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2009.07.16

シンドラーエレベーター起訴

落合洋司弁護士のブログにあった記事です。

共同通信ニュースより「シンドラー側、16日起訴 東京・港区のエレベーター事故

東京都港区のマンションで2006年、都立高2年(16)がエレベーターに挟まれて死亡した事故で、東京地検は15日、業務上過失致死罪で製造元の「シンドラーエレベータ」(江東区)と、事故当時に保守点検を担当していた「エス・イー・シーエレベーター」(台東区)の幹部ら数人を16日に在宅起訴する方針を固めた。

地検は、シンドラー社側が事故前の点検で確認した不具合情報を開示しなかった点などを重視。重大な事故を招く恐れを予見できたのに、十分な安全対策を怠ったと判断した。

構造上の欠陥が見つからないまま事故から丸3年がたち、世界第2位の昇降機メーカー側の刑事責任も問われる異例の展開となった。

捜査関係者によると、現場のマンションは1998年4月に完成、シンドラー社が05年4月まで保守点検を担当した。

04年に停止階と、かごとの間に段差が生じるなどのトラブルがあり、ブレーキの異常だったことを把握したが、保守点検を引き継いだ業者に伝えなかった。

エス社は06年4月から保守点検を請け負ったが、事前に点検方法やエレベーターの構造などを十分に把握せず、ブレーキ異常を見落としたとされる。

落合弁護士は

今年3月の事件送致の際に、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20090330#1238373852

とコメントしましたが、特殊業過の否認事件にしては、かなり迅速に処分が決まったという印象を受けます。特にシンドラー社の刑事責任については、難しさを感じますが、東京地検は難しく考えず単純明快に割り切ってしまっているのかもしれません。

しかし、そういった単純明快な割り切りで起訴されたとしても、公判でも単純明快に割り切ってもらえるかどうかは何とも言えないでしょう。

最近の判例で、薬害エイズ事件における厚生労働省の課長の不作為に業務上過失が認定されたケースがありますが、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20080305#1204674857

有罪認定の根拠として、

1 単なる予見可能性

だけでなく、

2 危険性の認識が関係者に共有されておらず、医師や患者がHIVに汚染されたものか見分けて感染を防ぐことも期待できなかったこと

3 国が明確な方針を示さず、取り扱いを製薬会社に委ねれば、安易な販売や使用が現実となる具体的な危険があったこと

が挙げられていて、不作為というものが、安易な過失競合論により、過度に広範囲に過失に取り込まれてしまうことを防止しようという姿勢も見て取れます。

同様の問題は、最近、JR西日本の社長が起訴された福知山脱線事故にもあって、

http://d.hatena.ne.jp/yjochi/20090709#1247099049

東と西で、過失犯の刑事責任をどう考えるかについて今後に大きく影響しそうな事件が、奇しくも同時期に起訴された、という見方もできそうです。

となかなか難しい問題があると指摘されています。

そもそも、この事故は電磁ブレーキのパッドが常時接触していたために、すり減ってしまってブレーキの電源がオフの時にもブレーキがメカニカル利かなくなっていて、重りに引っ張られたカゴが上昇して、高校生が挟まれて死亡した、というものです。

電磁ブレーキは、ブレーキ解放の時には通電が必要で、電源断でブレーキが掛かる仕組みです。

つまり、通電しているときにブレーキが充分に解放せず、接触していたからパッドが摩耗してしまった。

これには、設計上で安全性が十分ではない、という印象は強く受けます。

ブレーキが充分に解放されていないことは、スイッチ一つで分かることで、いわゆる動作確認信号を取っていなかった、としか思えません。

しかし、定期的に点検していることを考えると、設計上の欠陥かどうかは争いが生じるでしょう。

メンテナンス会社がなぜこのような状況を見逃したのか?が問題になるわけですが、このメンテナンス会社はたしか数年で3社目なんですよね。

  • 現場のマンションは1998年4月に完成、シンドラー社が05年4月まで保守点検を担当
  • エス社は06年4月から保守点検を請け負った

この部分で分かる通り、05年度は別の会社がメンテナンスを請け負っています。
なぜこのような事になったのか。

問題の建物は、港区の管理の物件でメンテナンス会社を毎年度入札で決めていた。
だから04年、05年、06年でメンテナンス会社が3社出てくるわけです。
もちろん入札だからどんどんと安くなって行った。普通に考えると「安かろう悪かろう」の面はあるわけで、それは港区は分かっていて決定したはずです。

こう考えると、シンドラー社はメンテナンスに関する予見性については、下手するとメンテナンス会社自体を知らない可能性すらありますよ。

港区がメンテナンス会社を入札で決めたときに、メーカーであるシンドラー社に拒否権があったとは思えない、というよりも港区がシンドラー社に「メンテナンス会社をここにしました」と連絡したは思えない。

そうなると、シンドラー社から見ると「ユーザの港区が勝手に使って事故を引き起こした」としかならないのではないか?

自動車メーカは、車検点検などを通じて、勝手に整備することを許していないから、エンドユーザにまで整備についての責任を負っていますが、エレベーターについてそういうことが言えるのだろうか?

事故の予見性については、シンドラー社よりも港区が負うべき部分が多いと考えています。

7月 16, 2009 at 11:47 午前 事故と社会 |

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