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2009.09.23

ゴールドマン・サックスのCEOが報酬抑制を提言?

FujiSankei Business iより「高額報酬に決別? 欧米金融大手首脳「手のひら返し」の理由

バンカーが受け取る高額報酬は多くの人の批判の的となっているが、最近は金融業界内からも抑制に賛成する動きが出ている。

ドイツ銀行のアッカーマン最高経営責任者(CEO)は世界的な報酬制限ルールを呼び掛け、米ゴールドマン・サックスのブランクフェインCEOは複数年の賞与保証を禁止し、支払われた報酬の「返還」を認めるべきだとの考えを示した。

確かにこの業界は友愛とは無縁の世界だが、それにしてもバンカーの報酬制限に真っ先に反対してしかるべきドイツ銀とゴールドマンの経営トップがなぜ規制に賛成するのだろうか。

アッカーマン、ブランクフェイン両氏が突如、強欲と物質主義と決別したという可能性もあるが、以下のように考えればより納得のいく説明ができる。

彼らは自社の損得勘定に基づいて動いているのだ。金融業界への規制は、既存の大手に有利に働く一方、新興企業が伸びにくい状況を作り出すだけだ。最も得をするのは一般市民ではなく、アッカーマン、ブランクフェイン両氏のような金融大手のCEOだ。

この2社が報酬制限に賛成しているということは、わたしたちにとってよい案ではないかもしれない

才能ある人材の争奪戦

アッカーマン氏は先週、フランクフルトで開かれた銀行関連会議で「才能ある人材の争奪戦」で不公平が生じないよう、世界の報酬規則の標準化が必要だと主張した。一方、同じ会議でブランクフェイン氏は過剰なリスクテークを抑制するため、報酬の返還を認めるべきだと述べた。また株式報酬の割合を増やし経営幹部については退社するまで大部分を保持することを義務付ける必要があるとした。

2人の発言は例えて言うならマイクロソフトのゲイツ会長が同社ソフトの無料・オープンソース化に賛成するとか、投資家ジョージ・ソロス氏が、証券取引所によるヘッジファンドの為替投機規制の必要性を訴えるのと同じくらい驚きだった。

だが、これらは業界の頂点に君臨する2人の社会的良心の発露ではない。むしろ既存金融機関の権限を守るためにせざるを得なかった皮肉な企てなのだ。

アッカーマン氏は、世界的な報酬規則を設けなければ、各国間で不公平が生じると説明した。つまりドイツで報酬制限が実施されて英国で行われなければ、この措置は英銀に有利に働くというわけだ。さらに、報酬が規制されていない地域に拠点を置く金融機関も恩恵を受ける可能性がある。一方、世界的にルールが標準化されれば、大手銀行に有利となるだろう。

無名の中小銀行の株

ブランクフェイン氏は株式報酬の割合を増やすよう訴えた。公平に見て、これはより大きな意味がある。しかし大手と中小の銀行では大きな違いが生じる。ゴールドマン株をもらえばほとんどの人は喜ぶだろうが、たとえゴールドマンをしのぐような優れたアイデアを持った金融機関でも、無名な中小銀行の株ではうれしくない。これも既存の大手銀に有利な措置だ。

つまり世界的な報酬制限ルールは以下の3つの点から大手銀に有利に働く。
1つは既存の大手銀の間に実質的なカルテルを生じさせる。

大手銀は自社の花形トレーダーが競合行から高給で引き抜かれるのを恐れる必要がなくなる。それが実質的に禁止されるからだ。 その結果、トレーダーよりも経営者側が力を持つようになるだろう。

第2に既存の大手銀の地位は揺るぎないものとなる。

新規参入した金融機関がシェアを伸ばす唯一の方法は、より高い報酬を支払い経験豊富な人材を獲得することだ。しかし、報酬規則と規制強化が実現すればこの方法は不可能になる。

自ら規制する方が得

最後に、これは外部による監督ではなく、自主規制になるとみられることだ。

自主的な規制は必ず、既存の参加者に有利になるよう定められる。報酬制限が不可避であるなら、自ら規制する方が得策なのだ。

アッカーマン、ブランクフェイン両氏は、自社に有利になるような改革案を提唱している。賢明だ。

だが用心しなければならない。両氏にとってよいことであっても、ほかのすべての人にとってもよいということにはならない。逆に、報酬の自由を維持すべき最大の理由を両氏が示してくれたともいえるだろう。

(ブルームバーグ・コラムニスト Matthew Lynn)

いやはや、なんともすごい話です。

ところで、なんで報酬制限に話が行くのでしょうかね?
問題はリスクを取った結果、あっちこっちを巻き込むような大損害を出す経営者が居た、という事実でありましょう。
普通に考えて、高額報酬を得るには高いリスクを負担するのが当然で、報酬の制限ではなくて、損失が経営者の責任であれば、責任を取らせる方が合理的なのでは無いだろうか?

高い報酬を取りつつ、経営に失敗して民間ではどうにもならないところまで被害を拡大させて、公的資金を注入してなんとかする、というのではモラルハザードそのものだろう。

当然のことであるが、この種のバクチ的な損失に荷担した、邦銀の経営者も賞与辞退などではなくて、損害賠償するべきだろう。
そういうペナルティーがあれば、より慎重に「投資先を選別する」ことになる。

金融工学の名の下に、どう見ても詐欺商品であるようなモノを作り出して、それが回っている間は健全だ、などという花見酒経済をどうやって防止するか(禁止するではない)を構築しなければ、いつまで経っても同じような事が起きるだろう。

消費者庁は犯罪資金の没収法制に向けて動いているが、銀行がやれば犯罪ではない、と言い切れるのか?という問題だと思う。

9月 23, 2009 at 03:17 午後 国際経済など |

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コメント

私もそう思います。
実際にやるとなると経営者は兎も角、
コおkのとレーダーに対しては難しいでしょうが。

投稿: なる | 2009/09/24 0:50:05

損倍方式は以下の問題があります

・損害賠償が成立するまでに時間がかかる。その間のキャッシュフローの問題は解決されないので、結局他人に迷惑がかかる

・彼らの報酬もまたレバレッジの結果である。すなわち1億円の報酬の裏には数十億円の仮想のキャッシュが存在する。損倍で取り返すことは不可能である一方、逆に言えば報酬それ自体を制限すれば数十億円のハイリスクマネーを抑制する効果がある

・報酬それ自体を制限しない限り、彼らは様々な脱法的手法でハイリスクを取ろうとする。彼らにとってリスクは善であり、悪意すらないので始末に負えない。


そんなわけで報酬制限をせざるを得ないわけです。意外に、金融機関の報酬制限は、金融の問題の本質的なところを突いていると思います。

投稿: わくたま | 2009/09/25 2:10:07

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