« 2008年4月13日 - 2008年4月19日 | トップページ | 2008年4月27日 - 2008年5月3日 »

2008.04.26

偽装請負の全面否定判決

朝日新聞より「松下電器子会社の偽装請負、直接雇用成立を認定

違法な偽装請負の状態で働かされていた男性について、大阪高裁が25日、当初から両者間に雇用契約が成立しているとして、解雇時点にさかのぼって賃金を支払うよう就労先の会社に命じる判決を言い渡した。

就労先で直接、指揮命令を受け、実質的にそこから賃金支払いを受けていた実態を重視。「請負契約」が違法で無効なのに働き続けていた事実を法的に根拠づけるには、黙示の労働契約が成立したと考えるほかないと述べた。事実上、期間を区切ることなく雇い続けるよう命じる判断だ。

原告側の弁護団によると、偽装請負をめぐって就労先の雇用責任を認めた司法判断は高裁レベルで初めて。

キヤノンなど大手メーカーの偽装請負は社会問題となったが、違法行為を指摘された企業が短期間の直接雇用のみで「是正した」と主張する事態が続発。
行政もこれを追認していた。
今回の判決はこうした法解釈を覆す可能性がある。弁護団は「労働の実態を踏まえた判決を高く評価したい。
同様のケースに与える影響は大きい」と話している。

松下電器産業の子会社「松下プラズマディスプレイ(PDP)」(大阪府茨木市)の工場で働いていたYさん(33)が同社を相手に提訴した。若林諒裁判長は直接雇用の地位を確認しなかった一審判決を変更。

06年の解雇後の未払い賃金(月約24万円)の支払いを命じ、内部告発に対する報復があったと認定して、慰謝料の額も一審の45万円から90万円に増額した。

判決によると、Yさんは04年1月から、松下PDPの茨木工場で「請負会社の社員」という形で働いていたが、翌05年5月、「実際は松下側社員の指揮命令のもとで働いており、実態は直接雇用だ」と大阪労働局に偽装請負を内部告発した。

同8月、松下PDPに期間工として直接雇用されたものの、06年1月末、期間満了を理由に職を失った。期間工だった間、Yさんは他の社員と接触できない単純作業に従事させられた。

判決はまず、請負会社の社員だったYさんらの労働実態について「松下側の従業員の指揮命令を受けていた」などと認定。Yさんを雇っていた請負会社と松下側が結んだ業務委託契約は「脱法的な労働者供給契約」であり、職業安定法や労働基準法に違反して無効だと判断した。

そのうえで、労働契約は当事者間の「黙示の合意」でも成立すると指摘。Yさんの場合、04年1月以降、「期間2カ月」「更新あり」「時給1350円」などの条件で松下側に労働力を提供し、松下側と使用従属関係にあったとして、双方の間には「黙示の労働契約の成立が認められる」と認定した。この結果、Yさんはこの工場で働き始めた当初から直接雇用の関係にあったと結論づけた。

松下側が06年2月以降の契約更新を拒否したことについても「解雇権の乱用」で無効と判断した。

さらに、Yさんが期間工として直接雇用された05年8月以降、配置転換で単独の作業部屋に隔離されたことについて、「松下側が内部告発などへの報復という不当な動機や目的から命じた」と認定した。

昨年4月の大阪地裁判決は「偽装請負の疑いが極めて強い」として、就労先には労働者を直接雇用する義務が生じるとの判断を示す一方、雇用契約の成立は否定していた。

高裁が地裁判決を破棄して自ら判決を下した事件ですが、内容を整理すると次のようです。

  1. 原告は派遣会社から請負作業として働いていた。
  2. これを偽装請負として大阪労働局に告発した。
  3. 派遣先は期間工として直接雇用した。
  4. 作業現場を隔離していた。
  5. 期間満了で解雇した。

地裁の判決は、

  • 偽装請負の疑いが極めて強い。
  • 就労先には労働者を直接雇用する義務が生じる。
  • 雇用契約の成立は否定する。
  • 慰謝料45万円の支払を派遣先に命令する。

直接雇用義務が生じると判断しているのに、雇用契約は成立していないという判決はなかなか理解しがたいものですが、この地裁判決を承けた控訴審で高裁が自判したわけです。

  1. 直接、指揮命令を受け、実質的にそこから賃金支払いを受けていた。
  2. だから「請負契約」が違法で無効。
  3. なのに働き続けていた。
  4. したがって、普通の労働契約が成立していた。
  5. だから期間を区切ることなく雇い続けるのが当然。
  6. 解雇後の未払い賃金(月約24万円)を支払え。
  7. 内部告発に対する報復に対して慰謝料90万円を支払え。

企業側には極めて厳しい判決で、松下は上告するとしてますが、どのような論理でこういう結論が導かれたのかについては、弁護士阪口徳雄の自由発言さんの「偽装請負に厳しい大阪高裁判決(司法・裁判34)」に解説がありました。

大阪高裁判決は実態を直視し

違法な偽装請負による労働者(原告)と請負会社、受入会社の法的関係は職業安定法44条、労働基準法6条に照らし、民法90条で無効

労働者と受入会社の使用従属関係、賃金支払い関係、労務提供関係を客観的にみると、労働契約のほかなく、黙示の労働契約の成立が認められる

として、一審大阪地裁の判決取り消し、労働者(原告)の全面勝訴の判決となった。

職業安定法 第44条(労働者供給事業の禁止)

何人も、次条に規定する場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。

労働基準法 第6条(中間搾取の排除)

何人も、法律に基いて許される場合の外、業として他人の就業に介入して利益を得てはならない。

わたしの理解では、偽装請負であるから、契約全体が違法で存在しないことになる。
しかし仕事をして賃金を支払った事実はあるのだから、雇用契約があった。
ということでしょう。

大変に理詰めな判断であり、かつ実情もよく反映しています。
元々派遣労働は専門家の派遣に限定であったわけで、請負についての考え方も専門家集団ということでした。
だから、派遣先が労働者個人を指揮監督すること自体が、違法であるということですし、そもそも論でいえば一時的な専門家の使用という見方をすると短期的には労働コストが上がる(時給は高い)、が長期的に専門家を雇用する理由がない、といったところで労働者の需給バランスが取れるはずでした。

しかし派遣労働を労働コストを下げるための手段として、拡大解釈して請負まで広げたから、無理が生じているわけで、その言い訳として「国際競争力」などと言っているのですが、長期的には通用するはずもありません。
今回の高裁判決のような判断がでるのも時間の問題であった、とは言えるのでしょう。

4月 26, 2008 at 01:00 午後 事件と裁判 | | コメント (4) | トラックバック (0)

2008.04.25

脱ゆとり教育

読売新聞より「小学授業、週1コマ増 理数強化を来年度から

文部科学省は24日、先月末に改定した新しい学習指導要領の移行措置を公表した。

小中学校とも算数・数学と理科の実施時期を前倒しして来年度からとし、この2教科の授業時間と学習内容を大幅に増やす。

中学は総合学習などを削減するので総授業時間は現在のまま。
小学校は全学年で週1コマ授業が増える。

移行期間中は新たな検定教科書がないため、同省では補助教材を作成して配布する予定だが、現場に行き渡るのは実施直前になる見込み。準備期間が不足したまま新しい授業が始まることを不安視する声も出ている。

「ゆとり教育」からの脱却を打ち出した新指導要領は、約40年ぶりの授業時間増や学習内容の復活などが柱。

小学校では2011年度から、中学では12年度から全面実施されるが、昨年末に公表された国際学力調査で理数系の学力の落ち込みが目立ったことなどを受け、同省は、理数系教育の強化を予定より早く進めるべきだと判断した。
ほぼ10年ごとに改定される指導要領の移行期間中に授業時間が増えるのは初めて。

新指導要領では小学校の算数は

1年が週4コマ(1コマ45分)
2~6年が週5コマとなり

6年間で142コマ増える。理科も4~6年は週3コマになるなど計55コマの増。

中学は数学が1年と3年が週4コマ(1コマ50分)になるなど計70コマ増え、理科も2~3年が週4コマになるなどで計95コマ増える。

移行措置によって小学校の場合、算数と理科は来年度から授業時間、内容とも新指導要領と同水準になり、算数は2年の「時刻の読み方」が1年に、6年の「立方体、直方体」は4年に、理科は「電磁石の強さ」が6年から5年に早まる。

教科ごとに担任が違う中学は理数の教員だけに負担が偏るのを避けるため、授業時間は11年度までに段階的に増やすこととし、来年度は数学が1年で年35コマ増、理科は3年で年25コマ増にとどめる。

内容も数学の「球の表面積と体積」や理科の「イオン」など最低限の増加にした。

教科書会社は全面実施時期に合わせて検定教科書を作成しているため、同省は現在の教科書にない分を補助教材にまとめ年度内に全児童・生徒に配布する。

[解説]教員増員具体策が必要

今回、文科省が公表した新指導要領の移行措置は、「ゆとり教育」からの一刻も早い転換を望む保護者の声に応えたものと言える。ただ、授業時間と学習内容の増加で学校現場の負担が増えることも間違いない。

同省は「教員の増員で対応したい」としているが、今月公表された中央教育審議会の「教育振興基本計画」の答申は、国の財政事情に配慮し、増員の数値目標を盛り込まなかった。

このまま教員増のめどが立たない状態が続けば、新指導要領に対応できる学校と、できない学校とでバラツキが出ることも予想される。学力向上に向けた施策も重要だが、それを実行に移すための条件整備も行政の責任。学校現場の努力だけに任せていては新指導要領の趣旨は生かせない。(社会部村井正美)

理数系教育の底上げを図るのは悪くはないと思いますが、それがゆとり教育否定とつながっているところは違うと思います。

記事の中でも教材の増加と教員の増員に触れていますが、ゆとり教育では全国一律ではない学校独自の教育を打ち出しましたので、教材を教員が作るとしました。
また教員は、教科書ではやらないことを教えることを求められたわけですが、専門家としての教員は教科書にでてくることを教えることの専門家であって、教科書ではやらないこととは専門家に専門外のことをやらせる事になりかねません。

ゆとり教育で実績を上げたところは、教員が自分の趣味や研究を中心に授業を進めたところと、外部から講師を迎え入れたところです。
これで問題になったのが「お金」。外部講師だって全くの手弁当自腹ではそうそう続けることが出来ません。まして、教材は原則としては40人を単位として生徒の分だけ作ることになりますから、何百人もいる児童生徒が必要とする教材費は一回の授業で簡単に10万円を超えます。

ゆとり教育が失敗した大きな部分は「お金の問題」「事務処理の問題」であると思っています。
特に事務処理問題は、表だってはほとんど出てきていませんが現在の学校が抱えている問題のほとんど全部に関わっていると言っても良いでしょう。

よく「学校の先生は雑用が多すぎる」といった話が出てきますが、雑用じゃなくて教育という専門分野とその準備作業、企画と事務処理といったことを全部まとめて先生の仕事としているのですから、大変なことになっています。

しかも時間的融通が利きません。
これは実際に社会人講師になって実感できることですが、授業時間中には先生は他の仕事は全く出来ません。
「当たり前だろう」と思われるでしょうが、8時半から15時半ぐらいまでの時間帯で、この間の休み時間は10分以下です。

この時間が全く動かせませんので、内部での打ち合わせ(職員会議ですね)を16時からやります。そのあおりを受けて、外部との折衝も出来ません。

こんなのは、秘書というか助手に相当する職員がいれば一発で解決するわけです。
理科教育でも実験を時間通りに片付けないといけないというところから、実験の面白さである失敗をする時間がなくなってしまって、単に時間を潰すだけになっている場合もあるそうです。
大学と同様に助手がいれば時間の調整は出来るわけです。

こんな事を考えてみますと、先に示した「ゆとり教育失敗の理由がお金」という問題は、「お金を掛けないと内容をいじっても失敗する」となります。
ゆとり教育を減らしても、コマ数を増やしても教育の質的向上は望めないと思うのです。
むしろゆとり教育で現場毎に調整代がある状態で、予算処置で事務職員を増員して教員が授業へ集中出来る体制にした方が簡単で効果があっただろうと思っています。

4月 25, 2008 at 12:55 午後 教育問題各種 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2008.04.24

精神鑑定書流出事件のトンデモ

サンケイ新聞より「【僕はパパを殺すことに決めた】筆者が講談社を批判

奈良県で起きた医師宅放火殺人事件の加害少年の供述調書を引用したノンフィクション「僕はパパを殺すことに決めた」(講談社)について、「取材源との約束に反した本作りを行ったことは、重大な出版倫理上の瑕疵(かし)がある」と断じた調査委員会(委員長・奥平康弘東大名誉教授)の報告書には「事実誤認がある」として、同書の筆者、草薙厚子さんが21日、東京都内で会見し、調査委に抗議する申入書を送ったことを明らかにした。

草薙さんは「(調書のコピーをしないなど取材源との)約束は事実でない。報告書は乱暴な作りだと思う」と指摘。申入書では、事実認定に使われた草薙さんのICレコーダーの会話記録は無断使用であり、本人への事実の確認もなかったとして、謝罪や事実の訂正を求めている。

「精神鑑定書流出事件」の続きであるわけですが、経過を並べます。

  1. 奈良市で医師の自宅に17歳の長男が放火して家族3人が死亡する放火殺人事件が起きた
  2. 少年は精神鑑定を受けた
  3. 精神鑑定調書をそのままコピーした本を草薙氏が著し、講談社から発売された
  4. 鑑定した医師は医師が秘密を漏洩したとして、刑法の秘密漏示罪で起訴された
  5. 講談社は第三者調査委員会(委員長=奥平康弘・東大名誉教授)で調査した結果、取材手法に「重大な瑕疵」と発表

読売新聞より「取材手法に「重大な瑕疵」、少年調書漏えいで講談社調査委

奈良県田原本町の医師方の放火殺人事件を巡り、長男(17)の供述調書などを引用した単行本「僕はパパを殺すことに決めた」が出版された秘密漏示事件で、出版元の講談社が設置した第三者調査委員会(委員長=奥平康弘・東大名誉教授)は9日、調査報告書を公表した。

報告書は、著者の草薙厚子さん(43)や同社編集者らについて、取材源の秘匿や取材手法に「重大な問題があった」と厳しく指摘し、「公権力の介入を招いた責任は大きい」と批判した。

調査委は、まず、取材の経緯を詳細に検証した。

報告書によると、草薙さんは、調書の利用について、

  1. コピーはしない
  2. 直接引用しない
  3. 事前に原稿を見せる

という約束で、鑑定医から調書を見せてもらった。
しかし、草薙さんらは鑑定医の留守中に自宅で膨大な調書をデジタルカメラで撮影。
撮影したことは鑑定医に伝えなかった。

調書を基に「週刊現代」と月刊「現代」に事件に関する記事が掲載されたが、調書を直接引用することはなく、原稿も事前に見せていた。
ところが単行本の出版に際しては、原稿の事前チェックをさせないまま調書が大量に引用された。

報告書は、こうした約束違反の取材手法について、「重大な出版倫理上の瑕疵(かし)がある」と批判した。

調書をそのまま引用するなど取材源を秘匿する工夫がなかった点についても「対応は余りに無防備、無理解だった」と指摘。
結果的に取材源が特定され、起訴されたことについては、「取材源を絶対に守り抜くという強い意志に欠け、公権力の介入を招く脇の甘さがあった」と述べた。

さらに、報告書は、供述調書の大量引用で関係者のプライバシーが侵害されたとし、「大量の調書を入手できた高揚感が冷静な判断力を失わせ、十分な周辺取材を行わず、社内のチェック機能も働かなかった」と様々な問題点を指摘。鑑定医を起訴した検察当局については、「情報源を厳しく取り締まるのは、表現の委縮を招く」と危機感を示した。

講談社の横山至孝常務らは東京都内で記者会見し、「出版した意義はあると思っているが、情報源が明かされ、起訴されたことは弁解の余地がない。調査委の指摘を重く受け止め、今後の出版活動に生かしていく」と述べた。

少年の代理人の浜田剛史弁護士は「少年や被害者への配慮が欠けている点が指摘されるなど一定の評価はできる。講談社で、なぜこのような判断が当初できなかったのか非常に残念」と話した。

医師が刑法の秘密漏示罪で起訴されたとのニュースに対しては「どういうことなのか?」という疑問がネット上を飛び交い、ごく常識的には講談社側が取材の範囲で適当と判断した秘密情報の取材について、検察が過度に踏み込んだのではないのか?という意見も多数ありました。

しかし、講談社の調査で秘密漏示というよりも窃取あるいは詐取の形で情報を持ってきたことが明らかになりましたので、「取材方法に重大な瑕疵」と表現し、取材者である草薙氏の取材方法を公開したのでしょう。

それについての草薙氏の「抗議」ということになりますが、医師の主張と草薙氏の主張が両立するのであれば医師への取材は出来なかったでしょう。
当然記事になりませんし、出版もありませんでした。

しかし、事実は出版されそのために医師は刑事訴追されています。
したがって、草薙氏の主張は「草薙氏については草薙氏の主張を守るべき」であり「医師に対しては医師の主張を無視して当然だ」ということになってしまいます。

これは事実関係という種類の話ではないでしょう。
よく自分の責任を軽く見せるために「他人もやっている」という主張をすることがありますが、それですらありません。
強いて言えば「自分は自分、他人は他人」ということでしょうが、マスコミという大衆に接する立場は「第4の権力」ともいわれるもので「自分のことだけ」と言ってしまっては、その時点でマスコミの資格無しであります。

サンケイ新聞の片山雅文記者はイザブログで「他人の権利を侵しても自分の権利は守る記者もどき」と言っています。

この件に関する記事を読むたびに非常に不快な気持ちにさせられるのですが、これまた相当の不快指数です。

奈良県で起きた医師宅放火殺人事件の加害少年の供述調書を引用したノンフィクション「
僕はパパを殺すことに決めた」(講談社)の筆者である草薙厚子氏が、講談社が設置した第三者調査委員会(委員長・奥平康弘東大名誉教授)の「取材源との約束に反した本作りを行ったことは、重大な出版倫理上の瑕疵(かし)がある」とした報告書について、「事実誤認がある」として抗議する申入書を送ったというのです。

草薙氏は「(調書のコピーをしないなど取材源との)約束は事実でない」と主張し、
事実認定に使われた氏のICレコーダーの会話記録は無断使用であり、本人への事実の確認もなかったとして、謝罪や事実の訂正を求めているそうです。

なるほど、立派な権利主張ですが、彼女にそうしたことを言う資格があるのでしょうか。少年の精神鑑定を行った精神科医、崎浜盛三被告(50)から入手した鑑定書をそのまま引用し、あろうことかコピーの写真を著書の表紙に使うという「暴挙」を犯した結果、崎浜医師は秘密漏示罪で逮捕・起訴され、被告席に座ることを余儀なくされています。

問題の鑑定書を部外者に見せることの是非はここでは取り上げませんが、ジャーナリストなら「どんな内容か知りたい」と手に入れる努力をするでしょうし、これ自体はジャーナリストとして当然の行為だと思います。

ただ、国民の「知る権利」を代用行使してニュースの発掘に当たる新聞記者をはじめジャーナリストが、何よりも守らなければならないことは、取材源の秘匿です。約束があろうがなかろうが、関係ありません。取材源を守るのは、ジャーナリストとしての信義なのです。そんな「いろはのい」も守れない人を、断じて「ジャーナリスト」として認めることはできません。

ましてや、今回は軽率な行為が公権力の介入という事態を招いており、「報道の自由」を守るという観点からも、公権力に口実を与えたという重大な瑕疵があります。

調査委の結論は至極全うなものであり、講談社では出版の管理責任があった担当役員ら4人を減給処分にしています。これとて、崎浜医師が置かれた状況に比べれば軽いでしょうが、草薙氏は逮捕も免れ、処分を受けることもありません(まあ、この世界での信用はなくなったでしょうが)。

他人の権利は侵害しながら、自分の権利だけはしっかり主張する-この類の人はどんな社会にも存在します。もちろん、マスコミの世界も例外ではありませんが、こういう人たちは真のジャーナリストではなく、「もどき」です。

「(問題点を広く認識してもらうため)供述調書を見せたことは後悔していないが、見せた相手については後悔している」。崎浜医師の言葉を重く受け止めたいと思います。

この中に書かれているとおり「撮影した調書を表紙に使う」なんてことをしましたから、単に情報が漏れたという判断ではなくて、物理的に流出した証拠になってしまったのですから、検察としても立件せざるを得ない状況になったと言うべきでしょう。

当初から「トンでもない話だな」と思って、それなりに記事にしていましたが、フタを開けたらもっとビックリというところです。

4月 24, 2008 at 11:16 午後 事件と裁判 | | コメント (9) | トラックバック (0)

2008.04.23

取材に応じると名誉毀損だって!

読売新聞より「雑誌にコメント「掲載同意なら個人に責任」東京地裁が賠償命令

音楽市場調査会社「オリコン」(東京)が記事中のコメントで名誉を傷つけられたとして、ジャーナリストの烏賀陽(うがや)弘道さん(45)に損害賠償などを求めた訴訟の判決が22日、東京地裁であり、綿引穣裁判長は烏賀陽さんに100万円の賠償を命じた。

問題となったのは、月刊誌「サイゾー」の2006年4月号に掲載された記事中のコメント。
記事は、オリコンの音楽ヒットチャート集計の信用性に疑問を投げかけるもので、烏賀陽さんは「オリコンは予約枚数もカウントに入れている。予約だけ入れておいて後で解約する『カラ予約』が入っている可能性が高い」などとコメントしていた。

雑誌の発行元ではなく、コメントした個人だけを名誉棄損に問うのが妥当かが争点となった。

判決は

  1. 「一般に、出版社はコメントの裏付け取材や編集を行って掲載するため、コメントした者が名誉棄損に問われることはない」とする一方、
  2. そのまま掲載されることに同意していた場合は、例外的に責任が問われる」と述べた。

その上で、烏賀陽さんが掲載に同意しており、内容も真実とは言えないとして、賠償を命じた。

烏賀陽さんは「言論を封じ込める判決で納得できない。控訴する」と話した。

服部孝章・立教大教授(メディア法)の話

「記事に最終的な責任を持つ出版元ではなく、コメントを寄せた個人の発言をとらえて名誉棄損を認めた判決には強い違和感を感じる。このような司法判断が出ると、取材を受ける側はコメントしにくくなり、マスコミは疑惑を報じる記事を書けなくなる恐れも出てくる」

何ともしょうもない判決と感じますが、

そのまま掲載されることに同意していた場合は、例外的に責任が問われる

の「例外」とは「そのまま掲載されることに同意すること」が例外なのか、「そのまま掲載されることに同意した場合の実際について、そのさらに例外的な場合」なのかが分かりませんね。
というか判決で「例外的に」という表現はありなのでしょうか?

このような判断に対して戦うことを考えますと、「例外にならないようにする」ことになりますし、判決は「例外にならないように対処することを要求している」わけで、それ自体が本質的に「悪魔の証明の要求」ではないかと思います。

今までの出版をめぐる名誉毀損裁判では、発行元の会社、編集責任者、著者に同時に責任を取ることを要求していて、今回は著者ですらない「取材に応じた人」の発言そのものが名誉毀損という極めて特異な構図の事件です。

今回の判決ではコメントを述べるあるいは取材に応じると名誉毀損になるということですので、最大の要素である「公然と」の範囲に「コメントを述べる・取材に応じる」が入るということです。つまりノーコメントでないと名誉毀損になるとも言えます。

ある意味ではマスコミュニケーションシステムそのものの否定になってしまうのですが・・・・・

あっちこっち問題だらけの判決だと感じます。

4月 23, 2008 at 01:13 午前 事件と裁判 | | コメント (7) | トラックバック (0)

2008.04.21

妹バラバラ事件・驚きの法廷

サンケイ新聞が「渋谷の妹バラバラ殺人」と題して法廷ライブ記事を続けています。今日(2008/04/21)は第5回後半で2度目の被告人質問でしたが、前回(2008/03/24)に検察・弁護の双方の鑑定結果が「刑事責任は問えない」という内容であって、検察は再鑑定を考えている状況で終了しました。

【妹バラバラ 再び被告人質問(1)】脳裏に焼きついているのは「妹のお尻」(13:32~13:45)

【妹バラバラ 再び被告人質問(2)】「妹を引きずった時、血の道ができている-その場面が思い浮かびます」(13:45~14:00)

【妹バラバラ 再び被告人質問(3)】取調室で「お前は人間のクズ」…“頭の片隅の情報”探る法廷(14:00~14:15)

【妹バラバラ 再び被告人質問(4)】「意味なさない!」検察の証拠に怒り出す裁判長…どうなる「責任能力」の認定(14:15~14:30)

【妹バラバラ 再び被告人質問(5)】「立証趣旨は?」検察の説明に懐疑的な裁判長(14:30~14:40)

【妹バラバラ 再び被告人質問(6)完】検察の再鑑定請求を却下 「異議!」連発の法廷(15:17~15:35) に今日の公判の結末があります。

 《約30分の休憩をはさみ、午後3時17分に法廷が再開した。勇貴被告は相変わらず無表情のまま、被告人席に腰を下ろした》
裁判長「それでは再開します」
 《裁判長が静かに宣言した。検察官が必要性を主張していた証拠の採否について、裁判長はどのような判断を下すのか。傍聴席の注目が集まる》
裁判長「検察官が請求していた証拠について、いずれも必要性がないので却下します」
 《検察官は『却下』という単語に顔をしかめ、すかさず立ち上がった》
検察官「異議!各証拠は必要性を有しており、それを採用しない裁判所の判断は違法です!」
 《対して弁護人も、検察側の請求理由が不当であることを主張した》
弁護人「公判前整理手続をやったのに、検察官は今ごろになって鑑定内容がおかしいと言っている。明らかに、公判前整理手続が済んでから調べることがやむを得ない事情はありません。仮にやむを得ない事情があったとしても、刑事訴訟法は速やかに調べねばならないとしています。また、証拠の中身の任意性についても、重大な疑いがあると言えます」
 《採否が問題になっていた証拠は、どうやら精神鑑定の結果が明らかになった後、検察側が追加で申請したもののようだ。刑事訴訟法では、公判前整理手続きに付された事件は、やむを得ない事情があった場合を除いて、公判前整理手続きが終わった後に証拠調べを請求することはできないと定めている。裁判長が『却下』の判断を示したということは、この『やむを得ない事情』には当たらないと判断したもようだ》
 《また、弁護人は、逮捕直後に勇貴被告への面会が認められなかったこと、取り調べ時間が長時間に及んだこと-などから、供述調書の内容についても疑問を呈した》
裁判長「では、異議を棄却します。これで証拠調べはすべて終えることにします。次回は…」
検察官「検察官としては、期日外に再鑑定を請求します!」
 《裁判長の言葉をさえぎり、検察官が再び立ち上がって発言した》
裁判長「本日は(請求)できませんか?」
検察官「理由を説明する必要があり、本日はできません」
裁判長「公判前整理手続は行っており、すでに(請求の)時期が遅れているのでは?それに本日、説明ができないというのは…」
 《次回に論告求刑を予定していた裁判長は、検察官の申し出に表情を曇らせた。検察官が一瞬言葉につまると、裁判長が続けた》
裁判長「裁判所としては、次回は論告弁論をします。期日は…」
検察官「それでは、ただいま鑑定の請求をします。(再鑑定の)必要性については、これまでの鑑定書の内容および、鑑定人の証人尋問から、鑑定結果は信用性が欠如していると言わざるを得ません。被告の責任能力を明らかにするためには、(再度)鑑定を行う必要があります」
 《再び言葉をさえぎられた裁判長は、ため息まじりに弁護人に意見を求めた》
裁判長「弁護人は?」
弁護人「公判前整理手続はすでにしています。仮に百歩譲っても、鑑定人の証人申請からかなり時期が経っている。牛島(定信・東京女子大教授が行った)鑑定への批判は論告の段階ですればいいのであって、改めて鑑定をする必要はありません」
 《両側の裁判官と小声で相談した後、裁判長は正面に向き直り検察官に告げた》
裁判長「えー。鑑定請求は速やかでないということで、却下します」
検察官「その点にも異議を申し立てます!裁判所は判断を誤っており、違法です」
弁護人「論点は前から同じです。牛島鑑定人の証人尋問は3月に行われました。鑑定人の証人尋問で、いろいろ聞くことができたはずです。牛島鑑定のどこが間違っているのかは、きちんと論告で言うべきです。それ(再鑑定を今、請求すること)は迅速な裁判に反するし、刑事手続の上でも許されません」
裁判長「それでは、棄却します」
 《裁判長は弁護人の主張に時折うなずきながら、請求の棄却を言い渡した。最後まで粘り続けた検察官は、不満の色を残しながらも次回期日設定のため、予定を尋ねる裁判長の声に答える。弁護人、検察官の予定が合わず、数度の日程調整を経た後、次回期日は5月12日午後1時半に決まった》
 《裁判長が勇貴被告に、次回期日の最後に意見陳述の機会があることを告げると、勇貴被告は青白い表情のまま『よろしくお願いいたします』と一言答えて退廷。午後3時35分に閉廷した》

検察は前回公判で検察側弁護側双方の鑑定が被告に刑事責任が問えないという内容であり、かつ鑑定が協同作業であったことなどから再鑑定を求めることを考えて、その根拠として警察での取り調べ状況を証拠申請使用したのでしょう。

なぜ証拠申請が重要のなのか?というと、

刑事訴訟法では、公判前整理手続きに付された事件は、やむを得ない事情があった場合を除いて、公判前整理手続きが終わった後に証拠調べを請求することはできないと定めている。

が問題で、検察が提出する証拠が「やむえず後から証拠申請する価値のある内容なのか?」が問題になったわけです。
それが

【妹バラバラ 再び被告人質問(5)】「立証趣旨は?」検察の説明に懐疑的な裁判長(14:30~14:40)

で証拠申請が却下されたから、再鑑定そのものが出来なくなりました。

公判前整理手続というのがこういう展開なるとは、知らなかったので驚きです。
もっとも検察側の「検察の意図に反する鑑定であったから、再鑑定を求める」というのは鑑定の意味をひっくり返すようなもので、それ自体に裁判所が反発したという面は大きいかと思います。

4月 21, 2008 at 06:35 午後 事件と裁判 | | コメント (0) | トラックバック (0)

日本郵船タンカー攻撃される

サンケイ新聞より「日本郵船タンカー、ロケットランチャーで攻撃される イエメン沖

国土交通省に21日入った連絡によると、日本郵船の大型タンカーが、イエメン沖で、不審船から発砲を受け、被弾した。不審船はロケットランチャーのようなもので発砲してきたとの情報がある。
けが人はいないもようだが、船尾が損傷したという。同省や同社で情報収集にあたっている。

イエメン沖で日本郵船の大型タンカーが、不審船から発砲を受けた事件で、タンカーは船尾部が損傷し、燃料漏れを起こしていることが21日、日本郵船などに入った連絡で分かった。

日本郵船に入った連絡によると、同日午前10時40分(日本時間)ごろ、中東イエメンのアデンの東約440キロの沖合で、同社の大型原油タンカー「高山」(15万53トン、乗組員23人)が小型不審船から発砲を受け、被弾した。けが人はなかった。

国土交通省によると、不審船はロケットランチャーのようなもので発砲し、高山は船尾部が被弾して損傷、燃料漏れを起こしているという。

高山の日本人乗組員は7人で、4日に韓国の蔚山(ウルサン)港を出港、原油を積むサウジアラビアに向け空荷で航行しているところだった。

Up

図に示した線が「アデンから440キロ」ですから、紅海に続くアデン湾に入ったばかりのところのようです。日本時間の10時40分ですから、現地時間は4時40分。薄明だったのでしょうか?

対戦車ロケットだと船に穴は開きますから、怪我人がなければ幸いであったと言うべきでしょう。
燃料が漏れているとのことだから、喫水線から高いところに命中していないのでしょう。

仮に撃たれたのが一発でそれが命中したのか、何発か撃たれてその一発が命中したのか?は大きな問題だと思いますが、日本郵船の発表「大型原油タンカー「高山」被弾の件」によると

本日21日午前10時40分頃(日本時間、現地時間同日午前4時40分頃)、イエメン共和国アデン沖東方約440kmにて当社が所有・運航する大型原油タンカー「高山」が、小型不審船1隻からの発砲により被弾しました。なお、小型不審船は午前11時3分頃、本船よりその船影を確認できなくなるまで離れたとの報告が入っております。

本船「高山」は、4月4日午前2時40分(日本時間)に韓国ウルサン港を出港し、積み地のサウジアラビア王国ヤンブー港に向け空荷での回送航行中でした。

本被弾による負傷者はありません。また、本船は航行可能で、被弾状況は現在確認中です。

引き続き、損傷個所の確認に努めるとともに、詳細な情報が明らかになり次第お知らせ致します。

「高山」の概要

1.船名高山(TAKAYAMA)
2.総トン数150,053トン
3.全長332.0m
3.船籍日本
4.建造年月日1993年11月 (旧日本鋼管津造船所建造)
5.船長岡村秀朗(おかむら ひであき)
(国籍:日本)
6.乗組員日本人7名、フィリピン人16名、計23名(船長含む)
7.船舶管理会社TMM株式会社

とのことですから、15万トン、330メートルのタンカーに海賊行為を働くとは考えがたいです。
むしろ本格的なテロ攻撃あるいはその訓練といったことを考えた方が妥当かもしれません。

4月 21, 2008 at 05:45 午後 海外の政治・軍事 | | コメント (0) | トラックバック (0)

2008.04.20

フィリピンの米騒動

東京新聞より「穀物価格高騰 フィリピン 『不足』報道で米騒動

国際的な食糧価格の高騰が深刻化している中、コメ輸入国であるフィリピンでも政府供給米の販売所に毎日長蛇の列ができ、政府が矢継ぎ早に対策を打ち出している。
価格高騰が庶民の懐を直撃しているのは事実だが、背後には「コメ不足」の不安を盛んにあおるメディアの姿もちらつく。(マニラ・吉枝道生、写真も)

毎日三万三千トンのコメを消費するフィリピンは、おかずは買えなくてもコメは食べるというお国柄。マクドナルドやケンタッキーフライドチキンのメニューにさえライスがある。コメの価格はことしに入って約30%高くなっており、庶民の財布を直撃した。

一方で、「コメ不足の可能性」を報道するメディアや、政府の無策を訴える反政府勢力が、国民の不安を駆り立てている面も否めない。飲食店には「半ライス」も登場し、“コメ危機”のイメージを増幅した。

一キロ一八・二五ペソ(約四十四円)の政府供給米には毎日早朝から市民が殺到し、長蛇の列をつくる。

マニラ市内で政府米を販売するアンジェリーナ・チャンさん(52)は「コメは十分にあるのに、報道がパニックを引き起こし、お客は買いだめしている」と話す。貧困層ではない人が何度も列に並び、必要以上のコメを買っている例が目立つという。

マニラ首都圏パラニャーケ市に住む男性(35)は、セブ島の親類がコメを持って訪問してきたことに驚いた。「マニラはコメがないとテレビで見たから」。セブ島では昨年より収穫が多かったと聞き、男性は「コメはある。問題は値段だけ」と答えたという。

社会不安につながる事態だけに、既にベトナム、米国などからの輸入を確保したアロヨ政権は「コメは不足していない」とパニック防止に必死。
備蓄量は昨年同期より約30%多い百九十四万トンで、今年六月までの国産米収穫量も昨年同期を上回る見通しと発表した。国内で毎日千二百五十トンが食べ残されて捨てられているという研究報告も出された。

国連食糧農業機関(FAO)などはフィリピンでも暴動が起こったと報告した。
しかし、テオドロ国防長官は「暴動など起こっていない」と憤る。

三月末に新人民軍(NPA)がコメ倉庫を襲撃した例はあるが、NPAによる各種襲撃事件は頻発しており、即座にコメ問題と結び付けるのは早計といえる。

ラグナ州の国際稲研究所(IRRI)によると、フィリピンは輸出国であるタイに比べて一ヘクタールあたりの収穫量は三割以上も多いが、水田の総面積は約四割にすぎない。多くの稲田が失われてきた。

騒動が長引く中、貧困層などを対象とした当面の対策に加えて「国内農業のあり方や人口問題、社会構造を根本的に見直すべきだ」との中長期的な論議も始まっている。

<コメ国際価格の高騰>国連食糧農業機関(FAO)によると、1998-2000年を100とした全米価指数は、昨年3月には130だったのが今年3月には216と66%も上がり、現在も上昇を続けている。世界各地で暴動などが続発し、FAOは「貧しい人たちが一番打撃を受ける」と警告。世界銀行や世界食糧計画(WFP)なども対策を打ち出している。

フィリピンで米不足の報道があって、その中には「ベトナムが輸出を止めた」という記事までセンセーショナルに取り上げられました。

例えば日本農業新聞は「アジア米騒動/自国優先鮮明に 逼迫感 相場押し上げ」で以下のように説明しています。

世界第2、第3位の米輸出国インドとベトナムは、昨年秋から米輸出を厳しく抑制してきた。国際相場が高騰する中で、アジアのそのほかの国にも実質的な輸出規制の動きが広がる。自国優先の姿勢が鮮明になってきた。

■インドネシア 事実上の輸出禁止

インドネシア政府は17日までに、今年産米の輸出を事実上、禁止する方針を打ち出した。国際的な需給逼迫(ひっぱく)を受け、国内備蓄を積み増すとともに価 格高騰を抑制するためだ。

この記事は慎重に読まないと「米の絶対量が足りない」と受け取りますから、東京新聞の記事にあるように「マニラでは米がない」と思いこんだ人も出てくるわけです。
これは日本の石油ショックの時のトイレットペーパー買いだめ事件のようなものでしょう。

国際商品が実際に不足するといったことは非常な長期変動であって、実際の過不足よりもはるかに急激な価格変動が起きます。
価格変動は最終的には実需の範囲に収まるのであって、突如として物が足りなくなること自体がありません。

しかし、投機的判断で国レベルの機関が国際商品価格を操作することは原油価格などでは何十年も続いてきたことで、そういう手法が米の国際価格に及んだと考えるべきなのかもしれません。

原油の国際価格が操作可能なのは、需要が全世界規模なのに生産が僅かな国に偏っているからで、米についても同じ事が言えるのかもしれませんが、米の生産はアジア地域では特に困難な要素はありませんから、米の国際価格の暴騰と貿易制限はすぐに収まるでしょう。

合理的に考えると、問題は無いのになぜフィリピンでは大事件になっているのか?は東京新聞の記事のように、メディアがアロヨ政権批判と連動させているからであり、ベトナムやインドネシアも米が国際戦略商品になったことをテコとして利用するために国家管理に乗り出した、ということでしょう。

米不足なのではなくて、各国の内外の政治問題だ、となります。

4月 20, 2008 at 12:45 午後 国際経済など | | コメント (0) | トラックバック (0)