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2007.06.09

プール吸い込み事故の暗黒面 市役所職員を起訴

2006年7月31日に埼玉県ふじみ市の市営プールで発生した「吸い込み死亡事故」について多く記事を書きました。

  1. プール吸い込み事故の暗黒面
  2. プール吸い込み事故の暗黒面その2
  3. プール吸い込み事故の暗黒面その3
  4. プール吸い込み事故の暗黒面その4
  5. プール吸い込み事故の暗黒面その5
  6. プール吸い込み事故の暗黒面その6
  7. プール吸い込み事故の暗黒面その7
  8. プール吸い込み事故の暗黒面その8
  9. プール吸い込み事故の暗黒面その9
  10. プール吸い込み事故の暗黒面その10
  11. プール吸い込み事故の暗黒面その11
  12. プール吸い込み事故の暗黒面その12
  13. プール吸い込み事故の暗黒面その13

2007年6月8日にさいたま地検は当時の市教委課長と係長を業務上過失致死罪でさいたま地裁に在宅起訴し、委託業者ら4人を起訴猶予処分としました。

朝日新聞 「ふじみ野プール事故、元市課長ら起訴

ふじみ野市の市営プールで起きた事故で8日、ふじみ野市教委の当時の職員2人が在宅起訴された。

<解説>

市が設置するプールだから、みんなが安心して使う――。ふじみ野市営のプール事故でさいたま地検は、期待を裏切るずさんな市側の管理の実態を重くみる一方で、業者側については、元々欠陥があるプールの管理を委託されたにすぎないと判断した。市と業者側で処分に差がついた一番のポイントは、事故現場が「市のプール」だった点だ。

県のプールを管理する指導要綱では、02年以降は吸排水口のふたをボルトやネジで留め、吸い込み防止金具をつけ、定期的に点検することが明記されていた。しかし、地検によると、ふじみ野市ではその点検が全くされていなかった。

吸水口のさくは四隅をビスで留めておかなければならなかったが、事故があった吸水口は、針金で1カ所が固定されていただけだったとみられるという。

市の2人は職務権限上、固定状況を確認する義務があり事故を防げる立場にあったのに、それを怠ったと判断された。

一方、起訴猶予となった管理委託業者3人については、責任は免れないが基本的には、さくがビスで固定されていない危険なプールの管理を委託されていたにすぎない、という考え方だ。

送検された6人のうち、事故発生時唯一現場にいた京明社の現場責任者についても、補修の針金を探しに行くなど、事故の際の対処に一定の理解を示した上で、「元々、さくが外れること自体があり得ない」とした。

事故後、全国各地の公営プールで安全性の不備が次々と明らかになった。「責任の所在を際だたせた」(地検幹部)今回の処分は、プール設置者である行政の姿勢を改めて問うものとなった。事故の真相は今後、公開の法廷の場で明らかにされることになる。

読売新聞 「ふじみ野プール事故  欠陥見逃し 市を非難

公営プールにもかかわらず、施設の欠陥を見逃した市側の責任が厳しく問われた格好だ。

■責 任■

さいたま地検は「外れてはならない吸水口のふたが外れていた」のが事故の主な原因と設定。プールを主管する市体育課の課長と係長は、プールを開場する前にふたがねじで固定されているかどうかを確認し、委託業者に固定状況を点検させる注意義務があったのに、確認も指示も怠っていたとした。

一方、委託業者側の3人については「当初からふたの固定が不十分なプールの業務委託を受けたに過ぎず、修繕の責任はない」とし、もう1人の市職員も「課長らの指示を受けたに過ぎない」として起訴猶予とした。

同地検によると、ほかの公営プールでは、担当職員が業者と固定状況を確認しており、「他市町村並みのことをしていれば事故は防げた。市が基本的な点検を怠った結果、本件事故が発生した」とした。

同地検幹部は「現場をほったらかしにしていた市は無責任極まりなく、業者とメリハリを付けた。客は『市だから』と安心して利用しており、市の責任は大きい」と指摘した。

    ■丸投げ■

事故があったのは昨年7月31日午後1時40分ごろ。プール側面の吸水口(直径約60センチ)に設置されていた2枚のふた(60センチ四方)の1枚が脱落し、遊泳中の女児が吸い込まれて死亡した。

その後の調べで、ふたがねじの代わりに針金で留められ、当時は左下の1か所しか固定されていなかったことが判明。さらに、市が運営を委託した業者が、下請け業者に無断で業務を“丸投げ”していたことも発覚した。

市は、厚生労働省や県が定めた安全点検なども十分に行っていなかった。関係者から「市職員はプールサイド周辺を歩くだけだった」との証言が出るなど、ずさんな管理が非難された。

毎日新聞 「ふじみ野のプール事故死:業者起訴猶予 「責任に軽重ない」両親、処分に困惑 /埼玉

市教委体育課の元課長(60)ら事故当時の市担当者2人が業務上過失致死罪で起訴され、行政の管理責任が厳しく追及されることとなった。一方で、管理業務を請け負った民間業者は全員が起訴猶予に。瑛梨香ちゃんの両親は「(行政と業者に)責任の軽重があるとは思えない」と複雑な心境を吐露した。

「ずさんの連鎖」。同市事故調査委員会は昨年10月、同プールの管理体制をそう指摘した。市は管理業務をビルメンテナンス会社「太陽管財」に委託。「太陽管財」は下請けの「京明プランニング」に再委託していた。

地検は施設管理者である市の責任感の欠如が事故につながったとの認識を示した。一方で、約1100万円で市から管理業務を委託され、下請けに「丸投げ」した「太陽」や、「京明」の現場責任者らは刑事責任を問われないこととなった。

両親は「傍観して事故を招いた現場責任者こそ責任が重いと考えていた。ふじみ野市や下請け業者が、たった1枚の書類・たった数分の確認を怠ったことが、どれだけ大切な命を奪ったのかを、もう一度自覚してほしい」とコメントし、処分に戸惑いを見せた。【町田結子、弘田恭子】

◇監督責任を重視--元最高検検事の土本武司・白鴎大法科大学院長

市職員2人を起訴したことは、監督責任を重視した考え方による選択で正当な処理だ。しかし、(フタが外れた後の)直近過失にあたるものが外され、事故発生に直接関係する管理責任が軽視されている。今後、同種の事故が発生した場合、請け負った側は責任を問われず、委託した側だけが責任を負うことになりかねないのではないか。

プール吸い込み事故の暗黒面その12で以下の記事を書きました。

「ARエコノート」の有田さんからでした。

そこで、さっそく拝見したのですが、「埼玉プール事故:欠陥プール」にわたしの勝手な推測とは比べものにならない詳細な記事が出ています。
写真で説明がありますから、是非とも記事をご覧いただくとして

「吐出側には安全格子があるのに、吸水側にはないよね。これは設計か施工に大きな問題がある」

出水口の安全対策まで配慮するような建築業者が、なぜ吸水口は危険なままにしていたのか。出水口の格子を見る限り、建築業者が安全対策をとらなかったというのはちょっと考えにくい。

とすると、吸水口の安全対策は別の業者が行ったのではないか。その別の業者とは誰か?

設計図書と完成図書を併せて見れば、当たっているのかどうかがすぐにわかります。 実は、私が入手した本件プールの建築図面には吸水口の位置もサイズもありませんでした。

だとすると、吸水口に関する図面は設備工事側の図面にあるはずが、現段階では私にはわかりません。

もし施工図面に吸水口の安全対策がないのなら当初から「悪魔の穴のプール」だったことになり、設計施工業者とオーナーのふじみ野市の責任はきわめて重くなります。

ふじみ野市が始めた事故調査委員会をみていると、プール本体の問題には一切触れず、受託業者やプール管理の問題に責任を押しつけようという気配が出てきましたので、敢えて私の考え・推論をここに公開する次第です。

という極めて恐るべき情報がありました。

つまり、この情報では管理の問題と言うよりも設備の問題だ、となっていて地検が市役所の職員を業務上過失致死罪で起訴したのは、この装置が本質的に欠陥があったと認定したからでしょう。

プールの吸い込み事故については、記事中に何度も書いていますが、毎年文科省(文部省)が出している指示を連続して無視していたこともあり、あまりにひどい管理状態であったと言えるでしょう。今回の起訴は他のプール管理者(教育委員会)への検察の強い警告という面も大きいのでしょう。

追記

この事件は、柵が外れていたから、被害児童が流水プールの循環ポンプの吸水口に吸い込まれて亡くなりました。

文科省がプールの吸水口に対して出している安全基準は、吸水口の網や柵はボルトなどで固定して引っ張っても取れないこと、万一に備えて二重に柵を設ける事、です。

ふじみ市の問題のプールでは、吐出口は二重の格子で吸水口は外れる柵だけだった。

これらは、工事の問題であって監視員が出来ることはプールの運用を止めることぐらいしかないでしょう。
しかも、市に対しては以前から問題点として柵の取付について報告(警告)があったとも伝えられています。

事故のその時だけを問題にすると、監視員や請負業者の責任が強いように思えますが、では他の業者や監視員が別の人間であった場合に事件は起きなかったのか?と考えれば「運が良ければ」になってしまうでしょう。

事故の本質は、装置の欠陥であり、しかも設計・設置の段階から法令違反の疑いが極めて濃厚な装置でありました。これらについて責任があるのは市である、ということです。

それにしても、日本では各種事故について事故原因を究明する部署が無く、刑事捜査の一環でしか究明できないのは安全を高めるという見地からは大問題でしょう。

6月 9, 2007 at 03:58 午後 事故と社会 |

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コメント

まさか、吐出口と吸水口が、ポンプを取り付けた段階で逆に使っていたなんてこと無いよねー。でも、その可能性もあり得る。

投稿: 昭ちゃん | 2007/06/10 2:12:49

>まさか、吐出口と吸水口が、ポンプを取り付けた段階で逆に使っていたなんてこと無いよねー。
>でも、その可能性もあり得る。

ふじみ野市の問題のプールは合併前の大井町が作ったものだと思います。

文部省時代からプールの吸い込み事故対策の指示が出ているのに、昨年の大騒動で全国規模で調べたら「重いから持ち上がらないと思っていた」なんてところがゾロゾロ出てきているのです。

なんでこんな事になるのか?は想像するしかないですが、どうも行政の狭間の問題のように思うのです。

教育関係設備は教育委員会の管轄なのですが、教育委員会の仕事で最大ものは傘下の公立学校の人事管理です。
もちろん、教材などについても莫大な量が動きますから事務処理も大変でしょう。

さらに、図書館や体育館を含む施設の管理運営があるわけで、これらの実務全部を教育委員会が独自組織で持つことは出来ないから、他部署との連携が大事だ、ということらしいです。

そこに、プールという一種のプラントの話が来たわけです。
受け取るのは教育委員会ですね。
もし工事をするとなると、他部署のとの調整が発生してそれなりに大変なのでしょう。

その判定をする技術力が教育委員会にあるのか?ですね。

問題の吸い込み口の柵はビス留めだったのだから、普通の機械技術者でも設計しないようなシロモノですよ。
裁判ではこれも問題になるかもしれませんね。

実際問題として今回の事故がなぜ起きたのか、を筋道立てて説明が出来るのか?と思うくらいです。

責任の有無よりも、事故原因の究明の方が重要だと強く思う例ですね。

投稿: 酔うぞ | 2007/06/10 12:11:10

>その判定をする技術力が教育委員会にあるのか?ですね。

いわゆる技術系職員は皆無に近いという経験から「無い」と断言します。
教育委員会が耐震診断・補強の設計と工事の発注・検査している行政庁で、教育委員会に内容の判る職員を配置していないところが多数あります。当然、補強設計をしようと計算書を見たらデタラメで、診断からやり直しなんて例も・・・。これ東京近郊の話。

>責任の有無よりも、事故原因の究明の方が重要だと強く思う例ですね。

警察の捜査は犯罪の立証が目的だから、又も原因究明と対策のためにはならないでしょう。飛行機墜落事故では事故調の報告書が刑事事件の証拠になり大問題となりました。少しは、改善された判例も出ましたが・・・。

現場の苦悩は続くのです。困ったもんだ。

と、書いていたら、

文科省が「全国の国公私立の小中高校の水泳プールで吸排水口のふたが固定されていなかったり、吸い込み防止金具がなかったりなどの安全上の不備が1222校である教育委員会所管の公営プールも132施設で不備。今年のシーズンまでに改善される予定。」と5月30日に発表していた。まだ、直してないのー?と呆れること・・・。予算などの理由もあるでしょうが、関係者全部が危機として認識していない結果ですね。

投稿: 昭ちゃん | 2007/06/10 13:44:59

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