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2008.07.25

ストーカー裁判官・求刑6ヶ月

サンケイ新聞より「ストーカー判事 検察側は懲役6月求刑

知人の20代の裁判所女性職員に執拗(しつよう)にメールを送ったとして、ストーカー規制法違反の罪に問われた宇都宮地裁判事、下山芳晴被告(55)の初公判が25日、甲府地裁(渡辺康裁判長)で開かれた。下山被告は「すべて間違いありません」と罪を全面的に認めた。

検察側は「相手の心情にむとんちゃくな犯行で、司法制度改革に対する国民の信頼を裏切った」などとして、懲役6月を求刑し、即日結審した。判決は8月8日。

起訴状などによると、下山被告は甲府地裁都留支部長だった2月19日からの約1カ月間に、恋愛感情を満たす目的で、女性が所持する携帯電話機に16回にわたって、「こんばんわ! 今何してる? もうお風呂入った?」「身体きれいに洗っておいてね」などと、性的な表現を含む内容のメールを送信する、つきまとい行為を繰り返した。

この事件は「どうしてこうなるのか?」に興味が向くわけですが、サンケイ新聞は今ではおなじみになった「法廷ライブ」として10本の記事をアップしています。
実に2万字の大作で、法廷でのやり取りが分かったので「なぜこんな事を引き起こしたのか?」もある程度分かりました。

この裁判官、けっこう困った人です。裁判官としてこの事件を引き起こさなくても不適格であったと言えるでしょう。
起きるべくして起きた、とは言いませんが事件を起こしても不思議ではない裁判官かもしれません。

裁判は、検察がストーカーメールを読み上げ、弁護側が弟や学生時代からの友人の弁護士の証言で、被告のプロファイルを明らかにしています。

ストーカーメールの部分は赤文字、記者の記事は青文字、で示しています。

【ストーカー判事】認める?注目の被告人質問も10時から初公判

「今、何してる?身体きれいに洗っておいてね~会いにいくからさぁ」…。20代の裁判所職員の女性にメールを執拗(しつよう)に送ったとして、ストーカー規制法違反の罪に問われた宇都宮地裁判事、下山芳晴被告(55)=東京都文京区=に対する初公判が25日午前10時、甲府地裁で開廷する。法を知り尽くした現職判事が、被告に身を落として迎える初公判に、どのような態度で臨むか注目される。

起訴状によると、下山被告は2月19日ごろからの約1カ月間、女性の携帯電話に匿名で「入るの見いちゃった!ついでに写真撮っちゃった!よく撮れてると思うけど、どうしようか?」「今日、県警本部に何しに行ったのかなぁ」などとするメールを繰り返し送るストーカー行為を行った。下山被告が匿名で女性に送ったメールは16通に及んでいた。

これまでの県警の調べなどによると、下山被告は甲府地裁都留支部長だった今年3月、女性から匿名のメールや無言電話などの被害相談を受けたとし、知人の警察幹部に無関係な第三者を装って捜査を依頼。結局、これをきっかけに捜査が始まり、5月21日に下山被告はストーカー規制法違反容疑で逮捕された。

下山被告は今月になって保釈されている。

下山被告は逮捕された当初、女性にメールを送ったことは認めたが、「父親のような気持ちだった。メールを送ったのは恋愛感情を満たすためではなく、彼女のため。幸せになってほしかった」などと供述。

ストーカー規制法違反罪は、恋愛感情やその他の好意感情、またはそれが満たされなかった怨恨の感情を充足する目的が「つきまとい側」になければ規制の対象にならないため、下山被告の供述が注目されたが、公判では起訴事実を全面的に認める見通しとなっている。

25日は被告人質問が行われるほか、弁護側が証人尋問で情状面を訴える構え。昼ごろには検察側の求刑が行われ、結審する見通しだ。

一方、最高裁は6月16日に裁判官会議を開き、罷免の訴追をするよう国会の裁判官訴追委員会に請求した。今月7日には、訴追委の委員3人が甲府刑務所を訪れ事情を聴取。下山被告が事実関係を認めたため、裁判官弾劾裁判所に訴追するか検討している。

弾劾裁判所で罷免判決が出れば、平成13年に児童買春事件で有罪が確定した元東京高裁判事以来、6人目となる。

【ストーカー判事初公判(1)】異様な法廷…朗読される妄想「とっても気持ちいいよ!」直立不動の下山被告(10:03~10:10)

知人の20代の裁判所職員の女性にメールを執拗(しつよう)に送ったとして、ストーカー規制法違反の罪に問われた宇都宮地裁判事、下山芳晴被告(55)に対する初公判。すでに保釈されている下山被告は、報道関係者を避けるように、審理が始まる約2時間前の午前8時過ぎに裏口から地裁入りした。司法の世界のエリートとされる裁判官から、被告の立場に身を落とした下山被告の発言や態度に注目が集まる

予定より3分遅れの10時3分、下山被告が早足で法廷に入ってきた。グレーのスーツに水色と紺のストライプのネクタイ姿。髪の毛をきっちりと横分けにしている。裁判長が開廷を告げた

裁判長「名前は?」
下山被告「下山芳晴です」

甲府地裁によると、審理を担当する渡辺康裁判長は、昨年12月に甲府市内で開かれた「裁判員制度ミニフォーラムin甲府」に下山被告とともに出席していたという。「職場仲間」に裁かれる下山被告の心境はいかばかりだろうか

裁判長「仕事は何をしていますか」
下山被告「宇都宮地裁判事です」

裁判長が被害者の個人情報が公判で明らかにならないよう、被害者秘匿の決定がなされていることを説明した後、検察官の起訴状朗読が始まった

検察官 「下山被告は2月19日からの約1カ月間、前後16回にわたり、同女が所持する携帯電話機に、『こんばんわ!今何してる?もうお風呂入った?きょうは、お昼も夕方も邪魔が入って会えなくって残念だったよ~明日は会えるかな~楽しく遊ぶのにお互い最高だよねラブホに○○ちゃんが入るの見いちゃった!ついでに写真撮っちゃった!この写真、送ってみよーか?でも、困っちゃうかぁ身体きれいに洗っておいてね~会いに行くからさぁ今日、県警本部に何しに行ったのかなぁ、ずいぶんと長い時間いたよね』などの内容の電子メールを送信し…ストーカー行為をしたものである」

読み上げは、起訴状につけられている「別表」へと進む。
別表は、下山被告が匿名で女性に出していたとされる16通のメールの具体的な文面のようだ。
お堅い職場での顔とは違う、裁判官の「裏の顔」を、さらに容赦なく読み上げていく

検察官 1。犯行日時は2月19日午後11時36分。送信場所は被告人方自宅PC、メールの件名『楽しかったよー』。こんばんわ!今何してる?(中略)穴ちっちゃいって悩んでるって?とっても気持ちいいよ!今度いつ会えるかなぁ…
4。(中略)もうお風呂入った?今日のお昼は楽しかったよね。でも、昼は短いよね~やる時間ないもんねっ!

親密な関係をうかがわせるような文面だが、下山被告はこうしたメールを匿名で出していた。2人は知人だったとされるが、メールの内容は下山被告の「想像の世界」だった可能性が高い。下山被告は立ったまま、直立不動で読み上げられている文面をめくっている

検察官 5。(中略)もうお風呂入った?今日のお昼は忙しくって出られなくって残念だったよね。昨日は、時間なくってエッチまでできなかったけど、いろいろいろやれて楽しかったよ!(中略)こんなスリルを楽しめる女の子って初めてだよ!楽しく遊ぶのにお互い最高だよねでも、お昼にあんまり独占すると、男が怒っちゃうかなあ…じゃあオヤスミー
6。(中略)もうお風呂入った?土曜日も仕事するんだっけ?(中略)この前車に乗っけてもらったときは、散髪したてだったから、髪の毛が落ちてたかもしれないね。ほかの男に見つからないよーに掃除しておいてくれたよね!なに聞かれてもトボケテおいたらバカな男にはわかんないからね。今度ラブホめぐりしようね。じゃあオヤスミー

なぜか、「もうお風呂入った?」の質問が多い

【ストーカー判事初公判(2)】「太股やわらかいね」「写真、彼の奥さんに送ってみよーか」(10:10~10:25)

検察官が下山芳晴被告が被害女性に送信したメール内容を朗読する。下山被告は、検察官から渡されたメール内容が記された書類を左手にもったまま、被告人席で立ったままじっと見入っている

検察官7。(中略)夜のグラサン姿目立つよ。この写真彼の奥さんに送ってみよーか?困っちゃうかなぁ…車も写っているし
検察官8。(中略)件名、太股やわらかいね。メール内容、(中略)もうお風呂入った?今日はお仕事たまっちゃって、昼間外に出られなかったよぉ…(泣)夜は待ち合わせ場所に間に合わなかったしさ顔文字

メールには顔文字も使用していたことを明らかにする検察官。下山被告は動揺した様子はない。かつては法廷を指揮したプライドがそうさせているのか…

検察官…10。(中略)こんばんわ!もうお風呂入った?今日はちょっと難しい統計学の話をしよーかな(笑)いくつかのサンプルがあって、そのうちかなりのものが真実の場合、ほかの部分も真実だというお話だよ~(中略)AもBもホントのことなのに、Cだけうそだって信じるのは統計学的に無理だよ~あっでもヤンキー君はVちゃん(被害者)を真面目って信じているっぽいよな~最近周りには頭悪そーな連中多いよね(笑)
検察官11。(中略)これから相手する男の子のためにVちゃん(被害者)の弱いところの解説書を作っちゃったりして…左の太股とか肩口とか…」

下山被告は、女性が交際していることを知っていて、その相手を強く意識していたようだ。さらに検察官の朗読が続く

検察官12。(中略)そうそう、昨日話した解説書なんだけど、口説き方とかからかいたほうがいいかなぁ…

深夜から未明にかけてわいせつな内容も含むメールを送信し続けた下山被告。検察官は最後に送信した16番目のメール内容を読み上げる。被害女性が県警本部にストーカーの相談に訪れた時の内容が含まれる

検察官16。(中略)今日、県警本部に何しに行ったのかなぁ…ずいぶんと長い時間いたよね。怒らせちゃったかなぁ…支部長っていう人には怒られるし…それで、いろいろ考えたんだけど、送るつもりだった写真や動画のすべてを廃棄・消去することにしたヨ。メルアドも消します。だから、このメールが最後になっちゃうよ。それじゃぁ、おやすみ~

最後のメールには、「支部長」と自分(当時は甲府地裁都留支部長)を第三者として登場させた。捜査が及ばないようにするための“撹乱”作戦なのだろうか。検察官の起訴状朗読は約20分かかって終了。渡辺康裁判長から被告人の権利について説明を受ける。つい数ヶ月前には自分が説明する立場だった下山被告。もちろん権利は十分に把握しており、裁判長の説明に小さく何度もうなずいた

そして、渡辺裁判長が罪状についての認否をたずねた。背筋を伸ばし裁判長を直視する下山被告は、口を開いた

下山被告「すべて間違いありません」

逮捕当初は、恋愛感情はなかったとしてストーカー規制法の適用には当たらないとの趣旨の供述をしていたとされる下山被告は起訴事実を全面的に認めた。続いて検察側の冒頭陳述に移る

検察官「昭和56年10月に司法試験に合格。平成16年4月1日から20年3月31日まで甲府地裁都留支部長…(中略)一時期被害者の女性と親しくし、恋愛感情があったが、しだいに女性が避けるようになったため、ストーカーメールを送信し親身に相談することを装って、自己の恋愛感情を満足させようとした」

冒頭陳述は終了。続いて証拠調べに。検察官は証拠として、3月18日に被害女性が最初にストーカー相談に訪れた県警本部で相談した内容についての書面などを提出した。最初の相談ではストーカーメールの話ではなく、無言電話の相談が中心であったと検察官は明らかにした

【ストーカー判事初公判(3)】動機「男の嫉妬をかきたて、別れさせたかった」(10:25~10:40)

証拠の内容を説明する検察官の声が法廷に響く。下山被告は傍聴席から見て左側の被告人席に腰かけ、伏し目がちに聞いている

検察官「続いての証拠はメールアドレスの送受信の状況、平成20年3月31日までの3種類のアドレスのメールです。下山被告のパソコンのメールアドレスからのメール、被害者との日常的なメール、それから第三者を装って送られたメール…」

検察官はここで、下山被告が自分のメールから、“ストーカー犯人”にあてて第三者を装って送ったメールの内容を読み上げた

検察官「貴殿の行為はストーカー規制法違反に当たり、被害者は18日に警察に届け出ることを承知しました。今後は司直の手に委ねるので、通告します。甲府地方裁判所都留支部支部長下山芳晴」

このメールの内容を見る限り、下山被告は、自らの行為がストーカー規制法違反に当たると自覚していたようだ。下山被告は、“犯人”に当てたメールを一度被害者に送信し、了承を得た上で送信していた

検察官の説明を、時折小さくうなずきながら聞いている下山被告だが、検察官が言い間違えると、顔を上げて検察官を見つめる。その姿は、正面に座っている渡辺康裁判長の姿と変わりない。これまで裁判官として判決を下してきた公判では、このような姿で聞いていたのか

検察官「下山被告は3月中旬、会員になっていた甲府市のインターネットカフェに『転勤するので退会したい。会員のデータを消して、入会申込書を返してほしい』と申し出た。被告の車両からは漫画喫茶のレシートが出てきた」

検察官は続いて、被害者の女性の供述調書を読み上げた

検察官「下山被告とは一時親しくしていましたが、積極的にドライブに誘ってくるのがうっとうしくなりました。私が同い年の男性を好きになったと話すと『好きになるのは自由だけど、その男はどうだろう』『ぼくは君を束縛したつもりはない。君の態度はカチンとくる。ぼくのプライドが許さない』などとメールが来るようになりました。メールを返さないでいたら、2月19日に誰からか分からないメール(起訴事実に含まれている1通目のメール)が来ました。24日に下山被告に相談すると、下山被告は『許せないな。君に怖い思いをさせるなんてとんでもないヤツだな』と言いました。それから下山被告はまたメールを送ってくるようになりました」

ストーカーメールで女性の気を引きたいという下山被告の“作戦”は成功した。メールをきっかけに、再び女性と親しくなれると信じた下山被告だが、その思いこみが次なるストーカー行為に走らせた

検察官「しかし、下山被告は私が頼んでもいないのに、『Vちゃん(被害者)の車を見かけたので不審者がいないか見張るよ』などのメールを送ってくるようになりました。その後、交際相手の家に、声を変えた感じの電話がありました。3月18日に警察本部に呼ばれましたが、その夜、『県警本部に何しに行ったのかなぁ』というメールが来たので、ぞっとしました」

しかし、女性が警察に相談してから、ストーカー捜査が本格化。女性の気を引くこともできず、作戦が失敗した下山被告は、ついに自らの犯行を打ち明ける

検察官「4月8日、下山被告から、『実は、すべてのストーカーメールを送ったのは僕です』というメールが来ました。これまで何くわぬ顔でメールを送っていたのかと怒りでいっぱいになりました。私から(被害の)相談を受けていたのにメールを送ってきた被告が許せません」

被害者の怒りを理解しているのか。下山被告の表情に変化はない。続いて、検察官は下山被告の供述調書の一部を読み上げ始めた

検察官「被害者を1人の女性として守りたいという意味での感情はあった。私は被害者の交際相手に対しては低い評価しか与えていなかった。交際相手と別れることで女性が幸せになれると思った。恋愛観情を充足させる目的と思われることに異義はない。メールの送信者は架空の男という設定にした。交際相手が、彼女がメールの送り主と交際していると思い、嫉妬(しっと)し、別れることを期待した」

時折、メモを取りながら検察官の言葉を聞く下山被告は落ち着いていて、強烈なメールの文面とのギャップが際だつ。続いて弁護人が下山被告の現段階での陳述書、被害者との示談経過などの証拠を申請。情状証人として、実弟と同僚弁護士の証人尋問が行われることになった

【ストーカー判事初公判(4)】示談応じぬ被害女性法廷には弟「苦労の司法試験」証言(10:40~10:55)

弁護人は、下山被告が現在の心情を文書にした陳述書を裁判所に提出した。弁護人は、その内容についての説明を始める

弁護人「(陳述書には)被告人がこれまで、恋愛感情や自分が(女性の)父であるような感情を持っていたこと。また、この裁判では(自らの行為が)単なるストーカーであったことを認め、この公判が下山の全人生が裁かれる裁判だと考えて、真剣に向き合っていること。いま振り返ると、多くの思いこみがあったように思い、恥ずかしさを禁じ得ないという趣旨のことが書かれております」

弁護人は、ほかにも下山被告が借金で苦労していたことや、女性と交際を始めた経緯などが書かれていると説明した後、犯行に至った経緯について書かれた部分の代読を始める

弁護人「今年の私の異動が近づき、私の中に焦りのような気持ちが沸き起こりました。被害者にとって、自分が特別な存在でいたいと思うようになり、55歳と20代の女性で、職場の上司と部下という関係でありながら、年がいもなく彼女を女性としてみる気持ちが強くなりました」
弁護人「『いろいろな意味で彼女を満足させていないのでは』と思うようになり、仕事の関係で彼女とドライブにもいけず、彼女は(別の)男性との交際を深めていきました」
弁護人「彼女を取り戻そうと、彼女にストーカーメールを送りつけました。彼女へのメールを男性が見ることで、彼女との交際が終わるだろうと信じて疑いませんでした。いま思い返すと、恥ずべきことですが、そのときは思い込みから気づきませんでした」

ここまで弁護人が一気に読み上げた。下山被告は目を閉じ、天井を仰ぎ見るような姿勢のまま、じっと聞き入っている

弁護人は被害者へのおわびに関する文言を読み上げる

弁護人「被害者にはただただおわびの気持ちでいっぱいです。自分の犯したことで、彼女にとって知られたくないことが明るみに出されてしまった。今は自分の愚かな行為を恥じるばかりです」

その後、弁護人は下山被告側が女性側と6回にわたり面談をしたが、示談が成立していないことを説明した文書や、和解に尽力した東京の弁護士へのお礼の手紙などを証拠として提出して席に着く

続いて弁護側が呼んだ情状証人への質問が行われる。1人目は下山被告の実弟だ。傍聴席にいた男性が立ち上がり、証言台に向かう。下山被告の弟は、白髪交じりのひげを蓄え、腕まくりした黄色っぽいシャツにネクタイ姿だ

弁護人「あなたは下山被告の1歳違いの弟ですね」
「はい」
弁護人「ほかに兄弟は?」
「おりません」
弁護人「両親は健在ですか」
「父は3年前に亡くなり、母は実家で隣家に住んでいます」
弁護人「母親は病気で入院中と聞きますが」
「はい。おっしゃる通りです」
弁護人「芳晴さんはあなたにとって、どんな存在ですか」
「私は尊敬する人と聞かれれば、兄と答えます。正義感が強く、よく勉強をする。いつも私をうまく導いてくれる人でした」
弁護人「芳晴さんは学生のときに大きな病気をしたといいますが」
「はい。子供のころから肺の難しい病気で、司法試験を前に手術を受け、洗面所で大量の血を吐いて、あぶない状況になったこともあります」
弁護人「そんな中、司法試験を頑張ったんですか」
「はい」
弁護人「芳晴さんは司法試験に受かってから結婚しましたね。結婚をしてからは?」
「しばらくはつきあいを続けていましたが、家族同士は非常に淡泊で、仕事の関係もあり、次第に疎遠になりました」
弁護人「徐々に距離ができたんですか」
「はい。お互いに結婚をしているので当たり前かなと」

ここで話題は下山被告の借金についてに切り替わる

弁護人「芳晴さんが父親に金のことで相談にいったことは?」
「はい。あります」
弁護人「いつごろですか」
「平成10年ごろだと思います」
弁護人「父親は金を出しましたか」
「はい」
弁護人「金額は?」
「詳しくは知りませんが、あまりにも大きな額で」
弁護人「100万円単位でなく、もう一けた上の数字ですか」
「はい」
借金は1000万円単位だったようだ
弁護人「芳晴さんは東京都豊島区目白に大きな家を持っていますが?」
「それは何軒目かのマンションです。バブルのすぐあとで、関西の感覚からすると分かりませんが、マンションの金額としては高額なものと思います」
弁護人「父は経営者で金銭的に余裕があったかもしれませんが、負担になっていたのでは?」
「新しい借金をしたり、従業員を抱えていますから…」

弟の声が小さくなる。家族の恥部を明かすことへの抵抗からか、うつむき加減になり、かなり聞き取りにくい

弁護人「父親が亡くなり、芳晴さんが(弟に)金策に来たことは?」
「ありました」
弁護人「何に使うという説明はありましたか」
「(説明は)一応するのですが、内装や修繕などですが、金額から考えるとよく分からなかった。大阪にいるので分からないことが多かった」
弁護人「事件はどうやって知りましたか」
「テレビを見ていた家内から連絡があって」
弁護人「それ以前に(下山被告から)連絡は?」
「逼迫(ひっぱく)していた電話があって『とにかく大変だから』と。ただ、借金の話と同じように、日常のことと思っていた」
弁護人「逮捕後に面会は?」
「拘置所で」
弁護人「芳晴さんへの思いは?」
「まだ信じられない。信じたくない。苦労して司法試験を通って結婚して、子供はできたのですが生まれる前に流産して…。『3人で最高の家族を作りたい』と言っていたのに、一方通行のことが多くなって。いまでもどうしてそんなことをしたのか…」
弁護人「芳晴さんは今後、経済的や仕事の面でも多くのものを失うことになると思うが」
「それが大きな過ちのためと思うと、本当残念。過ちはやり直せると思う。過ちに気づいたのなら、長い時間がかかっても…」

声が小さくなり、後半部分はほとんど聞き取れない。消え入るような声で話す弟を前に、下山被告は何を思ったのか。ただ目を閉じたままだ

【ストーカー判事初公判(5)】被害女性への恋愛感情すべて認める「強く反省」と友人弁護士(10:55~11:10)

下山被告の実弟への証人尋問に続き、この日2人目の証人として、友人である男性弁護士が証言台に立った。下山被告は目を閉じたままで、弁護士に視線を送ることはなかった

弁護人「あなたは下山被告と同じ弁護士ですね?」
友人の弁護士「はい」
弁護人「下山被告と友人になったのはいつ、どのようにですか」
友人の弁護士「昭和47年、1972年に予備校の寮で一緒になりました。18か19歳のときです」
弁護人「大学受験に失敗して、浪人生活をしていて寮で知り合ったんですね」
友人の弁護士「はい」
弁護人「1年間?」
友人の弁護士「寮は1年間です」
弁護人「かなり親しくなったのですか」
友人の弁護士「500人くらい寮にはいましたが、部屋が近くて親しくなりました」

下山被告は目を閉じたまま。時折、何かを思いだすかのように顔を上げた

弁護人「大学にいってからも親しかったのですか」
友人の弁護士「はい、司法試験も下山被告の方が勉強が進んでいて、教えてもらっていました」
弁護人「下山被告の結婚式に呼ばれ、披露宴にも出ていますね?そこにはどんな人たちが集まったのですか」
友人の弁護士「予備校の同期、寮友たちが集まりました」
弁護人「浪人生活で親しくなった人たちが披露宴に出たのですね?」
友人の弁護士「はい」
弁護人「あなたが弁護士になってからも連絡は取りましたか」
友人の弁護士「回数は激減しましたが、ときどき連絡は取り合ってました」
弁護人「こうした刑事事件で、弁護士の口から詳細を明らかにしていいものか、あなたとも話し、悩みました。だが、あえて質問します。先ほど証人の弟さん(下山被告の実弟)にも質問しましたが、借金の件を聞きます。あなたに被告が借金を頼んできたのはいつごろでしたか」

下山被告が目を閉じたまま、顔を上げた、みけんにしわを寄せ、険しい表情だ

友人の弁護士「10年ほど前です」
弁護人「いくら?」
友人の弁護士「50万円ほどだったと…」
弁護人「借金の理由は何でしたか」
友人の弁護士「聞かなかったです。話せば長くなりますが、予備校の寮は特殊な社会で、挫折をした一方で希望を持っている人の集まり。それでいてライバルでもあります。普通の寮とは違い、互いに恥部を見せ合うような濃密な関係になる。濃密な関係だからこそ、借金の理由は聞かなかったのです」
弁護人「お金は返してくれましたか」
友人の弁護士「はい」
弁護人「借りたのは1回でしたか」
友人の弁護士「何回か…10回くらい…。最後の方はさすがに理由を聞きました。さすがにおかしいなと」
弁護人「それで初めて、過大なローンでマンションを購入したことを聞かされたのですね?」
友人の弁護士「はい」
弁護人「どのように聞かされましたか」

下山被告が落ち着きなく肩を揺すった。目は閉じたまま。またみけんにしわを寄せ、険しい表情で顔を上げた

友人の弁護士「予備校時代の友人3人で下山を呼び出しました。『理由を言え』と。それで聞きましたが、(ローンの)額が額でしたから、われわれではどうにもならんと。当時、健在だった大阪のお父さんに頼るしかない、と話しました。なんなら大阪まで、われわれも一緒に行ってもいいと」
弁護人「被告に会ったのは平成13年11月11日でしたか」
友人の弁護士「多分そのころです」
弁護人「手をさしのべたわけですが、被告は、その後どうしましたか」
友人の弁護士「次にみんなで会う日取りを決めていましたが、その前に下山から電話があって、『自分で父に話す』と言いました。だから、2度目に会うことはしませんでした」
弁護人「その後、(ローンの件を)どうなったか確認しましたか」
友人の弁護士「今思えばうかつだったが、しませんでした。(下山被告の)父が…規模は知らないが社長をやっていると聞いていたので、何とかなったのかなと…。確認しておくべきだったと後悔しています」

今回の事件と借金は直接の関連はないが、友人として親身にフォローすべきだったと考えているようだ

弁護人「今回の事件はどうやって知ったのですか」
友人の弁護士「寮友からの電話です。自分の携帯に、1人は宮崎、1人は横須賀から立て続けに電話がありました。『下山が逮捕された』と。友人であるわれわれも何とかしないと、と思い弁護人を引き受けました」
弁護人「当初は、下山被告が恋愛感情は否認しているという報道でしたね」
友人の弁護士「恋愛感情もすべて認めております。あの(下山被告の)陳述書は思い切って出したもの。反省していないと書けません。彼(下山被告)の今回の反省は確信しています」

【ストーカー判事初公判(6)】被害者とは「交際していた」…下山被告、心情を吐露(11:10~11:25)

証言席に座った下山被告の友人の男性弁護士は、今後、下山被告を友人として支えていくことを改めて表明した

友人の弁護士「私は司法試験予備校で講師をしているので、そこの紹介はできます」
弁護人「彼が法律の世界に携わることについて、あなたはどう思いますか」
友人の弁護士「せっかくこれまで蓄積した知識があるのだし、もう一度やるというならば挑戦してもらいたいと思います」

ここで弁護側の質問が終了し、友人の弁護士は退廷。続いて裁判長が「被告人、前へ」と告げると、下山被告は傍らの長いすから立ち上がり、証言台へ進み出て、両手を体の前で組み、まっすぐ裁判長の方を向いて立った。いよいよ被告人質問が始まる

弁護人「まず、本件についてどう考えていますか」
下山被告「反省しております」
弁護人「逮捕当初はどうでしたか」
下山被告「気持ちの整理がついてない分もあり、今ほどはっきりとは…」

落ち着いた口調で慎重に言葉を選びながら答えるが、声は小さく、傍聴席の物音にかき消されて語尾が聞き取れない

続いて、弁護人は逮捕当初の『恋愛目的ではなかった』という、下山被告の供述の意味について質問。ストーカー規制法違反罪は、恋愛感情やその他の好意感情などがなければ規制対象とならないため、下山被告に否認の意図があったのがどうかが注目されていた

弁護人「あなたの当初の供述、これは否認していたのですか」
下山被告「あえて否認するということではなかったが、自分自身の気持ちが良く見えていませんでした」
弁護人「あなたは、この件について考え続けた結果、どういう結論になりましたか」
下山被告「そこに至る動機は…。私自身が、自分の価値観を人に押しつける。それが、自分自身を満足させることにつながっていました」
弁護人「どのような気持ちだったのですか」
下山被告「被害者の方と交際を始めたときの気持ちを、多少引きずっていたと思います」

被害者である20代の裁判所職員の女性と「交際していた」という下山被告。弁護人は、当時の恋愛感情についてさらに突っ込んだ質問をする

弁護人「恋愛感情を自認するようになったのは、どうしてですか」
下山被告「当時の自分の気持ちを振り返ると、当時、被害者の方に対して恋愛感情を持っていたのは間違いないと(思う)」
弁護人「被害女性と個人的に交際があったのはいつからですか」
下山被告「昨年の4月です」

30歳近い年齢差がある2人の仲は、上司と部下の関係から“交際関係”にどのように変化したのか。弁護人は「(被害女性は)年齢的にも相当離れた方ですよね…」と遠慮がちに前置きしたうえで、交際に至る経緯について聞いた

下山被告「被害女性のプライバシーにかかわることが多いので…。私が(女性から)話を聞いたり、悩みを打ち明けられたりする中で…」
弁護人「被害女性には、あなた以外に交際相手がいました。その話を女性から聞いたときは、どう思いましたか」
下山被告「親にも、恋人にもいえないことを(女性から)相談される中で、新たな交際相手のことを聞きました。それは、あまり信頼のおける相手ではないと聞きました。詳しくは以前提出した陳述書に書いてあります」

女性のプライバシーを慮ってか、下山被告は「ライバル」と女性の関係について法廷で話すことを避けた

弁護人「どう思いましたか」
下山被告「それまで(新しい交際相手について)聞かされていた内容が内容だったので、『本当にそれでいいのだろうか』という気持ちがありました。他の男性ならばよいのですが…」
弁護人「それは被害女性を思う気持ちからですか。今現在は、どう思っていますか」
下山被告「自分自身の価値観を被害女性に押しつけることで、許されることではありません」

逮捕当初は、ストーカーメールを送った目的について「彼女のため。幸せになってほしかった」と話していたという下山被告だが、独善的な“暴走行為”であったことを、小さな声ではあるが認めた

弁護人「被害女性の交際相手に、嫉妬心を抱いたのではありませんか」
下山被告「そういう面もあったと思います」
弁護人「むしろそれが中心では」
下山被告「自分自身の価値観としては、新しい交際相手の行動があまりにも常軌を逸していると思いました。(ストーカーメールは)その価値観を押しつけようとした結果だと思います」
弁護人「被害女性が新しい交際相手と近づき、一方であなたから離れていくという焦りもあったのではないですか」
下山被告「今年3月で(甲府地裁都留支部から)転勤することが分かっており、これまでのようには(交流)できないと。そうなる前に、交際を始めた当時の、ある意味の良好な関係になれればと。そんな中で、自分の行動できる期間も限られていました」

転勤を前に、女性との関係に焦りを募らせていったという「揺れる男心」を訥々と語る下山被告の証言に、法廷には神妙な空気が流れるが、弁護人はさらに切り込んだ質問を続けた

弁護人「ストーカーメールを発信した今年2月19日ごろ、あなたは被害女性とは親しく付き合っていなかったのでは」
下山被告「転勤間際ということもあり、夜に行動する時間が限られ、去年の12月までのようなこと(交流)は、物理的にも時間的にもできませんでした。ただ、普通に話はしており、疎外感(を感じた)ということはありませんでした」
弁護人「被害女性から交際を断られたことはありますか」
下山被告「明確に、そのように言われたことはありません」
弁護人「あなたは、(女性と)そのような関係でもいいと思っていましたか」
下山被告「それはそれで、私としては充実する時間を過ごすことができたのでよかったです」
弁護人「転勤して以降は、被害女性とはどのような交際をしようと思っていましたか」
下山被告「転勤後の新しい仕事を考えると、時間的にも距離的にも(交際は)無理だろうと…」

「女性と会話するだけの関係でも充実していた」というが、それではなぜ下山被告はストーカー行為に及んだのか。ここで、「この質問には真摯(しんし)に答えてくださいね」と弁護人が念を押した

弁護人「なぜストーカーメールをしたのですか」
下山被告「自分自身の自己満足。自分が被害者に対して、何かできるという思い上がった考えがあった。恋愛感情に裏打ちされたものだとは思いますが。…そういう気持ちで、最後の一線を越えてしまいました」
弁護人「ストーカーメールを送っているときは、どういう思いでしたか」
下山被告「非常につらい思いでした。ストーカーメールについては被害者から相談を受けていましたが、そのときの被害者の反応、感情が手に取るように分かりましたから…。何となく『悪いことをしてるんだ。やめなければいけない』という気持ちはありました」

【ストーカー判事初公判(7)】「家族…全てをなくす状態になっている」(11:25~11:40)

下山被告は弁護側の被告人質問に正面を向き、手を組んで淡々と質問に答えていたが、裁判官の職務に話が及ぶと途切れ途切れになった

弁護人「ストーカーメールの送信をなぜやめられなかったのですか」
下山被告「その当時、自分自身に疑いがかけられており、やめることはとうてい私にはできませんでした。早い段階でやめたいというのが常にあったけれど、きっかけを何とか作り出さなければいけなかったんです」

下山被告はストーカーメールの送信を開始して約1カ月後の3月、大学時代の友人である警察幹部に、無言電話についてのみ捜査するように依頼した

弁護人「知り合いに頼んだんですか」
下山被告「大学時代の…(聞き取れず)警察庁の幹部に、『被害女性が無言電話で悩んでいる』と話しました」
弁護人「無言電話だけですか」
下山被告「いずれ被害女性にすべて話そうと思っていました。でも、女性は『メールを見せるのは絶対嫌だ』と。『ほかのメールも見られてしまうし、どんなことがあってもメールは見せたくありません』と言っていたので、無言電話だけ相談することになりました」
弁護人「女性にかかってきた無言電話は、かけていないのですか」
下山被告「一切関与しておりません」

下山被告ははっきりした口調で答えた

弁護人「(ストーカーメールについて)なぜ話そうと思ったんですか」
下山被告「『悪いことをしたので裁きを受けなければいけない』と思い、すべて話をしておこう、と思いました」

下山被告は4月になると、自ら警察や被害女性、裁判所に対してストーカーメールの発信が自分の仕業だったことを打ち明け、謝罪した。被告人質問で理由を聞かれると、「捜査に負担をかけたくなかった」と述べた

弁護人「女性への謝罪はしましたか」
下山被告「4月8日に会って話をして、『捕まりますよ』と言われましたが、覚悟はできています…(聞き取れず)。謝罪の手紙を2回書いています」
弁護人「弾劾裁判の結果を予想していますか」
下山被告「はい。事件に加えて部下の職員と不適切な関係にあったこともあるし、裁判官の品位を汚したことにもなります」
弁護人「社会からどう見られているか分かりますか」
下山被告「私は、現職の裁判官が行ったケースで、とんでもないと。非常に司法に不安を与えてしまったと思います」
弁護人「家族はどういう状況にありますか」
下山被告「すべてをなくすような状態になっています」
弁護人「お父さんの葬儀には参列できましたか」
下山被告「身柄を拘束されていたので、参列できませんでした」
弁護人「桶川の事件では非難を受けていましたね?」

この質問は、下山被告が埼玉・桶川のストーカー殺人事件を審理中の平成13年、「裁判官が寝ている」と傍聴人から指摘を受け、配置転換されたことを指しているようだ

下山被告「僕自身、睡眠障害という病気になっておりまして。大変なご迷惑をおかけしまして…」
弁護人「今後の生活はどうするんですか」
下山被告「私自身は『法律の世界にとまっているのはどうかなあ』と。許されないのではないかと考えています。自分の大学時代にやった仕事、経験したことを含めて、いくつかの仕事をできたらと思います」
弁護人「最後に、社会に対してはどうですか」
下山被告「まず、被害女性に対して本当に申し訳ないことをしました。私に対して信頼していただいてどんなことでも話してくれていたのに。裁判所や裁判官、刑事…(聞き取れず)に対する不信感を国民の皆さんに感じさせてしまいました。私を育ててくれた裁判所に対しても、申し訳ないことをしたと思います」

【ストーカー判事初公判(8)】プライドか、戦術か頑なに「女性は拒否的態度でなかった」(11:40~11:50)

被告人質問は検察側に移った。まず、検察官は証拠隠滅の意図を尋ねる。下山被告は目を閉じ、ひとつひとつ思いだすように答える

検察官「犯行の途中にフリーメールのアドレスをエキサイトからヤフーにかえましたね。これはなぜですか」
下山被告「エキサイトよりもヤフーのほうが使い勝手がいいからです」
検察官「エキサイトばかりを使っていると犯行がばれるからでは?」
下山被告「そういったことではありません」
検察官「3月にネットカフェの△△クラブ(実名)の申込書を回収しましたよね?」
下山被告「転勤の内示を受けたので、会員の申し込みをしていたものを回収しました」
検察官「ビジネスホテルなども回収したのですか」
下山被告「○○ホテル(実名)は会員ではありませんでした」
検察官「△△クラブは、(回収したのは)犯行をばれないようにするためではないですか」
下山被告「そうではありません」

検察官は続いて、ストーカーメールを送る動機にもつながった下山被告と被害女性との間の「距離感」について質していく

検察官「ストーカーメールを送った時点では、被害者から拒否的な態度を取られていると感じていましたか」
下山被告「拒否的な態度をされていたという感じはありませんでした」
検察官「どうして感じなかったんですか」
下山被告「被害者と関係を持ったあと、去年12月に(関係を)解消しましたが、ドライブしたり食事をしたりすることに変化はありませんでした。明確に『お付き合いをしません』といわれたことはありませんでした」
検察官「では、なぜメールを送ったのですか」
下山被告「当時は女性の生活状況に不安をもっていました。自分の価値観を押しつけてしまいました…」
検察官「拒否的態度の女性を振り向かせるためではなかったんですか」
下山被告「拒否的態度は、メールのやりとりを見てもらえば分かりますが、(被害者の女性からは)示されていません」

頑なに拒否的態度は取られていなかったと主張する下山被告。男としてのプライドなのか法廷戦術なのか。それとも、本当に女性から拒否的態度を取られたと感じていないのか…

検察官「今でもそう思っているのですか」
下山被告「(女性の)本心は分かりませんが、客観的には伝わっていませんでした」
検察官「すると、女性の供述調書はウソだといいたのですか」
下山被告「それは気持ちだから分かりませんが、客観的事実とは違っています」
検察官「女性のメールには、(下山被告に)拒否的な態度をとっているものがありますよね?」
下山被告「そう言われれば、考えようによっては拒否的かとも思いますが、当時は思っていませんでした」

続いて検察官は、被害女性と交際相手の男性について尋ねる

検察官「被害者は今でもその男性と交際しているのですか」
下山被告「は?」

質問をよく聞いていなかったのか、大きな声で尋ねる

検察官「男性とは今も交際しているのですか」
下山被告「は?はい?」

目を大きく見開いて大声で尋ね返す。検察官が3度目の質問でようやく理解し、下山被告は答える

下山被告「と、聞いています」
検察官「(交際について)どう評価していますか」
下山被告「それは個人のことですから…」

続いて検察官は、被害女性が上司でもあった下山被告にストーカーメールの相談をした際のことについて質問をする

検察官「2月24日ごろ、あなたに女性が相談に行き、あなたは『そんなのは許せない』と言ってますよね?」
下山被告「言っていません」
検察官「これは女性のウソでしょうか」
下山被告「そうとは言っていません」
検察官「ではどうと?」
下山被告「『変なメールだな』と…」
検察官「部下が相談にきて『変なメール』で終わりですか?『許せない』と言っていませんか」
下山被告「『ひどいメールだな』とは言いました」

【ストーカー判事初公判(9)】検察「無理なローン、単身赴任が不倫の背景に」(11:50~12:05)

検察官による被告人質問は、最終盤にさしかかった。下山被告は小声だが、沈黙することなく、質問にしっかりと答えている。被害者のことを裁判でよく使われる「被害女性」と呼ぶなど、さすがに法廷には慣れた様子だが、検察官の追及は厳しい

検察官「被害者からの相談をうれしいと思ったことはなかったのですか」
下山被告「それはないです」
検察官「3月15日、ストーカー犯人にあてて、ストーカー行為にあたると警告のメールを支部裁判官の名前で送っていますよね。なぜですか」
下山被告「ちょうど土日にかかる時(15日が土曜日)で、18日(火曜日)までの間に何かされるのではないかと被害女性が私に言ったので、何か起きないようにするにはどうすればいいか2人で話し合い、警告すれば止められるのではないかという話の流れになりました」
検察官「でも犯人はあなただったんでしょ?」
下山被告「はい」
検察官「私です、と打ち明ければ良かったのでは?」
下山被告「その後、今日も出ていないメールで言いました」
検察官「なぜ(自分だと)告白しなかったのですか」
下山被告「先ほど述べた通りです」
検察官「もう一度言ってください」

検察官は、しつこく聞き直す。下山被告は、観念したように小声で答えた

下山被告「勇気がなかったから…」
検察官「自分の力を示す気では?あえて芝居をしたのでは?」
下山被告「違います」
検察官「反省しているんですね?」
下山被告「はい」
検察官「終わります」

被告人質問が終わった。下山被告はしっかりとした足取りで、弁護人側にある席に戻った。しかし、緊張していたのだろうか。いすに腰掛けると、大きく息を吐いて天を仰いだ。続いて、検察官の論告の読み上げが始まった

検察官「本件犯行は、取り調べ済みの証拠で証明十分である。次に情状ですが、第三者を装って1カ月にわたって、監視していると思われる内容を送り、困惑する被害者から相談を持ちかけられたのをいいことに、親身に応えるかのように装い、演技までして被害者の心情をもてあそんだ。被害者が厳罰を求めるのは当然だ」
 「恋愛感情を充足させる目的があったと評価されることに意義はない、と犯行の認め方も消極的。ストーカーにありがちな、相手の心情に無頓着な人格の表れで、被告による犯行の根深さは明らかだ。司法制度改革の流れの中、現職の裁判官によるストーカー行為という犯罪が社会に与えた衝撃は大きく、司法制度に対する国民の信頼が損ねられ、厳罰に処す必要がある。懲役6月に処するを相当とする」

求刑が出された。懲役6月は、被害者の告訴をもとにストーカー規制法違反罪で起訴されるケースではもっとも重い量刑となる。しかし下山被告は覚悟していたのか、その表情に変化はない。続いて弁護人が立ち上がり、最終弁論を読み上げ始めた

弁護人「下山被告は大きな影響を認識しつつ、事実を認め、反省している。裁判官としての最後の責任を果たすべく、訴追に素直に認めている。執行猶予付き判決が相当と考える」
 「今回の事件の背景にはまず、経済的破綻(はたん)があった。下山被告は東京・目白に高級マンションを購入し、当初は賃借人がいたが、いなくなり、ローンの支払いに窮するようになった。税金の差し押さえを受け、実母、実弟の援助を受けたが、平成19年6月には競売となり売却された。本人の見通しの甘さがあったとはいえ、下山被告の心には虚脱感があった。そのころ、被害者とドライブや飲食を重ねるようになった」

弁護人は、苦しい経済的事情が、下山被告が被害者に恋愛感情を抱くようになったきっかけになったと主張した。さらに山梨での単身赴任がこの感情を後押ししたと言いたいようだ

弁護人「妻は都内で教員をしており、下山被告は単身赴任だった。宇都宮地裁足利支部への転勤が伝えられ、これも単身赴任を求めるものだった。55歳という年齢を考えると、定年間近の長期間を単身赴任しなければならず、下山被告は『(異動は)1日考えさせてほしい』と返答を留保したくらいだ」
 「下山被告は被害者と親しくなった後も、自分の存在が負担にならないように考えていた。11月に送ったこんなメールがある。『ひょっとするとVさんをずいぶん束縛しちゃってるのかなと心配です。言ってくれれば品行方正なパパに戻ります』。その後、被害者はある男性と付き合うことになり、下山被告は男性としての立場から、父親の立場になることになった」

パパの立場でいようと決心したという下山被告だが、下山被告と距離を置こうとした女性の態度が許せなかったようだ

弁護人「下山被告は(被害者と男性を)別れさせようとメールをしたが、相手の男性と直接話すことはやめてくれと女性から言われた。女性が距離を置き始めたことは、名誉ある撤退を望んでいた下山被告のプライドを傷つけた。今年2月、異動までの日数が少なくなり、下山被告は被害者との良好な関係を取り戻したいと考えた」

弁護人は、異動を前にあせる気持ちが、下山被告を犯行に駆り立てたと指摘した。あらかじめ内容を伝えられているのか、下山被告はメモを取ることもなく、黙って聞いている

【ストーカー判事初公判(10)完】メールやめるタイミング逸し、焦った(12:05~12:20)

現職の裁判官がなぜストーカーという犯罪を犯したのか。最終弁論で弁護人は、罪になるとわかっていながら身動きが取れなくなっていった下山被告の様子を明らかにしていく

 「被害者がストーカーメールを相談してきたことは、下山被告にとってプライドをくすぐるもので、メールをやめることができなくなった。それが犯罪に該当することがわかっていて、いつやめるか悩んでいた。被害者はストーカーメールを相談しつつも発信者ではないかと疑い、直接、下山被告に尋ねた。下山被告は今やめれば自分だとわかってしまうとやめるタイミングを失い、焦りの中で身動きが取れなくなった」
 「頼れる支部長でありたいとの思いから、警告メールを送り、無言電話を警察に相談するよう言うなど、『(犯人は)怖じ気づいてやめた』と言えるようにした。そして、終わらせる宣言とも取れる最後のメールを送った。この時点でメールを送り続けるつもりはなかった」
 「下山被告がストーカー規制法に基づく警告を受けなかったのは、今後、ストーカーメールを送る危険がないと思われたから。自らの意志でストーカーメールをやめたのも事実だ。相談に乗って味方を装ったことで、被害者が味わった人間不信の思いは察するに余りあるが、自らメールを終息させ、無言電話は関知していない」

弁護人はさらに、被害者が県警に告訴する前に、下山被告が自分の犯行であると打ち明けた行為が自首に当たると主張した

 「告訴前の4月8日には被害者に犯行を告白し、謝罪した。同日、県警本部の担当にも打ち明けようと電話をしたが、不在。翌日、『週末に時間を取ってくれないか』と言ったが連絡が来ず、翌々日に再度電話したが事情聴取の申し出は断られた。被告は当初よりメールを発信した事実を認めていて、これは自首に当たる。被害者に『つかまりますよ?』と言われたときも、『覚悟している』と答えている」

逮捕されてから、「恋愛感情ではなかった」と否認していたと伝えられた下山被告だが、弁護人は取り調べの中で、徐々に下山被告が自分の気持ちに向き合うようになったと主張した

 「恋愛感情についても、当初は否定していたが、拘束中に弁護人との面会を重ね、自分の生きざまが問われていると言われ、被害者への恋愛感情を認め、率直に反省している。また、メールの送信場所なども、自発的に申告している」

弁護人は最後に、下山被告が裁判官を辞める意向でいることを明らかにし、反省の態度を前面に出した

 「裁判官の職についても、4月10日に宇都宮地裁所長に、5月に東京高裁事務局長に口頭で辞職の意を伝えている。被害者にも、告訴前に自らのストーカー行為を伝え謝罪しているほか、告訴後は弁護人を介し謝罪文を渡し、再三示談の申し入れをしている。実弟や妻も謝罪の手紙を出しており、示談の準備を整えている。かつての勤務地、都留支部にも被害者を気づかってほしいと手紙を送っている。約2カ月、身柄拘束され、刑罰を事実上受けている」
 「下山被告は努力家で、困っている人を助けたいと裁判官になった。裁判中の居眠りも、睡眠障害という病気が原因だ。以上のように、下山被告は約2カ月の身柄拘束で、形だけのプライドを捨て、反省を深めた。示談は成立していないとはいえ、慰謝に応じる姿勢はあり、厳しい社会的制裁を受けており、弾劾裁判も控えている。執行猶予付き判決が相当と考える」

弁護人が読み上げを終えると、渡辺康裁判長が下山被告に「最後に何か言いたいことはないですか」と声を掛けた。下山被告は立ち上がり、証言台でかつて自分が座っていた席をまっすぐ見つめ、反省の気持ちを口にした

「被害者に申し訳ないことをしました。また司法に対する国民の信頼を損ね、私を育ててくれた裁判所を裏切り、申し訳ありませんでした。以上です」

抑揚のない小さな声。法の番人は、自ら犯した罪を認め、謝罪した。審理は初公判のこの日結審した。判決公判は8月8日午前10時に開廷する

初公判を終えた下山被告は、午後1時前に甲府地裁から出ると、報道陣に囲まれ、もみくちゃにされた。うつむき加減で口を固く閉ざし、「自分が裁かれる立場になったことをどう思うか」などの報道陣の問いかけには一切答えず、弁護人が用意した車の後部座席に乗り込むと、乱暴にドアを閉めた

7月 25, 2008 at 09:01 午後 事件と裁判 |

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■【ストーカー判事初公判(10)完】メールやめるタイミング逸しあせった-「身の丈」を知り自らの「序列」の位置づけを知らない人が増えてきた?

こんにちは。私は、このバカ判事の事例も最近頻繁におこる「通り魔事件」の犯人にしても、共通するものがあると思います。それは自らの「身の丈」を知り、自分が個々の組織における「序列」の中でどの位置に属しているのか、認識できないということです。確かに現在の日本では、規範などが緩んできています。しかし、どんな組織にも「序列」はあります。序列を正しく認識するには自らの「身の丈」をある程度測れなければできません。こうしたことができない人が増えていると思います。私は「ゆとりの教育」などより、こうした「身の丈」を知る術を教え込んでいくことの法が余程重要なことだと思います。ここには、長くコメントできないので、詳細は是非私のブログをご覧ください。

投稿: yutakarlson | 2008/07/26 10:38:52

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