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2009.01.04

裁判員制度についてのまとめ記事

裁判員制度について、サンケイ新聞が6ページ、朝日新聞が2ページの長大な記事を出しています。
両紙ともこれまでのいきさつや問題点を整理してある、なかなか優れた内容だと思います。

【日本の議論】ホントに始まるの?裁判員制度

今年は日本の司法制度が大きく変わる年だ。5月21日から始まる「裁判員制度」。
大半の国民は人を裁いたことなどなく、裁判員に選ばれた人ですら、今もって現実感のない人もいるのではないか。
守秘義務は重すぎないか、量刑にバラツキは生じないのか、そして国としては市民の参加意欲をどう高めていくのか…。
5カ月後に迫った裁判員制度の課題や問題点を整理した。

■重い「守秘義務」機能するか?

「通知きたー。目をうたがった」「うちに来ました。ちょっとうれしい」…。裁判員候補者に発送された通知が届き始めた昨年11月29日以降、ブログなどで、感想や送られてきた封筒などの写真を掲載するケースが相次いでいる。

裁判の中身を公表しているわけではないため、守秘義務違反には当たらないが、実際に裁判員裁判が始まってから、匿名で評議の内容をネット上に書き込む可能性もあり、どこまで守秘が守られるのかは不透明だ。

実際、その懸念は現実化しようとしている。

裁判員制度に反対する3人が昨年12月20日、「テレビや写真に顔を出して良い」と、確信犯的に実名で記者会見。「素人が審理しても意味がない」などと訴えた。
今後、制度に反対する人たちが確信的に同調する可能性もないわけではない。

そもそも、裁判員制度における守秘義務は、平成16年5月に成立した裁判員法の108条によって規定されている。

《裁判員が、評議の秘密その他の職務上知り得た秘密を漏らしたときは、6月以下の懲役または50万円以下の罰金に処する》

つまり、法廷で見聞きした内容や評議の簡単な感想は、話しても大丈夫だが、

  1. 裁判官や裁判員の個別意見や、評決時の多数決の数など「評議の秘密」
  2. 被害者のプライバシーなど「職務上知った秘密」を漏らすと罰則の対象となる。

これは生涯にわたっての厳しい規定でもある。

というのは、評議の内容が明らかになれば、批判や報復を恐れて自由に発言ができなくなる可能性があるからだ。
仮に、有罪かどうかを決める評議で、5人が有罪、4人が無罪と判断し、その内容が漏れた場合、「アイツのせいで有罪になった」と被告から報復されかねない。

最高裁は、評議の「感想程度」は許しているが、基準はあいまいだ。
「感想」とはいえ、具体的な内容がなければ、説得力を持たない。
裁判員制度で得た教訓を社会が共有できなければ、「国民による司法参加」の意義が薄れかねないという側面もある。
と言って、あまりに「感想」が具体的になれば、「守秘義務」の意味はなくなってしまう。

米国の陪審制度では、原則的に審理が終われば守秘義務は解かれるとされる。
日本でも、裁判官には守秘義務はあるものの、罰則規定はないといい、裁判員のほうがより一層、厳格な守秘義務が課されているといえる。

抽選で選ばれ、希望者のみがなるわけでもない裁判員にとって、気が重くなりそうだ。
特に、死刑判決が下された事件の場合、裁判員にかかる心理的負担も強まると想定される。ストレスに対するアフターケアをする制度づくりも必要だ。

■参加意欲どう高める?

政府の司法制度改革審議会は平成13年6月、

  1. 法科大学院創設、司法試験合格者の大幅増員で司法関係の基盤を構築する
  2. 法的サポートのための施設を開設する
  3. 国民の司法参加で裁判に民意を反映させる

という「司法制度改革の3つの柱」を提案。裁判員制度は、その1つとして導入された。

「従来の裁判は、専門的な正確さを重視するあまり、審理や判決が分かりづらく、一部では審理が長期化する弊害もあった」というのが最高裁の公式見解だ。

裁判員制度の対象は刑事裁判。そのなかでも、殺人、強盗致傷、放火、危険運転致死などの重大事件に限定された。
それだけに、選ばれた裁判員の責任は重く、「私に他人を裁けるのか?」といった国民の懸念は強い。

最高裁が昨年4月に公表した約1万人の意識調査によると、60・3%が参加の意向を示しているが、「参加したい」「参加してもよい」との積極派はわずか15・5%にとどまり、「あまり参加したくないが義務なら参加せざるを得ない」という消極派が44・8%。「義務でも参加したくない」は37・6%もおり、国民の参加意欲はなお高くない。

参加の心配・支障(複数回答)では「責任を重く感じる」が75・5%とトップ。「素人に裁判が行えるか不安」(64・4%)、「裁判官と対等な立場で意見を発表できる自信がない」(55・9%)が続いた。

昨年11月28日には、全国各地の地方裁判所の裁判員候補者名簿に記載された約29万5000人に通知が発送された。
制度開始を間近に控え、準備作業は着々と進むが、問い合わせ対応のために設置した最高裁のコールセンターにかかった電話の6割近くは辞退に関する質問だった。精神的な不安が大きい国民は多いようだ。

物理的な不安についてはどうだろうか。

大手企業が加入する日本経団連が昨年9月に公表した調査では、裁判員制度のための特別休暇制度などの導入を「導入済み」「検討中」とする企業は90%にのぼった。

大企業では、企業側の対策は進んでいるといえるが、「何日間も仕事を空けて大丈夫なのか?」「連続して休んだら出世に響くのでは?」といった従業員の懸念が払拭(ふっしょく)できているのかどうかは定かではない。

中小企業が加盟する東京商工会議所が昨年10月に実施した調査では、裁判員制度に備えて「新しい休暇制度を検討・導入」しているのは24・6%。「特に何もしていない」は60・8%を占め、対策が進んでいるとは言いがたい状況だった。

さらに、この調査結果は、裁判員制度シンポジウムに参加した経営者や労務担当者の回答をまとめており、何の対策もしていない中小企業は実際はもっと多いとみられる。

その一方、単なる解説書にとどまらない漫画「サマヨイザクラ裁判員制度の光と闇」(郷田マモラ著、双葉社)など裁判員制度をテーマにした作品が登場。

裁判員制度を疑似体験できる携帯ゲーム機「ニンテンドーDS」用のソフト「もしも!?裁判員に選ばれたら・・・」(タカラトミー)も販売された。従来は無関心だった層にも制度は浸透するかもしれない。

教育現場では、平成25年度から完全実施される高校の学習指導要領(公民)で、「裁判員制度」を含めた法教育が新たに盛り込まれるなど、「司法教育」が進む期待感もある。

■判決どう変わる?

最高裁は、裁判員裁判でかかる日数について「約7割が3日以内」「約9割が5日以内」と想定している。というのは、裁判員として参加する国民の負担を軽減するため、裁判官、検察官、弁護人の3者が初公判前に事前に協議し、証拠や争点を絞り込んで審理計画を立てる「公判前整理手続き」が行われるからだ。
従来なら判決まで10回程度の期日が必要な事件が、3日で終了する「スピード審理」も可能になる。

公判の迅速化は、判決にどんな影響を与えるのだろうか。

日本の公判は「精密司法」と呼ばれてきた。
検察側が詳細な立証作業を行った後に、弁護側が立証の十分でない点などを追及し、裁判所が判断する丁寧な審理を経ているからだ。
だが、裁判員にわかりやすくするため、公判前整理手続きで証拠の数が厳選され、審理が粗雑になる懸念も強い。

また、従来の裁判では公判途中に新たな証拠請求ができたが、裁判員裁判では原則不可能になる。
法曹関係者には、公判前整理手続きの実施により、「裁判員に負担をかけまいと事前に公判の設計図がつくられ、有罪か無罪かの前提ができあがってしまう」と危惧(きぐ)する見方もある。

有罪認定や量刑判断はどう変わるのだろうか。

現状の裁判の「有罪率(判決に占める有罪の割合)」は99・9%。無罪判決はほんのわずかだ。
また、量刑も検察側の求刑の「7~8割」というのが一般的な“相場”で、裁判はセレモニー化しているとの感も強い。
これが、裁判員制度の導入で変わる可能性がある。

平成19年に全国35地裁で行われた模擬裁判で最高裁は、男性被告がタクシー運転手の男性をナイフで刺して死亡させ、約8700円を奪った事件で、被告は事実関係を認めているという同一のシナリオを作成したが、判決は懲役16年から無期懲役まで大きく開いた。

裁判員裁判では、裁判官3人と裁判員6人が評議する。有罪認定や量刑判断のために評議を尽くしても、意見が全員一致とならなかった場合は、多数決で評決することになる。
裁判官、裁判員のそれぞれ1名以上の賛成を必要と定めており、判決が偏らないよう“歯止め規定”もかけてはいる。

ただ、“歯止め”は時には、少数意見を勝たせる不思議な現象も起こす。東京地裁で11月に開かれた模擬裁判の評議では、裁判員役の6人のうち、5人が「鬱(うつ)病」の被告に完全責任能力があると主張した。
一方、残りの裁判員役1人と裁判官3人は、責任能力を欠く「心神耗弱」と判断した。完全責任能力は、5人の“多数派”が認めたものの、結局、裁判官が支持しなかったために認められず、参加した市民からは不満も聞かれた。このルールをいかに周知徹底させるかも課題だ。

「加害者の権利より被害者の権利を」という流れのもと、昨年12月からは犯罪被害者参加制度もスタート。
被害者は、検察官の近くに座り、制限付きとはいえ被告人や情状証人に直接質問し、論告求刑もできるようになった。

裁判員は、あまたの事件を経験して“相場観”を形成している百戦錬磨の職業裁判官とは違う。
この制度が裁判員制度と組み合わさり、裁判員が被害者感情を重視しすぎて、極端に厳罰化の方向に流れる可能性もある。

逆に、被告側の不幸な生い立ちや人間関係などの情状面に極端に引きずられる恐れも否定できない。

殺人罪の場合、「死刑または無期もしくは5年以上の懲役」と、刑の幅は広い。評議では、類似事件の過去の量刑をまとめた資料が提供される見通しとなっているが、もともとの刑の幅が広いがゆえに、判断がブレる土壌が強いとも言えそうだ。

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裁判員制度元年、準備は着々 参加意欲に不安も

市民が裁判官とともに判決を決める「裁判員裁判」が今年から始まる。現在の刑事裁判の姿を大きく変える制度の導入。不安や抵抗も根強いなか、準備が進んでいる。

政府は昨年4月、「裁判員制度を09年5月21日から始める」と正式に決めた。
制度をつくるための裁判員法が参院本会議で成立したのは、開始日の5年前にあたる04年5月21日。
それ以来、裁判所、検察庁、弁護士会の法曹三者は、市民を迎えるために準備を重ねてきた。

まず、刑事裁判のスタイルを大きく変えた。

公判を集中的に開けるよう、法曹三者が事前に争点を整理する「公判前整理手続き」を導入した。
裁判員を審理で長期間拘束しないようにするための仕組みだ。

公判でのやりとりを裁判員に分かりやすくするため、パソコンを使って画像やチャート図などを見せる「プレゼンテーション」型の立証も実践されるようになった。
専門家が書面を中心に細かい論点まで詰めていく従来の審理のあり方は「精密司法」と呼ばれたが、論点を大づかみに絞って裁判員に示す「核心司法」への転換が進められている。

こうした工夫と並行して、訓練のための「模擬裁判」も繰り返してきた。殺意や責任能力の有無など、実際の公判で出てきそうな争点を様々に想定して法曹三者が実施した模擬裁判はあわせて計550回にのぼる。

ただ、法曹三者が気をもんでいるのは、無作為に裁判員候補者に選ばれた市民がどれだけ裁判所の呼び出しに応じてくれるのか、ということだ。

今年1年間の候補者への通知は昨年11月末に約29万5千人へ発送されたが、年末までに、4割以上の人が辞退希望などを尋ねる調査票を返送している。
最高裁が昨年初めに行った意識調査では「裁判員裁判に参加したい」「参加してもよい」と答えた人は約15%にとどまっていた。
「義務なら参加せざるを得ない」という人が約45%いるものの、参加を避けたい傾向は依然として弱くないとみられる。

裁判員法成立時、主要会派はすべて導入に賛成していた国会。しかし、市民の声を受けて足並みは乱れている。

「制度そのものには反対しないが、国民の理解は深まっておらず、不安も解消されていない」。社民党と国民新党は昨年末、問題点が解決されなければ実施を延期するよう求めていくことで合意した。民主党や、共産党にも同調を働きかけている。

当初は、昨年12月の臨時国会中に衆院法務委員会で裁判員制度に関する集中審議が開かれるはずだった。
ところが、自民党が「国民も制度の意義を理解し、進んで参加していただけるよう呼びかける」とする全会一致の決議を委員会で実現しようともくろんだことで、社民党が「翼賛的な推進決議には賛成できない」と反発。
この混乱で集中審議の開催は幻と消えた。

与党内も一枚岩ではない。公明党の浜四津敏子・代表代行は同月の講演で「裁判員制度そのものの見直しという話になってくるのではないか」と発言して波紋が広がった。

制度そのものに反対してきた人たちの動きも活発だ。弁護士や学者らが呼びかけてできた「裁判員制度はいらない!大運動」は「制度自体に違憲の疑いがある」と主張する。

最高裁や法務省は「国民の良識を反映させることで司法への信頼がより高まる」と制度の意義を広報している。
一方、日本弁護士連合会は「誤って無実の市民を罰することがないよう、市民が自らの自由や権利を守ろう」と導入の必要性を訴えている。

裁判員法には、施行から3年で政府が必要に応じて見直す、という規定がある。「100%完璧(かんぺき)なスタートは難しい。国民がそもそも何を求めるのかによって、見直しも当然にあり得るだろう」と最高裁の幹部は話す。
(岩田清隆、延与光貞、中井大助)

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1月 4, 2009 at 01:29 午後 裁判員裁判 |

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