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2008.10.25

グリーンスパンが過ちと言っていることは

サンケイ新聞より「融資規制せず「過ち犯した」グリーンスパンFRB前議長

【ワシントン=渡辺浩生】
グリーンスパン米連邦準備制度理事会(FRB)前議長は23日、下院政府改革委員会の公聴会で証言し、低所得者向け高金利型住宅ローン(サブプライムローン)問題に端を発した金融危機について「過ちを犯した」と語り、サブプライム融資の過熱を放置するなど議長時代の政策運営にミスがあったことを認めた。

グリーンスパン氏は2006年1月まで18年間議長に在任し、米経済を高成長に導いたかじ取りが「マエストロ(巨匠)」と評価された。
しかし、当時の超低金利政策と規制に消極的な姿勢が結果的に、サブプライム融資や関連証券化商品の投資の野放図な拡大を放置したと批判されている。

ワックスマン委員長(民主)に「FRBには無責任な融資を規制できる権限があった」などと責任を追及されると、グリーンスパン氏は「金融機関の自己の利益追求が彼らの株主の利益を最大限に守ることになると考えた。私は過ちを犯した」と認めた。
規制を嫌う自身の市場理念に「欠陥があった」とも語った。

「日本型デフレを防ぐためだった」という超低金利策はしかし、住宅ブームを過熱させた。市場開拓の切り札がサブプライムローンだった。金融機関はローンを証券化して世界中の投資家に販売し、大量の資金が米住宅市場に環流された。

借り手の返済能力を超えたお金を貸し込む営業が横行する。
だが、グリーンスパン氏は監督権限を行使せず、過熱する証券化やデリバティブ(金融派生商品)取引に規制を加えることもなく、06年1月、退任した。
持ち家を失ったサブプライム難民が続出し、景気後退入りも確実な今、「原因は不十分な規制にある」(スティグリッツ・コロンビア大教授)という批判が高まっている。

ただ、規制緩和による住宅市場拡大は当時の「議会の意思」(グリーンスパン氏)でもあった。大統領選の投票を来月4日に控え、同氏が「スケープゴート」になったという側面も否定できない。

いわゆる神の見えざる手が経済を自然に安定させるから、政府が規制するべきではない、という考え方なのですね。
しかし、現実に起きたことは「返済できるはずがないレベルにまで、貸し込むという暴走」になったと表されています。

金子勝著「閉塞経済―金融資本主義のゆくえ」ちくま新書2008年7月10日発行
を読んでいます。

金子勝氏の以前からの主張をまとめた本と言って良いのでしょうが、この時期に読むとピッタリでグリーンスパン氏が政治状況があるにしても「私は過ちを犯した」と認めたのは大変なことだと言えるでしょう。

「閉塞経済―金融資本主義のゆくえ」P39より

アラン・グリンースパン(FRB前議長)がやった政策というのはまさに、バブルがひどくなると金利を上げていってそれを抑えにかかり、バブルが崩壊した瞬間、小刻みに次々と金利を下げて、実質マイナス金利になるまで下げていきます。
それで、資産価格の上昇を引き起こす。つまり、次のバブルを待つわけです。

その間に、国際的な協調のもとで、量的金融緩和政策が行われます。
デフレを防ぐという名目で、ジョセフ・スティグリッツやポール・クルーグマンも、この量的金融緩和政策を支持しました。

ともあれ、実際に行き場を失ったお金が再び資産に戻ってきます。
また資産価値が再び上昇して加熱したと思ったらジリジリと金利を上げていって、またバブルが崩壊する。
こうして不動産 → 株式 → 不動産というようにバブルを交替させていくのです。

「グリーンスパン神話」ということが言われましたが、結局、グリーンスパンの「功績」はなんだったのかというと、バブルをコントロールすることによって次々とバブルを乗り換えていったことです。

あまりに巧みにバブルをコントロールしたので「グリンースパン神話」と言われました。
バブルがはじけてもグリーンスパンが何とかしてくれる、と安心してしまう。

そういう世界が作られたことによって、アメリカ人の個人貯蓄率がゼロになって、ほとんどマイナスにあるくらい借金まみれになってしまったということなのです。そして、それが世界に波及していったのです。

この金子勝氏の指摘がグリーンスパン氏の「過ち」であるのだとすると、金融や財政による景気のコントロールにはずっと厳しいもので、将来を楽観できず貯蓄が拡大するような社会であるべきだ、ということになりそうです。

少なくとも、バブルの崩壊と次のバブルを作るというグリーンスパン氏の手法が否定されると、金融自由化の否定であり、レーガノミックスから小泉改革に至る一連の自由化(自由奔放)路線の修正となります。
世界はこれほどの大規模な政策転換が出来るほどの英知を持っているのでしょうか?

フランスのサルコジ大統領の果敢な行動に注目するべきなのかもしれません。

10月 25, 2008 at 11:13 午前 国際経済など | | コメント (0) | トラックバック (0)

2008.10.22

市立厚木病院の産科医師問題

神奈川新聞より「厚木市立病院/11月の産科再開を断念

全国的な産科医不足の中、産科を休止している厚木市立病院(同市水引)が予定していた十一月の再開を断念したことが、二十一日までに分かった。

他の公立病院に比べて“破格”の手当を産科医に導入しているが、常勤の医師二人が相次いで退職したためだ。

県内では産科医不足で分娩(ぶんべん)を休止したり、件数を制限したりする自治体病院が出ているが、産科医確保の難しさがあらためて浮き彫りとなった。

同病院の産婦人科のベット数は四十(産科二十二、婦人科十八)。二〇〇三年には年間六百二十例の分娩を扱った。しかし、昨年、産婦人科医を派遣している東京慈恵会医科大が人員不足を理由に常勤、非常勤の医師計八人を引き上げた。このため、昨年八月から産婦人科を休止していた。

市は医師の確保に努め、今年四月から非常勤医三人で婦人科の診察を再開した。産科については基本給のほか、他の公立病院に比べても破格の年間約一千万円になる特殊勤務手当を制定し、医師募集を行った。

今年四月に常勤医一人を採用したが六月末に退職。
さらに七月に新たに採用した常勤医も十月末に退職
するなど七カ月間で二人の医師が退職する事態となった。

同病院は「いずれも個人的な事情」と説明しているが、産科の再開には「最低三人の常勤医が必要」と話している。

小林常良市長は婦人科の再開時、産科についても「秋には再開したい」と表明していた。しかし、相次ぐ常勤医の退職に「再開は厳しい状況だが、募集の反応は良く複数の採用に向けて引き続き努力する」としている。

厚木市内には市立病院のほか、分娩を扱う医療機関は三施設(病院一、診療所二)。厚木市市民健康部は、各医療機関とも医師や看護師などの配置から分娩の受け入れにも限りがあると見ている。

また、厚木保健所では、県央地区(七市町村)の分娩を扱う医療機関(十一施設)が厚木市内分をカバーしていると説明。取扱件数も〇七年度は七千八十九件だったものが、〇八年度は六月時点の見込みでは七千百七十八件になるという。

普通に考えて、3ヶ月で退職する職場の方に何か問題があると考えるべきだと思いますがねぇ。
可能性としては、外部からの干渉(学閥など)もあるでしょうが、それらも含めて金銭的な待遇だけで何とかなるものではない、ということですね。

10月 22, 2008 at 08:47 午前 医療・生命・衛生 | | コメント (0) | トラックバック (0)

金融危機

朝日新聞より「ローン返済、突如倍増 アイスランド、円建て人気裏目

家や車のローンの毎月の返済額が急に倍になる――。悪夢みたいな話がアイスランドでは現実になっていた。

レイキャビクの高校教師、(47)は2年前にアパートを買った。子供が5人なので広めの約200平方メートル。そのローン返済額が今年初めは月11万4千クローナだったのに今は22万クローナなのだ。

実は資金を「日本円」で借りた。それがつまずきのもとだった。

バブル経済で同国通貨クローナは金利が高いうえ、返済額が物価の上昇率に応じて変わる独特の制度もある。それに比べ円はずっと低金利だし、この国のインフレにも振り回されない。返済は円での定額を毎月のレートでクローナに替えて払う。「為替の変動が多少あっても割安」になるはずだった。

ところが、この春ごろから下落気味だったクローナは金融危機で暴落。ついに1クローナが約1円と年初のほぼ半分の価値に落ちてしまった。

手取りで26万クローナの月給のほとんどがローン返済に消えるはめになった。生活は大工の棟梁(とうりょう)である夫の収入頼み。

「通勤は車から燃料代のかからない自転車にかえました。休暇の家族旅行も当分中止」とため息をつく。

レイキャビク郊外の高級車販売店。経営者(36)によると、ここ4、5年は客の9割以上が円などの外貨ローンを利用していた。
客が購入を決めると一緒にコンピューターの前に座り、銀行系ローン会社のサイトにアクセスする。提供される各種ローンの中から選んでもらいクリック。

「人気が高いのは円だった。クローナの金利は2けた台。それが円だと4%ちょっと。ほとんどの客が円を選んでいたよ。だれも日本のお札なんて見たことないけどね。これからは僕も落ち目だな」

と彼もため息。

一国の経済がバスタブの湯だとすれば、政府や中央銀行は熱湯や冷水を出して湯加減を保つ蛇口。ところが、アイスランドではバスタブがいつのまにか巨大な海に変わっていた。

過熱した経済によるインフレを抑えようと中央銀行は自国通貨の金利を上げる。
今年10月はじめには15.5%にまでなっていた。しかし人々は中央銀行の規制から自由で低金利のまま流入する外貨でローンを組み消費を続ける。
世界の金融市場という海のなかで、アイスランドの小さな蛇口は意味をなくしていた。

中央銀行によると、外貨ローン利用はこの4年間で急増。04年1月は家計の借金のうち4.5%だったが、08年には3月の時点で23%に。クローナ暴落で、外貨による借金の重みはさらに増す。

73年まで世界銀行が「途上国」に分類していた小国は、80年代から経済のグローバル化の波に乗ろうと大胆に規制緩和を進めた。
舞台が広がり外資も流れこんだ。次々と内外で注目される企業が輩出。
06年には専門家らが首相に対し、「国際金融センターとして理想的。さらに条件整備を」という野心満々の提言さえまとめた。

気がつけば1人当たり国内総生産(GDP)は世界トップクラス。07年には国民の幸福度を示すともいわれる国連開発計画(UNDP)の人間開発指数で第1位に輝く。

ただ、その陰で経済は「規制緩和が産みだした巨大な怪物」(ビフロスト大学のエイリクール・ベルグマン教授)と化していた。
英国などで自国の人口より多い預金者を獲得したり、日本でサムライ債(円建ての債券)を発行したりして巨額の資金を集めた銀行の資産は合計でGDPの10倍。
何か起きれば政府の手に負えない規模に膨らんだ。そこへリーマン・ブラザーズの経営破綻(は・たん)。万事休した。

明日からどうなるか。通貨下落が続き、失業は増え、物価は上昇し、給料はカット……。グローバル化がもたらしたサクセスストーリーはホラーストーリーに変わった。

02年に首相経済顧問を務めたアイスランド大学のギュナール・ハラルドソン経済学部長は「私たちは自身の成功の犠牲者かもしれない」と嘆く。
首都の中心街の高級店やしゃれたレストランはまだ営業を続けている。
だが、いつまでもつか。最も幸せだった国から突然、人々の夢がごっそりと消えてしまった。(レイキャビク=大野博人)

〈アイスランド〉 北海道よりやや広い約10万平方キロの国土に約30万人が暮らす。
漁業国だが、80年代以降、経済の規制緩和を積極化。
特に資本の移動の自由化、金融機関の民営化や通貨クローナの変動相場制への移行など金融部門の規制緩和を機に、経済成長を遂げた。
06年までの10年で国内総生産(GDP)は2倍強に。1人当たり5万ドルを超え、3.4万ドルの日本を上回った(06年)。
日本への輸出はシシャモなど水産物が中心で、日本からの輸入の多くは乗用車。

欧州連合(EU)未加盟だが、経済分野にかかわる欧州経済領域(EEA)には参加。非武装で、北大西洋条約機構(NATO)加盟。

これは確か先週のテレビで放送された取材そのもののようですね。

ちょうど今「閉塞経済―金融資本主義のゆくえ」金子勝著・ちくま新書を読んでいます。
この中に「バブルとバブル崩壊を繰り返す経済」という言葉が出てきて、なるほどと思っています。

住宅ローンとか自動車ローンに直接外資を使うというのはテレビで見たときに驚いたものですが、テレビではアイスランドの問題が直接イギリスの問題になっていることも放送されて、これまた「そういうことだったのか」でありました。

アイスランドの金利が高いから、イギリスの100を超える自治体がアイスランドの銀行に預金していたのだそうです、それが凍結されてしまって予算執行が出来ない自治体が出てきてしまった。
さらに、イギリス政府がアイスランドに抗議して、イギリス国内のアイスランドの銀行を営業停止にしてしまったとか。
イギリス下院でも、政府の責任を追及するなど、完全に政治問題になってしまったようです。

アイスランドの「国内金利が高い(15.5%)なので、円でローンを組む」というのは、簡単に言えば裏技といったところですが、結局は「金利差を利用して儲ける」事であって、金融工学などと言う分野のテクニックですね。
もちろん、アイスランドの場合もアイスランド通貨クローナが暴落することがなければ、大問題にはならないわけでしたが、本質的には高金利であることがすでに危険信号でもあるわけで、そこで金利差があることがいずれは誰かがババを引くと理解しても間違えではないようです。

金子氏の本はまだ半分ぐらいしか読んでいませんが、経済危機になると金融機関救済のために結果として資金を市場に供給してきたのだから、世界は常に金余りになっている。という指摘があります。
つまり、いつでも資金運用=バブルになるわけで、これがバブル崩壊になるので、10年周期でバブル崩壊がある。と述べています。

今回の世界的に金融危機に対しては、たまたま円は巻き込まれなかったから円高に推移していますが、日本国内について考えると、資金が市場に溢れていることは代わりがないでしょう。
つまり、バブル崩壊があるかもしれないわけですね。

これでは、銀行は潰れないかもしれないけど、銀行の信用は無くなる、といったことになってしまいそうです。

10月 22, 2008 at 08:39 午前 国際経済など | | コメント (1) | トラックバック (0)

2008.10.21

文科省と総務省

毎日新聞より「文科省:保護者を「ネット指導員」に 3年で9千人養成

携帯電話やインターネットを巡る子どもの事件やトラブルが深刻になっていることを受け、文部科学省は来年度から、父母ら保護者を「ネット指導員」として養成する事業を始めることを決めた。

3年をかけ全国で約9000人を養成する。教職員や保護者を集めた「出前授業」をしてもらい、ネットの危険性や情報モラルなどの知識を持つ大人を増やすのが狙い。

文科省によると、全国の都道府県と市区町村からモデル事業への参加を公募し、64自治体を選んで事業を委託する。
養成する指導員は各自治体で年50人前後計約3000人を予定している。

大学教授などの有識者が講師となり、ネット指導員となる保護者に対し、人気サイト上で行われている子どもたちのやり取りや掲示板への書き込みによるいじめ、サイトに流出しているわいせつ画像の実態などを教える。
そのうえで、犯罪に巻き込まれたり、加害者になる危険性について、例示し、指導方法やトラブルが起きた時の対処法を伝える。

指導員は、各地域で小中学生の保護者や教職員を集めて出前授業をする。
携帯電話やネットの子どもたちへの普及スピードが速く、学校、家庭での指導が追いついていない現状を改善する目的がある。

同様の取り組みは群馬、茨城、鳥取県など一部の自治体が数年前から独自に行っている。
だが、財政難などから手付かずの自治体も多く、国の事業として年約2億円の予算で行うことにした。
モデル事業に参加した64自治体の事例を集めた報告書を他の自治体に配布した、自治体の担当者らが情報交換できるサイトを開設することも検討している。

文科省生涯学習政策局は「『知った人』から『知らない人』へネットに関する知識を広げていき、親の関心や監視力を高めたい」と話している。【三木陽介】

【ことば】
子どものインターネット問題 文部科学省の06年度の調査では、携帯電話やパソコンのインターネットの掲示板を使った「いじめ」が全国の小中学校で約3200件確認されている。
特に生徒や児童が学校の公式サイトとは別に開設する「学校裏サイト」は、いじめの温床と指摘され、3万8260件ある。このほか、今年7月には携帯電話のサイトの書き込みを巡って群馬県桐生市で私立高校1年の男子生徒(当時15歳)が元同級生らから暴行されて死亡する事件が起きた。

以前「総務省がフィルタリングの原則加入を打ち出したが」を書きました。

この中でも、わたしは「子供用の携帯電話の普及を図るべきだ」と書いていますが、それは総務省が通信事業を管轄しているからで、早い話が「電話会社がどういう売り方をするべきか」「通信をどう使うべきか」という広い視点での行政こそが総務省の管轄だと思うわけです。
しかし、フィルタリングの原則加入というのは結局は本人というか親の意志に任せているところを誘導しようというもので、幅広い行政というよりも個人の生活に関わる部分について踏み込んでいると感じます。

問題は子どもの携帯電話利用なのだから、わたしは文科省がやるべき事を総務省がやった、と感じていたわけですが、今日の記事は「指導員に養成」だから、これは文科省ではなくて総務省の仕事でしょう。
実際に、わたしが接しているネット安全教育に関わり、かつ行政と関わっている先生方は総務省とのやり取りは以前からやっています。

つまり、わたしから見ると「文科省がやった方が良いことを総務省が行い、総務省のやってきたことを文科省が始める」と見えるわけです。
まるで、戦前の陸軍が潜水艦を造り、海軍が戦車を作った、という時代と同じではないのか?とまで感じてしまいます。

10月 21, 2008 at 04:23 午後 教育問題各種 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2008.10.19

振り込め詐欺が止まらない

サンケイ新聞より「振り込め詐欺、主犯格摘発はわずか1割 分業化や携帯履歴が壁

全国の警察が昨年摘発した振り込め詐欺グループのうち、主犯格まで逮捕できたのが約1割にとどまっていることが、警察庁の調べで分かった。

主犯格が逮捕されないため、犯行グループが“再生”し、新たな被害が生まれているという。

警察庁はトップまで迫れるよう突き上げ捜査を徹底するため、携帯電話の通話履歴の保存期間延長などを携帯各社に要請しているが、実現していない。関係者は「システム開発費の問題が壁となっている」と指摘している。

警察庁によると、全国の警察が昨年摘発した振り込め詐欺グループは約170。逮捕者のほとんどは電話をかける「だまし役」や銀行口座から現金を出す「引き出し役」など末端の実行犯で、主犯格の逮捕に至ったのは約1割の約20グループにすぎなかった。

グループのリーダーはノウハウと資金があり、簡単に犯行グループを再生できるという。警察庁幹部は「現状ではグループの拡大、再生産を食い止めるところまで至っていない」と頭を抱える。

主犯格の逮捕では、詐欺グループの全容解明につながるケースが多い。「キング」と呼ばれていた被告(30)=組織犯罪処罰法違反罪で公判中=をリーダーとする事件もその一つだ。

警視庁は今年1月から、キングの配下を次々摘発した。キングは自身を頂点に「店長」と呼ばれるまとめ役や、その下の実行部隊「だまし役」を配置、40人の組織を形成していた。

キングは自分で手配した銀行口座を「店長」にファクスして連絡していたほか、メンバーから成果の報告を毎日受けて「店長」ごとの成果を記載する“帳簿”を作るなど、グループを統括。「振り込め企業」ともいえる効率的なピラミッド型の組織を率いていた。

被害額は2年半で19億円。全国の高齢者からだまし取っていた。「リーダーが捕まったからうまく解明できた側面がある」。警視庁幹部はそう話した。

「現状の捜査の仕組みとして限界がある」。主犯格の逮捕になかなかたどり着かない背景を、警察庁幹部はこう説明する。

警察当局によると、以前は友人など仲間同士が結託し詐欺行為を重ねていたが、最近は主犯格が捜査から逃れるため、実行犯に名前を知らせていないケースが増えている。

警視庁が10日に詐欺容疑で逮捕した振り込めグループの「引き出し役」(27)は、リーダーを「振り込めさん」と呼んでいた。頻繁に現金を手渡していたにもかかわらず、名前を知らなかった可能性が高いという。

「末端を逮捕しても名前を知らないのであれば突き上げ捜査が難しい。犯行の組織化、分業化を示す典型的な例だ」と警視庁幹部は指摘する。

さらに、捜査を阻む原因として警察関係者が異口同音に指摘するのが、携帯電話の通話履歴保存期間の壁だ。携帯を押収しても3カ月の保存期間が過ぎていれば、通話履歴が消えて犯行の裏付けがとれない。
こうしたケースが頻発しているという。

警察庁は携帯各社に保存期間を半年に延長するよう要請しているが、「システム開発には国内5社で240億円の投資が必要」などと難色を示している。

増える「非ATM型」

振り込めの新しい形態として、現金を郵送させたり自宅を訪問したりするATM(現金自動預払機)を使わない手口が増えている。警察官立ち寄りなど対策が進むATMを避けるためとみられる。

警察庁によると、8月の振り込め詐欺被害のうち、被害金がATMから振り込まれた件数は780件で、7月の1304件と比べ40%減少した。

これに対し増えているのが、「非ATM型」ともいえるATMを経由しない犯行。警視庁が先月、融資の審査費名目で現金をだまし取っていたとして逮捕したグループは、被害者に定形小包郵便「エクスパック」を使って現金を送るよう指示し、約1億円を詐取していたとみられている。

エクスパックは専用の封筒を用いた小包で、全国一律500円の送料でポストに投函できる。本来は現金を送れないが、現金が入っていても中身を確認する方法はない。今年8月末までのエクスパックを利用した被害は1093件に達し、昨年1年間の1203件に迫っている。

「訪問型」では、警察官らを装って自宅を訪れ、「あなたの口座は犯罪に使われていて、凍結が必要」と、通帳やキャッシュカードをだまし取る手口が報告されている。東京都北区では、先月中旬から「会社の金を使い込んだ。すぐ手渡しでほしい」と電話が入った後、バイク便業者を直接被害者宅に派遣して金を渡させる詐欺が相次いでいる。訪問型による今年8月末までの被害は、前年同期比1.6倍の222件となっている。

全体像を解説する記事と言えますが、巨額詐欺事件とされている近未来通信事件、L&G(円天)事件、ワールドオーシャンファーム(海外養殖事業)事件などと同列であると考えるべきでしょう。

マルチ商法系の事件では、L&G(円天)事件の会長が「国内初の本格的マルチ商法」とも呼ばれるAPOジャパンの中心人物として活動した、と知られています。

日本の刑法は、犯行の数や被害者数に比例して刑罰が重くなることはないので、不特定多数の被害者を生み出す詐欺事件では、犯行を犯して逮捕・懲役となっても割が合うという面があるようです。

刑法第246条(詐欺)

人を欺いて財物を交付させた者は、十年以下の懲役に処する。 2 前項の方法により、財産上不法の利益を得、又は他人にこれを得させた者も、同項と同様とする。

「模範六法 2008」(C)2008(株)三省堂

ですから現実には、詐欺犯は数年以内に出所してくる者が多いわけです。
被害者が一人とか数人という事件と、被害者が何千・何万といった事件を一律に「懲役10年以下」で扱っては、懲役の長さが犯罪抑止力になっていないのではないか?と思います。
手っ取り早く言えば、被害者数の数を懲役の長さに掛け算して「懲役300年」といった事にでもしないと、不特定多数を対象にした方が詐欺罪は有利だ、という犯罪者側の利点が無くならないように思うのです。

10月 19, 2008 at 08:10 午前 事件と裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)