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2009.06.27

日経新聞社説を元に論じる

日経新聞社説より「派遣労働者のためにならぬ民主改正案(6/27)

民主党は派遣労働者の身になって制度改革をしようとしているのか。そうした疑念を抱かざるを得ない法改正案が国会に提出された。

民主、社民、国民新の野党3党が26日、衆院に提出した労働者派遣法の改正案がそれだ。製造業への派遣や、仕事があるときに労働契約を結ぶ登録型派遣を事実上、禁止する内容である。

これは民主党が当初に示した改正案と異なる。昨秋の時点では、雇用契約の期間が2カ月以下の派遣は禁ずるが、製造業への派遣は認める内容にしていた。
民主党はこの法案を単独で国会に出す方針だった。

規制を大きく強める内容に変えたのは社民、国民新党との連携を重視したためだ。

この両党はもともと大幅な規制強化を唱えていた。今月に入り、3党幹部が共同提案することに合意し、民主党は

  1. 専門的な仕事を除いて製造業への派遣を禁ずる
  2. 26の専門的な仕事以外は常用雇用とする

の2点をつけ加えた。

規制強化が実現すれば、たとえば「働きたいときに働く」という選択肢を希望する人は困ることになる。

もちろん、自らの意に反して登録型派遣に甘んじている人を救う手立ては必要だ。

しかし、この働き方そのものを否定するのは労働形態の多様化という時代の流れに反する。

派遣労働者などでつくる労働組合のひとつ、人材サービスゼネラルユニオンは、登録型派遣を残すべきだと主張してきた。こうした声に耳を傾けるのが労組も支持母体とする民主党の役目ではなかったのか。

3党の改正案が今国会で成立するかどうかは微妙だ。だが成立しなくとも共同提出した事実は重い。
政権の座をねらう民主党の方針を今後も縛ることになるからだ。

労働者派遣の問題にかぎらない。
26日成立した日本政策投資銀行法の改正をめぐり民主党は、政投銀の完全民営化の撤回を主張した。
その後の与野党による法案修正で3分の1を上回る政投銀の株式を政府が持ち続ける選択肢が盛り込まれた。

政府系金融機関には日本政策金融公庫もある。政投銀の民営化路線の後退は、経営が悪化した大企業への公的支援を歯止めなく繰り返す危険にもつながる。
官僚の天下りの受け皿にならぬ保証もない。

郵政民営化でも同党は「ゆうちょ銀行」などの株式売却の凍結を打ち出すという。
ここでも反民営化を旗印に掲げる国民新党との選挙協力を優先した。
選挙をにらんだ民主党の社民、国民新両党への妥協路線には、危うさがつきまとっている。

日経新聞が産業界・財界よりだから社民、国民新党の天然とも言うべき資本・労働観に反発するのは当然としても、労働形態の多様化という時代の流れに反する。というのは正しいのか?

労働形態の多様化を促進すると日本の将来に希望が持てるのだろうか?

派遣労働が労働の質の著しい低下を招いているのが現実と言うべきだろう。
高度経済成長時代・終身雇用制度のもとで労働の質的向上が恒常的に続いてきたことが、主に製造業において世界をリードする品質を生みだしたといって間違えあるまい。

さらには、個別の業種の消長が次の業種を生み出すときにも、個人の優秀さが次世代産業への人材供給源にもなった。

世代を受け継ぐ貧困などというのは、19世紀のころの話であって社会全体としてどうやって質を高めるのか?と継続して努力する(強制すると言って良い)社会にするのか?が政治の最大の課題だろう。

それは、労働形態の多様化を前提にしてなり立つことなのか?

確かに、終身雇用制で自分に合わない仕事を障害続けるといったことは個人にとって地獄であるだろうが、そこを全くの自由にして、就職も退職も自由とした場合、平均すれば労働の質が向上する(労働者の個人スキルが向上する)ことは無いだろう。

労働の質を高めるために、各企業での教育訓練は欠かすことが出来ないし、それは派遣労働が持っている「一時的な労働提供」では成立しない。

逆に言えば、派遣労働に要求する労働の質(労働者の能力)は極めて高く、企業内訓練ではカバーできないような分野に限定してしまうことが、教育訓練を企業に強いる事になるだろう。
そうすれば、社会全体として質の高い労働力を維持できる。

つまり、「労働形態の多様化という時代の流れに反する。」といった論調では思考停止に陥っているというべきだ。

派遣労働者の最低賃金を時給1万円以上、とかにしたらどうだろう。

6月 27, 2009 at 11:47 午前 経済・経営 |

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コメント

>労働の質を高めるために、各企業での教育訓練は欠かすことが出来ないし、それは派遣労働が持っている「一時的な労働提供」では成立しない。

 おっしゃるとおりですが、それなら各企業の好きにさせればいいじゃないですか。
 高度技能者が必要な企業は、少数精鋭の高賃金社員を長期継続雇用する、そこそこの技能でいいから安い方が得だという企業は、そこそこの技能の単純労働者を多く雇用する。
 その選択肢を企業からも労働者からも奪って、全員を「高度技能労働者」にしようとしても、需要がなければ、失業率が上がるだけだと思います。

投稿: Inoue | 2009/06/27 13:58:01

 池田信夫さんあたりが派遣労働規制に反対しているのは、「派遣を禁止すれば失業が増える」という単純な理屈です。短期的には確かにそうでしょう。
 派遣を禁止すると、長期的に日本の成長率が高まって、雇用が増え、失業率が減るという予想でもあるんでしょうか?

投稿: Inoue | 2009/06/27 14:01:16

そこが、難しいところで、結局は「自由放任」ではダメなのだろうな、と思うのです。

どう考えても、水も人も低きに流れるのを止めることは出来ないわけで、社会が要求するのは低きに流れるどころか、高みに持ち上げるなのですから自由放任では無理だ。

そこで、インセンティブを与えるか、ペナルティを科すかとなります。

もちろん、どちらにしても安易な途ではないし、いずれはより高度になるとしても、短期的には間違えなく不況になるでしょう。

だから、これは政府というか政治の指針とか哲学の問題に属することでしょう。

少なくとも、新自由主義が基本的に規制撤廃を自由勝手に置き換えてじっこうした結果の一つが、労働者の質の低下として現れました。

将来、労働者の質が向上するのか?というとは、そういうインセンティブもペナルティーもないのが現在なのですから、上記のように「今後も低きに流れて、もっと質的な低下がひどくなるだろう」と思います。

それで良いのか?

ということです。
なにか対策をすると、失業率は上がるでしょうね。
しかし、質的低下を放置して良いのか?という問題とトレードオフ出来るのも時間に限界があります。

今のままだと、10年後にはひどいことになっているでしょう。

投稿: 酔うぞ | 2009/06/27 14:13:05

>派遣を禁止すると、長期的に日本の成長率が高まって、
>雇用が増え、失業率が減るという予想でもあるんでしょうか?

雇用や失業率というデータは、結果ですから強いて言えば、関係性としては質×量なのでしょう。
質あるいは量だけをいじっても、どうなるのかは保証限りでない。

その一方で、確実なのは、量・質のどちらかが致命的レベルまで低下すると、もう片方をどう細工しても結果が出ないことになります。

現在は少子化問題として量だけは心配していますが、質の問題は語られていませんよね。

そして、労働の質とは労働の場で訓練されるモノなのですから、これをどうするのか?という問題は重大です。

NC工作機械が実用になって40年経ちますが、過去のノウハウは相変わらず、プログラマの経験に依存しています。
加工ベータベースで自動化できないモノか、と何年もやっていますが、簡単な部分は40年前に出来てます。
そこからちょっと飛び出た難しいところは、40年やっても機械化できない。

人の持っているノウハウがいかに複雑なモノなのか、をよく示している例でしょう。

で、あと10年もすると、今やっている人たちは現場からいなくなります。
結局は派遣労働とは、技能の共食いのようなところがあって、少なくとも再生産はしていない。

資本主義社会では、根本的に許されないことの一つだと思うのですよ。

投稿: 酔うぞ | 2009/06/27 14:24:58

「現在必要で、今後も必要になるであろう技能労働者」がいるのなら、その人たちを囲い込んで、技術を継承し、次世代を訓練していく企業が出てくるはずだと思うのです。
 なぜいないんでしょうか?
 長期継続雇用は、まさに、身に付けた技能を食い逃げされないための仕組みであり、それは、今後も一部の企業では維持されると思います。

 また、派遣労働で高度技能者が求められて、賃金が上がるなら、職業訓練のための専門学校が成立すると思います。

投稿: Inoue | 2009/06/28 17:37:08

私も時給1万円とかでいいと思いますね。
雇用が不安定ならそれに応じて賃金を上げても良いと思います。

投稿: なる | 2009/06/29 1:20:38

> なぜいないんでしょうか?

 他社が食い逃げでコストダウンしているときにはそれに合わせないと自分の所が潰れてしまって、結局長期継続雇用どころではなくなるからでは。
 だからといって、全員で食い逃げ方式に合わせると、再生産の方がつぶれて、将来の共倒れが待っている。
将来の共倒れまでに、ごく一部の人が利益を上げて持ち逃げすれば、その人達は安泰でしょ。そういう人達が政策の意思決定に関わっていれば……あとは説明するまでもない。

 みんなで同じ方向に走って性懲りもなくバブルを発生させるアホが減らないのと同じ理由じゃないですかね。

投稿: apj | 2009/06/29 17:40:53

>なぜいないんでしょうか?

「社員=単金×工数」としか考えておらず、単純に「単金が同じ人員で替えが利く」と思っているからです。

機械設計について言えば、最近はCADの普及により、学校出たてでも「きれいな図面」を書くことでできます。しかし、内容は【それなりの】経験を積んだ設計者とは雲泥の差です。
また、「図面が残っていれば、同じようなものができる」と単純に考える者が権限を有していると、伝承を受け継ぐ者を、適当なタイミングで入社させません。
部品に空いた穴ひとつでも、なぜ、そこに、その大きさで、その精度で空いているかがわからないと、「おなじようなもの」はできません。それがわからないのです。

投稿: TuH | 2009/07/01 2:26:30

>他社が食い逃げでコストダウンしているときには

 それは、つまり、技能工を中途入社させて、必要なときに使って、いらなくなったらサヨウナラという労務管理のことでしょうか?
 しかし、労働市場を見ればわかるように、熟練者を中途採用するには、生え抜きの同種の労働者よりも高い賃金が必要になります。
 だから、よほど需要の変動が激しい職種でもない限り、長期雇用で抱え込んだ方が、アドホックに採用しするよりも安くなり、教育費用を負担せずにおいしいところだけを使う「食い逃げ」は発生しないと考えられます。

投稿: Inoue | 2009/07/03 13:23:30

Inoueさん

    >よほど需要の変動が激しい職種でもない限り、
    >長期雇用で抱え込んだ方が、アドホックに採用しするよりも安くなり、
    >教育費用を負担せずにおいしいところだけを使う
    >「食い逃げ」は発生しないと考えられます。

派遣労働とは、訓練済みの労働力を臨時的に使う事です。
それで、人件費が実質1.5倍になると言われていましたが、なぜそれでも企業は派遣労働を選択するのか?
長期雇用に向かわないのか?という説明には、食い逃げに相当する「安いコスト」になっているからに他ならないでしょう。

少なくとも、費用負担などについて論じるのには、具体的な金額を出さないと議論のベースが成立しないし、逆にコストなどについて金額を論じないのであれば、ただ働き(奴隷労働)までも視野に入れた議論をせざるを得ないと思います。

現実は、両極端に至らないのですが、わたしは短期的には何とかなることも長期的に大変な悪影響を及ぼすことがあって、派遣労働は長期的には大変な悪影響を及ぼすものだと考えています。

投稿: 酔うぞ | 2009/07/04 10:05:40

 高度技能労働者の派遣は80年代から許されていました。
 90年代になって解禁されたのは、未熟練労働者の派遣でして、教育費用は大してかかってません。

投稿: Inoue | 2009/07/05 16:37:11

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