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2008.11.14

入札ではない入札・尼崎市

産経関西より「尼崎市職員ら逮捕 架空入札で業者に便宜

兵庫県尼崎市の市中央卸売市場(現・市公設地方卸売市場)の清掃業務をめぐる不正発注事件で、県警捜査2課は13日、偽計業務妨害容疑で同市人権啓発室長(57)ら職員3人と、同市東塚口町の清掃業「摂津」役員(62)と同社社員(33)の両容疑者の計5人を逮捕した。

逮捕されたのは、ほかに同市下水道部業務課長(59)と同市管財課長補佐(45)の両容疑者。
調べに対し、人権啓発室長、下水道部業務課長は「摂津と結託していない」などと容疑の一部を否認。
管財課長補佐、摂津の役員容疑者らは認めているという。

調べでは、5人は同市場の清掃業務を摂津に委託させるため平成19年3月に実施した指名競争入札で、不当に高い最低制限価格を設定。最も低い金額を提示した同市内の事業組合を排除した疑い。

同市が19年度から、随意契約だった委託業務の発注方法を入札に変更する方針を示していたため、長年清掃業務を受託していた摂津の摂津の役員容疑者が1月ごろ、当時市場の係長だった管財課長補佐容疑者と相談。
市場長だった人権啓発室長、次長だった下水道部業務課長の両容疑者の承諾を受けて、入札を実施した。

入札には8社が参加。上限価格にあたる予算金額が2069万5000円とされたのに対し、最低制限価格はその97・75%にあたる2023万315円に設定された。
わずか約46万円の差額の間の金額を提示した摂津のみが“落札”し、事業組合は最低制限価格を下回る約1760万円を提示したため失格となった。

県警は、市場側のはからいで失格となった事業組合以外の7社で、「官製談合」が行われていたとの見方を強めている。また談合に加わらない事業組合を排除するために行われた入札は架空で、その後市場と摂津との間で結ばれた清掃業務委託は事実上の随意契約だったともみており、今後他の業者からも事情を聴くとともに、5容疑者の間で金銭の授受がなかったかなど贈収賄容疑も視野に捜査を進める。

予算金額が2069万5000円とされたのに対し、最低制限価格はその97・75%にあたる2023万315円に設定された。

どう考えても、予算と最低落札価格がここまで近くては、入札自体が成立しないでしょう。
ところが、読売新聞関西発にはもっと驚くべき記事がありました「ごみ運搬業務、競争入札を偽装…尼崎市幹部らを逮捕

兵庫県尼崎市中央卸売市場(現・同市公設地方卸売市場)のごみ収集運搬業務の発注を巡り、指名競争入札を偽装し、新規業者の参入を妨害していたとして、県警捜査2課などは13日、元市場長(部長級)の人権啓発室長・人権啓発室長(57)ら市職員3人と市内の清掃会社「摂津」の役員ら2人を偽計業務妨害容疑で逮捕した。
県警は、5人の間で金銭の授受があったかどうかなど、贈収賄容疑も視野に入れ捜査を進める。

市側のほかの逮捕者は、元市場次長で下水道部業務課長(59)と、元市場係長の管財課長補佐(45)両容疑者。業者側は、同社役員(62)と、同社員(33)両容疑者。

発表によると、人権啓発室長ら5人は共謀。予定価格(2069万円)を2%だけ下回った最低制限価格(2023万円)を設定して摂津側に事前に伝えたうえで2007年3月28日に指名競争入札を実施したように装い、最低制限価格よりも低い1759万円で応札した同市内の廃棄物収集運搬会社を失格させ、受注から排除した疑い。8業者が入札に参加。摂津は予定価格の99%にあたる2053万円で落札していた。

業務はこれまでは随意契約で実施され、長年にわたり、摂津が受注していた。

人権啓発室長、下水道部業務課長は犯意を否認、残りの3人は認めているという。

市の内規で、指名競争入札を行う場合、事前に指名業者選定委員会を設置するなどの手続きが必要だが、人権啓発室長らはこうした手続きを取っていなかった。
正規の入札ではないことから、県警は競売入札妨害容疑ではなく、偽計業務妨害容疑を適用した。

最低価格、受注業者が見積もり

白井文市長ら市幹部は13日、市役所で記者会見し、「市民の信頼を損ない申し訳なく思っている」と陳謝するとともに、県警の捜査が本格化した先月から市が内部調査していたことを明らかにした。

白井市長らによると、管財課長補佐は07年1月頃、一般家庭ごみの収集業務が入札で業者を選定するよう変わったことなどから、随意契約だった市場内のごみ収集運搬業務も指名競争入札に変更したいと人権啓発室長らに提案し、了承された。

管財課長補佐は、安価で落札した業者が業務の質を低下させないよう、最低制限価格を設定することを決めたものの、金額をどのくらいにしたらいいのかわからなかったため、同年2月下旬以降、摂津側に電子メールで見積もりを依頼。
摂津側が見積もった価格を参考に最低制限価格を決定したうえ、再びメールで摂津側に価格を伝えたという。

白井市長は会見で、「随意契約を見直すべきだという組織としての課題は全職員が認識していたが、どう業務に反映していくべきか、お恥ずかしいが、知識も経験も不足していた。守秘義務など公務員としてあるべき認識も欠けていた」と釈明。一方、「3人とも業者から、金銭の授受や接待は一切受けていないと明言していた」と話した。

“入札”から排除された兵庫県尼崎市の廃棄物収集運搬会社の幹部は13日、読売新聞の取材に対し、「予定価格のわずか約2%下の最低制限価格とは信じられない。窮迫する市の財政を考慮してできるだけ低く応札したのに……。裏切られた」と憤っていた。

稗貫(ひえぬき)俊文・北海道大教授(独占禁止法)の話「透明性を高めるため指名競争入札を導入しようとしながら最低制限価格を漏らすとは、これほど市民をバカにした手法は聞いたことがない。公務員は税金の使い道を市民に説明できるよう意識すべきだが、特定の業者との関係が長く続きすぎてマヒしていたのだろう。意識改革を徹底するしかない」

どうしてこれほどの規則違反がすり抜けることができるのか、不思議と言うべきでしょう。
予算額と最低入札価格の差がこれほど接近していては、市役所内での情報共有措置でチェックされたでしょうから、それも行っていなかった。
こういうことができる仕組みの方に問題があったと言うべきです。

11月 14, 2008 at 01:45 午後 事件と裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

続・2006年度神奈川県立高校全生徒の情報流出

読売新聞より「生徒情報流出、第三者が故意に公開か

2006年度に県立高校に在籍した生徒延べ約2000人分の個人情報流出は、授業料口座振替用コンピューターシステムを開発した日本IBMの下請け業者が県教委との契約に違反して個人用パソコンに情報を保存していたために引き起こされた。
県教委とIBMは13日、下請け業者のパソコンから流出した情報を入手した第三者が、ファイル交換ソフト「シェア」を使って「意図的にネット上に公開した可能性がある」と指摘した。

発表によると、約2000人分のうち、約1400人分は、授業料の口座振替に使う名前や口座番号などの情報。約600人分は住所や氏名、電話番号など。

IBMの下請け業者の社員は、06年3月の契約期間を過ぎてもパソコンに約11万人の個人情報を保存。そのまま使い、08年6月に、ファイル交換ソフト「ウィニー」を介して情報を流出させるウイルスに感染させた。
社員は「作業後に個人情報を消去した」とIBMに報告していたが、今回の調査には「データが残っていることを失念していた」と話したという。

IBMでは、ウィニーを介して流出した個人情報を、第三者が再びネット上でダウンロードできる状態にさせているのではないかとみている。個人情報はシェアにより拡散するおそれがあるが、IBMは「犯罪性がないと警察は動いてくれない」として、流出した個人情報をすべて削除するのは難しいとしている。

県教委が12日に開設した相談窓口には、2日間で「どうして流出したのか」という保護者などから計93件の問い合わせがあった。

県教委では、個人情報が流出した恐れがある06年度に県立高校に在籍した約11万人には書面で謝罪し、流出が確認された2000人分の該当者には電話で連絡するという。
また、被害を防ぐため、県警と協議し口座変更を円滑にできるように金融機関に要請する。

神奈川新聞より「2000人分の流出確認/口座番号など県立高生徒の個人情報

二〇〇六年度に県立高校に在籍していた全生徒約十一万人の個人情報が流出した恐れのある問題で、県教育委員会は十三日、約二千人の口座番号などのデータがインターネット上に流出していた、と発表した。
県教委は流出した恐れのあるすべての生徒や保護者に文書で謝罪し、口座番号の変更を求めていく。

県教委によると十二日午後、授業料の徴収システム開発を委託した日本IBMが、生徒の氏名や住所、口座番号、電話番号を含む個人情報がファイル共有ソフト「シェア」を介して閲覧可能な状態になっているのを確認した。
流出情報が悪用された形跡はないという。

インターネット上では、既に数十人分のデータが大半を消した状態で流出しているのが確認されている。
シェア上のデータも同一人物が流出させた可能性が高いとIBMはみている。

笠原達夫教育局長は「適切に管理する責任があったのに大変申し訳ない。流出が確認された約二千人に対してはできるだけ早く事実を伝え、対応をお願いしたい」と述べた。
IBMは「現状では他の流出はないと思う」と話している。

今回、流出したデータは、システム開発に携わった日本IBMの下請け業者の男性社員のパソコンに保存していたものと同一だった。ファイル共有ソフト「ウィニー」を介してウイルスに感染していた。

2006年度神奈川県立高校全生徒の情報流出の続報であるが、なんだか意味不明ですね。

  • 県教委とIBMは13日、下請け業者のパソコンから流出した情報を入手した第三者が、ファイル交換ソフト「シェア」を使って「意図的にネット上に公開した可能性がある」と指摘した。
  • IBMでは、ウィニーを介して流出した個人情報を、第三者が再びネット上でダウンロードできる状態にさせているのではないかとみている。
  • 被害を防ぐため、県警と協議し口座変更を円滑にできるように金融機関に要請する。
  • 流出情報が悪用された形跡はないという。
  • IBMは「現状では他の流出はないと思う」と話している。

教育委員会も、IBMも情報セキュリティという観点では珍しいほど完璧に失格だと思うのだが・・・・。

リスク評価を公表して比べるとかしないと、何をやったのか理解できないのだろう。

11月 14, 2008 at 12:38 午後 セキュリティと法学, 事故と社会, 個人情報保護法, 教育問題各種 | | コメント (2) | トラックバック (1)

2008.11.12

2006年度神奈川県立高校全生徒の情報流出

神奈川新聞より「最大11万人の県立高生徒の個人情報流出か/PC感染で住所、氏名、口座番号も

二〇〇六年度に県立高校に在籍していた生徒の個人情報がインターネット上に流出した可能性が高いことが十一日、分かった。コンピューターシステムの開発に携わった業者のパソコンから最大で全生徒約十一万人分のデータが流出したとみられ、県教育委員会は確認を急いでいるが、いまのところ個人情報が悪用された形跡はないという。

県教委によると、流出した可能性のあるデータは生徒の住所、氏名、授業料の振替口座番号、電話番号など。二〇〇五年度に県教委が授業料の徴収システムを開発する際、開発を担当した日本IBMの下請け業者の男性社員のパソコンにあったデータと同じ二十~三十人分の個人情報の画像がインターネット上に大半をぼかした状態で掲載されていた。

データは契約終了後に消去しなければならなかったが、男性社員は私物で使っていたコンピューター内にデータを残したままにしていた。ことし六月になってファイル共有ソフト「ウィニー」を介してウイルスに感染していたことが確認されている。

九月に県庁へ匿名の情報があったことを受け、県教委が委託先の日本IBMに調査を指示した。日本IBMの調査によると、今のところそれ以外の生徒の情報流出は確認できていないという。

県教委は発表が遅れたことについて「発表することで検索回数が増えて、仮に流出していた場合にデータが表面化し、二次被害の恐れがあったため」と説明している。ただ、「第三者がデータを持っている可能性が高い」と警戒している。

日本IBMは今後もデータが流出していないか二十四時間態勢で監視を継続。もし流出が確認された場合、県教委は口座番号を変更するなどの対応を生徒に要望するとしている。

日本IBMは「業務委託先で判明した不適切な情報管理について深くおわびする。今後、業務委託先での情報管理の徹底を一層強化し、再発防止に努める」とのコメントを出した。

FNNニュースより「2006年に神奈川の県立高校に通っていた全生徒の個人情報がネット上に流出のおそれ

神奈川県の県立高校に2006年に通っていたすべての生徒の個人情報が、インターネット上に流出しているおそれがあることがわかった。

神奈川県教育委員会によると、情報流出のおそれがあるのは、2006年に神奈川県の県立高校に通っていたすべての生徒およそ11万人分で、名前や住所、それに授業料納付などに使用していた口座番号などが含まれるという。

県では、授業料徴収のシステムを日本IBMに委託していて、システムを作成した下請け会社の社員のパソコンが、ファイル交換ソフト「Winny(ウィニー)」を介してウイルスに感染し、2008年9月には、流出した情報の一部がウェブサイトの掲示板に掲載されていたという。

それ以降、個人情報の流出は確認できていないということだが、県やIBMでは引き続き情報流出がないか監視を続けている。

開発で生データを使うのは禁じ手であります。

なんで、県 → IBM → 下請け → 担当者 と生データが渡ってしまったのかの方が重大問題でしょう。

県も、IBMも事件を矮小化しようとしているように見えますね。
情報管理の徹底をいっそう強化し、って生データを直接開発の末端まで回した時点で、落第であって強化以前の問題、早い話が「今後はこの種の開発業務を引きうけません」と言うぐらいしか対策がないと思うのだが。

11月 12, 2008 at 09:10 午前 セキュリティと法学, 事故と社会, 個人情報保護法, 教育問題各種 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2008.11.11

地銀から偽造キャッシュカードで預金が引き出される

読売新聞より「流出口座番号からカード偽造、6地銀で4億円被害

企業から流出した個人情報を使って偽造されたとみられるキャッシュカードで、預金が引き出される被害が全国の地方銀行で相次いでいることが分かった。

被害は2006年12月以降、少なくとも北洋銀行や中国銀行など計6行で総額約4億円に上るという。
現物のカードから情報を盗み取る従来の偽造方法とは違って、口座番号などを入手すれば、カードを偽造できる新たな手口とみられ、銀行側のセキュリティー対策の強化が求められそうだ。

警視庁は大がかりな偽造グループによる窃盗事件とみて、近く関係する警察と合同捜査本部を設置、本格捜査に乗り出す。

同庁幹部や各銀行によると、北洋銀行では07年10月17~23日の1週間に、顧客が知らない間に現金が引き出される被害が186口座であり、被害額は約1億4100万円に上った。
中国銀行や千葉興業銀行でも同様の被害があり、いずれも顧客の居住地から離れた都内や大阪府などのATM(現金自動預け払い機)から引き出されていた。他の金融機関にも被害が広がる可能性がある。

どの顧客にもカード紛失の経験はなく、大分銀行(大分市)ではカードを作っていない顧客の口座からもカードで預金を引き出そうとした形跡があった。

偽造カードを使う従来の事件は、ATMや店舗に特殊な装置を仕込み、現物のカード情報を読み取って複製する「スキミング」が主流。
しかし、今回は顧客の居住地がバラバラで、過去に利用したATMなどにも共通点がなかった。

一方、預金を引き出された顧客の大半は、都内の健康食品会社の会員だったことが判明。
引き出しに利用されたカードは、磁気部分に口座番号などを暗号化して組み込んでいるタイプで、同庁では偽造グループが各行のカード情報を解析したうえ、健康食品会社から流出した口座番号を使って大量に偽造カードを作った疑いが強いとみている。

暗証番号については、北洋など3行で現金が引き出される直前、電話で暗証番号を入力して口座残高を照会するサービスの利用が急増していたことから、偽造グループが生年月日や電話番号を手当たり次第に入力して探り出したとみられる。
間違った番号を打ち込んだケースが、2日間で1000件を超えた銀行もあったという。

同庁では、被害にあった地銀はカードの解析が容易だった可能性があるとみて調べている。

「キャッシュカード偽造で1億円以上の被害」の続編ですね。

契約の際に顧客が提出した氏名、口座番号、生年月日、電話番号などの個人情報が何者かに流出したもようだ。

いわゆる紐付き情報問題です。

  1. 都内の健康食品会社の会員名簿が流出した
  2. 名簿には、氏名、口座番号、生年月日、電話番号が記載されていた
  3. 口座番号が分かっている銀行のキャッシュカードを偽造することが出来る
  4. 銀行は、暗証番号の確認をテレホンサービスで行うことが出来た
  5. 生年月日、電話番号などを手当たり次第に入力して暗証番号を取得
  6. ATMで現金を引き出した

口座番号・生年月日・口座番号と情報が繋がっていたわけです。
下手に情報の集中管理をすると、巨大な事故になるという典型でしょう。
さらに、テレホンサービスで暗証番号入力を無制限に繰り返せるというのが問題外なのは明らかで、事実銀行はサービスを停止ししました。

実はごく最近、携帯電話の暗証番号を変更したのですが、普通は暗証番号などを誕生日などとは無関係な数字を作れと言われても、どうすれば良いのか分からない人が普通でしょう。
暗証番号の作り方を一般に知らしめないと、この問題は繰り返すでしょう。

わたしは、元になる数字をなんからの理屈で計算した結果を使うことをお勧めします。
計算の論理は色々ありますから、結果が「1111」とかにならなければ、有効な暗証番号を簡単に創ることが出来ます。

11月 11, 2008 at 09:26 午前 事件と裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2008.11.09

高校生模擬裁判選手権

昨日(2008/11/08)は第23回司法シンポジウム「カウントダウン!みんなで築こう裁判員制度」に行ってきました。

実は「高校生模擬裁判選手権・東西対抗決戦」

Up

を見に行ったら、弁護士会館全体を使った司法シンポジウムだったのです。
プログラムは

  1. 裁判員ドラマ上映とドラマの出演者を交えたパネルディスカッション
  2. クイズ大会、川柳大会
  3. 模擬裁判「あなたも裁判員 ~体験してみよう裁判員裁判~」(申込み受付終了)
  4. 【シンポジウムⅠ】「裁判員裁判における弁護人の役割」
  5. 【シンポジウムⅡ】「理想的な評議のあり方を考える」
  6. 「高校生模擬裁判選手権・東西対抗決戦」
  7. 法教育模擬授業・授業参観と懇談会

と盛りだくさんで、高校生模擬裁判選手権と法教育シンポジウムに出席しました。

高校生模擬裁判選手権は、8月9日行われた関東選手権を見たので「決勝戦も見てやろう」と言うほどの意味しかなかったのですが、関東選手権も大変に面白く、大いに期待していました。

チラシの説明をそのまま書きますと、実際に起きた事件をそのままではないそうですが、ほぼそのまま題材にして、高校生に検察役と弁護役に別れて刑事裁判の、冒頭陳述から論告までを行い、出来を競うというものです。

弁護役と検察役を入れ替えるので、いわば先攻と後攻のようなことになり。
決勝戦は、関東大会優勝校と関西大会優勝校の決勝戦が二試合行われました。

多くの方は、実際に裁判を傍聴されていないでしょうし、何度も見ないと検察・弁護のテクニックの違いに触れることもないですから、わたしはかなりマニアックに見ていたことになります。

事件としては、起訴は殺人事件で、弁護側の主張は無罪、という正面衝突の事件で実際の裁判でも紛糾するだろうと思われるものでした。
なお、予選会(関東大会では8校が参加)から決勝戦まで同じ事件を扱います。
刑事裁判ですから、弁護士・検察官・被告・証人の4者が登場するのも、全試合同じです。

  1. 被告は、被害者の妻の兄つまり義理の兄弟
  2. 被告が被害者の結婚式に欠席したことで、以前は不仲であった
  3. 事件当日は、翌朝に釣りに一緒に行く約束をして、二人で酒場でかなり深酒をした
  4. 事件現場である、被告の仕事場で独身寮がある運送会社の構内に戻ってきたところで、被害者が被告を十数回殴打した。
  5. 被告は、数日前に同僚に頼まれて購入した全長40センチ以上の包丁を事務所から取り出して、トラックの駐車場に出た。
  6. 被害者は、被告に向かってきたので、包丁を上下に振って抵抗、被害者の腕に骨に達する傷を負わせた
  7. なおも、被害者は被告に迫り、よろけてトラックにもたれかかった、被告に覆い被さった。
  8. 被告は、包丁を持っていた手を出していたので、被害者の左胸に刺さり、被害者は死亡した。
  9. 被害者は、刺されて倒れた後に「兄貴、俺はもうダメだ」と被告に言って死亡した

この事件には、第三者が2名関わっていて、一人が証人になります。その状況は

  1. 同僚Aは喧嘩の仲裁をするが果たせず「勝手にしろ」と言い残して、独身寮の部屋に帰ってしまった。
  2. 目撃者として証言する、同僚BはAよりも先に喧嘩に気づくが、独身寮の階段から見ていて、仲裁には入らず最後まで事件を見ていた。

まるでミステリーのようなことなのですが、物語ではないので読者に相当する観客は「神の視点」が与えられていません。
上記の説明は、ほとんど小説の骨子のように書きましたが、わたしは関東大会と決勝戦で数回に渡って同じ事件を説明を、検察役と弁護役の高校生のプレゼンテーションを聞いたから組み立てる事が出来たのであって、実際の高校生の論告などは、これら全てを述べてはいません。

また、わたしにはまだ謎なのですが、目撃者がどの位置に居たから何が見えて、何が見えないかは分かりません。
実際の裁判では重要な事ではない、という判断になるのかもしれません。

このような、複雑な事件を題材にして、検察と弁護の攻防が行われるのですが、判決は下しません。

関東大会の優勝校は、湘南白百合学園高等部でした。
不思議なことに、わたしは関東大会で会場が複数あったために見ていませんでしたが、他の学校のレベルもかなり高いと思っていたら、昨年度の優勝校であるといった説明があって、関東大会優勝というのはどんな学校なのか?と非常に関心がありました。

関西大会の優勝校は、京都教育大学附属高校でした。
HPに関西大会の様子が紹介されています。

8月9日(土)大阪弁護士会館で行われた第2回高校生模擬裁判選手権(大阪大会)で昨年に引き続き優勝し,2連覇を果たしました。

今年は11月8日(土)東京弁護士会館にて関東の覇者・湘南白百合学園高校(神奈川県,同じく2連覇)と日本一をかけて戦います。

当日の画像はこちら

関東大会の時には「高校生の様子を見よう」という事で、ビデオを撮っていましたが、決勝戦では「裁判員になったつもりで、検察・弁護の評価をしよう」とメモを取ってきました。

試合は、午前と午後に行われ、午前は京都教育大付属が検察、湘南白百合が弁護で行われました。
実は、わたしはこの前半戦だけを見て、午後は法教育シンポジウムに参加したために、後半戦を見ませんでした。

優勝は、僅差で京都教育大学附属高等学校になりましたが、講評によるとチームワークの良さが評価されたとのことです。
湘南白百合は非常にクールというか、見事な法廷戦術で「本物の弁護士でももっと下手なのを見たぞ」というレベルでありました。

実際の法廷を傍聴して、その後に解説でも聞かないと分からないことですが、証言を引き出すための段取りといったものが利いてきます。
証人や被告にいきなり核心を突く質問をすると「分かりません」とか「覚えていません」といったあいまいな証言になる可能性があります。
そこで段取りを踏んで、問題の状況を正確に証言させる技術があるのだそうです。

この証言の攻防は、リハーサルを行って攻撃も防御も手順を確認するのだそうで、湘南白百合は「これは相当リハーサルを積んで、攻撃と防御を良く理解した生徒たちが参加したな」とわたしは見ました。
前半戦を見たところで「湘南白百合の優勝か」と思って、法教育シンポジウムに席を移したのですが、結果は京都教育大学附属高校の優勝でした。

何よりも、こんな難しいことに挑戦した、各校の生徒を誉めたいと思います。
それよりも、面白いのが一番でありました。

日経新聞より高校生、模擬裁判で熱戦 日弁連シンポ、審査員「迫力あった」

来年5月に始まる裁判員制度を控え、市民の参加意欲を高めようと、日本弁護士連合会は8日、司法シンポジウム「カウントダウン!みんなで築こう裁判員制度」を東京都内で開き、パネルディスカッションや日弁連制作の裁判員ドラマの上映会を実施した。高校生による「模擬裁判選手権」東西決戦も行われ、京都教育大付属高(京都市)が優勝した。

模擬裁判対決は同シンポの目玉で、高校生が実際の刑事裁判と同じように検察側と弁護側に分かれ、有罪か無罪かなど主張の説得力を競う模擬裁判の“甲子園”。

8月に行われた関東、関西大会の両優勝校、湘南白百合学園高(神奈川県藤沢市)と京都教育大付属高が繰り広げた熱戦に、審査員の1人の裁判官は「これほど迫力のある模擬裁判は初めて。司法の未来は明るい」と舌を巻いていた。(08日 23:01)

朝日新聞より立証技術競い合い「高校生模擬裁判」、京教大付が日本一

初開催となった「高校生模擬裁判選手権東西対抗決戦」(日本弁護士連合会主催)が8日、東京・霞が関の弁護士会館であり、西日本代表の京都教育大付属高校(京都市伏見区)が東日本代表の湘南白百合学園高校(神奈川県藤沢市)を破り、初の日本一となった。

両校が検察側と弁護側に分かれて立証の技術を競い合い、現職の裁判官や検事、弁護士ら5人が審査員を務めた。京都教育大付属は主張に情熱がこもり、チームワークが優れていた点などが評価された。裁判員役の東京地検の検事は「(両校とも)すぐにプロとして通用する」と舌をまいた。

サンケイ新聞より【迫る裁判員制度】プロも舌巻く法曹“卵” 高校生が模擬裁判選手権

日本弁護士連合会(日弁連)が11月8日に東京・霞が関の弁護士会館で開催する司法シンポジウム「みんなで築こう裁判員制度」で、「高校生模擬裁判選手権東西対抗決戦」が行われ、初の日本一が決まる。弁護士らも舌を巻く裁判術を披露する高校生たち。来年5月スタートの裁判員制度など、司法の市民参加時代を迎えた法曹界にとって心強い存在となりそうだ。

「模擬裁判の甲子園」ともいえる同選手権は、1つの事件を素材に争点を見つけ出し、弁護側(被告含む)・検察側(証人含む)に分かれて“試合”を行う。それぞれ(1)冒頭陳述(2)証人尋問(3)被告人質問(4)弁論(弁護側)・論告(検察側)を実施。(1)~(4)の時間配分や技術を現職の裁判官、検事、弁護士らが採点し、勝敗が決まる。

今回の題材は、男性が左胸を刺されて死亡し、男性の妻の兄が犯人として起訴されたが、殺意を否認している-という事件。

証拠類をもとに高校生らしい発想で論理を組み立て、主張・立証する。相手側の出方次第で臨機応変の対応を迫られることがあるうえ、裁判員制度適用を前提に、分かりやすさもポイントとなる。

関東・関西大会では計15校(県予選含む)が出場。関東で湘南白百合学園(神奈川)、関西は京都教育大附属(京都)が、それぞれ代表に勝ち上がった。両校は第1回の昨年も各代表になったが、決戦大会がなかったため、「今年初めて雌雄が決する」(日弁連)。

両校の“選手”は1、2年生有志。法曹志望者ばかりでなく、理系や、「おもしろそう」と知的好奇心を刺激された生徒も多く、試験や学校行事の合間をぬって“練習”を重ねている。

湘南白百合学園(8人編成)は弁護士の指導や裁判傍聴に加え、証拠書類の読み込み・分析、プレゼンテーション資料作り、他校との“練習試合”までこなして万全の構え。指導にあたっている熊本秀子教諭(49)は「汗と涙の日々ですが、究極の知のゲームにみんなハマってます」。

対する京都教育大附属(14人編成)は、弁護士、検察官、裁判官のほか、殺人事件対策に医師、表現力を磨くため元劇団四季俳優・講師からも話を聞くなど、幅広く技術を磨いている。札埜和男教諭(46)は「生徒も僕も優勝をねらいます」と気合十分だ。

実際に予選の戦いぶりを見た日弁連副会長の福島康夫弁護士は「司法試験を受けていなくてこれだけできる。われわれ弁護士は何なのだろうと思う」と、レベルの高さに感心していた。

予選の運営に携わった村松剛弁護士も「裁判員を意識して分かりやすく論を組み立て、証拠の見方もいい。相手に訴えかけたり説得したりという本来あるべき姿を、プロの法律家以上に表現している」と絶賛していた。

当日は開会式後、攻守(弁護側・検察側)を替えて2試合開催する。見学の問い合わせは日弁連(電話03・3580・9977)。

11月 9, 2008 at 09:53 午前 教育問題各種, 裁判傍聴, 裁判員裁判 | | コメント (0) | トラックバック (2)