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2008.11.28

この規定は無理ではないか?裁判員法

東京新聞より「29万5千人へ通知書発送 裁判員候補の名簿記載者に

来年5月の裁判員制度開始に向け、最高裁は28日、各地裁の裁判員候補者名簿に載ったことを知らせる通知書を全国の約29万5000人に一括発送した。

通知書が届くのは、全国平均で352人に1人。早い地域では29日に到着する見込みで“本番”まで半年を切り、実際の裁判員選任に備えた準備作業が本格化。

通知書には、裁判員に来年選ばれる可能性があることや、現段階では裁判所に行く必要がないことを記載。辞退できる理由の有無などを尋ねる調査票のほか、制度を漫画で説明した小冊子なども送られる。

調査票では(1)警察官や自衛官など法律上、裁判員になれない職業に就いているか(2)70歳以上や学生で辞退を希望するか(3)裁判員になることが特に難しい特定の月があるか-などを質問。回答期限は12月15日となっている。

裁判員候補者名簿は、市区町村選挙管理委員会が選挙人名簿から無作為抽出したリストを基に各地裁が作成。来年5月以降、裁判員裁判の対象事件が起訴されると、各地裁が名簿から100人程度をくじで選び「裁判員候補者選任手続き期日のお知らせ(呼び出し状)」を送付。裁判長による質問やくじで最終的に裁判員6人(原則)と、欠員に備えた補充裁判員が選ばれる。

いよいよ始まりますが、ちょっと前から気になっていることがあります。

裁判員法101条

第101条(裁判員等を特定するに足りる情報の取扱い)

何人も、
裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員又は裁判員候補者若しくはその予定者の
氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報を公にしてはならない。

これらであった者の氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報についても、
本人がこれを公にすることに同意している場合を除き、同様とする。

2 前項の規定の適用については、 区分事件審判に係る職務を行う裁判員又は補充裁判員の職にあった者で
第八十四条の規定によりその任務が終了したものは、
すべての区分事件審判の後に行われる併合事件の全体についての裁判
(以下「併合事件裁判」という。)がされるまでの間は、
なお裁判員又は補充裁判員であるものとみなす。

「模範六法 2008」(C)2008(株)三省堂

この解釈について、最高裁が作っているQ & Aには次の解説があります。

○ 裁判員等に選ばれたことを公にしてはいけないと聞いたのですが,
上司や同僚,さらには家族や親しい人に話すことも許されないのですか。

 裁判員等でいる間,裁判員等に選ばれたことを公にしてはいけません(裁判員法101条1項)。

裁判員候補者名簿に登録されたことや,さらにくじで選ばれて裁判員候補者として裁判所に呼ばれたことを公にすることは禁止されていますが,

  • 法律で禁止されている「公にする」とは,
  • 出版,放送といった手段による場合や
  • インターネット上のホームページ等に掲載するような場合など,
  • 裁判員候補者になったことを不特定多数の人が知ることができるような状態
にすることをいいます。

 一方,日常生活の中で,

  • 家族や親しい人に話すことは禁止されていませんし,
  • 上司に裁判員等になったことを話して,
  • 休暇を申請したり,
  • 同僚の理解を求めることは問題ありません。
  • その際に,裁判所からの選任手続期日のお知らせ(呼出状)を上司や同僚に見せることについても差し支えありません。

 なお,裁判員等でなくなった後に,自分が裁判員であったことを公にすることは禁止されていません。

この説明は本質的に矛盾しているのではないか?

「裁判員に選ばれたことを公にしてはいけない」のであれば、日常生活での家族・職場に話して良いとは、例外規定なのだろう。
しかし、例えば役者の舞台公演を欠席するといった場合には公にしないで済むとは思えない。
このような場合については、さらに別の例外規定があって

第16条(辞退事由)

次の各号のいずれかに該当する者は、裁判員となることについて辞退の申立てをすることができる。

  • 一 年齢七十年以上の者
  • 二 地方公共団体の議会の議員(会期中の者に限る。)
  • 三 学校教育法第一条、第百二十四条又は第百三十四条の学校の学生又は生徒(常時通学を要する課程に在学する者に限る。)
  • 四 過去五年以内に裁判員又は補充裁判員の職にあった者
  • 五 過去三年以内に選任予定裁判員であった者
  • 六 過去一年以内に裁判員候補者として第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭したことがある者(第三十四条第七項(第三十八条第二項(第四十六条第二項において準用する場合を含む。)、第四十七条第二項及び第九十二条第二項において準用する場合を含む。第二十六条第三項において同じ。)の規定による不選任の決定があった者を除く。)
  • 七 過去五年以内に検察審査会法(昭和二十三年法律第百四十七号)の規定による検察審査員又は補充員の職にあった者
  • 八 次に掲げる事由その他政令で定めるやむを得ない事由があり、裁判員の職務を行うこと又は裁判員候補者として第二十七条第一項に規定する裁判員等選任手続の期日に出頭することが困難な者
  • イ 重い疾病又は傷害により裁判所に出頭することが困難であること。
  • ロ 介護又は養育が行われなければ日常生活を営むのに支障がある同居の親族の介護又は養育を行う必要があること。
  • ハ その従事する事業における重要な用務であって自らがこれを処理しなければ当該事業に著しい損害が生じるおそれがあるものがあること。
  • ニ 父母の葬式への出席その他の社会生活上の重要な用務であって他の期日に行うことができないものがあること。
「模範六法 2008」(C)2008(株)三省堂

この「休めません」規定が適用できるかどうかで決まるから、裁判員を引きうけざるを得ない場合に「公に説明しないで済む」という考え方自体が、全ての状況に対応できないだろう。
この規定自体が状況に矛盾することは大いにあり得るだろう。

主役が舞台に穴を空ければ、公演自体が成り立たないから、裁判員を引きうけられないというのは分かるが、役者が交替できる場合には引きうけることになるだろう。

つまり、辞退できるか、出頭するかの理由付け自体が必ずしも明確ではない。
そうなると「裁判員に呼ばれたから休みます」と公開せざるを得ない場合も出てくるのではないのか?
それを「裁判員に呼ばれた」と公開してはいけない、となると「SIに呼ばれたから」とか隠語にでもするのか?
そもそも「家族・上司」には公開して良いとして、その上司は「今回の議題は、担当者が所用で欠席して・・」だけで済むとは言えまい。

何人も、 裁判員、補充裁判員、選任予定裁判員又は裁判員候補者若しくはその予定者の 氏名、住所その他の個人を特定するに足りる情報を公にしてはならない。
が現実的でない、ということにならないか?

11月 28, 2008 at 11:08 午前 裁判員裁判 |

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