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2007.06.30

事故調査を独立させろ

国土交通省の航空・鉄道事故調査委員会が尼崎脱線事故の事故調査報告書を発表しました。 これについては遺族からはこんな意見が出ています。
サンケイ新聞イザより「JRの企業責任には…遺族 誰のための事故調か

「何のために2年以上も待ったのだろう」。
国土交通省航空・鉄道事故調査委員会(事故調)が28日公表したJR福知山線脱線事故の最終報告書は、事故原因を懲罰的な日勤教育に限定し、ATS(列車自動停止装置)の設置遅れや無理なダイヤ編成との因果関係は認めなかった。
期待とは裏腹に企業責任に対して踏み込みの甘さが目立つ最終報告に、遺族らは落胆の色を隠せなかった。

「誰のための事故調査なのか。極めて残念な結果だ」
遺族らでつくる「4・25ネットワーク」世話人の1人はこの日夜、大阪市北区で会見し、厳しい表情を崩さなかった。

遺族が最終報告書に期待したのは「JR西の経営責任にどこまで踏み込むか」。
事故原因の説明を拒み続けてきたJR西に、安全対策の不備や無理なダイヤ編成など経営責任を突きつけてくれると信じていたからだ。

ネットワークの活動を支援する弁護士は「3者に“談合”があったとは思えないが、遺族ならそうした疑念を抱いてしまう調査結果ということだ」と遺族の気持ちを代弁した。

この件について、読売新聞、サンケイ新聞、毎日新聞の社説を見てみます。

読売新聞社説

「尼崎脱線事故 鉄道の安全向上に報告を生かせ」

その背景にある問題として、報告書は、JR西日本の「日勤教育」が、死亡した運転士を心理的に追いつめた、と指摘した。社内連携の悪さや無理なダイヤも挙げている。

日勤教育は、ミスをした運転士を乗務から外して実施された。運転技術などではなく、精神論が主だ。反省文を書かせ、繰り返し、あいさつをやり直させる。賃金もダウンする。報告書は、一部の運転士は“懲罰”と受け止めていたと指摘し、見直すべきだとしている。

事故防止策として報告書は、懲罰的でない報告制度の整備や緊急性の低い無線交信の制限など3項目を求めた。一昨年秋に提言した自動列車停止装置(ATS)の機能向上などに続くものだ。全鉄道事業者は、早急に実施すべきである。

事故当時、国は、カーブのATS整備を義務づけていなかった。設置していれば、事故は防げたはずだ。国の安全管理上の規制が十分でなかったことが事故につながったとすれば、そうした分析も報告書にあってよかった。

最終報告書まで2年2か月かかった。事故調は昨春、鉄道事故調査官を倍増して14人にしたが、初動段階で鉄道総合技術研究所や大学の専門家の応援を求めるなどして、調査の迅速化を図りたい。

JR西は、遺族らに事故原因の説明を求められても口を閉ざしてきた。最終報告書を機に本格化する警察の捜査で、JR西が不利になるような言質を取られたくないとの意識からではないか。

関係者の刑事責任の有無が、今後の焦点になる。捜査を尽くし、JR西の安全管理の実態に迫ってもらいたい。

サンケイ新聞社説

JR事故報告 企業体質が問われている

この異常な運転について、事故調は運転士が「日勤教育を懸念」したためとした。日勤教育は乗務中にミスなどを犯した運転士を対象にした再教育制度である。だが、実際は上司が厳しく叱責(しっせき)するなど懲罰的な側面が強く、過去に3度の日勤教育を受けた運転士にとっては大きな心理的な負担となったとみられる。

日勤教育については、事故直後から問題となり、運用も見直されたとされる。そのうえでJR西日本の幹部は今年2月の事故調による意見聴取会で、「必要かつ有益」と反論した。

しかし、日勤教育が事故につながった可能性があるとの指摘が持つ意味は大きい。懲罰的な日勤教育が行われていなかったら、事故も起こらず、多数の犠牲者も出なかった可能性があるからである。

事故調はさらに、新型の列車自動停止装置の設置の導入先送りや、ブレーキの欠陥など、安全性を軽視し続けた企業体質も厳しく批判した。再発防止のために、企業体質まで踏み込んで批判するのは極めて異例だ。

過度の懲罰は教育ではない。JR西は報告を真摯(しんし)に受け止め、日勤教育が本当に必要かどうかも含め、徹底的な見直しを図る必要がある。同時に、批判された企業体質を根本的に改善する努力を続けるべきである。

兵庫県警は最終報告を受け、運行関係者を業務上過失致死傷容疑などで立件する方針だ。すでに事故から2年以上もたった。真相解明を求める遺族感情は強く、刑事上の責任追及も厳正に行われなければならない。

毎日新聞社説

「企業体質を一から見直せ」

JR西日本は事故後、日勤教育を実践的な形に改めた。教育効果が上がるよう、より検討するという。当然のことだ。事故の教訓を生かして、安全意識を高め、技量の徹底向上を図る内容でなければ意味がない。

安全管理体制にも数々の不備が指摘された。営業強化のためダイヤの余裕時分が削られ、職場間の連携不足で新型ATS(自動列車停止装置)の運用開始が遅れた。同型電車のブレーキ不具合や速度計の誤差が報告されていたのに、まったく改良されなかった。組織全体の緩みようは目に余る。

事故調は、当時の鉄道本部長が安全管理に直接タッチしていないと釈明した点にも触れ、経営トップに近い者が積極的に関与すべきだった、と強調している。緊張の欠如、責任逃れの体質は今も残っていないか。もう一度、真剣に自らを省みることが不可欠だ。

組織の基本から、改めて徹底的に見直した方がいい。なにより、すべての社員が安全最優先を共通の誓いとして心に刻み、経営陣と現場、職場間の不信の連鎖を断ち切る努力を重ねることが求められる。でなければ、企業風土の改革など進むはずがない。

話を整理すると

  • 遺族       JR西の責任の明確化(真相究明)
  • 読売新聞社説   日勤教育に片寄り、安全施設の設置の遅れが問題
  • サンケイ新聞社説 企業体質が良くない
  • 毎日新聞社説   組織が良くない

となりますが、結局のところ「刑事責任追及」であって、読売新聞社説が説明しているように

JR西は、遺族らに事故原因の説明を求められても口を閉ざしてきた。
最終報告書を機に本格化する警察の捜査で、JR西が不利になるような言質を取られたくないとの意識からではないか。
のは当然のことだ。

日本では、事故原因を明らかにすると責任が重くなるのであって、あらゆる事故で原因隠しになって、結果として事故原因の究明が出来ない。
古くは日航123便墜落事故で、機体が空中で破壊した理由がボーイング社の修理のミスであろうというところまでは分かったが、どのように壊れたのかはいまだに十分な解析が出来ていない。
ボーイング社の関係者が刑事責任追及を逃れるため事故調査に協力しなかったからだ。
その結果、22年も経った今でも遺族は「事故調査についての資料収集」している。

医療事故はもっと深刻で、事故扱いになると責任を追及されるから、リスクのある医療から医師がどんどん減っている。

事故調査を刑事捜査のためにやっては、事故原因の研究は出来ないし、当然改善も出来ない。
アメリカの航空機事故調査では免責しているから事故の研究が進んでいると指摘されています。

はっきり言えば、事故調査に協力すると司法取引で責任が軽減されるという仕組みは必要不可欠だろう。
刑事捜査の下に事故調を置く構図を脱却するべきだ。
そういう観点で社説を見ると、すべての社説が「日勤教育」を批判しているが、これは「精神教育のようなものでは事故は防げない」という意味だろう。

だとすると「企業体質に問題ある」という社説は精神論では無いのか?
事故が無くなることが優先であって、企業体質は遠因かもしれないが、企業体質を変えれば事故は着実に減少するのか?
それよりも安全設備への投資割合を評価することの方が社説としては重要なのではないのか?

何はともあれ、事故調査委員会を法的に位置づけることを早急に行うべきだ。

6月 30, 2007 at 11:31 午前 事故と社会 |

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コメント

運転士が持っていた二つの携帯電話の話はどこに行ってしまったのだろう。

投稿: ina | 2007/06/30 17:50:33

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