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2008.04.03

ビーモン裁判・判決

サンケイ新聞より「次男せっかん死事件で格闘技講師夫婦に無罪

東京都品川区の自宅で平成6年(1994年)、次男=当時(4)=を木の棒などで殴って死亡させたとして、傷害致死罪に問われた米国人の格闘技講師、ビーモン・テリー・イ(52)と妻のカーチス・ジュエル(48)両被告の判決公判が3日、東京地裁で開かれた。

波床昌則裁判長は「死因となった暴行を両被告が行ったと判断するには合理的な疑いが残る」として両被告に無罪を言い渡した。

検察側はビーモン被告に懲役5年、カーチス被告に懲役4年を求刑していた。

波床裁判長は、死因を外傷性ショックによるものと認定したが、「被告の自宅に出入りしていた格闘技の生徒との練習で、次男が致命傷を負ったことも考えられる」などと、第三者による暴行の可能性を指摘。

また、「巨漢のビーモン被告が暴行を加えたとすれば、次男の骨に異常が見られないのは不自然。母親がわが子を鈍器でたたいたり、踏みつけることも想定し難い」と述べた。

両被告は6年10月、自宅で次男を木の棒で何度も殴るなどして死亡させたとして、12年7月に起訴された。公判で両被告は無罪を主張。
通訳が正確かどうかなどをめぐり裁判が長期化した。

また、昨年4月の公判では、ビーモン被告の支援者の男が警備員に殴りかかるなどした。

男は、引き続き開かれた男への制裁処分を決める裁判の最後に、裁判長に襲いかかって法服を破ったとして、公務執行妨害容疑で逮捕された。

渡辺恵一・東京地検次席検事の話「検察官の主張が受け入れられず、遺憾。判決内容を詳しく検討して適切に対応したい」

1994年に起きた事件を6年後に逮捕して、傷害致死罪で起訴した裁判の判決がようやく2008年3月にあったという極めて長期に渡った裁判でした。

記事の中に出てくる「裁判長に襲いかかって法服を破った事件」については日本裁判官ネットワークブログにも書かれています。

法廷で裁判官が襲われる

Weblog / 2007年05月08日

法廷で裁判官が襲われ,法服が破られる事件があったようです。開かれた裁判所と警備の問題は,緊張関係にありますね。こういう事件があると,警備に重心が係るような気がします。ただ,リスクがあっても開かれた裁判所の理念を進めていくためには,警備と両立させるべきかもしれません。外国の裁判所は,双方を共に追及しているような気がします。以下は,朝日新聞からです。(瑞祥)

法廷で裁判官の服破った男を刑事告発 東京地裁

 東京地裁で4月、刑事事件の公判後に法廷で暴れた傍聴人の男が、制裁処分を決める裁判で法壇に駆け上って裁判官に襲いかかり、法服を破るなどしていたことが分かった。同地裁は、男が法廷の秩序を乱したとして、身柄を20日間拘束する監置処分とした。同地裁は7日までに、公務執行妨害容疑で捜査当局に刑事告発した。

 騒ぎがあったのは、4月18日に開かれた、米国人の格闘技講師ビーモン・テリー・イ被告(51)と妻(47)の公判。

 関係者によると、同日、公判終了後に支援者の男が傍聴席から退廷せず、注意した警備員に殴りかかるなどした。同地裁が拘束を命じ、同日中に制裁処分を決める裁判が行われた。

 検察側は、ビーモン被告が自宅の空手道場で格闘技を教えながらカルトまがいの集団を主宰しているとみている。法廷で騒いだ男は、ビーモン被告を支持する趣旨の発言をしていたが、身元を明らかにしていないという。

 ビーモン被告ら2人は94年に当時4歳の次男を木の棒で殴るなどして死亡させたとして、00年に傷害致死罪で起訴された。ビーモン被告は無罪を主張し、通訳が正確かどうかなどを巡って公判は長期化している。

この記事にある事件が起きた背景がありました。
何回も開かれた公判の風景は普通の裁判とは雰囲気が違っていて、被告が主宰しているカルト的団体の構成員が、白の制服(海軍士官のようなもの)を着て裁判を傍聴する、異様な光景が毎回続いていました。
このため法廷は警備法廷(傍聴券配付+手荷物預け+所持品検査)で傍聴も大変な手間が掛かるものでした。

被告の子供が4歳で暴行によって殺害されているのは裁判所も認定していて、児童虐待で殺害してしまった、というのが普通の解釈でしょう。

この事件に詳しい知人が傍聴記事を書いてくれたので紹介します。

本日14:10頃から14:45まで、東京地裁4階の警備法廷で判決が言い渡されました。
通訳を入れて35分間ほどの判決文朗読ですから、それほど長い判決文ではないと思います。

「被告人両名を無罪とする」というのが主文です。

被害者(4歳の男児)の死亡原因が多発性外傷性ショックであったことは認められるが、被告人ら(テリー・ビーモンとジュエル・カーティス)が共謀して暴行し、被害者を死に至らしめたという点については合理的疑いが残る、とのことでした。

判決文から聞き取れた要点をまとめてみました。

【死亡原因】

  1. 被害幼児(当時4歳の男児)の死亡原因は、多発性外傷性ショックであった。
  2. 死亡時に、児童には右前腕部の骨折痕、咬傷(当時8歳と6歳の兄たちのものか)、左大腿部や臀部の挫創、裂傷痕、その他無数の創傷が全身にあった。
  3. 被害幼児は、致命傷を負ったとみられる当日までに、既にプレショック状態に陥っており、体調がかなり悪かったと推認される。
  4. その上に、致命傷となる重篤な創傷を4箇所に負った。
  5. この状態になったのは、死亡当日より、少なくとも数日前であった。
  6. 被告人らは、被害幼児を死亡当日まで病院に連れて行かなかった。
  7. しかし、そのことをもって、被告人らが被害者を暴行して死に至らしめたとすることはできない。

【凶器・誰が暴行したのか】

  1. 検察側は、消去法的立証をしたが、本来積極的立証をするべきであった。検察側の消去法では、他の具体的な可能性の全てを排斥しつくせない。
  2. 検察は起訴当時、2の本の棒が凶器だとしていたが、この2本棒と致命傷となった傷との因果関係は立証できない。(検察側は「立証をあきらめたようだが、念のため考察する」というくだりが、判決文にありました。どうも、力学的立証も試みたようだが、うまく行かなかったようです。)
  3. また、この2本の棒を被告人らが占有管理していたとは認められない。(台所の誰でも手の届くところに置いてあった。)
  4. 子供の腕を使って(?)殴ったという起訴事実が第72回の公判で追加されたが、子供の腕では致命傷になる傷を作るのは無理だと思われる。
  5. 子供の力では、たとえ武術で習った手刀であっても、致命傷となった4つの創傷は出来ないことは、実験で立証されている。
  6. ただし、子供であっても、鉄アレーなどがあれば可能と思われる。凶器になる鉄アレーは押収されていないが、当時の捜査官の証言で、現場のバルコニーに鉄アレー様のものがあった。
  7. 被告人が教えるウェイ・ウォー・スーという武術の訓練をしていた被告人以外の成人が練習中等に致命傷となる創傷をを負わせた可能性もある。
    (階下の住人の証言によると、事実上の道場であったこの家では武術の訓練が行われており、事件があった時期まで5年間ほども、夕方4時から午前3時頃まで「ドタドタ」床が抜けるかと思うほどの足音(?)や、金属の重量物が床に落ちるような「ドスンドスン」という酷い騒音に、同じマンションの住人は悩まされていた。)
  8. 被告人テリー・ビーモンの体格は巨漢であり、もし本気で殴っていたら致命傷となった創傷に骨の損傷が伴うはずだが、それがないのは不自然である。
  9. 被告人ジュエル・カーティスは被害幼児の母親であり、足で踏んだり蹴ったりするとは思えない。

以上が、法律の専門家ではない私が聞き取ることが出来た内容です。

児童虐待防止法 第十四条2 (親権の行使に関する配慮等)

児童の親権を行う者は、児童虐待に係る暴行罪、傷害罪その他の犯罪について、当該児童の親権を行う者であることを理由として、その責めを免れることはない。

とあります。
この事件では、被告人テリー・ビーモン夫妻は、子供を2本の棒を使ってせっかん(彼らは教育と言っていた)したことまでは認めています。
その上で、致命傷を受ける以前に当該の子供が「プレショック状態」(体温や血圧の低下などが起きている状態のようです)に至っていた、と今回の判決が認めていることを考えると、少なくとも傷害罪にはなってしかるべきではないかという気がします。

更に、当時はありませんでしたが、児童虐待防止法にも触れる行為だと思います。
(児童虐待防止法は平成12年(2000年)5月に成立、11月に施行)

第2条(児童虐待の定義)

この法律において、「児童虐待」とは、保護者(親権を行う者、未成年後見人その他の者で、児童を現に監護するものをいう。以下同じ。)がその監護する児童(十八歳に満たない者をいう。以下同じ。)について行う次に掲げる行為をいう。

  1. 児童の身体に外傷が生じ、又は生じるおそれのある暴行を加えること。
  2. 児童にわいせつな行為をすること又は児童をしてわいせつな行為をさせること。
  3. 児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置、保護者以外の同居人による前二号又は次号に掲げる行為と同様の行為の放置その他の保護者としての監護を著しく怠ること。
  4. 児童に対する著しい暴言又は著しく拒絶的な対応、児童が同居する家庭における配偶者に対する暴力(配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にある者を含む。)の身体に対する不法な攻撃であって生命又は身体に危害を及ぼすもの及びこれに準ずる心身に有害な影響を及ぼす言動をいう。)その他の児童に著しい心理的外傷を与える言動を行うこと。

東京のど真ん中にあるアパートの一室で、4歳の少年が全身傷まみれで「多発性外傷性ショック」で死亡したという事実、そしてその死について、だれも責任を問われていないという事実に、やりきれない思いがします。

テリー・ビーモンのグループが問題の多いカルト的集団を形成していた中で、この事件は起きています。
法律の専門家でないのでよく分かりませんが、オウムの時のように、共謀共同正犯、あるいは保護責任者遺棄致死とか、何かの形で最も責任を負うべき二人の親=集団のリーダーに責任を負わせてほしいと思います。

私は、「not guilty(無罪)」という通訳の言葉を聞いてビーモンがとったガッツポーズに、本当にやりきれない気持ちで一杯になりました。

周囲の大人が(何人もの成人がこの集団にいた)、だれも4歳の少年の死を食い止められなかったことを、この集団に残るメンバーには、重く受け止めてもらいたいです。

この団体をめぐっては、カルト的行為、児童虐待、暴力沙汰、会員家族の心労(カルト被害者家族)といった問題が複合しています。2ちゃんねるにはこんな記事も。

「親はサタン」カルト集団のアメリカ人を虐待死で逮捕

「親はサタンだ」という宗教的な教えを説き、若い女性を集めて、集団生活していた東京品川区のアメリカ人夫婦が4歳の次男を折檻し、死亡させたとして警視庁に逮捕されました。
傷害致死の疑いで逮捕されたのは、品川区に住むアメリカ人の格闘技道場主、ビーモン・テリー容疑者(44歳)と妻のジュエル・カーティス容疑者(40歳)です。

調べによりますと、この夫婦は6年前の10月、品川区の自宅マンションで当時4歳の次男を、「うまい棒」と名づけた棒でたたき、せっかんを加え、死亡させた疑いが持たれています。
夫婦は「親はサタンだ」などと宗教的な教えを説いて、6年ほど前から同じマンションで10人近い若い女性らと集団生活を送り、格闘技を教え込んでいました。

しかし、親からは「娘がマインドコントロール されている」などと、保護を求める声が相次いでいました。

現場のマンションでは、去年8月にも格闘技の練習中に34歳のアメリカ人男性が死亡する事件も起きています。

4歳の子供が殺されたのは裁判所も事実としているわけですが、被告が犯人である証明が無いから無罪となったわけです。
状況的はかなり悪質で、その後「児童虐待防止法」が成立していることなど時代は進化しているのでしょうが、なおかつ「証明が不十分で無罪」というのは検察の立証の失敗ということでしょう。

4月 3, 2008 at 09:49 午後 事件と裁判 |

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コメント

この教団を知る者です。
まさしくカルト教団の名にふさわしく、異常な光景を何度も目の当たりにしました。
ビーモンの無罪判決の出た時のガッツポーズは何のガッツポーズでしょう?
自分の子供が殺されているのに。。。
どこぞやのSEX教団と変わりありません。

投稿: | 2008/04/08 21:24:23

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