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2008.01.03

ブット氏暗殺後のパキスタン情勢

CNN.co.jp より「内務省が頭蓋骨骨折の死因を「撤回」 ブット元首相暗殺

イスラマバード(CNN) パキスタンのブット元首相暗殺事件で、同国内務省のチーマ報道官は1日、死因は自爆テロの爆風で乗っていた車両のサンルーフのレバーに頭部を強く打ち付けたための頭蓋骨骨折としていた立場を修正し、最終的な判断は鑑識捜査の結果を待って下したいと述べた。

同報道官は事件から1日後の28日の会見で、死因は頭蓋骨の骨折と説明。しかし、内務省は当初、テロ実行犯の銃撃が死因としたが、その後、自爆攻撃の破片と訂正した経緯もある。

チーマ報道官は死因を頭蓋骨骨折とした根拠について、初期の捜査結果と死亡と宣言したラワルピンディ総合病院の医師の所見を挙げた。得られた事実を述べただけとも主張した。だが、同病院の弁護士はこの医師の所見に該当するような見解を政府に伝えていないと反論した。

元首相の死因については政治的な思惑も絡み、政府側とブット氏率いていた野党、パキスタン人民党議会派の主張が事件後から対立している。

事件発生直後に元首相の遺体をふき清めた側近は29日、頭部に銃弾痕があったと証言。この女性側近は事件時、襲われた車では元首相の背後にいた。出血する元首相を病院に搬送し、遺体をふいた時、銃弾痕が明らかに見てとれたと説明している。

ブット氏は銃弾を受けていないとする内務省の主張を、警備問題などで暗殺事件の責任を免れようとするまやかしの言動と糾弾していた。また、ラワルピンディ総合病院の弁護士は31日、地元警察が医師による死因解明の検視解剖を阻止したとの事実も明らかにしている。

これに対し地元警察の署長は検視を勧めたが、元首相の夫のザルダリ氏が反対したため実施されなかったと反論していた。

31日には事件発生の模様をとらえた新たなビデオ映像も判明、元首相の死因は銃撃だったことを「裏付ける」場面が含まれていた。

ブット氏暗殺はその後一連のかなり混乱した状態を生みだしています。

  1. ブット氏暗殺
  2. 銃撃後に自爆テロ
  3. パキスタン政府は、ブット氏は銃殺ではなく銃弾も無いと発表
  4. 政府は1月8日の総選挙の延期を発表
  5. 銃撃を撮影したビデオが公開
  6. 医師が政府発表の意見は述べていないとコメント

といったところが昨日の報道でしたが、野党側は当然のように「選挙延期反対」を強く表明していました。しかし、政府は総選挙を2月18日に延期すると発表しました。

朝日新聞より「パキスタン総選挙、2月に延期 英に捜査協力要請も

パキスタン選挙管理委員会は2日、8日に予定していた総選挙を2月18日に延期すると発表した。ブット元首相の暗殺による暴動で各地の選管事務所が襲撃され、正常な選挙ができないと判断した。ムシャラフ大統領は同夜、国営テレビで演説。「自由で公平で透明な選挙のために、延期は不可避だった」と理解を求めた。

ムシャラフ氏はブット氏の死に哀悼の意を表し、「イスラム過激派のテロリストの仕業だ」と明言。英国に捜査協力を求めたことを明かした。

選管のファルーク委員長は記者会見で、南部シンド州で11カ所の選管事務所が破壊され、投票箱の保管所が被害に遭ったと説明。1月中旬からイスラム教シーア派の祭礼行事アシュラが始まる。例年、この時期にスンニ派との宗派抗争が多発するため、アシュラの期間が終わってからの選挙日程を設定したという。

ブット氏暗殺を防げなかったばかりでなく、政府が暗殺に関与したと疑う声も広がり、ムシャラフ氏への批判が高まっていた。このため与党パキスタン・イスラム教徒連盟(PML)には延期を求める意見が出ていた。

一方、ブット氏が率いた野党パキスタン人民党(PPP)や、シャリフ元首相のパキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派(PMLN)は、予定通り1月8日の実施を求めていた。

実際にブット氏暗殺のビデオを見ると銃撃犯人は短機銃を持って車の隣に居ます。
このようなところに銃を持ちこませた警備体制はブット氏自身が生前に問題にしていたことで、政府としては混乱の中で総選挙に臨むのを避けたとは言えるでしょう。しかし当然ながらブット支持者は「ブット氏地元に怒り パキスタン総選挙延期」(朝日新聞)となっています。

パキスタン総選挙が2月18日に延期され、暗殺されたブット元首相の地元カラチには失望や怒りが広がった。野党も一斉に批判しており、抗議デモなどが再び先鋭化する可能性がある。

一時はブット氏支持者と警官隊が衝突するなど緊迫したカラチ中心部サダル地区では2日、所々に銃を持った兵士や警官が厳戒し、以前のにぎわいも戻っていた。

時計修理工のファルークさん(52)は「全政党が納得する形で予定通りに総選挙を実施することでしか、平和と安定は戻らない。野党支持者が反発して状況が悪化するのは必至だ」と不安がる。

大学生のサイードさん(23)は「一体何のために延期する必要があるのか。これは大統領や政府のワンマンショーだ」と憤った。

抗議デモや襲撃を予期して早々に店じまいするところも。茶葉販売店を閉める支度をしていたフィダフサインさん(28)は「デモ参加者が店を襲うかもしれず、商売どころじゃない」と話した。

ブット元首相が率いていた野党パキスタン人民党(PPP)は、大量の「同情票」を期待して予定通りの選挙実施を求めていた。PPP幹部は民放テレビに「大敗しそうな与党が時間稼ぎのために延期させた」と批判。ただ、新総裁に選ばれたブット氏の長男ビラワル氏は「民主主義こそ報復の最良の手段」と述べていた。PPPは2日夜に幹部会議を開き、選挙への参加を決めた。

シャリフ元首相の野党パキスタン・イスラム教徒連盟シャリフ派(PMLN)の報道官は、AFP通信に「参加するだろう」と述べた。同党は暗殺事件後、いったんは選挙の不参加を表明したが方針を撤回している。

なんとか無事に総選挙が出来ればよいのですが、インド洋沿岸の諸国の安定は中東とのオイルロートに大きく影響します。
パキスタン、アフガニスタン、イラン、イラク、トルコと不安定化しては世界的な大問題になるでしょう。
原油の先物価格はニューヨークで一時100ドルを突破しました。 ユーロだけが強く、円はもちろんドルも弱くなっています。今後は、ユーロを基軸に世界経済を見た方が正しのかもしれません。

年末でニュースも枯渇状態でネタに困っております(^_^;)
とは言え新聞などに倣えば「特集企画」に行くわけでして、複数のニュースを無理矢理並べてみました。

朝日新聞より「冷める米英、日本危機感 宇宙に迫る「ILC計画」暗雲
共同通信より「核計画申告遅れ「残念」 期限遅れで米国務省
AFP BB より「スペースシャトル「アトランティス」、1月の打ち上げ予定も再延期

これらはいずれも国際協力として日本が深く関わっている事柄ですが、様々な事情で当初の思惑通りに進まなくなってしまいました。
1960年代までの日本は敗戦国の位置づけであったと実感しますが、1980年代は世界から利益を受けるだけの国という感じで、1990年以降は「根拠無き国際協力が当然」であったのだろうと思います。

まもなく2010年代が始まるわけですが、上記のようなニュースを並べてみると、ふたたび国際協力よりも国家中心に戻るのではないか?と感じざるを得ません。

朝日新聞より「冷める米英、日本危機感 宇宙に迫る「ILC計画」暗雲

日本をはじめ欧米、アジア諸国が協力して進めてきた次世代粒子加速器・国際リニアコライダー(ILC)計画に暗雲が漂っている。
今月、米国が大幅に予算を削減し、英国も事実上の撤退を表明した。
計画に不透明感が増す中、日本の推進議員連盟(会長=与謝野馨・前官房長官)のメンバーは来年2月にも訪米し、関係強化を図る。

ILCは約30~40キロの直線トンネル内で光速に近い電子と陽電子を正面衝突させ、宇宙誕生(ビッグバン)から1兆分の1秒後という超高温・超高密度状態を再現。宇宙と物質の謎に迫る世界最高性能の加速器だ。
建設費は約8000億円。

日本では高エネルギー加速器研究機構(茨城県つくば市)や各地の大学が技術開発をしており、建設適地を検討したこともある。昨年結成された推進議連は「開発・調査に5年で総額200億円の予算確保」などの提言を盛り込んだ中間報告を今月3日に公表した。

しかし26日に成立した米国の08会計年度包括歳出法では科学技術関係予算が削減され、中でもILC関係は要求の4分の1の1500万ドル(約17億円)に圧縮された。08会計年度はすでにほぼ3カ月がすぎており、歳出法は残り9カ月の研究停止に等しい措置。国際設計チームは「深刻な事態」としている。

英国の公的研究資金分配機関の一つ、科学技術施設審議会も11日、08~11年の方針で「ILCに対する拠出を中止する」と発表した。08年に欧州で稼働する別の大型加速器(LHC)への集中などを理由に挙げている。

ILCのアジア側代表の野崎光昭・高エネ研教授は「米国の予算削減は政治要因の副次的結果であり、計画中止を意味しないと考える。日本はこれまで通り研究開発を進め、英米の一刻も早い復帰を願う」としている。

共同通信より「核計画申告遅れ「残念」 期限遅れで米国務省

【ワシントン30日共同】

米国務省は30日、北朝鮮が6カ国協議で合意した核計画申告の提出が遅れていることを「残念だ」とする声明を発表、「完全で正確なすべての核計画、核兵器、核拡散活動」についての申告を早期に提出するよう促した。

6カ国協議の10月合意文書には、核計画申告の期限は12月31日と明記されている。期限切れをにらんで出された声明は「北朝鮮が義務を果たせば、米国も6カ国協議の合意に基づいた義務を果たす」として、完全申告に向けた決断を北朝鮮に迫った。

声明は核計画申告とともに、北朝鮮が核施設無能力化作業のペースも落としているとして遺憾の意を表明。米国は今後も日本など他の協議参加国と連携し、北朝鮮に対しすべての核計画申告と無能力化作業の完了を促していくと強調している。

AFP BB より「スペースシャトル「アトランティス」、1月の打ち上げ予定も再延期

【12月29日 AFP】

米航空宇宙局は28日、1月10日に打ち上げを予定していたスペースシャトル「アトランティス」について、打ち上げの再度延期を発表した。

27日、シャトル計画責任者の会合を開いて問題解決の進ちょく状況を協議した結果、1月10日の打ち上げも「達成不可能」との結論に至ったと説明している。新たな打ち上げ日程は未定。

アトランティス打ち上げは、国際宇宙ステーションに欧州の宇宙実験棟を輸送するため。当初の打ち上げ予定は12月6日だったが、液体水素の燃料センサーの欠陥が見つかり、これまで数回にわたって延期されている。(c)AFP

日本では「国際公約だから」と言うと誰も反論できなくなるようなところがいまだにありますが、すでに「他国に迷惑が掛かろうが出来ないものは出来ない」といった政策決定が続々と出てきていることには注目するべきでしょう。

国際宇宙ステーション計画では、日本の実験棟は非常に大型のもので期待も大きかったのですが、すでにスペースシャトルの運航に期限が切られていて、さらにその実施すら怪しいとなると実験棟は出来ても実験は出来ないということも十分にあり得る事でしょう。

巨大プロジェクトとして他に有名なものには「国際熱核融合実験炉計画」がありますが、これはまるで海の物とも山の物とも分からないと言って良いので、国際宇宙ステーション計画すら止まるようではとても実現するとは思えません。

マクロに見ると、日本の国内政治でも同じですが「反対しにくいからドンドン話だけ大きくなった」と評価するべきなのでしょう。
全くの夢の段階では話を進めることが出来たが、いざ取りかかってみると、とてもではないが続けることが出来ない。
投資に見合う成果を得るためにはもっと現実的な規模の計画にするべきだ、となるのは必然で2010年代の国際潮流は「国際協力よりも国内事情の優先」に向かうのではないか?と考えるのです。

一方、世界の警察官役を自他とも認めていたアメリカの軍事力も国際協力無しには動かなくなってしまいましたから、国際紛争レベルではかなり不安定になっていくように感じます。

国家が例え反米的であってもそれなり安定していれば、戦争レベルの国際紛争にまでは拡大しないかもしれませんが、国家ではない集団が事実上の国家レベルの軍事力を持つと予想されますから、例えば海運が困難になる、石油のパイプラインが途絶する、といった戦争よりもひどい内乱や海賊行為といったことが出てくるかもしれません。

国際協力を無条件でアテに出来る時代ではなくなったとすると、国際平和こそが日本の経済の生命線であるという現実は非常に重いものになってきて、日本はどうやって生き延びるべきかという問題に直面するかもしれません。

1月 3, 2008 at 03:10 午後 海外の政治・軍事 |

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