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2007.11.12

情報ネットワーク法学会・新潟大会

情報ネットワーク法学会の第7回研究大会に出席してきました。
今回は新潟大学の手で実施され、場所がにいがた産業創造機構「NICOプラザ」なので、「ホテル日航新潟」の高い建物で非常に快適でした。
懇親会は、ホテル日航の30階で素晴らしい夜景が眼下に広がっておりました。

情報ネットワーク法学会では、ネットワークでは有名な人が幅広く参加していて、色々な話が聞けて大変に勉強になるし、第一面白いところです。

岡村久道氏、町村泰貴氏ら理事の方々は前日から新潟入りで大変な事です。
プログラムが9時30分開始なので、これに合わせて9時に新潟着とすると6時前の電車に乗らないと間に合わない。「それなら車で行ってしまえ」と5時発で予定通りに9時15分に会場に入りました。

プログラムの内

砂金 伸一(山本秀策特許事務所)
田中規久雄(大阪大学)
「匿名ファイル交換ソフトで違法複製物をダウンロードした者の法的責任」
奥村徹(大阪弁護士会) 「プロバイダの刑事責任~名古屋高裁平成19年7月6日と東京高裁平成16年6月23日」
石井夏生利(情報セキュリティ大学院大学) 「情報セキュリティと専門家の責任」
基調講演 山口厚
東京大学大学院法学政治学研究科教授
『情報ネットワーク社会と刑法』

を聞きました。

「匿名ファイル交換ソフトで違法複製物をダウンロードした者の法的責任」

は現在進行中の「ファイル交換ソフトを利用した音楽・映像ファイルをダウンロードを取り締まる、という案の進行状態についての説明でしたが、権利者団体の「取り締まる」という話が実際に検討してみると止まってしまっているといったようなお話しで「そう簡単に出来るモノか?」と思っていたことが、実際のようです。

「プロバイダの刑事責任~名古屋高裁平成19年7月6日と東京高裁平成16年6月23日」

児童ポルノ事件を多く手がけている奥村弁護士のお話しでしたが、これはもう無茶苦茶な話でかなり笑ってしまいました。
一言で言えば、東京高等裁判所と名古屋高等裁判所の判断がほとんど正反対で「これでは問題だろう」と内容です。

プロバイダ、つまり管理者の責任を争う裁判ですから、少なくとも管理者が児童ポルノ画像を自分でアップした、のではありません。
そこで、正犯か従犯かで東京と名古屋で分かれてしまった。というのです。その上というか当然というかなのですが、作為犯か不作為犯か、正犯か幇助犯かという4つの組合せのどこに判断を納めるか分からない、という報告でした。
名古屋高裁は
「同種亊案における判断が裁判ごとに異なる事態は望ましいことではないが、このような場合、上級審に夜見解の統一が図られ、また多数裁判例の集積により自ずから行っている結論に終息していくこととなる」
というなかなかファンキー判決を書きました。
裁判自体は児童ポルノ画像についてですが、本質はプロバイダ(管理人)が違法情報を削除しないことが、法律上どのような判断になるのか?ですから、名誉毀損や著作権侵害であっても適用される判断で、一言で言えばネット上で情報発信している人にとっては全く同じリスクがあるといえます。
そして実際に裁判になったときに、このようにバラバラでは「判決は独立です」にしてもひどすぎると言えます。

「情報セキュリティと専門家の責任」

これも、大変に興味深い研究報告でした。
情報セキュリティの専門家を制度的に定めたような場合、他の専門家の立場と比較してどのようなことになるのか?という内容です。
典型的な専門家して医師・弁護士といった職種と比較して・・・・という研究を始めたとのことですが、責任ということであれば情報セキュリティの責任範囲が、コンピュータ室の鍵の管理とかパスワードの管理といったことに限定するのか、流出した情報の価値についてまで及ぶのか?といった問題になるかと感じました。
このような研究が行われていないから、情報流出で一人あたり500円といった「相場」が勝手に出来ているとも言えるわけで、大いに期待したい分野です。

基調講演 「情報ネットワーク社会と刑法」

これもすごい内容で、情報をめぐる犯罪とその対処についての研究を時系列にまとめた報告でした。
法的な整備が本格化したのが世界的にも1987年頃からとのことで、パソコン通信が始まったときからですから、そのまっただ中で管理者をやっていたわけで、現在進行形でもある情報ネットワーク法学会の活動を面白く感じるのも当然だ、と改めて思ったところです。

すでに、町村先生落合弁護士小倉弁護士壇弁護士藤代裕之氏池田信夫氏といった有名どころが感想などをアップされています。

11月 12, 2007 at 02:42 午前 白浜シンポジウム |

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コメント

学会や研究会に出席し,椅子に座ってられない
場合,壁に身を寄せて立つことも考えたのです
が,アピール用に山用のつえでも持っていれば,
不自然に立っていても座長は何も言わない?

いや,本格的に,ぎっくりが直らないんで,今月
末,困りそうです.

投稿: hrgy | 2007/11/12 13:58:53

どう考えても、ギックリ腰を治す方が先決でしょう。

ところで、情報ネットワーク法学会しかわたしは学会というものには参加していませんが、参加者の幅が恐ろしく広くて利害が対立する立場の人も多いのです。

そこで、自由に意見交換しているので研究発表の場などでも、雰囲気は自由ですね。

投稿: 酔うぞ | 2007/11/12 20:16:36

チャンスが有れば見に行きたいです>情報ネットワーク法学会。
学会誌とかあるんですか?

投稿: apj | 2007/11/13 2:47:59

学会誌は年一回発行です。

年会費1万円ですが、学会誌の値段が4300円だったりするから、研究大会(他にも研究会はある)に一度参加するのであれば、非常にお得な会費です。

会員だと、年会費一万円で学会誌+研究会参加費をカバーしています。

プロバイダ責任制限法や個人情報保護法、児童ポルノ法といったネットワークに直結している新規の法律が動き始めた、この数年は「法律をどう解釈するのか」といった受け身な雰囲気でしたが、今回は「新たに立法する必要がある」と攻めの姿勢の意見が多くなってきました。

今後はまた面白い議論が出てくるでしょう。

奥村弁護士(児童ポルノ事件を多く扱っている)のプレゼンテーションは非常に面白いものでした。
全部を録画してきたので、見直してますが「いやはやどうしたモノだろう?」といった感じです。

投稿: 酔うぞ | 2007/11/13 8:07:05

>どう考えても、ギックリ腰を治す方が先決でしょう。

腰のほうは,研究室で使う椅子を固い
ものに変えてみたら,調子がいいです.
ふかふかなのは,負担になります.

情報ネットワーク学会ですけど,色々
な議論がある場面を見聞すると興味
深そうです.

投稿: hrgy | 2007/11/13 11:46:45

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