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2008.05.09

裁判員制度・あと1年・サンケイ新聞の記事

サンケイ新聞の連載企画【あと1年で裁判員】が完結したので資料としてまとめておきます。

以上の5本の記事で構成されていますが、一本ずつの文章が長く例えば1番目の記事は1600字もあります。
では、一気に並べてみます。

【あと1年で裁判員(1)】弁護士反発 模擬裁判の参加者は「で、何がよくなるの?」…浮かび上がる問題点

弁護士の反発あらわに…日弁連会長選挙戦“異変”

今年2月に実施された日本弁護士連合会(日弁連)の会長選。弁護士の“ボス”を決める2年に1度の選挙だが、今年は法曹関係者に激震が走った。

裁判員制度や弁護士増員など一連の司法制度改革への「反対」を訴えた高山俊吉氏が7049票を獲得、9406票で当選した宮崎誠氏に迫ったのだ。高山氏は平成18年の選挙では3698票にとどまっており、2倍近く票を伸ばしたことになる。

高山氏は元青年法律家協会(青法協)議長で、法曹界では「人権派」として知られる。これまで日弁連会長選に4回出馬しているが、過去3回の獲得票は3000~4000票にとどまっていた。今回は司法制度改革への批判票がどっと流れ込んだとみられる。

高山氏の選挙責任者を務めた武内更一弁護士は「予想された結果」と言う。「裁判員制度について全国の弁護士に無記名投票をさせたら、反対が圧倒的になるだろう。ただ、日弁連が裁判員制度を推進しているため、表立って反対できないだけですよ」

4月18日。東京・霞が関の弁護士会館で開かれた集会に、高山氏の姿があった。弁護士や市民を前に「裁判員制度は必ずつぶれる」とさけぶと、拍手がわき起こった。

日弁連の新会長になった宮崎氏は、制度に対する戸惑いが弁護士にあることを率直に認める。

ただ、「刑事裁判を改革しなければならないという弁護士も多い。これから1年で、全力を挙げて弁護士に理解を求める」と話す。

裁判員裁判で審理迅速化…だが「迅速な審理はどこかでしわ寄せが来る」

「裁判員制度の問題は審理が粗雑になること、そして、国民が多大な迷惑を受けるということだ」

元裁判官の西野喜一・新潟大学大学院教授は強調する。2月に裁判員制度実施延期の決議をした新潟県弁護士会も、この点を理由に挙げる。

「事件の7割は3日以内で終わる」

最高裁はそう説明しているが、西野教授は「迅速な審理はどこかにしわ寄せがくる」として、こう続ける。

「日本人は刑事裁判に『真実の解明』を求めている。陪審制度の米国のように、『裁判に勝つも負けるも弁護士の腕』というようなコンセンサスは日本にはない。被告、被害者双方に納得のいかない裁判になる」

また、市民からも疑問の声が出ている。3月に東京地裁の模擬裁判に裁判員役として参加した女性は「とても疲れた」と話し、素朴な疑問を口にした。

「制度を導入して、一体、何がよくなるの?」

不安は「責任の重さ」…どう払拭させるか?

最高裁が4月に発表した「裁判員制度に関する意識調査」では、4割弱が「義務でも参加したくない」と回答している。

参加に対する心配、支障で最も多かったのは、仕事や育児、介護への支障ではなく、「被告の運命が決まるので責任を重く感じる」だった。

この調査では制度への理解が深まるほど不安が解消されていく傾向が現れており、最高裁は広報活動に一層の努力をするとしている。

しかし、裁判員になれば、被告の有罪・無罪だけでなく、時には死刑にするかどうかまで判断しなければならない。

裁判員制度によって、国民はこれだけの負担に見合う“メリット”を受けられるのだろうか。

あるベテラン裁判官は「刑事裁判にかかわることで、社会の根幹を支える司法に対する市民の目が変わる。『裁判はこれでいいのか』という意識を一人ひとりが持つようになるだろう」と説明する。

一方で、裁判員制度によって裁判の真相解明機能がある程度低下する可能性も認めた上で、こう話すのだ。

「このやり方がベストなのかは分からない」

裁判員制度のスタート(来年5月21日施行)まで、あと約1年に迫った。20歳以上の国民のほとんどが、裁判員に選ばれる可能性がある。法曹三者による準備は進んでいるが、反対の声も依然根強い。この制度はどんな課題を抱え、どうすればそれを克服できるのか、検証する。

=(2)へ続く

【あと1年で裁判員(2)】「審理迅速化」の犠牲も…「精密司法」との決別

裁判員制度のスタートで消える従来の「精密司法」

「従来の法廷は記録をやり取りする場だった。その記録を眺め、判決では検察官が主張していない点まで言及する。判決を書くのに2、3カ月かかった」

あるベテラン裁判官は、これまでの刑事裁判をそう述懐する。

担当したある事件は判決までに約5年かかったという。警察、検察は犯行前の被告の行動、犯行後の被告の足取りまでしらみつぶしに調べた。その結果、事件の記録はロッカー数段分にも上った。

審理中はそのことを不思議には思わず、判決文を書く段になって初めて気が付いた。

「必要な部分は限られている。5年の審理のうち、どれだけ必要だったかと考えると、1年分ぐらいだったかな」

「精密司法」-。

起訴事実以外の被告の行動など事件の細部にまでこだわり、精緻(せいち)な立証を尽くす従来の刑事裁判の手法を、法曹関係者はこう呼ぶ。

しかし、それは時には重箱の隅をつつくような反証を招き、いたずらに審理に時間をかけるというマイナス面もあった。

その精密司法は、裁判員制度のスタートとともに過去のものとなる。裁判員となる一般国民の負担を減らすため、迅速な審理に重点が置かれるからだ。

初公判前には証拠を整理して争点を絞り込む公判前整理手続きが行われ、審理は従来より格段にスリム化される。

公判前整理手続きの重視…初公判前に「判断前提」が創られてしまう危険性も

今年3月、裁判員裁判をにらんで初公判から判決までを3日間の集中審理で行う試みが、実際の強盗致傷事件を対象に東京地裁で開かれた。

まず、公判前整理手続きで検察側の立証事実を5点に絞り込んだ。

従来なら判決までに10回程度の期日が必要だった事件は3日で終了、判決言い渡しはわずか10分程度で済んだ。想定通りのスピード審理だ。

だが、弁護人は集中審理による負担増を表明、検察側も公判前整理手続きでの争点の絞り込みに調整が必要との認識を示し、一定の課題も残した。

「約9割の事件が5日以内に終了すると見込まれる」

Up

最高裁がパンフレットなどでうたう裁判員裁判の迅速化。法曹関係者の中には、その迅速化の流れを懸念する見方がある。

「裁判員に負担をかけないということを重視するあまり、裁判官が公判前整理手続きで自分たちの視点で争点を絞り込み、公判の設計図を作る危険性が考えられる。そうなると、『有罪か、無罪か』の前提が、初公判前にできてしまうことになる」

そう指摘するのは、甲南大法科大学院の渡辺修教授(刑事訴訟法)だ。

日本弁護士連合会(日弁連)裁判員制度実施本部委員を務める岡慎一弁護士も「裁判所は短い時間で公判を終えると強調しているが、納得するまで話し合う必要のある評議もある。裁判員の負担軽減を重視しすぎて、裁判官が評議をリードして裁判所の判断に従わせる恐れもある」と指摘する。

ジレンマ…「スピードと精密性は両立しない」

公判がスピード化することで、丁寧な証拠調べができなくなるのではないか-との懸念もある。

元最高検検事で白鴎大法科大学院の土本武司院長(刑事法)は「迅速化しようとすると、ある程度精密性は犠牲になる。迅速性と精密性はどうしても衝突する傾向がある」と、双方の両立を課題として挙げる。

これに対し、ある検察幹部は「精密に捜査を行って慎重に起訴し、精密に審理して判決ということは裁判員裁判になっても変わらない」と強調する。

迅速化と精密性。双方の要請を両立できるのか。冒頭の裁判官はこう見る。

「公判前整理手続きで何が必要かをきちんと議論することで可能だ。検察官、弁護士の当事者の力量が問われることになるだろう」

=(3)へ続く

【あと1年で裁判員(3)】「守秘義務」押し付けるだけでは無理 足りない「ケア」

なぜ裁判員に「守秘義務」?…制度を機能させるための“担保”

妻「今日の評議、どうだった?」

夫「実は裁判長がね…。おっと、これはしゃべっちゃいけなかったんだ…」

1年後には、こんな会話が家庭で繰り広げられるかもしれない。

裁判員法は裁判員や、過去に裁判員を務めた人に守秘義務を課している。「評議の秘密」や、「裁判員として職務上知り得た秘密」は、生涯守らなければならないのだ=表を参照。

Up1

外部に漏らした場合には、懲役刑を含む罰則規定もある。

妻や夫、子供に話すのも「守秘義務の意義からすれば差し控えてもらいたい」というのが最高裁の見解だ。

なぜ、裁判員に守秘義務が課されているだろうのか。

最高裁は「評議でだれが何を言ったかが明らかにされれば、批判や報復を恐れて自由に発言ができなくなる」という点を挙げる。また、被害者などのプライバシーは当然守らなければならない。

このため守秘義務は、裁判員裁判を適切に進めるための重要な担保となる。

そうは言っても…人間は喋りたがる生き物

ただ、広く知られる「王様の耳はロバの耳」の話のように、秘密を握ると他人に話したくなるのは古今共通の人情というもの。

最高裁が4月に公表した「裁判員制度に関する意識調査」でも、裁判員として参加する場合の心配として「秘密を守り通す自信がない」を挙げた人は26・1%にも上った。

「秘密を生涯守るのは、そう簡単なことではない。守秘義務は裁判員経験者にとって大きなストレスになることは間違いない」

同志社大学文学部の余語(よご)真夫教授(社会心理学)は、そう指摘する。

余語教授らのグループは平成10年に、秘密の保持に関する興味深い実験を行っている。

118人の学生を対象に、恐怖心や嫌悪感を催すホラー映画のワンシーンを6分間見せた。このうち約半数の62人には「実験内容が漏れると結果に影響してしまうので、ここで見た内容や感想は今後1週間秘密にしておくこと」と指示、誓約書への署名も求めた。

1週間後、この誓約を破って実験の内容や感想を他の人に話してしまった学生は、33人(約53・2%)に上った。実に半数以上もの学生が、秘密を守れなかったのである。

“喋る”は本能…守秘義務を機能させるための制度的ケアが必要

余語教授は言う。

「人は、自分の経験や感情、考えなどを他者に開示する『自己開示』の欲求を内在的に持っている」

特に、感情経験に関する開示衝動は強く、喜怒哀楽を他者に語って共有しようという傾向があることが、近年の研究で分かってきている。

裁判員裁判で扱うのは殺人や傷害致死などの凶悪事件であるだけに、悲しみ、恐怖などの強い感情を喚起させる。悲惨な事件をめぐる評議での白熱した議論が、裁判員の自己開示衝動を刺激するのは明らかだ。

「評議で議論に負け、消化できない感情を抱えている場合なども人に話してしまうこともありうる」(余語教授)という。飲酒による影響も無視できない。

ただ、秘密は限定された他者との間で共有することによって保持することが容易になる。

「裁判員経験者が心の中を吐き出せるような相談窓口を開設するなど、生涯にわたってきめ細かいアフターケアをしていく仕組みが必要だ」

余語教授はそう提言する。

一方で、模擬裁判で裁判員役を経験した男性会社員(38)は複雑な心情を吐露する。「口が重い方ではないので、家族や友人には話してしまうかもしれない。しかし、被告のその後の人生を考えれば、そう軽く話せることではない…」

守秘義務を抱える裁判員経験者を、いかにケアしていくか-。その社会的議論はまだ、明らかに足りない。

【あと1年で裁判員(4)】仕事、通勤、育児…まだ整わぬ「負担回避支援策」

「裁判で仕事休めば、他の人の迷惑になる」

3月上旬に3日間、東京地裁で開かれた模擬裁判。

裁判員役として参加していた阿部美浦(みほ)さん(39)はこの間、夕方に模擬裁判が終わるといったん帰宅し、家事をこなした。その後、勤務先に向かい、連日、夜の10時から朝の6時まで夜勤をこなした。そして、午前9時過ぎには東京地裁に姿を見せる。

ほとんど睡眠の取れない3日間だった。

阿部さんは裁判所と職場を往復した3日間をこう振り返った。

「裁判に参加するために休めば、その間も自分の分まで仕事をする人がいる。会社には裁判員制度に向けた休暇制度がなく、有給の申請はできなかった」

中小企業の環境整備は進まず…

裁判員に選任されて裁判所に呼び出され、仕事を休まざるを得なくなった労働者に対しては、企業は解雇や降格などの不利益な扱いをしてはならない-と裁判員法は定めている。

トヨタ自動車やマンダムなどが裁判員休暇制度を設けるなど、大企業では裁判員制度に対応する動きが出てきている。

一方で、中小企業での環境整備は進んでいないのが現状だ。

東京商工会議所が中小企業を対象にした調査によると、裁判員休暇制度の導入を検討していない企業は9割に上った。

こうした企業は有給などで対応するとしているというが、同会議所の担当者は「会社や同僚への負担を思って、休日出勤をしたり残業をしたりすることで、仕事の埋め合わせをする人が多いのではないか。裁判のために休むとしても、有給を取らない場合が出てくる可能性もある」と打ち明ける。

「裁判員がスムーズに休暇を取れるよう、環境整備をしてほしい」

阿部さんは模擬裁判の最後、裁判所に対してこう要望した。

法務省は「裁判員制度は国民に行き過ぎた負担を強いるものではない」としているが、参加への環境づくりは、各企業の理解に頼っているのが現状だ。

裁判員に選任された際の負担は、何も自身の本業への影響に限ったものではない。

離島など、裁判所までの交通機関が限られた遠隔地の居住者が選任された場合、遠隔地居住というだけでは辞退事由に当たらない。日帰りができないため、泊まりがけで裁判に参加せざるを得なくなるケースも考えられる。

宿泊が必要な裁判員に対しては、地域によって8700円か7800円の宿泊費が裁判所から日当とは別に支給される。

まだまだ“不親切”なバックアップ策…法務省も「やってみなければ分からない」

とはいえ、裁判所が宿泊施設の予約や斡旋を行うわけではなく、参加者本人が宿を押さえなければならない。

「呼び出しから裁判当日までは時間もある。宿を探す時間は十分あるのでは」

法務省裁判員制度啓発推進室はそう言うにとどまっている。

また、子育て中の保護者が選任された場合、参加している間は子どもを保育施設に預けざるを得ない。厚生労働省は3月、各地の裁判所や自治体に一時保育制度を活用できるよう整備を求める通知を出した。

一時保育は、保護者の急病の際などに、保育園に通っていない子どもを預かる制度だ。

育児中の保護者が裁判員に選ばれた際、裁判所を通じて各自治体が保育施設を紹介することになるが、費用は自己負担となる。厚労省では「1日の一時保育の相場は2000~3000円。日当から十分にまかなえる」としている。

負担を強いられる国民に対し、現在のところバックアップ体勢が十分とは言い難い。

ある法務省幹部は本音を打ち明けた。

「実際にどこまで環境を整えればスムーズにいくのかは、スタートしなければ分からない。制度が始まってから、いろいろと調整すべき点が出てくるだろう」

=(5)へ続く

【あと1年で裁判員(5)完】誰だって「死刑」選ぶのは恐い 人を裁く資格と覚悟は

プロ裁判官でさえ「死刑」に逡巡する

「何かにすがらないと、プレッシャーに負けそうだった--」

大東文化大法科大学院の米沢敏雄教授(72)は昭和52年、宮崎地裁の裁判長として初めて死刑判決を言い渡したときの記憶をたどった。

被告の男は、貸金業の女性を殺害してゴミ捨て場に遺棄したとして、死刑を求刑された。事実認定は揺らがない。あとは量刑だけだった。

死刑か、無期懲役か。

米沢氏ら裁判官は死刑を選択した。

判決言い渡しの数日前、大分・臼杵(うすき)の石仏の前に米沢氏らの姿があった。米沢氏は切り立った崖(がけ)に彫り出された石仏を眺めながら、何度も自問した。

《死刑は正しい選択だっただろうか》

米沢教授は振り返る。

「人の命を奪った被告にもまた命がある。心に迷いがあったのか、自然と手を合わせていた。無心に拝むと、心がすーっと晴れていき、判決の日には迷いは吹っ切れていた」

模擬裁判参加者はいずれも「量刑判断」に悩み

来年5月から始まる裁判員制度で、私たちは初めて「人を裁く」という現実に直面する。

最高裁が今年4月に発表した意識調査では「被告の運命が決まるので責任を重く感じる」との回答が75・5%に上った。

「死刑判決にかかわるのは正直怖い。その人の人生を決めるという責任は重い。避けられるならば、避けたい」

今年4月、東京地裁で開かれた模擬裁判に参加した男性会社員(38)は話す。

昨年10月、別の模擬裁判に参加した会社員、鈴木山人さん(43)も量刑に苦しんだ1人だ。こう語る。

「裁判官と違い、量刑を決める物差しがない分、自分の価値観のみで短時間で決めてしまうのは抵抗があった。ややもすると『目には目を』の応報感情に流されてしまう」

「人を裁くこと」是認できる“理由”とは…

「1人の生命は全地球よりも重い」

昭和23年の最高裁判決の一文である。米沢氏の裁判官人生はこの言葉に導かれてきた。地裁、高裁を通じて死刑判決にも3度関与した。しかし、その思いにブレはない。事実認定や量刑に誤りはなかったと確信している。

ある日新聞で、かつて自分が死刑を言い渡した被告に刑が執行されたと知った。

言いようもないやるせなさを感じた。

「判断は間違っていない。だが気分のいいものではない」

死刑判決の宣告で、緊張の余りに声が出なくなってしまった裁判官がいた。その緊張感に耐えられないという理由で民事裁判の道を選んだ裁判官もいた。

退官後、米沢氏の元に1通の手紙が届いた。差出人は弁護士出身の最高裁判事。

法科大学院のテキストへの感想とともに俳句がつづられていた。死刑判決前の重い気持ちを詠んだ句だった。

極刑を言い渡したる日の氷雨かな

「職業裁判官としてどれだけ経験を積んでも、人を裁くことの重みは変わらない。悩み苦しむのは当たり前。ただ、だれもがそれだけの重みを感じるからこそ、被告の人生に真剣に向かい合える」

私たちに人を裁く資格があるだろうか。その重みを背負うだけの覚悟があるだろうか。

最高裁判事を務めた斎藤朔郎氏(故人)は、かつて法律雑誌に寄稿した論文にこう記した。

「人が人を裁くことを是認できるのは、裁く人が裁かれる人よりも上にあるからではない。それは、裁く人が法と証拠という客観的なものに支配されているからこそ、他人を裁くことが許されるのである」

=おわり

この連載は白浜正三、半田泰、福田哲士、森本昌彦、大泉晋之助が担当しました。

大変な大作で、このように多方面からの記事を長文で発表しているサンケイ新聞社の姿勢には、敬意を表するものです。

さて、この記事全体に問題はないか?と考えてみると、裁判員制度(裁判員裁判)の周囲をぐるぐる回っているような印象を受けます。

例えば、裁判員になると仕事を休むといった面での負担が大変だ(4回目)、との記事がありますが日本では一般市民に公的な義務が課せられるのは、選挙に一番に行った人が投票箱を確認することぐらいでしょうか?
まぁあまり無いわけです。だから裁判員になったときの負担は飛び抜けて大変ですが、負担が大変という事実への対抗軸は、裁判員制度の必要性でありましょう。

裁判員制度が必要 vs 裁判員の負担が大変、と見るべきだろうと思うのです。
しかし、この記事では裁判員制度の必要性、元をたどると「なぜ裁判員制度が決められたのか?」という点について言及していません。
むしろ1番では裁判員制度批判について色々な方面からの意見を掲載しています。

サンケイ新聞社が裁判員制度反対の立場を取るのであれば、このような回りくどい反対の根拠となるだろう事実の列挙という手段を執ることもないと考えるのです。
5番目では、結局のところ法務省や裁判所も含めて「問題の要素はあるだろうが、やってみないとわからないし、改善の余地はあるだろう」というところに納めています。
これは、サンケイ新聞社としても「現時点で裁判員制度に反対との意見表明はしない」という風に受け取りました。

結局、問題はたくさんあるよ。と指摘する記事であっても、これだけの大作になるというのはよく分かるし、その意味ではこの記事には一定以上の評価を与えるべきだと思うのですが、読者にとってはもっと踏み込んだ記事を期待するのではないのか?と思うところもあります。
特にサブタイトルが「あと1年」なのですから。

5月 9, 2008 at 01:20 午前 裁判員裁判 |

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