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2007.06.01

エレベータ死亡事故・メンテナンスで見逃し?

朝日新聞より「管理会社の立件を検討 シンドラーエレベーター事故

以前から

と延々と書いてきましたが、どうやら事故の直接原因としてメンテナンス不良(メンテナンス会社の責任)ということになりそうです。

東京都港区の公共住宅で06年6月、エレベーターに挟まれて高校生が死亡した事故で、保守管理会社がブレーキの摩耗を見落としていた可能性が高いことがわかった。
警視庁は摩耗が事故につながったと判断、エス社側を業務上過失致死容疑で立件する方向で検討に入った。
製造元の「シンドラーエレベータ」側の刑事責任の有無についても、引き続き調べている。

捜査1課などの調べでは、エス社は06年度から同住宅のエレベーター保守管理業務を受注。
月2回点検の契約で、担当者が直前の4月と5月に計4回点検していた。
最後の定期点検は5月25日で、事故8日前の同月26日にも機械の具合を見ていた。

警視庁が事故機のブレーキを調べたところ、隣の同型機よりパッド部分が摩耗していた。
ブレーキを解放する部品の不具合で、必要ない時もブレーキがかかった状態が続き、パッドが摩耗したとみられる。

その結果、ブレーキが十分に機能せず、12階に止まって扉が開いている最中にかごが上昇。
かごから降りていた市川大輔さん(当時16)が床と天井に挟まれたと判断した。

調べに対し、エス社側は「摩耗は事故直前の数分で進んだ。
点検に不備はなかった」と主張。点検担当者も「ブレーキの構造がよくわからず、細かい調整はできなかったが、外見でわかる摩耗はなかった」と説明したという。

しかし、同庁は、ブレーキの新旧や気温など条件を変えながら実験を入念に重ねた結果、最後の点検から事故までの間では、パッドの摩耗は大きくは進まないとの見方を強めている。

住宅側との契約上、パッドの摩耗具合も重要項目の一つとして点検することになっていた。
事故直前の点検では、摩耗が進んでいたため、ブレーキ周辺にパッドの削れた破片などが散っていたはずで、担当者が摩耗を見落とした疑いが強いと同庁はみている。

ちょっと分かりにくい内容ですが、事故を起こしたエレベータの仕組みは、

  1. カゴを重りでバランスを取っている
  2. カゴは人が乗り降りして重くなったり軽くなったりする
  3. 従って、重りでは完璧にバランスさせることは不可能
という仕組みです。

事故当時のように1人しかカゴに乗っていない場合には、重りが下がりカゴが上がる方向に動く力が掛かっています。(重りの方が重い)
バランスが取れていていないから動いてしまうエレベータを静止させるために電磁式のブレーキが働いています。
当然のことながら停電に対応するために、

  • ブレーキはカゴを静止させる時には電力切り
  • ブレーキを緩めてエレベータが上下する時には磁石に通電してブレーキを緩める
仕組みです。

事故は、エレベータが停止してドアが開き亡くなった高校生が降りようとした時に、エレベータが上昇して天井との間に挟まって死亡しました。

事故の直接原因は、ブレーキパッドの摩耗していてブレーキが働かなくなっていたからで、なぜそのような状態になったのかが問題となっていました。

  1. 静止しているべきエレベータが動いてしまった。
  2. ブレーキバッドが摩耗していたのが原因
  3. なぜブレーキパッドは摩耗したのか
  4. 電磁ブレーキの電磁石機能が弱っていた
  5. エレベータが上下する時に電磁石の力によって離れているべきブレーキパッドが接触していたので急速に摩耗が進んだ
この段階で、メーカー・メンテナンス会社サイドの見解が
  1. ブレーキパッドの摩耗は事故直前の数分間で進んだ
だったものですが、警視庁が実験した結果
  1. ブレーキパッドがブレーキドラムに接触している状態で
  2. 最後の点検から事故発生までの8日間では摩耗しないと判定
定期点検でブレーキパッドの摩耗、電磁ブレーキの劣化を見逃していたと結論づけた。ということでしょう。

それにしても、ブレーキパッドが摩耗してしまうと動いてしまうという構造で良いのでしょうか?
難しいのかもしれませんが、ブレーキパッドが摩耗するとロックしてしまって動かなくなる仕組みも不可能ではないでしょう。
なんか仕組みとしておかしいような気がします。機構を単純化して製作側のコストダウンをしたのだろうと想像しますが、メンテナンスの手間や重大事故の可能性は高くなっていたので果てないでしょうか?それだとトータルコストとしてどう評価するべきなのか?色々な問題が顕わになってきました。

6月 1, 2007 at 10:01 午前 もの作り, 事故と社会 |

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コメント

>難しいのかもしれませんが、ブレーキパッドが摩耗するとロックして動かなくなる仕組みも不可能ではないでしょう。

難しいのではないでしょうか。フェールセーフというのは、複雑なシステムの途中で故障が発生した時に、より単純な機構で、つまり近道で安全側に落ち着かせるものだと思います。例えば、ブレーキを作動させる油圧系統(途中)に故障があった場合に、より単純な機械的仕組み(近道)で終点のブレーキパッドが押し付けられた状態に落ち着く仕組みです。したがって、その最終的なブレーキパッドが摩耗するような現象では近道の余地がありません。

他の対策としては、代替のロックシステムが作動する多重化が考えられ、例えば、パッドの厚みを自動検知して、規定値以下になると予備のロックが働くような仕組みは一応考えられます。しかしそれには、複雑な機構が必要で、いわば回り道です。それが確実に作動するか点検が必要になります。ならば、パッドの点検をした方が確実ではないでしょうか。

踏み切りの遮断機は停電した時に、重力で閉まった状態になるのが、フェールセーフです。でも、遮断機のバーが折れる対策として、バックアップのバーが作動する仕組みを考えるのは馬鹿げている感じがしませんか。バーの点検をしっかりするのが簡単で効果的と思います。

投稿: zorori | 2007/06/01 19:46:05

zororiさんの説はまったくその通りだと思います。
でも、常時監視無しで長期連続使用の機械だから…
せめてもう一段ロック入れたくなりませんか?
私の個人的な感触では

>電磁ブレーキの電磁石機能が弱っていた

ここに入れてればと愚考する次第。
荷重変化を補正するのであれば基本的に連続作動です。
ブレーキパッドが物理的接触で磨耗する部品というのは自明です。
(確かにブレーキモータの直接改造が面倒臭いのは判るけどワシみたいな単品製造者ならいざ知らず大手メーカーでしょ)
励磁解除後の籠の移動量を見るのはそんなに難しい事ではないかと

ではでは

投稿: トレペ | 2007/06/07 2:08:38

トレペさん。

ええ、摩耗しないように、ブレーキモーターにロックを入れるというのはあると思います。

ただ、そのような対策が必ず必要となると、影響は大きいですね。数分で摩耗が進むというメンテ会社の言い分を認めることになります。保守では対応不可能なので、とりあえずすべてのエレベーターを使用中止にしなければならない深刻な事態です。

私の感覚では、保守さえきちんとしておけば、エレベーターは相当安全な乗り物と感じていました。その一方で、これ以上どんな対策を重ねてもぬぐいされない恐怖感も感じます。安全性とは無関係な心理的なもので、飛行機が怖いのと似ています。

確率的には飛行機は、自動車よりはるかに安全ですが、怖い人は怖いものです。エレベーターも毎年、死者がでる階段よりは安全だと思うのですが、今回の事故でその認識を変えないですめば良いのですが。

投稿: zorori | 2007/06/08 19:59:37

実はわたしは、電磁ブレーキの解放(磁石が吸着する)をチェックしない仕組みは論外だろう、とも思っています。

どっちにしても、ブレーキパッドが当たっている(制動している)か離れているかをチェックしていないから、すり減ってしまうまで分からないわけです。

ブレーキ作動のストロークチェックをしていなかった、これは基本的な設計ミスだと思うのですよ。

投稿: 酔うぞ | 2007/06/09 0:34:34

パッド摩耗チェックではなく、電磁ブレーキ解放チェックならば、念のために入れておく意味はあると思います。

しかし、それに安全性がかかっているようなものなら、逆に怖くありませんか。つまり、定期のパッド点検では間に合わない数分で摩耗する事態がありうるということですよね。だから、自動的な常時チェックが必須となるわけですから。

電磁石の調子が悪くても、パッドの耐久性は十分あるような材質や厚みを確保する必要があるような気がします。無理なんでしょうか。

投稿: zorori | 2007/06/09 8:54:44

>電磁石の調子が悪くても、パッドの耐久性は十分あるような材質や厚みを確保する必要があるような気がします。無理なんでしょうか。

この点こそが今回の報道の中心で、「点検期間の間にパッドが無くなってしまわない」と警察は実験結果を評価した、ということですね。

この先にあるのは「点検でパッドの摩耗を見逃した=点検していなかった」なのでしょうが、そこまで立証できるかどうか、というところでしょう。

投稿: 酔うぞ | 2007/06/09 14:30:33

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