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2007.06.16

捜査情報流出を考えると

朝日新聞より「警視庁情報流出、わいせつ画像コピーがきっかけ

警視庁北沢署の巡査長の自宅パソコンから警察書類を含む計1万件の文書がネット上に流出した問題で、この巡査長が同僚所有の外付けハードディスクから、わいせつ画像をコピーしたのが流出のきっかけだったことが13日、わかった。

調べによると、巡査長は自宅に私用パソコンを2台所有。
ファイル変換ソフト「ウィニー」が入った1台にデータをコピーしたため、同僚のハードディスクの情報がほぼ丸ごと、遅くとも今年4月までに流出していた。

1万件のうち1000件は画像で、逮捕前の被疑者を隠し撮りしたと見られる写真もある。
9000件の文書の中には、強姦(ごうかん)や強制わいせつ、恐喝事件に関する捜査書類や被疑者の携帯電話の解析記録もあった。
暴力団関係者の使用車両などを示した捜査資料もあり、ほとんどが実名入りだった。

警視庁は今年3月、私用の全パソコン約4万1000台に、ウィニー導入の有無を調べるソフトを走らせる一斉点検を実施。
この際、巡査長はウィニーを入れたのが発覚するのを恐れ、流出元になった1台には点検ソフトを使わなかったらしい。

なんで winny を入れたPCに捜査資料のデータを繋いだのか、この巡査長は自分のやっていることが分かってなかったのでしょうか?
しかしこういう詳細が伝わってくると、「winny を使わなければ」といったことでは防げないのではないか?と思うところです。

今回の捜査情報流出は社会システムに影響を与えたことは確実で、DMの名簿が流出したのとはレベルが違うと考えても良いでしょう。
原理的には情報流出で政府が潰れるとか、核戦争が起きるなどといった空想的な可能性も皆無ではないのですが、法的にそういう「社会の安定を壊す可能性がある」として規定されているものに、偽造通貨の扱いがあるな、と思い出しました。

刑法 第十六章 通貨偽造の罪

第百四十八条 通貨偽造及び行使等

行使の目的で、通用する貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、無期又は三年以上の懲役に処する。
2 偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。

第百四十九条 外国通貨偽造及び行使等

行使の目的で、日本国内に流通している外国の貨幣、紙幣又は銀行券を偽造し、又は変造した者は、二年以上の有期懲役に処する。
2 偽造又は変造の外国の貨幣、紙幣又は銀行券を行使し、又は行使の目的で人に交付し、若しくは輸入した者も、前項と同様とする。

第百五十条 偽造通貨等収得

行使の目的で、偽造又は変造の貨幣、紙幣又は銀行券を収得した者は、三年以下の懲役に処する。

第百五十一条 未遂罪

前三条の罪の未遂は、罰する。

第百五十二条 収得後知情行使等

貨幣、紙幣又は銀行券を収得した後に、それが偽造又は変造のものであることを知って、これを行使し、又は行使の目的で人に交付した者は、その額面価格の三倍以下の罰金又は科料に処する。ただし、二千円以下にすることはできない。

第百五十三条 通貨偽造等準備

貨幣、紙幣又は銀行券の偽造又は変造の用に供する目的で、器械又は原料を準備した者は、三月以上五年以下の懲役に処する。

こうして調べてみると、通貨偽造や行使の罪が思いっきり重罰であることが分かります。
そこで、今回の捜査資料流出を通貨偽造や行使に比べて社会的な被害はどのようなものだろうか?と考えてみます。

世界中で偽札事件は続いていて、そのために通貨の変更で対策するのが普通です。
米ドルは世界中で流通することあって、頻繁に変更しているという印象があります。
日本でも過去何回も緊急事態扱いで通貨を更新したことがあります。

こういうことがあるから、通貨偽造は世界的に重罪になっているのでしょう。それに比べて、捜査情報流出といっことの被害はどうか?と考えると、現時点で法的にはなんの処罰も無いというのはかなり問題ではないだろうか?
別に捜査情報でなくても、銀行や税金といった情報が流出した場合に、国家としての信用が毀損されて、国際取引に問題が出てきたら偽装通貨問題を上回る被害となりうるでしょう。

それで、片方は無期懲役で片方は全く罪がない、というのはいつまでも通用するものではない、という印象が強くします。

明らかに、P2P技術や winny そのものを規制してもダメで、例えば「電磁的公文書流出罪」とでもいった法律を作って、結果を積極的に処罰するというぐらいしか抑止効果が無いと思うのです。

こんな「対策」にでもしないと、今回のように

  1. 他人のHDDを
  2. 個人的管理下のPCの内
  3. winnny を使用中の機械に接続した
なんていう組合せを事前に回避できるわけがない。
そりゃ元をたどれば、データの入ったHDDを他人に渡すのが論外だ、とは言えますがだからと言って無くなるとは思えない。
結局は、結果に対して処罰するしか無いのかな?と思うところです。

6月 16, 2007 at 11:15 午前 セキュリティと法学, 個人情報保護法, 国内の政治・行政・司法 | | コメント (0) | トラックバック (1)

2007.06.15

三菱ふそうのハブ問題裁判・その2

「三菱ふそうのハブ問題裁判」の続きです。

サンケイ新聞より「過失ない と無罪主張 元部長側が最終弁論 タイヤ脱落による母子3人死傷事故

横浜市で平成14年、三菱自動車製大型トレーラーのタイヤが脱落、母子3人が死傷した事故で、業務上過失致死傷罪に問われた同社元部長と、元グループ長の公判が14日、横浜地裁(木口信之裁判長)であり、弁護側が改めて無罪を主張し結審した。
判決は12月13日に言い渡される。

最終弁論で弁護側は、

  • 「両被告は事故を予見できず、過失はない」と主張
  • 「検察側はハブ破損の原因究明も十分に行わず短絡的に起訴したもので、論告も過失の有無を検討していない」
と検察側の主張を厳しく批判した。

論告によると、平成11年6月に広島県で同社製バスのタイヤが脱落する事故が発生。
運輸省(当時)が報告を求めたが、両被告は車輪と車軸をつなぐ「ハブ」の破損が原因で過去にも同種の不具合が15件発生していたにもかかわらず、「同種不具合はない」と虚偽報告し、欠陥を放置した結果、母子死傷事故を招いた。

最終意見陳述で被告の元部長は「(11年のバスのタイヤ脱落事故で)ハブの強度不足を疑ったことは全くない」と話し、元グループ長も「あとからハブのリコール届が出されたからといって、結果論だけで処罰を受けるのは納得できない」と訴えた。
検察側は4月の公判で、元部長に禁固2年、元グループ長に禁固1年6月を求刑している。

事故は14年1月10日、横浜市瀬谷区の県道で発生。
走行中の同社製トレーラーの左前輪が脱落、坂道を約50メートル転がり、歩道を歩いていた大和市の主婦(29)の背中を直撃。主婦は死亡し、長男と二男が軽傷を負った。

事故原因の究明を刑事裁判で行うことの問題点は、22年前の日航123便事故の時から問題になっていて、今も続いているというべきでしょう。

三菱ふそう(当時)のハブ破断などによる自己責任ついて、当初はドライバーの過失とされたものが、取り消されたりしています。

わたしは、技術的に三菱には責任があると考えます。
大きな理由は、トラック(バス)という世界中で似たような機構を採用している大型車で、普通に起きる事故・故障ではなくて三菱車に集中して起きているのですから、設計・製造に問題があると考えるからです。

しかし、これを刑事事件として特定の個人に責任を負わせることが出来るのか?となると大いに疑問です。

刑事責任を問うのであれば、間違えなく検察には立証義務がありますが、このような技術的な問題について、明白な過失を立証することは困難でしょう。
今回、弁護側の最終陳述が「過失の有無を検討していない」と指摘したのはこの事をさしているのだと思います。

事故原因の解明と刑事責任を決めることとどちらが大事か?という問題は、比較することが出来ない性質のものですから、刑事責任追及が出来れば事故原因も対策も明らかになるわけではありません。
つまりは、この裁判の決着が付いても本当のに事故原因は何で、どうすれば解決するのかは明らかにならないでしょう。つまりは、同じ事故がまた起きる可能性があるということで、問題解決にならないのではないでしょうか?

自動車事故がこれだけ多数起きても、日本では原因の研究が遅れているし、航空機事故に至っては、資料を提供にすら問題が生じています。
こういうところを逆に突くと、エレベータの死亡事故(メンテナンスコストが急激に低下した)、ジェットコースター死亡事故(検査の問題か設計の問題か)、プール事故(通達の理解不足)といった技術的な安全確保に知恵が回らないことになるのだと考えています。

6月 15, 2007 at 10:11 午前 もの作り | | コメント (5) | トラックバック (0)

2007.06.14

振り込め詐欺事件を発表しないというのだが

読売新聞より「ネット中傷も 神奈川県警、振り込め被害の個別発表中止

神奈川県警が振り込め詐欺事件の被害発生を個別に発表することをやめていたことが13日、わかった。

県警は被害が減らないうえ、被害に遭った人が中傷される例も起きていると説明。
「特異な手口や発生状況は定期的にまとめて発表したい」(捜査2課)としているが、識者からは「防犯のためには発生直後の公表が必要」と批判の声も上がっている。

県警は5月に県内54署の刑事課長を集めた会議で、被害をそのつど発表しても防犯効果が上がっておらず、被害者保護を優先すべきだとして、被害の判明後すぐに報道機関に発表することは控えるよう見直した。
被害額が数千万円と多額だったり、手口が新しかったりする特異な例も被害者の了解が得られ、県警で検討したうえでなければ発表しないことにした。

被害者中傷について、県警は横浜市の主婦の例を説明。この主婦は4月に情報サイトの登録料などの名目で計約4700万円をだまし取られた。県警は直後に広報したが、新聞などで報道された後、インターネットの掲示板に「なぜ大金があるのか」といった書き込みが行われたという。

なんかヘンな話だと思いますね。

ネット中傷云々はいわゆる報道被害そのものですよね。
報道の情報は5W1Hが基本的にあるわけで、報道被害を皆無にするためには、警察が発表しないというのは一つ手段かもしれませんが、誘拐事件では報道協定があってとりあえず記者クラブ(わたしはこの仕組みには反対)内では「知ってはいるが適当なタイミングまで報道しない」とやっているわけです。
全く報道しないのではない、報道被害削減の手法には少年事件での氏名などを公開しない、というのもあります。

つまりは、報道被害を防止するために警察が公表しないというのは、一種の究極の手段であって、報道側が考えてちゃんとやれば良いことでしょう。
はっきり言えば、報道被害に遭った振り込め詐欺被害者が報道に損害賠償させればよいことになります。
こうして、報道被害を生むようなリスクのある報道の仕方が問題になって、落ち着くところに落ち着く、というのが一番だと思います。

元日本新聞協会研究所長の桂敬一・立正大講師(マスメディア論)は記事にコメントを寄せています。

「発生直後に被害状況を詳しく知らせることが将来の防犯につながるはずだ。(中傷など)被害者の保護はメディアが考えるべき問題」と話している。

全くこの通り、と思います。

6月 14, 2007 at 11:22 午前 国内の政治・行政・司法 | | コメント (3) | トラックバック (0)

2007.06.13

横浜市金沢のヘリ不時着の不思議

サンケイ新聞より「横浜の公園に米軍ヘリ不時着 けが人なし

13日午後3時半ごろ、横浜市金沢区、「なぎさ広場」に、米空軍横田基地(東京都)所属のUH-1Nヘリコプター(乗員7人)が不時着した。けが人はなく、ヘリに目立った損傷はなかった。
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無事着陸ではあるが、飛行場ではないところに降りてしまったことに間違えはない。
飛行場に降りことができればなんの問題もなかった。

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新聞の写真から推測するとこのあたりに降りたらしい。
ところが東に1.6キロほど先に、神奈川県の県警と消防のヘリコプター基地があって、立派な飛行場になっている。

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航空交通管制という観点ではどうなっているのか?と強く思う。
パイロットとしては地上から支援が受けられるということを考えても、飛行場に降りる方がよほど良いわけで、考えられるのは

  • 極めて緊急の事態で、目と鼻の先の飛行場まで飛ぶことが出来なかった
  • すぐそばに飛行場があることを知らなかった

ぐらいしか思い当たらない。
全く見当が付かないのは、どこの管制に対してでも「緊急で不時着する」という趣旨の連絡をすれば「すぐそばに飛行場があるぞ」というアドバイスはあるはずだ。

ヘリコプターが安全に広場に降りた、というのはヘリコプターの普通の機能なのだからなんの不思議も無いが、飛行場のすぐそばの場外にゆっくりと降りたというのは、極めて普通ではない。

何が起こったのだろうか?

6月 13, 2007 at 10:13 午後 事故と社会 | | コメント (2) | トラックバック (0)

2007.06.11

現代F1のすごい安全性能

日曜の深夜なのか月曜の未明なのか判然としないがF1カナダ・グランプリを見てました。

すごいレースでセーフティカーが4回も出たとのことで、ピットワークの混乱から黒旗失格まで起きてしまった。

その中でも強烈だったのが、ロバート・クビサ(BMWザウバー)の大クッラシュで、

Upg

カナダGPの名物ヘアピンの手前で、Google Earth から引っ張ってきた図に赤線で付け加えたような動きで、BMWザウバーはバラバラになってしまった。

ヘアピンに設置してあるカメラこの写真の北側から南(写真の下側)を写しているから、遙か向こうで宙に浮いたBMWザウバーが何かに当たって爆砕的に破片が飛んだ後に後輪一つだけが付いた状態で、コースを転がりながらウォールに当たって止まった。

赤線は想像した線ではあるが、下側(南側)から進んできて、他車と絡んで右にコースアウト状態になって,宙を飛んでウォール(?)に激突、コースを横切って停止、という3本の線を描きました。

280キロとかだそうで、写真の大きめの白い点はバスだと思いますから、すごい距離だと言えます。

テレビでは「生命に別状はない、話をしている」でしたが、その後「右足骨折」となり現時点では「骨折もなくすぐに退院」となっています。

現代のレースカー(フォーミュラ)のカーボンモノコックの丈夫さや、燃料をまき散らすこともなかったようだし、ハンズデバイスで頸部の保護に成功した。といったことが良く分かった事故でした。

6月 11, 2007 at 09:07 午後 日記・コラム・つぶやき | | コメント (31) | トラックバック (1)