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2009.09.28

事故調査委員会が関わる事件は、免責するべきだ

共同通信ニュースより「補助ブレーキ28日から義務化 エレベーター事故防止で

扉が開いたままエレベーターが動いた場合、自動的に運転を止める補助ブレーキの取り付けを義務付けた改正建築基準法施行令が28日、施行された。

同日以降に着工する建物から適用される。
欧米や中国、韓国では既に義務化されており、消費者団体は「安全のために必要な取り組み」と評価。
適用対象は既設のエレベーターにも拡大される見通しで、新たなコスト負担に戸惑う声も出ている。

改正は2006年、東京都港区のマンションで男子高校生=当時(16)=がシンドラーエレベータ社製のエレベーターに挟まれ死亡した事故がきっかけ。ブレーキ不良で扉が開いたまま急上昇したのが原因だった。

国土交通省は昨年9月に政令を改正し、扉が開いたまま動いたことをセンサーが感知すると、補助ブレーキが作動して停止させる仕組みを義務付け、メーカー各社は新製品開発に乗り出した。

日本エレベータ協会(東京)によると、エレベーターかごをつるロープを挟んで急停止させる「ロープブレーキ」を取り付けたり、ロープ巻き上げ機の電磁式ブレーキを二重化するなどの対策を取った機種が国交省の認定を受けた。

しかし技術面や開発コストの問題から、中小エレベーターメーカーの中には認定が間に合わない社もあるという。
新機種は1基当たり数十万円から数百万円高く、新規にビルやマンションを造る場合、施工経費は増えることになる。

今ひとつ分からないのですが、メカニカルインターロックを義務づけるという理解で良いのでしょうか?

港区で高校生が死亡した事故は、ブレーキが解放されないまま運転を続けたために、ブレーキシューが摩耗してしまって、制動力が無くなったことが事故の原因でした。

ブレーキが解放されない状態で運転が続けられた、というのに驚くところで、ブレーキが解放端まで移動しないと、作動しないようにインターロックを付けるのは当然だと思っていましたが、その機能が無かったようです。

上記のニュースは28日の配信なのですが、直前の25日に港区の事故で有名になってしまったシンドラーエレベーター社が国交省に抗議したそうです。
サンケイ新聞より「事故の調査報告書に意見言えない シンドラーが国交省に抗議

東京都港区のマンションで平成18年、都立高生がシンドラーエレベータ製エレベーターに挟まれ死亡した事故をめぐり、国土交通省の昇降機等事故対策委員会が今月8日にまとめた「設計や品質に問題があった」とする調査報告書について、同社は25日までに「事前協議の場で意見を述べる機会が与えられなかった」と国交省に抗議した。

同社は「日本では平等な競争条件の下で製品を販売できず、事実上の保護貿易主義」と批判。
内容の削除などの主張が認められなければ法的な措置を取るとしている。

同社は報告書について、エレベーターの所有者の港区にメンテナンス情報を提供していることを盛り込んでおらず、事故原因と無関係と判明している障害が関係しているかのように書かれているなどと主張している。

直前にJR西日本が、福知山線脱線事故について事故調査委員会に接触し、内容の変更を求めていた、という問題がありました。
この問題については、山口利昭弁護士のブログ「ビジネス法務の部屋」のエントリー「JR西日本事故報道から探る不作為の過失(立件方針その1)」と「JR西日本事故報道から探る不作為の過失(立件方針-その2)」や、落合洋司弁護士のブログのエントリー「浮かび上がった「国鉄一家」の癒着 福知山線脱線情報漏洩」で広範に論じられています。

いずれも、国鉄一家といった閉鎖された組織内の価値観としてコンプライアンスの遵守が強うしないことが問題、といった論点で書かれています。

山口利昭弁護士は記事中に、郷原信郎弁護士

(元検事、桐蔭横浜大学法科大学院教授、名城大学教授・コンプライアンス研究センター長)
の著書「検察の正義」を取り上げて説明しています。

最近、元検事でコンプライアンス問題に詳しい郷原信郎先生が「検察の正義」(ちくま新書)を出稿されましたが※1、そのなかで鉄道事故に関する日米の刑事司法の在り方の差について触れておられます。

アメリカの場合は再発防止のために事故の真相究明が第一とされ、関係者には司法免責を付与して、事故に関する供述を最大限引き出すことに全力を挙げるそうであります。

いっぽう日本の場合には、航空・鉄道事故においても、一般の事件と同様に業務上過失致死被告事件として立件して、真実の発見も刑事司法が担うことになる、とのことで、ここが日米の大きな違いである、とされております。(上記著書61頁)

また、郷原先生は、公正取引委員会へ出向されていた経験から、独禁法違反事件の告発に関しては、公取委と検察との間には根本的な考え方の違いがあったとして、たとえば独禁法違反について公取委は法人単位、事業者単位、つまり企業その組織全体の行為として明らかにすればよく、個人の行為を特定することはほとんど行われなかった、しかし検察の考え方は事業者や法人企業ではなく、個人の行為につき成立するものであり、それを具体的に明らかにすることが刑事処罰の必要条件だとする伝統的な刑事司法の在り方に基づいていた、と述懐されておられます。(上記著書48頁以下)

このあたりの記述内容は、本件を(被告人に対する刑事追及の在り方を)検討するにあたり、とても参考になろうかと思います。

要するに、事故調査をどういうものと考えるのか?というところで、アメリカと日本では違ってしまっているし、日本では将来の事故の防止よりも起きた事故の刑事責任の追及が事故調査の目的になってしまっている、と言えます。

こうなると、シンドラーエレベータ社が港区の事故当時にノーコメントで押し通したのも無理はない、となってしまうわけで、事故原因の解明に協力すると、自分の刑事責任が重くなるというのでは、メーカーサイドは事故調に協力しなくて当然、と言えます。

一方、メーカーやサービス提供業者であるシンドラー社やJR西日本が、社会と会社の関係性をキチンと理解していれば、問題にならないことも、あまり考えていないだろうJR西日本は「事故調の調査を内偵しよう」などとやり出して、コンプライアンスを当然とする弁護士の皆さんを驚かせるわけです。

読売新聞より「内偵のつもりだった 福知山線漏えいで元委員

JR福知山線脱線事故の最終調査報告書案の漏えい問題に絡み、JR西日本の幹部と接触していた国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(現・運輸安全委員会)の鉄道部会長だった佐藤泰生・元委員(70)が28日午前、記者会見し、

「(JR西の内情を)内偵するつもりで会っていた。誤解を招く行動で、大変反省している」
と述べた。

佐藤元委員は、2006年8月から報告書が公表された07年6月にかけ、国鉄時代の後輩だったJR西の鈴木喜也・執行役員東京本部副本部長(55)と都内の中華料理屋などで10回前後、会食していた。

佐藤元委員は、鈴木副本部長との接触を繰り返した動機について、

「日勤教育が事故の最大の問題だと思っていたが、JR西日本は認めようとせず、内情がよく分からなかった。
内偵のつもりで話を聞いていた」と説明。
鈴木副本部長との関係については、「古い知り合いで、東京で昔の友達と会うという場に行って、1時間ほど話を聞いて帰るということをしていた」
と述べ、あくまで独自調査の一環という認識を示した。

一方で、「情報漏えいは絶対にしないようにと気を使い、共通の知人の1人を横に置いていた」と釈明し、報告書の内容の漏えいについては否定した。

ただ、鈴木副本部長が聞きたい内容をメモにした紙を持参して質問し、「これはマルだね」「バツだね」と、審議の状況について答えたことがあった。また、「日勤教育のことは報告書に載りますか」と質問されて、「当たり前だろう」と答えたこともあり、「探りが入っているな」と感じたという。

会食の食事代は、「ウーロン茶と焼きそばくらいしか食べていないので、先に帰る時に同行者に2000円程度を渡していた」と述べた。

結局、事故調査なのか犯人捜しなのか、国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(現・運輸安全委員会)の鉄道部会長ですら、キチンと定義できていないのでしょう。

では、直ちにアメリカ型の事故調査委員会に代わることが出来るのか?となると、一朝一夕にはいかないでしょう。

福知山線事故については想像できる事故原因には

  1. 運転士の個人的な過失(速度オーバー、ブレーキの遅れなど)
  2. 運転士を追い込んだ勤務態勢・管理体制
  3. ATSの未設置
  4. ダイヤの厳守のやりすぎ
  5. 線路の曲率変更
などが、すでに挙げられています。

刑事責任の追及となると、事故原因が複合的であるとしても、責任者は一人を追求することになりますから、上記のバラバラの事故要因については、いわば放置されるところが出てきます。
それでは事故調査ではないでしょう。

責任ではなくて、事故に至る経過を明確にすることで、より上流で事故防止が図ることができるようになるでしょう。
エレベータの問題でも、鉄道や航空機の事故についても、キチンとした事故調査がなされない、できる体制がない、ことが大問題だと思います。

9月 28, 2009 at 04:13 午後 事件と裁判 |

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100名以上の犠牲者を出したJR西日本の福知山線脱線事故の調査報告書が、事前にJR西日本側に漏洩していた件は、旧国鉄のなれ合いが元で起きたものだ。こんな委員会はさっさと作り直した方が良い。... 続きを読む

受信: 2009/09/29 11:02:22

コメント

あくまでイメージですが…静岡上空での日航機同士のニアミス事故も、体系的な対策より、責任論ばかり優先していたような。

担当者だけを血祭りというか、スケープゴートにしても、再発防止対策としては「精神論」にしかならないのに…。

投稿: com | 2009/09/28 21:51:04

<エレベータ事故>「事故調査報告書」vs新聞記事

”「設計や品質に問題があった」”の記事表現について、
新聞各社は技術的な重要なポイントで”断定語調”となっていて、極めて危ない表現となっています。

■「事故調査報告書」では、
”、、設計上の問題があったと考えられる。”
--->”可能性が高い”旨の表現。

■新聞記事では、
「設計上の問題があった」
--->断定語調。
▲技術的な重要ポイントで{ 可能性 → 断定 }へと”技術的な判断”を加えてしまってます。

詳しくは、次を参照願います。
エレベーター事故_起訴中_⑰「事故調査報告書」_新聞記事に危ない表現あり_過去分 11/09/2009
http://blogs.yahoo.co.jp/nipponsaisei_lab/30355528.html

投稿: 藤沢一郎 | 2009/11/15 20:06:52

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