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2009.08.26

新型インフルエンザと厚労省

イザ!ブログ・宮田一雄記者の記事より「2010 どうしてこうなるのでしょうか 新型インフルエンザ

どうも言い出したら止まらないというか、はずみがついちゃっているというか。よく分からない勢いのようなものに乗ってばたばたとモノゴトが決められていく印象です。
麻生太郎首相が25日の閣議で新型インフルエンザ対策について、万全の態勢を取るよう指示し、舛添要一厚生労働大臣は不足するワクチンを輸入する考えを表明したそうです。

しかも、《新型インフル輸入ワクチンの治験専門家ら集め決定》という記事によると、舛添厚労相は閣議後の会見で「明日にも専門家や薬害被害者などを集めた会合を開き、治験(臨床試験)をするかどうかを決めたい」と述べています。
「治験するかどうか」ということは、治験をすっとばしてワクチン接種を始めてしまうこともありうるということでしょうか。
こうなると、明日、つまり26日に急遽、集められる専門家の意見は重要です。大臣の鼻息についつい押され、安全性の確認は外国まかせで構わないから、できるだけ速くワクチンを輸入して接種を開始しようといった意見に落ち着いてしまう。
そんなことにはまさか、ならないでしょうね。

1000万単位の人を対象に接種を行うインフルエンザのワクチンでは、極めて小さな割合ではあっても、副作用を訴える人が出てくるのは避けられません。問題はその程度です。重篤な副作用が多数の人に見られるようだとしたら、感染拡大の防止効果や感染した人の重症化回避といった利益よりも、副作用の不利益の方が大きくなり、ワクチン接種は行わない方がよかったということになります。

今回はインフルエンザという旧知の病気であるとはいえ、病原体のウイルスは新しいタイプのウイルスであるうえ、欧米のワクチンと国産のワクチンでは製造法や用量などが異なるといった事情もあります。おまけに《海外メーカー側は緊急に作られたワクチンであることを理由に、副作用が出た際の免責を求めており》というような状態です。少なくともワクチンの安全性に関しては、治験をしっかりと実施し、従来の季節性インフルエンザのワクチンの場合も参考にして、副作用は許容限度の範囲内にとどまるのかどうかといったことを判断する必要があります。

そうした手続きもすっ飛ばしてまで、ワクチンを輸入するようなことには、とうてい賛成はできません。場合によっては、自らの将来を賭してもというぐらいの覚悟で、専門家の皆さんには苦言を呈していただきたい。

それにしても、舛添さん、どうしてそんなに輸入に固執し、しかも、これほどまでに急ぐのか、理解できません。新型インフルエンザの拡大に対して、必要な手を打っていくことはもちろん必要ですが、それは社会としての総合力の勝負です。
ワクチンがすべてではありません。
新型インフルエンザのワクチンは誰も受けていない現状でも、感染した人の大多数は、重症化することなく、一週間程度で回復しています。
ただし、重症化のリスクが高い人もいるので、そうした人たちが死亡しないようワクチンや治療の提供を考えていく。何度も書いているように、これが対策の基本です。

舛添厚労相の会見では、《国がワクチンの必要量としてきた5300万人分の内訳》も公表されたそうです。

ぜんそくなどの持病を持つ人約1000万人
妊婦約100万人
乳幼児600万人
小中校生約1400万人
65歳以上の高齢者約2100万人
医療従事者約100万人

地域的な流行状況をにらみつつ、ぜんそくなどの持病を持つ人、妊婦、乳幼児、医療従事者らに優先的にワクチン接種を進め、ワクチンが不足する分は、重症化する前の早期の治療提供などで対応する。

特定の医療機関に一時期に患者が集中してしまい医療現場が混乱するようなことさえなければ、これから先の半年くらいは、こうした態勢で乗り切ることができるのではないでしょうか。あわてて1日か2日のうちに結論を急がなければならない理由はありません。あるとすれば、それは何か別の政治的な理由(あるいは思惑)ということなのかもしれませんね。今回の新型インフルエンザの流行は、日本の社会が、いま使えるリソースを活用して対応することが十分に可能な病気だということを基本にして対策は考えるべきでしょう。

宮田記者の記事を読んで、なんとも言えない違和感を感じました。

確かに「とりあえずワクチンを輸入すればOK」といった調子で突っ走っているように見える政府の「対策」には、宮田記者の指摘の通りに問題ありだとは思うのですが、それが

今回の新型インフルエンザの流行は、日本の社会が、いま使えるリソースを活用して対応することが十分に可能な病気だということを基本にして対策は考えるべきでしょう。

と断言できる根拠が分からない。

宮田記者は、予防と治療をゴッチャにしているのではないだろうか?

新型インフルエンザのワクチンは誰も受けていない現状でも、感染した人の大多数は、重症化することなく、一週間程度で回復しています。

それはその通りで、確かに人がバタバタ死ぬような状況にはなっていない、近い将来、強毒性に突然変異して大量の死者が出る可能性も高くはないだろう。

しかし、強力な伝染性があることは確かで、予防は極めて重要だと言えます。
一週間で回復するのだから、社会にとって問題ないとは言えないです。

NHKニュースより「米“半数が感染のおそれも”

アメリカ、ホワイトハウスの専門家委員会は、新型インフルエンザについて最悪の場合、アメリカの人口の半数が感染するおそれがあるとの見方を示すとともに、感染のピークが当初の想定よりも早い10月の中旬に訪れる可能性を指摘し、政府に態勢の整備を急ぐよう求めました。

ホワイトハウスの専門家委員会がオバマ大統領に提出した報告書によりますと、アメリカ国内ではこの秋から冬にかけて新型インフルエンザに感染する人の数が、人口の30%から50%、およそ9000万人から1億5000万人にのぼるおそれがあるということです。

さらにこのうち180万人が入院し、死者の数は子どもや若年層を中心に、3万人から9万人にのぼる可能性があるとしています。

ただ、アメリカ国内では、季節性のインフルエンザでも毎年3万人から4万人が死亡しており、今回の新型インフルエンザは、1918年に始まった「スペイン風邪」のようには致死率は高くないとしています。

また、報告書は新型インフルエンザの感染が学校の始まる来月から拡大し、当初の想定よりも早く10月の中旬にピークを迎えるおそれがあるという見方を示したうえで、10月の中旬からワクチンの接種を始めようとしていたアメリカ政府に対し、来月中旬にはワクチン接種が行えるように態勢の整備を急ぐよう強く促しています。

日本では従来型のインフルエンザ(季節性インフルエンザ)での死者数は年間に1000人前後です。
決して軽視できない伝染病であることは明らかです。

新型インフルエンザが、重篤化する可能性が季節性インフルエンザに比較して低いのは、明らかになってきていますが、社会にとってはインフルエンザで活動できなくなる人が出てくる方が明らかに被害は大きくなります。

人口の半数が感染するといった事になると、一週間で回復するのだとしても人口の5%~10%の人が社会活動が出来ないかもしれません。

これは明らかに大問題でしょう。
一週間すれば治るから、といっても交通機関・行政組織・日常的なビジネスといったものが普通に運営できない可能性は極めて大きいでしょう。

アメリカが注目しているのは「社会を動かすこと」であって、そのためにワクチンを必要としている、はずなのです。

宮田記者の意見は、予防よりも治療や、ワクチンの副作用といったことに中心があるようですが、新型インフルエンザが大流行した時に社会活動をどうやって維持するのか、そのために何が必要なのか、といったことには触れていません。

この点については、厚労省が何もしていないし、戦略的に考えていないから、今ごろになってもワクチン不足といった事になっているのは、明らかですが、宮田記者は厚労省や政府を批判するのであれば、この面からの追求を強くするべきだと思うのです。

8月 26, 2009 at 09:28 午前 医療・生命・衛生 |

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産経の記者さん が紹介されていたブログです。専門家顔してのいいかげんな言いふらしに対して腹が立っている桜子の気持ち代弁してくれています。 鳥及び新型インフルエンザ海外直近情報 より タイトル 9月1日   秋がきた。 季節は早い。 4月末にブタインフルエンザA(H1N1)が世界に流行しだしてから、その情報と解説などに明け暮れしているに半年近くたった。連休も夏休みもなかった。 講演が相次ぎ、依頼原稿も多かったが、その元手になるのはこのウエブにおける情報収集と、それを基に熟考した、自分の頭の中の思考水準... 続きを読む

受信: 2009/09/01 17:46:56

コメント

こんばんは、桜子です。

記者さんのTBなさっていらしたので、お邪魔致しました。

誤解されていらっしゃるようなので、申しますが、インフルエンザワクチンには、感染予防効果は期待できません。

期待できるのは、重症化を防ぐことです。
ただし、インフルエンザ脳炎ではワクチン接種者が有利だったというデーターがでません。
この点が重症化を予防するということと矛盾しています。

ですから、政府に専門家が、ワクチンの目的は、と訊ねるのです。

感染予防だと政府は答えるわけにはいきません。
重症化予防だと答えれば、重症化が予想される人たちの分くらいでかまわないことになってしまいます。そうしますと輸入は必要ないと言うことになります。ですから、どちらとも答えないのです。

政府案は老人の分も算定されています。
新型インフルエンザには、世界的に見て、高齢者はほとんどかからないのです。
新型インフルエンザの遺伝子構造を検討しますと、前からあったと考えられるようです。
つまり、「新型」という意味は、人類が知らなかっただけという意味です。
そうだとしますと、高齢者が罹らないことの説明が付きます。

この記者の方は、かなり勉強されているようですよ。紹介なさっているサイトをごらんになればわかります。

投稿: | 2009/09/01 4:51:32

コメントありがとうございます。

    >誤解されていらっしゃるようなので、申しますが、
    >インフルエンザワクチンには、感染予防効果は期待できません。
    >
    >期待できるのは、重症化を防ぐことです。

だから、記者が予防についての見解を無視して、ワクチンの危険性を問題にするのどうか?
というのわたしの意見であり、アメリカの例を引いているのです。

少なくと「一週間で(大半が)治るから、問題がない」では社会が混乱するかもしれない、という状況を無視している、と受け取られても仕方ないでしょう。

手っ取り早く言えば、記者は社会を見るべきですから、クスリの効果をよりも、社会への影響を考えるべきだ、とわたしは思っています。

クスリの問題やその他の問題について専門家は精密な判断しますが、専門バカと呼ばれる「影響を無視したい」=「治療は成功したが患者は死んだ」がごとき判断になることがあります。

こういう事態に、あらかじめ警告するのがマスコミのもっとも重要な仕事でしょう。

その意味では、ご指摘の「この記者の方は、かなり勉強されているようですよ。」こそが、マスコミの姿勢として、わたしから見ると「バランスが取れていない」証拠とも言えることなのです。

投稿: 酔うぞ | 2009/09/01 9:14:09

こんにちは、桜子です。


> というのわたしの意見であり、アメリカの例を引いているのです。
----------------------
引用されている報告書では責任者名が明かされていません。
いろいろな立場がありますから、最悪の事態をも想定する必要があります。
アメリカでも日本でも、身分を明かしての専門家が新型インフルエンザについて意見を言っています。
記者さんは、そういうものをすべて勉強なさってのことだと思いますが。


> 手っ取り早く言えば、記者は社会を見るべきですから、クスリの効果をよりも、社会への影響を考えるべきだ、とわたしは思っています。
--------------------------
記者さんは社会への影響を考えて、意見を言っているのですよ。
ワクチンを国民の人口分、緊急輸入しても、感染を防ぐことは出来ません。
繰り返しますが、記者さんは、ワクチンの緊急輸入に関しての意見を言っているのです。
重症化を防ぐためでしたら国内の供給で間に合う計算になりますから。


> こういう事態に、あらかじめ警告するのがマスコミのもっとも重要な仕事でしょう。
-----------------------
もちろん、記者さんはその姿勢ですよ。


引用されているアメリカの報告書ですが、新型インフルエンザによる死亡者数を「3万人から9万人にのぼる可能性がある」と言っています。
少なくて3万人、多くて9万人といっているのです。

でも、「季節性のインフルエンザでも毎年3万人から4万人が死亡」と言っていますでしょう。

つまり新型インフルエンザの死亡者は、いつもと同じインフルエンザ程度だといっているのです。

この報告書の意図は、たとえば家族が病人の看病のために仕事をやすめるようにしなさいとか、仕事が滞らないように、連絡網をつくりなさいとか、そういうことですよ。

それから南半球のオーストラリアは、感染のピークが終わってしまったようですね。

人口2200万人のオーストラリアで3000人以上死亡すると予想されていたそうですね。
ところが実際の死者数は147人だそうです。

147人全例が新型インフルエンザに感染していたことは確かだそうですが、新型インフルエンザで亡くなったのかどうかははっきりしていないそうです。
とにかく予想より少なすぎますね。

でもこれは人類が知らなかった、ということに整合性があります。
なぜ知らなかったのかといいますと、軽すぎたからです。
高齢者の多くは数十年前に罹っていて、すでに免疫を持っているのでしょう。

そういう実状があるにも拘わらず、政府は高齢者の分まで輸入しようと専門家の意見を聞く前に決めてしまっているのです。

そういうことに記者の方はおかしいといっているのです。

ワクチンに感染予防効果がなくても、さらに何にも効かなくても、お金があまるほどあるのでしたら、輸入して高齢者に注射しても構わないのですが、副作用がありますからね。

その責任を誰がもつのかときかれますと、政府は答えられないのです。

とにかく輸入しようと、そんな感じですね。

インフルエンザの予防接種は利権が絡みますからね。

そんなにお金が余っているのでしたら、たとえばICUの建設費用にでも充てれば良いと思いますが。

亡くなった大原麗子さんはギランバレー症候群に罹っていたそうですが、インフルエンザの予防注射をされていなかったのか、気にかかります。
シャキッとしたタイプのように見えますから、インフルエンザの予防注射を受けそうな気がするからです。

多くの人が感染しても症状が出なかったり、症状の出た人でも、殆どの患者さんが無治療で自然治癒する新型インフルエンザですから、効果が不確かな予防注射を、たとえタダでも受けたくありませんね。

投稿: 桜子 | 2009/09/01 15:03:16

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