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2008.12.01

ドルの将来

イザより「屑資産でもドル札に換えるFRB

ちょっと小生意気な小学6年生のおいっ子が突っ込んできた。
「おじさんたちは景気が悪いと書いているけど、そんなに悪いなら国がお札をじゃんじゃん刷ってみんなに配ればいいじゃないの」。

フム、どう答えるか。

カネの信用がなくなって、インフレになるから駄目だ、なんて杓子(しやくし)定規の答え答をしたら恥かくぞ。
物価がどんどん下がるデフレ経済では、カネを刷ってヘリコプターからばらまけ、というご託宣がノーベル経済学賞受賞者から提起されている。

経済とはカネが十分回れば、必ずよくなる。
しかし、タダのカネを刷ってみんなに配ってもそうなるとはかぎらない。いま話題の定額給付金もそうだ。

例えばこのおいっ子たちが喜び勇んでお札を手にゲームソフトを買うとしよう。
赤字経営のゲームソフト店のオヤジさんはその代金で一息つけるかもしれないが、銀行が運転資金を貸してくれないといずれ店をたたむ羽目になる。
カネが回るという意味は、金融機関を通じて収益性のある事業や勤勉に働く勤労者の住宅ローンなどに流れることで新たな事業や需要が生み出され、しかも返済されることで還流することだ。

つまり、たっぷりと資金を持っている健全な金融機関と、借りたカネを返済する能力を持つ企業や個人が大多数を占める。
とにかく金融機関がなければ、カネは回りにくい。
金利が低ければ、低収益の事業にも融資しやすくなる。
ヘリコプターからばらまかれたカネは金融機関に集まってこそ生きる。

おカネを刷って金融機関に流すのは通常、中央銀行であり、日本では日銀、米国では連邦準備制度理事会(FRB)である。
単に刷っているわけではない。
中央銀行は国債など信用度の高い証券を買い上げる操作のために輪転機を回す。
つまり、国債などの資産の裏付けがあるおカネを市場に流す。
ほとんど値打ちのないような資産に値をつけて買い上げることはこれまでタブーとされてきた。
そんなことをすれば、中央銀行は不良資産を大量に抱えることになり、それに見合って発行されるお札は信用を失うかもしれないのだ。

ところが、米FRBは25日、そんな禁じ手を使うことを決めた。

最大で8000億ドル(約77兆円)ものドル札を刷って、各種ローンが裏付けになっている「証券化商品」を買い入れる。住宅ローン関連で6000億ドル、自動車、クレジットカード、学資などの消費者ローンと一部の小企業向けローンで2000億ドルの資金枠をそれぞれ設定した、というのだ。

FRBの買い入れ対象はそれまでに問題含みの企業のコマーシャル・ペーパー、貯蓄型の投資信託(MMF)など多岐に渡り、しかも経営危機に陥った証券大手ベアースターンズ支援 290億ドル(約2兆8000億円)や保険大手のAIG支援1100億ドル(約10兆円)など、不良化するリスクの高い資産ばかりだ。

この結果、FRBの資金供給残高(保有資産)は証券大手リーマン・ブラザーズが破綻(はたん)した9月中旬以降の約2カ月半の間に一挙に 2.5倍に膨らんだ。

しかも通常なら米国債という優良資産の占める比率は通常のレベルの9割から2割へと大幅に低下した。

FRBはジャンク(屑(くず))になりかねない金融資産と引き換えに1兆数千億ドル(百十数兆円)ものお札を垂れ流している。

外聞もメンツもかなぐり捨ててまで応急措置に踏み切らなければならないのは、金融商品バブル崩壊のために金融機関の資産が損なわれ、金融機関同士疑心暗鬼になってしまい、金融市場でカネが回らなくなったのが一つ。
さらに、企業や個人も資産を失い、融資が受けられなくなったからだ。
ビジネス活動も個人消費も冷え込み、景気がいよいよ悪くなる。ならば、この際、ドル札を刷ってばらまくしかないと思い切った策に出たわけだ。

さらに驚くのは、今回の買い上げ対象になった証券化商品というのは、「金融工学」を駆使してコンピューター空間で創造された仮想現実の金融商品である。これらの商品は市場での評価、つまり現実の価値が不明である。株や債券はまだ配当や元本という確かに実在する価値をバックにしている「実」であるのに対し、証券化商品の大半は「虚」の金融商品である。FRBはあえてこの「虚」を現金化する。

市場経済というものには必ず帳尻合わせが起きる。ドル札が虚に染まれば、いずれただの紙切れに変わる。

それでもそうならず、ドルの価値が安定しているのは、世界でドルの金融商品の清算に伴ってドル札が不足しているためだ。

ドルが一転して過剰になったとき、どうなるか。米国はもとより、世界はまさに前代未聞、近代中央銀行制度史上初の巨大な実験の行方にかたずをのんで見守っているとでも言えようか。

(特別記者・編集委員 田村秀男/SANKEI EXPRESS)

最後の節

市場経済というものには必ず帳尻合わせが起きる。ドル札が虚に染まれば、いずれただの紙切れに変わる。

それでもそうならず、ドルの価値が安定しているのは、世界でドルの金融商品の清算に伴ってドル札が不足しているためだ。

この部分は、田村記者が以前から主張しているところで「現時点ではドル高」というものです。

そこにさらにドルを発行しているのですから、ドル暴落の可能性もあるとなります。
ところで、今回の田村の記者の指摘で重要なのは、すでに信用を失ってしまった金融商品を買い上げたという部分でしょう。

通貨の発行権は国家が独占することになっていますが、手形とか借金というのいわば個人や私企業が通貨を発行するようなもの、と解釈して良いのでしょう。
国家と個人では信用が全く違います。だから、借金はいつまで経っても通貨にはならない。

しかし現実の事件としては、借金をし放題に拡大して、最後に「大きすぎて潰せないから、国が何とかする」ということは日本も含めて世界中で起きています。
いわば国ではないところが通貨を勝手に発行したとも言えるでしょう。
勘定を合わせることは出来るかもしれませんが、信用は減りますよね。

アメリカ経済の復活は世界の期待でありますが、経済とは信用の問題であってアメリカの信用がいまだに下落の方向に向かっているのでは、世界は今後どうなっていくのでしょうか?

12月 1, 2008 at 10:19 午前 国際経済など |

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