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2007.06.19

エレベータのワイヤーが破断していたのは問題なのか?

読売新聞より「エレベーターのワイヤ破断、大手5社の38基で新たに確認

エレベーターのワイヤロープの破断が相次いだ問題で、国土交通省は18日、保守管理大手の5社が担当する全国のエレベーター約50万9000基について、既に判明した4基のほか、新たに計38基でロープの一部破断が見つかったとする調査結果を発表した。

これまで破断が確認されていなかった三菱電機ビルテクノサービス、東芝エレベータの保守管理分も含まれ、同省は、両社が管理する計約26万9000基について緊急点検を指示した。

調査結果は、国交省が社団法人・日本エレベータ協会を通じ、昨年6月以降に確認された破断件数をまとめたもの。

計42基の内訳は、日立ビルシステムが最多で21基、日本オーチス・エレベータ7基、東芝エレベータ、フジテック各5基、三菱電機ビルテクノサービス4基。
いずれも破断が判明後、ロープは交換済みで、日立、フジテックの各1基と、オーチス社2基については既に公表されている。

原因については、設置からの時間経過に伴う経年劣化が15基で最も多く、小石などの異物混入が原因とみられる損傷が7基、さびによる劣化2基などだった。

いずれも直前の定期検査では問題がないと報告されており、同省では「ずさんな検査・点検で劣化が見過ごされた可能性がある」として、今後、エレベーターの定期検査の方法や報告について見直す方針。

日本エレベータ協会では「破断の発生をゼロに近づけるよう、検査・点検を見直していく必要がある」としている。

ロープの一部破断を巡っては、今年3月以降、大手5社のほか、シンドラーエレベータ、日本エレベーター製造が保守管理する各1基でも確認されている。

結構微妙なニュースですね。
エレベータの保守について詳しいことは知らないのですが、元々複数のワイヤーで釣られていて、ワイヤーが一本破断したぐらいでは運用に差しつかえないし、釣っているワイヤーが全部無くなってもカゴは落下しないはずです。
だから、近年のエレベータによる死亡事故はカゴの上昇がコントロールできない時に起きています。

記事をよく読むと

調査結果は、国交省が社団法人・日本エレベータ協会を通じ、昨年6月以降に確認された破断件数をまとめたもの。

とのことですから、素直に読むと個々のエレベータを直接一斉に調査した、ということではないようです。
点検や異常の調査などで、ワイヤーの破断が見つかった、と解釈できます。

そうなると

いずれも直前の定期検査では問題がないと報告されており、同省では「ずさんな検査・点検で劣化が見過ごされた可能性がある」として、今後、エレベーターの定期検査の方法や報告について見直す方針。

とは実際には何が出来ればよいということになるのか?
ワイヤーが切れる前に切れそうだと発見するのはかなり難しいのではないだろうか?
そこで問題になってくるのが

原因については、設置からの時間経過に伴う経年劣化が15基で最も多く、小石などの異物混入が原因とみられる損傷が7基、さびによる劣化2基などだった。

経年劣化が一番多いのであれば、いつ設置されたものか、あるいは運転時間がどれくらいか、を問題にすれば対応策も出来るだろう。
そうなると、個々のエレベータの情報はメンテナンス会社にはあるわけだから、ワイヤーが破断したエレベータの台数よりも、緊急にワイヤーを交換するべき可能性のあるエレベータの台数を問題にするべきではないだろうか?

シンドラー社のエレベータが港区で起こした、高校生死亡事故の現場ではエレベータ管理会社を入札によって入れ替えたらメンテナンス費用(契約高)が数年で何分の1かに下がったとも言います。
どう考えても、点検でどこを手抜きするかを競っているわけで、その中でワイヤーについては「破断が分かればよい」であったのでしょう。
先に書いたとおり、ワイヤーの安全性は極めて高いので破断そのものが危険とは言えない、という解釈が成立しています。

これを問題にするのであれば、エレベータのメンテナンスコストは激増するわけで、国レベルではワイヤーの交換時期を定める、といったことの方が優先度が高いでしょう。
どうもここらにも「事故調査委員会」的な機能が働いていない、問題の提起がなされないと強く感じます。

6月 19, 2007 at 09:07 午前 もの作り, 事故と社会, 国内の政治・行政・司法 |

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コメント

国交省の調査は何を調べようとしたのでしょうか、どうも論点がずれてきているように感じます。

エレベーター協会は、「まれではあるが、ストランドの破断は有りえ、それでも安全性は保たれる。」と言い、他方の国交省は「ストランドの破断はあってはならないこと」と、見解が分かれています。
論点はかごの落下の危険性になっています。まあ、この点については、じっくり議論してもらえば良いと思います。

ところが、そもそもの発端はストランド破断による火災事故だったわけで、これは、まれにはありえて、安全性は保たれる事柄などではないことは明らかです。調査は他にも火災事故に繋がるような事例がないかを調べるものだったはずで、調査結果はストランド破断が42基あったが、火災や人心事故の報告は無かったというものです。

協会の言うようにストランド破断はありえるのなら、落下はともかく火災は他のエレベーターでも可能性があることになります。六本木ヒルズが特殊で他のエレベーターでは破断があっても火災には繋がらないのか、調査結果からは良く分かりません。この点については、緊急に結論を出してほしいです。

どうも、肝心なことが忘れられているように思います。

投稿: zorori | 2007/06/20 12:59:18

zororiさん

何かを忘れているというより最初から何をするべきか分からないで調査だけした、ということじゃないかと思います。

確かに、ワイヤーが部分的にしろ切れるまで使うというのは一般社会には大変なことと受け取られるだろうし、火が出るまで気づかなかったというのも論外だと思いますが、問題として解決を図るのであれば、当然のこととして論理性を持って目標を明示するべきなのに、それがないのが今回の特徴でしょう。

わたしはそこらをひっくるめて「ワイヤが切れるのが問題か?」としたわけですが、読売新聞社説は予想通りには「大変だ~」となったわけです。

国交省はこうやって世論を煽るつもりなのでしょうか?
「どっちに向いて何をしているのか?」と国交省に聞きたいところです。

投稿: 酔うぞ | 2007/06/20 16:23:50

私は趣味で撚鋼索を使用しています
使用状態により素線切れはまあ簡単に出て来ますが,その発生は大体において擦り切れて寿命が近い事を意味します
それを点検で見つけ必要な限度で修理するのは当然ですが,寿命近くでは恐ろしいほど頻発します
素線切れからストランド切れまでの経過の期間は安全率や構造によって変わってくるでしょうが,素線切れとストランド切れは因果があります
また,素線切れの頻発は寿命が原因です
#撚り鋼索は外側が磨り減ります,磨り減った素線は当然切れ易くなります

ストランド切れは過重超過の恐れとなりますが,それ以上の弊害があります
ストランドの切れた鋼索は引っ張りによって撚りが戻り,ストランドは広範囲亘り鋼索より脱落します
長く脱落したストランドは絡むんです,所構わずあちこちに......
ドラム内で隣の索に,プーリやテンショナーに......周辺の構造材に......

エレベータのそこら辺の構造や基準は良く判らないですが,直接安全性を脅かすのは間違いない事だと想像できます
従って,損傷に因る7件を除き,ストランド切れを点検に拠って発見した事を大変だーとする当局の考えも止む得ないのではないでしょうかね
#たわんで打痕から来たストランド切れは最悪だから損傷の7件も全て無罪とするのもちょっと......

投稿: tsujimo | 2007/06/21 0:41:30

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