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2008.03.31

理科教育とゆとり教育

昨日(2008/03/30)深夜に放送された、NHK・BSの番組「新BSディベート どうなる科学技術立国ニッポン」を偶然見ました。

"科学技術立国ニッポン"の国際的な地位が、今危機に瀕しています。

日本政府は少子高齢化時代の中でも質の高い産業レベルを維持しなければならないとして、平成7年に科学技術基本法を制定。以来、「科学技術創造立国」を目指して様々な政策に取り組んできました。

しかし、経済成長が著しい中国やインドなどアジア諸国が急速な追い上げを見せているほか、日本国内でも大学生の"理工系離れ"や子供たちの理科や算数の学力低下が指摘されています。

日本と同じように科学技術立国を目指す中国は、研究開発に当てる予算を毎年20%ずつ増やし、2006年にはその額で日本を追い抜きました。またインドでは、IT部門の技術者数が160万人に達して世界No.1の座に君臨するようになりました。

一方、日本の将来を担う人材の育成という観点に目を向けると、2007年12月に発表されたOECD・経済協力開発機構の国際的な学習到達度調査(PISA)では日本の高校1年生の成績が順位を下げ、もはやトップレベルにはないことが明らかになりました。
今回の調査には世界57の国・地域から40万人が参加、日本からは6千人が調査の対象となりました。
2000年、2003年の調査結果と経年で比較すると、OECD加盟国中の順位で『科学的リテラシー』が2位→2位→6位、『数学的リテラシー』は1位→4位→6位というように、理数系の分野における落ち込みが目立っています。
さらに、同時に行われた「科学への興味、関心」というアンケート調査では、日本の子供たちは世界最低の水準を記録しました。
また大学生の"理工系離れ"も深刻です。工学部への志望者は減少を続けており、最盛期の半数近くにまで落ち込んでおり、工学部が廃止になる大学まで現れています。

こうした傾向が続けば、世界をリードしてきた科学技術大国・日本の地位はいずれ急降下し、将来を担う人材の育成・確保すらままならない危機的な状況に陥ると指摘する専門家も少なくありません。

"科学技術立国ニッポン"の構想はどうなってしまうのか。そしてこの危機的な状況から逃れるためにはどうすればいいのか。番組ではPISAの調査でトップを走るフィンランドなどとテレビ電話で結びながら徹底討論します。

出演者は

有馬朗人日本科学技術振興財団 会長
篠塚勝正OKI代表取締役社長
山根一眞ノンフィクション作家
戸瀬信之慶應義塾大学教授
石井 裕マサチューセッツ工科大学・メディアラボ教授

さらにフィンランドからもスピーカーが参加し、スタジオには各界の人々が高校生も含めて関しているというNHKの実力を示した番組でした。

実はこの記事を書くためにHPを見て初めて番組の名前と方向を知ったのですが、出演者がバリバリの理科系ばかりであったせいなのか、分かりにくかったと感じます。

わたしが見たあたりでは「ゆとり教育論」をやっていて、学習指導要領の改訂の話でした。 学習指導要領の改訂の骨子は、授業時間数の拡大で、そこでゆとり教育を減らすという方向に向いているわけですが、これに対して有馬朗人氏が猛然と反発して「ゆとり教育重視」を延々とぶっていました。

対して、戸瀬信之氏は「大学生の学力はゆとり教育世代から確実に落ちている」と現役大学教授としての見解を述べて、一見して意見の衝突でありました。

元が、PISA の結果として「学力が下がった」であり「理科離れ」ですから、その方向だけだと「ゆとり教育撤廃・理科授業の拡大」となるわけですが、理科授業を拡大しゆとり教育を拡充しろ、が結論となりました。

山根一眞氏が地元である杉並区で地域住民として学校教育に関わった経験で「いきなり学校医に行って手伝わせろとは言えない。地域が関わるルールを作る必要がある」と行ったところは非常に重要な指摘です。

フィンランドの教員養成の説明がありましたが、フィンランドでは20年ぐらい前に教員は修士課程修了者に限定したそうです。
さらに研究者としての実績も要求するそうで、考え方として自分で研究する人が子どもたちに主しいことを発見させることが出来る、という考え方のようです。
教員養成課程に5年間かかるそうで、それで競争率が10倍とのことでした。
日本で言えば、医師とか法曹人の養成といった感じですね。

もう一つ面白かったのは、日本の先生が忙しすぎるという事で、わたしも強く思っているのですが、実業界の人にとっては「それぞれの作業に専門家を動員するべき」として教員に事務処理などをさせるべきではない、との話がありました。
その中に「先生が部活の面倒をみる」ということについて、特にフィンランドから指摘があって「フィンランドで先生に部活の面倒をみさせたら、ストライキなります」という意見でした。

わたしが日ごろ考えていることとほとんど同じであったことにちょっと驚きましたが、同時にこれらが出来ていないことも確認できました。

3月 31, 2008 at 12:11 午後 教育問題各種 |

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コメント

> 元が、PISA の結果として「学力が下がった」であり「理科離れ」ですから、その方向だけだと「ゆとり教育撤廃・理科授業の拡大」となるわけですが

 PISAが測っているのは、「ゆとり教育が本来目指したもの(ゆとり教育が実際に行っていたものではないことに注意)」だったはずなので、PISAの結果として「学力が下がった」というのならば、その対策は「ゆとり教育の充実」とならなければいけません。
http://shibuken.seesaa.net/article/71406598.html

投稿: newKamer | 2008/03/31 17:53:07

フィンランドからの参加者の言っていることに尽きるのじゃないでしょうか。教師数もふくめ、予算が足りなさすぎ、雑用が多すぎ。くわえて、教師の能力も疑問。4年制の大学だけでは明らかに適性審査もできない。フィンランドでは修士課程を必須とし(当然のことだ。一生を教職に捧げるつもりならば)、実習でも厳しく指導されている(日本で、実習をこれほど厳しくやっているか?指導官をつけて)。番組でも、生徒全員への注意が足りない、と厳しく指導を受けていた。(もちろん、少人数教室だからできることで、40人も生徒がいては常に、全員に、注意などしようもない)。

そのくせ、文部省は、干渉だけはしたがる。指導要領など先生が自主的につくるべきもの。教科書も自分で書くくらいの熱意と余裕がないひとに先生などヤッテ欲しくない。

物理の教え方など、先生はどこで習っているのだろうか?

投稿: 古井戸 | 2008/04/02 9:43:03

高校で情報の授業が必修化されるあたりから状況を見ていますが、情報の授業のために先生を外部から募ったのはよいのですが、しばらくしたら転勤で情報を専門とする先生が学校から居なくなり、その上に当の情報の先生が情報以外の教科をやるという「何をやっているのですか?」という状況もありました。

さらにこの話には続きがあって、校内ネットワークの管理を情報の先生にやらせています。

ネットワーク管理はどこまで行っても学校の運営の問題であって、それを教員にやらせれば「忙しくて何もできない」になるに決まっています。

わたしはロボットの授業をやっていますが、この授業はいわば実験であって準備が必要なわけです。
実際に30分から1時間前には準備を始め、片付けに20分とか掛けています。

しかし先生は、授業が続いているとこれはできません。なぜ助手が居ないのでしょうか?分かりません。

今や日本の学校制度は「仮想現実」とか「架空」という種類のモノになりつつあると思います。

投稿: 酔うぞ | 2008/04/02 11:40:27

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