試験に合格できるような教育を行うこととされた。

当初、適度な学校数と考えられていたのは20~30校。

ところが、実際には74校が乱立し、定員は約5800人に膨れた。今年の試験に失敗した結果、受験資格を失った人は571人。関係者からは「就職困難な人を毎年大量に生み出すのは社会問題」との声もあがる。

◆教育の質◆

14日開かれた中央教育審議会(文部科学相の諮問機関)の法科大学院特別委員会。

特に今回の試験で、法学部出身者(既修者)より未修者の合格率が約20ポイントも低かった結果を受け、「合格の基準が未修者をすくい上げるものになっていないのでは」との指摘が相次いだ。だが司法試験を所管する法務省は、「既修者と未修者で合格ラインを変えるわけにはいかない」と言う。

一方、司法試験合格後、司法修習生となった人が法曹資格を得るために受ける卒業試験でも、不合格者数が増えている。
不合格となった法科大学院出身者の答案には、「疑わしきは被告人の利益に」という刑事裁判の原則などを理解していないものもあり、法科大学院の教育の質も問われている。

新司法試験の合格率の低さから、すでに法曹を目指す人は減り始め、半分以上の学校で入試の競争倍率が2倍を切った。

各校はようやく定員削減に乗り出し、来年の入学者の総定員は4900人程度になる見通しだ。しかし、青山学院大法科大学院の宮沢節生教授は「定員削減はまだ不十分。現状を放置すれば法曹志望者は今後も減り、特に未修者が遠ざかって、多様な法曹を養成できなくなってしまう」と指摘している。(中村亜貴)

◆新司法試験=

2004年以降に開校した法科大学院の修了生を対象とし、毎年5月に実施。法学部出身者向けの既修者コース(2年制)修了生は06年から、他学部出身者や社会人向けの未修者コース(3年制)修了生は07年から受験している。合格率が3%前後と難関だった旧司法試験も10年までは存続する。

(2009年9月23日16時03分 読売新聞)

この記事で注目するべきは

「法科大学院の数が多すぎて、定員数が膨れあがってしまった」。ある法務省幹部は合格率の低さの原因をそう解説する。
特に今回の試験で、法学部出身者(既修者)より未修者の合格率が約20ポイントも低かった結果を受け、「合格の基準が未修者をすくい上げるものになっていないのでは」との指摘が相次いだ。だが司法試験を所管する法務省は、「既修者と未修者で合格ラインを変えるわけにはいかない」と言う。
の二点です。

注意深い人はお分かりかと思いますが、法科大学院を監督しているのは文科省です。
だから中央教育審議会が出てくる。

法科大学院が法曹になるための唯一の道にしてしまったのだから、学校教育ではなくて職業訓練だと考えると、文科省ではなくて法務省が監督するべき「学校」だろうと思います。
しかし、医師を大学の医学部が養成しているのと同じだと考えれば、文科省が監督するのは良いとして、記事中にあるように実務が出来ない学生を教育している法科大学院がなぜ成立するのか?という大疑問が出てきます。

法科大学院では、成績は相対評価なのだそうです。

これを聞いたときにはさすがにビックリしました。
どこまでいっても実務家の養成が目的の学校なのだから、最終的に資格試験を通過できることが絶対条件で、そのためには在学中から絶対評価をして、無理な学生を排除するべきでしょう。

「なんで絶対評価ではないのか?」と聞いたら「文科省の所管ですから」と言われました。

こんな事だから、未修者をすくい上げる、なんて言葉が出てくるのでしょう。
文科省は、法科大学院という教育機関を用意したが、法曹人を送り出すことは考えていない、ということになります。
法務省がヘソを曲げるのも当然だ。

こんないびつな法科大学院を制度として続けていくことが出来ないのは明らかで、例えば法務省が、絶対評価の試験を在学中に複数回実施して、不合格者は排除するといったことにでもしないと、全体が成り立たないでしょう。

もう一つ、法科大学院以外のルートでも司法試験の受検を可能にするべきです。

法科大学院とは、単なる予備校と何が違うのだろう?

9月 23, 2009 at 04:56 午後 国内の政治・行政・司法 |

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コメント

法科大学院は、すっぱり「廃止」すりゃいいんじゃないですか?法曹たちのWebを読んでいると、法科大学院+新司法試験をポジティブに評価している人って見たことがない。
卒業者は遅かれ早かれ5年で受験資格を失いますから、残りの在学年数+5年間、新司法試験を維持すればいい。
旧司法試験の合格定数を少しずつ増やして、現在の2000人程度で落ち着かせればいい。

投稿: Inoue | 2009/09/23 21:26:54

医学部や薬学部については、旧厚生省による実習等の規定に準拠しなければ、国家試験の受験資格がなかったものと思います。単純に文科省の基準だけでは、卒業はできても国家試験の受験資格が得られません。これは、調理専門学校といった専修学校等についても、同様の設置基準があります。
 これは、工学部についても同じで、最近になって工学部ではなく工科大学になっているのは、従来の工学部の規定では、コストがかかるため設置できないためだと言われています。工科大学では、基礎工学に関連した物理実験や化学実験等の設備の規定も、カリキュラムの基準も異なります。
 学校側はコスト面から、工学でなく工科へという対応をしていますが、受験する学生にせよ在学中にせよ、こういった違いについて、知らない学生が多いように思います。
 法科大学院が、法務省側とどのような調整をおこなったかはわかりませんが、設置基準等について、法務省側に権限がなかったのだとしたら、この結果は当然と言えば当然の結果でしょうね。
 文科省さんは、法科大学院にせよ、今後はどうしていくつもりなんでしょうねぇ・・・
 個人的には、工科と工学についても、気になるのですが、就職先の方々が気にしないようであれば、あんまり意味はないんですよね。

投稿: Nari | 2009/09/24 11:34:15

>就職先の方々が気にしないようであれば、あんまり意味はないんですよね。

ここですよねぇ~。

わたしには法科大学院という、全く別の学校をつくったのだから、それが他のどんな学校に相当するのか?と考えてみると、航空大学校のようなものではないのか?と思うのです。

要するに、実務中心でふるい落としていく学校制度ですね。
文科省の範囲では無いように思うのです。

投稿: 酔うぞ | 2009/09/24 12:59:49

合格率が低いのと、合格者数が下がるのと、どう違うんでしょう・・・?

投稿: 失敬 | 2009/10/24 1:20:41

>合格率が低いのと、合格者数が下がるのと、どう違うんでしょう・・・?

合格率=学生の視点
合格者=社会の視点

という事じゃないでしょうか?
学生にとっては、社会での要望なんてのは無関係に一定のルールの中で資格が取れればよい、と言うことでしょう。
極論としては、定員に満たない受験生であれば、全員合格で当然だ、となります。

しかし、社会は実務の出来る法曹人を要求するのだから、合格者が0での年があっても構わない、と思うかもしれません。

この時点で双方の思惑は食い違っているわけです。

以前、法科大学院制度を批判する弁護士さんの意見には「法科大学院・司法試験合格者だから弁護士の職が保障されてはいないのに、法科大学院に入りさえすれば弁護士の職が保障されているかのように宣伝するのは間違えだろう」といった内容を元に批判しているものがありました。

文科省は「なれる(かもしれない)資格教育」だけで良しとするのが教育だと、伝統的にやっていてそれを法曹人教育にそのまま持ちこんだ、のだと思いますが、それが正しいことなのか?となると、学生・学校の視点と、社会などの視点と同じでは無い、という当たり前のことを検討していなかったのだから、良い悪いはいまだ結論が出ていない(だから弁護士さんが批判する)と言ったところなのだと思います。

投稿: 酔うぞ | 2009/10/24 8:21:03

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